JP2010132764A - ポリエステルの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 本発明は、固有粘度が低く、かつ、環状オリゴマーの主成分である環状3量体の含有量が少ないポリエステルの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 ポリエステルの製造方法であって、ジカルボン酸成分とグリコール成分との重縮合反応によって得られる粗製ポリエステルを190〜260℃、且つ水含有不活性ガス流通下で湿熱処理することで、該湿熱処理前後の固有粘度変化率が0.10以下であり、かつ、湿熱処理後に該ポリエステル中の環状3量体の含有量が0.5重量%以下となるポリエステルの製造方法である。
【選択図】 なし
【解決手段】 ポリエステルの製造方法であって、ジカルボン酸成分とグリコール成分との重縮合反応によって得られる粗製ポリエステルを190〜260℃、且つ水含有不活性ガス流通下で湿熱処理することで、該湿熱処理前後の固有粘度変化率が0.10以下であり、かつ、湿熱処理後に該ポリエステル中の環状3量体の含有量が0.5重量%以下となるポリエステルの製造方法である。
【選択図】 なし
Description
本発明は、ポリエステルおよびその製造方法に関し、詳しくは、固有粘度が低く、かつ、環状オリゴマーの含有量が少ないポリエステルの製造方法に関する。
従来より、醤油、油、飲料、化粧品、洗剤などの容器の素材として、優れた機械的強度、耐熱性、透明性、およびガスバリヤー性を有するポリエステルが使用されている。これらの用途のうち、ジュース、ウーロン茶、ミネラルウォーター、スポーツドリンクなどの飲料用ボトルに用いられる場合には、化粧品、洗剤などの容器に用いられる場合と異なり、飲料を殺菌後85〜88℃で充填するため、充填時にボトルが変形してしまう。そこで、高温充填時のボトルの変形を防止するため、ポリエステルの耐熱性を向上させる手段が検討されている。例えば、ブロー成形時に、付形されたボトルの胴部を110〜150℃に加熱された金型にさらに加圧密着してヒートセットすることにより、ボトルの耐熱性を向上させる方法が採用されている。
一方、ポリエステルは、重合時の副生成物として数%の環状オリゴマーを含有することが知られている。この環状オリゴマーは主に環状3量体であり、ポリエステルの重縮合反応時に平衡反応で生成することが、例えば、非特許文献1に橋本らにより報告されている。
高分子化学 第33巻第254号422頁(1966年)
高分子化学 第33巻第254号422頁(1966年)
環状オリゴマーを0.8〜1.0重量%含有するポリエステルを、上記のようなブロー成形法により成形すると、金型と接する成形体表面に環状オリゴマーが析出するため、多数回の成形を繰り返した場合には、この析出物が金型表面に固着する。従って、ブロー成形したボトルの表面に微細な凹凸が形成されるため、ボトルの透明性が低下する。このような透明性の低下を防止するために、金型表面を頻繁に清拭する必要があり、連続した多数回の成形が困難である。従って、環状オリゴマーを高濃度で含有するポリエステルは、コストおよび製造効率の両面で問題を有している。
ポリエステル中の環状オリゴマーを減少させる方法として、例えば、特許文献1〜4には、重縮合反応により得られる粗製ポリエステルを減圧条件下または窒素のような不活性気体流通下で、160℃から該ポリエステルの融点まで温度で加熱処理する固相重合法が開示されている。これらの公報においては、この方法により、通常、ポリエステルに含まれている1.0〜1.3重量%の環状オリゴマーを、0.4〜0.5重量%まで減少できることが開示されている。しかし、このような固相重合法では、上記のように、ポリエステル中の環状オリゴマーの含有量を減少させることはできるが、同時に上記粗製ポリエステルの重縮合反応も進行し、得られるポリエステルの重合度も高くなるため、得られるポリエステルの固有粘度が上昇する。通常、ポリエステル中の環状オリゴマーの含有量を0.5重量%以下に減少させた場合には、固有粘度が約0.74以上まで上昇する。そのため、ブロー成形時、特に射出成形時の負荷が大きくなったり、剪断発熱によりポリエステルの温度が上昇し、熱分解を起こしたりする。
さらに、最近では、鋼板ラミネート用フィルムやブラッドセルフィルター用繊維などにポリエステルが要望されており、これらの用途においては、厚みが12μm程度の非常に薄いフィルムや太さが0.1デニールの非常に細い繊維を成形する必要がある。このような微細な成形を行うためには微細な金型が用いられるが、上記のような高い固有粘度を有するポリエステルでは、剪断応力が大きくなりすぎ、ポリエステル溶融物が金型を通過できないため、成形できない。押出機と紡糸ノズルの間に滞留部を設け、高温で溶融させることにより固有粘度を低下させて紡糸することも検討されているが、この場合には、熱分解物により繊維が着色し商品価値がない。従って、固有粘度が低く、かつ、環状オリゴマーの含有量が低いポリエステルが要望されている。
固有粘度が低く、かつ、環状オリゴマーの含有量が低いポリエステルを調製するために、例えば、特許文献5においては、重縮合反応により得られる粗製ポリエステルを、水の存在下で、160〜230℃で加熱処理し、環状オリゴマー含有量が1重量%以下のポリエステルを得る固相重合法を提案している。しかし、この方法ではポリエステルの加水分解作用が激しく、得られるポリエステルの固有粘度の低下が大きく、製品としての使用に耐えない。
以上のように、従来の技術では、固有粘度が低く、かつ、環状オリゴマーの含有量が低いという条件を十分に満足するポリエステルは得られなかった。
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、その目的とするところは、固有粘度が低く、かつ、環状オリゴマーの主成分である環状3量体の含有量が少ないポリエステルおよびその製造方法を提供することにある。
本発明は、ポリエステルの製造方法であって、ジカルボン酸成分とグリコール成分との重縮合反応によって得られる粗製ポリエステルを190〜260℃、且つ水含有不活性ガス流通下で湿熱処理することで、該湿熱処理前後の固有粘度変化率が0.10以下であり、かつ、湿熱処理後に該ポリエステル中の環状3量体の含有量が0.5重量%以下となる、ポリエステルの製造方法であり、そのことにより上記目的が達成される。
ここで、固有粘度変化率とは、下記数式で表される、湿熱処理前の粗製ポリエステルの固有粘度IV0と湿熱処理後のポリエステルの固有粘度IV1との差の、該粗製ポリエステルの固有粘度IV0に対する比率のことである。
好適な実施態様においては、前記水含有不活性ガス中の含水量が、3.5〜30.0g/Nm3である。
本発明のポリエステルの製造方法は、ジカルボン酸成分とグリコール成分との重縮合反応によって得られる粗製ポリエステルを、水含有不活性ガス中で湿熱処理する工程のみで、粘度変化率を抑え、かつ環状オリゴマーを低減させることを意味し、湿熱処理後に用途に合わせて従来公知の固相重合にて任意の粘度を得ることもできる。
本発明によれば、固有粘度が低く、かつ、環状オリゴマーの主成分である環状3量体の含有量が少ないポリエステルが得られる。このポリエステルは、環状オリゴマーの含有量が少ないため、成形時の環状オリゴマーによる金型、ノズル類の汚染は生じない。さらに、本発明の製造方法は加熱処理時にポリエステルの粘度が低下したり上昇することが少ないため、予め粗製ポリエステルを所望の固有粘度に調整しておくことにより、最終的に所望の固有粘度を有するポリエステルを得ることができる。該製造法により作製されたポリエステルは固有粘度が低いため、非常に薄いフィルムや非常に細い繊維のような微細な金型を用いた微細な成形が可能となる。本発明のポリエステルは、鋼板ラミネート用フィルムやブラッドセルフィルター用繊維などに用いられる。また、粘度保持および環状オリゴマー低減を同一工程内にて達成することが可能であり、工程の簡略化が可能であり生産性に優れる。
本発明に用いられる粗製ポリエステルは、通常の工程により製造され、例えば、ジカルボン酸成分とグリコール成分との重縮合反応により得られる。
ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ジフェニルエーテル4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸;およびシクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂環族ジカルボン酸ならびにこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらのジカルボン酸成分は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることもできる。
グリコール成分としては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、1,2−プロピレングリコールなどが挙げられる。さらに、ポリエチレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコールもまた使用することができる。さらに、ハイドロキノン、レゾルシン、2,2−ビス(ジ−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンなどの芳香族ジオールもまた使用することができる。これらのグリコール成分は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることもできる。
上記ジカルボン酸およびグリコールの他にオキシカルボン酸も利用され得、それには、p−オキシ安息香酸、p−オキシエトキシ安息香酸、ヒドロキシエトキシ安息香酸、グリコール酸およびそのエステル形成性誘導体などがある。これらのジカルボン酸成分は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
例えば、上記ジカルボン酸成分および上記グリコール成分、さらに必要に応じてオキシカルボン酸成分を含む組成物を、従来公知のエステル化反応またはエステル交換反応によりエステル化し、次いで、高温減圧下で重縮合反応を行うことにより、粗製ポリエステルを製造する。この粗製ポリエステルは、フェノール/1,1,2,2,−テトラクロルエタン(60/40(重量比))混合溶媒中30℃で測定した固有粘度が0.55〜0.70の範囲であることが好ましく、0.60〜0.65の範囲がさらに好ましい。固有粘度が0.55未満では、チップ成形時にカケラや粉末が増加する。また、成形品の強度が低下する。0.70を超えると、非常に薄いフィルムや非常に細い繊維のような微細な金型を用いた微細な成形が困難となる
粗製ポリエステル調製時の触媒として、従来公知のMn、Mg、Ca、Ti、Ge、Al、Sb、Co化合物、リン化合物、アンチモン化合物などが使用され得。上記ジカルボン酸成分とグリコール成分とを含む組成物には、ポリエステルの最終用途に応じて、安定剤、顔料、染料、核剤、充填剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、抗菌剤、帯電防止剤、滑剤、離型剤などの添加剤が含有され得る。
次に、得られた粗製ポリエステルをシートカット法、ストランドカット法などにより、適宜、チップ状(例えば、円柱状)、粒子状などに成形する。例えば、チップの成形は、粗製ポリエステルの溶融体をギヤーポンプでダイスから押出しストランドを形成し、このストランドをカッターで切断して、長軸×短軸×長さが約2.2×3.1×3.4mmの楕円柱状のチップを成形する。
本発明においては水含有不活性ガス中に少なくとも3.5g/Nm3の割合で水が含有される。好ましい含水量は、調湿不活性ガス中に3.5〜30.0g/Nm3であり、さらに好ましくは、4.0〜20.0g/Nm3である。調湿不活性ガス中の含水量が3.5g/Nm3未満の場合には、得られるポリエステルの固有粘度の上昇が著しい。調湿不活性ガス中の含水量が過剰である場合には、加水分解反応が起こり、得られるポリエステルの固有粘度が低下するおそれがある。
本発明で用いられる不活性ガスとしては、本発明において得られるポリエステルに対して不活性なガスが用いられ、例えば、窒素ガス、炭酸ガス、ヘリウムガスなどが挙げられる。特に、窒素ガスが安価であるため好ましい。
本発明に用いられる加熱処理装置としては、上記粗製ポリエステルと不活性ガスとを均一に接触し得る装置が望ましい。このような加熱処理装置としては、例えば、静置型乾燥機、回転型乾燥機、流動床型乾燥機、攪拌翼を有する乾燥機などが挙げられる。
また、本発明において熱処理を実施する前にポリエステルの水分は適度に除去しておくことと、熱処理時におけるポリマー同士の融着を防止するためにもポリマーを一部結晶化させておくのがより好ましい。
本発明において、加熱処理温度は、180℃以上、得られるポリエステルの融点以下の温度であり、好ましくは190℃〜260℃、さらに好ましくは200℃〜250℃である。加熱処理温度が180℃未満の場合には、粗製ポリエステル中の環状オリゴマーの減少速度が小さい。加熱処理温度がポリエステルの融点を越える温度の場合には、ポリエステルが融解してしまい、接着が起こる。そのため、得られるポリエステルを加熱処理装置から取り出すことが困難となり、また、成形操作も困難となる。
加熱処理時間は、通常、1〜70時間が好ましく、さらに好ましくは2〜60時間、さらに好ましくは、4〜50時間である。1時間未満の場合には、粗製ポリエステル中の環状オリゴマーが充分に減少せず、70時間を越える場合には、粗製ポリエステル中の環状オリゴマーの減少速度が小さく、逆に熱劣化などの問題が生じるおそれがあり、色調が損なわれる。
不活性気体の流量は、ポリエステルの固有粘度と密接な関係がある。また、調湿不活性気体中に含まれる含水量もポリエステルの固有粘度の変化に影響する。そのため、不活性気体の流量は、含水量および所望のポリエステルの固有粘度、加熱処理温度などに応じて適宜選択されるべきである。
例えば、調湿不活性気体の含水量が高い場合、水による加水分解などの悪影響を回避するために、流量は多くする必要がある。また、加熱処理温度を高温とする場合、ポリエステルの固有粘度の上昇を抑制するために、不活性気体の流量は少なくする必要がある。
通常、不活性気体の流量は、好ましくは、ポリエステル1kg当たり毎時1リットル以上、さらに好ましくは5リットル以上が必要である。不活性気体の流量がポリエステル1kg当たり毎時1リットルより少ない場合には、酸素の混入などにより、得られる樹脂が黄色味を帯びるなどの悪影響が生じるおそれがある。不活性気体の流量の上限は、不活性気体中に含まれる含水量および加熱処理温度によって決定されるが、通常、好ましくは、ポリエステル1kg当たり毎時10,000リットル以下、さらに好ましくは5,000リットル以下、さらに好ましくは2,000リットル以下である。不活性気体の流量を、10,000リットル以上としても、本発明の目的から逸脱するようなことはないが、経済的な面を考慮すれば、むやみに流量を多くする必要はない。
本発明のポリエステルの製造方法は、常圧から微加圧状態下で不活性ガスを流通させながら、加熱処理することにより実施される。
この場合、加圧は、加熱処理中に大気中の水分や酸素が反応機に混入するのを抑制することが目的であるから、加圧条件は5.0kg/cm2以下で充分である。加圧条件が5.0kg/cm2を越える場合でも、本発明の目的を逸脱することはないが、設備にコストがかかるため、必要以上に圧力を高くすることは意味がない。
さらに、色調の面から流通させる不活性ガス中の酸素濃度は、50ppm以下、好ましくは25ppm以下が必要である。酸素濃度が50ppm以上では、本発明のポリエステルの劣化による色調悪化、具体的には黄変が激しく製品品質上問題となる。
このようにして得られたポリエステルは、上記数式で表される固有粘度変化率が0.10以下、好ましくは0.08以下であり、かつ、ポリエステル中の環状3量体の含有量が0.5重量%以下、好ましくは0.35重量%以下である。固有粘度変化率が0.10を超えると、微細な成形が不可能である。環状3量体の含有量が0.5重量%を超えると、成形時の金型の汚染が著しく連続した多数回の成形が困難である。
本発明のポリエステルは、湿熱処理により粗製ポリエステル内部の易動度が増大し、粗製ポリエステル中に含有される環状3量体がそのまま飛散または容易に開環重合され得る。従って、環状3量体の含有量が減少する。さらに、本発明のポリエステルは、湿熱処理により固有粘度が増大しない。これは、不活性ガスに含有される水による加水分解と、不活性ガスを流通させることによる粘度上昇とが相殺しているためである。
以上のように、本発明のポリエステルは、固有粘度が低いこと、および、環状3量体の含有量が少ないことを同時に満足する。これは、上記の従来のポリエステルおよびその製造方法では得られない。このような本発明のポリエステルは、鋼板ラミネート用フィルムやブラッドセルフィルター用繊維などの微細な成形に適用され得る優れた成形性を有し、かつ、金型の汚染も少ない。
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。本発明の実施例におけるポリエステルの評価項目は以下の通りである。実施例中の部は重量部を意味する。
(1)固有粘度
ポリエステル0.2gをフェノール/1,1,2,2−テトラクロルエタン(60/40(重量比))の混合溶媒50ml中に溶解し、30℃でオストワルド粘度計を用いて測定した。湿熱処理前の粗製ポリエステルの固有粘度IV0と湿熱処理後のポリエステルの固有粘度IV1とから以下の数式により固有粘度変化率を算出した。
ポリエステル0.2gをフェノール/1,1,2,2−テトラクロルエタン(60/40(重量比))の混合溶媒50ml中に溶解し、30℃でオストワルド粘度計を用いて測定した。湿熱処理前の粗製ポリエステルの固有粘度IV0と湿熱処理後のポリエステルの固有粘度IV1とから以下の数式により固有粘度変化率を算出した。
(2)環状3量体の定量
得られたポリエステル0.1gを1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール/クロロホルム(2/3(容量比))の混合溶媒3mlに溶解した。得られた溶液にクロロホルム20mlを加えて均一に混合した。この混合液にメタノール10mlを加え、ポリエステルを再沈殿させた。次いで、この混合液をろ過し、沈殿物をクロロホルム/メタノール(2/1(容量比))の混合溶媒30mlで洗浄し、さらにろ過した。得られたろ液をロータリーエバポレータで濃縮乾固した。濃縮乾固物にジメチルホルムアミド10mlを加え、環状3量体測定溶液とした。この測定溶液を横河電機(株)社製LC100型の変速液体クロマトグラフィーを用いて定量した。
得られたポリエステル0.1gを1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール/クロロホルム(2/3(容量比))の混合溶媒3mlに溶解した。得られた溶液にクロロホルム20mlを加えて均一に混合した。この混合液にメタノール10mlを加え、ポリエステルを再沈殿させた。次いで、この混合液をろ過し、沈殿物をクロロホルム/メタノール(2/1(容量比))の混合溶媒30mlで洗浄し、さらにろ過した。得られたろ液をロータリーエバポレータで濃縮乾固した。濃縮乾固物にジメチルホルムアミド10mlを加え、環状3量体測定溶液とした。この測定溶液を横河電機(株)社製LC100型の変速液体クロマトグラフィーを用いて定量した。
(3)融点測定
セイコ−電子工業株式会社製の示差熱分析計(DSC)、RDC−220で測定した。試料10mgを使用し、昇温速度20℃/分で昇温し、290℃で3分間保持した。昇温時に観察される融解ピ−クの頂点温度を融点(Tm)とした。
セイコ−電子工業株式会社製の示差熱分析計(DSC)、RDC−220で測定した。試料10mgを使用し、昇温速度20℃/分で昇温し、290℃で3分間保持した。昇温時に観察される融解ピ−クの頂点温度を融点(Tm)とした。
(実施例1)
ジメチルテレフタレート1,000部、エチレングリコール700部、および酢酸亜鉛・2水塩0.3部をエステル交換反応缶に仕込み、120〜210℃でエステル交換反応を行い、生成するメタノールを留去した。エステル交換反応が終了した時点で、リン酸0.13および三酸化アンチモン0.3部を加え、系内を徐々に減圧にし、75分間で1mmHg以下とした。同時に徐々に昇温し、280℃とした。同条件で70分間重縮合反応を実施し、溶融ポリマーを吐出ノズルより水中に押し出し、カッターによって、直径約3mm、長さ約5mmの円柱状チップとした。得られた粗製ポリエステルの固有粘度は0.610dl/g、環状オリゴマーの含有量は1.05重量%、融点は252℃であった。なお、実施例中にある「部」とは全て重量部を表す。
ジメチルテレフタレート1,000部、エチレングリコール700部、および酢酸亜鉛・2水塩0.3部をエステル交換反応缶に仕込み、120〜210℃でエステル交換反応を行い、生成するメタノールを留去した。エステル交換反応が終了した時点で、リン酸0.13および三酸化アンチモン0.3部を加え、系内を徐々に減圧にし、75分間で1mmHg以下とした。同時に徐々に昇温し、280℃とした。同条件で70分間重縮合反応を実施し、溶融ポリマーを吐出ノズルより水中に押し出し、カッターによって、直径約3mm、長さ約5mmの円柱状チップとした。得られた粗製ポリエステルの固有粘度は0.610dl/g、環状オリゴマーの含有量は1.05重量%、融点は252℃であった。なお、実施例中にある「部」とは全て重量部を表す。
この粗製ポリエステルを減圧下160℃にて乾燥し、次いで、含水量が6.4g/Nm3に調湿された窒素ガスを粗製ポリエステル1kg当たり、毎時70リットルの割合で流通し、207℃で48時間加熱処理を行った。得られたポリエステルの固有粘度は0.631であり、固有粘度変化率は0.03、環状オリゴマーの含有量は0.27重量%であった。
加熱処理後のポリエステルを押し出し成形機にて、285℃で押し出し、厚み100μmのフィルムを得た。このフィルムの環状オリゴマー含有量は0.37重量%であった。
(実施例2)
実施例1と同様にして得られた粗製ポリエステルを減圧下160℃にて乾燥し、次いで、含水量が15.3g/Nm3に調湿された窒素ガスを粗製ポリエステル1kg当たり、毎時300リットルで流通し、230℃で12時間加熱処理を行った。得られたポリエステルの固有粘度は0.617であり、固有粘度変化率は0.01、環状オリゴマーの含有量は0.28重量%であった。
実施例1と同様にして得られた粗製ポリエステルを減圧下160℃にて乾燥し、次いで、含水量が15.3g/Nm3に調湿された窒素ガスを粗製ポリエステル1kg当たり、毎時300リットルで流通し、230℃で12時間加熱処理を行った。得られたポリエステルの固有粘度は0.617であり、固有粘度変化率は0.01、環状オリゴマーの含有量は0.28重量%であった。
加熱処理後のポリエステルを実施例1と同様にして厚み100μmのフィルムを得た。このフィルムの環状オリゴマー含有量は0.38重量%であった。
(比較例1)
実施例1と同様にして得られた粗製ポリエステルを減圧下160℃にて乾燥し、含水量が3.0g/Nm3に調湿された窒素ガスを粗製ポリエステル1kg当たり、毎時300リットルで流通し、207℃で48時間加熱処理を行った。得られたポリエステルの固有粘度は0.798であり、固有粘度変化率は0.18、環状オリゴマーの含有量は0.30重量%であった。
実施例1と同様にして得られた粗製ポリエステルを減圧下160℃にて乾燥し、含水量が3.0g/Nm3に調湿された窒素ガスを粗製ポリエステル1kg当たり、毎時300リットルで流通し、207℃で48時間加熱処理を行った。得られたポリエステルの固有粘度は0.798であり、固有粘度変化率は0.18、環状オリゴマーの含有量は0.30重量%であった。
加熱処理後のポリエステルを実施例1と同様にしてフィルムを得ようとしたところ、押し出しに時間がかかり、得られたフィルムの環状オリゴマーの含有量は、0.73重量%と高濃度であった。
(実施例3)
実施例1と同様にして、固有粘度が0.648であり、環状オリゴマーの含有量が1.2重量%であり、融点が245℃の粗製ポリエステルを得た。得られた粗製ポリエステルを、減圧下160℃にて乾燥し、次いで、含水量が15.3g/Nm3に調湿された窒素ガスを粗製ポリエステル1kg当たり、毎時200リットルで流通し、220℃で24時間加熱処理を行った。得られたポリエステルの固有粘度は0.603であり、固有粘度変化率は0.07、環状オリゴマーの含有量は0.27重量%であった。
実施例1と同様にして、固有粘度が0.648であり、環状オリゴマーの含有量が1.2重量%であり、融点が245℃の粗製ポリエステルを得た。得られた粗製ポリエステルを、減圧下160℃にて乾燥し、次いで、含水量が15.3g/Nm3に調湿された窒素ガスを粗製ポリエステル1kg当たり、毎時200リットルで流通し、220℃で24時間加熱処理を行った。得られたポリエステルの固有粘度は0.603であり、固有粘度変化率は0.07、環状オリゴマーの含有量は0.27重量%であった。
加熱処理後のポリエステルを実施例1と同様にして厚み100μmのフィルムを得た。このフィルムの環状オリゴマー含有量は0.37重量%であった。
(実施例4)
実施例1と同様にして、固有粘度が0.613であり、環状オリゴマーの含有量が1.03重量%であり、融点が255℃である粗製ポリエステルを得た。該ポリエステルを、減圧下160℃にて乾燥し、次いで、含水量が6.4g/Nm3に調湿された窒素ガスを粗製ポリエステル1kg当たり、毎時70リットルで流通し、この反応系を1.2kg/cm2の微加圧に調整し、207℃で48時間加熱処理を行った。得られたポリエステルの固有粘度は0.629であり、固有粘度変化率は0.03、環状オリゴマーの含有量は0.28重量であった。
実施例1と同様にして、固有粘度が0.613であり、環状オリゴマーの含有量が1.03重量%であり、融点が255℃である粗製ポリエステルを得た。該ポリエステルを、減圧下160℃にて乾燥し、次いで、含水量が6.4g/Nm3に調湿された窒素ガスを粗製ポリエステル1kg当たり、毎時70リットルで流通し、この反応系を1.2kg/cm2の微加圧に調整し、207℃で48時間加熱処理を行った。得られたポリエステルの固有粘度は0.629であり、固有粘度変化率は0.03、環状オリゴマーの含有量は0.28重量であった。
加熱処理後のポリエステルを実施例1と同様にして厚み100μmのフィルムを得た。このフィルムの環状オリゴマー含有量は0.39重量%であった。
(比較例2)
実施例3と同様にして得られた粗製ポリエステルを、減圧下160℃にて乾燥し、次いで、含水量が35.0g/Nm3に調湿された窒素ガスを粗製ポリエステル1kg当たり、毎時200リットルで流通し、220℃で24時間加熱処理を行った。得られたポリエステル中の固有粘度は0.571であり、固有粘度変化率は0.12、環状オリゴマーの含有量は0.26重量%であった。
実施例3と同様にして得られた粗製ポリエステルを、減圧下160℃にて乾燥し、次いで、含水量が35.0g/Nm3に調湿された窒素ガスを粗製ポリエステル1kg当たり、毎時200リットルで流通し、220℃で24時間加熱処理を行った。得られたポリエステル中の固有粘度は0.571であり、固有粘度変化率は0.12、環状オリゴマーの含有量は0.26重量%であった。
加熱処理後のポリエステルを実施例1と同様にしてフィルムを得たが、得られたフィルムは脆く、製膜工程にて破断が起きた。
(比較例3)
実施例4と同様にして得られた粗製ポリエステルを、減圧下160℃にて乾燥し、次いで、含水量が18.1g/Nm3に調湿された窒素ガスを粗製ポリエステル1kg当たり、毎時40リットルで流通し、170℃で24時間加熱処理を行った。得られたポリエステル中の環状オリゴマーの含有量は1.00重量%と全く減少しなかった。
実施例4と同様にして得られた粗製ポリエステルを、減圧下160℃にて乾燥し、次いで、含水量が18.1g/Nm3に調湿された窒素ガスを粗製ポリエステル1kg当たり、毎時40リットルで流通し、170℃で24時間加熱処理を行った。得られたポリエステル中の環状オリゴマーの含有量は1.00重量%と全く減少しなかった。
(比較例4)
実施例4と同様にして得られた粗製ポリエステルを、減圧下160℃にて乾燥し、次いで、含水量が18.1g/Nm3に調湿された窒素ガスを粗製ポリエステル1kg当たり、毎時40リットルで流通し、263℃で12時間加熱処理を行った。得られたポリエステルは、缶内で融着を起こしていた。しかも、環状オリゴマーの含有量は1.13重量%と増加していた。
実施例4と同様にして得られた粗製ポリエステルを、減圧下160℃にて乾燥し、次いで、含水量が18.1g/Nm3に調湿された窒素ガスを粗製ポリエステル1kg当たり、毎時40リットルで流通し、263℃で12時間加熱処理を行った。得られたポリエステルは、缶内で融着を起こしていた。しかも、環状オリゴマーの含有量は1.13重量%と増加していた。
本発明によれば、固有粘度が低く、かつ、環状オリゴマーの主成分である環状3量体の含有量が少ないポリエステルが得られる。このポリエステルは、環状オリゴマーの含有量が少ないため、成形時の環状オリゴマーによる金型、ノズル類の汚染は生じない。さらに、本発明の製造方法は加熱処理時にポリエステルの粘度が低下したり上昇することが少ないため、予め粗製ポリエステルを所望の固有粘度に調整しておくことにより、最終的に所望の固有粘度を有するポリエステルを得ることができる。該製造法により作製されたポリエステルは固有粘度が低いため、非常に薄いフィルムや非常に細い繊維のような微細な金型を用いた微細な成形が可能となる。本発明のポリエステルは、鋼板ラミネート用フィルムやブラッドセルフィルター用繊維などに用いられる。また、粘度保持および環状オリゴマー低減を同一工程内にて達成することが可能であり、工程の簡略化が可能であり生産性に優れる。
Claims (2)
- ジカルボン酸成分とグリコール成分との重縮合反応によって得られる粗製ポリエステルを190〜260℃、且つ水含有不活性ガス流通下で湿熱処理することで、該湿熱処理前後の固有粘度変化率が0.10以下であり、かつ、湿熱処理後に該ポリエステル中の環状3量体の含有量が0.5重量%以下となる、ポリエステルの製造方法。
- 前記水含有不活性ガス中の含水量が、3.5〜30.0g/Nm3である、請求項1に記載のポリエステルの製造方法。
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