JP2010150336A - 水溶性アゾ化合物又はその塩、これを含有するインク組成物及び着色体 - Google Patents

水溶性アゾ化合物又はその塩、これを含有するインク組成物及び着色体 Download PDF

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光司 広田
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Abstract

【課題】
水に対する溶解性が高く、インクジェット記録に適する色相と、優れた耐オゾンガス性を有する化合物、及び該化合物を含有するインク組成物の提供。
【解決手段】
下記式(1)で表される化合物又はその塩、
【化1】
Figure 2010150336

[式中、nは1乃至11の整数、R1はスルホ基等、R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子;塩素原子;スルホ基;カルボキシ基;スルファモイル基;カルバモイル基;非置換C1−C4アルキル基;非置換C1−C4アルコキシ基;ヒドロキシ基、スルホ基又はカルボキシ基で置換されたC1−C4アルコキシ基;をそれぞれ表す。]。
【選択図】なし

Description

本発明は水溶性のテトラアゾ化合物又はその塩、これを含有するインク組成物、該インク組成物を用いる記録方法、及び該インク組成物により着色された着色体に関する。
各種カラー記録方法の中で、その代表的方法の一つであるインクジェットプリンターによる記録方法、すなわちインクジェット記録方法は、インクの吐出方式が各種開発されているが、いずれもインクの小滴を発生させ、これを種々の被記録材、例えば、紙、フィルム、布帛等に付着させ記録を行うものである。この方法は、記録ヘッドと被記録材とが直接接触しない為、音の発生がなく静かである。また小型化、高速化、カラー化が容易という特長の為、近年急速に普及しつつあり、今後とも大きな伸長が期待されている。従来、万年筆、フェルトペン等のインク及びインクジェット記録用インクとしては、色素として水溶性の染料を水性媒体に溶解したインクが使用されている。これらの水性インクにおいてはペン先やインク吐出ノズルでのインクの目詰まりを防止すべく、一般に水溶性の有機溶剤が添加されている。これらのインクにおいては、十分な濃度の記録画像を与えること、ペン先やノズルの目詰まりを生じないこと、被記録材上での乾燥性がよいこと、滲みが少ないこと、保存安定性に優れること等が要求される。また形成される記録画像には、耐水性、耐湿性、耐光性、及び耐ガス性等の各種堅牢度が求められている。
また水、溶剤や添加剤に対する高い溶解性も色素に求められる性質のひとつである。
ところで、コンピューターのカラーディスプレー上の画像又は文字情報をインクジェットプリンターによりカラーで記録するには、一般にイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクによる減法混色が用いられ、これにより記録画像がカラーで表現される。CRT(ブラウン管)ディスプレー等におけるレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)による加法混色画像を、減法混色画像で出来るだけ忠実に再現するには、インクに使用される各色素、中でもY、M、Cのそれぞれが、標準に近い色相を有し且つ鮮明であることが望まれる。
例えば特許文献8において、7色(Y、M、C、R、G、B、K)インクを用いるインクジェット印刷法が提案されているが、開示された染料は、可溶性基を持たせた建染染料(バット染料)であり、色相、鮮明性、堅牢度などの点から市場の要求を完全に満足するには至っていない。
また、従来インクジェット用インクとして用いられているY、M、Cを予め混合して得られたR、G、B等の各インクを用いた場合であっても、鮮明性に優れた印刷物が得られないという問題がある。
又、インクは長期の保存に対して安定であり、また前記のように記録画像の濃度が高く、しかも記録画像の各種堅牢度に優れている事が求められる。
インクジェットプリンターの用途はOA用小型プリンタから産業用の大型プリンタにまで拡大されてきており、耐水性、耐湿性、耐光性及び耐ガス性等の堅牢度に優れることが、これまで以上に求められている。
耐水性ついては多孔質シリカ、カチオン系ポリマー、アルミナゾル又は特殊セラミックなどインク中の色素を吸着し得る無機微粒子をPVA樹脂などとともに紙の表面にコーティングすることにより、大幅に改良されてきている。
耐湿性とは着色された被記録材を高湿度の雰囲気下に保存した際に、被記録材中の色素が滲んでくるという現象に対する耐性のことである。色素の滲みがあると、特に写真調の高精細な画質を求められる画像においては著しく画像品位が低下するため、できるだけこの様な滲みを少なくする事が重要である。
耐光性については大幅に改良する技術は未だ確立されておらず、その改良が課題の一つとなっている。
又、最近のデジタルカメラの浸透と共に、家庭でも写真画質でのインクジェット記録をする機会が増しており、得られた記録物の保管時における、空気中の酸化性ガスによる画像の変退色も問題視されている。この酸化性ガスは、記録紙上又は記録紙中で色素と反応し、記録された画像を変退色させる。酸化性ガスの中でも、オゾンガスはインクジェット記録画像の変退色現象を促進させる主要な原因物質とされている。この変退色現象はインクジェット画像に特徴的なものであるため、耐オゾンガス性の向上も重要な課題となっている。
テトラアゾ系色素としては、特許文献1乃至7に開示されたものが知られているが、耐オゾンガス性において、市場の要求を満足するものは得られていない。
特許第4055963号公報 特表2007−512393号公報 特表2007−538128号公報 特開昭58−37056号公報 特公平6−43561号公報 特公平5−52867号公報 特開平5−263005号公報 特開2002―241661号公報
本発明は水又は水溶性有機溶剤に対する溶解性が高く、インクジェット記録に適するオレンジ〜レッド〜スカーレットの色相を有し、耐オゾンガス性に優れた化合物、及びこれを含有するインク組成物を提供する事を目的とする。
本発明者等は前記課題を解決すべく、鋭意検討の結果、下記式(1)で表される化合物又はその塩、及びこれを色素として含有するインク組成物が前記課題を解決するものであることを見出し、本発明を完成させたものである。
即ち、本発明は、
1)
下記式(1)で表される化合物又はその塩、
Figure 2010150336
[式(1)中、
nは1乃至11の整数、
1はスルホ基又はカルボキシ基を表し、
2及びR3はそれぞれ独立に水素原子;塩素原子;スルホ基;カルボキシ基;スルファモイル基;カルバモイル基;非置換C1−C4アルキル基;非置換C1−C4アルコキシ基;ヒドロキシ基、スルホ基又はカルボキシ基で置換されたC1−C4アルコキシ基;をそれぞれ表す。]、
2)
2及びR3のいずれか一方が水素原子;塩素原子;非置換C1−C4アルキル基;非置換C1−C4アルコキシ基;又はカルボキシ基;であり、他方がスルホ基;カルボキシ基;スルファモイル基;スルホ基で置換されたC1−C4アルコキシ基;である、上記1)に記載の化合物又はその塩、
3)
1がスルホ基、
2が水素原子、
3がスルホ基である、上記1)又は2)に記載の化合物又はその塩、
4)
式(1)で表される化合物又はその塩が、下記式(2)で表される化合物又はその塩である上記1)に記載の化合物又はその塩、
Figure 2010150336
[式(2)中、nは式(1)におけるのと同じ意味を表す。]、
5)
上記1)乃至4)のいずれか一項に記載の化合物又はその塩を含有するインク組成物、
6)
水溶性有機溶剤をさらに含有する上記5)に記載のインク組成物、
7)
インクジェット記録用である上記5)又は6)に記載のインク組成物、
8)
上記5)乃至7)に記載のインク組成物をインクとして用い、該インクのインク滴を記録信号に応じて吐出させて、被記録材に付着させることにより記録を行うインクジェット記録方法、
9)
被記録材が情報伝達用シートである上記8)に記載のインクジェット記録方法、
10)
情報伝達用シートが普通紙又は多孔性白色無機物を含有するインク受容層を有するシートである上記9)に記載のインクジェット記録方法、
11)
上記5)乃至7)のいずれか1項に記載のインク組成物により着色された着色体、
12)
着色がインクジェットプリンターによりなされた上記11)に記載の着色体、
13)
上記5)乃至7)のいずれか一項に記載のインク組成物を含有する容器が装填されたインクジェットプリンター、
に関する。
本発明の前記式(1)で表される化合物又はその塩を含有するインク組成物は、インクジェット記録においてオレンジ〜レッド〜スカーレットの色相の画像を与え、さらに耐オゾンガス性に極めて優れる。また、本発明の前記式(1)で表される化合物又はその塩は、水や水溶性有機溶剤に対する溶解性に優れる。このため、インク組成物を製造する過程での、例えばメンブランフィルターに対するろ過性が良好という特徴を有する。従って、本発明の化合物又はその塩を含有するインク組成物は、各種記録用、特にインクジェット記録用インクとして極めて有用である。
本発明を詳細に説明する。尚、本明細書においては特に断りがない限り、スルホン酸基及びカルボキシ基などの酸性官能基は遊離酸の形で表す。また、本発明の式(1)で表される化合物又はその塩は、煩雑さを避けるため、「本発明の化合物又はその塩」の両者を含めて、以下「本発明の化合物」と簡略して記載する。
本発明の前記式(1)で表される化合物は、水溶性のテトラアゾ化合物である。
前記式(1)中、nは1乃至11の整数を表す。
前記式(1)中、R1は、スルホ基又はカルボキシ基を表し、スルホ基が好ましい。
前記式(1)中、R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子;塩素原子;スルホ基;カルボキシ基;スルファモイル基;カルバモイル基;非置換C1−C4アルキル基;非置換C1−C4アルコキシ基;ヒドロキシ基、スルホ基又はカルボキシ基で置換されたC1−C4アルコキシ基;を表す。
2及びR3における非置換C1−C4アルキル基としては、直鎖又は分岐鎖のものが挙げられ、直鎖が好ましい。C1−C4アルキル基の具体例としては例えば、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル等の直鎖;イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等の分岐鎖;のものが挙げられる。
2及びR3における非置換C1−C4アルコキシ基としては、直鎖又は分岐鎖のものが挙げられる。具体例としてはメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、n−ブトキシといった直鎖のもの;イソプロポキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ等の分岐鎖のもの;等が挙げられる。
2及びR3における、ヒドロキシ基、スルホ基又はカルボキシ基で置換されたC1−C4アルコキシ基としては、2−ヒドロキシエトキシ、2−ヒドロキシプロポキシ、3−ヒドロキシプロポキシ等のヒドロキシC1−C4アルコキシ基;3−スルホプロポキシ、4−スルホブトキシ等のスルホC1−C4アルコキシ基;カルボキシメトキシ、2−カルボキシエトキシ、3−カルボキシプロポキシ等のカルボキシC1−C4アルコキシ基;等が挙げられる。
2及びR3としては、いずれか一方が水素原子;塩素原子;非置換C1−C4アルキル基;非置換C1−C4アルコキシ基;又はカルボキシ基;であり、他方がスルホ基;カルボキシ基;スルファモイル基;スルホ基で置換されたC1−C4アルコキシ基;であるのが好ましい。R2としては水素原子がより好ましく、R3としてはスルホがより好ましい。
2及びR3の置換位置は特に制限されないが、R2が水素原子以外のとき、アゾ基の置換位置を1位として、R2及びR3の置換位置は、2位及び3位、2位及び4位、2位及び5位、又は3位及び4位であるのが好ましい。また、R2が水素原子のとき、同様に、R3の置換位置は、2位、3位又は4位であり、4位が好ましい。
前記式(1)におけるn、R1、R2、R3について、好ましく挙げたもの同士を組合せたものはより好ましく、より好ましく挙げたもの同士を組合せたものはさらに好ましい。
前記式(1)において、R1乃至R3の好ましい組み合わせとしては、nが1乃至11の整数、R1がスルホ基又はカルボキシ基であり、R2及びR3のいずれか一方が水素原子;塩素原子;非置換C1−C4アルキル基;非置換C1−C4アルコキシ基;又はカルボキシ基;であり、他方がスルホ基;カルボキシ基;スルファモイル基;スルホ基で置換されたC1−C4アルコキシ基;である組み合わせが挙げられる。
より好ましくは、nが1乃至11の整数、R1がスルホ基、R2が水素原子、R3がスルホ基である組み合わせが挙げられる。
前記式(1)で表される化合物の好ましいものが、前記式(2)で表される化合物である。式(2)中、nは式(1)におけるのと同じ意味を表す。
前記式(1)で表される化合物の具体例を、下記表1乃至4に挙げる。
Figure 2010150336
Figure 2010150336
Figure 2010150336
Figure 2010150336
前記式(1)、式(1)及び式(2)で表される化合物は遊離酸、あるいはその塩の形としても存在する。前記式(1)で表される化合物の塩としては、無機又は有機の陽イオンとの塩が挙げられる。無機陽イオンの塩の具体例としてはアンモニウム塩やアルカリ金属塩、例えばリチウム、ナトリウム、カリウムなどの塩が挙げられる。また、有機の陽イオンとしては、例えば下記式(3)で表される4級アンモニウム塩が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
Figure 2010150336
前記式(3)中、Z1〜Z4はそれぞれ独立に水素原子、C1−C4アルキル基、ヒドロキシC1−C4アルキル基又はヒドロキシC1−C4アルコキシC1−C4アルキル基を表わし、Z1〜Z4の少なくとも1つは水素原子以外の基である。
ここで、Z1〜Z4におけるアルキル基の例としてはメチル、エチル等があげられ;同じくヒドロキシアルキル基の例としてはヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、3−ヒドロキシブチル、2−ヒドロキシブチル等があげられ;更にヒドロキシアルコキシアルキル基の例としては、ヒドロキシエトキシメチル、2−ヒドロキシエトキシエチル、3−(ヒドロキシエトキシ)プロピル、3−(ヒドロキシエトキシ)ブチル、2−(ヒドロキシエトキシ)ブチル等が挙げられる。
前記塩のうち好ましいものは、ナトリウム、カリウム、リチウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンの塩、及びアンモニウム塩等が挙げられる。これらのうち、特に好ましいものは、リチウム、ナトリウム、カリウム及びアンモニウム塩である。
当業者においては明らかなように、前記式(1)で表される化合物の塩は、以下の方法などにより容易に得ることができる。
例えば、該化合物の合成反応における最終工程終了後の反応液、あるいは該化合物を含むウェットケーキ又は該化合物の乾燥品などを溶解した水溶液に食塩を加えて塩析し、析出固体を濾過することにより、該化合物のナトリウム塩をウェットケーキとして得ることができる。
又、得られたナトリウム塩のウェットケーキを水に溶解後、塩酸などの酸を加えてそのpHを適宜調整し、析出した固体を濾過することにより、該化合物の遊離酸を、あるいは該化合物の一部がナトリウム塩である遊離酸とナトリウム塩の混合物を得ることもできる。
更に、該化合物の遊離酸のウェットケーキを水と共に撹拌しながら、例えば、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア水又は式(3)で表される4級アンモニウム塩の水酸化物等を加えてアルカリ性にすれば、各々相当するカリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、又は4級アンモニウム塩を得ることもできる。
遊離酸のモル数に対して、加える前記の塩のモル数を制限することにより、例えばリチウムとナトリウムの混塩など、さらにはリチウム、ナトリウム、カリウム、及びアンモニウムの混塩なども調製することが可能である。
該化合物の塩は、その塩の種類により溶解性などの物理的な性質、あるいはインクとして用いた場合のインクの性能、特に堅牢性に関する性能が変化する場合もある。このため目的とするインク性能などに応じて塩の種類を選択することも好ましく行われる。
以下に前記式(1)で表される化合物の製造方法を記載する。なお下記式(6)〜(9)中に記載のn、R1乃至R3は、前記式(1)におけるのと同じ意味を表す。
即ち、2−アミノ−5−ヒドロキシナフタレン−1,7−ジスルホン酸1モルとp−トルエンスルホニルクロライド1.0〜1.5モルを水中または含水有機溶媒中、アルカリ存在下でpH7〜10、30〜80℃、1〜2時間反応させて下記式(4)で表される化合物を得る。
Figure 2010150336
得られた前記式(4)で表される化合物2モルと2,4,6−S−トリアジン(シアヌルクロライド)0.9〜1.0モルとを水中でpH0〜5、5〜30℃、2〜8時間反応させ、次いでpH2〜6、30〜70℃、2〜8時間反応させて下記式(5)で表される化合物を含有する反応液を得る。
Figure 2010150336
前記のようにして得られた式(5)で表される化合物を含有する反応液に、下記式(6)で表される化合物を1.5〜3.0モルを加え、pH6〜8、60〜100℃、1〜5時間反応させて下記式(7)で表される化合物を含有する反応液を得る。更に、得られた反応液をpH8〜12、60〜100℃、1〜5時間反応させて下記式(8)で表される化合物を得る。
Figure 2010150336
Figure 2010150336
Figure 2010150336
下記式(9)で表される化合物2〜3モルを常法によりジアゾ化したものと、前記式(8)で表される化合物1モルとをカップリング反応させる事により、前記式(1)で表される化合物を得ることが出来る。
Figure 2010150336
前記式(9)で表される化合物のジアゾ化は、公知の方法で実施される。たとえば塩酸、硫酸のような無機酸の存在下、水又は水性有機媒体中、例えば−5〜40℃、好ましくは5〜30℃の温度で亜硝酸塩、たとえば亜硝酸ナトリウム等の亜硝酸アルカリ金属塩を使用して実施される。式(9)で表される化合物のジアゾ化物と式(8)で表される化合物のカップリングも公知の条件で実施される。水又は含水有機溶媒中、例えば−5〜50℃、好ましくは10〜30℃の温度ならびに弱酸性からアルカリ性のpH値で行うことが有利である。好ましくは弱酸性から弱アルカリ性のpH値、たとえばpH6〜10で実施される。ジアゾ化反応液が酸性であるため、またカップリング反応の進行により反応系内は更に酸性化してしまうため、前記のpH値への調整を塩基の添加によって行うのが好ましい。塩基としては、たとえば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、酢酸ナトリウム等の酢酸塩、アンモニア又は有機アミン等が使用できる。
本発明の前記式(1)で表される化合物は、反応後、塩酸などの鉱酸の添加により固体の遊離酸として単離する事ができ、得られた遊離酸の固体を水又は例えば塩酸水などの酸性水で洗浄することなどにより、不純物として含有する無機塩(無機不純物)、例えば塩化ナトリウム等の金属陽イオンの塩化物や、硫酸ナトリウム等の硫酸陽イオンのアルカリ金属塩等を除去することができる。
これらの無機不純物は、本発明のインク組成物を調製する場合に、インク組成物の保存安定性や、該インク組成物をインクとして使用するインクジェット記録等を行う際の吐出安定性等に悪影響を与えることが多い。このため、本発明の化合物の総質量中における無機不純物の含有量は、該化合物の総質量に対して、1質量%以下にすることが好ましく、下限は0質量%、すなわち分析機器における検出限界以下でもよい。
無機不純物の少ない化合物を製造するには、例えば逆浸透膜による方法が知られている。その他の方法として、本発明の化合物の乾燥品あるいはウェットケーキを、メタノールなどのC1−C4アルコール及び水の混合溶媒中に懸濁させて撹拌した後、固体を濾過分離し、乾燥することによっても無機不純物の除去が可能である。
本発明のインク組成物は、天然及び合成繊維材料又は混紡品の染色、さらには、筆記用インク及びインクジェット記録用インクの製造に適している。
前記式(1)で表される化合物の合成反応における最終工程終了後の反応液等は、本発明のインク組成物の製造に直接使用する事も出来る。しかし、反応液から該化合物を単離、例えばスプレー乾燥や、晶析などの方法により反応液から目的化合物を単離した後、必要に応じて乾燥し、得られた化合物をインク組成物に調製することもできる。
本発明のインク組成物は水を媒体として調製され、必要に応じて、水溶性有機溶剤及びインク調製剤を、本発明の効果を害しない範囲内において含有しても良い。水溶性有機溶剤は、染料溶解剤、乾燥防止剤(湿潤剤)、粘度調整剤、浸透促進剤、表面張力調整剤、消泡剤等としての機能を有する場合もあり、本発明のインク組成物には含有する方が好ましい。その他のインク調製剤としては、例えば、防腐防黴剤、pH調整剤、キレート試薬、防錆剤、紫外線吸収剤、粘度調整剤、染料溶解剤、褪色防止剤、乳化安定剤、表面張力調整剤、消泡剤、分散剤、及び分散安定剤等の公知の添加剤が挙げられる。
水溶性有機溶剤の含有量はインクの総質量に対して0〜60質量%、好ましくは10〜50質量%であり、インク調製剤は同様に0〜20質量%、好ましくは0〜15質量%用いるのが良い。前記以外の残部は水である。
前記の水溶性有機溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール等のC1−C4アルカノール(アルコール);N,N−ジメチルホルムアミド又はN,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−オン又は1,3−ジメチルヘキサヒドロピリミド−2−オン等の複素環式ケトン;アセトン、メチルエチルケトン、2−メチル−2−ヒドロキシペンタン−4−オン等のケトン又はケトアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコール、1,2−又は1,3−プロピレングリコール、1,2−又は1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はチオジグリコール等のC2−C6アルキレン単位を有するモノ、オリゴ又はポリアルキレングリコール又はチオグリコール;グリセリン、ヘキサン−1,2,6−トリオール等のポリオール(トリオール);エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールのC1−C4モノアルキルエーテル;γ−ブチロラクトン又はジメチルスルホキシド等が挙げられる。
前記の水溶性有機溶剤として好ましいものは、イソプロパノール、グリセリン、モノ、ジ又はトリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン及びブチルカルビトールであり、より好ましくはイソプロパノール、グリセリン、ジエチレングリコール、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン及びブチルカルビトールである。これらの水溶性有機溶剤は、単独又は混合して用いられる。
防腐防黴剤としては、例えば、有機硫黄系、有機窒素硫黄系、有機ハロゲン系、ハロアリールスルホン系、ヨードプロパギル系、N−ハロアルキルチオ系、ベンゾチアゾール系、ニトリル系、ピリジン系、8−オキシキノリン系、イソチアゾリン系、ジチオール系、ピリジンオキシド系、ニトロプロパン系、有機スズ系、フェノール系、第4アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロム化インダノン系、ベンジルブロムアセテート系、及び無機塩系等の化合物が挙げられる。
有機ハロゲン系化合物としては、例えばペンタクロロフェノールナトリウムが挙げられる。
ピリジンオキシド系化合物としては、例えば2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウムが挙げられる。
イソチアゾリン系化合物としては、例えば1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンマグネシウムクロライド、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド等が挙げられる。
その他の防腐防黴剤としてソルビン酸ソーダ、酢酸ソーダ及び安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
防腐防黴剤の他の具体例としては、例えば、アーチ・ケミカル・ジャパン株式会社製 商品名プロクセルGXL(S)及びプロクセルXL−2(S)等が好ましく挙げられる。
pH調整剤は、インクの保存安定性を向上させる目的で、インクのpHを6.0〜11.0の範囲に制御できるものであれば任意の物質を使用することができる。例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、水酸化アンモニウム、あるいは炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩などが挙げられる。
キレート試薬としては、例えばエチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラシル二酢酸ナトリウムなどが挙げられる。
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸アンモニウム、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライトなどが挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、桂皮酸系化合物、トリアジン系化合物、スチルベン系化合物、又はベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤も用いることができる。
粘度調整剤としては、水溶性有機溶剤の他に、水溶性高分子化合物があげられ、例えばポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリアミン、ポリイミン等が挙げられる。
染料溶解剤としては、例えば尿素、ε−カプロラクタム、エチレンカーボネート等が挙げられる。尿素を使用するのが好ましい。
褪色防止剤は、画像の保存性を向上させる目的で使用される。褪色防止剤としては、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機の褪色防止剤としてはハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、及びヘテロ環類などがあり、金属錯体としてはニッケル錯体、及び亜鉛錯体などがある。
表面張力調整剤としては、界面活性剤があげられ、例えばアニオン界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン界面活性剤、及びノニオン界面活性剤などが挙げられる。
アニオン界面活性剤としてはアルキルスルホカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N−アシルアミノ酸及びその塩、N−アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリールスルホン酸塩、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキルシルスルホ琥珀酸塩、ジオクチルスルホ琥珀酸塩などが挙げられる。
カチオン界面活性剤としては2−ビニルピリジン誘導体、ポリ4−ビニルピリジン誘導体などがある。
両性界面活性剤としてはラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、その他イミダゾリン誘導体などがある。
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のエーテル系;ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレートなどのエステル系;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールなどのアセチレングリコール(アルコール)系;他の具体例として、例えば、日信化学社製 商品名サーフィノール104、82、465、オルフィンSTG等が挙げられる。
消泡剤としては、高酸化油系、グリセリン脂肪酸エステル系、フッ素系、シリコーン系化合物が必要に応じて用いられる。
これらのインク調製剤は、単独又は混合して用いられる。なお、本発明のインク組成物を含有するインクの表面張力は通常25〜70mN/m、より好ましくは25〜60mN/mである。同様に、インクの粘度は30mPa・s以下が好ましく、20mPa・s以下に調整することがより好ましい。
本発明のインク組成物を製造するにあたり、添加剤などの各成分を溶解させる順序には特に制限はない。インク組成物を調製するにあたり、用いる水はイオン交換水又は蒸留水など不純物が少ない物が好ましい。
さらに、必要に応じメンブランフィルターなどを用いて精密濾過を行ってインク組成物より夾雑物を除いてもよく、インクジェットプリンター用のインクとして使用する場合は精密濾過を行うことが好ましい。精密濾過を行うフィルターの孔径は通常1ミクロン〜0.1ミクロン、好ましくは、0.8ミクロン〜0.1ミクロンである。
本発明のインク組成物は、印捺、複写、マーキング、筆記、製図、スタンピング、又は記録(印刷)、特にインクジェット記録における使用に適する。また本発明のインク組成物は、インクジェットプリンターのノズル付近における乾燥に対しても固体の析出は起こりにくく、この理由によりヘッドの閉塞もまた起こりにくい。さらに本発明のインク組成物をインクジェット記録に用いた場合、水、光、酸化性ガス、及び摩擦に対する良好な耐性、特に耐オゾンガス性を有する高品質のオレンジ〜レッド〜スカーレット色の記録物が得られる。
インクジェットプリンターにおいて、高精細な画像を供給することを目的に、高濃度のインクと低濃度のインクの2種類のインクが1台のプリンタに装填されたものもある。その場合、色素として本発明の化合物を高濃度に含有するインクと、低濃度に含有するインクとをそれぞれ調製し、それらをインクセットとして使用してもよい。またどちらか一方だけに本発明のインク組成物を含有させてもよい。
また本発明のインク組成物により得られる効果を阻害しない範囲で、公知のオレンジ〜レッド〜スカーレット色素を併用してもよい。
また他の色、例えばブラックインクの調色用、あるいはイエロー色素やシアン色素と混合して、色相を微調整したレッドインクや、ブルー(又はバイオレット)インクを調製する目的で、本発明の化合物を用いることもできる。
本発明の着色体とは、本発明の化合物、又はこれを含有するインク組成物で着色された物質のことである。着色体の材質には特に制限はなく、例えば紙、フィルムなどの情報伝達用シート、繊維や布(セルロース、ナイロン、羊毛等)、皮革、カラーフィルター用基材等、着色されるものであればなんでも良く、これらに限定されないが、情報伝達用シートが好ましい。着色法としては、例えば浸染法、捺染法、スクリーン印刷等の印刷法、インクジェット記録による方法等が挙げられるが、インクジェット記録方法が好ましい。
前記の情報伝達用シートとしては、特に制限はなく、普通紙はもちろん、表面処理されたもの、具体的には紙、合成紙、フィルム等の基材にインク受容層を設けたものなども用いることができる。ここでインク受容層とは、例えば前記基材にカチオン系ポリマーを含浸あるいは塗工する方法;又は多孔質シリカ、アルミナゾルや特殊セラミックスなどのインク中の色素を吸収し得る無機微粒子をポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーと共に前記基材表面に塗工する方法;などにより設けられる。このようなインク受容層を設けたものは通常インクジェット専用紙、インクジェット専用フィルム、光沢紙、又は光沢フィルム等と呼ばれる。
普通紙とは、特にインク受容層を設けていない紙のことを意味し、用途によってさまざまなものが数多く市販されている。市販されている普通紙の一例を挙げると、インクジェット用としては、セイコーエプソン社製 両面上質普通紙;キヤノン社製 カラー普通紙;Hewlett Packard社製 Multipurpose Paper、All−in−one Printing Paper;などがある。この他、特に用途をインクジェット印刷に限定しないPPC用紙なども普通紙である。
本発明のインク組成物により記録された画像は、特に耐オゾンガス性に優れるため、情報伝達シートの中でもインク受容層を設けたものが好ましい。しかし、普通紙にも当然使用することが可能である。
本発明のインクジェット記録方法で、被記録材に記録するには、本発明のインク組成物が充填された容器をインクジェットプリンターの所定位置にセットし、これをインクとして用い、該インクのインク滴を記録信号に応じて吐出させて、被記録材に付着させる通常の方法で記録すればよい。
本発明のインクジェット記録方法は、本発明のインク組成物と共に、イエロー、シアン、必要に応じて、グリーン、ブルー(又はバイオレット)、及びブラック等の各インクを併用しうる。この場合、各色のインクは、それぞれの容器に注入され、それらの容器を、インクジェットプリンターの所定位置に装填して使用する。
インクジェットプリンターには、例えば機械的振動を利用したピエゾ方式;及び加熱により生ずる泡を利用したバブルジェット(登録商標)方式;等を利用したものがある。本発明のインクジェット記録方法は、いかなる方式であっても使用が可能である。
本発明の化合物を含有するインク組成物は、長期間保存後の固体析出、物性変化、色相変化等もなく、貯蔵安定性が極めて良好である。本発明のインク組成物をインクジェット記録用のインクとして使用した記録物は、被記録材(例えば紙、フィルム等)を選択することなくオレンジ〜レッド〜スカーレット色の色相として理想的な色相であり、鮮明性が高く、写真調のカラー画像を紙の上に忠実に再現させることも可能である。また、本発明の化合物は、例えば黒色インク等の調色用にも用いることができる。
更に本発明のインク組成物は、写真画質用インクジェット専用紙やフィルムのような多孔性白色無機物を表面に塗工した被記録材に記録しても各種堅牢性、すなわち耐水性、耐湿性、耐ガス性、耐光性、特に耐オゾンガス性が良好であり、写真調の記録画像の長期保存安定性にも優れている。このため、記録メディアを選ばないことが特徴の一つであるインクジェット記録に好適である。また、本発明のインク組成物をインクジェット記録に使用した場合、ノズル付近におけるインク組成物の乾燥による固体の析出は非常に起こりにくく、噴射器(インクヘッド)を閉塞することもない。
このように、本発明のインク組成物はインク用、特にインクジェット記録用インクとして極めて有用である。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。尚、本文中「部」及び「%」とあるのは、特別の記載のない限り質量基準である。実施例中の反応及び晶析等の操作については、特に断りのない限りいずれも攪拌下に行った。また、実施例に記載した化合物のうち、最大吸収波長(λmax)の測定は、いずれも水溶液中で行った。
実施例1
(1)
2−アミノ−5−ヒドロキシナフタレン−1,7−ジスルホン酸60.3部とp−トルエンスルホニルクロライド37.8部とをpH8.0〜8.5、70℃で1時間反応させた後、酸性にて塩析、濾過分離して下記式(4)で表される化合物84.6部を得た。
Figure 2010150336
(2)
水110部に、前記式(4)で表される化合物19.0部、次いで水酸化ナトリウムを加えてpH4.0〜4.5の水溶液を得た。得られた水溶液に界面活性剤(ライオン株式会社製、商品名レオコールRTMTD50)0.25部を加えて撹拌し、続いて塩化シアヌル3.6部を加え、その後、pH3.5〜4.0、20〜25℃で6時間反応させた後にpH3.5〜4.0、60〜65℃で6時間反応させた。
次にそこに6−アミノヘキサン酸7.6部を加え、pH7.0〜8.5、90〜95℃で6時間反応させた後にH9.0〜11.0、90〜95℃で5時間反応させた。反応後、20〜25℃まで冷却し、35%塩酸を加えてpH7.5にした後に塩析し、析出した固体をろ過分離することにより下記式(10)で表される化合物を含むウェットケーキ37.4部を得た。
Figure 2010150336
(3)
水180部に前記式(10)で表される化合物を含むウェットケーキ24.7部、次いで水酸化ナトリウムを加えてpH7.5〜8.0とすることにより水溶液を得た。
一方、撹拌下、水100部に下記式(11)で表されるC.I.アシッドイエロー9(ケムコインターナショナル社製)9.4部次いで水酸化ナトリウムを加えてpH6.0〜7.0とすることにより水溶液を得た。得られた水溶液に35%塩酸9.7部、次いで反応温度10〜20℃で40%亜硝酸ナトリウム水溶液5.1部を約5分間で滴下し、1時間反応することにより、ジアゾ反応液を得た。
得られたジアゾ反応液を、先に得られた式(10)で表される化合物を含む水溶液に、反応温度20〜30℃、30分間で滴下した。この間、反応系内に炭酸ナトリウムを加えてpH値を7.0〜8.0に保持した。
滴下終了後、同温度で2時間撹拌し、塩化アンモニウムを加えて塩析し、析出した固体をろ過分離することにより、ウェットケーキを得た。得られたウェットケーキを水400部に溶解し、メタノール700部を加えた後、析出した固体をろ過分離することによりウェットケーキを得た。得られたウェットケーキを再度、水100部に溶解し、2−プロパノール400部を加えた後、析出した固体を濾過分離し、乾燥することにより本発明の下記式(12)で表される化合物12.2部をアンモニウム塩として得た。
λmax:512.5nm。
Figure 2010150336
Figure 2010150336
実施例2
(1)
実施例1(2)において6−アミノヘキサン酸7.6部をグリシン4.4部とする以外は実施例1(2)と同様にして下記式(13)で表される化合物を含むウェットケーキ26.7部を得た。
Figure 2010150336
(2)
実施例1(3)において前記式(10)で表される化合物を含むウェットケーキ24.7部を前記式(13)で表される化合物を含むウェットケーキ17.3部とする以外は実施例1(3)と同様にして下記式(14)で表される化合物7.8部をアンモニウム塩として得た。
λmax:512.5nm。
Figure 2010150336
実施例3
(1)
実施例1(2)において6−アミノヘキサン酸7.6部を12−アミノドデカン酸13.6部とする以外は実施例1(2)と同様にして下記式(15)で表される化合物を含むウェットケーキ37.2部を得た。
Figure 2010150336
(2)
実施例1(3)において前記式(10)で表される化合物を含むウェットケーキ24.7部を、前記式(15)で表される化合物を含むウェットケーキ24.6部とする以外は実施例1(3)と同様にして本発明の下記式(16)で表される化合物9.9部をアンモニウム塩として得た。
λmax:513.5nm。
Figure 2010150336
(A)インクの調製
上記実施例1で得られた式(12)で表される化合物を用い、下記表5に示した組成の本発明のインク組成物を調製し、0.45μmのメンブランフィルターで濾過する事により評価用のインクを得た。表5中の「水」は、アンモニア水の希釈用途のものを含めてイオン交換水を使用した。尚、インク組成物のpHが8〜10、総量100部になるように水、2.8%アンモニア水溶液を加えた。このインクの調製を実施例4とする。
また、実施例1で得た式(12)で表される化合物の代わりに、実施例2で得た式(14)、又は実施例3で得た式(16)で表される化合物を用いる以外は実施例4と同様にして試験用のインクを調整した。このインクの調製を、それぞれ実施例5及び6とする。
表5(インク組成物の組成)
実施例1で得た化合物 4.0部
グリセリン 5.0部
尿素 5.0部
N−メチル−2−ピロリドン 4.0部
イソプロピルアルコール 3.0部
ブチルカルビトール 2.0部
サーフィノール104PG50(日信化学社製) 0.1部
水+2.8%アンモニア水 76.9部
計 100.0部
(B)インクジェット記録
インクジェットプリンター(キヤノン社製 Pixus iP4100)を用いて、多孔性白色無機物を含有するインク受容層を有する光沢紙にインクジェット記録を行った。インクジェット記録の際、印刷濃度が数段階の諧調が得られるように画像パターンを作り記録物を作成し、これを試験片として評価試験を実施した。
なお使用した光沢紙は以下の通りである。
光沢紙:HP社製 商品名アドバンスフォトペーパー
(C)記録画像の耐オゾンガス性試験
試験片を、オゾンウェザーメーター(スガ試験機社製)を用いてオゾン濃度10ppm、湿度60%RH、温度24℃の環境下に8時間放置した。D値が1.0付近の試験前後のD値を測色システム(GRETAG SPM50:GRETAG社製)を用いて光源D65、視野角2度測定し、以下の計算式から色素残存率を測定し、評価を行った。

色素残存率=(試験後の反射濃度/試験前の反射濃度)x100(%)

結果を下記表6に示す。
表6 耐オゾンガス性試験結果
光沢紙1
実施例4 94.5
実施例5 95.9
実施例6 92.2
表6より明らかなように、各実施例の色素残存率は非常に高く、耐オゾンガス性が優れていることがわかる。

Claims (13)

  1. 下記式(1)で表される化合物又はその塩、
    Figure 2010150336
    [式(1)中、
    nは1乃至11の整数、
    1はスルホ基又はカルボキシ基を表し、
    2及びR3はそれぞれ独立に水素原子;塩素原子;スルホ基;カルボキシ基;スルファモイル基;カルバモイル基;非置換C1−C4アルキル基;非置換C1−C4アルコキシ基;ヒドロキシ基、スルホ基又はカルボキシ基で置換されたC1−C4アルコキシ基;をそれぞれ表す。]。
  2. 2及びR3のいずれか一方が水素原子;塩素原子;非置換C1−C4アルキル基;非置換C1−C4アルコキシ基;又はカルボキシ基;であり、他方がスルホ基;カルボキシ基;スルファモイル基;スルホ基で置換されたC1−C4アルコキシ基;である、請求項1に記載の化合物又はその塩。
  3. 1がスルホ基、
    2が水素原子、
    3がスルホ基である、請求項1又は2に記載の化合物又はその塩。
  4. 式(1)で表される化合物又はその塩が、下記式(2)で表される化合物又はその塩である請求項1に記載の化合物又はその塩、
    Figure 2010150336
    [式(2)中、nは式(1)におけるのと同じ意味を表す。]。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の化合物又はその塩を含有するインク組成物。
  6. 水溶性有機溶剤をさらに含有する請求項5に記載のインク組成物。
  7. インクジェット記録用である請求項5又は6に記載のインク組成物。
  8. 請求項5乃至7に記載のインク組成物をインクとして用い、該インクのインク滴を記録信号に応じて吐出させて、被記録材に付着させることにより記録を行うインクジェット記録方法。
  9. 被記録材が情報伝達用シートである請求項8に記載のインクジェット記録方法。
  10. 情報伝達用シートが普通紙又は多孔性白色無機物を含有するインク受容層を有するシートである請求項9に記載のインクジェット記録方法。
  11. 請求項5乃至7のいずれか1項に記載のインク組成物により着色された着色体。
  12. 着色がインクジェットプリンターによりなされた請求項11に記載の着色体。
  13. 請求項5乃至7のいずれか一項に記載のインク組成物を含有する容器が装填されたインクジェットプリンター。
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