JP2010132934A - ニッケル冷間圧延コイル、及びニッケル冷間圧延コイルの製造方法 - Google Patents

ニッケル冷間圧延コイル、及びニッケル冷間圧延コイルの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】冷間圧延工程における圧延摩耗粉による問題を抑制し得るニッケル冷間圧延コイルを提供して、高い生産性と歩留まりをもってニッケル冷間圧延コイルを製造し得る製造方法を提供することを目的としている。
【解決手段】本発明に係るニッケル冷間圧延コイルは、質量で、99.0%以上のニッケルと、4〜100ppmのホウ素とを含有してなる熱間圧延コイルに、少なくとも1回の冷間圧延が実施されて形成されていることを特徴としている。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ニッケル冷間圧延コイル、及びニッケル冷間圧延コイルの製造方法に関する。
ニッケル及びニッケル合金は、一般にアルカリ環境での耐食性に優れる特徴を有しており、これらによって形成された部材(ニッケル材)が、従来、化学プラント用材料として広く利用されている。
特にニッケルが99.0質量%以上含まれてなるニッケル材は電気抵抗が低く、さらに適度な材料強度と耐食性とを有することから、電気機器や自動車のバッテリーなど電源用の導電部材としての利用が進んでいる。
このようなニッケル材は、汎用性の高い板状の形態で供給されることが多いが、鉄鋼やステンレスに比べて高価であるため、その工業生産にあたっては生産性ならびに歩留まりを高くすることが求められており、このような要望を満足させるためには、コイル状のニッケル材(ニッケルコイル)を冷間圧延して連続的に製造する方法が適している。
このニッケル冷間圧延コイルを製造する設備としては鋼帯やステンレス鋼帯などと共通の設備が利用され、冷間圧延機も通常の冷間圧延油を用いた直列型圧延機やクラスター型圧延機が使用されている。
しかしニッケルは軟質であるうえワークロールに凝着し易いため、圧延中にニッケルコイルの表面が摩耗されて圧延摩耗粉(以下、単に「摩耗粉」ともいう)を発生し易く、そのために冷間圧延における生産性を低下させる場合がある。
その影響は圧延摩耗粉の性質によって主として以下の2種類に大別することができる。
第一の影響は、圧延摩耗粉の凝集性が高い場合に、圧延中のワークロールのロールバイト内に偏在した摩耗粉が圧延材の表面に転写されて模様欠陥を生じることによって起こる製品の外観不良による歩留まり低下である。
第二の影響は、圧延摩耗粉がワークロール表面に付着して堆積する性質を持つ場合に、堆積した摩耗粉によってワークロールの表面が粗面化して表面光沢が低下する他、圧延摩擦係数の急激な増大によって発生し、圧延荷重が増大してコイル長手方向での板厚変動を生じたり、圧延荷重超過によって圧延不能に陥ったりすることによる歩留まり低下である。
この様な歩留まり低下を防ぐためには、圧延不能に陥るまでに1パスの圧延が完了する様に圧延するコイル長さを制限したり、あるいは、摩耗粉の堆積したワークロールを圧延機から取り出して未使用のワークロールに交換する作業を頻繁に行ったりしなければならず、いずれにしても大幅な生産性低下を余儀なくされる。
このようなニッケル圧延材の製造方法については、下記特許文献1には、ニッケル圧延材の製造方法として、冷間圧延したニッケル材を600℃程度の低温で熱処理することにより、表層部の炭素や酸素を除去する技術が示されている。
しかし、この特許文献1は、半田付けに際しての半田鍍金を無用とすることを目的とした技術に係るものであり、摩耗粉及び冷間圧延性についての対策を提供するものではない。
また、下記特許文献2にはニッケル材に含まれる酸素と窒素の合計量を100ppm以下に制限することが記載され、下記特許文献3にはニッケル材の最表面から1nm深さでの酸素量を10原子%以下に制限することが記載されている。
しかし、これらはいずれもニッケル材中に含まれる酸素量を制限することで接合性等を向上させる技術に関するものであって、冷間圧延によって発生する圧延摩耗粉に対する解決策を与えるものではない。
特開2005−82886号公報 特開2003−89835号公報 特開2004−277804号公報
本発明は、上記問題点に鑑み、冷間圧延工程における圧延摩耗粉による問題を抑制し得るニッケル冷間圧延コイルを提供して、高い生産性と歩留まりをもってニッケル冷間圧延コイルを製造し得る製造方法を提供することを目的としている。
本発明者らは、圧延摩耗粉による上記のような問題がニッケル酸化物を主たる原因としていることを見出し、その対策について鋭意検討を行った結果、本発明の完成にいたった。
すなわち、本発明に係るニッケル冷間圧延コイルは、質量で、99.0%以上のニッケルと、4〜100ppmのホウ素とを含有してなる熱間圧延コイルに、少なくとも1回の冷間圧延が実施されて形成されていることを特徴としている。
また、本発明に係るニッケル冷間圧延コイルの製造方法は、質量で、99.0%以上のニッケルと、4〜100ppmのホウ素とを含有してなる熱間圧延コイルを用い、該熱間圧延コイルに、1回以上の冷間圧延を実施してニッケル冷間圧延コイルを製造することを特徴としている。
本発明のニッケル冷間圧延コイルには、ホウ素が所定の量で含有されている。このホウ素は、拡散速度が速く表面濃化されやすいことから、酸化物の形成抑制に特に有効に作用する。
例えば、ホウ素を含有しない場合には、圧延によって露出した新生表面や凝着摩耗で脱落したニッケル微粒子がワークロールバイト内の高温高圧環境下において酸化されやすく、この酸化されたニッケル微粒子は、凝集性を待つために粗大な摩耗粉を形成し、ワークロールバイト内に偏在して模様欠陥を発生させるおそれを有する。
また、ニッケル冷間圧延コイルの表面にニッケル酸化物が形成されると、該ニッケル冷間圧延コイルに長期の保管期間を設けるなどした場合に、この表面のニッケル酸化物が空気中の水分と反応するなどしてニッケル水酸化物を形成させるおそれがあり、このニッケル水酸化物の脱落を発生させるおそれを有する。
本発明に係るニッケル冷間圧延コイルの場合には、所定量のホウ素を含有している熱間圧延コイルが用いられており、当該熱間圧延コイルは、通常、ホウ素が表面濃化されていることからワークロールバイト内の高温高圧環境下でもニッケルの酸化が抑制される。
特に接触圧力の小さな圧延条件においては摩耗粉の発生がほとんど無く、模様欠陥が発生するおそれを低減させうる。また、水酸化物の形成も抑制され、ニッケル水酸化物の脱落も防止されうる。
すなわち、本発明のニッケル冷間圧延コイルにおいては、圧延摩耗粉によって生じる問題が抑制され得る。
また、本発明のニッケル冷間圧延コイルの製造方法によれば、圧延摩耗粉によるトラブルを抑制しつつニッケル冷間圧延コイルを製造することができる。
したがって、冷間圧延する長さに制限を設けたり、ワークロールを頻繁に取り替えたりすることなくニッケル冷間圧延コイルを製造しうることから、高い生産性と歩留まりをもってニッケル冷間圧延コイルを製造することができる。
以下に、本実施形態のニッケル冷間圧延コイルについて説明する。
まず、本実施形態に係るニッケル冷間圧延コイルを形成させる材料成分について説明する。
本実施形態のニッケル冷間圧延コイルは、質量で、99.0%以上のニッケルと、4〜100ppmのホウ素とを含有してなる熱間圧延コイルに、少なくとも1回の冷間圧延が実施されて形成されたものである。
したがって、通常、冷間圧延後のニッケル冷間圧延コイルにおける材料成分にも、99.0%以上のニッケルと、4〜100ppmのホウ素とが含有されている。
前記熱間圧延コイル及び冷間圧延コイルには、通常、ニッケルとホウ素以外に、不純物が含有されている。
この不純物としては、主に精錬工程での脱酸に必要な元素や不可避不純物である炭素、ケイ素、マンガン、リン、イオウ、銅、マグネシウム、鉄、酸素などが挙げられる。
これら不可避不純物の含有量は、質量で、炭素が0.02%以下であり、通常0.01%程度とされる。
また、ケイ素は、0.35%以下であり、通常0.03%程度とされ、マンガンは、0.35%以下であり、通常0.2%程度とされる。
また、リンは、0.01%以下であり、通常、0.002%程度とされ、イオウは、0.01%以下であり、通常、0.001%程度とされる。
また、銅は、0.25%以下であり、通常、0.02%程度とされ、マグネシウムは、0.1%以下であり、通常、0.01%程度とされる。
さらに、鉄は、0.4%以下であり、通常、0.1%程度とされ、酸素は0.005%以下であり、通常、0.003%程度とされる。
本実施形態における熱間圧延コイル及びニッケル冷間圧延コイルには、ニッケルが99質量%以上含有されており、ホウ素が4〜100ppm含有されていることから、上記不純物の合計量は、1質量%未満である。
このようにニッケルを99.0%以上含有させることによってアルカリ環境での耐食性や低い電気抵抗を有する部材の形成に有用なニッケル冷間圧延コイルとすることができる。
また、本実施形態においてホウ素の含有量が上記範囲とされているのは、ホウ素の含有量が4ppm未満である場合には、ホウ素の優先酸化の作用を有効に機能させることが困難となって圧延摩耗粉の原因物質である水酸化物の元となるニッケル酸化物が表面に多く形成されるおそれがあり、一方で、100ppmを超えると粗大なホウ化物(ボライド)を形成して加工性や耐食性の劣化を招いてしまうおそれがあるためである。
このことについて、詳細に説明すると、従来のホウ素を含まないニッケルコイルを圧延した場合には、この圧延によって露出した新生表面や凝着摩耗で脱落したニッケル微粒子がワークロールバイト内の高温高圧環境下で酸化することとなる。
一方で、上記のように熱間圧延コイルにホウ素が含有されている場合には、熱間圧延コイルの表面には、通常、ホウ素が濃化されていることから、この熱間圧延コイルを冷間圧延する場合に、新生表面等においてこのホウ素が優先酸化されてニッケル酸化物の形成を抑制させる。
また、このようにホウ素を含有させることで、例えば、焼鈍などための熱処理をニッケルコイルに施した際に、ニッケルコイル表面でニッケルよりもホウ素が優先的に酸化されて酸化ホウ素(B23)や窒化ホウ素(BN)を形成するとともに、前者は、450℃程度で溶解してニッケルコイルの表面を覆うべく作用することから、ニッケル酸化物の形成がより一層抑制されることとなる。
酸化ニッケル粒子は、凝集性を有することから酸化ニッケルを主たる成分とした圧延摩耗粉が発生すると、これらが凝集して粗大な粒子を形成し、ワークロールバイト内に偏在した状態で堆積して、この堆積された圧延摩耗粉の形状がニッケル圧延コイルの表面に転写されて模様欠陥を発生させるおそれを有する。
また、表面にニッケル酸化物が形成されると、熱処理においてその雰囲気ガス中の水分と反応したり、その後の保管期間中において空気中の水分と反応したりしてニッケルの水酸化物が生成されるおそれがある。
この水酸化物は、脱落を生じやすく、ニッケル冷間圧延コイルを切断加工や打ち抜き加工してニッケル製品を作製する際にニッケル冷間圧延コイルの表面に水酸化ニッケルを主たる成分とする粒子(粉末)を発生させて擦過疵や押し込み疵を発生させるおそれがある。
一方で上記範囲の内のいずれかのホウ素を含有するニッケルコイルは、ニッケルの酸化が抑制されるために圧延時における新生表面の酸化が起こりにくい状態で圧延を行うことができ、特に接触圧力の小さな圧延条件で圧延が実施される場合においては摩耗粉の発生がほとんど無い状態で圧延を行うことができる。
なお、接触圧力の高い圧延条件においては、ワークロールとコイル表面との凝着摩耗によって酸化されていないニッケルからなる微粒子(摩耗粉)が生成される可能性があり、この場合にも、このニッケル微粒子が、圧延バイト内でワークロール表面に凝着堆積して、結果的に圧延荷重の増大を招くおそれがある。
したがって、上記範囲の内のいずれかのホウ素を含有させるとともに、ワークロールと圧延材との間の接触圧力を小さく保つことで冷間圧延における作業性の低下をより確実に防止させ得る。
より具体的には、熱間圧延後に冷間圧延を1回以上実施する場合においては、各パスにおける平均圧延圧力(kgf/mm2)の値が、当該パスによる累計圧下率の値をX(%)とした場合に、77+0.58Xを超えないようにして冷間圧延を実施することが好ましい。
例えば、熱間圧延後に、この熱間圧延コイルに対して冷間圧延を1パス実施してニッケル冷間圧延コイルを作製する場合に熱間圧延コイルの板厚をT0(mm)、冷間圧延後の板厚をT1(mm)とすると、この1パスにおける累計圧下率:X1(%)は、(T0−T1)/T0×100(%)となる。
そして、この冷間圧延における平均圧延圧力の値をP1(kgf/mm2)とした場合に、
1≦77+0.58X1・・・(1)
上記式(1)を満足させるように冷間圧延を実施することが好ましい。
なお、引き続いて、例えば、さらに2パスの冷間圧延を実施して、合計3パスの冷間圧延を実施する場合においては、第二パス(1パス追加)後の板厚をT2(mm)、第三パス(2パス追加)後の板厚をT3(mm)とすると、第二パスまでの累計圧下率:X2(%)は、(T0−T2)/T0×100(%)となり、第三パス終了時の累計圧下率:X3(%)は、(T0−T3)/T0×100(%)となる。
そして、第二パスにおける平均圧延圧力の値をP2(kgf/mm2)、第三パスにおける平均圧延圧力の値をP3(kgf/mm2)とすると、下記式(2)、(3)をそれぞれ満足させるように第二パス及び第三パスの冷間圧延を実施することが好ましい。
2≦77+0.58X2・・・(2)
3≦77+0.58X3・・・(3)
熱間圧延後の冷間圧延において、上記式(1)等を満足させるには、例えば、各パスにおける圧下率を所定以下に制限して、多パス圧延することが最も簡便である。
その他の方法としては、圧延張力を増大する方法や、小径ワークロールを使用する方法などが挙げられる。
また、ワークロールバイト内の油膜厚みを増大して圧延摩擦係数を減少させるために高粘度圧延油を用いたり圧延速度を増大させたりすることも有効である。
平均圧延圧力を制限するこれらの方法は、上記に限定されず種々の方法を採用することができ、しかも、これらの方法を複数組み合わせて実施することもできる。
なお、平均圧延圧力の値は、圧延荷重[tonf]を、板巾[mm]と接触弧長[mm]で除算することによって算出することができ、接触弧長は、ワークロールの半径をR[mm]、板厚減少量を△h[mm]とした場合に、通常、(R×△h)0.5によって与えられる。
また、このような平均圧延圧力の制限は、ニッケルコイルの圧延長さの大半で達成されていれば良く、例えば、圧延開始や終了時の加減速部で短時間に限って圧延荷重が増大したとしても、ワークロールへの圧延摩耗粉の堆積が急激に進行する可能性は低く、模様欠陥等の発生するおそれも低い。
このようなことから、形成されるニッケル冷間圧延コイルの長さ方向中央部の80%程度において上記式(1)等の関係が満足されていれば、通常、圧延摩耗粉の堆積に伴う問題の発生が抑制されうる。
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(ホウ素添加の効果について:ピンオンディスク法による摩擦試験)
まず、冷間圧延における摩耗粉の性質を調査するためにピンオンディスク法による摩擦試験を行った。
ピンオンディスク法は摩擦面での摩耗量評価に適した汎用の摩擦試験法であり、柱状のピンの端面を円板状のディスク表面に押し付けて回転すべりさせる試験法である。
今回の評価試験では、実際のワークロール(SKD11相当)から切り出した8.8mm角の断面形状を有する長さ30mmの四角柱のピンを用いた。
また、ディスクには実機製造した厚さ約1mmの2種類のニッケル冷間圧延コイル(焼鈍品)から切り出した直径80mmの円板を使用した。
このディスクに含有されるニッケル以外の主な成分は、下記表1に示すとおりである。
Figure 2010132934
上記ディスクの中心から径外方に向けて25mmの位置において、ディスクに対して垂直に前記ピンを荷重4kgfで押し付け、その状態でディスクを60rpmの速度で回転させることによってワークロールとニッケル冷間圧延コイルと間の摩擦を模擬し、ディスクを2万回転させた後に、発生した摩耗粉を回収して組成分析と形態観察を行った。
なお、この試験は、摩耗粉の発生を促進させるために無潤滑条件で行った。
この摩擦試験で発生した摩耗粉の組成を調査した結果、摩耗粉の組成は、ディスクとして用いたニッケル冷間圧延コイルに含まれる微量成分によって影響を受け、特にホウ素を含有していないニッケル冷間圧延コイルをディスクとして用いた場合には摩耗粉中の酸素濃度が高く、また微量のホウ素が含有されてなるニッケル冷間圧延コイルをディスクとして用いた場合には、摩耗粉中の酸素濃度が低いことが確認された。
ホウ素が含有されていないニッケル冷間圧延コイルをディスクの形成に用いた試験において得られた摩耗粉を走査型電子顕微鏡付属のエネルギー分散型X線分光装置(SEM−EDX)によって組成分析した結果を図1に示す。
この分析においては、ニッケルと微量の鉄以外に酸素のピークが検出され、この酸素ピークを基に定量分析したところ、27原子%の酸素が確認された。摩耗粉中の酸素は、主に酸化ニッケル[NiO]もしくは水酸化ニッケル[Ni(OH)2]として存在すると考えられるが、いずれの化学式においても化合物の酸素含有量(水素を除く)は27原子%より多くなる。
それにもかかわらず図1における摩耗粉の酸素含有量が27原子%となった原因は、摩耗粉が純粋な化合物では無く、酸化ニッケル、又は水酸化ニッケル、又はこれらの混合物と、酸化物等の化合物を形成していない金属ニッケルとの混合物であるためであると考えられる。
一方、図2には、15ppmのホウ素(誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置で定量)を含有するニッケル冷間圧延コイルをディスクとして用いた場合の摩耗粉をSEM−EDX分析によって組成分析した結果を示す。
この図2からもわかるように、ホウ素を含有するニッケル冷間圧延コイルをディスクに用いた摩擦試験において発生する摩耗粉は、殆どニッケルのみのピークしか確認できず、微量の酸素ピークを基に定量分析したところ、5(±3)原子%の酸素が確認されるにとどまった。
このことからもホウ素がニッケルの酸化物を抑制することがわかる。
また、SEMによって摩耗粉の形態を観察した結果、その形態は摩耗粉中の酸素含有量によって異なっており、酸素が少ない摩耗粉では個々の粒子が独立して存在するのに対して、酸素の多い摩耗粉では細かな粒子が凝集して粗大粒を形成していることが確認された。
また、同様の摩擦試験を、より小さな押し付け荷重(1kgf)で実施したところ、ホウ素の含有されていないディスクにおいては、摩耗粉の発生が確認されるものの、微量のホウ素(15ppm)を含有するディスクは、摩耗粉が確認できなかった。
これは、ホウ素が含有されていないディスクの表面では摩擦による新生表面においてニッケルが酸化され、その酸化物が脱落しながら凝集して摩耗粉を形成しているのに対して、ホウ素を含有するものは、ディスクの表面ではニッケルの酸化が抑制され、特に接触圧力の小さな条件においては摩耗粉が発生しなかったためであると考えられる。
このことからも、ニッケル冷間圧延コイルの製造における冷間圧延の作業性の低下を防止するためには、所定のホウ素を含有させるとともに、ワークロールと圧延材(ニッケルコイル)との間の接触圧力を小さく保つことが重要であると認められる。
(ニッケル冷間圧延コイルの製造方法についての検討)
実機電気炉での溶解工程と真空下酸素吹精脱炭法(VOD)での精錬工程を経てホウ素含有量の異なる材料を溶製し、連続鋳造法によって厚さ150mmで幅が1000mmのスラブを作製した。
このとき、VODでの精錬工程において、得られるスラブのホウ素の含有量が4ppm及び15ppm、及び89ppmとなるようにフェロボロン(鉄とホウ素の合金)の添加を実施した。
また、フェロボロンを加えることなく、ホウ素が1ppmしか含有されていないスラブも併せて作製した。
スラブ表面に存在する割れなどの欠陥を切削除去した後、加熱温度1200℃で熱間圧延し厚さ4mmの熱延コイルを得た。
この熱延コイルを820℃の大気熱処理炉で連続焼鈍した後にショットブラストおよび硝弗酸酸洗によってスケールを除去し熱間圧延焼鈍板を得た。
この熱間圧延焼鈍板を用いて冷間圧延テストを行ったが、一部の試験を除いてはコイル長さを長くするために、厚さ0.2mmから0.8mmまで冷間圧延したコイルを820℃のAXガス雰囲気中で連続的に光輝焼鈍して評価用コイルとした。
この熱間圧延焼鈍板(あるいは上記評価用コイル)に対して、下記表2に示す条件で、3パス、または、4パスの冷間圧延を実施して、ニッケル冷間圧延コイルを作製した。
各パス後のニッケル冷間圧延コイルの表面状態とワークロール(WR)の表面を目視観察した結果を表2に示す。
また、ワークロールの半径(表中の“WR半径”:R)と、板厚減少量(△h)とによって接触弧長(L=(R×△h)0.5)を計算によって求めるとともに、圧延荷重(表中の“初期圧延荷重”:F)を、板巾(W)と、上記計算により求めた接触弧長(L)とで除算(F/W/L)することによって平均圧延圧力を求めた。
また、併せて、累計圧下率(X)から、77+0.58Xの値を算出し、圧延圧力上限値とし、先に求めた平均圧延圧力との比較を行った。
結果を表2に示すが、番号1から3に示したニッケル冷間圧延コイル製造条件においては、ワークロールの表面に圧延摩耗粉の堆積は見られず、この圧延摩耗粉を原因としたニッケル冷間圧延コイルの模様欠陥や光沢不良といった問題も観察されなかった。
一方で、ホウ素含有量が、4ppm未満である番号4の事例においては、ホウ素の含有量が十分ではないことから、凝集した圧延摩耗粉の転写による表面の模様欠陥が見られた。また、後段側のパスでは、圧延圧力上限値を超える平均圧延圧力となったためにワークロール表面にニッケル粉の堆積(Ni堆積)が認められ、ニッケル冷間圧延コイルの表面の光沢度を低下させる結果となった。しかも、圧延の進行に伴って急激な圧延荷重の増大が見られた。
また、番号5と6の事例では、圧延圧力上限値を超える平均圧延圧力となった際において、ワークロール表面にニッケル粉の堆積(Ni堆積)が認められ、ニッケル冷間圧延コイルの表面の光沢度を低下させる結果が見られた。
このことから、所定量のホウ素を含有させることとともに、平均圧延圧力(kgf/mm2)の値を所定の値以下とすることで冷間圧延における作業性の低下をより確実に防止し得ることが確認された。
また、実機での圧延実績に基づいて採取したデータをグラフ化したものを図3に示す。
この図3のグラフの凡例の内、黒丸で示すものは、その条件で冷間圧延を実施した場合にワークロールへの圧延摩耗粉の堆積が見られことを示しており、白丸で示すものは、その条件で冷間圧延を実施した場合にワークロールへの圧延摩耗粉の堆積が見られなかったことを表している。
また、破線は、累計圧下率(総圧下率)を変数「red」、平均圧延圧力を変数「pm」とした場合に、「pm=77+0.58red」の関数で表される直線を示している。
このことからも、平均圧延圧力(kgf/mm2)の値を77+0.58X(なお、Xは、そのパスによる累計圧下率の値で、単位は“%”である)以下とすることによって冷間圧延における作業性の低下をより確実に防止し得ることがわかる。
Figure 2010132934
以上に示したように、本発明のニッケル冷間圧延コイルは、冷間圧延工程における圧延摩耗粉による問題を抑制し得るものであることがわかる。
また、上記の結果からは、本発明のニッケル冷間圧延コイルの製造方法においては、圧延摩耗粉による問題を抑制し得ることから高い生産性と歩留まりとが期待されうることもわかる。
ホウ素を添加していないニッケル冷間圧延コイルから作製したディスクを用いたピンオンディスク試験によって発生した摩耗粉のSEM−EDXスペクトル。 ホウ素を15ppm添加したニッケル冷間圧延コイルから作製したディスクを用いたピンオンディスク試験によって発生した摩耗粉のSEM−EDXスペクトル。 累計圧下率(総圧下率)と平均圧延圧力との関係によるワークロールへの圧延摩耗粉の堆積状況を示すグラフ。

Claims (3)

  1. 質量で、99.0%以上のニッケルと、4〜100ppmのホウ素とを含有してなる熱間圧延コイルに、少なくとも1回の冷間圧延が実施されて形成されていることを特徴とするニッケル冷間圧延コイル。
  2. 質量で、99.0%以上のニッケルと、4〜100ppmのホウ素とを含有してなる熱間圧延コイルを用い、該熱間圧延コイルに、1回以上の冷間圧延を実施してニッケル冷間圧延コイルを製造することを特徴とするニッケル冷間圧延コイルの製造方法。
  3. 前記冷間圧延を、各パスにおける平均圧延圧力(kgf/mm2)の値が、当該パスによる累計圧下率の値をX(%)とした場合に、77+0.58Xを超えないようにして実施する請求項2記載のニッケル冷間圧延コイルの製造方法。
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