JP2010144140A - メルカプト基含有共重合体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、メルカプト基含有共重合体に関するものである。
近年、チオール化合物は、コーティング材料、UV及び熱硬化塗料、接着剤、インキ、レジスト材料、光学材料、光造形材料、印刷版材料、あるいはポリマーの原料などの広範な分野で使用されている。例えば、光学材料の用途としては、光学レンズ、反射防止膜、フォトレジストなどに使用されている。
特に多官能チオール化合物においてはチオール特有の性質である、高い密着強度が得られることや、高い2重結合反応性を付与できる、臭気が低減できるなどの特徴に優れ、エポキシ化合物や不飽和基を有する化合物の硬化剤として幅広く用いられるようになってきている。
しかし従来の多官能チオール化合物は、その殆どが耐水性を持たない多官能アルコールとメルカプト基含有カルボン酸とのエステル化合物であり、水に対する弱さ、それに基づく酸、アルカリに対する弱さを有する問題点があった。そのため、屋外で使用する塗料やコーティング剤などの用途に用いると樹脂の劣化が起こるなどの問題点があり、その使用範囲には制限があった。
加水分解を抑制するためには、例えばエーテル結合を介してメルカプト基を持たせる方法や添加剤の使用、フッ素などの嫌水性の高い置換基の導入と言った対処方法が考えられる。しかし、エーテル結合を介してメルカプト基を持たせるには硫化水素によるグリシジル基の開環が知られているが、この方法ではメルカプト基と等量の水酸基が導入されてしまうため、耐水性の向上には結びつかない。また、添加剤の使用よる解決では、硬化物の耐水性以外の項目に対してその性能を著しく損なう恐れがあり、また不飽和基含有フッ素化合物は強度や靭性と言った性能に乏しく、また高価であるため、屋外で使用する塗料やコーティング剤などの用途には不適である。一方、長鎖脂肪族基の導入は耐水性を発現する方法としては極めて有用である。
長鎖脂肪族基を有する多官能チオールを得る方法には、例えば下記のような方法が挙げられる。まず、長鎖脂肪族基とメルカプト基をそれぞれ側鎖に含有する(メタ)アクリル共重合体を合成する方法である。しかし、(メタ)アクリル共重合体中にメルカプト基を含有させることは技術的に困難である。その理由は下記の通りである。直接メルカプト基を導入するためにはメルカプト基を有するモノ(メタ)アクリレートを用いる必要がある。しかし化合物内の(メタ)アクリル基とメルカプト基は互いに容易に反応するため、取り扱いが困難である。また、間接的にメルカプト基を導入するためには、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル共重合体にメルカプト基含有カルボン酸を反応させることが考えられるが、(メタ)アクリル共重合体は多数のエステル結合を含んでいるため、エステル化の副反応としてエステル交換反応が起こり、生成物の構造制御が困難であると考えられる。
一方、側鎖にチイランを有する化合物の開環によっても、側鎖にメルカプト基を有する共重合体を得ることができる。しかしこの方法では、生成したメルカプト基が未反応のチイランを攻撃する副反応が起こり反応制御が困難である。また側鎖に不飽和基を有する共重合体を用いて、不飽和基に硫化水素を付加させることでもメルカプト基を与えることができるが、やはり生成したメルカプト基が未反応の不飽和基を攻撃してしまう副反応が起こるため反応制御が困難である。
特許文献1(特開平7−247314号公報)ではポリアクリル酸に対してエチレンイミンとエチレンサルファイドとの反応物を作用させることで、側鎖にエステル結合、アミノ基、メルカプト基を有するポリマーが得られることを報告している。しかし、手法の中で用いるアジリジン類は変異原性を有するなど、改良の余地が残されている。
従って、本発明の課題は従来技術における前述の問題点を解消し、従来困難であった屋外での使用が可能な、樹脂改質剤、塗料成分、インキ成分、接着剤成分、プライマー成分、高性能ワックス、相溶化剤、界面活性剤、ウレタン原料、ポリエステル原料として有用なメルカプト基(多官能チオール基)含有共重合体を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、ヒドロキシル基含有オレフィン共重合体とメルカプト酸をエステル化することにより、ヒドロキシル基含有オレフィン共重合体の多官能チオールエステルが容易かつ安全に合成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の[1]〜[7]に関する。
[1]モノマーユニットとして、式(1)
(式中、R1及びR2は各々独立して水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基を表わし、mは0または1である。)及び式(2)
で示される構造を含むことを特徴とするメルカプト基含有共重合体。
[2]式(1)
(式中の記号は前記[1]の記載と同じ意味を表わす。)及び式(2)
で示される構造のみをモノマーユニットとする前記[1]に記載のメルカプト基含有共重合体。
[3]式(2)で示されるモノマーユニット1molに対して、式(1)で示されるモノマーユニットを0.03〜1mol含有する前記[1]または[2]に記載のメルカプト基含有共重合体。
[4]チオール当量が300〜5000である前記[1]〜[3]のいずれかに記載のメルカプト基含有共重合体。
[5]数平均分子量(Mn)が600〜10000である前記[1]〜[4]のいずれかに記載のメルカプト基含有共重合体。
[6]式(1)で示されるモノマーユニットが、式(3)
、式(4)
、または式(5)
で示される前記[1]〜[5]のいずれかに記載のメルカプト基含有共重合体。
[7]アリルアルコールと1−デセンをラジカル重合開始剤の存在下に重合して得られた共重合体のOH基にメルカプト基含有カルボン酸を反応させることを特徴とする前記[1]〜[6]のいずれかに記載のメルカプト基含有共重合体の製造方法。
[1]モノマーユニットとして、式(1)
[2]式(1)
[3]式(2)で示されるモノマーユニット1molに対して、式(1)で示されるモノマーユニットを0.03〜1mol含有する前記[1]または[2]に記載のメルカプト基含有共重合体。
[4]チオール当量が300〜5000である前記[1]〜[3]のいずれかに記載のメルカプト基含有共重合体。
[5]数平均分子量(Mn)が600〜10000である前記[1]〜[4]のいずれかに記載のメルカプト基含有共重合体。
[6]式(1)で示されるモノマーユニットが、式(3)
[7]アリルアルコールと1−デセンをラジカル重合開始剤の存在下に重合して得られた共重合体のOH基にメルカプト基含有カルボン酸を反応させることを特徴とする前記[1]〜[6]のいずれかに記載のメルカプト基含有共重合体の製造方法。
本発明によればアリルアルコールと1−デセンの共重合体より得られるメルカプト基含有共重合体を効率よく製造することができる。本発明により得られるメルカプト基含有共重合体は極性基を有している点で、各種樹脂との相溶性、及び接着性に優れ、また、疎水性基を有している点で、電気絶縁性、低吸水性、熱安定性、界面活性効果に優れているため、例えば樹脂改質剤、塗料成分、インキ成分、接着剤成分、プライマー成分、高性能ワックス、相溶化剤、界面活性剤、ウレタン原料、ポリエステル原料として有用である。
以下、本発明についてより詳細に説明する。
式(1)におけるR1及びR2は各々独立して水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基を表わす。R1及びR2が表わす炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。また、炭素数6〜12のアリール基としては、フェニル基、ベンジル基、トリル基が挙げられる。中でもR1及びR2の一方が水素原子であり、他方が炭素数1〜4のアルキル基、特にメチル基またはエチル基であるものが好ましい。また、mは0または1であり、好ましくは1である。
本発明のメルカプト基含有共重合体は、モノマーユニットとして式(1)で示される構造と式(2)で示される構造を含む共重合体であれば他に制限はなく、不飽和カルボン酸もしくは不飽和カルボン酸エステルといった種々の不飽和基含有化合物を第3のモノマーユニットとして用いることができる。
不飽和カルボン酸の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられる。
不飽和カルボン酸エステルの例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸(n−プロピル)、アクリル酸(n−ブチル)、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸(n−プロピル)、メタクリル酸(n−ブチル)、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジ(n−プロピル)、マレイン酸ジ(n−ブチル)、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジ(n−プロピル)、フマル酸ジ(n−ブチル)、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジ(n−プロピル)、イタコン酸ジ(n−ブチル)等が挙げられる。
不飽和カルボン酸エステルの例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸(n−プロピル)、アクリル酸(n−ブチル)、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸(n−プロピル)、メタクリル酸(n−ブチル)、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジ(n−プロピル)、マレイン酸ジ(n−ブチル)、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジ(n−プロピル)、フマル酸ジ(n−ブチル)、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジ(n−プロピル)、イタコン酸ジ(n−ブチル)等が挙げられる。
これらの中でも不飽和カルボン酸としては、共重合体製造時の生産性向上の観点からは、無水マレイン酸、イタコン酸が好ましい。
また、不飽和カルボン酸エステルとしては、共重合体製造時の生産性向上の観点からは、マレイン酸エステル、イタコン酸エステルが好ましく、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジ(n−ブチル)、イタコン酸ジメチルが特に好ましい。
また、不飽和カルボン酸エステルとしては、共重合体製造時の生産性向上の観点からは、マレイン酸エステル、イタコン酸エステルが好ましく、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジ(n−ブチル)、イタコン酸ジメチルが特に好ましい。
本発明のメルカプト基含有共重合体において、式(1)で示されるモノマーユニットと式(2)で示されるモノマーユニットの共重合様式は重合条件により、ランダム、ブロック、交互のいずれをもとり得るが、各樹脂への相溶性向上の観点からは、ランダムであることが望ましい。
本発明のメルカプト基含有共重合体において、式(1)で示されるモノマーユニットと式(2)で示されるモノマーユニット及び不飽和カルボン酸もしくは不飽和カルボン酸エステルの共重合様式は重合条件により、ランダム、ブロックのいずれをもとり得るが、各樹脂への相溶性向上の観点からは、ランダムであることが望ましい。
本発明のメルカプト基含有共重合体における、式(1)で示されるモノマーユニットの組成は、製造時の式(1)で示されるモノマーユニットに相当するアリルアルコールと式(2)で示されるモノマーユニットに相当する1−デセンの仕込み比により制御できる。各種樹脂との相溶性と接着性を両立させる観点から、式(1)で示されるモノマーユニットは式(2)で示されるモノマーユニット1molに対して、0.03〜1molであることが好ましい。式(2)で示されるモノマーユニット1molに対して式(1)で示されるモノマーユニットが0.03mol未満のとき密着性が低下する場合があり、1molを超えると耐水性が低下する場合がある。
また、各種樹脂への相溶性を両立させる観点から、不飽和カルボン酸ユニットもしくは不飽和カルボン酸エステルユニットを導入する場合は式(1)及び式(2)で示されるモノマーユニットの合計1molに対して、0.001〜0.05molであることが好ましい。式(1)及び式(2)で示されるモノマーユニットの合計1molに対して、不飽和カルボン酸ユニットもしくは不飽和カルボン酸エステルユニットが0.001mol未満のとき極性の高い樹脂との相溶性が低下し、0.05molを超えると極性の低い樹脂との相溶性が低下する場合がある。
本発明のメルカプト基含有共重合体のチオール当量は各種樹脂への相溶性と接着性を両立させる観点から300〜5000であることが好ましい。共重合体のチオール当量が5000を超えると接着性が低下し、300より低くなると極性の低い樹脂との相溶性が悪化する。なおチオール当量の定義と測定方法は実施例にて後述する。
本発明のメルカプト基含有共重合体のゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)法により測定したポリスチレン換算数平均分子量(Mn)に特に制限はないが、各種樹脂への相溶性を考慮するとMn=600〜10000であることが好ましい。ポリスチレン換算数平均分子量(Mn)が600未満のとき固体状樹脂との相溶性が悪くなり、10000を超えると液体状樹脂との相溶性が悪くなる。
(2)ヒドロキシル基含有共重合体
本発明の原料ヒドロキシル基含有共重合体の製造方法について説明する。原料のヒドロキシル基含有共重合体は式(1)で示されるモノマーユニットに相当するアリルアルコールと1−デセンをラジカル重合開始剤の存在下で共重合することにより製造することができる。
本発明の原料ヒドロキシル基含有共重合体の製造方法について説明する。原料のヒドロキシル基含有共重合体は式(1)で示されるモノマーユニットに相当するアリルアルコールと1−デセンをラジカル重合開始剤の存在下で共重合することにより製造することができる。
この共重合反応において、アリルアルコールと1−デセンの使用量は、通常は1−デセン1molに対してアリルアルコールを0.03〜1.0mol用いるのが好ましく、0.4〜1.0molが特に好ましい。アリルアルコールが0.03mol未満の場合は最終的に得られるメルカプト基含有共重合体の密着性が低下し、また、1.0molを超えると最終的に得られるメルカプト基含有共重合体の耐水性が低下する可能性がある。
この共重合反応は無溶媒で行っても良いし、基質と反応せず、かつ連鎖移動定数の小さい溶媒を使用しても良い。溶媒としては、トルエン、ベンゼン、t−ブチルベンゼン等の炭化水素系溶媒、アセトン等のケトン系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、単独もしくは2種類以上を併用することもできる。
この共重合反応はラジカル重合開始剤を用いて実施することができる。熱、紫外線、電子線、放射線等によってラジカルを生成するものであれば、いずれのラジカル重合開始剤も使用できるが、反応温度における半減期が1時間以上のものが好ましい。
熱ラジカル重合開始剤としては、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート、4,4'−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2'−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等のアゾ系化合物;メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド等のケトンパーオキシド類;ベンゾイルパーオキシド、デカノイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類;ジクミルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド等のジアルキルパーオキシド類;1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類;t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート等のアルキルパーオキシエステル類;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロプルカーボネート等のパーオキシカーボネート類;過酸化水素等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。また、これらの熱ラジカル重合開始剤は2種以上併用しても良い。
紫外線、電子線、及び放射線によるラジカル重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン等のアセトフェノン誘導体;ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4−トリメチルシリルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルスルフィド等のベンゾフェノン誘導体;ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン誘導体;メチルフェニルグリオキシレート、ベンゾインジメチルケタール、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等を例示することができるが、これらに限定されるわけではない。また、これらの紫外線、電子線、及び放射線ラジカル重合開始剤は2種以上併用してもよい。
これらの重合開始剤の使用量は、反応温度やアリルアルコールと1−デセンの組成比によって異なるため一概に限定することはできないが、アリルアルコールと1−デセンとの総量100質量部に対して0.1〜15質量部が好ましく、1〜10質量部が特に好ましい。ラジカル重合開始剤の添加量が0.1質量部未満の場合は重合反応が進行しにくく、15質量部を超えて添加することは経済上好ましくない。
反応温度(重合温度)は重合開始剤の種類に応じて適宜選択すればよく、段階的に温度を変えて反応(重合)させてもよい。紫外線等による重合であれば、室温でも可能である。熱重合の場合は開始剤の分解温度に対応して適宜決めることが望ましく、一般的には50〜180℃の範囲が好ましく、70〜170℃が特に好ましい。50℃未満では極端に反応が遅くなり、180℃を超えると、ラジカル開始剤の分解が速くなりすぎ、かつ連鎖移動も速くなるので共重合体の分子量が低下する傾向にある。
反応終了後、生成物であるアリルアルコール共重合体は、公知の操作、処理方法(例えば、中和、溶媒抽出、水洗、分液、溶媒留去、再沈殿等)により後処理されて単離される。
式(6)中、R1及びR2は各々独立して水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基を表わす。R1及びR2が表わす炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。また、炭素数6〜12のアリール基としては、フェニル基、ベンジル基、トリル基等が挙げられる。中でもR1及びR2の一方が水素原子であり、他方が炭素数1〜4のアルキル基、特にメチル基またはエチル基であるものが好ましい。また、mは0または1であり、好ましくは1である。
メルカプト基含有カルボン酸の具体例としては、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトブタン酸、3−メルカプトブタン酸、4−メルカプトブタン酸、2−メルカプトイソブタン酸、2−メルカプトイソペンタン酸、3−メルカプトイソペンタン酸、3−メルカプトイソヘキサン酸等が挙げられるが、生成物の安定性、合成の容易さの観点から3−メルカプトブタン酸が最も好ましい。
(4)メルカプト基含有カルボン酸によるヒドロキシル基含有共重合体のエステル化
ヒドロキシル基含有共重合体(A)とメルカプト基含有カルボン酸よりメルカプト基含有共重合体(B)を得る方法は特に制限させるものではなく、従来公知の方法で合成することが可能である。
ヒドロキシル基含有共重合体(A)とメルカプト基含有カルボン酸よりメルカプト基含有共重合体(B)を得る方法は特に制限させるものではなく、従来公知の方法で合成することが可能である。
反応に用いる溶媒としてはエステル結合や反応性の置換基を有しないものが好ましく、具体的にはトルエン、キシレン、メシチレン等が挙げられ、特に好ましくは沸点が低く除去が容易である観点からトルエンが好ましい。反応の温度としては60℃から140℃が好ましく、80℃から120℃がさらに好ましい。反応温度が60℃より低いとエステル化が速やかに進行しない可能性があり、140℃を超えると、メルカプト基の脱離などの副反応が進行する恐れがある。
また、本反応は触媒を用いることにより、より速やかに反応を行うことができる。用いる触媒種としては特に制限されるものでは無く、種々公知のものを用いることができる。具体的には、硫酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸などが好ましく、中でもp−トルエンスルホン酸が取り扱いの容易さから最も好ましい。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの記載により何らの限定を受けるものではない。
実施例で合成した物質の諸物性は、それぞれ下記に示す機器を用いて分析、解析を行った。
・核磁気共鳴分光法
使用機器:JEOL(日本電子)社製 AL400(400MHz)、
測定溶媒:重水素化クロロホルム(ALDRICH社製)。
・ゲルパーミエイションクロマトグラフ
検出器:SHIMADZU社製 RID−10A、
カラム:SHODEX GPC KF801+KF801+KF802+KF803、
キャリア溶媒:THF、
測定温度:40℃、
流速:1.0mL/min、
解析プログラム:SHIMADZU LCワークステーション。
・水酸基価
JIS K0070に記載の方法に準拠。
・チオール当量
チオール当量とは、メルカプト基の単位数量当たりの分子の大きさを表すものであり、たとえば以下のような方法で測定することができる。
測定試料0.2gを精秤し、これにクロロホルム20mLを加えて試料溶液とする。デンプン指示薬として可溶性デンプン0.275gを30gの純水に溶解させたものを用いて、純水20mL、イソプロピルアルコール10mL、上記デンプン指示薬1mLを加え、スターラーで撹拌する。ヨウ素溶液(和光純薬工業社製 0.05mol/Lのヨウ素溶液 ファクター:1.003(20℃))を滴下し、クロロホルム層が緑色を呈した点を終点とした。このとき下記式にて与えられる値を、該試料のチオール当量とする。
ヨウ素を滴下することによりメルカプト基は酸化されジスルフィドとなる。代表的な反応を下記式に示す。
ここで、Rは任意の有機基である。全てのメルカプト基が消費されるとヨウ素とデンプンの間でヨウ素デンプン反応が起こり、発色するため、これを終点とすることができる。
また、ここでいうファクターとは補正係数であり、体積による定量分析を行う際に、濃度や密度によって変化する体積の不確かさを相殺するために、滴定試薬ごとに決められた値である。
・核磁気共鳴分光法
使用機器:JEOL(日本電子)社製 AL400(400MHz)、
測定溶媒:重水素化クロロホルム(ALDRICH社製)。
・ゲルパーミエイションクロマトグラフ
検出器:SHIMADZU社製 RID−10A、
カラム:SHODEX GPC KF801+KF801+KF802+KF803、
キャリア溶媒:THF、
測定温度:40℃、
流速:1.0mL/min、
解析プログラム:SHIMADZU LCワークステーション。
・水酸基価
JIS K0070に記載の方法に準拠。
・チオール当量
チオール当量とは、メルカプト基の単位数量当たりの分子の大きさを表すものであり、たとえば以下のような方法で測定することができる。
測定試料0.2gを精秤し、これにクロロホルム20mLを加えて試料溶液とする。デンプン指示薬として可溶性デンプン0.275gを30gの純水に溶解させたものを用いて、純水20mL、イソプロピルアルコール10mL、上記デンプン指示薬1mLを加え、スターラーで撹拌する。ヨウ素溶液(和光純薬工業社製 0.05mol/Lのヨウ素溶液 ファクター:1.003(20℃))を滴下し、クロロホルム層が緑色を呈した点を終点とした。このとき下記式にて与えられる値を、該試料のチオール当量とする。
また、ここでいうファクターとは補正係数であり、体積による定量分析を行う際に、濃度や密度によって変化する体積の不確かさを相殺するために、滴定試薬ごとに決められた値である。
参考例:アリルアルコールと1−デセンの共重合体(AAL−Decen)の合成
1Lのステンレス製オートクレーブ(耐圧硝子工業社製)にアリルアルコール(昭和電工社製,72.10g,1.241mol)と1−デセン(和光純薬社製,370.00g,2.638mol)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)(和光純薬社製,22.11g,0.087mol)を加え、フランジ部を取り付けた後、系内を窒素で3回置換した。次いで内容物を600rpmで撹拌しながら温度を上げ、140℃で5時間反応させた。内容物を室温まで冷却後、脱圧を行い、反応器を開けて内容物を取り出し、減圧下に105℃で未反応のアリルアルコール、1−デセン及び開始剤残渣を除去して高粘性油状物72.10gを得た。得られた油状物の1H−NMR、13C−NMR及びIRスペクトルを測定し、目的の共重合体であることを確認した。この重合反応を2回行い、合わせて143.80gの共重合体を得た。この共重合体の数平均分子量は760、重量平均分子量はポリスチレン換算で1200であった。また、水酸基価は196mgKOH/gであった。また、取得したAAL−Decenの1H−NMRチャートを図1に示す。
1Lのステンレス製オートクレーブ(耐圧硝子工業社製)にアリルアルコール(昭和電工社製,72.10g,1.241mol)と1−デセン(和光純薬社製,370.00g,2.638mol)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)(和光純薬社製,22.11g,0.087mol)を加え、フランジ部を取り付けた後、系内を窒素で3回置換した。次いで内容物を600rpmで撹拌しながら温度を上げ、140℃で5時間反応させた。内容物を室温まで冷却後、脱圧を行い、反応器を開けて内容物を取り出し、減圧下に105℃で未反応のアリルアルコール、1−デセン及び開始剤残渣を除去して高粘性油状物72.10gを得た。得られた油状物の1H−NMR、13C−NMR及びIRスペクトルを測定し、目的の共重合体であることを確認した。この重合反応を2回行い、合わせて143.80gの共重合体を得た。この共重合体の数平均分子量は760、重量平均分子量はポリスチレン換算で1200であった。また、水酸基価は196mgKOH/gであった。また、取得したAAL−Decenの1H−NMRチャートを図1に示す。
実施例:3−メルカプトブタネート基を側鎖に有するメルカプト基含有共重合体の合成
撹拌装置、温度計及びディーンシュタークトラップ、コンデンサーを備えた反応容器に1−デセン−アリルアルコール共重合体(昭和電工社製AAL−Decen 重量平均分子量1200)15.0g、溶媒としてトルエン12.0g、触媒としてパラトルエンスルホン酸0.1gを投入し、還流温度まで加熱を行った。還流が開始した時点で3−メルカプトブタン酸6.62g、を加えて3時間撹拌したところで1H−NMRによって反応を追跡したところ、OH基由来のピークが完全に消滅しており、反応が完全に進行していることを確認したため、反応を終了した。反応液は重曹を用いて中和、同時に未反応の3−メルカプトブタン酸を除去したのち、純水を用いて抽出した。得られた有機層を室温にて真空蒸留を行うことで、目的のメルカプト基含有共重合体を得た。このポリマーの数平均分子量はポリスチレン換算で1126であり、重量平均分子量はポリスチレン換算で1900であった。また、チオール当量は453であった。また、取得したメルカプト基含有共重合体の1H−NMRチャートを図2に示す
撹拌装置、温度計及びディーンシュタークトラップ、コンデンサーを備えた反応容器に1−デセン−アリルアルコール共重合体(昭和電工社製AAL−Decen 重量平均分子量1200)15.0g、溶媒としてトルエン12.0g、触媒としてパラトルエンスルホン酸0.1gを投入し、還流温度まで加熱を行った。還流が開始した時点で3−メルカプトブタン酸6.62g、を加えて3時間撹拌したところで1H−NMRによって反応を追跡したところ、OH基由来のピークが完全に消滅しており、反応が完全に進行していることを確認したため、反応を終了した。反応液は重曹を用いて中和、同時に未反応の3−メルカプトブタン酸を除去したのち、純水を用いて抽出した。得られた有機層を室温にて真空蒸留を行うことで、目的のメルカプト基含有共重合体を得た。このポリマーの数平均分子量はポリスチレン換算で1126であり、重量平均分子量はポリスチレン換算で1900であった。また、チオール当量は453であった。また、取得したメルカプト基含有共重合体の1H−NMRチャートを図2に示す
本発明のメルカプト基含有共重合体はコーティング材料、UV及び熱硬化性塗料、成形材料、接着剤、インキ、光学材料、光造形材料、印刷版材料、レジスト材料、記録材料、封止剤などの用途に適用することができる。
Claims (7)
- 式(2)で示されるモノマーユニット1molに対して、式(1)で示されるモノマーユニットを0.03〜1mol含有する請求項1または2に記載のメルカプト基含有共重合体。
- チオール当量が300〜5000である請求項1〜3のいずれかに記載のメルカプト基含有共重合体。
- 数平均分子量(Mn)が600〜10000である請求項1〜4のいずれかに記載のメルカプト基含有共重合体。
- アリルアルコールと1−デセンをラジカル重合開始剤の存在下に重合して得られた共重合体のOH基にメルカプト基含有カルボン酸を反応させることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のメルカプト基含有共重合体の製造方法。
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JP2008325959A JP2010144140A (ja) | 2008-12-22 | 2008-12-22 | メルカプト基含有共重合体及びその製造方法 |
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JP2010106067A (ja) * | 2008-10-28 | 2010-05-13 | Showa Denko Kk | ポリウレタン系硬化性組成物 |
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2008
- 2008-12-22 JP JP2008325959A patent/JP2010144140A/ja active Pending
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