JP2010137348A - 硬質被覆層がすぐれた耐欠損性及び耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具 - Google Patents

硬質被覆層がすぐれた耐欠損性及び耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具 Download PDF

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Abstract

【課題】重切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐欠損性、耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具を提供する。
【解決手段】超硬合金、サーメット、立方晶窒化ほう素基超高圧焼結体からなる切削工具基体表面に、組成式(Ti1−X−Y Si N(ただし、X、Yは原子比で、それぞれ、0.05〜0.3、0.1〜0.5)を満足するTiとSiとWの複合窒化物層を、1〜10μmの平均層厚で蒸着形成する。
【選択図】 なし

Description

この発明は、硬質被覆層がすぐれた潤滑効果を有し、したがって、切刃に対して大きな機械的負荷がかかる鋼などの重切削加工という厳しい切削条件下で用いられた場合にも、すぐれた耐欠損性、耐摩耗性を発揮し、その結果、すぐれた切削性能を長期の使用に亘って発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関するものである。
一般に、被覆工具には、各種の鋼や鋳鉄などの被削材の旋削加工にバイトの先端部に着脱自在に取り付けて用いられるインサートや、前記インサートを着脱自在に取り付けて、面削加工や溝加工、さらに肩加工などに用いられるソリッドタイプのエンドミルと同様に切削加工を行うインサート式エンドミルなどが知られている。
また、従来被覆工具として、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金あるいは立方晶窒化ほう素(以下、cBNで示す)基超高圧焼結材料で構成された工具基体の表面に、TiとWの複合窒化物((Ti,W)N)層あるいはTiとSiの複合窒化物((Ti,Si)N)層からなる表面被覆層を蒸着形成してなる被覆工具が知られており、これらが各種の鋼や鋳鉄などの切削加工に用いられていることも知られている。
さらに、上記の被覆工具が、例えば図1に概略説明図で示される物理蒸着装置の1種であるアークイオンプレーティング(AIP)装置に上記の工具基体を装入し、ヒータで装置内を、例えば500℃に加熱した状態で、Ti−W合金あるいはTi−Si合金からなるカソード電極(蒸発源)と、アノード電極との間に、例えば90Aの電流を印加してアーク放電を発生させ、同時に装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して、例えば2Paの反応雰囲気とし、一方前記工具基体には、たとえば−100Vのバイアス電圧を印加した条件で、前記工具基体の表面に、(Ti,W)N層あるいは(Ti,Si)N層を蒸着形成することにより製造されることも知られている。
特開2005−330540号公報 特開平8−126902号公報 特開平9−11004号公報
近年の切削加工装置のFA化はめざましく、加えて切削加工に対する省力化、省エネ化、低コスト化さらに効率化の要求も強く、これに伴い、高送り、高切り込みなどの重切削加工が要求される傾向にあるが、上記の従来被覆工具においては、各種の鋼を通常条件下で切削加工した場合に特段の問題は生じないが、切刃に対して大きな負荷がかかる重切削加工に用いた場合には、硬質被覆層の潤滑性が不足し、切刃部に欠損を生じやすく、また、耐摩耗性も低下し、これが原因で、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、上記の従来被覆工具のさらに一段の使用寿命の延命化を図るべく、鋭意研究を行った。
そして、本発明者等は、硬質被覆層が、TiとWの複合窒化物((Ti,W)N)あるいはTiとSiの複合窒化物((Ti,Si)N)で構成されていた上記の従来被覆工具において、硬質被覆層の構成成分としてWとSiの両者を共存含有させ、硬質被覆層をTiとSiとWの複合窒化物(以下、(Ti,Si,W)Nで示す)で構成すると、硬質被覆層の構成成分であるSi,Wは、切削加工時の高熱発生で酸化され、シリコン酸化物及びタングステン酸化物の形態で層表面に存在するようになり、そして、上記シリコン酸化物及びタングステン酸化物がすぐれた潤滑性を有するために切削時の切屑流れが改善され、切粉の溶着、剥離等を原因とした欠損の発生が抑えられ、その結果、長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性が発揮されるようになること、特に、ドリルの硬質被覆層を、(Ti,Si,W)N層で形成した場合には、ドリルのフルート溝などで切屑排出性が良好となるため、ウエット切削は勿論のこと、ドライ切削においてもすぐれた切削性能が発揮されるようになること、
を見出したのである。
この発明は、上記の知見に基づいてなされたものであって、
「 超硬合金、サーメットあるいは立方晶窒化ほう素基超高圧焼結体からなる切削工具基体の表面に、
組成式:(Ti1−X−Y Si
で表した場合、Xは0.05〜0.3、Yは0.1〜0.5(ただし、X、Yは原子比を示す)を満足するTiとSiとWの複合窒化物層を、1〜10μmの平均層厚で蒸着形成した表面被覆切削工具(被覆工具)。」
に特徴を有するものである。
この発明の被覆工具の硬質被覆層を構成する(Ti,Si,W)N層において、Ti成分は高温強度を向上させ、Si成分は耐熱性を向上させ、W成分は硬さを向上させ、また、N成分には層の強度を向上させる作用があり、これらの各成分を共存含有することにより高い硬さとすぐれた強度とすぐれた耐熱性を具備するようになる。
さらに、硬質被覆層中に共存するSi成分及びW成分は、いずれも切削加工時の高熱により硬質被覆層の層表面において潤滑性にすぐれたシリコン酸化物、タングステン酸化物として存在し、これら酸化物の存在によって切屑流れが改善され、切粉の溶着、剥離等を原因とする欠損の発生が抑えられる。
さらに、切削加工時、硬質被覆層表面にシリコン酸化物、タングステン酸化物を形成し、所望の潤滑性を得るためには、Si成分の含有割合(X値)及びW成分の含有割合(Y値)を、それぞれ、0.05〜0.3及び0.1〜0.5とすることが必要であり、Si成分、W成分の一方或いは両者が、上記数値範囲から外れたような場合には、潤滑性、切屑排出性が低下し、高送り、高切込みの重切削加工において、耐折損性、耐摩耗性が低下するようになる。
加えて、硬質被覆層中のSi成分の含有割合(X値)が0.05未満では耐熱性向上効果を期待することはできず、一方その含有割合(X値)が0.3を越えると、相対的にTi成分の含有割合が少なくなり過ぎて、所望の高温強度が得られなくなり、また、同じく硬質被覆層中のW成分の含有割合(Y値)が0.1未満では所望の潤滑性向上効果を期待することはできず、一方その含有割合(Y値)が0.5を越えると、相対的なTi成分の含有割合の減少により所望の高温強度が得られなくなるとともに硬質被覆層の硬度低下を招くという点からも、X値を0.05〜0.3、また、Y値を0.1〜0.5の範囲とする必要がある(なお、X値、Y値はいずれも原子比)。
また、硬質被覆層の平均層厚が1μm未満では、長期の使用に亘って所望の耐摩耗性を確保するのに不十分であり、一方、その平均層厚が10μmを越えると、皮膜の剥離やチッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を1〜10μmと定めた。
また、上記(Ti,Si,W)N層からなる硬質被覆層は、図1に示されるような通常のアークイオンプレーティング装置を用いて、
基体の温度: 450〜600 ℃
バイアス電圧: −30〜−70 V
窒素分圧: 2〜4 Pa
という蒸着条件によって蒸着形成することができる。
この発明の被覆工具は、切削加工時に、硬質被覆層を構成する(Ti,Si,W)N層の表面に形成されるシリコン酸化物、タングステン酸化物がすぐれた潤滑性を備え、切屑排出性を改善するため、ウエット切削、ドライ切削のいずれの重切削加工においても、すぐれた耐欠損性を示し、長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮するものである。
つぎに、この発明の被覆工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr3 2 粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、ボールミルで72時間湿式混合し、乾燥した後、100MPa の圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を6Paの真空中、温度:1400℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.03のホーニング加工を施してISO規格・CNMG120408のインサート形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A−1〜A−10を形成した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(質量比で、TiC/TiN=50/50)粉末、Mo2 C粉末、ZrC粉末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、100MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を2kPaの窒素雰囲気中、温度:1500℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.03のホーニング加工を施してISO規格・CNMG120408のインサート形状をもったTiCN基サーメット製の工具基体B−1〜B−6を形成した。
ついで、上記の工具基体A−1〜A−10およびB−1〜B−6のそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、図1に示されるアークイオンプレーティング装置に装着し、カソード電極として、所定組成のTi−Si−W合金及びボンバード洗浄用金属Ti(図示せず)を装着し、まず、装置内を排気して1×10−2Pa以下の真空に保持しながら、工具基体を500℃に加熱した後、工具基体に−1000Vの直流バイアス電圧を印加し、かつ、ボンバード洗浄用金属Ti(図示せず)とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって工具基体表面をTiボンバード洗浄し、ついで、装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して3Paの反応雰囲気とすると共に、工具基体に−50Vの直流バイアス電圧を印加し、かつ前記Ti−Si−W合金からなるカソード電極とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって前記工具基体の表面に、表3に示される目標組成および目標層厚の(Ti,Si,W)N層を硬質被覆層として蒸着形成することにより、本発明被覆工具としての本発明表面被覆インサート(以下、本発明被覆インサートと云う)1〜16をそれぞれ製造した。
比較の目的で、上記の工具基体A−1〜A−10およびB−1〜B−6のそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、図1に示されるアークイオンプレーティング装置に装着し、カソード電極(蒸発源)として、ボンバード洗浄用金属Tiと所定組成のTi−W合金あるいはTi−Si合金を装着し、まず、装置内を排気して1×10−2Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、前記工具基体に−1000Vの直流バイアス電圧を印加し、かつ前記ボンバード洗浄用金属Tiとアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させて、前記工具基体表面をTiボンバード処理し、ついで装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して、2〜4Paの範囲内の所定の雰囲気とすると共に、前記工具基体に印加する直流バイアス電圧を−30〜−70Vの範囲内の所定の電圧とし、前記カソード電極であるTi−W合金あるいはTi−Si合金とアノード電極との間に80Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって前記工具基体の表面に、表4に示される目標組成および目標層厚の(Ti,W)N層あるいは(Ti,Si)N層を硬質被覆層として蒸着形成することにより、比較被覆工具としての比較被覆インサート1〜16をそれぞれ製造した。
なお、比較被覆インサート1〜5,11〜13は、(Ti,W)N層からなる硬質被覆層を、また、比較被覆インサート6〜10,14〜16は、(Ti,Si)N層からなる硬質被覆層を蒸着形成した。
つぎに、上記本発明被覆インサート1〜10および比較被覆インサート1〜10について、これを工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、
被削材:JIS・SCM440の丸棒、
切削速度: 235 m/min.、
切り込み: 2.5 mm、
送り: 0.26 mm/rev.、
切削時間: 15 分、
の条件(切削条件A1という)での合金鋼の乾式連続重切削加工試験、
また、上記本発明被覆インサート11〜16および比較被覆インサート11〜16について、これを工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、
被削材:JIS・SNCM439の丸棒、
切削速度: 245 m/min.、
切り込み: 2 mm、
送り: 0.21 mm/rev.、
切削時間: 20 分、
の条件(切削条件A2という)での合金鋼の乾式連続重切削加工試験、
を行い、いずれの切削加工試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
上記切削条件A1,A2による切削加工試験の測定結果を表5に示した。
Figure 2010137348
Figure 2010137348
Figure 2010137348
Figure 2010137348
Figure 2010137348
また、原料粉末として、いずれも0.5〜4μmの範囲内の平均粒径を有する立方晶窒化硼素(cBN)粉末、窒化チタン(TiN)粉末、Al粉末、酸化アルミニウム(Al)粉末を用意し、これら原料粉末を表6に示される配合組成に配合し、ボールミルで80時間湿式混合し、乾燥した後、120MPaの圧力で直径:50mm×厚さ:1.5mmの寸法をもった圧粉体にプレス成形し、ついでこの圧粉体を、圧力:1Paの真空雰囲気中、900〜1300℃の範囲内の所定温度に60分間保持の条件で焼結して切刃片用予備焼結体とし、この予備焼結体を、別途用意した、Co:8質量%、WC:残りの組成、並びに直径:50mm×厚さ:2mmの寸法をもったWC基超硬合金製支持片と重ね合わせた状態で、通常の超高圧焼結装置に装入し、通常の条件である圧力:5GPa、温度:1200〜1400℃の範囲内の所定温度に保持時間:0.8時間の条件で超高圧焼結し、焼結後上下面をダイヤモンド砥石を用いて研磨し、ワイヤー放電加工装置にて一辺3mmの正三角形状に分割し、さらにCo:5質量%、TaC:5質量%、WC:残りの組成およびCIS規格SNGA120412の形状(厚さ:4.76mm×一辺長さ:12.7mmの正方形)をもったWC基超硬合金製インサート本体のろう付け部(コーナー部)に、質量%で、Cu:26%、Ti:5%、Ni:2.5%、Ag:残りからなる組成を有するAg合金のろう材を用いてろう付けし、所定寸法に外周加工した後、切刃部に幅:0.13mm、角度:25°のホーニング加工を施し、さらに仕上げ研摩を施すことによりISO規格SNGA120412のインサート形状をもった工具基体C−1〜C−10をそれぞれ製造した。
ついで、上記の工具基体C−1〜C−10をアセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、図1に示される蒸着装置に装着し、カソード電極として、所定組成のTi−Si−W合金を装着し、まず、装置内を排気して1×10−2Pa以下の真空に保持しながら、工具基体を500℃に加熱した後、工具基体に−200Vのバイアス電圧を印加し、かつ、Arガスを導入して2Paに調整し、もって工具基体表面をArイオンボンバード洗浄し、ついで、装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して3Paの反応雰囲気とすると共に、工具基体に−20Vの直流バイアス電圧を印加し、かつ前記Ti−Si−W合金からなるカソード電極とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって前記工具基体の表面に、表7に示される目標組成および目標層厚の(Ti,Si,W)N層を硬質被覆層として蒸着形成することにより、本発明被覆工具としての本発明表面被覆cBN基インサート(以下、本発明被覆インサートと云う)21〜30をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、上記の工具基体C−1〜C−10のそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、図1に示される通常のアークイオンプレーティング装置に装入し、カソード電極として、表4に対応する組成のTi−Si合金(あるいはTi−W合金)を装着し、まず、装置内を排気して1×10−2Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、前記工具基体に−200Vの直流バイアス電圧を印加し、かつArガスを導入して2Paの雰囲気に調整して、前記工具基体表面をArイオンボンバード処理し、ついで装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して2〜4Paの範囲内の所定の雰囲気とすると共に、前記工具基体に印加するバイアス電圧を−30〜−70Vの範囲内の所定の電圧とし、前記カソード電極であるTi−Si合金(あるいはTi−W合金)とアノード電極との間に80Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって前記工具基体の表面に、表8に示される目標組成および目標層厚の(Ti,Si)N層(あるいは(Ti,W)N層)からなる硬質被覆層を蒸着形成することにより、比較被覆工具としての比較表面被覆cBN基焼結インサート(以下、比較被覆インサートという)21〜30をそれぞれ製造した。
なお、比較被覆インサート21〜25は、(Ti,W)N層からなる硬質被覆層を、また、比較被覆インサート26〜30は、(Ti,Si)N層からなる硬質被覆層を蒸着形成した。
つぎに、上記の各種の被覆インサートを、いずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、本発明被覆インサート21〜30および比較被覆インサート21〜30について、以下に示す切削条件B1で切削加工試験を実施した。
[切削条件B1]
被削材:JIS・SCr420(浸炭焼入れ鋼;HRC60)の丸棒、
切削速度: 245 m/min.、
切り込み: 0.2 mm、
送り: 0.21 mm/rev.、
切削時間: 5 分、
の条件での焼入れクロム鋼の乾式連続重切削加工試験、
を行い、切刃の逃げ面摩耗幅(mm)を測定した。この測定結果を表9に示した。
Figure 2010137348
Figure 2010137348
Figure 2010137348
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表5、9に示される結果から、本発明被覆インサート1〜16、21〜30は、いずれも硬質被覆層がすぐれた潤滑性、耐欠損性を備えているので、切刃に対して大きな機械的負荷がかかる重切削加工に用いられた場合であっても硬質被覆層に欠損の発生はなく、長期に亘って、すぐれた耐摩耗性を発揮するのに対して、硬質被覆層が(Ti,W)N層からなる比較被覆インサート1〜16、21〜30は、硬質被覆層に欠損が発生し、また、耐摩耗性に劣り、短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
原料粉末として、平均粒径:5.5μmを有する中粗粒WC粉末、同0.8μmの微粒WC粉末、同1.3μmのTaC粉末、同1.2μmのNbC粉末、同1.2μmのZrC粉末、同2.3μmのCr32粉末、同1.5μmのVC粉末、同1.0μmの(Ti,W)C[質量比で、50/50]粉末、および同1.8μmのCo粉末を用意し、これら原料粉末をそれぞれ表10に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、100MPaの圧力で所定形状の各種の圧粉体にプレス成形し、これらの圧粉体を、6Paの真空雰囲気中、7℃/分の昇温速度で1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に昇温し、この温度に1時間保持後、炉冷の条件で焼結して、直径が8mm、13mm、および26mmの3種の超硬基体形成用丸棒焼結体を形成し、さらに前記の3種の丸棒焼結体から、研削加工にて、表10に示される組合せで、切刃部の直径×長さがそれぞれ6mm×13mm、10mm×22mm、および20mm×45mmの寸法、並びにいずれもねじれ角:30度の4枚刃スクエアの形状をもったエンドミル用超硬基体D−1〜D−8をそれぞれ製造した。
ついで、これらのエンドミル用超硬基体D−1〜D−8および試験片を、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、同じく図1に示されるアークイオンプレーティング装置に装入し、上記実施例1の本発明被覆インサート1〜16における(Ti,Si,W)N層の形成条件と同じ条件で、表11に示される目標組成および目標層厚の(Ti,Si,W)N層を硬質被覆層として蒸着形成することにより、本発明被覆工具としての本発明表面被覆超硬合金製エンドミル(以下、本発明被覆エンドミルと云う)1〜8をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、上記実施例1の比較被覆インサート1〜16における(Ti,W)N層あるいは(Ti,Si)N層の形成条件と同じ条件で、(Ti,W)N層あるいは(Ti,Si)N層を硬質被覆層として蒸着形成することにより、同じく表11に示される通りの比較被覆工具としての比較表面被覆超硬合金製エンドミル(以下、比較被覆エンドミルと云う)1〜8をそれぞれ製造した。
つぎに、上記本発明被覆エンドミル1〜8および比較被覆エンドミル1〜8のうち、
本発明被覆エンドミル1〜3および比較被覆エンドミル1〜3については、
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・SKD11の板材、
切削速度: 110 m/min.、
溝深さ(切り込み): 2 mm、
テーブル送り: 580 mm/min.、
の条件でのダイス鋼の乾式高送り溝切削加工試験、
本発明被覆エンドミル4〜6および比較被覆エンドミル4〜6については、
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・SUS316の板材、
切削速度: 88 m/min.、
溝深さ(切り込み): 3 mm、
テーブル送り: 520 mm/min.、
の条件でのステンレス鋼の乾式高送り溝切削加工試験、
本発明被覆エンドミル7,8および比較被覆エンドミル7,8については、
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・SNCM439の板材、
切削速度: 138 m/min.、
溝深さ(切り込み): 8 mm、
テーブル送り: 575 mm/min.、
の条件での合金鋼の乾式高送り溝切削加工試験、
をそれぞれ行い、いずれの溝切削加工試験でも切刃部の外周刃の逃げ面摩耗幅が使用寿命の目安とされる0.1mmに至るまでの切削溝長を測定した。この測定結果を表11にそれぞれ示した。
Figure 2010137348
Figure 2010137348
上記の実施例3で製造した直径が8mm(エンドミル用超硬基体D−1〜D−3)、13mm(エンドミル用超硬基体D−4〜D−6)、および26mm(エンドミル用超硬基体D−7、D−8)の3種の丸棒焼結体を用い、この3種の丸棒焼結体から、研削加工にて、溝形成部の直径×長さがそれぞれ4mm×13mm(ドリル用超硬基体E−1〜E−3)、8mm×22mm(ドリル用超硬基体E−4〜E−6)、および16mm×45mm(ドリル用超硬基体E−7、E−8)の寸法、並びにいずれもねじれ角:30度の2枚刃形状をもったドリル用超硬基体E−1〜E−8をそれぞれ製造した。
ついで、これらのドリル用超硬基体E−1〜E−8の切刃に、ホーニングを施し、上記の試験片と共に、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、同じく図1に示されるアークイオンプレーティング装置に装入し、上記実施例1の本発明被覆インサート1〜16における(Ti,Si,W)N層の形成条件と同じ条件で、かつ表12に示される目標組成および目標層厚の(Ti,Si,W)N層を硬質被覆層として蒸着形成することにより、本発明被覆工具としての本発明表面被覆超硬合金製ドリル(以下、本発明被覆ドリルと云う)1〜8をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、上記実施例1の比較被覆インサート1〜16における(Ti,W)N層あるいは(Ti,Si)N層の形成条件と同じ条件で、(Ti,W)N層あるいは(Ti,Si)N層を硬質被覆層として蒸着形成することにより、表12に示される通りの比較被覆工具としての比較表面被覆超硬合金製ドリル(以下、比較被覆ドリルと云う)1〜8をそれぞれ製造した。
つぎに、上記本発明被覆ドリル1〜8および比較被覆ドリル1〜8のうち、本発明被覆ドリル1〜3および比較被覆ドリル1〜3については、
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・SS400の板材、
切削速度: 92 m/min.、
送り: 0.16 mm/rev.、
穴深さ: 5 mm
の条件での軟鋼の湿式高送り穴あけ切削加工試験、
本発明被覆ドリル4〜6および比較被覆ドリル4〜6については、
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・SUS316の板材、
切削速度: 43 m/min.、
送り: 0.082 mm/rev.、
穴深さ: 8 mm
の条件でのステンレス鋼の湿式高送り穴あけ切削加工試験、
本発明被覆ドリル7,8および比較被覆ドリル7,8については、
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・SCMnH2の板材、
切削速度: 45 m/min.、
送り: 0.125 mm/rev、
穴深さ: 15 mm
の条件での高マンガン鋼の湿式高送り穴あけ切削加工試験、
をそれぞれ行い、いずれの湿式穴あけ切削加工試験(水溶性切削油使用)でも先端切刃面の逃げ面摩耗幅が0.3mmに至るまでの穴あけ加工数を測定した。この測定結果を表12に示した。
Figure 2010137348
この結果得られた本発明被覆工具としての本発明被覆インサート1〜16、21〜30、本発明被覆エンドミル1〜8、および本発明被覆ドリル1〜8の(Ti,Si,W)N層、並びに比較被覆工具としての比較被覆インサート1〜16、21〜30、比較被覆エンドミル1〜8、および比較被覆ドリル1〜8の(Ti,W)N層、(Ti,Si)N層の組成をオージェ分光分析装置を用いて測定したところ、それぞれ目標組成と実質的に同じ組成を示した。
また、これらの本発明被覆工具の(Ti,Si,W)N層および比較被覆工具の(Ti,W)N層、(Ti,Si)N層の厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて断面測定したところ、いずれも目標値と実質的に同じ平均層厚(5点測定の平均値)を示した。
表5、9、11、12に示される結果から、本発明被覆工具は、いずれも硬質被覆層を構成する(Ti,Si,W)N層がすぐれた潤滑性、切屑流れ性、切屑排出性を具備するようになることから、上記各種の重切削加工試験で、すぐれた耐欠損性、耐摩耗性を示すのに対して、比較被覆工具においては、高切り込み、高送りなど大きな機械的負荷がかかる重切削加工では、耐欠損性、耐摩耗性の向上がみられず、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の被覆工具は、各種鋼などの連続切削や断続切削ですぐれ工具特性を示すのは勿論のことであり、さらに、高切り込み、高送りなど切刃に大きな機械的負荷がかかる重切削加工条件であっても、(Ti,Si,W)N層からなる硬質被覆層がすぐれた潤滑性、切屑流れ性、切屑排出性を備えるため、長期に亘ってすぐれた切削性能を発揮し、切削加工装置のFA化、並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求に十分満足に対応できるものである。
本発明被覆工具の硬質被覆層を構成する(Ti,Si,W)N層、従来被覆工具の硬質被覆層を構成する(Ti,W)N層或いは(Ti,Si)N層の蒸着形成に用いたアークイオンプレーティング(AIP)装置の概略説明図である。

Claims (1)

  1. 超硬合金、サーメットあるいは立方晶窒化ほう素基超高圧焼結体からなる切削工具基体の表面に、
    組成式:(Ti1−X−Y Si
    で表した場合、Xは0.05〜0.3、Yは0.1〜0.5(ただし、X、Yは原子比を示す)を満足するTiとSiとWの複合窒化物層を、1〜10μmの平均層厚で蒸着形成した表面被覆切削工具。
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