JP2010153374A - 高分子電解質架橋物、その製造方法及びそれを用いた燃料電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】工業生産に有利なプロセスで実施可能であり、膜電極接合体の製造に係る皺の発生を十分防止することができ、燃料電池の良好な耐久性を発現できる高分子電解質架橋物の膜を与えうる高分子電解質架橋物及びその製造方法を提供することにある。
【解決手段】スルホン酸基を有する第1の芳香族系高分子電解質と、ホスホン酸基を有する第2の芳香族系高分子電解質と、を含む高分子電解質組成物を架橋処理して得られる高分子電解質架橋物。
【選択図】なし

Description

本発明は、高度の機械物性と、高水準のプロトン伝導性とを両立できる高分子電解質架橋物に関する。さらに該高分子電解質架橋物の製造方法及びその用途に関する。
近年、住宅や自動車の動力などのエネルギーデバイスとして、固体高分子形燃料電池(以下、場合により「燃料電池」という)が注目されている。該燃料電池に用いる高分子電解質膜は、高いプロトン伝導性に加えて、化学的、熱的及び機械的に耐久性が高いことが重要視されており、さらに廉価であることも求められている。このような観点から、該高分子電解質膜として、炭化水素系高分子電解質からなる膜(炭化水素系高分子電解質膜)の開発が近年活発化している。
該炭化水素系高分子電解質膜としては、芳香族ポリエーテルにスルホン酸基を導入した高分子電解質が主として検討されており、例えば、スルホン化ポリエーテルケトン等(例えば、非特許文献1参照)、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン等例えば、特許文献1参照)からなる高分子電解質膜が提案されている。しかしながら、これらの炭化水素系高分子電解質膜は、より高度のプロトン伝導度を求めて、炭化水素系高分子電解質中のスルホン酸基含有量を増加させる、すなわち高分子電解質膜のイオン交換容量を上げようとすると、高分子電解質膜自体が吸水し易くなって、燃料電池の作動/停止による、高分子電解質膜の吸湿、乾燥に伴う寸法変化(乾湿変動による面内寸法変化率)が大きくなり、燃料電池の安定的作動には不利になる傾向があった。また、このように乾湿変動による面内寸法変化率が大きい高分子電解質膜では、当該高分子電解質膜に電極触媒層(触媒層)を設けて、膜電極接合体を製造しようとすると、膜表面にしわが発生して良好な性状の膜電極接合体を得ることが困難になるという問題もあった。このように、高度なプロトン伝導度を有しながらも、燃料電池の安定的作動に寄与する程度に面内寸法変化率を低くする、すなわち高分子電解質膜の耐水性を高めることは通常困難であった。高分子電解質膜の耐水性を高めるために、該高分子電解質中の高分子電解質を架橋する方法が有効であることが知られている。例えば特許文献2には、カルボニル基及びアルキル基といった架橋基を有する芳香族系高分子電解質を用い、光、熱あるいは電子線の作用により該架橋基にラジカルを発生させ、このラジカルによって該芳香族系高分子電解質を架橋する技術も提案されている。
Polymer,1987,vol.28,1009. 特開平10−021943号公報 特開2004−026889号公報
しかしながら、特許文献2に記載されたような芳香族系高分子電解膜は、ラジカルを発生し易い架橋基を有しているので、燃料電池作動中に発生する過酸化物等の作用により劣化し易いという不都合を有している。また、特許文献2で用いられているような光架橋は、しばしば大掛かりな設備を要するものであり、工業生産には不利な面もあった。
そこで、本発明の目的は、工業生産に有利なプロセスで実施可能であり、膜電極接合体の製造に係る皺の発生を十分防止することができる高分子電解質架橋物の膜を与えうる高分子電解質架橋物及びその製造方法を提供することにある。本発明の高分子電解質架橋物は、皺の発生を十分防止することができるため、良好な耐久性を有する燃料電池を実現できる。
本発明者らは、上記の事情に鑑み、鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の架橋物は、スルホン酸基を有する第1の芳香族系高分子電解質と、ホスホン酸基を有する第2の芳香族系高分子電解質とを含む高分子電解質組成物を架橋処理して得られる高分子電解質架橋物である。
また、本発明の製造方法は、スルホン酸基を有する第1の芳香族系高分子電解質と、ホスホン酸基を有する第2の芳香族系高分子電解質と、を含む高分子電解質組成物を架橋処理する工程を備える。
ここで、第1の芳香族系高分子電解質が、イオン交換基を有さない式(1a)で表されるブロックと、スルホン酸基を有する式(1b)で表されるブロックと、を有するブロック共重合体であることが好ましい。
Figure 2010153374

Figure 2010153374

式(1a)中、Ar及びArは置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、Zは酸素原子又は硫黄原子を表し、Xはカルボニル基又はスルホニル基を表し、mは5以上の整数を表わす。m個ある、Ar、Ar、X及びZは、互いに同じであっても異なっていてもよい。
式(1b)中、Arは置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、nは5以上の整数を表わす。n個あるArは互いに同じであっても異なっていてもよい。
また、第2の芳香族系高分子電解質が、式(2a)で表される繰り返し単位と、式(2b)で表される繰り返し単位とを有する共重合体であることが好ましい。
Figure 2010153374

Figure 2010153374

式中、Ar11及びAr12は互いに独立に置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、X’はカルボニル基又はスルホニル基を表し、Z’は酸素原子又は硫黄原子を表す。
Ar13は置換基を有していていもよいフェニレン基を表す。kは1又は2を表し、k個あるAr13には少なくとも1つのホスホン酸基(−PO)を有する。
また、高分子電解質組成物は、第1の芳香族系高分子電解質と第2の芳香族系高分子電解質との重量比が、[第1の芳香族系高分子電解質]/[第2の芳香族系高分子電解質]で表して、0.99/0.01〜0.50/0.50であることが好ましい。
また、高分子電解質架橋物は、第1の芳香族系高分子電解質を可溶である溶媒に浸漬させたときの不溶物が50重量%以上であることが好ましい。また、高分子電解質架橋物は膜であることが好ましい。
また、上述の製造方法において、高分子電解質組成物は膜の形態を有することが好ましい。これにより、高分子電解質架橋物を好適な膜として製造することが可能であり、表面平滑性に優れる膜が製造しやすい。
また、第1の芳香族系高分子電解質及び第2の芳香族系高分子電解質及び溶媒を含有する溶液組成物をキャスト製膜することにより膜の形態を有する高分子電解質組成物を製造する工程をさらに備えることが好ましい。これにより、好適に高分子電解質組成物の膜を製造できる。
また、高分子電解質組成物を架橋処理する工程では、高分子電解質組成物を加熱することが好ましく特に、高分子電解質組成物を100℃以上200℃以下の温度で加熱することが好ましい。これにより、架橋処理を再現性よく行なえる。
本発明によれば、工業生産に有利なプロセスで実施可能であり、乾湿変動による面内寸法安定性を十分低くするという耐水性を有する高分子電解質架橋物を得ることができる。
該高分子電解質架橋物から、皺発生を十分防止し、良好な性状の膜電極接合体を得ることができる。それ故、本発明の高分子電解質架橋物は、燃料電池の高分子電解質膜として好適に使用することができ、工業的に極めて有用である。
高分子電解質膜D(熱処理)と、高分子電解質膜C(Ref.)のプロトン伝導度を表すグラフである。
本発明の高分子電解質架橋物は、スルホン酸基を有する第1の芳香族系高分子電解質と、ホスホン酸基を有する第2の芳香族系高分子電解質とを含む高分子電解質組成物を架橋処理してなるものである。
本発明の高分子電解質架橋物を含む膜は、架橋処理された高分子電解質架橋物を製膜すること、又は、架橋処理前の高分子電解質組成物を製膜し、製膜された高分子電解質組成物の膜を架橋処理することにより得ることができる。このとき、表面平滑性に優れた高分子電解質架橋物の膜を得る点から、予め高分子電解質組成物を製膜してから架橋することが好ましい。
以下、スルホン酸基を有する第1の芳香族系高分子電解質、ホスホン酸基を有する第2の芳香族系高分子電解質、これらの芳香族系高分子電解質を含む高分子電解質組成物、当該高分子電解質組成物の製膜及び架橋処理、これらにより得られる高分子電解質架橋物、及びこの高分子電解質架橋物を用いた燃料電池に関し、順次説明する。
<第1の芳香族系高分子電解質>
本発明に適用する第1の芳香族系高分子電解質は、スルホン酸基(−SOH)を有する芳香族系高分子電解質である。なお、該第1の芳香族系高分子電解質中には、部分的に金属イオンやアンモニウムイオンにより塩を形成しているスルホン酸基を有していてもよいが、後述する製膜工程及び架橋工程を行うには、実質的に全てのスルホン酸基が遊離酸の形態であることが好ましい。
なお本発明において、芳香族系高分子電解質とは、高分子の主鎖が芳香族基により構成されてなる、即ち主鎖に芳香環を有する高分子であって、イオン交換基を有するものを意味する。特に高分子の主鎖に脂肪族鎖を有さないものが好ましい。
「主鎖に芳香環を有する高分子」とは、該高分子を構成する分子鎖の中で最長のものを主鎖とみたとき、該主鎖が主として2価の芳香族基から構成されているものである。例えば、主鎖がポリアリーレンのように、芳香環同士が直接連結されているものや、芳香環が2価の基を介して連結し主鎖を構成しているものを意味する。該2価の基としては、オキシ基、チオキシ基、カルボニル基、スルフィニル基、スルホニル基、アミド基(−CO−NH−又は−NH−CO−)、エステル基(−CO−O−又は−O−CO−)、炭酸エステル基(−O−CO−O−)、炭素数1〜4程度のアルキレン基、炭素数2〜4程度のアルケニル基、炭素数2〜4程度のアルキニル基等が挙げられる。中でも芳香環が直接結合で連結しているか、オキシ基、チオキシ基、スルホニル基又はカルボニル基を介して連結していることが好ましい。また前記芳香環を有する基としては、フェニレン基、ナフチレン基、アトラセニレン基、フルオレンジイル基等の2価の芳香族基等が挙げられる。
第1の芳香族系高分子電解質は上記のとおり、スルホン酸基を有するものであるが、このスルホン酸基は、高分子の主鎖を構成している芳香環に直接置換していても、主鎖を構成している芳香環に連結基を介して結合していても、または、それらの組み合わせであってもよい。中でも、該スルホン酸基が芳香族系高分子の主鎖を構成する芳香環に直接置換していると、よりプロトン伝導性に優れる高分子電解質架橋物の膜が得られる傾向がある点で好ましく、また、このような芳香族系高分子電解質は製造し易いという利点もある。
前記第1の芳香族系高分子電解質は、溶媒に可溶なものが好ましい。これは後述する製膜工程において、公知の溶液キャスト法により容易に膜状に成形することができるためである。なお、ここでいう溶媒に関しては後述する。
前記第1の芳香族系高分子電解質のスルホン酸基の導入量は、単位重量当たりのスルホン酸基当量数、すなわちイオン交換容量(以下、場合により「IEC」という)で表して、0.5meq/g以上であることが好ましく、1.0meq/g以上であればさらに好ましく、1.5meq/g以上であれば特に好ましい。またIECは、6.0meq/g以下であることが好ましく、4.5meq/g以下であればさらに好ましく、3.5meq/g以下であれば特に好ましい。IECがこのような範囲である第1の芳香族系高分子電解質は、本発明の高分子電解質架橋物がより高度の耐水性とより高水準のプロトン伝導性との両立を可能にするため好ましい。
かかる第1の芳香族系高分子電解質の代表例としては、ポリフェニレン、ポリナフチレン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリイミド、ポリフェニレン、ポリ((4−フェノキシベンゾイル)−1,4−フェニレン)、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニルキノキサレン等の芳香族系高分子のそれぞれにスルホン酸基が導入されたもの、スルホアリール化ポリベンズイミダゾール、スルホアルキル化ポリベンズイミダゾール等を挙げることができる。また、前記芳香族系高分子を構成する構造単位を複数種有するような共重合体にスルホン酸基が導入されたものであってもよい。
前記第1の芳香族系高分子電解質としては、より機械強度に優れた高分子電解質架橋物が得られるという観点から、スルホン酸基を有する構造単位に加えて、スルホン酸基等のイオン交換基を有さない構造単位とを併せて有する芳香族系高分子電解質が好ましい。かかる芳香族系高分子電解質の共重合様式は、交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合の何れでもよい。ランダム共重合体としては例えば、特開平11−116679号公報に記載されているような芳香族系高分子電解質が例示される。
ブロック共重合体としては、スルホン酸基を有するブロックと、スルホン酸基等のイオン交換基を実質的に有さないブロックとをそれぞれ一つ以上有するブロック共重合体が例示される。なお、このブロック共重合体において、「スルホン酸基を有するブロック」とは、当該ブロックを構成する構造単位1個当たり、スルホン酸基が0.5個以上であるブロックを意味し、1.0個以上であるとさらに好ましい。また、「イオン交換基を実質的に有さないブロック」とは、当該ブロックを構成する構造単位1個当たり、イオン交換基が0.1個以下であるブロックを意味し、0.05個以下であるとさらに好ましく、0個(すなわち、イオン交換基が皆無)であると特に好ましい。このようなブロック共重合体の具体的な例としては、特開2001−250567号公報に記載のスルホン化された芳香族ポリマーブロックを有するブロック共重合体、特開2003−31232号公報、特開2004−359925号公報、特開2005−232439号公報、特開2003−113136号公報等の特許文献に記載の、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホンを主鎖構造とし、スルホン酸基を有するブロックを有するブロック共重合体を挙げることができる。
中でも好適な第1の芳香族系高分子電解質は上述のブロック共重合体である。かかる原因は必ずしも明らかではないが、本発明者等は次のように推定する。すなわち、第1の芳香族系高分子電解質は、本発明の高分子電解質架橋物において主としてプロトン伝導性に寄与するものであると推定される。そして、該第1の芳香族系高分子電解質が、このようなブロック共重合体であると、高分子電解質架橋物中でスルホン酸基を有するブロックの密度がイオン交換基を実質的に有さないブロックの密度よりも高いドメインと、スルホン酸基を有するブロックの密度がイオン交換基を実質的に有さないブロックの密度よりも低いドメインとを含むミクロ相分離構造を形成し、前者のドメインが好適なプロトン伝導性を発現し易くなるためと推定される。
好適な第1の芳香族系高分子電解質であるブロック共重合体の中でも、イオン交換基を有さない式(1a)で表されるブロックと、スルホン酸基を有する式(1b)で表されるブロックとを有するブロック共重合体が特に好ましい。
Figure 2010153374

Figure 2010153374

式(1a)中、Ar及びArは置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、Zは酸素原子又は硫黄原子を表し、Xはカルボニル基又はスルホニル基を表し、mは5以上の整数を表わす。m個ある、Ar、Ar、X及びZは互いに同じであっても異なっていてもよい。
式(1b)中、Arは置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、nは5以上の整数を表わす。n個あるArは互いに同じであっても異なっていてもよい。
このようなブロック共重合体、及びその製造方法については、特開2007−177197号公報等に記載されている。
前記式(1b)で表されるブロックにおいて、nは当該ブロックの平均重合度を表し、5〜1000の範囲が好ましく、さらに好ましくは10〜1000であり、特に好ましくは20〜500である。nがこのような範囲であると、本発明の高分子電解質架橋物が実用的に十分なプロトン伝導性が発現されやすく、当該ブロックの製造がより容易であるという点で有利である。
一方、mはスルホン酸基(イオン交換基)を有さないブロックに係る重合度を表し、5〜1000の範囲が好ましく、さらに好ましくは10〜1000であり、特に好ましくは20〜500である。mがこの範囲であると、本発明の高分子電解質架橋物が、より機械強度に優れる傾向があり、当該ブロックの製造がより容易であるという点で有利である。
また、nとmの値は、上述の好ましいIECを実現できるようにして最適化することが好ましく、その製造方法についても特開2007−177197号公報に記載されている。
前記第1の芳香族系高分子電解質の分子量は、GPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)法によるポリスチレン換算の数平均分子量で表して、5000〜1000000が好ましい。当該数平均分子量の下限としては10000以上、とりわけ20000以上が好ましく、一方、上限としては500000以下、とりわけ300000以下が好ましい。
<第2の芳香族系高分子電解質>
本発明に適用する第2の芳香族系高分子電解質は、ホスホン酸基(−PO)を有する芳香族系高分子電解質である。なお、該第2の芳香族系高分子電解質中には、部分的に金属イオンやアンモニウムイオンにより塩を形成しているホスホン酸基を有していてもよいが、後述する製膜工程及び架橋工程を行うには、実質的に全てのホスホン酸基が遊離酸の形態であることが好ましい。
なお、芳香族系高分子電解質に関しては、上記第1の芳香族系高分子で説明した通りであり、第2の芳香族系高分子電解質においては、第1の芳香族系高分子電解質のスルホン酸基をホスホン酸基に置き換えてなるものを例示することができる。
第2の芳香族系高分子電解質においても、ホスホン酸基は、高分子の主鎖を構成している芳香環に直接結合していても、芳香環に連結基を介して結合していても、または、それらの組み合わせであってもよい。中でも、芳香族系高分子の主鎖を構成する芳香環に直接結合している場合が、ホスホン酸基の化学的安定性が良好になり、本発明の高分子電解質物の耐熱性がより良好になるという点も好ましい。
かかる第2の芳香族系高分子電解質の代表例としては、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリイミド、ポリフェニレン、ポリ((4−フェノキシベンゾイル)−1,4−フェニレン)、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニルキノキサレン等の重合体のそれぞれにホスホン酸基が導入されたもの、ホスホアルキル化ポリベンズイミダゾール(例えば、特開平9−110982号公報)、ホスホン化ポリ(フェニレンエーテル)(例えば、J. Appl. Polym. Sci., 18, 1969 (1974))等を挙げることができる。
中でも第2の芳香族系高分子電解質としては、式(2a)で表される構造単位と、式(2b)で表される構造単位とを有する共重合体が好ましい。
Figure 2010153374

Figure 2010153374

式中、Ar11及びAr12は互いに独立に置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、X’は−CO−又は−SO−を表し、Z’は−O−又は−S−を表す。kは1又は2を表し、k個あるAr13には少なくとも1つのホスホン酸基を有する。
このような芳香族系高分子電解質及びその製造方法については、特開2003−238678号公報等に記載されている。
式(2a)で表される構造単位と式(2b)で表される構造単位との共重合比は、これらの構造単位の合計に対する式(2b)で表される構造単位のモル比率で表して、0.01以上0.99以下であると好ましく、0.05以上0.50以下がより好ましく、0.10以上0.40以下がさらに好ましく、0.15以上0.30以下であると特に好ましい。式(2b)で表される構造単位のモル比率が0.05以上であると、本発明の高分子電解質架橋物が、より高度のプロトン伝導性を有しつつ、極めて化学耐久性に優れるという利点がある。一方、式(2b)で表される構造単位のモル比率が0.50以下であれば、後述する製膜工程がより容易となる面で好ましい。このような式(2a)で表される構造単位と式(2b)で表される構造単位との共重合比を満たす第2の芳香族系高分子電解質を製造する方法に関しても、前記特開2003−238678号公報に記載されている。
前記第2の芳香族系高分子電解質の分子量は、GPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)法によるポリスチレン換算の数平均分子量で表して、5000〜1000000が好ましい。当該数平均分子量の下限としては10000以上、とりわけ20000以上が好ましく、一方、上限としては500000以下、とりわけ300000以下が好ましい。
<高分子電解質組成物>
本発明の高分子電解質架橋物の製造に用いられる高分子電解質組成物は、前記第1の芳香族系高分子電解質と前記第2の芳香族系高分子電解質とを含む組成物であり、これらを混合して調製することができる。以下、この前記第1の芳香族系高分子電解質と前記第2の芳香族系高分子電解質を総じて、「2種の芳香族系高分子電解質」ということがある。
具体的な、前記高分子電解質組成物の調製方法としては、前記第1の芳香族系高分子電解質と前記第2の芳香族系高分子電解質とを共に粉体状にしておき、これら2種の粉体状高分子電解質を混合する方法、前記第1の芳香族系高分子電解質と前記第2の芳香族系高分子電解質とを溶媒に溶解して溶液組成物にして十分に混合した後、該溶液組成物から該溶媒を除去する方法等が例示される。混合を良好に行なう観点からは、溶媒を用いて混合し、その後溶媒を除去することが好ましい。
溶媒としては、第1の芳香族系高分子電解質及び第2の芳香族系高分子電解質を共に溶解するものが好適である。このような溶媒としては、例えばN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル等が挙げられる。これらは単独で用いることもできるが、必要に応じて2種以上の溶媒を混合して用いることもできる。なお、前記した第1の芳香族系高分子電解質や第2の芳香族系高分子電解質が溶媒に可溶であるとは、ここに例示した溶媒のいずれか1種に温度25℃で0.5g/L以上の濃度で溶解し得ることを意味するものである。
例示した溶媒の中でも、2種の芳香族系高分子電解質を溶解し易い点と、前記溶液組成物から溶媒を除去し易い点を勘案すると、DMF、DMAc、NMP、DMSO又はこれらから選ばれる2種以上の混合溶媒が好ましい。
好適な第1の芳香族系高分子電解質である、式(1a)で表されるブロックと式(1b)で表されるブロックとを有するブロック共重合体、好適な第2の芳香族系高分子電解質である、式(2a)で表される構造単位と式(2b)で表される構造単位とからなる共重合体を用いた場合、DMF、DMAc、NMP、DMSO又はこれらから選ばれる2種以上の混合溶媒は、特に好適な溶媒といえる。
本発明に適用する高分子電解質組成物における第1の芳香族系高分子電解質と第2の芳香族系高分子電解質との重量比は、[第1の芳香族系高分子電解質]/[第2の芳香族系高分子電解質]で表して、0.99/0.01〜0.50/0.50の範囲が好ましい。第2の芳香族系高分子電解質の重量比が1重量%以上であれば、後述する架橋工程による架橋が十分進行しやすいため好ましく、第1の芳香族系高分子電解質の重量比が50重量%以上であれば、高分子電解質架橋物のプロトン伝導性が燃料電池用として十分なものとなりやすいため好ましい。なお、第2の芳香族系高分子電解質の重量比としては、2重量%以上がさらに好ましく、5重量%以上であれば特に好ましい。第1の芳香族系高分子電解質の重量比としては、70重量%以上がさらに好ましく、85重量%以上であれば特に好ましい。
架橋処理前の高分子電解質組成物の形状は特に限定されない。塊状、膜の形態等が挙げられる。
<高分子電解質架橋物の製造方法>
以下、本発明の高分子電解質架橋物の好適な製造方法として、該高分子電解質架橋物を膜として得る方法を中心に説明する。
該製造方法において、高分子電解質組成物を製膜して高分子電解質組成物の膜を得、得られた高分子電解質組成物の膜に対して後述する架橋処理を行なう方法がさらに好ましい。このように、予め高分子電解質組成物の膜を得ておくと、表面平滑性の高い高分子電解質架橋物の膜を得ることができる。
<高分子電解質組成物の製膜工程>
高分子電解質組成物の製膜方法は特に限定されないが、2種の芳香族系高分子電解質及び上記溶媒を含む上記の溶液組成物を用いてキャスト製膜することが好ましく、これにより、第1の芳香族系高分子電解質と第2の芳香族系高分子電解質とを含む高分子電解質組成物の膜を好適に製造することができる。キャスト製膜とは、支持体上に溶液組成物を塗布し、その後溶媒を除去する工程を含む方法である。
ここで、キャスト製膜する場合の、前記溶液組成物中の高分子電解質の濃度は、使用する芳香族系高分子電解質の分子量にもよるが、該溶液組成物の総重量に対する第1の芳香族系高分子電解質と第2の芳香族系高分子電解質との合計重量の重量濃度で表して、通常5〜40重量%、好ましくは5〜30重量%である。このような溶液組成物によれば、実用的な膜厚の高分子電解質組成物の膜が得られ易く、溶液組成物自体の溶液粘度も充分低くなって取扱性に優れるという利点がある。
キャスト製膜する場合の高分子電解質組成物の膜の厚み(膜厚)は、5〜200μmが好ましく、さらに好ましくは8〜60μmであり、特に好ましくは15〜50μmである。このような膜厚の高分子電解質組成物の膜は後述する架橋処理を行ったとしても破断が生じる等の不都合が生じ難い。また、このような膜厚の高分子電解質組成物の膜は、キャスト製膜において、前記溶液組成物中の芳香族系高分子電解質の重量濃度あるいは支持基材上への塗布厚を調節することにより容易に製造できるので好ましい。
前記キャスト製膜に用いる支持基材は、使用する溶液組成物により、膨潤あるいは溶解することなく、かつ製膜後に得られる高分子電解質組成物の膜が剥離し得るものであるならば特に制限は無く、例えばガラス板、ステンレス箔、ステンレスベルト、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等が好適に用いられる。該支持基材の表面は必要に応じ離型処理、鏡面処理、エンボス処理、或いは艶消し処理等を施してもよい。
なお、このようなキャスト製膜に使用する溶液組成物には、続く架橋工程による芳香族系高分子電解質の架橋反応を著しく損なわない範囲で、通常の高分子に使用される可塑剤、安定剤、離型剤等の添加剤を含有させることができる。また、前記溶液組成物は含有される2種の芳香族系高分子電解質によって十分架橋反応を生じさせることができるが、より架橋の度合いを高める目的で、該溶液組成物に適当量の架橋剤を含有させることもできる。
<架橋処理>
かくして得られた高分子電解質組成物を架橋工程に供することで本発明の高分子電解質架橋物を得ることができる。
ここで、架橋工程前の高分子電解質組成物は、予め、溶液組成物の調製に使用した溶媒を、水洗などによりできるだけ除去しておくことが、架橋反応の効率を高める上で好ましい。特に、キャスト法により製膜する場合は特に効果が高い。
該架橋工程に係る架橋処理の方法としては、加熱処理による方法が簡便であり、再現性も得やすいので好ましい。
以下、加熱処理の好ましい条件について説明する。
加熱処理の温度条件は、高分子電解質組成物に含有される第1の芳香族系高分子電解質及び第2の芳香族系高分子電解質が著しく熱分解しないようにして調節することが好ましい。通常、この温度条件は100℃以上が好ましく、120℃以上であればさらに好ましい。また、第1の芳香族系高分子電解質にあるスルホン酸基が熱的に脱離しないようにするためには、該温度条件は低温であることが好ましく、具体的には200℃以下で行うことが好ましく、180℃以下が好ましい。
加熱処理の環境雰囲気としては、2種の芳香族系高分子電解質の酸化劣化や加水分解を良好に防止するようにすることが好ましい。この点から、低湿度条件であることが好ましく、乾燥雰囲気ガス中で加熱処理することが好ましい。酸化劣化を十分防止するためには、雰囲気ガスは窒素等の不活性ガスを用いることが好ましい。
架橋工程における高分子電解質組成物の架橋の度合いは、種々の方法で確認できる。例えばIRやNMR等の分光学的な方法等を用いることもできるが、2種の芳香族系高分子電解質がともに好適な溶媒可溶性のものを使用した場合、得られた高分子電解質架橋物の溶媒に対する溶解性を調べる方法が簡便である。すなわち、架橋工程後の高分子電解質架橋物の溶媒溶解性が大きく低下したことを確認する。例えば、キャスト製膜に用いたキャスト溶媒(溶液組成物の調製に使用した溶媒)と同じ溶媒等の、少なくとも、第1の芳香族系高分子電解質を溶解しうる溶媒を試験溶媒に用い、この試験溶媒に高分子電解質架橋物を浸漬して、当該高分子電解質架橋物が溶解するかどうかを確認すれば、架橋反応の進行の度合いを判定することができる。この場合、当該高分子電解質架橋物を該浸漬溶媒に浸漬する際の温度は25℃程度で、その浸漬時間は2時間程度とする試験条件が採用される。試験溶媒に対する高分子電解質架橋物の溶解性で、架橋反応の進行度合いを判定する場合、浸漬前の高分子電解質架橋物の乾燥重量に対する、試験溶媒に対して不溶である不溶物の重量の割合が指標となる。この割合が50重量%以上であると架橋反応が十分進行したといえる。さらに、この割合は70重量%以上であるとさらに好ましく、90重量%以上であると特に好ましい。
なお、架橋工程後の高分子電解質架橋物は、適宜、水洗や追加乾燥などを行ってもよい。このような水洗あるいは追加乾燥は、本発明の高分子電解質架橋物から燃料電池を製造するうえで好適である。
また、膜である高分子電解質組成物を架橋処理すると膜である高分子電解質架橋物が得られるが、膜でない高分子電解質組成物を架橋処理した後の高分子電解質架橋物をスライス等することによっても高分子電解質架橋物の膜を製造することができる。
このようにして得られた高分子電解質架橋物の膜は、後述する燃料電池用のプロトン伝導性膜として、吸水寸法安定性とプロトン伝導性を高度な水準で両立することができる。
<膜電極接合体及び燃料電池>
次に、本発明の高分子電解質架橋物の膜を用いてなる燃料電池について説明する。
該燃料電池は、該高分子電解質架橋物の膜の両面の各々に、触媒層を接合した膜電極接合体を基本単位とするものであり、さらに該膜電極接合体にある触媒層の各々に集電体としての導電性物質を接合することにより燃料電池を製造することができる。
該触媒層に含有される触媒物質としては、水素又は酸素との酸化還元反応を活性化できるものであれば特に制限はなく、公知のものを用いることができるが、白金又は白金合金の微粒子を用いることが好ましい。白金又は白金合金の微粒子は、活性炭や黒鉛などの粒子状又は繊維状のカーボンに担持されて用いることが好ましい。
集電体としての導電性物質に関しても公知の材料を用いることができるが、多孔質性のカーボン不織布またはカーボンペーパーが、原料ガスを触媒へ効率的に輸送するために好ましい。
多孔質性のカーボン不織布又はカーボンペーパーに、白金又は白金合金の微粒子、あるいは白金又は白金合金の微粒子を担持したカーボンを接合させる方法、及びそれを高分子電解質膜と接合させる方法については、例えば、J. Electrochem. Soc.: Electrochemical Science and Technology, 1988, 135(9), 2209 に記載されている方法等の公知の方法に準拠し、この方法の高分子電解質膜を本発明の高分子電解質架橋物の膜に置き換えて実施することができる。かかる方法によって、該高分子電解質架橋物の膜の両面に触媒層を形成した場合においても、当該高分子電解質架橋物の膜には皺等の外観異常が発生しにくく、良好な性状の膜電極接合体を得ることができる。
かくして得られた燃料電池は、高分子電解質架橋物の膜自体が、高水準のプロトン伝導度と耐水性を有するため、発電性能に優れ、電池の作動/停止に伴う作動安定性に優れるものであり、実用的な燃料電池を提供できる。
以上、燃料電池に使用する好適な形態である高分子電解質架橋物の膜の製造方法を説明したが、本発明の高分子電解質架橋物は別の形態であってもよい。たとえば、前記高分子電解質組成物を塊状で得てから、この塊状の高分子電解質組成物を加熱処理することで架橋させてもよいし、前記高分子電解質組成物を溶液組成物として得、該溶液組成物を加熱処理して、該溶液組成物中に含有される高分子電解質組成物を架橋させてもよい。なお、溶液組成物から高分子電解質架橋物を製造する場合、該高分子電解質架橋物は沈殿物として得られるので、該沈殿物をろ過等により回収すればよい。
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
[電解質膜の評価方法]
(1)イオン交換容量(IEC)
測定に供する膜を、加熱温度105℃に設定されたハロゲン水分率計を用いて秤量し、乾燥重量を求めた。次いで、この膜を0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液5mLに浸漬した後、更に50mLのイオン交換水を加え、2時間放置した。
その後、この膜が浸漬された溶液に、0.1mol/Lの塩酸を徐々に加えることで滴定を行い、中和点を求めた。そして、膜の乾燥重量と上記の中和に要した塩酸の量から、イオン交換容量(単位:meq/g)を算出した。
(2)プロトン伝導度の測定
温度80℃、所定の相対湿度の条件で、交流インピーダンス法で測定した。単位はS/cmである。
(3)分子量の測定
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、下記条件でポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)を測定した。
GPC測定装置 東ソー製 HLC−8220
カラム 東ソー製 TSKgel GMHHR−M
カラム温度 40℃
溶媒流量 0.5mL/min
なお、移動相(溶離液)としては以下のいずれかを用いて測定した。
(分析条件1)
移動相 DMF(LiBrを10mmol/dmになるように添加)
検出器 示差屈折率計
(分析条件2)
移動相 DMAc(LiBrを10mmol/dmになるように添加)
検出器 フォトダイオードアレイ紫外線吸収 300nm
(4)乾湿寸法安定性試験
被験膜の方形切片を常温・常湿雰囲気下で寸法が安定するまで静置した後、辺の長さLを測定した。
次に、その被験膜を80℃の水中に1時間浸漬した後、辺の長さLwを測定した。
次に、その被験膜を真空中60℃で1時間乾燥した後、辺の長さLdを測定した。
湿潤時の寸法変化率 Δw(%)=100×(Lw−L)/L
乾燥時の寸法変化率 Δd(%)=100×(Ld−L)/L
これらΔw、Δdの値が小さく、またΔwとΔdの差が小さいほど、乾湿寸法安定性が高いことを意味する。
製造例1(第1の高分子電解質の製造)
特開2007−284653号公報の実施例に記載の製造方法と同様にして、遊離酸の形で式(A)で表されるスルホン酸基含有のポリマーを得た。このポリマーを以下、高分子電解質Aと称す。
この高分子電解質Aの熱分解温度は、200℃以上であった。
Figure 2010153374

式中、blockとは、ブロック共重合体であることを表す。
IEC 2.5meq/g
Mn 1.7×10
Mw 3.4×10(分析条件1で測定)
製造例2(第2の高分子電解質の製造)
特開2006−066391号公報の段落0058〜段落0059に記載されたAD−2の製造方法と同様にして、遊離酸の形で式(B)で表されるホスホン酸基含有のポリマーを得た。以下、高分子電解質Bと称す。
この高分子電解質Bの熱分解温度は、200℃以上であった。
Figure 2010153374

式中、ホスホン酸基はビフェニル構造に置換している。
また、式中、ranとは、ランダム共重合体であることを表す。
該ビフェニル構造1つ当たりのホスホン酸基の平均置換数は、r=1.6。
Mn 1.0×10
Mw 1.5×10(分析条件2で測定)
製造例3(高分子電解質膜の製造)
前記の製造例で得られた高分子電解質Aと高分子電解質Bとを、重量比90:10で配合し、DMSOに溶解して溶液組成物を調製した。この溶液組成物をポリエチレンテレフタレートフィルム上に流延塗布し、常温乾燥して、厚み19μmの高分子電解質組成物の膜を得た。この高分子電解質組成物の膜を以下、高分子電解質膜Cと称す。
実施例1(高分子電解質架橋物の膜の製造)
得られた高分子電解質膜Cを、120℃に設定した恒温槽内で48時間保温して加熱処理し、高分子電解質架橋物の膜を得た。この高分子電解質架橋物の膜を以下、高分子電解質膜Dと称す。なお、この高分子電解質膜CをDMSOに浸漬実験に供したところ、不溶物の割合は90重量%以上であった。
比較例1
加熱処理していない高分子電解質膜Cを用いた。この高分子電解質膜Cは架橋処理を行っていないので、DMSOには可溶の膜となる。
比較例2
高分子電解質Bを用いないことを除き、製造例3と同様にして、高分子電解質Aのみからなる高分子電解質膜Eを得た。厚みは20μmであった。
比較例3
高分子電解質膜Eを実施例1と同じ条件で加熱処理し、高分子電解質膜Fを得た。
前記の実施例1及び比較例1〜3で得られた膜に関し、前記した乾湿寸法安定性試験を行った。その結果を表1に示す。
また、実施例、比較例で得られた膜に、スプレー塗工によるMEA作製時の皺発生の有無(目視判定)とキャスト溶媒であるDMSOへの再溶解試験の結果を表2に示す。
さらに、実施例1で得られた高分子電解質膜D(熱処理)と、比較例1で用いた高分子電解質膜C(Ref.)に関し、相対湿度を40%、60%及び90%としたときのプロトン伝導度の測定結果を図1に示した。
Figure 2010153374
Figure 2010153374
表1および2より、第1の芳香族系高分子電解質と第2の芳香族系高分子電解質を配合した高分子電解質組成物の膜を架橋処理した高分子電解質架橋物の膜においてのみ、乾湿条件の変動に対して高度な寸法安定性を実現できること、並びに触媒層塗工時に皺発生の無い膜電極接合体が得られることが判明した。また図1より、本願発明である熱処理した膜は、熱処理しない膜よりもプロトン伝導性に優れることが判明した。

Claims (13)

  1. スルホン酸基を有する第1の芳香族系高分子電解質と、ホスホン酸基を有する第2の芳香族系高分子電解質と、を含む高分子電解質組成物を架橋処理して得られる高分子電解質架橋物。
  2. 前記第1の芳香族系高分子電解質が、イオン交換基を有さない式(1a)で表されるブロックと、スルホン酸基を有する式(1b)で表されるブロックと、を有するブロック共重合体である請求項1記載の高分子電解質架橋物。
    Figure 2010153374

    Figure 2010153374

    (式(1a)中、Ar及びArは置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、Zは酸素原子又は硫黄原子を表し、Xはカルボニル基又はスルホニル基を表し、mは5以上の整数を表わす。m個ある、Ar、Ar、X及びZは、互いに同じであっても異なっていてもよい。式(1b)中、Arは置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、nは5以上の整数を表わす。n個あるArは互いに同じであっても異なっていてもよい。)
  3. 前記第2の芳香族系高分子電解質が、式(2a)で表される繰り返し単位と、式(2b)で表される繰り返し単位とを有する共重合体である請求項1又は2に記載の高分子電解質架橋物。
    Figure 2010153374

    Figure 2010153374

    (式中、Ar11及びAr12は互いに独立に置換基を有していてもよいフェニレン基を表し、X’はカルボニル基又はスルホニル基を表し、Z’は酸素原子又は硫黄原子を表す。Ar13は置換基を有していていもよいフェニレン基を表す。kは1又は2を表し、k個あるAr13には少なくとも1つのホスホン酸基(−PO)を有する。)
  4. 前記高分子電解質組成物は、前記第1の芳香族系高分子電解質と前記第2の芳香族系高分子電解質との重量比が、[第1の芳香族系高分子電解質]/[第2の芳香族系高分子電解質]で表して、0.99/0.01〜0.50/0.50である請求項1〜3の何れか一項に記載の高分子電解質架橋物。
  5. 前記第1の芳香族系高分子電解質を可溶である溶媒に浸漬させたときの不溶物が50重量%以上である請求項1〜4の何れか一項に記載の高分子電解質架橋物。
  6. 膜である請求項1〜5の何れか一項に記載の高分子電解質架橋物。
  7. スルホン酸基を有する第1の芳香族系高分子電解質と、ホスホン酸基を有する第2の芳香族系高分子電解質と、を含む高分子電解質組成物を架橋処理する工程を備える高分子電解質架橋物の製造方法。
  8. 前記高分子電解質組成物は膜の形態を有する請求項7記載の高分子電解質架橋物の製造方法。
  9. 前記第1の芳香族系高分子電解質及び前記第2の芳香族系高分子電解質及び溶媒を含有する溶液組成物をキャスト製膜することにより前記膜の形態を有する高分子電解質組成物を製造する工程をさらに備える前記請求項8に記載の高分子電解質架橋物の製造方法。
  10. 前記高分子電解質組成物を架橋処理する工程では、前記高分子電解質組成物を加熱する請求項7〜9のいずれか記載の高分子電解質架橋物の製造方法。
  11. 前記高分子電解質組成物を架橋処理する工程では、前記高分子電解質組成物を100℃以上200℃以下の温度で加熱する請求項7〜9のいずれか記載の製造方法。
  12. 請求項6に記載の膜である高分子電解質架橋物と電極とを備える膜電極接合体。
  13. 請求項12記載の膜電極接合体を有する固体高分子形燃料電池。
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