JP2010138181A - 経管栄養剤、経管栄養剤セットおよび経管栄養剤の投与方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】管状材を通して消化管内に供給される栄養剤であって、栄養剤が、粘体状である。栄養剤が粘体状でありその粘度が高いから、一度に大量の栄養剤を投与しても、栄養剤が消化管内に確実に貯留され、徐々に口側から肛門側に向けて移動されるので、胃食道逆流やダンピング症候群を防ぐことができ、栄養剤の投与時間を大幅に短くすることができる。患者の状態を健常者の状態に近づけることができ、日常生活動作やリハビリ訓練を無理なく行うことができ、患者のQOL、および看護や介護をする人のQOLも同時に向上させることができる。
【選択図】図1
Description
意識障害、拒食、重度の誤嚥、誤嚥性肺炎、食事量の不足等の障害や疾患など何らかの原因で水分や栄養を経口摂取することが困難であったり、また、経口摂取のみでは十分な水分・栄養がとれない患者には、経静脈的栄養法や経鼻経管栄養法、間歇的経口経管栄養法、胃瘻・腸瘻等の外瘻を介した経管栄養法といった代償的栄養法により水分・栄養を摂取させており、消化器に病変がない場合には、経鼻・経口経管栄養法や胃瘻・腸瘻経管栄養法が選択される。経鼻・経口経管栄養法は、鼻または口から挿入して食道、胃、十二指腸、空腸の何れかの部位まで到達させたチューブを介して、また、胃瘻・腸瘻経管栄養法は、食道や胃、空腸(多くは胃)に手術的、内視鏡的に外瘻(瘻孔)を造設して留置したチューブを介して、栄養剤を持続的または間歇的に投与する方法である。これらの方法を採用すれば、胃や腸に直接栄養剤を供給することができるから、健康な人と同様に消化管を通じて水分・栄養を摂取させることができ、患者の生活の質(以下、QOLという)を向上させることができる。
本発明は、かかる経鼻・経口経管栄養法や胃瘻・腸瘻経管栄養法に使用される栄養剤およびこの栄養剤の投与方法に関する。
なお、本発明において、栄養剤とは、医薬品として認可された経腸栄養剤と、医薬品としての認可を得ず食品扱いとして市販される流動食の両方を含む概念である。
(1)低粘度の栄養剤は、胃に投与されてから腸に排出される時間が短くなるため、一度に大量の栄養剤が投与されると栄養剤が急速に胃から腸に通過する可能性があり、腸内で栄養剤中の糖質が急速に吸収されて高血糖になったり下痢症状を呈したりするダンピング症候群が発生する可能性がある。
(2)低粘度の栄養剤は流動性が高いので、患者が咳等をしたとき等のように何らかのはずみで腹圧が上昇すると、胃内に貯留されていた栄養剤は食道に押し上げられやすく、とくに、患者が胃食道移行部の機能不全を伴う場合には、嘔吐や胃食道逆流を生じさせるおそれがある。胃から逆流したものを患者が誤嚥して、誤嚥性肺炎を引き起こす危険性も高くなる。なお、単に、胃食道逆流を防ぐだけであれば、チューブの一端を十二指腸や空腸まで延ばして配置させればよいが、この場合には、栄養剤が直接腸に供給されることとなるので、(1)の問題、つまりダンピング症候群の解決策にはならない。
従来例1,2の技術は、カルシウムやマグネシウム等と反応すると粘度が高くなる増粘剤と、カルシウムまたはマグネシウム等を含む栄養剤とを別々に胃内に投与するというものである。この場合、胃内で両液が混合すれば栄養剤の粘度を高くすることができるので、栄養剤の胃内における貯留時間を長くすることができ、ダンピング症候群を予防することができる。
従来例3の技術は、カラギーナンおよびアルギン酸を含むゲル化剤を、カルシウムやマグネシウムを含む栄養剤に混合させるというものである。カラギーナンおよびアルギン酸は、PHが2〜3という条件の下でカルシウムやマグネシウムと混合されると粘度が高くなるものである。胃内は通常PHが2〜3という条件であるから、上記のごとき栄養剤を胃中に投与すればゲル化剤、つまり栄養剤の粘度が高くなるので、栄養剤の胃内における貯留時間を長くすることができ、胃食道逆流やダンピング症候群を予防することができる。
このため、一度に大量の栄養剤が投与されれば、粘度が高くなる前に胃食道逆流を生じたり、腸に排出される可能性があるので、栄養剤を投与する時間を短縮することはできない。
しかし、従来例1,2の技術では、単独では粘度の低い溶液を別々に投与して胃内で成り行き任せで反応させており、胃内における増粘剤と栄養剤の混合状態はコントロールすることはできないから、胃内における増粘剤と栄養剤の混合状態によって栄養剤の粘度が変化してしまう。
また、従来例3の技術は、栄養剤自体にゲル化剤が入っているため、混合状態の相違による粘度の変化は生じないが、患者の胃内のPHは患者の個体差や体調によって変化するので、栄養剤の粘度を毎回一定の状態に保つことはできず、最悪の場合には全く粘度が高くならない可能性もある。
したがって、従来例1〜3の技術では胃内における栄養剤の粘度を正確に調製することはできないから、各患者に最適な粘度の栄養剤を、毎回投与することは困難である。
従来例4の技術は、栄養剤に粉末寒天を混合してシリンジ内で固化させ、固化栄養剤をシリンジから直接チューブに供給するものである。固化した栄養剤は、ピストンに押されてシリンジからチューブ内に押し出されると流動可能な状態となり、チューブ内を流すことができるから、粘度の高い栄養剤を直接胃内に投与することができる。
このため、胃内に投与される栄養剤の粘度を、常に所定の値以上にすることができるから、大量に投与しても、胃食道逆流やダンピング症候群を予防することができる。しかも、一度に大量の栄養剤を投与できるから、栄養剤の投与時間を短くできる。具体的には、従来の栄養剤と同じ量であれば、一回当たり数分で投与できるから、患者の負担を軽減することができる。
また、栄養剤に混合する寒天の割合を変化させれば、シリンジからチューブに押し出された栄養剤の粘度を調製することができるから、所望の粘度の栄養剤を患者に投与することができる。
さらに、シリンジの口径を大きくすれば、栄養剤の粘度を高くすることができ、シリンジの口径を小さくすれば、栄養剤の粘度を小さくすることができる。つまり、シリンジの口径を変化させれば、栄養剤の粘度を変化させることができるので、所望の粘度の栄養剤を患者に投与することができる。
また、シリンジ口径を大きくして寒天の量を多くすれば、栄養剤の粘度を高くすることはできるが、所定の量以上に寒天を入れると固化した栄養剤が固くなりすぎてしまい、シリンジから押し出された栄養剤は氷を砕いたような塊の状態でチューブ内に供給される。つまり、栄養剤は流動可能な状態とならず、単に塊がシリンジ側から胃内に向けて移動するような状態となる。すると、栄養剤の投与に時間がかかるし、栄養剤を移動させるために大きな力が必要となり、看護師等の労力も大きくなる。したがって、従来例4の技術では、10,000ミリパスカル秒より低い粘度でしか胃内に投与することができない。
さらに、ピストンの初動、つまりピストンを最初に押すときに大きな力を加えなければ、固化している栄養剤を流動可能な状態とすることができない。そして、固化した栄養剤を大きな力で押すと、まずシリンジ先端部の栄養剤が流動可能な状態となるが、流動可能な状態となった瞬間に栄養剤が勢いよくチューブ内に射出される。すると、射出された栄養剤に押されてチューブ内の空気が勢いよく胃内に放出されるため、「プシュ」という音が発生し、その音を聞いた患者が不安や不快感を感じる恐れがあるし、ピストンの初動時に大きな力を加えなければならないのでその力の加減がコントロールしづらく、投与する看護師等も非常に気を遣い、心労が多くなる。
さらに、栄養剤の固化に寒天を使用しているので、栄養剤の調製には、寒天と栄養剤を混合した溶液を水に溶かした状態で加熱し、その加熱された溶液をシリンジ内に吸引してから冷却するという作業が必要であるから、非常に手間と時間がかかる。そして、固化した栄養剤は吸引できないので、栄養剤をシリンジ内で固化させなければならない。すると、栄養剤が流動性を有する溶液の状態、つまり、溶液が高温のうちにシリンジ内に吸引しなければならないので、作業が危険である。
第2発明の経管栄養剤は、第1発明において、前記栄養剤の粘度が、1000ミリパスカル秒以上〜 60000ミリパスカル秒以下であることを特徴とする。
第3発明の経管栄養剤は、第1発明において、前記栄養剤の粘度が、1000ミリパスカル秒以上〜 10000ミリパスカル秒未満であることを特徴とする。
第4発明の経管栄養剤は、第1発明において、前記栄養剤の粘度が、 10000ミリパスカル秒以上〜 20000ミリパスカル秒未満であることを特徴とする。
第5発明の経管栄養剤は、第1発明において、前記栄養剤の粘度が、 20000ミリパスカル秒以上〜 60000ミリパスカル秒以下であることを特徴とする。
第6発明の経管栄養剤は、第1発明において、前記栄養剤が、患者に必要とされる栄養成分を含む主剤と、該主剤に混合すると、該栄養剤が所定の粘度となるように調製された増粘剤とからなることを特徴とする。
第7発明の経管栄養剤は、第6発明において、前記主剤と前記増粘剤とが、管状材に供給される前に混合されることを特徴とする。
第8発明の経管栄養剤は、第1発明において、前記管状材の一端が、消化管に造設された外瘻を介して、消化管内に配置されていることを特徴とする。
第9発明の経管栄養剤セットは、管状材を通して消化管内に供給される栄養剤が、容器内に密封されており、前記栄養剤が、第1,第2,第3,第4,第5または第6発明に記載の経管栄養剤であることを特徴とする。
第10発明の経管栄養剤セットは、第9発明において、前記栄養剤が、患者に必要とされる栄養成分を含む主剤と、該主剤に混合すると、該栄養剤が所定の粘度となるように調製された増粘剤とからなり、前記主剤と前記増粘剤とが、前記容器内に互いに分離された状態で密封されており、前記主剤と前記増粘剤とが、管状材に供給される前に混合されることを特徴とする。
第11発明の経管栄養剤セットは、第9発明において、前記栄養剤が、前記容器から前記管状材に直接供給されることを特徴とする。
第12発明の経管栄養剤セットは、請求項9記載の発明において、前記容器が、口栓付きソフトバッグであることを特徴とする。
第13発明の経管栄養剤セットは、第9発明において、前記管状材の一端が、消化管に造設された外瘻を介して、消化管内に配置されていることを特徴とする。
第14発明の経管栄養剤の投与方法は、粘体状の栄養剤を、管状材を通して消化管内に供給することを特徴とする。
第15発明の経管栄養剤の投与方法は、第14発明において、前記栄養剤を、その粘度が、1000ミリパスカル秒以上〜 60000ミリパスカル秒以下となるように調製することを特徴とする。
第16発明の経管栄養剤の投与方法は、第14発明において、前記栄養剤を、粘体状の物質を収容排出可能な供給手段内に収容し、該供給手段から前記管状材内に供給することを特徴とする。
第17発明の経管栄養剤の投与方法は、第14発明において、前記栄養剤が、患者に必要とされる栄養成分を含む主剤と、該主剤に混合すると、該栄養剤が所定の粘度となるように調製された増粘剤とからなり、前記主剤と前記増粘剤を混合して前記栄養剤を調製し、調製した該栄養剤を供給手段内に収容することを特徴とする。
第18発明の経管栄養剤の投与方法は、第14発明において、前記管状材の一端が、消化管に造設された外瘻を介して、消化管内に配置されていることを特徴とする。
第2発明によれば、栄養剤の粘度が、1000〜 60000ミリパスカル秒であるから、栄養剤を食道や胃に供給すれば、健常者が食物を摂取したときと同様に、栄養剤を胃内に、一定の時間貯留させてから腸に供給させることができる。とくに、栄養剤の粘度を、投与する患者に適した粘度としておけば、通常の人と比べて胃排出機能に異常がある患者であっても、栄養剤を胃内に確実に貯留させることができる。また、栄養剤の粘度を 50000ミリパスカル秒程度とすれば、人が食物を咀嚼して飲み込んだときの食物の粘度と同等の状態とすることができるから、経管投与されている患者の状態を健常者の状態により一層近づけることができ、患者のQOLをさらに向上させることができる。
第3発明によれば、経管栄養剤の粘度を1000ミリパスカル秒以上〜 10000ミリパスカル秒未満としているので、管状材内をスムースに流すことができるから、看護師が消化管内に簡単かつ確実に栄養剤を供給することができる。しかも、栄養剤を十二指腸や空腸に供給しても、胃等に投与するよりはゆっくりと栄養剤を投与すれば、ダンピング症候群を発生させる心配がない。
第4発明によれば、 10000ミリパスカル秒以上〜 20000ミリパスカル秒未満としているので、栄養剤を食道や胃に供給しても、ほとんどの患者において、胃食道逆流と胃から腸への早過ぎる流出を確実に防ぐことができる。しかも、栄養剤が管状材内を流れる抵抗が大きくないので、看護師が消化管内に簡単に栄養剤を供給することができる。
第5発明によれば、栄養剤の粘度を 20000ミリパスカル秒以上〜 60000ミリパスカル秒以下としているので、栄養剤を食道や胃に供給しても、通常の患者であればより確実に胃食道逆流等を防ぐことができるし、通常の患者に比べて胃食道逆流等を生じやすい患者であっても、確実に胃食道逆流の発生を防ぐことができる。とくに、栄養剤の粘度を 50000ミリパスカル秒程度とすれば、人が食物を咀嚼して飲み込んだときにおける食物の粘度と同等の状態とすることができる。このため、胃食道逆流等を防ぐだけでなく、経管投与されている患者の状態を健常者の状態により一層近づけることができるから、患者のQOLをさらに向上させることができる。
第6発明によれば、主剤と増粘剤を混合するだけで所定の粘度の栄養剤を調製することができるから、栄養剤の調製が容易であり、かつ患者に必要な栄養分をバランスよく確実に摂取させることができる。例えば、増粘剤を、所望の栄養成分を含む主剤,例えば市販の流動食や成分栄養剤、バランス栄養食等と混合したときに所望の粘度となるように調製しておけば、両者を混合するだけで所望の粘度の栄養剤を調製することができるから、栄養剤の調製が容易であり、かつ患者に必要な栄養分をバランスよく確実に摂取させることができる。
第7発明によれば、人体に投与される前から粘体状に調製されているので、人体に投与される前の粘度のまま患者の消化管内に投与することができる。よって、患者の胃内における経管栄養剤の粘度を、正確かつ確実にコントロールすることができるから、栄養剤を食道や胃に供給した場合には、胃内に確実に貯留させることができる。
第8発明によれば、造設された外瘻に留置される管状材の長さが短くなるため、経管栄養剤を効率よく使用することができ、管状材の洗浄作業が容易になる。
第9発明によれば、経管栄養剤の保存搬送が容易になるし、必要な栄養剤をストックしておくことができる。
第10発明によれば、主剤と増粘剤を混合するだけで所定の粘度の栄養剤を調製することができるから、栄養剤の調製が容易であり、かつ患者に必要な栄養分をバランスよく確実に摂取させることができる。そして、主剤と増粘剤を互いに分離した状態で収容しているから、保存性を高くすることができる。
第11発明によれば、容器を管状材に直接供給することができるから、栄養剤を誰でも簡単に患者に投与することができる。
第12発明によれば、所定の粘度に調製された栄養剤が、口栓付きソフトバッグ内に収容されているので、口栓の部分を管状材に接続し、ソフトバックを加圧すれば、栄養剤を誰でも簡単に患者に投与することができる。
第13発明によれば、造設された外瘻に留置される管状材の長さが短くなるため、経管栄養剤を効率よく使用することができ、管状材の洗浄作業が容易になる。
第14発明によれば、栄養剤が消化管内に確実に貯留され、その後、徐々に口側から肛門側に向けて移動されるので、胃食道逆流やダンピング症候群を防ぐことができるし、栄養剤を投与する時間を大幅に短くすることができる。そして、栄養剤を食道や胃に供給すれば、健常者が食物を摂取したときと同様に、栄養剤を胃内に、一定の時間貯留させてから腸に供給させることができるから、ペプシンなどの消化酵素の作用やインスリンなどのホルモン分泌、消化管の動きも健常者と同様にすることができる。したがって、経管投与されている患者の状態を健常者の状態に近づけることができるし、栄養剤の投与時間が短いので、日常生活動作やリハビリ訓練を無理なく行うことができ、患者のQOL、および看護や介護をする人のQOLも同時に向上させることができる。また、栄養剤を短時間で投与できるので、栄養剤の投与時にのみ口から管状材を挿入して間歇投与すれば、患者は管状材を付けて生活する必要がないので、患者のQOLをさらに向上させることができる。しかも、患者が常時管状材を付けておく必要がなく投与時間が短いので、内径の大きい管状材でも使用することができるから、栄養剤の投与がより一層容易になり、栄養剤が管状材内に詰まることを確実に防ぐことができる。さらに、栄養剤に低粘度という制約がなくなるので、管状材に詰まりやすい食物繊維や栄養成分同士で凝集したり沈殿したりする可能性のある成分、栄養成分または他の薬剤と凝集したり沈殿したりする可能性のある治療薬等であっても配合することができるから、患者の健康状態を維持しやすくなり、回復を促進することができる。さらに、栄養剤が流動性を有する粘体状であるから、消化管内に栄養剤を投与するときに、投与開始からゆっくりと管状材の中を流すことができる。よって、栄養剤を管状材に供給したときに、管状材の内部の空気が勢いよく消化管内に放出されることがないので、患者に不快感を感じさせることなく栄養剤を投与することができる。さらに、粘体状の栄養剤をそのままシリンジ等に吸引してから投与することができるので、栄養剤を安全かつ容易に調製することができる。さらに、栄養剤が人体に投与されるまえから粘体状であるので、患者の胃内における栄養剤の粘度を、正確かつ確実にコントロールすることができる。
第15発明によれば、栄養剤の粘度が、1000〜 60000ミリパスカル秒であるから、栄養剤を食道や胃に供給すれば、健常者が食物を摂取したときと同様に、栄養剤を胃内に、一定の時間貯留させてから腸に供給させることができる。とくに、栄養剤の粘度を、投与する患者に適した粘度としておけば、通常の人と比べて胃排出機能に異常がある患者であっても、栄養剤を胃内に確実に貯留させることができる。また、栄養剤の粘度を 50000ミリパスカル秒程度とすれば、人が食物を咀嚼して飲み込んだときの食物の粘度と同等の状態とすることができるから、経管投与されている患者の状態を健常者の状態により一層近づけることができ、患者のQOLをさらに向上させることができる。
第16発明によれば、粘体状の栄養剤を、供給手段内に入れれば、供給手段から前記管状材内に供給することができるから、所望の容器に収容されている栄養剤を、供給手段によって簡単に患者に投与することができる。また、栄養剤が流動性を有する粘体状であるから、消化管内に栄養剤を投与するときに、投与開始からゆっくりと管状材の中を流すことができる。よって、栄養剤を管状材を通して消化管内に供給したときに、管状材の内部の空気が勢いよく消化管内に放出されることがないので、患者に不快感を感じさせることなく栄養剤を投与することができる。
第17発明によれば、主剤と増粘剤を混合するだけで所定の粘度の栄養剤を調製することができるから、栄養剤の調製が容易であり、かつ患者に必要な栄養分をバランスよく確実に摂取させることができる。例えば、増粘剤を、所望の栄養成分を含む主剤,例えば市販の流動食や成分栄養剤、バランス栄養食等と混合したときに所望の粘度となるように調製しておけば、両者を混合するだけで所望の粘度の栄養剤を調製することができるから、栄養剤の調製が容易であり、かつ患者に必要な栄養分をバランスよく確実に摂取させることができる。そして、調製された栄養剤を供給手段内に入れて、供給手段から前記管状材を通して消化管内に供給すれるだけで患者に栄養剤を投与できるから、所望の容器で栄養剤を調製することができ、かつその栄養剤を簡単に患者に投与することができる。さらに、人体に投与される前から粘体状に調製されているので、人体に投与される前の粘度のまま患者の消化管内に投与することができる。よって、患者の胃内における経管栄養剤の粘度を、正確かつ確実にコントロールすることができるから、栄養剤を食道や胃に供給した場合には、胃内に確実に貯留させることができる。
第18発明によれば、造設された外瘻に留置される管状材の長さが短くなるため、経管栄養剤を効率よく使用することができ、管状材の洗浄作業が容易になる。
図1は本実施形態の経管栄養剤を投与する作業の概略説明図である。
なお、本実施形態の経管栄養剤は、主剤のみで所望の粘度に調製できれば、増粘剤を含まないものでもよい。
増粘剤は、例えばグアーガム、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム,フェヌグリークガム、キチン、キトサン、ポビドン、ヒドロキシプロピルセルロース等のうち一種又は二種以上を組み合わせたものであるが、特に限定はない。
図1に示すように、経管栄養法によって栄養剤を投与される患者には、一端が食道または胃(以下、胃等という)に配置され、他端が人体の外部に配置されたチューブ2が留置される。このチューブ2は、経鼻・経口経管栄養法の場合には口又は鼻から挿入され、胃瘻経管栄養法の場合には胃等に造設された外瘻3に留置される。このチューブ2が、特許請求の範囲にいう管状材である。
なお、胃瘻経管栄養法を採用した場合には、造設された外瘻3に留置されるチューブ2の長さが短くなるため、チューブ2内に残留する経管栄養剤の量が少なくできるので、経管栄養剤を効率よく使用することができる。しかも、チューブ2の洗浄作業が容易になるという効果も得られる。
なお、供給手段はシリンジに限られず、粘体状の経管栄養剤を収容排出可能なものであればとくに限定はなく、例えば、口栓付きソフトバッグやラミネートチューブなどを使用してもよい。
そして、本実施形態の経管栄養剤を使用すれば胃食道逆流を確実に防ぐことができるから、胃から食道への逆流を避けるために、チューブ2の一端を十二指腸や空腸まで延ばして配置させる対策を施す必要がない。したがって、健常者が食物を摂取したときと同様に、栄養剤を胃内に、一定の時間貯留させてから腸に供給させることができるから、ペプシンなどの消化酵素の作用やインスリンなどのホルモン分泌、消化管の動きも健常者と同様にすることができ、経管投与されている患者の状態を健常者の状態に近づけることができる。
なお、胃を切除されている患者等、胃等に栄養剤を投与することができない患者の場合には、栄養剤を十二指腸や空腸に供給しなければならないが、経管栄養剤の粘度が1000ミリパスカル秒以上〜 10000ミリパスカル秒未満とすれば、直接栄養剤を十二指腸や空腸に供給しても、胃等に投与するよりはゆっくりと栄養剤を投与すれば、ダンピング症候群を発生させる心配がない。そして、ゆっくり投与したとしても、従来数時間かかっていた栄養剤の投与を、せいぜい数十分程度で行うことができる。そして、1000ミリパスカル秒以上〜 10000ミリパスカル秒未満の粘度は、健常者の胃から十二指腸や空腸に供給される食材の粘度と同程度であるから、たとえ胃等に栄養剤を投与できない場合でも、経管投与されている患者の状態を健常者の状態に近づけることができる。
2 チューブ
3 外瘻
Claims (18)
- 管状材を通して消化管内に供給される栄養剤であって、
該栄養剤が、粘体状である
ことを特徴とする経管栄養剤。 - 前記栄養剤の粘度が、
1000ミリパスカル秒以上〜 60000ミリパスカル秒以下である
ことを特徴とする請求項1記載の経管栄養剤。 - 前記栄養剤の粘度が、
1000ミリパスカル秒以上〜 10000ミリパスカル秒未満である
ことを特徴とする請求項1記載の経管栄養剤。 - 前記栄養剤の粘度が、
10000ミリパスカル秒以上〜 20000ミリパスカル秒未満である
ことを特徴とする請求項1記載の経管栄養剤。 - 前記栄養剤の粘度が、
20000 ミリパスカル秒以上〜 60000ミリパスカル秒以下である
ことを特徴とする請求項1記載の経管栄養剤。 - 前記栄養剤が、
患者に必要とされる栄養成分を含む主剤と、
該主剤に混合すると、該栄養剤が所定の粘度となるように調製された増粘剤とからなる
ことを特徴とする請求項1記載の経管栄養剤。 - 前記主剤と前記増粘剤とが、管状材に供給される前に混合される
ことを特徴とする請求項6記載の経管栄養剤。 - 前記管状材の一端が、消化管に造設された外瘻を介して、消化管内に配置されている
ことを特徴とする請求項1記載の経管栄養剤。 - 管状材を通して消化管内に供給される栄養剤が、容器内に密封されており、
前記栄養剤が、請求項1,2,3,4,5または6記載の経管栄養剤である
ことを特徴とする経管栄養剤セット。 - 前記栄養剤が、
患者に必要とされる栄養成分を含む主剤と、
該主剤に混合すると、該栄養剤が所定の粘度となるように調製された増粘剤とからなり、
前記主剤と前記増粘剤とが、前記容器内に互いに分離された状態で密封されており、
前記主剤と前記増粘剤とが、管状材に供給される前に混合される
ことを特徴とする請求項9記載の経管栄養剤セット。 - 前記栄養剤が、前記容器から前記管状材に直接供給される
ことを特徴とする請求項9記載の経管栄養剤セット。 - 前記容器が、口栓付きソフトバッグである
ことを特徴とする請求項9記載の経管栄養剤セット。 - 前記管状材の一端が、消化管に造設された外瘻を介して、消化管内に配置されている
ことを特徴とする請求項9記載の経管栄養剤セット。 - 粘体状の栄養剤を、管状材を通して消化管内に供給する
ことを特徴とする経管栄養剤の投与方法。 - 前記栄養剤を、その粘度が、1000ミリパスカル秒以上〜 60000ミリパスカル秒以下となるように調製する
ことを特徴とする請求項14記載の経管栄養剤の投与方法。 - 前記栄養剤を、粘体状の物質を収容排出可能な供給手段内に収容し、
該供給手段から前記管状材内に供給する
ことを特徴とする請求項14記載の経管栄養剤の投与方法。 - 前記栄養剤が、
患者に必要とされる栄養成分を含む主剤と、
該主剤に混合すると、該栄養剤が所定の粘度となるように調製された増粘剤とからなり、
前記主剤と前記増粘剤を混合して前記栄養剤を調製し、調製した該栄養剤を供給手段内に収容する
ことを特徴とする請求項14記載の経管栄養剤の投与方法。 - 前記管状材の一端が、消化管に造設された外瘻を介して、消化管内に配置されている
ことを特徴とする請求項14記載の経管栄養剤の投与方法。
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