JP7445116B2 - 厚鋼板 - Google Patents

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Description

本発明は、熱間圧延された厚鋼板、より詳しくはレーザー切断に使用するのに有用な厚鋼板に関する。
造船、建築、産業機械、橋梁等の鋼構造物には多量の厚鋼板が使用されている。これらの鋼構造物の工作においては、施工コスト・工数の多くが溶接と切断で占められている。鋼板の切断方法としては、ガス切断、プラズマ切断、レーザー切断などがある。
レーザー切断は、ガス切断と比較して、切断面の精度に優れ、熱影響部が小さいこと、さらには自動化が可能なことから薄板加工業を中心に普及してきた。近年では、高出力のレーザー切断機の実用化により、厚鋼板の切断においてもレーザー切断機が利用されるようになってきている。
厚鋼板は、スラブを熱間圧延する工程で大気によって酸化されてその表面にスケール(酸化物)が形成されている。厚鋼板のレーザー切断においては、このスケールが鋼板表面で剥離していたり、切断時にレーザーによって剥離したりすると、厚鋼板をうまく切断できなかったり、切断面にえぐられたような異常切断部(ノッチ)が生じたりして、安定的な切断ができない場合がある。
特に、設定された切断条件のもと自動無人運転においてレーザー切断が施工されるような場合に、上記のような切断不良が発生してしまうと、切断処理が自動停止されることになる。このような場合には、予定されていた処理量を達成することができなくなるため、レーザー切断においては、一定の切断条件のもとで安定的に切断を実施できることが極めて重要となる。したがって、レーザー切断に供される厚鋼板では、一般的なレーザー切断条件において切断面にノッチが発生しないことが要求され、そのためには厚鋼板からスケールが剥離しないこと、すなわちスケールの密着性を高めることが非常に重要である。
特許文献1では、鋼板表面でのレーザー吸収率を向上させるために、鋼板表面のスケール厚を10~50μmに制御し、アシストガスの流れを適正化させるためにスケールと地金との界面のスケール側にSi、Cu、Cr、Pの1種または二種以上が濃化した層を有し、かつスケール層の中に存在する空孔の面積を5%以下に制御した厚鋼板が記載されている。
特許文献2では、多量の合金元素の添加や特殊な製造工程を用いることなく、経済的かつ高効率にレーザー切断性に優れた鋼板を製造することができるレーザー切断性に優れた鋼板の製造方法を開示する。具体的には、鋼板の表面粗さが大きく、赤スケールが生成すると、レーザー切断性が悪化すると考え、2回以上の圧延パス回数を有する熱間圧延において、1回以上デスケーリングし、デスケーリングの回数が総圧延パス回数の50%未満であり、かつ圧延終了温度が900℃以上とすることで、スケールの表面粗さが小さく、外観は黒色を呈し、レーザー切断性が良好な鋼板を製造することを開示する。
特開2002-332541号公報 特開2003-136110号公報
特許文献1では、レーザー切断性を向上させるためには、アシストガスの流れの適正化が必要であり、そのために、スケール層と地金との界面のスケール側にSi、Cu、Cr、Pのいずれか一つ以上が濃化した層を生成させて密着性を向上すること、および、スケール層内の空孔の面積を5%以下にすること、が教示されている。
また、特許文献2では、レーザー切断性を向上させるためには、デスケーリングの回数や圧延終了温度を規定することで、スケールの表面粗さが小さく、外観は黒色を呈する、鋼板を製造すること、が教示されている。なお、特許文献2では、デスケーリングを1回以上実施すればスケール厚さは粉砕されない程度に薄くなり良好なスケール性状が得られると教示しているが、具体的なスケール厚さは開示されていない。
結局のところ、特許文献1~2のいずれにおいても、スケール組織の具体的な構造及びそれが鋼板に対するスケールの密着性に及ぼす影響については必ずしも十分な検討がなされておらず、それゆえ当該特許文献1~2に記載の鋼板では、そのレーザー切断性について依然として改善の余地があった。
そこで、本発明は、新規な構成により、スケールの密着性が改善され、それゆえレーザー切断に使用するのに有用な厚鋼板を提供することを目的とする。
上記目的を達成する本発明は下記のとおりである。
(1)0.10質量%以上でCの含有質量%以上のSiを含有する地金と、前記地金の表面に厚さ20~60μmのスケールとを有し、
前記スケールは、前記地金と隣り合ってFe-Si酸化物層を含み、前記Fe-Si酸化物層の平均厚さが1.0μm以上であり、前記Fe-Si酸化物層中のSiの質量%の平均が1.0%以上であることを特徴とする、厚鋼板。
(2)6mm以上35mm以下の厚さを有することを特徴とする、上記(1)に記載の厚鋼板。
(3)レーザー切断用であることを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の厚鋼板。
本発明によれば、スケール/地金界面のスケール側に顕著なFe-Si酸化物層を形成することで、鋼板(地金)に対するスケールの密着性を向上させることができ、その結果として鋼板表面からのスケールの剥離を抑制することができるので、レーザー切断に使用するのに有用な厚鋼板を提供することができる。
本発明の厚鋼板のスケール構造を示す模式図である。
以下、本発明のレーザー切断用に用いられる厚鋼板について詳しく説明する。ただし、本発明の厚鋼板は、このような特定の用途に何ら限定されるものではなく、高いスケール密着性が要求される任意の用途において幅広く適用できる。
<厚鋼板>
本発明の熱間圧延厚鋼板は、0.10質量%以上でCの含有質量%以上のSiを含有する地金と、前記地金の表面に平均厚さ20~60μmのスケールとを有し、
前記スケールは、前記地金と隣り合ってFe-Si酸化物層を含み、前記Fe-Si酸化物層の平均厚さが1.0μm以上であり、前記Fe-Si酸化物層中のSiの質量%の平均が1.0%以上であることを特徴とすることを特徴としている。
先に述べたとおり、厚鋼板のレーザー切断においては、切断面にノッチが発生しないことが要求され、そのためには厚鋼板からスケールが剥離しないこと、すなわちスケールの密着性を高めることが非常に有効である。
ここで、スケールは一般に、熱間圧延された厚鋼板が大気中で酸化されることで鋼板表面上に形成されるFe酸化物である。このFe酸化物は、地金(鋼板)側から、ウスタイト(FeO)、マグネタイト(Fe34)及びヘマタイト(Fe23)の順で構成された3層構造を有することが知られている。これらの酸化鉄は、地金側から拡散する鉄(Fe)と大気中の酸素(O2)とが反応することによって生成される。そのため、地金側ほど低次の酸化鉄が生成され、大気側ほど高次の酸化鉄が生成される。ただし、環境雰囲気の酸素濃度や鋼板温度に応じて、酸化の程度は変化し得るので、本発明に係るFe酸化物は、3層構造のものに限定されず、ウスタイト(FeO)、マグネタイト(Fe34)及びヘマタイト(Fe23)のいずれか一以上または全てを含むものである。
このようなスケール構造が形成される際に、地金がSiを含む場合、地金とFe酸化物との界面にFe-Si酸化物層が形成される。このFe-Si酸化物は、スケール/地金間を強固に結びつける作用があり、スケールの密着性を高めることに大きく寄与する。本発明者らは、鋭意検討の結果、地金に強固に密着したスケール層を得るのに必要なFe-Si酸化物層の要件を特定した。
特定の理論に拘束されることを望むものではないが、スケールの剥離は以下の2つの力のバランスで起こると考えられる。
スケールの(地金への)密着力は、前述のように、地金と隣り合って形成されるFe-Si酸化物によって実現され、地金中のSi含有量が多いほど密着力は高まる。一方、スケールを剥離しようとする力は、地金中に含まれるCがCOまたはCOガスとなり、地金から抜けるときのガス圧力に起因する。そのため、地金中のC量が多い場合や、加工温度が高い場合に、ガス圧力が増加し、スケールを剥離しようとする力が大きくなる。
このように発生するガス圧力に対して、スケールの密着力が上回っていれば、スケールの剥離は発生しない。すなわち、地金中のC含有量を減少させ、かつSi含有量を増加することが重要となる。
本発明者は、特定のC及びSi含有量である地金と、特定の厚さのスケールとを有し、さらにスケールは、地金と隣り合う側に特定のFe-Si酸化物層を有する構造の厚鋼板を使用することでレーザー切断性が顕著に改善されることを見出した。特に、このような特定のFe-Si酸化物層を含むスケール層構造とすることでスケールの密着性、さらには厚鋼板のレーザー切断性が向上するという知見は従来知られておらず、今回、本発明者によって初めて明らかにされたことであり、極めて意外であり、また驚くべきことである。
以下、図面を参照して、本発明の厚鋼板についてより詳しく説明するが、これらの説明は、本発明の好ましい実施態様の単なる例示を意図するものであって、本発明をこのような特定の実施態様に限定することを意図するものではない。
図1は、本発明の熱間圧延厚鋼板1を示す模式図である。図1を参照すると、本発明の厚鋼板1は、地金2上にスケール5を含み、当該スケール5は、主としてFe酸化物4から構成され、さらに、前記地金2と隣り合うスケール5側にFe-Si酸化物層3を含む。本発明によれば、Fe-Si酸化物層3の平均厚さが1.0μm以上であり、前記Fe-Si酸化物層3中のSiの質量%の平均が1.0%以上であり、地金2に対するスケール5(Fe酸化物4)の密着性を向上させることができ、その結果として地金2表面からのスケール5(Fe酸化物4)の剥離を抑制して、熱間圧延厚鋼板1のレーザー切断性を顕著に改善することが可能となる。
[地金]
本発明によれば、地金としては、一般にレーザー切断等の用途において使用される任意の化学組成を有する地金であってよく、特に限定されない。しかしながら、レーザー切断が鋼構造物の製造において多用されている点を考慮すると、本発明における地金は、より汎用的な化学組成を有する地金、例えば、質量%で、C:0.05~0.20%、Si:0.10~0.60%、Mn:0.5~2.0%、P:0.05%以下、S:0.05%以下、N:0.01%以下を基本成分として含み、残部がFeおよび不純物で構成されるものであってよい。ここで、不純物とは、厚鋼板を工業的に製造する際に、鉱石やスクラップ等のような原料を始めとして、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明の厚鋼板に対して意図的に添加した成分でないものを意味する。
また、本発明における鋼板は、上記の基本成分の元素に加えて、任意選択で、質量%で、Cu:0.50%以下、Ni:0.50%以下、Cr:0.50%以下、及びMo:0.50%以下の1種又は2種以上を含有していてもよい。さらに、任意選択で、Al、Nb、Ti、V、B、Ca、Mg、及びREM(希土類金属:Rare-Earth Metal)からなる群より選択される1種又は2種以上の元素を、合計で、質量%で、0.5%以下含んでいてもよい。
なお、上記基本成分の各元素に関する含有量の下限値の規定のないものは、0%であってもよい。例えば、P、S及びNの含有量は0%であってもよい。ただし、これらの元素の含有量を0.001%未満とすることは、製造コストの大幅な増加を招くことなどから、P、S及びNの含有量はそれぞれ0.001%以上としてもよい。
[Si含有量]
本発明では、地金の化学組成は上記の範囲であることに加えて、Si含有量は、0.10質量%以上、望ましくは0.20%以上0.60質量%以下とし、かつ、Cの含有量以上、望ましくはCの含有量の1.5倍以上、より望ましくは2.0倍以上とする。
Si含有量を0.10質量%以上とするのは、Si含有量が0.10質量%未満では、所望の厚みのFe-Si酸化物層が得られず、十分なスケールの密着力が得られないからである。
また、Si含有量をCの含有量以上とするのは、鋼板中のC量が多い場合や、レーザー切断や圧延により地金(鋼板)の温度が高くなった場合に、スケール/地金界面でのCOやCOガス圧力が上昇し、スケールの剥離が発生しやすくなるからである。このガス圧力に対抗してスケールを強固に密着させ、スケール剥離を抑止するため、鋼板中のC含有量以上にSiを含有させる。
[スケール厚さ]
本発明によれば、上記地金の表面に形成されるスケールの平均厚さは20~60μmである。ここで、スケールの厚さとは、Fe酸化物とFe-Si酸化物の合計の厚さを指す。レーザー切断においては、スケールはレーザー切断の際の地金発熱を安定させ、安定した切断を実現する役割を果たすため、20μm以上の厚さが必要である。スケールが厚くなるとスケールは剥離しやすくなるが、本発明においては特定のFe-Si酸化物層が顕著に生成していることによって、20μm以上の厚いスケールであっても高い密着性を担保できる。ただし、スケール厚が60μmを超えると、本発明に係る特定のFe-Si酸化物層があったとしても、十分な密着性を担保できずに剥離しやすいスケールとなり、良好なレーザー切断性を得られないことがある。したがって、本発明において必要なスケールの平均厚さの範囲を20~60μm、好ましくは30~60μm、より好ましくは40~60μm、さらに好ましくは50~60μmとする。
本発明において、「スケールの平均厚さ(Fe酸化物層とFe-Si酸化物層の厚さの和)」は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて決定される。より具体的には、「スケールの厚さ」は、厚鋼板の板厚方向に平行な断面を観察面として試料を採取し、観察面を研磨し、当該観察面を1000倍の倍率で観察し、スケールと地金との界面からスケール表面までの距離を5点以上求める測定を任意の3視野で行い、得られた距離の平均値として決定される。
[Fe-Si酸化物層]
本発明によれば、スケールは、地金と隣り合ってFe-Si酸化物層を含み、当該Fe-Si酸化物層の平均厚さが1.0μm以上であり、当該Fe-Si酸化物層中のSiの質量%の平均が1.0%以上である。
Fe-Si酸化物層は、熱間圧延された厚鋼板が大気中で酸化されることで鋼板表面上に形成されたFe酸化物に、地金との界面からSiが拡散して形成された層である。したがって、Fe-Si酸化物層は、Fe酸化物と地金との間に存在し、主成分としてFe、SiおよびOを含む。ただし、地金に含まれる他の成分、例えばPやMn等を微量に含んでもよい。Fe-Si酸化物は、スケール/地金間を強固に結びつける作用があり、スケールの密着性を高めることに大きく寄与する。
Fe-Si酸化物層の平均厚さは1.0μm以上である。平均厚さが1.0μm未満であると、密着性が十分でなく、剥離しやすいスケールとなり、良好なレーザー切断性を得ることはできない。厚さの上限はレーザー切断性を低下させるものでなければ、特に限定されない。Fe-Si酸化物層の厚さの上限は、形式上スケールの厚さ以下となるが、通常スケールの全域にSiが拡散することはないので、数μm程度であってよく、例えば、5μm以下、4μm以下、3μm以下、または2μm以下であってもよい。なお、「平均厚さ」とするのは、地金からスケールへのSiの拡散が必ずしも均一でないことがあるが、地金とFe酸化物層との間に平均して1.0μm以上の厚みで存在していることにより、密着性が担保されるためである。
Fe-Si酸化物層のSi含有量は、1.0質量%以上である。Si含有量が1.0質量%未満の場合では、酸化物層の密着性が低下し、剥離しやすいスケールとなり、良好なレーザー切断性を得られないことがある。Si含有量の上限は特に限定されるものではないが、地金のSi含有量に応じて決定されてもよい。本発明における地金のSi含有量が、Si:0.10~0.60%であることから、Fe-Si酸化物層のSi含有量の上限は、例えば、6質量%以下、5質量%以下、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下であってもよい。
Fe-Si酸化物層のSi質量%は、EPMA測定によって定量化する。鋼板の板厚方向に平行な任意箇所の断面に対し、1000倍の倍率でEPMA定量測定を行い、Fe、O、Siの分布を観察する。EPMAによって、地金組織と、地金から拡散したSiを含むFe-Si酸化物層は、容易に識別可能である。地金直上のSi拡散領域の厚さを3点測定して観察面のFe-Si酸化物層の平均厚さを求める。また、EPMA測定で測定されるSi濃度(質量%)を、該当のFe-Si酸化物層内で平均することによって、観察面のFe-Si酸化物層のSiの質量%を求める。この作業を、任意の3か所の観察面で実施し、厚鋼板におけるFe-Si酸化物層の平均厚さおよびSiの質量%として決定する。
[厚鋼板の厚さ]
本発明の厚鋼板は、レーザー切断が適用可能な任意の厚さを有することができ、特に限定されないが、一般的には6mm以上35mm以下の厚さを有し、好ましくは16mm以上25mm以下の厚さを有する。
[厚鋼板の用途]
本発明の厚鋼板は、上記のとおり、スケールの密着性が高くそれゆえレーザー切断性に優れるため、造船、建築、産業機械、橋梁等の鋼構造物に使用される厚鋼板であって、レーザー切断が利用可能な厚鋼板として有用である。
<厚鋼板の製造方法>
次に、本発明の厚鋼板の好ましい製造方法について説明する。以下の説明は、本発明の厚鋼板を製造するための特徴的な方法の例示を意図するものであって、本発明の厚鋼板を以下に説明するような製造方法によって製造されるものに限定することを意図するものではない。
(熱間圧延)
厚鋼板は、およそ1000~1200℃で加熱した後、熱間圧延によって製造される。圧延工程では、加熱されたスラブが1台または2台の圧延機によって所定の厚さまで繰り返し圧延される。
(熱間圧延温度)
スケールは、熱間圧延された厚鋼板が大気中で酸化されることで鋼板表面上に形成され、地金表面と隣り合って形成されるFe-Si酸化物層を含む。十分な量(厚さ)のスケールおよびそこに含まれるFe-Si酸化物層を形成するために、最終圧延温度は、850~1000℃の範囲、望ましくは900℃~1000℃の範囲、より望ましくは950℃~1000℃の範囲とする。圧延終了温度が850℃未満となるとスケール成長が十分でなく、また1000℃を超えることは材質の観点から適さない。最終圧延温度とは、最終パス時に圧延機近傍に設置された放射温度計によって計測される鋼板温度を指す。
(熱間圧延時間)
また、スケールおよびそこに含まれるFe-Si酸化物層の量(厚さ)は、熱間圧延時間や圧延回数に応じて変化する。一般に、高温である時間が長いほど、鋼板表面の酸化は進行し、スケールおよびそこに含まれるFe-Si酸化物層の量(厚さ)は大きくなる。例えば、熱間圧延の時間は、60~200秒程度であってもよい。熱間圧延の時間が短すぎると、スケールおよびそこに含まれるFe-Si酸化物層が十分に形成されないおそれがあり、長すぎると、過剰にスケールが形成され、剥離しやすくなる。
(熱間圧延回数)
さらに、スケールおよびそこに含まれるFe-Si酸化物層の量(厚さ)は、熱間圧延回数(パス回数)に応じて変化する。圧延回数(パス回数)が増えると、圧延により鋼板が薄くなるように、スケールも薄くなる。一方で、圧延回数が増えると、地金からスケールへのSiの拡散が進行し、Fe-Si酸化物層の生成、成長に資すると考えられる。例えば、熱延のパス回数をおよそ15~20回としてもよい。パス回数が少ないと、十分なFe-Si酸化物層を得られないことがあり、多すぎると十分な量(厚さ)のスケールが得られないおそれがある。
(デスケ-リング)
圧延工程において、地金の表面にはスケールが生成する。厚いスケールを含むスラブをそのまま圧延するとスケールの押し込みによる表面疵や反りなどの形状不良が生じる恐れがある。そのため、一般には、スラブが圧延機に噛みこまれる直前で高圧水を噴射して、スケールを除去(デスケーリング)してから圧延を行なう。高圧水は、一般に吐出圧10~15MPaで噴射されるが、本発明において特に限定しない。
本発明では、十分な量(厚さ)のスケールおよびそこに含まれるFe-Si酸化物層を得るために、高圧水デスケーリングを適用しない圧延パスを設けてもよい。デスケーリングを適用しない圧延パス回数が多いほど、スケールおよびそこに含まれるFe-Si酸化物層は成長すると考えられ、例えば10パス以上の圧延でデスケーリングを行なわないことにしてもよい。また、最終製品(熱間圧延厚鋼板)に十分な量(厚さ)のスケールおよびそこに含まれるFe-Si酸化物層を存在させるためには、圧延工程に含まれる複数の圧延パスのうち後半の圧延パス、例えば最終パスや最終パスを含めた複数回のパスで、デスケーリングを適用しないことが好ましい。このように、デスケーリングを実施しない圧延を適用することによって、圧延終了後にFe酸化物層と地金の間で本発明にかかる顕著なFe-Si酸化物層を形成させ、高いスケール密着性を有する熱間圧延厚鋼板を製造できる。
最終製品に求められている性状に影響を及ぼさない範囲であれば、熱間圧延の温度、熱間圧延の時間、熱間圧延のパス回数、デスケーリング等を、適宜組み合わせることは可能であり、それにより本発明にかかる特定のスケールの厚さおよび構造を形成することができる。
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
以下では、本発明例および比較例に係る厚鋼板を製造し、そのレーザー切断性について調べた。
まず、表1上段に示す化学成分を有する鋳片を再加熱した後、種々の形態のスケール形態を得るために最終圧延温度およびデスケーリングを行わない圧延パスを種々変更して、22mm厚さまで熱間圧延した。
Figure 0007445116000001
圧延後、鋼板のスケールをSEMによって観察し、スケール厚およびFe-Si酸化物層の厚さを測定した。また、EPMAによって当該Fe-Si酸化物層に含まれるSiの濃度を質量%で求めた。得られた鋼板に対して目視観察を行い、スケール剥離の有無を調べた。スケール剥離が認められた場合はスケール剥離部分が含まれるように約1m×1mの視野範囲で写真撮影して画像処理ソフトに取り込み、スケール剥離部分を塗りつぶしてマーキングし、塗りつぶされた面積が視野範囲に占める割合をスケール剥離面積率として求めた。これを1枚の鋼板あたり任意の3箇所の視野範囲で行い、その平均値を鋼板のスケール剥離面積率とし、以下のように評点づけした。結果は表1の下段に示す。
0%:◎
0%超~5%以下:○
5%超~20%以下:△
20%超:×
次に、得られた厚鋼板をレーザー切断に供した。以下に示す切断条件のもと、100mm×100mmの鋼板を3枚切り出した。結果は表1の下段に示す。
レーザー出力:4500W
周波数:500Hz
デューティ:75%
アシストガス圧力:0.027MPa
切断速度:750mm/分
切断後の断面性状を観察してノッチ(異常切断部)の発生個数を測定し、それを厚鋼板1mあたりの発生頻度(個/m)に換算し、その換算値に応じて厚鋼板のレーザー切断性を以下のように評点付けした。結果は表1の下段に示す。
0個/m以下: ◎
1個/m超~10個/m以下: ○
10個/m超~20個/m以下:△
20個/m超: ×
以上の測定結果を表1の下段、鋼板性状と評価の欄に示した。条件A~Eでは、本発明の条件を満たしており、スケールの密着性が高い良好な表面性状が得られ、それゆえレーザー切断性も良好であった。
これとは対照的に、条件Fでは鋼板化学成分におけるSi/C比が1.0を下回ったために、圧延中にスケール剥離が頻発し(△)、十分な厚さのFe-Si酸化物層が形成されず(1.0μm未満)、レーザー切断性は不良であった(×)。
条件GではSiの添加量が十分でない(0.10質量%未満)ためにFe-Si酸化物層にSiが濃化されなかった(1.0質量%未満)。そのため、スケールの密着性が十分でなく、レーザー切断性は良好ではなかった(△)。
条件Hおよび条件Iでは十分にスケールおよびFe-Si酸化物層が形成されなかった。これらによって、条件HおよびIでは表面性状、レーザー切断性ともに優れなかった。
1 熱間圧延厚鋼板
2 地金
3 Fe-Si酸化物
4 Fe酸化物
5 スケール

Claims (3)

  1. 0.10質量%以上でCの含有質量%以上のSiを含有する地金と、前記地金の表面に厚さ20~60μmの酸化スケールとを有し、
    前記酸化スケールは、前記地金と隣り合ってFe-Si酸化物層を含み、前記Fe-Si酸化物層の平均厚さが1.0μm以上であり、前記Fe-Si酸化物層中のSiの質量%の平均が1.0%以上であることを特徴とする、厚鋼板。
  2. 6mm以上35mm以下の厚さを有することを特徴とする、請求項1に記載の厚鋼板。
  3. レーザー切断用であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の厚鋼板。
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