JP2010141276A - 第4級アンモニウム塩電解質を用いた電解液および電気化学素子 - Google Patents
第4級アンモニウム塩電解質を用いた電解液および電気化学素子 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】
一般式(1)で表される化合物(A)を含有してなる電解質(B)と、非水混合溶媒(H)を含有してなる電解液であって、非水混合溶媒(H)が、スルホラン、3−メチルスルホラン及び2,4−ジメチルスルホランからなる群より選ばれる少なくとも1種のスルホラン誘導体(S)と、エステル、ベンゼン誘導体、及びニトリル誘導体の群から選ばれる少なくとも1種の非水溶媒(G)を含有してなることを特徴とする電気化学素子用電解液。
【化1】
【選択図】 図1
Description
従来、キャパシタの電解質にはテトラエチルアンモニウムのBF4塩、トリエチルメチルアンモニウムのBF4塩、または1−エチル−3−メチルイミダゾリウムのBF4塩等が電解質として用いられている。特に過酷な条件下で、しかも大電流で使用されるハイブリッド電気自動車等の新しい用途分野では、低温でも安定に使用可能な、長期安定性に優れた電気化学素子が要望されており、このためそれを構成する部材である電解液にも、低温環境下で使用可能であり、かつ高耐電圧(電位窓が広い)である電解液の開発が急務となっている。
こうした状況の中、スルホランなどの耐分解性の高い溶媒を使用することで、耐電圧の高い電解液が開発されてきている(例えば、特許文献1、2)。
すなわち、本発明の目的は、低温環境下での性能に優れ、かつ高い耐電圧性を維持したまま低温でも安定に使用可能な、長期安定性に優れた電気化学素子を提供することである。
(G1):一般式(2)で表されるエステル
(G2):一般式(3)で表される分子量が400以下であるベンゼン誘導体
(G3):一般式(4)で表されるニトリル誘導体
及び該電解液を用いる電気化学素子である。
一般式(1)で表される化合物(A)はカチオン中心の窒素が立体的にアルキル基で保護されている特定の環構造を有するカチオン基と、酸化電位の高いアニオン基からなる第4級アンモニウム塩であるため、従来技術の電解質と比較して分子軌道計算においてLUMO値が高く、かつアニオン基のHOMO値が高いため、酸化還元を受けにくい。その結果、酸化電位と還元電位の差が大きく、電気化学的に安定であり、電解液として耐電圧が非常に高いという特徴を有している。
これらR2のうち水素原子、直鎖又は分岐脂肪族炭化水素基及びフルオロアルキル基が好ましい。さらに好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、メトキシエチル基、トリフルオロメチル基及びペンタフルオロエチル基である。特に好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基子、トリフルオロメチル基及びペンタフルオロエチル基である。極めて好ましくは水素原子である。
一般式(1)で示される化合物(A)のカチオン種(a)として好ましいものは電気化学的安定性の観点から、N−メチル−1−アザビシクロ[2,2,2]オクタン−イウム、N−エチル−1−アザビシクロ[2,2,2]オクタン−イウム、N−メチル−1−アザビシクロ[2,2,1]ヘプタン−イウム、N−エチル−1−アザビシクロ[2,2,1]ヘプタン−イウム、N−トリフルオロメチル−1−アザビシクロ[2,2,2]オクタン−イウム、N−トリフロオロメチル−1−アザビシクロ[2,2,1]ヘプタン−イウムなどがあげられる。
(1)ヒドロキシルアルキル基を有するテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテルを臭化水素により臭素化して得られた、トリブロムアルキル化合物をメタノール性アンモニアと封管中で130〜150℃に加熱することにより、HBrを脱離させ環化させる方法、
(2)アミノアルキル基を有するテトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどの環状エーテルにハロゲン化水素を反応させて得られる、ジハロゲン化第1級アミン化合物を0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液に滴下して、ハロゲン化水素の脱離により分子内環化反応を行う方法、
(3)カルボキシアルキル基を有するピペリジン、ピロリジンなどの環状第2級アミンを水素化アルミニウムリチウム等で還元、あるいはカルボキシアルキル基を有するピリジンなどの芳香族アミンをナトリウムとエタノールなどにより還元することによりヒドロキシアルキル基を有する環状第2級アミンを得る。さらに、臭化水素、ヨウ化水素酸等のハロゲン化水素酸を反応させることにより水酸基を置換しハロゲン化物を得る。このハロゲン化環状第2級アミン化合物を0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液に滴下して、ハロゲン化水素の脱離により分子内環化反応を行い、第3級アミンを合成する方法、
などが知られている(V.Prelog、Ann.,545,229(1940))。
N(RfSO3)2 −、C(RfSO3)3 −、RfSO3 −又はRfCO2 −で表されるアニオンに含まれるRfは、炭素数1〜12のフルオロアルキル基を表し、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル及びノナフルオロブチルなどが挙げられる。これらのうち、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル及びヘプタフルオロプロピルが好ましく、さらに好ましくはトリフルオロメチル及びペンタフルオロエチル、特に好ましくはトリフルオロメチルである。
以上の対アニオンのうち、電気化学的安定性の観点等から、第一原理分子軌道計算によるHOMOエネルギーが小さい対アニオンが好ましくBF4 −、PF6 −又はN(RfSO3)2 −で表される対アニオン、さらに好ましくはPF6 −又はBF4 −で表される対アニオン、特に好ましくはBF4 −で表される対アニオンである。
対アニオンは、HOMOエネルギーが小さいほうが好ましいが、−0.60a.u.(以下、a.u.を省略して記載することがある。) を下回る化合物は知られておらず、実質的に、PF6−(HOMOエネルギー=−0.39)、BF4 −(HOMOエネルギー=−0.35)、CF3SO3 −(HOMOエネルギー=−0.27)が好ましい。逆に、HOMOエネルギーが−0.20a.u.より大きい(マイナスの数値が小さい)対アニオン、例えば、蟻酸、酢酸、安息香酸(HOMOエネルギー=−0.18)、フタル酸、コハク酸(HOMOエネルギー=−0.18)などのカルボン酸アニオン、I−(HOMOエネルギー=−0.16)、Cl−(HOMOエネルギー=−0.12)、F−(HOMOエネルギー=−0.08)などの無機アニオンでは、電解質の電気化学的安定性が低いため、電解液として用いた場合、耐電圧が低く、長期信頼性に劣り、電気化学素子として有用ではない。
これらのなかで、特に好ましいものは、電気化学的安定性の観点から、カチオン種N−メチル−1−アザビシクロ[2,2,2]オクタン−イウムのBF4塩、カチオン種N−メチル−1−アザビシクロ[2,2,1]ヘプタン−イウムのBF4塩、カチオン種N−トリフルオロメチル−1−アザビシクロ[2,2,2]オクタン−イウムのBF4塩、カチオン種N−トリフロオロメチル−1−アザビシクロ[2,2,1]ヘプタン−イウムのBF4塩である。
電解質(B)は化合物(A)の他に、化合物(A)と異なる他の有機塩化合物(D)等を含有していてもよい。他の有機塩化合物(D)としては、アルキルアンモニウム塩、アミジニウム塩(イミダゾリウム塩等)等である。具体的には、例えば、アルキルアンモニウムのBF4塩及びPF6塩、イミダゾリウムのBF4塩及びPF6塩等である。例えばテトラエチルアンモニウムBF4塩、トリエチルメチルアンモニウムBF4塩、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムBF4塩及び1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムBF4塩、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリウムBF4塩等が挙げられる。他の有機塩化合物(D)の量は、電解質(B)の重量に対して好ましくは0〜50重量%、より好ましくは5〜25重量%である。
スルホラン誘導体(S)はスルホラン、スルホランと3−メチルスルホラン、又はスルホランと2,4−ジメチルスルホランとの混合溶媒が好ましい。
スルホラン誘導体(S)は電解液用の溶媒としては、高粘度であることから電導度が小さく、電気化学素子を作成した場合、内部抵抗が高いという問題があったが、非水溶媒(G)を使用することで、電解液の粘度を下げられ、結果として電解液の電導度が向上し、電気化学素子の内部抵抗を下げることができる。従来の4級アンモニウム系の電解質は、非水混合溶媒(H)へは不溶、または低温で析出するといった課題があったが、化合物(A)は、非水混合溶媒(H)への溶解性が高いため、低温においても電解質の析出が起こりにくく、広い温度範囲で安定に性能を発揮することができる。
・カルボン酸エステル類:酢酸メチル、プロピオン酸メチルなど。
・ラクトン類:γ−ブチロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトンなど。
上記のうちでプロピオン酸メチル、γ−ブチロラクトンが好ましい。
R17は、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、あるいは炭素数1〜7である有機基(g)である。
有機基(g)の炭素数が8以上であればベンゼン誘導体(G2)が室温において固体となるため、電解液溶媒に適さない。
R18及びR19は水素原子、ハロゲン原子、あるいは炭素数1〜7である有機基(g)である。R17、R18及びR19は同じでも異なっていてもよい。有機基(g)の炭素数が8以上であればベンゼン誘導体(G2)が室温において固体となるため、電解液溶媒に適さない。
エステル結合を有するアルキル基の例としては−C(=O)OCH3、
−C(=O)OC2H5、−CH2OC(=O)CH3、−CH2C(=O)OCH3
等が挙げられる。
エーテル結合を有するアルキル基の例としてはメトキシ基、エトキシ基、メトキシメチル基等が挙げられる。
炭酸エステル結合を有するアルキル基の例としては−OC(=O)OCH3、
−OC(=O)OCH2CH3、−CH2−OC(=O)OCH3などが挙げられる。
スルホニル結合を有するアルキル基の例としては、
−S(=O)2−CH3、−S(=O)2−CH2CH3等が挙げられる。
ニトリル基を有するアルキル基の例としては、−CH2−CNなどが挙げられる。
オルガノシリル基の例としては−CH2−Si(CH3)3、−Si(CH3)3などが挙げられる。
ベンゼン誘導体(G2)の具体例としては以下のものが挙げられる。
トルエン、キシレン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、1,2,3−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、2−クロロトルエン、3−クロロトルエン、4−クロロトルエン、2,3−ジクロロトルエン、2,4−ジクロロトルエン、フルオロベンゼン、1,2−ジフルオロベンゼン、1,3−ジフルオロベンゼン、1,4−ジフルオロベンゼン、1−クロロ−2−フルオロベンゼン、1−クロロ−2−フルオロベンゼン、ブロモベンゼン、ベンゾトリフルオリド、2−メチルベンゾトリフルオリド、4−クロロベンゾトリフルオリド、ベンゾニトリル、フタロニトリル、2−フルオロベンゾニトリル、4−シアノベンゾトリフルオリド、フェニルアセトニトリル、塩化ベンジル、臭化ベンジル、α−クロロ−o−キシレン、安息香酸アルキルエステル(安息香酸メチル、安息香酸エチル等)、フタル酸ジアルキルエステル(例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸エチルメチル、フタル酸ジエチル等)、o−トルイル酸メチル、m−トルイル酸メチル、p−トルイル酸メチル、イソフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジメチル、メトキシベンゼン、メトキシメチルベンゼン、メチルフェニルカーボネート、メチルフェニルスルホン、トリメチルフェニルシランなど。
ベンゼン誘導体(G2)は25℃以上で液体であることが好ましい。
また、ベンゼン誘導体(G2)の20℃における粘度(ブルックフィールド粘度計で測定される粘度。例えば、東機産業製(株)TV−22型粘度形により測定することが出来る。)は好ましくは0.1mPa・s〜6mPa・s、さらに好ましくは0.2mPa・s〜2mPa・sである。
上記のうちでトルエン、クロロベンゼン、ベンゾトリフルオリド、ベンゾニトリルが好ましい。
非水溶媒(G3)の具体例としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリルなどである。上記のうちでアセトニトリル、プロピオニトリルが好ましい。
溶媒(J)の具体例としては以下のものが挙げられる。
・エーテル類:鎖状エーテル[炭素数2〜6(ジエチルエーテル、メチルイソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなど);炭素数7〜12(ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルなど)]、環状エーテル[炭素数2〜4(テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサンなど);炭素数5〜18(4−ブチルジオキソラン、クラウンエーテルなど)]。
・アミド類:N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、ヘキサメチルホスホリルアミド、N−メチルピロリドンなど。
・炭酸エステル類:エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネートなど。
・スルホキシド類:ジメチルスルホキシド、スルホラン、3−メチルスルホラン、2,4−ジメチルスルホランなど。
・ニトロ化合物:ニトロメタン、ニトロエタンなど。
・複素環式溶媒:N−メチル−2−オキサゾリジノン、3,5−ジメチル−2−オキサゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルピロリジノンなど。
・ケトン類:アセトン、2,5−ヘキサンジオン、シクロヘキサノンなど。
・リン酸エステル類:トリメチルリン酸、トリエチルリン酸、トリプロピルリン酸など。
が挙げられる。
(1)スルホランとγ−ブチロラクトン(γBL)の混合溶媒。
重量比は、スルホラン:γBLが20:80〜80:20、好ましくは30:70〜70:30のもの。
(2)スルホランとクロロベンゼンの混合溶媒。
重量比は、スルホラン:クロロベンゼンが20:80〜80:20、好ましくは30:70〜70:30のもの。
(3)スルホランとベンゼントリフルオリドの混合溶媒
重量比は、スルホラン:ベンゼントリフルオリドが20:80〜80:20、好ましくは30:70〜70:30のもの。
(4)スルホランとアセトニトリルの混合溶媒。
重量比は、スルホラン:アセトニトリルが20:80〜80:20、好ましくは30:70〜70:30のもの。
(5)スルホランとベンゾニトリルの混合溶媒
重量比は、スルホラン:ベンゾニトリルが20:80〜80:20、好ましくは30:70〜70:30のもの。
電解液中の含水量はカールフィッシャー法(JIS K0113−1997、電量滴定方法)で測定することができる。
電解液中の水分を上記の範囲にする方法としては、あらかじめ十分に乾燥した電解質(B)と、あらかじめ十分に脱水した非水溶媒とを使用する方法等が挙げられる。
乾燥方法としては、減圧下加熱乾燥(例えば20Torr減圧下、150℃で加熱)して、含有されている微量の水を蒸発させて除去する方法、再結晶等が挙げられる。
脱水方法としては、減圧下加熱脱水(例えば100Torrで加熱)して、含有されている微量の水を蒸発させて除去する方法、モレキュラーシーブ(ナカライテスク製、3A 1/16等)、活性アルミナ粉末などの脱水剤を使用する方法等が挙げられる。
また、これらの他に、電解液を減圧下加熱脱水(例えば100Torr減圧下、100℃で加熱)して、含有されている微量の水を蒸発させて除去する方法、モレキュラーシーブ、活性アルミナ粉末などの除水剤を使用する方法等が挙げられる。これらの方法は、それぞれ単独で行ってもよいし、組み合わせて行ってもよい。これらのうち、再結晶で電解質(B)を高純度化した後に、さらに(B)を減圧下加熱乾燥する方法、非水溶媒(C)又は電解液にモレキュラーシーブを加える方法が好ましい。
次に本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下、特に記載のないかぎり、「部」は「重量部」を意味する。
以下の実施例において、1H−NMR、19F−NMR及び13C−NMRの測定は、下記の方法で行った。
1H−NMRの測定条件 機器:AVANCE300(日本ブルカー株式会社製)、溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド、周波数:300MHz。
19F−NMRの測定条件 機器:AL−300(日本電子製)、溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド、周波数:300MHz
13C−NMRの測定条件 機器:AL−300(日本電子製)、溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド、周波数:300MHz
電解質(A−1)の製造
・ヨウ化物塩の合成
1−アザビシクロ[2,2,2]オクタン(シグマアルドリッチジャパン(株)製)113部、アセトン339部をガラスビーカーに仕込み均一に溶解させた。溶液を攪拌しながらヨウ化メチル156部をゆっくりと滴下した後、30℃で3時間攪拌を続けた。析出した白色固体を濾過し、80℃減圧にて乾燥を行い、一般式(5)で表されるカチオン種(a−1)のヨウ化物塩を255部得た。
酸化銀116部、42重量%のホウフッ化水素酸水溶液209部を混合した溶液を100℃減圧脱水して得られた固体に、メタノール550部を加えて溶解しAgBF4メタノール溶液を得た。
・BF4塩の作成
上記のAgBF4溶液745部を(a−1)のヨウ化物塩253部とメタノール253部の混合溶液に対してゆっくりと滴下、混合した後、濾過し濾液を回収した。濾液中にAgBF4溶液あるいはヨウ化物塩溶液を少しずつ添加することで、溶液中の銀イオン含量を10ppm以下に、ヨウ素イオン含量を5ppm以下に微調整した後、濾過し濾液を回収した。80℃減圧で濾液の脱溶媒を行い、白色結晶206部を得た。メタノール600部を加えて30℃で溶解させた後、−5℃に冷却し12時間静置して再結晶を行った。析出した結晶を濾過し、80℃減圧乾燥を行い電解質(A−1)を147部得た。1H−NMR、19F−NMR及び13C−NMRで分析した結果、電解質(A−1)はカチオン種(a−1)のBF4塩であった。1H−NMRの積分値から、純度は99%であった。
電解質(A−2)の製造
・AgPF6溶液の作成
実施例1において42重量%ホウフッ化水素酸水溶液の代わりに60重量%のHPF6水溶液243部を酸化銀116部と混合し、100℃減圧脱水を行った後、メタノール550部を加え溶解させ、AgPF6のメタノール溶液を得た。
・PF6塩の作成
上記のAgPF6溶液803部を(a−1)のヨウ化物塩253部とメタノール255部の混合溶液に対して、徐々に混合した後、濾過し濾液を回収した。濾液中にAgBF4溶液あるいはヨウ化物塩溶液を少しずつ添加することで、溶液中の銀イオン含量を10ppm以下に、ヨウ素イオン含量を5ppm以下に微調整した後、濾過し濾液を回収した。濾液を80℃減圧で脱溶媒を行い、白色結晶262部を得た。得られた固体にメタノール600部を加えた後−5℃に冷却し12時間静置して再結晶を行った。析出した結晶を濾過し、80℃減圧乾燥することによって電解質(A−2)を194部得た。1H−NMR、19F−NMR及び13C−NMRで分析した結果、電解質(A−2)はカチオン種(a−1)のPF6塩であった。1H−NMRの積分値から、純度は99%であった。
電解質(A−3)の製造
・AgCF3SO3溶液の作成
実施例1において42重量%ホウフッ化水素酸水溶液の代わりに60重量%のCF3SO3H水溶液250部を酸化銀116部と混合し、減圧脱水を行った後メタノール550部を加えて溶解させAgCF3SO3メタノール溶液を得た。
・CF3SO3塩の作成
上記のAgCF3SO3溶液807部をカチオン種(a−1)のヨウ化物塩253部とメタノールの混合溶液に対して、徐々に混合した後、濾過し濾液を回収した。濾液中にAgBF4溶液あるいはヨウ化物塩溶液を少しずつ添加することで、溶液中の銀イオン含量を10ppm以下に、ヨウ素イオン含量を5ppm以下に微調整した後、濾過し濾液を回収した。濾液を80℃減圧脱溶媒で行い、白色結晶265部を得た。得られた固体にメタノール600部を加えた後−5℃に冷却し12時間静置して再結晶を行った。析出した結晶を濾過し、80℃減圧脱溶媒することによって電解質(A−3)を196部得た。1H−NMR、19F−NMR及び13C−NMRで分析した結果、電解質(A−3)はカチオン種(a−1)のCF3SO3塩であった。1H−NMRの積分値から、純度は99%であった。
電解質(A−4)の製造
・1−アザビシクロ[2,2,1]ヘプタンの合成
4−ピリジンメタノール(シグマアルドリッチジャパン(株)製)110部とエタノール1000部を混合し、ナトリウム250部を徐々に加えて6時間還流した。溶液を冷却し、水250部を加えた。減圧下でエタノールを蒸発させ、残留物にジエチルエーテル200部を加えて抽出した。30℃減圧脱溶媒を行い、無色粘性溶液を得た。この溶液114部に濃ヨウ化水素酸250部を徐々に滴下し、さらに3時間還流を行った。この溶液に50%水酸化ナトリウム350部を添加した後、50℃で3時間加熱した。その後30℃に冷却し、この溶液にジエチルエーテル800部を加えて抽出を行った。炭酸ナトリウムを添加して脱水し、10℃減圧でジエチルエーテルを除去した後、蒸留を行った。留分を1H−NMRで分析した結果、原料が消失し、1−アザビシクロ[2,2,1]ヘプタンが生成していることがわかった。収率は40%であった。
・ヨウ化物塩の合成
得られた1−アザビシクロ[2,2,1]ヘプタン100部、アセトン300部をガラスビーカーに仕込み均一に溶解させた。溶液を攪拌しながらヨウ化メチル156部をゆっくり滴下した後、30℃で3時間攪拌を続けた。析出した白色固体を濾過し80℃減圧にて乾燥を行い、一般式(6)で表されるカチオン種(a−2)のヨウ化物塩を242部得た。
製造例1と同様にAgBF4のメタノール溶液を得た。
・BF4塩の作成
上記のAgBF4溶液745部を(a−2)のヨウ化物塩239部とメタノール239部の混合溶液に対して、ゆっくりと滴下、混合した後、濾過し濾液を回収した。濾液中にAgBF4溶液あるいはヨウ化物塩溶液を少しずつ添加することで、溶液中の銀イオン含量を10ppm以下に、ヨウ素イオン含量を5ppm以下に微調整した後、濾過し濾液を回収した。80℃減圧で濾液の脱溶媒を行い、白色結晶を194部得た。結晶にメタノール600部を加えて30℃で溶解させた後、−5℃に冷却し12時間静置して再結晶を行った。析出した結晶を濾過し、80℃減圧乾燥を行い電解質(A−4)を138部得た。1H−NMR、19F−NMR及び13C−NMRで分析した結果、電解質(A−4)はカチオン種(a−2)のBF4塩であった。1H−NMRの積分値から、純度は99%であった。
電解質(A−5)の製造
・AgPF6溶液の作成
製造例4において42重量%ホウフッ化水素酸水溶液の代わりに60重量%のHPF6水溶液243部を酸化銀116部と混合し、100℃減圧脱水を行った後、メタノール550部を加え溶解させ、AgPF6のメタノール溶液を得た。
上記のAgPF6溶液803部を(a−2)のヨウ化物塩253部とメタノール255部の混合溶液に対して、徐々に混合した後、濾過し濾液を回収した。濾液中にAgBF4溶液あるいはヨウ化物塩溶液を少しずつ添加することで、溶液中の銀イオン含量を10ppm以下に、ヨウ素イオン含量を5ppm以下に微調整した後、濾過し濾液を回収した。濾液を80℃減圧で脱溶媒を行い、白色結晶262部を得た。得られた固体にメタノール600部を加えた後−5℃に冷却し12時間静置して再結晶を行った。析出した結晶を濾過し、80℃減圧乾燥することによって電解質(A−5)を194部得た。1H−NMR、19F−NMR及び13C−NMRで分析した結果、電解質(A−5)はカチオン種(a−2)のPF6塩であった。1H−NMRの積分値から、純度は99%であった。
・電解質(A−6)の製造
ピロリジン(和光純薬工業製)100部、炭酸カリウム97部をテフロン(登録商標)コーティングしたオートクレーブに仕込み、1,4−ジクロロブタン(和光純薬工業製)179部を加え、90℃で8時間反応を行った。この反応溶液に42重量%のホウフッ化水素酸水溶液(ステラケミファ製)294部を25℃で約30分かけて徐々に滴下した。滴下が終了して、泡の発生がおさまった後、20Torr、100℃で、溶媒を全量留去して、固体195部が得られた。この固体をエタノール(ナカライテスク製)、2−プロパノール(ナカライテスク製)を用いて晶析を2回行い、スピロ−(1,1’)−ビピロリジニウムイオンBF4 −の電解質塩(A−6)136部を得た。
以下で使用する電解液用溶媒はすべて、以下の脱水処理をしてから使用した。
使用する溶媒100部に対してそれぞれモレキュラーシーブ3部を加えて25℃で60時間放置して乾燥を行った後、モレキュラーシーブを濾別し、脱水溶媒を得た。
脱水したスルホラン80部と、脱水したアセトニトリル20部と、電解質(A−1)20部を25℃にて均一に混合溶解させて、電解液を得た。電解液の水分は32ppmであった。
脱水したスルホラン20部と、脱水したγ−ブチロラクトン80部と、電解質(A−1)20部を25℃にて均一に混合溶解させて、電解液を得た。電解液の水分は32ppmであった。
脱水したスルホラン40部とクロロベンゼン60部と、電解質(A−1)20部を均一混合し電解液を得た。電解液の水分は20ppmであった。
脱水したスルホラン50部とγ−ブチロラクトン50部と、電解質(A−1)20部を均一混合し電解液を得た。電解液の水分は29ppmであった。
脱水したスルホラン40部とクロロベンゼン60部と、電解質(A−2)25部を均一混合し電解液を得た。電解液の水分は21ppmであった。
脱水したスルホラン40部とクロロベンゼン60部と、電解質(A−3)26部を均一混合し電解液を得た。電解液の水分は21ppmであった。
脱水したスルホラン40部とクロロベンゼン60部と、電解質(A−4)19部を均一混合し電解液を得た。電解液の水分は20ppmであった。
脱水したスルホラン40部とクロロベンゼン60部と、電解質(A−5)24部を均一混合し電解液を得た。電解液の水分は19ppmであった。
脱水したスルホラン30部とトルエン70部と、電解質(A−4)19部を均一混合し電解液を得た。電解液の水分は19ppmであった。
脱水したスルホラン50部とベンゾトリフルオリド50部と、電解質(A−1)20部を均一混合し電解液を得た。電解液の水分は21ppmであった。
脱水したスルホラン60部と4−クロロベンゾトリフルオリド40部と、電解質(A−1)20部を均一混合し電解液を得た。電解液の水分は29ppmであった。
脱水したスルホラン50部と安息香酸メチル50部と、電解質(A−1)20部を均一混合し電解液を得た。電解液の水分は18ppmであった。
脱水したスルホラン50部とベンゾニトリル50部と、電解質(A−4)19部を均一混合し電解液を得た。電解液の水分は30ppmであった。
<実施例14>
脱水したスルホラン50部とベンジルメチルエーテル50部と、電解質(A−4)19部を均一混合し電解液を得た。電解液の水分は24ppmであった。
脱水したスルホラン40部とプロピオン酸メチル60部と、電解質(A−4)19部を均一混合し電解液を得た。電解液の水分は19ppmであった。
脱水したスルホラン30部と3−メチルスルホラン10部、プロピオン酸メチル60部と、電解質(A−1)20部を均一混合し電解液を得た。電解液の水分は19ppmであった。
脱水したスルホラン40部と2,4−ジメチルスルホラン20部、クロロベンゼン40部と、電解質(A−4)19部を均一混合し電解液を得た。電解液の水分は19ppmであった。
脱水したプロピレンカーボネート100部と、電解質(A−1)20部を25℃にて均一に混合溶解させて、電解液を得た。電解液の水分は22ppmであった。
脱水したプロピレンカーボネート100部と、電解質(A−2)25部を25℃にて均一に混合溶解させて、電解液を得た。電解液の水分は22ppmであった。
脱水したスルホラン40部とγ−ブチロラクトン60部と、電解質(A−6)20部を均一混合し電解液を得た。電解液の水分は24ppmであった。
脱水したスルホラン40部とクロロベンゼン60部と、電解質としてテトラエチルアンモニウムBF4(東京化成工業社製)(A−7)20部を均一混合し電解液を得た。電解液の水分は21ppmであった。
脱水したスルホラン40部とクロロベンゼン60部と、電解質としてトリエチルメチルアンモニウムBF4(東京化成工業社製)(A−8)19部を均一混合し電解液を得た。電解液の水分は21ppmであった。
脱水したスルホラン100部と、電解質(A−1)20部を均一混合し電解液を得た。電解液の水分は21ppmであった。
本発明の実施例1〜17の電解液は、−30℃の低温において固化もしくは析出物の発生がなく、かつ電位窓が6.7V以上と大きいことから、−30℃の低温でも使用可能であり、かつ耐電圧も高いことが示された。比較例1、2は、低温で電解質の析出も凝固も発生しないが、電位窓が狭いことから、耐電圧が低い。また比較例3〜5は−30℃では電解質が析出、比較例6は電位窓は高いが凝固していることから使用できない。
DMSL:2,4−ジメチルスルホラン AN:アセトニトリル
GBL:γ−ブチロラクトン CB:クロロベンゼン
TL:トルエン PM:プロピオン酸メチル
TfB:ベンゾトリフルオリド CTfB:4−クロロベンゾトリフルオリド
MB:安息香酸メチル BN:ベンゾニトリル
BME:ベンジルメチルエーテル PC:プロピレンカーボネート
Claims (7)
- 一般式(1)で表される化合物(A)を含有してなる電解質(B)と、非水混合溶媒(H)を含有してなる電解液であって、非水混合溶媒(H)が、スルホラン、3−メチルスルホラン及び2,4−ジメチルスルホランからなる群より選ばれる少なくとも1種のスルホラン誘導体(S)と、下記の(G1)〜(G3)の群から選ばれる少なくとも1種の非水溶媒(G)を含有してなることを特徴とする電気化学素子用電解液。
(G1):一般式(2)で表されるエステル
(G2):一般式(3)で表される分子量が400以下であるベンゼン誘導体
(G3):一般式(4)で表されるニトリル誘導体
- スルホラン誘導体(S)と非水溶媒(G)の合計重量に対して、スルホラン誘導体(S)の重量が20〜80重量%、非水溶媒(G)の重量が80〜20重量%である請求項1に記載の電解液。
- 非水溶媒(G)が非水溶媒(G2)である請求項1または2に記載の電解液。
- 一般式(1)において、対イオンX−が、BF4 −、PF6 −、AsF6 −、SbF6 −、N(RfSO3)2 −、C(RfSO3)3 −およびRfSO3 −(Rfは炭素数1〜12のフルオロアルキル基)からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項に記載の電解液。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の電解液を用いることを特徴とする電気化学素子。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の電解液を用いることを特徴とする電気化学キャパシタ。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の電解液を用いることを特徴とする電気二重層キャパシタ。
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