JP2010159474A - 鉄粉の仕上げ熱処理方法および装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】鉄粉の仕上げ熱処理方法および装置において、その生産性、および反応ガスの反応効率を向上させ、さらに、生産量の変動にも対応することを目的とする。
【解決手段】鉄粉の仕上げ熱処理装置であって、鉄粉を供給するホッパと、鉄粉を熱処理する複数のゾーンに区分された加熱炉と、鉄粉を水平に移動する手段を有し、上記加熱炉に、各ゾーン毎に加熱手段と処理ガスの供給口と排出口をそれぞれ設け、さらに上記水平に移動する手段は、処理ガスの通過を妨げないメッシュタイプとする。
【選択図】図5

Description

本発明は、粉末冶金の素材となる比較的高品位の鉄粉を製造するために、比較的低品位の鉄粉(酸素、窒素、炭素の含有量が比較的高い粗製鉄粉、還元鉄粉、アトマイズ鉄粉など)に対し、仕上げ熱処理(仕上げ還元(脱酸)処理、脱炭処理、脱窒処理等)を施す際の熱処理方法およびその熱処理に使用する装置に関するものである。
還元鉄に仕上げ熱処理を施す場合には、事前に還元鉄の塊を100μm以下に粉砕し、還元鉄の塊に付着している炭材などの異物を磁選や風選で取除く必要がある。このため、仕上げ熱処理は、100μm以下の微粉の状態で実施しなければならない。一般に、微粉の反応装置として流動層がよく利用される。しかし、還元鉄の場合、高反応効率を得るためには、仕上げ熱処理温度を700℃以上とする必要があるが、処理温度を700℃以上にすると、焼結が始まり、その流動性が低下するため、流動層の形成が難しくなる。
また、還元処理手段としてシャフト炉があるが、これは塊状の原料を処理することを目的に開発・改良がなされてきたプロセスであるため、微粉の粗製鉄粉への適用は難しい。
以上のような理由から、従来は、例えば、図1に示すような、加熱炉30を用いる仕上げ熱処理方法が使用されてきた(特許文献1参照)。なお、図1において、符号1は仕切り壁、2は脱炭ゾーン、3は脱酸ゾーン、4は脱窒ゾーン、5は雰囲気ガス供給口、6は雰囲気ガス排出口、7は鉄粉、8はホッパ、9はベルト、10はホイール、11はラジアントチューブ、12は水蒸気吹込み管、14は製品タンク、15は水封槽、20は製品粉砕用装置、21は冷却器、22は循環ファン、30は加熱炉(水平式または連続移動床式)、31は炉体を表している。
一般に、鉄粉の仕上げ熱処理工程では、ミルスケールを粗還元した還元鉄粉やアトマイズしたままの鉄粉など粗製された鉄粉を処理対象とし、製品の用途に応じて脱炭、脱酸、脱窒などの処理が施されてきた。その際の仕上げ熱処理装置としては、上記した加熱炉30などの連続式移動床炉が用いられるが、そこでは、粗製された鉄粉が、水平に移動するベルト、すなわち移動床上に供給され、移動床の進行とともに、下記の反応式(1)〜(3)に示される、脱炭、脱酸、脱窒の処理が施されていた。
C(in Fe) +HO(g) =CO(g)+H(g) (1)
FeO(s) +H(g) =Fe(s)+HO(g) (2)
N(in Fe)+3/2H(g)=NH(g) (3)
この加熱炉30は、仕切り壁1によって脱炭ゾーン2、脱酸ゾーン3、脱窒ゾーン4に3分割された炉体31と、炉体31の入側に設置されたホッパ8と、炉体31の入出両側に設けられたホイール10と、ホイール10によって連続回転して炉体31内の各ゾーンを循環するベルト(移動床)9とを備えている。
ホッパ8からベルト9上に供給された鉄粉7は、各ゾーンを移動しながら仕上げ熱処理を受けられる仕組みになっている。
脱炭ゾーン2では、ラジアントチューブ11により、ゾーン内の温度が600〜1100℃になるように加熱制御され、脱酸ゾーン3から水素が送られ、脱炭ゾーン2の下流側に設けられた水蒸気吹込み管12から反応ガスである水蒸気が供給されて、雰囲気ガスの露点が30〜60℃になるように制御され、上記反応式(1)の脱炭が行われる。
脱酸ゾーン3では、ラジアントチューブ11により、ゾーン内の温度が700〜1100℃になるように加熱制御され、脱窒ゾーン4からガスの露点が40℃以下の水素が送られ、上記反応式(2)の脱酸が行われる。
脱窒ゾーン4では、ラジアントチューブ11により、ゾーン内の温度が450〜750℃になるように加熱制御され、その下流に設けられた雰囲気ガス供給口5から反応ガスである露点が40℃以下の水素が供給され、上記反応式(3)の脱窒が行われる。
以上の工程で、加熱炉30に供給された水素、水蒸気の未反応ガスや反応式(1)〜(3)で発生した反応生成ガスは、脱炭ゾーン1の上流側に設けられた雰囲気ガス排気口6から炉外へ排出される。
仕上げ熱処理された鉄粉7は、冷却器21を通って冷却される。ここでは、冷却器21内で冷やされた水素ガスが循環ファン22によって鉄粉7の表面に吹付けられ、鉄粉を冷やし、温度の上がった水素ガスは、再び冷却器21内に入り冷やされる。
冷やされた鉄粉7は、ベルト9から製品タンク14に装入されるが、仕上げ熱処理された鉄粉は、焼結して固まっているため、製品粉砕用装置20によって所定の粒度まで粉砕される。
また、図2に示すような設備を用い、反応式(1)〜(3)に用いられる反応ガスを、直接鉄粉に供給する方法が提案されている(特許文献2参照)。なお、図中、符号1は仕切り壁、2は脱炭ゾーン、3は脱酸ゾーン、4は脱窒ゾーン、5は雰囲気ガス供給口、6は雰囲気ガス排出口、7は鉄粉、8はホッパ、41はガイド、42は格子、43は引抜き装置、44は脱窒処理後ガス、45は脱酸処理ガス、46は脱酸処理後ガス、47は脱炭処理ガス、48は移動層(焼結前)、49は移動層(焼結後)を表している。
格子42は、2列に対向配置し、各列の格子42は、上下方向に多段に設けられている。鉄粉7は、上部に設けられたホッパ8からガイド41を通して、この2列の格子42の間(格子対向面間)に供給され、移動層48を下向きに移動させる。移動層48をなす鉄粉7は、下降しながら、移動層48の中を通過する反応ガスにより過熱還元されて次第に焼結し、固まった移動層49になる。この移動層49は、下部に設けられた引抜き装置43により、下方向に引抜かれる。
処理ガスは、所定温度に加熱された還元処理ガスをガス供給口5から脱窒ゾーン4に供給され、格子42の段間を通り、焼結した移動層49の移動方向(下降方向)と交差する方向へ流れて移動層49内に入る。移動層49を通過してきたガスは、反対側の格子42の段間を処理後ガス44として装置外に排出される。
脱酸ゾーン3に処理ガス45を供給し、同様に格子42の段間を通り、焼結した移動層49の移動方向(下降方向)と交差する方向へ流れて移動層49内に入り、反対側の格子42の段間から処理後ガス46が排出される。その後、このガスに鉄粉の性状によって水蒸気吹込み管12より水蒸気を添加し、脱炭ゾーン2に脱炭用処理ガス47として供給する。そして格子42の段間を通り、焼結前の移動層48に入り、反対側の格子42を通って、雰囲気ガス排気口6から装置外に排出される。
特開昭61-110701号公報 特開2006-16688号公報
特許文献1の熱処理方法は、ステンレスベルト上に粗製鉄粉を薄く敷き加熱炉で仕上げ熱処理するというものである。しかしながら、このような方法では、処理ガスを鉄粉層中に十分に浸透させることができず、ガスと鉄粉との反応は、鉄粉層内の鉄粉粒子間を移動する処理ガスおよび処理後ガスの拡散速度に依存するため、非常に遅くなる。また、加熱の面でも、加熱管や雰囲気ガスからの輻射による表面加熱とそれに続く伝導伝熱を用いているため、その速度は上がらない。
これらの理由により、上記した加熱炉は、鉄粉層内部が必要温度に達するまでに長時間を要して生産性が上がらず、数十メートルにも及ぶ大きな設備が必要となる。また、その処理ガスもステンレスベルト上の空間を未反応のまま流れて系外に排出されるものが多く、ガスの利用効率が非常に悪いという問題があった。
上記の問題を解決するために、特許文献2では、鉄粉層に処理ガスを流通させることを提案している。しかし、この方法では、生産量を変更する場合、鉄粉通過量を決める2つの格子42の間隔が装置の構成上、容易に変更することはできない。また、鉄粉の移動速度を変更する方法についても、鉄粉と処理ガスの反応速度を変えることが実質的に困難であるため、難しい。つまり、特許文献2の方法では、生産量の調整がほとんどできない、という課題を残している。
本発明は、前記した低生産性、低反応性の問題を解決すると同時に、任意の鉄粉量に対して適切な量の処理ガスを通過させ、また、生産調整等による生産量の変動にも、柔軟に対応できる仕上げ熱処理方法を、その実施に用いて好適な仕上げ熱処理装置と共に提供することを目的とする。
発明者らは、上記の目的を達成すべく、特許文献1および2の問題点を詳細に検討した。
まず、ベルト9上に充填する鉄粉層の厚さと炭素濃度の時間変化との関係を調べた。図3に、処理ガスを鉄粉層表面に流す方法を用いた時の鉄粉層厚さと炭素濃度の時間変化の関係を調べた結果を示す。鉄粉層厚さは厚くなるほど、炭素濃度が低下する時間が長くなり、例えば、炭素濃度が0.010mass%に達する時間は、鉄粉層厚さが30mmの時は30分であったのに対して、鉄粉層厚さが40mmでは、60分かかった。
そこで、次に重力に頼らずに鉄粉層内に処理ガスを通過させるという方法について鋭意検討した。
その結果、鉄粉を連続的にかつ水平に移動させ、この鉄粉に脱炭、脱酸、脱窒のうち1種または2種以上の処理を施すに際し、鉄粉に所定の処理ガスを鉄粉の移動方向と交差する方向に流通させることに想い到った。
この理由は、処理ガスが移動層を形成する鉄粉の粒子間を通過しながら各粒子に接触することができ、処理ガスおよび処理後ガスの粒子間内での移動が、従来法の拡散移動から強制供給型のガスの流れに変わり、処理ガスが大きな移動速度で鉄粉内に万遍なく浸透する、と考えられるからである。
上記の考察を確認するために、鉄粉の水平移動に使用するベルトをメッシュタイプとして、前述したのと同様に鉄粉層厚さと炭素濃度の時間変化の関係を調べた。
その結果、図4に示されるように鉄粉層厚さの炭素濃度の時間変化への影響が少なくかつ短時間で炭素濃度が下がっていることが分かった。
さらに、処理ガスの顕熱が直接、鉄粉に伝わることから、従来法に比べ伝熱速度が大きく、鉄粉温度の上昇が速くなることも知見した。
本発明は以上の知見に基づいてなされたものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
(1)鉄粉を仕上げ熱処理するにあたり、該鉄粉を水平に移動させる移動層を形成し、該移動層に対して所定の処理ガスを通過させるに際し、該処理ガスを移動層の上方から下方に通過させることを特徴とする鉄粉の仕上げ熱処理方法。
(2)前記移動層について複数のゾーンに区画された加熱炉内を水平移動させる間に、各ゾーンごとに該移動層に対し、個別の処理ガスを通過させることを特徴とする(1)に記載の熱処理方法。
(3)前記複数のゾーンが、前記移動層の移動方向に順に、脱炭ゾーン、脱酸ゾーン、脱窒ゾーンとして区分されていることを特徴とする(1)または(2)に記載の熱処理方法。
(4)前記処理ガスを、移動層に供給するに先立ち、予め昇温しておくことを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の熱処理方法。
(5)前記処理ガスを、各区画の下流側から上流側に向けて連続して流通させることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の熱処理方法。
(6)鉄粉を仕上げ熱処理する装置であって、該鉄粉を該装置に供給するホッパと、該鉄粉を熱処理する内部が複数のゾーンに区分された加熱炉と、該鉄粉を水平に移動する手段を有し、上記加熱炉は、各ゾーン毎に加熱手段と処理ガスの供給口と排出口をそれぞれ備え、上記水平に移動する手段は、鉄粉を載置し、かつ該処理ガスの通過を妨げない鉄粉の載置面を備えることを特徴とする鉄粉の仕上げ熱処理装置。
(7)前記処理ガスの供給口を、前記水平に移動する手段の上方に、前期処理ガスの排出口を、前記水平に移動する手段の下方に設けたことを特徴とする(6)に記載の鉄粉の仕上げ熱処理装置。
(8)前記水平に移動する手段が、メッシュ状のエンドレスベルト、またはメッシュ状の鉄粉受け面をそなえる台車であることを特徴とする(6)または(7)に記載の鉄粉の仕上げ熱処理装置。
(9)前記加熱炉に、前記処理ガスを加熱する手段を設けたことを特徴とする(6)〜(8)に記載の鉄粉の仕上げ熱処理装置。
(10)下流側の処理ガス排出口と上流側の処理ガス供給口を連通し、内部が複数のゾーンに区分された前記加熱炉に、下流側ゾーンの排出口から排出された処理ガスを、上流側ゾーンの処理ガス供給口に供給する手段を設けたことを特徴とする(6)〜(9)のいずれかに記載の鉄粉の仕上げ熱処理装置。
(11)前記ホッパから前記加熱炉までの間に鉄粉の半固形化手段を設けたことを特徴とする(6)〜(10)のいずれかに記載の鉄粉の仕上げ熱処理装置。
本発明によれば、粉末冶金で使用する様々な鉄粉の仕上げ熱処理に際し、熱および処理ガスの利用効率を向上させることができるため、高生産性および低コストが同時に実現される。
また、水平の移動層を利用することにより、鉄粉層の厚さ、移動速度等で生産能力を自由に変更できるのみならず、かかる移動層に対して交差する向きに処理ガスを通過させることにより、鉄粉品位の向上も図ることができる。
従来の鉄粉層表面に処理ガスを流す方式の仕上げ熱処理装置の一例を示す側断面図である。 従来の鉄粉層を下方より引抜く方式の仕上げ熱処理装置の一例を示す側断面図である。 従来方式の、鉄粉の厚さと脱炭速度の関係を示す図である。 本発明の、鉄粉の厚さと脱炭速度の関係を示す図である。 本発明に従う仕上げ熱処理装置の主要部を示す側断面図である。 加温による半固形化手段の好適例を示す図である。 ヒーターでの加温による半固形化手段の好適例を示す図である。
以下、本発明を具体的に説明する。
図5に、本発明の仕上げ熱処理装置の主要部の一例を側断面で示す。構成の骨子は、前掲図1に示した従来例と一部共通するので、同一の符号で示す。
同図に示したように、本発明に従う仕上げ熱処理装置は、鉄粉7を仕上げ熱処理装置に供給するホッパ8と、内部が複数のゾーンに区分された加熱炉30と、鉄粉7を水平に移動する手段としてのエンドレスベルト50を有している。この例で、加熱炉30の内部は、3つのゾーンに区画されており、それぞれ上流側から第1のゾーン51、第2のゾーン52、第3のゾーン53と呼ぶ。また、エンドレスベルト50は、処理ガスの通過を妨げないメッシュタイプになっている。熱処理後の鉄粉は、固形化鉄粉7aとして回収される。なお、このエンドレスベルト50は、両サイドに側壁を設けることができる。また、水平に移動する手段としては、エンドレスベルト50の他に、下面がメッシュ状になっている箱型状の台車を用いることもできる。
さて、本発明では、ホッパ8から加熱炉30までの間に、粉末の落下防止の必要な時等に、鉄粉の半固形化手段54を設けることができる。これは、鉄粉7を、エンドレスベルト50の孔から落ちない程度、かつ処理ガスの通過量を考慮した見かけ密度程度に、例えば、ローラー等での加圧やヒーター等での加温等による半固形化処理を施すものである。半固形化手段54の好適例を図6および図7に示す。
図6は、ホッパ8の下部に予備加熱器55を設けた場合で、この予備加熱器55により、ホッパ8から落下する鉄粉7をエンドレスベルト50に達するまでの間に部分焼結させ、半固形化鉄粉7bとして供給するものである。従って、この場合は、エンドレスベルト50上に形成される移動層は、半固形化鉄粉7bからなっている。
図7は、加熱炉30の入り側に、別途鉄粉の半固形化手段を設けたもので、ホッパ8から鉄粉7をスチールベルト56上に供給し、これを加熱炉30に達するまでの間に加熱器57により、半固形化するものである。
加熱炉30は、各ゾーン毎に加熱手段11と処理ガスの供給口(51a、52a、53a)と排出口(51b、52b、53b)をそれぞれ有しており、下流側の排出口と上流側の供給口は、それぞれ連通しているが、各々の供給口には、追加の処理ガス(水蒸気含む)を供給する導入口(例えば58)を設けることもできる。また、加熱炉30は、処理ガスを予め予熱するヒーター、および炉内加熱用のラジアントチューブ11などの加熱ヒーターを備えている。
そして、61は(脱窒)処理ガス、62は脱窒処理後ガス、63は脱酸処理ガス、64は脱酸処理後ガス、65は脱炭処理ガス、66は(脱炭)処理後ガスである。
次に、仕上げ熱処理の手順について説明する。
まず、鉄粉7は、ホッパ8を通り、通気可能なエンドレスベルト50上に所定の厚さ(量)で供給される。以降、この鉄粉7aは、第1ゾーン(脱炭ゾーン)51、第2ゾーン(脱酸ゾーン)52、第3ゾーン(脱窒ゾーン)53を連続して移動する間に、仕上げ熱処理が施され、純化される。
以下、各ゾーンへの処理ガスの供給は、それぞれ個別に行うこともできるが、この例では、図5に従い、処理ガスを第3ゾーンの供給口53aから供給し、最終的に第1ゾーンの排出口51bから排出する場合について説明する。
この場合、処理ガス61は、雰囲気ガス供給口53aから仕上げ熱処理装置の脱窒ゾーン(第3ゾーン)53上部から供給され、脱窒ゾーン53にある固形化した鉄粉7aと脱窒反応をさせつつ、固形化した鉄粉7aを通過し、エンドレスベルト50を通って、脱窒ゾーン53下部に抜け、脱窒処理後ガス44として脱窒ゾーン外に排出される。
ここに、処理ガス61としては、例えば、水素ガス、またはアンモニアを分解して得られるAXガスが用いられる。なお、処理ガス61は、装置内に供給する前に加熱することもできる。
ついで、脱窒ゾーン(第3ゾーン)53から排出された脱窒処理後ガス62は、脱酸ゾーン(第2ゾーン)52の上部から、脱酸処理ガス63として供給される。
かかる脱酸処理ガス63としては、水素やAXガス等が使われるが、脱窒処理後ガス62の不純物ガスを必要に応じて除去して使用することもできる。また、脱酸処理ガス63は、装置内に供給する前に加熱することもできる。脱酸処理ガス63は、固形化した鉄粉7aを通過するときに脱酸反応を生じさせ、鉄粉内の酸素濃度を下げる。その後、エンドレスベルト50を通って、脱酸ゾーン52の下部に抜け、脱酸処理後ガス64として脱酸ゾーン外に排出される。
さらに、上記の脱酸処理後ガス64は、脱炭ゾーン(第1ゾーン)51上部から、脱炭処理ガス65として供給される。この脱炭処理ガス65は、水素やAXガス等も使われるが、脱窒処理後ガス62や脱酸処理後ガス64の不純物ガスを必要に応じて除去して使用することもできる。また、脱炭処理ガス65は、装置内に供給する前に加熱することもできる。さらに、鉄粉の性状によっては、脱炭処理ガス65に水蒸気58を添加することも可能である。
脱炭処理ガス65は、鉄粉7を通過するときに脱炭反応を生じさせ、鉄粉内の炭素濃度を下げる。その後、エンドレスベルト50を通って、脱炭ゾーン51の下部に抜け、脱炭処理後ガス66として、雰囲気ガス排気口51bから装置外に排出される。
かくして、ベルト上に供給された鉄粉は、脱炭ゾーン、脱酸ゾーンおよび脱窒ゾーンを移送される間に、脱炭、脱酸および脱窒が進み、その純化が達成されるのである。
なお、図5には、本発明に従う仕上げ熱処理装置の主要部のみしか示さなかったが、その他の付属装置については、前掲図1に示したところと同様である。
以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
図5に示した仕上げ熱処理装置を用い、以下の条件で鉄粉の仕上げ熱処理を行った。
(基本条件)
炉内温度:900℃、鉄粉の粒径:100μm以下、鉄粉中の炭素濃度:0.27mass%、
酸素濃度:0.9mass%、窒素濃度:0.04mass%、水素ガス供給量:200m/時、
脱炭ゾーンでの水蒸気の添加量:30kg/時、ベルト上の鉄粉層の幅:1000mm
(変更条件)
エンドレスベルト50上の鉄粉層の厚みは30mmで行った。
この結果、仕上げ熱処理した鉄粉の各種濃度は、炭素濃度:0.008mass%、酸素濃度:0.26mass%、窒素濃度:0.018mass%であり、炭素、酸素および窒素の全てについてその含有量を大幅に低減することができた。また、このときの生産量は、9.3トン/時であった。
<実施例2>
基本条件は実施例1と同じとし、エンドレスベルト50上の鉄粉層の厚みは90mmで行った。
この結果、仕上げ熱処理した鉄粉の各種濃度は、炭素濃度:0.009mass%、酸素濃度:0.27mass%、窒素濃度:0.020mass%であった。このときの生産量は、13.1トン/時であった。
<実施例3>
基本条件は実施例1と同じとし、エンドレスベルト50上の鉄粉層の厚みは30mmで行った。
この結果、仕上げ熱処理した鉄粉の各種濃度は、炭素濃度:0.006mass%、酸素濃度:0.19mass%、窒素濃度:0.013mass%であった。このときの生産量は、5.2トン/時であった。
<比較例1>
図1に示した装置を用い、実施例1の基本条件で、鉄粉層の厚みは30mmで行った。
この結果、仕上げ熱処理した鉄粉の各種濃度は、炭素濃度:0.010mass%、酸素濃度:0.30mass%、窒素濃度:0.020mass%であった。このときの生産量は、5.0トン/時であった。
<比較例2>
比較例1と同じ装置および条件で、鉄粉層の厚みは40mmで行った。
この結果、仕上げ熱処理した鉄粉の各種濃度は、炭素濃度:0.009mass%、酸素濃度:0.28mass%、窒素濃度:0.021mass%であった。このときの生産量は、3.6トン/時であった。
<比較例3>
図2に示した装置を用い、比較例1と同じ基本条件で実施した。但し、装置上の制約から、水素ガス供給量:200m/時を120m/時に、水蒸気の添加量:30kg/時を20kg/時に、鉄粉層の幅:1000mmを600mmに、それぞれ変更している。また、鉄粉層の厚みは30mmで行った。
この結果、仕上げ熱処理した鉄粉の各種濃度は、炭素濃度:0.010mass%、酸素濃度:0.30mass%、窒素濃度:0.022mass%であった。このときの生産量は、3.1トン/時であった。
以上の結果より、本発明は、従来からの方法に比べ、高品質のものを高い生産性の下で製造できることがわかる。
また、従来法と同程度の生産性であれば、品質が格段に向上することが分かる。
本発明は、機械部品などを粉末冶金で製造する産業や磁性材料用などの焼結製品を製造する産業、あるいは化学反応用鉄粉、カイロ用鉄粉、脱酸素剤用鉄粉など粉末のままで使用される鉄粉を製造する産業などにおいて、仕上げ熱処理を行う場合に好適に使用できる。
1 仕切り壁
2 脱炭ゾーン
3 脱酸ゾーン
4 脱窒ゾーン
5 雰囲気ガス供給口(供給雰囲気ガス)
6 雰囲気ガス排出口(排出雰囲気ガス)
7 鉄粉
7a 固形化鉄粉
7b 半固形化鉄粉
8 ホッパ
9 ベルト
10 ホイール
11 ラジアントチューブ
12 水蒸気吹込み管
14 製品タンク
15 水封槽
20 製品粉砕用装置
21 冷却器
22 循環ファン
30 加熱炉
31 炉体
41 ガイド
42 格子
43 引抜き装置
44 脱窒処理後ガス
45 脱酸処理ガス
46 脱酸処理後ガス
47 脱炭処理ガス
48 移動層(焼結前)
49 移動層(焼結後)
50 水平移動手段(エンドレスベルト)
51 第1ゾーン(脱炭ゾーン)
51a 第1ゾーン供給口(雰囲気ガス供給口)
51b 第1ゾーン排出口
52 第2ゾーン(脱酸ゾーン)
52a 第2ゾーン供給口
52b 第2ゾーン排出口
53 第3ゾーン(脱窒ゾーン)
53a 第3ゾーン供給口
53b 第3ゾーン排出口(雰囲気ガス排気口)
54 半固形化手段
55 予備加熱器
56 スチールベルト
57 加熱器
61 処理ガス(脱窒)
62 脱窒処理後ガス
63 脱酸処理ガス
64 脱酸処理後ガス
65 脱炭処理ガス
66 処理後ガス(脱炭)

Claims (11)

  1. 鉄粉を仕上げ熱処理するにあたり、該鉄粉を水平に移動させる移動層を形成し、該移動層に対して所定の処理ガスを通過させるに際し、該処理ガスを移動層の上方から下方に通過させることを特徴とする鉄粉の仕上げ熱処理方法。
  2. 前記移動層について複数のゾーンに区画された加熱炉内を水平移動させる間に、各ゾーンごとに該移動層に対し、個別の処理ガスを通過させることを特徴とする請求項1に記載の熱処理方法。
  3. 前記複数のゾーンが、前記移動層の移動方向に順に、脱炭ゾーン、脱酸ゾーン、脱窒ゾーンとして区分されていることを特徴とする請求項1または2に記載の熱処理方法。
  4. 前記処理ガスを、移動層に供給するに先立ち、予め昇温しておくことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱処理方法。
  5. 前記処理ガスを、各区画の下流側から上流側に向けて連続して流通させることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱処理方法。
  6. 鉄粉を仕上げ熱処理する装置であって、該鉄粉を該装置に供給するホッパと、該鉄粉を熱処理する内部が複数のゾーンに区分された加熱炉と、該鉄粉を水平に移動する手段を有し、上記加熱炉は、各ゾーン毎に加熱手段と処理ガスの供給口と排出口をそれぞれ備え、上記水平に移動する手段は、鉄粉を載置し、かつ該処理ガスの通過を妨げない鉄粉の載置面を備えることを特徴とする鉄粉の仕上げ熱処理装置。
  7. 前記処理ガスの供給口を、前記水平に移動する手段の上方に、前期処理ガスの排出口を、前記水平に移動する手段の下方に設けたことを特徴とする請求項6に記載の鉄粉の仕上げ熱処理装置。
  8. 前記水平に移動する手段が、メッシュ状のエンドレスベルト、またはメッシュ状の鉄粉受け面をそなえる台車であることを特徴とする請求項6または7に記載の鉄粉の仕上げ熱処理装置。
  9. 前記加熱炉に、前記処理ガスを加熱する手段を設けたことを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の鉄粉の仕上げ熱処理装置。
  10. 下流側の処理ガス排出口と上流側の処理ガス供給口を連通し、内部が複数のゾーンに区分された前記加熱炉に、下流側ゾーンの排出口から排出された処理ガスを、上流側ゾーンの処理ガス供給口に供給する手段を設けたことを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の鉄粉の仕上げ熱処理装置。
  11. 前記ホッパから前記加熱炉までの間に鉄粉の半固形化手段を設けたことを特徴とする請求項6〜10のいずれかに記載の鉄粉の仕上げ熱処理装置。
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