JP2010136657A - ハイブリダイゼーション用カバー及びそれを用いた標的核酸の検出方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】
全ゲノムDNAを用いたDNAマイクロアレイのハイブリダイゼーションにおいて、非標的核酸の影響を軽減させるハイブリダイゼーション方法とそれに用いるハイブリダイゼーション用カバーを提案することを目的とする。
【解決手段】
本発明のハイブリダイゼーション用カバーは、固相に固定された標的核酸検出用プローブと標的核酸とのハイブリダイゼーション工程に用いるハイブリダイゼーション用カバーであって、前記標的核酸を含む反応溶液と接する表面に、前記標的核酸と競合して前記標的核酸検出用プローブとハイブリダイゼーション反応を行う非標的核酸とのハイブリダイゼーションを行う非標的核酸捕捉用プローブが固定されていることを特徴とする。
【選択図】 なし
全ゲノムDNAを用いたDNAマイクロアレイのハイブリダイゼーションにおいて、非標的核酸の影響を軽減させるハイブリダイゼーション方法とそれに用いるハイブリダイゼーション用カバーを提案することを目的とする。
【解決手段】
本発明のハイブリダイゼーション用カバーは、固相に固定された標的核酸検出用プローブと標的核酸とのハイブリダイゼーション工程に用いるハイブリダイゼーション用カバーであって、前記標的核酸を含む反応溶液と接する表面に、前記標的核酸と競合して前記標的核酸検出用プローブとハイブリダイゼーション反応を行う非標的核酸とのハイブリダイゼーションを行う非標的核酸捕捉用プローブが固定されていることを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
本発明は、DNAマイクロアレイなどの固相プローブを用いた標的核酸の検出方法で用いるハイブリダイゼーション用カバーに関する。特に、ヒトゲノムDNAのように反復配列等の検出対象外の配列を大量に含む核酸を被検体核酸として扱う場合のハイブリダイゼーション用カバーに関する。
ヒトゲノム計画に代表されるように各種の生物の遺伝子が解明され、生命活動のメカニズム、病気、及び体質等と遺伝子との関連が次々と調べられている。そして、染色体の構造異常や遺伝子の有無、及びその存在量(発現量)を知ることで、病気の詳細な特徴把握やタイピング、あるいは効果的な治療方法の選択などが可能となることがわかってきた。中でもがんと染色体異常、及び遺伝子発現とが関連があることが示されており、がん関連遺伝子の同定に向けて熱心に研究が重ねられている。
染色体の構造異常には数タイプがあり、たとえば、1つの染色体の部分的過剰(遺伝子コピー数増加)または欠如や、染色体転座などがある。これらの異常が、がん遺伝子の活性化やがん抑制遺伝子の異常に関与していると考えられる。従って、がんにおける共通な染色体異常を検出することができれば、新しいがん関連遺伝子の同定ができる。
全染色体を対象に遺伝子コピー数の増加ないし欠失を一度に解析する手段として、FISH(Fluorescence in situ DNA Hybridization)法の応用法であるCGH(Comparative Genomic Hybridization)法が開発された(非特許文献1)。腫瘍などの検体DNAを、例えばCy3標識する。一方、対照サンプルとして正常組織由来DNAを用意し、これに検体DNAと異なる色素であるCy5等で標識をする。Cy3標識された検体DNAとCy5標識された正常DNAとを混合し、分裂中期のヒト正常染色体上で競合的にハイブリダイズさせる。Cy3は緑色の蛍光として、Cy5は赤色の蛍光として検出され、検体DNAに遺伝子の増幅が見られる染色体領域では緑色蛍光の増加を、欠失の見られる染色体領域では赤色蛍光の増加を示す。
CGH法は一度のハイブリダイゼーションで全染色体における遺伝子コピー数の変化を検出できるが、感度及び解像度が低いという問題があった。CGHによるコピー数変化の検出感度は、増幅単位と増幅レベルとによって規定される。増幅単位が5Mb以上であれば、2倍の増幅レベルでも検出可能であるが、増幅単位が約300Kbの場合は、5〜10倍以上の増幅レベルで増幅可能となる(非特許文献2)。
近年、CGH法の低解像度問題を解決する手段として、スライドガラス上に多数のDNAをスポットしたDNAマイクロアレイを用いたアレイCGH法が開発された。CGH用のDNAマイクロアレイには網羅性と検出感度との点からBACクローンDNAといった長いゲノムDNA(50〜300Kb)が搭載されたものが主流であった。しかし最近では、高密度DNAマイクロアレイが実現し、また検体処理方法の開発により検出感度も向上し、CGH用のオリゴヌクレオチドDNAマイクロアレイも開発された。オリゴヌクレオチドDNAマイクロアレイの登場により、解像度は約10Kbと飛躍的に向上した。
ところで、ヒトの1倍体ゲノムには約3×109個の塩基が存在するが、その50%以上を反復配列が占めている。全ゲノムを検体としたハイブリダイゼーションでは、しばしばこの反復配列が非特異的結合を引き起こし、特異性が低下する原因となる。この非特異的結合を減少させるために、あらかじめ検体を競合DNAで処理しておく方法が開発された。競合DNAとしては、human placenta DNAやsalmon sperm DNAを消化したものが用いられたが、今日ではhuman Cot−1 DNAが広く普及している。Human Cot−1 DNAはヒト胎盤から調整した50〜310bpの大きさのDNAでAluとKpnファミリーの反復配列を多く含んでいる。
また、オリゴヌクレオチドDNAマイクロアレイにおける感度が悪いという課題を解決する検体処理方法としてROMA(representational oligonucleotide microarray analysis)法が開発された(非特許文献3)。これは、ヒトゲノムDNAを制限酵素で断片化し、断片化産物のうち0.2〜1.2kbのサイズのDNA断片のみを選択的に増幅する方法である。全ゲノムの約2.5%のDNA断片を再現性良く増幅するため、全ゲノムDNAを増幅した時と比べ、感度が約50倍向上する。
更に、非特異結合の要因となる反復配列の取り扱いに関しては、分離されたDNAの増幅されたピースに含まれている共有反復配列のハイブリダイゼーション能力を無能力化し、および/または同共有反復配列を除去する方法が特許文献1に開示されている。
Kallioniem et al., Science, 258: 818 (1992)
応用サイトメトリー(医学書院)
Lutio R. et al.,Genome Res.,13:2291−2305,2003
特開2003−199564号公報
全ゲノムDNAのハイブリダイゼーションにおいて、Cot−1 DNAを入れる方法は、非特異的結合を減少させるために効果的であるが、全ての反復配列と競合できるわけではない。また、検体をDNAマイクロアレイに供する前に検体DNAとCot−1 DNAとを混合し、プレハイブリダイゼーションを数時間行わなくてはならず、より長い検査時間を必要とする。更に、DNAマイクロアレイに供する検体中のDNA量が増えるために、ハイブリダイゼーションが平衡に達するまでに長い時間が必要となる。
ROMA法は制限酵素で断片化したDNA断片のうちある長さの断片のみを選択的に増幅するため、反復配列の多くを除去することが可能である。ただし、どこで切断されるか、またDNA断片の長さは制限酵素次第であり、全ての遺伝子のコピー数を検査できるとは限らない。全ての遺伝子のコピー数を調べるには、複数の制限酵素を用いて補間し合うことが必要となってくる。
また、全ゲノム中の遺伝子コピー数を調べたい箇所、すなわち標的核酸が決まっていて、その数がゲノム中の遺伝子数よりもはるかに少ない場合、反復配列でなくても標的以外の非標的核酸が検査に少なからず悪影響を及ぼす。
そこで本発明は上記問題に鑑み、全ゲノムDNAを用いたDNAマイクロアレイのハイブリダイゼーションにおいて、非標的核酸の影響を軽減させる標的核酸の検出方法とそれに用いるハイブリダイゼーション用カバーを提案することを目的とする。
本発明のハイブリダイゼーション用カバーは、固相に固定された標的核酸検出用プローブと標的核酸とのハイブリダイゼーション工程に用いるハイブリダイゼーション用カバーであって、前記標的核酸を含む反応溶液と接する表面に、前記標的核酸と競合して前記標的核酸検出用プローブとハイブリダイゼーション反応を行う非標的核酸とのハイブリダイゼーションを行う非標的核酸捕捉用プローブが固定されていることを特徴とする。
本発明のハイブリダイゼーション用カバーを用いて標的核酸の検出方法は、前記標的核酸及び前記非標的核酸を含む検体とハイブリダイゼーションを行う標的核酸の検出方法であって、前記標的核酸と前記標的核酸検出用プローブとのハイブリダイゼーション反応と、前記非標的核酸と前記非標的核酸捕捉用プローブとのハイブリダイゼーション反応とを同時に行うことを特徴とする。
本発明のハイブリダイゼーション用カバーによれば、ハイブリダイゼーションの際に、標的核酸と標的核酸検出用プローブとのハイブリダイゼーション反応と、非標的核酸と非標的核酸捕捉用プローブとのハイブリダイゼーション反応とが同時に行われる。このため、非標的核酸は、カバーに固定された非標的核酸捕捉用プローブとハイブリダイゼーションをするため、標的核酸検出用プローブとの非特異結合が軽減される。その結果、全ゲノムDNA用いたDNAマイクロアレイ解析においても非特異結合による検出結果のノイズを減らし、更に高感度に標的核酸の検出(解析)を行うことが可能となる。
以下は本発明を最良の実施形態を通じて説明する。ここでの実施形態は一例であり、本発明の技術的範囲を満たす範囲内であれば、設計事項として任意に変更することができるものである。
本発明のハイブリダイゼーション用カバーの最良の実施形態は、固相に固定された標的核酸検出用プローブと標的核酸とのハイブリダイゼーション工程に用いるハイブリダイゼーション用カバーであって、前記標的核酸を含む反応溶液と接する表面に、前記標的核酸と競合して前記標的核酸検出用プローブとハイブリダイゼーション反応を行う非標的核酸とのハイブリダイゼーションを行う非標的核酸捕捉用プローブが固定されていることを特徴とする。
本実施形態は以下の方法によって、達成される。まず、(1)標的核酸を検出するための標的核酸検出用プローブを用意する工程と、(2)前記標的核酸及び非標的核酸を含む被検体核酸と同種の核酸集団であって、前記非標的核酸を捕捉するための非標的核酸捕捉用プローブを作成するための核酸集団を用意する工程と、(3)前記標的核酸検出用プローブと、前記核酸集団の中の標的核酸との標的核酸検出用プローブ−標的核酸複合体を形成させる工程と、(4)前記核酸集団から前記標的核酸検出用プローブ−標的核酸複合体を分離除去し、残った核酸を非標的核酸捕捉用プローブとする工程と、を含んでなる方法によって、非標的核酸捕捉用プローブを製造する。
次いで、前記方法で得られた非標的核酸捕捉用プローブが大量に固定された固相を作製し、当該固相を、DNAマイクロアレイを用いたハイブリダイゼーション用カバーとする。
本実施形態の非標的核酸捕捉用プローブは、標的核酸領域以外のBACクローンDNAを混合したものを使用することができる。また、市販のヒトゲノムDNAから作製しても良い。非標的核酸捕捉用プローブの塩基長は60から200000塩基であることが望ましい。更に好適には60から10000塩基であることが望ましい。
市販のヒトゲノムDNAから作製する場合について詳細に説明する。非標的核酸捕捉用プローブを作成するための核酸集団として、被検体核酸となる核酸集団とほぼ同じ配列を含む核酸集団(以下、型作成用核酸集団と呼ぶ)と、標的核酸を捕捉するためのプローブを用いる。型作成用核酸集団としては、検体となる核酸集団がヒトゲノムDNAである場合は、ヒトゲノムDNAを用意する。これは、検体と同じDNAである必要はなく、市販のヒトゲノムDNAで良い。ここで「核酸集団」とは、1または複数の生物種から抽出したDNAの集合であり、それらは断片化されたものであっても、また断片化されていないものであっても良い。また、「同種の核酸集団」とは、検出対象と同じ種に属する1または複数の生物種から抽出された核酸集団である。
標的核酸を検出するための標的核酸検出用プローブは、標的核酸領域の配列から標的核酸に特異的な配列を選択し、これを標的核酸検出用プローブとする。標的核酸を調べる方法がDNAマイクロアレイである場合、DNAマイクロアレイに搭載したプローブ配列の相補鎖配列を標的核酸検出用プローブの配列とするのが望ましい。標的核酸検出用プローブは、合成オリゴヌクレオチドでも良いし、ヒトゲノムDNAからPCR等により特定の領域の配列のみのDNA増幅産物を作成することにより準備しても良い。
標的核酸検出用プローブと型作成用核酸集団とを混合し、標的核酸検出用プローブ−標的核酸複合体を形成させて型作成用核酸集団からの分離を行う。標的核酸検出用プローブ−標的核酸複合体を形成させる方法としては、通常のDNA−DNA複合体形成方法を実施すれば良く、特定の温度下で緩衝溶液中において数分から数時間インキュベーションすることで可能となる。
標的核酸検出用プローブにはあらかじめ標識をしておく。標識物質としては、ビオチン、抗原等、特定の物質と特異的に結合するものが挙げられる。すなわち、ビオチン−アビジン、抗原−抗体など、特異的な結合を形成する物質を用いる。そして、標的核酸検出用プローブに修飾を施した標識部分と特異的に結合する物質としては、標識物質がビオチンである場合はアビジンまたはストレプトアビジンが、標識物質が抗原である場合は抗体が挙げられる。これらの物質が固定された分離用担体を用いることで、核酸集団から標的核酸検出用プローブ−標識核酸複合体を分離することができる。
分離用担体としては、吸着及び結合可能な面積、分離のしやすさを考慮するとビーズ状のものを用いることがより好ましい。核酸集団からビーズに結合した標的核酸検出用プローブ−標的核酸複合体の分離は、ビーズに対して濾過、遠心分離、磁気による吸着などを行うことによって可能である。核酸集団から標的核酸が分離されたものが非標的核酸検出用プローブとなる。このように、ネガティブアイソレーション方式によって得られた非標的核酸検出用プローブは、ビーズ等が付いていない状態で得られるので、次の工程に容易に進むことができる。
非標的核酸検出用プローブを固相に固定してハイブリダイゼーション用カバーとするが、通常ハイブリダイゼーションカバーはカバーガラスが好適に使用されるが、これに限る必要はない。スライドガラスを用いても良いし、その他の材質のもの、樹脂、金属、金属薄膜、繊維等でも良い。固相表面の形態は平面でもちろん良いが、多孔質材であるとより多くのDNAを固定することができて効果的である。本実施形態においては、非標的核酸捕捉用プローブが固定されている固相が多孔質体、または繊維の集合体からなる固相であることが最も好ましい。
また、DNAマイクロアレイと異なり、各プローブの結合量を定量することが目的ではないので、非標的核酸捕捉用プローブは様々な配列の核酸を混合させて固定することができる。そして、非標的核酸捕捉用プローブは固相表面全面もしくはDNAマイクロアレイのハイブリダイゼーションエリアに接する面に隙間なく固定されていることが望ましい。
固相へのプローブの結合様式としては吸着、化学結合等様々な方式が存在するが、いずれの結合様式でも、本実施形態のハイブリダイゼーション用カバーの作製に適用可能である。例えば、イオン結合では、アミノ基をコートしてあるガラス基板或いは樹脂表面に対し、核酸(非標的核酸捕捉用プローブ)を供するだけでイオン的に結合させることができる。また、5’末端、3’末端にアミノ基、チオール基等の官能基をプローブに修飾させてより強力に固定化することも可能である。例えばアミノ基を利用する場合、固相表面にアミノ基と効率的に反応するスクシイミド基をあらかじめ結合させておく。
そして、5’末端、もしくは3’末端にアミノ基を修飾した非標的核酸捕捉用プローブを固相表面に供給することにより、容易に共有結合を形成させることができる。またチオール基を用いる場合には、例えば固相にマレイミド基を結合させておくことにより、アミノ基の場合と同様、共有結合を容易に形成し、本発明のハイブリダイゼーション用カバーとして好適に用いることが可能である。本実施形態のハイブリダイゼーション用カバーは、スライドガラス等に作製された平板上のDNAマイクロアレイを用いた解析に最も好適に効果を発揮する。
DNAマイクロアレイで解析する検体として、反復配列等の標的核酸以外の核酸が大量に含まれるヒトゲノムDNAを用いる時に、本発明のハイブリダイゼーション用カバーは好適である。被検体核酸中の非標的核酸はハイブリダイゼーションカバーに固定された非標的核酸捕捉用プローブとハイブリするために、DNAマイクロアレイ上の標的核酸用プローブとの非特異結合が軽減される。また、DNAマイクロアレイ固相上への非特異吸着も軽減される。その結果、標的核酸とDNAマイクロアレイ上のプローブとのハイブリダイゼーションが効率的に進み、またバッググラウンドノイズが軽減されるので、S/Nの良い解析結果を得ることができる。
本実施形態において、標的核酸及び非標的核酸を含んでいる反応溶液と接する前記ハイブリダイゼーション用カバーの表面には、前記反応溶液に含まれている核酸の重量の5倍以上の前記非標的核酸捕捉用プローブが固定されていることが好ましい。特に10倍以上1000倍以下であることが好ましい。5倍未満であると、反応溶液中の非標的核酸を充分に捕捉できない場合がある。また、上限は特にないが、1000倍を超える量を固定させても、非標的核酸を捕捉する効果は大きく変わらない。
以下の実施例を用いて、本発明のハイブリダイゼーション用カバー及びそれを用いた標的核酸の検出方法をより詳細に説明する。なお、実施例における、寸法、形状、材質、プロセス条件等は本発明の一例であり、本発明の技術的範囲を満たす範囲内であれば、設計事項として任意に変更することができるものである。
(実施例1) 非標的核酸捕捉用プローブの作成
(1)標的核酸検出用プローブの設定
検体はヒトゲノムDNAとし、ヒトゲノム中の標的遺伝子はEGFRとする。EGFR遺伝子のコピー数を解析するための標的核酸検出用プローブとして表1に示す核酸配列を設計した。EGFR遺伝子の全塩基配列情報は公開されているデータベース等から容易に入手可能である。
(1)標的核酸検出用プローブの設定
検体はヒトゲノムDNAとし、ヒトゲノム中の標的遺伝子はEGFRとする。EGFR遺伝子のコピー数を解析するための標的核酸検出用プローブとして表1に示す核酸配列を設計した。EGFR遺伝子の全塩基配列情報は公開されているデータベース等から容易に入手可能である。
標的核酸検出用プローブの設計にあたっては、ヒトゲノムDNAに対し特異性が高く、十分かつそれぞれのプローブ塩基配列でばらつきのないハイブリダイゼーション感度が期待できるように配慮して行った。
なお、表中に示した標的核酸検出用プローブは、DNAマイクロアレイに固定するための官能基として、合成後に定法に従って核酸の5’末端にチオール基を導入した。
(2)非標的核酸捕捉用プローブの作成
非標的核酸捕捉用プローブを作成するために、型作成用核酸として市販のノバジェン社製Human Female Genomic DNAを用意した。また、標的核酸検出用プローブとして表1のP配列の相補鎖配列Cを合成した。Cの配列は表2に示す。なお、配列Cの5’末端にビオチン修飾をして合成を行った。
非標的核酸捕捉用プローブを作成するために、型作成用核酸として市販のノバジェン社製Human Female Genomic DNAを用意した。また、標的核酸検出用プローブとして表1のP配列の相補鎖配列Cを合成した。Cの配列は表2に示す。なお、配列Cの5’末端にビオチン修飾をして合成を行った。
まず、制限酵素Ban I(TOYOBO社製)を用いてHuman Female Genomic DNAの切断処理を行った。DNA 1μgを44.8μLの液量になるように超純水で調製し、制限酵素キットの仕様書に従い、10×Bufferを5μLとEnzymeを0.2μL加え、計50μLの反応液を作成し、50℃で1時間静置した。
反応液は、精製用カラム(QIAGEN QIAquick PCR Purification Kit)を用いて精製した。精製後、精製済み制限酵素処理DNA溶液の液量は、50μLとなるよう調製した。得られたDNA溶液の一部を取り、定法に従って電気泳動を行い、ヒトゲノムDNAが100から10000bpくらいに断片化されていることを確認した。
精製済み制限酵素処理DNA溶液とビオチン修飾した標的核酸検出用プローブを用いて、標的核酸検出用プローブ−標的核酸複合体を作成する。精製済み制限酵素処理DNA溶液50μLにビオチン修飾したC1配列のDNAを20pmol加え、リン酸緩衝液を用いて最終的に200μL(10mM Phosphate、1M NaCl)になるように反応液を調整した。反応液は、70℃15分でディネーチャーさせた後、37℃2時間、45℃1時間インキュベートし、標的核酸検出用プローブ−標的核酸複合体を作成した。
続いて、DNA溶液中から標的核酸検出用プローブ−標的核酸複合体の分離を行う。プローブには予めビオチン修飾を施してあるので、ビオチンに特異的に結合する物質であるストレプトアビジンを使用して分離することができる。Miltenyi Biotec社製の製品であるμMACS(使用商標)Streptavidin Kitをキットのプロトコルに従って使用して分離を行った。
具体的には、標的核酸検出用プローブ−標的核酸複合体が作成されたDNA溶液中にStreptavidin MicroBeadsを100μL添加した。30分程静置して反応させた後、強い磁場を形成するμMACSマグネットに取り付けたμカラムに反応液を通した。Streptavidin MicroBeadsは磁気ビーズであるので、ビオチンとストレプトアビジンとの特異的な結合により、標的核酸検出用プローブ−標的核酸複合体は磁気標識されており、カラム中にトラップされる。
一方、複合体を形成していないDNAはそのままカラムを通過する。通過した溶液を回収することによって、標的核酸を含まない非標的核酸検出用プローブを得ることができた。なお、反応液をカラムに通した後、カラム中に非特異結合している非標的核酸検出用プローブを回収するために、リン酸緩衝液100μLを絡むに通した。これを4回繰り返した。以上の操作より、約700μLの溶液が回収された。
回収されたDNA溶液の精製を行った。回収液を各350μLの2チューブに分け、それぞれに対してニッポン・ジーン社製のエタチンメイトをキットのプロトコルに従って使用し、エタノール沈殿を行った。表3の通りに試薬を加え、4℃、15000rpmで20分間遠心を行った。そして、上清のみを採取し、70%氷冷エタノール500μLを加えて、4℃、15000rpmで10分間遠心した。沈殿のみを残して溶液を捨て、風乾させた後、それぞれ10μLの蒸留水に溶解させ、混合させて20μLの非標的核酸検出用プローブDNA溶液を得た。得られたDNA溶液はNanoDrop社製のNanoDrop ND−1000でDNA濃度を測定したところ、37.4ng/μLであった。
(実施例2)ハイブリダイゼーション用カバー(非標的核酸捕捉用プローブ固定担体)の作製
(1)非標的核酸捕捉用プローブのチオール標識化
非標的核酸捕捉用プローブに対し、チオール修飾処理を行った。まず、得られたDNAが少量であったので、ランダムプライミング方式によって増幅を行った。DNAの増幅には、Invitrogen社製のバイオプライムDNAラベリングシステムを用い、キットのプロトコルに従って反応を行った。
(1)非標的核酸捕捉用プローブのチオール標識化
非標的核酸捕捉用プローブに対し、チオール修飾処理を行った。まず、得られたDNAが少量であったので、ランダムプライミング方式によって増幅を行った。DNAの増幅には、Invitrogen社製のバイオプライムDNAラベリングシステムを用い、キットのプロトコルに従って反応を行った。
実施例1の(2)で回収された非標的核酸捕捉用プローブDNA500ngを2分割し、それぞれに対して以下に示す通りに反応液を調整し、DNAの増幅及を行った。まず、表4の通りに試薬を加え、95℃で5分間保温し、その後すぐに氷上にて5分間静値した。
更に、10×dNTPの混合物(各2mM)を5μL加え、液量が49μLになるように超純水を10.6μL加えて軽く混ぜた。そして、Klenow Fragmentを1μL加えて、優しく混ぜて約15秒間遠心した。37℃で2時間インキュベートし、最後にストップバッファーを5μL加えて反応を止めた。
反応液は、精製用カラム(QIAGEN QIAquick PCR Purification Kit)を用いて精製した。精製後、60μLの超純水で溶出した。得られたDNA溶液はNanoDrop社製、NanoDrop ND−1000でDNA濃度を測定したところ、140.4ng/μLと134.7ng/μLであった。溶出されたDNA溶液は約57μLであり、2チューブ合わせて10μg以上の非標的核酸捕捉用プローブを作成することができた。
上記の非標的核酸捕捉用プローブに対し、チオール修飾を行った。Vector Laboratories社製の5’EndTag Nucleic Acid Labeling Systemキットを用いて、キットのプロトコルに従ってチオール修飾を行い、チオール修飾非標的核酸捕捉用プローブを得た。なお、精製後、2チューブをまとめて超純水50μLに溶解させた。
(2)固相へのチオール修飾非標的核酸捕捉用プローブの固定化処理
(i)ガラス基板の洗浄
合成石英のガラス基板(サイズ(W×L×T):25mm×75mm×1mm、飯山特殊ガラス社製)を耐熱、耐アルカリ性のラックに入れ、所定の濃度に調製した超音波洗浄用の洗浄液に浸した。一晩、洗浄液中で浸した後、20分間超音波洗浄を行った。続いて、ガラス基板を取り出し、軽く純水で漱いだ後、超純水中で20分超音波洗浄を行った。次に、80℃に加熱した1N水酸化ナトリウム水溶液中に10分間、ガラス基板を浸した。再び、純水洗浄と超純水洗浄を行い、DNAチップ用の洗浄済石英ガラス基板を用意した。
(i)ガラス基板の洗浄
合成石英のガラス基板(サイズ(W×L×T):25mm×75mm×1mm、飯山特殊ガラス社製)を耐熱、耐アルカリ性のラックに入れ、所定の濃度に調製した超音波洗浄用の洗浄液に浸した。一晩、洗浄液中で浸した後、20分間超音波洗浄を行った。続いて、ガラス基板を取り出し、軽く純水で漱いだ後、超純水中で20分超音波洗浄を行った。次に、80℃に加熱した1N水酸化ナトリウム水溶液中に10分間、ガラス基板を浸した。再び、純水洗浄と超純水洗浄を行い、DNAチップ用の洗浄済石英ガラス基板を用意した。
(ii)表面処理
シランカップリング剤KBM−603(信越シリコーン社製)を、1%の濃度となるように純水中に溶解させ、2時間室温で攪拌した。続いて、洗浄済石英ガラス基板を、このシランカップリング剤水溶液に浸し、20分間室温で放置した。ガラス基板を引き上げ、軽く純水で表面を洗浄した後、ガラス基板の両面に窒素ガスを吹き付けて乾燥させた。次に、窒素ブロー乾燥したガラス基板を、120℃に加熱したオーブン中で1時間ベークし、カップリング剤処理を完結させた。このカップリング剤処理により、ガラス基板表面に、シランカップリング剤由来のアミノ基が導入された。
シランカップリング剤KBM−603(信越シリコーン社製)を、1%の濃度となるように純水中に溶解させ、2時間室温で攪拌した。続いて、洗浄済石英ガラス基板を、このシランカップリング剤水溶液に浸し、20分間室温で放置した。ガラス基板を引き上げ、軽く純水で表面を洗浄した後、ガラス基板の両面に窒素ガスを吹き付けて乾燥させた。次に、窒素ブロー乾燥したガラス基板を、120℃に加熱したオーブン中で1時間ベークし、カップリング剤処理を完結させた。このカップリング剤処理により、ガラス基板表面に、シランカップリング剤由来のアミノ基が導入された。
一方、同仁化学研究所社製のN−マレイミドカプロイロキシスクシイミド(N−(6−Maleimidocaproyloxy)succinimide)(以下、EMCSと略す)を、ジメチルスルホキシドとエタノールの1:1混合溶媒中に最終濃度が0.3mg/mLとなるように溶解したEMCS溶液を用意した。ベーク終了後、カップリング剤処理済ガラス基板を放冷し、調製したEMCS溶液中に室温で2時間浸した。この浸漬処理間に、カップリング剤処理済ガラス基板の表面に導入されているアミノ基と、EMCSのスクシイミド基とが反応し、ガラス基板表面にEMCS由来のマレイミド基が導入された。EMCS溶液から引き上げたガラス基板を、先述のジメチルスルホキシドとエタノールの混合溶媒を用いて洗浄し、さらに、エタノールにより洗浄した後、窒素ガス雰囲気下で乾燥させた。
(iii)基板表面へのDNA固定化処理
グリセリン7.5wt%、チオジグリコール7.5wt%、尿素7.5wt%、アセチレノールEH(川研ファインケミカル社製)1.0wt%を含む水溶液を用意した。続いて、(1)で作製したチオール修飾非標的核酸捕捉用プローブにこの水溶液を加え、200μLの水溶液とした。
グリセリン7.5wt%、チオジグリコール7.5wt%、尿素7.5wt%、アセチレノールEH(川研ファインケミカル社製)1.0wt%を含む水溶液を用意した。続いて、(1)で作製したチオール修飾非標的核酸捕捉用プローブにこの水溶液を加え、200μLの水溶液とした。
ガラス基板表面全面に、上記水溶液をムラが生じないように塗布し、30分間常温で加湿チャンバー内に静置し、ガラス基板表面のマレイミド基とプローブDNA5’末端のスルファニル基(−SH)とを反応させた。
(v)洗浄
加湿チャンバー内における30分間の反応後、100mMのNaClを含む10mMのリン酸緩衝液(pH7.0)により、ガラス基板表面に残った未反応のプローブDNAを洗い流した。以上の処理より、ガラス基板表面に、非標的核酸捕捉用プローブが固定されたハイブリダイゼーション用カバーを得た。
洗い流した溶液のDNA濃度を上述と同様に測定して、固定化されなかったDNA量を見積もった。この結果、5μg以上の非標的核酸捕捉用プローブがハイブリダイゼーション用カバーに固定されたことを確認した。
加湿チャンバー内における30分間の反応後、100mMのNaClを含む10mMのリン酸緩衝液(pH7.0)により、ガラス基板表面に残った未反応のプローブDNAを洗い流した。以上の処理より、ガラス基板表面に、非標的核酸捕捉用プローブが固定されたハイブリダイゼーション用カバーを得た。
洗い流した溶液のDNA濃度を上述と同様に測定して、固定化されなかったDNA量を見積もった。この結果、5μg以上の非標的核酸捕捉用プローブがハイブリダイゼーション用カバーに固定されたことを確認した。
(実施例3) DNAマイクロアレイを用いた解析
(1)DNAマイクロアレイの作製
(i)ガラス基板の洗浄
合成石英のガラス基板(サイズ(W×L×T):25mm×75mm×1mm、飯山特殊ガラス社製)を耐熱、耐アルカリ性のラックに入れ、所定の濃度に調製した超音波洗浄用の洗浄液に浸した。一晩、洗浄液中で浸した後、20分間超音波洗浄を行った。続いて、ガラス基板を取り出し、軽く純水で漱いだ後、超純水中で20分超音波洗浄を行った。次に、80℃に加熱した1N水酸化ナトリウム水溶液中に10分間、ガラス基板を浸した。再び、純水洗浄と超純水洗浄を行い、DNAチップ用の洗浄済石英ガラス基板を用意した。
(1)DNAマイクロアレイの作製
(i)ガラス基板の洗浄
合成石英のガラス基板(サイズ(W×L×T):25mm×75mm×1mm、飯山特殊ガラス社製)を耐熱、耐アルカリ性のラックに入れ、所定の濃度に調製した超音波洗浄用の洗浄液に浸した。一晩、洗浄液中で浸した後、20分間超音波洗浄を行った。続いて、ガラス基板を取り出し、軽く純水で漱いだ後、超純水中で20分超音波洗浄を行った。次に、80℃に加熱した1N水酸化ナトリウム水溶液中に10分間、ガラス基板を浸した。再び、純水洗浄と超純水洗浄を行い、DNAチップ用の洗浄済石英ガラス基板を用意した。
(ii)表面処理
シランカップリング剤KBM−603(信越シリコーン社製)を、1%の濃度となるように純水中に溶解させ、2時間室温で攪拌した。続いて、洗浄済石英ガラス基板を、このシランカップリング剤水溶液に浸し、20分間室温で放置した。ガラス基板を引き上げ、軽く純水で表面を洗浄した後、ガラス基板の両面に窒素ガスを吹き付けて乾燥させた。次に、窒素ブロー乾燥したガラス基板を、120℃に加熱したオーブン中で1時間ベークし、カップリング剤処理を完結させた。このカップリング剤処理により、ガラス基板表面に、シランカップリング剤由来のアミノ基が導入された。
シランカップリング剤KBM−603(信越シリコーン社製)を、1%の濃度となるように純水中に溶解させ、2時間室温で攪拌した。続いて、洗浄済石英ガラス基板を、このシランカップリング剤水溶液に浸し、20分間室温で放置した。ガラス基板を引き上げ、軽く純水で表面を洗浄した後、ガラス基板の両面に窒素ガスを吹き付けて乾燥させた。次に、窒素ブロー乾燥したガラス基板を、120℃に加熱したオーブン中で1時間ベークし、カップリング剤処理を完結させた。このカップリング剤処理により、ガラス基板表面に、シランカップリング剤由来のアミノ基が導入された。
一方、同仁化学研究所社製のN−マレイミドカプロイロキシスクシイミド(N−(6−Maleimidocaproyloxy)succinimide)(以下、EMCSと略す)を、ジメチルスルホキシドとエタノールの1:1混合溶媒中に最終濃度が0.3mg/mLとなるように溶解したEMCS溶液を用意した。ベーク終了後、カップリング剤処理済ガラス基板を放冷し、調製したEMCS溶液中に室温で2時間浸した。この浸漬処理間に、カップリング剤処理済ガラス基板の表面に導入されているアミノ基と、EMCSのスクシイミド基とが反応し、ガラス基板表面にEMCS由来のマレイミド基が導入された。EMCS溶液から引き上げたガラス基板を、先述のジメチルスルホキシドとエタノールの混合溶媒を用いて洗浄し、さらに、エタノールにより洗浄した後、窒素ガス雰囲気下で乾燥させた。
(iii)プローブDNAの合成
表1に示したP1、P2に加えて100種のプローブを設定し、それぞれ合成を行った。いずれのプローブもP1、P2と同様の指針で設定されており、同じハイブリダイゼーション条件で検出が可能である。プローブDNAは、上記の表面にマレイミド基が導入されガラス基板に対して共有結合させるため、常法に従って、5’末端にチオール化処理を施した。その後、DNA合成時における副反応を避けるために、保護基を脱保護し、さらにHPLC精製および脱塩処理を施した。得られたプローブDNAは、純水に溶解し、それぞれ、最終濃度(インク溶解時)5μMとなるように分注した後、凍結乾燥を行い、水分を除いた。
表1に示したP1、P2に加えて100種のプローブを設定し、それぞれ合成を行った。いずれのプローブもP1、P2と同様の指針で設定されており、同じハイブリダイゼーション条件で検出が可能である。プローブDNAは、上記の表面にマレイミド基が導入されガラス基板に対して共有結合させるため、常法に従って、5’末端にチオール化処理を施した。その後、DNA合成時における副反応を避けるために、保護基を脱保護し、さらにHPLC精製および脱塩処理を施した。得られたプローブDNAは、純水に溶解し、それぞれ、最終濃度(インク溶解時)5μMとなるように分注した後、凍結乾燥を行い、水分を除いた。
(iv)BJプリンターによるプローブDNA吐出、および基板表面への結合
グリセリン7.5wt%、チオジグリコール7.5wt%、尿素7.5wt%、アセチレノールEH(川研ファインケミカル社製)1.0wt%を含む水溶液を用意した。続いて、分注したプローブDNAを上記の混合溶媒に規定濃度(5μM)となるように溶解した。得られたプローブDNA溶液を、バブルジェット(登録商標)プリンター(キヤノン社製)用インクタンクに充填し、印字ヘッドに装着した。
グリセリン7.5wt%、チオジグリコール7.5wt%、尿素7.5wt%、アセチレノールEH(川研ファインケミカル社製)1.0wt%を含む水溶液を用意した。続いて、分注したプローブDNAを上記の混合溶媒に規定濃度(5μM)となるように溶解した。得られたプローブDNA溶液を、バブルジェット(登録商標)プリンター(キヤノン社製)用インクタンクに充填し、印字ヘッドに装着した。
なお、前記バブルジェット(登録商標)プリンターは、平板へのインクジェット印刷が可能なように改造を施したものである。また、該改造バブルジェット(登録商標)プリンターは、所定のファイル作成方法に従って印字パターンを入力することにより、約5plのDNA溶液液滴を、約190μmピッチでスポッティングすることが可能となっている。
続いて、この改造バブルジェット(登録商標)プリンターを用いて、ガラス基板表面に、プローブDNA溶液のスポッティング操作をおこなった。DNAマイクロアレイ1枚あたり、各プローブ16スポットの吐出が行われるよう印字のパターンを予め作成し、インクジェット印字した。目的のパターンにDNA溶液のスポッティングが確実に行われていることを拡大鏡等により確認した後、30分間常温で加湿チャンバー内に静置し、ガラス基板表面のマレイミド基とプローブDNA5’末端のスルファニル基(−SH)とを反応させた。
(v)洗浄
加湿チャンバー内における30分間の反応後、100mMのNaClを含む10mMのリン酸緩衝液(pH7.0)により、ガラス基板表面に残った未反応のプローブDNAを洗い流した。ガラス基板表面に、各DNAマイクロ当たり9スポットに所定の一本鎖プローブDNAが、それぞれ固定されたDNAマイクロアレイを得た。
加湿チャンバー内における30分間の反応後、100mMのNaClを含む10mMのリン酸緩衝液(pH7.0)により、ガラス基板表面に残った未反応のプローブDNAを洗い流した。ガラス基板表面に、各DNAマイクロ当たり9スポットに所定の一本鎖プローブDNAが、それぞれ固定されたDNAマイクロアレイを得た。
(2)DNAマイクロアレイによる解析
実施例2で得られたハイブリダイゼーション用カバーと(1)で作製したDNAマイクロアレイを用いて解析を行う。なお、比較のために、本発明のハイブリダイゼーション用カバーを用いない場合でもハイブリダイゼーションを非標的核酸の捕捉処理を行っていない全ゲノムDNAも同様にマイクロアレイ解析を行った。
実施例2で得られたハイブリダイゼーション用カバーと(1)で作製したDNAマイクロアレイを用いて解析を行う。なお、比較のために、本発明のハイブリダイゼーション用カバーを用いない場合でもハイブリダイゼーションを非標的核酸の捕捉処理を行っていない全ゲノムDNAも同様にマイクロアレイ解析を行った。
各検体DNAに対し、Cy3及びCy5標識処理を行った。Invitrogen社製のバイオプライムDNAラベリングシステムを用いてキットのプロトコルに従ってランダムプライミング方式によって増幅及び標識反応を行った。使用した検体及びDNA量を表5に示す。ただし、A431はCy3標識し、Human FemaleはCy5標識した。
まず、表6に示す通りに試薬を加え、95℃で5分間保温し、その後すぐに氷上にて5分間静値した。
更に、10×dNTPの混合物を5μL、Cy3−dCTPもしくはCy5−dCTP(アマシャムバイオサイエンス社製、各1mM)を3μL加え、最後に、Klenow Fragmentを1μL加えて、優しく混ぜて約15秒間遠心を行った。37℃で2時間インキュベートし、最後にStop
Bufferを5μL加えて反応を止めた。
Bufferを5μL加えて反応を止めた。
反応液は、精製用カラム(QIAGEN QIAquick PCR Purification Kit)を用いて精製した。精製後、60μLの超純水で溶出した。得られたDNA溶液はNanoDrop社製、NanoDrop ND−1000でDNA濃度を測定したところ、A431は46.9ng/μL、Female Genomeは37.4ng/μLであった。
精製後の検体を1と2をそれぞれ1μLずつ使用し、100μLのDNA溶液になるように超純水で調整した。更にHuman Cot−1 DNAを加えてエタノール沈殿による精製を行った。なお、これを2本作製した。エタチンメイトを使用し、表7に示す通りに反応液を調製した。そして、4℃、15000rpmで20分間遠心を行った。そして、上清のみを採取し、70%の氷冷エタノール500μLを加えて、4℃、15000rpmで10分間遠心を行った。沈殿のみを残して溶液を捨て、キャップを開けたまま、20分ほど遮光下で風乾させた。
表8に示した通りに溶液をチューブ内で調整し、DNAを含む上述の反応液を加え、遮光下37℃で30分静置した。30分後、優しくタッピングしDNAを溶液に良く溶かした。そして、同じく遮光下で70℃15分、37℃60分静置し、DNAのディネーチャーとプレハイブリダイゼーションを行った。
上述の溶液を(1)で作製したDNAマイクロアレイに接触させて、37℃24時間ハイブリダイゼーションを行った。1つは実施例2で作成したハイブリダーゼーションカバーを使用し、対照検体の方はタカラバイオ社製のTakara Slide Seal for in situ PCRを使用して液の封止を行った。
ハイブリ終了後、45℃に保温したバッファー1(2×SSC / 0.1% SDS )とバッファー2(2×SSC)で各5分洗浄し、最後にバッファー3(0.1×SSC)で軽くリンスし、スピンドライを行った。
ハイブリダイゼーション反応終了後のDNAマイクロアレイをDNAマイクロアレイ用蛍光検出装置(Axon社製、GenePix 4000B)を用いて蛍光測定を行った。測定結果を表9に示す。表12の通り、処理後の検体の方が癌/正常の比が大きくなっており、コピー数の差をコントラスト良く検出できている。これは、非標的核酸がハイブリダイゼーションカバーに固定された非標的核酸捕捉用プローブと結合したため、DNAマイクロアレイ中の標的核酸用プローブへの非特異結合が起こらなかったためと考えられる。また、BGはバックグラウンドのシグナル値であるが、通常法に比べて本発明のハイブリダイゼーションカバーを使用した方がシグナル値は小さい。この結果を見ても、非標的核酸がハイブリダイゼーションカバーに捕捉されたことにより、DNAマイクロアレイ表面への非特異吸着が軽減されたことがわかった。
尚、反応溶液中の核酸量は、上記の処理から1μg以下と見積もることができ、カバー表面に固定化されている非標的核酸捕捉用プローブの核酸量は、5倍量以上であることがわかる。
尚、反応溶液中の核酸量は、上記の処理から1μg以下と見積もることができ、カバー表面に固定化されている非標的核酸捕捉用プローブの核酸量は、5倍量以上であることがわかる。
Claims (5)
- 固相に固定された標的核酸検出用プローブと標的核酸とのハイブリダイゼーション工程に用いるハイブリダイゼーション用カバーであって、
前記標的核酸を含む反応溶液と接する面に、前記標的核酸と競合して前記標的核酸検出用プローブとハイブリダイゼーション反応する非標的核酸を捕捉するための非標的核酸捕捉用プローブが固定されていることを特徴とするハイブリダイゼーション用カバー。 - 前記非標的核酸捕捉用プローブが固定されている固相が多孔質体、または繊維の集合体からなる固相であることを特徴とする請求項1に記載のハイブリダイゼーション用カバー。
- 前記反応溶液と接する前記ハイブリダイゼーション用カバーの表面には、前記反応溶液に含まれている被検体核酸の重量の5倍以上の前記非標的核酸捕捉用プローブが固定されていることを特徴とする請求項1または2に記載のハイブリダイゼーション用カバー。
- 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のハイブリダイゼーション用カバーの製造方法であって、
(1)標的核酸を検出するための標的核酸検出用プローブを用意する工程と、
(2)前記標的核酸及び非標的核酸を含む被検体核酸と同種の核酸集団であって、前記非標的核酸を捕捉するための非標的核酸捕捉用プローブを作成するための核酸集団を用意する工程と、
(3)前記標的核酸検出用プローブと、前記核酸集団の中の標的核酸と標的核酸検出用プローブ−標的核酸複合体を形成させる工程と、
(4)前記核酸集団から前記標的核酸検出用プローブ−標的核酸複合体を分離除去し、残った核酸を非標的核酸捕捉用プローブとする工程と、
を含んでなる方法によって製造されることを特徴とするハイブリダイゼーション用カバーの製造方法。 - 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載されたハイブリダイゼーション用カバーを用いて、前記標的核酸及び前記非標的核酸を含む被検体核酸とハイブリダイゼーションを行う標的核酸の検出方法であって、前記標的核酸と前記標的核酸検出用プローブとのハイブリダイゼーション反応と、前記非標的核酸と前記非標的核酸捕捉用プローブとのハイブリダイゼーション反応とを同時に行うことを特徴とする標的核酸の検出方法。
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JP2008315107A JP2010136657A (ja) | 2008-12-10 | 2008-12-10 | ハイブリダイゼーション用カバー及びそれを用いた標的核酸の検出方法 |
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CN108474032A (zh) * | 2015-10-07 | 2018-08-31 | 亿明达股份有限公司 | 测序技术中的脱靶捕捉降低 |
-
2008
- 2008-12-10 JP JP2008315107A patent/JP2010136657A/ja active Pending
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JP2018529371A (ja) * | 2015-10-07 | 2018-10-11 | イラミーナ インコーポレーテッド | シークエンシング技術におけるオフターゲット補足の低減 |
US10577643B2 (en) | 2015-10-07 | 2020-03-03 | Illumina, Inc. | Off-target capture reduction in sequencing techniques |
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