JP2010128108A - 光学シートの製造方法及び光学シート - Google Patents

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Abstract

【課題】防眩性の評価が簡便に行え、防眩性の高い光学シートを効率よく製造する方法を提供すること。
【解決手段】基材の少なくとも一方の面に機能層を有し、該機能層の最表面及び/又は内部に拡散要素を有する光学シートの製造方法であって、下記式(I)の関係を有するように製造条件を制御することを特徴とする表示素子表面に用いる光学シートの製造方法である。
S×β<0.70 (I)
S;拡散正反射強度/基材の正反射強度
β;拡散正反射方向に対して±2度での反射強度と±1度での反射強度とを結ぶ直線を拡散正反射角度に外挿した拡散強度の1/3の強度を示す拡散角度
【選択図】なし

Description

本発明は防眩性に優れた光学シートの製造方法及び該方法により得られる光学シートに関する。
表示装置の表面に用いる光学シートとして、基材の観察者側の面に防眩性を有する機能層が積層されたものが知られている。このような防眩性を付与するためには、表面層に凹凸形状を付与したり、表面層を形成する樹脂に拡散粒子を含有させるなどの方法がとられる。このような拡散粒子は、表面層を形成する樹脂とは完全に相溶することがないため、これらを用いた光学シートは可視光を拡散する作用を有する。また、表面層の凹凸も同様に可視光を拡散する作用を有する。
本発明では、上記のような可視光の拡散を生じさせるものを拡散要素と定義するが、このような拡散要素によって防眩性が付与される。そして、従来から、防眩性を評価する方法として、ヘイズ値や内部ヘイズと総ヘイズの比が一般に用いられてきた。すなわち、光学シートの製造過程において、ヘイズ値を制御することで、所望に応じた防眩性を有する光学シートを製造し得ると考えられていた(特許文献1〜3参照)。
特開2002−267818 特開2007−334294 特開2007−17626
しかしながら、同じヘイズ値であっても防眩性が異なる場合が多く見られ、ヘイズ値及び内部ヘイズと総ヘイズの比を指標としての製造では、必ずしも良好な光学シートを安定に生産することはできないことがわかった。
本発明はこのような状況下、防眩性の高い光学シートを安定して供給する製造方法及び防眩性の高い光学シートを提供することを目的とする。
これまで防眩性はヘイズ値に依存すると考えられてきた。ヘイズ値は、JIS K7136:2000及びISO 14782:1999によると、「試験片を通過する透過光のうち、前方散乱によって、入射光から0.044rad(2.5度)以上それた透過光の百分率」と定義されている。すなわち、ヘイズ値は入射した光線が±2.5度以上散乱している散乱光の比率を示すものであり、拡散による輝度分布は全く考慮されていない。極端な例で言えば、完全に鏡面反射する光学シート(拡散が全くない)と鏡面反射はないが、透過光のすべてが±2.5度以内で拡散する光学シートはともにヘイズ値が0ということになる。
一方、例えば、透過光の±2.5度以内の光量が30%で、透過光が70〜80度の角度まで散乱する光学シートと、透過光の±2.5度以内の光量が同様に30%で、透過光が5〜10度の角度に散乱する光学シートは、共にヘイズ値は70%となる。
図1はヘイズ値と防眩性の関係、図2は内部ヘイズと総ヘイズの比と防眩性との関係を、種々の条件の異なる光学シートを作成し、検証した結果である。図1及び図2に示すように同じヘイズ値、内部ヘイズと総ヘイズの比を有していても、観察者の評価としての防眩性が全く異なる光学シートが存在することがわかる。
本発明者らは、これらの知見を基に鋭意検討した結果、拡散による輝度分布の概念を加えることで、従来のヘイズ値では評価し得なかった防眩性の評価が簡便に行えることを見出した。より具体的には、光学シートの拡散正反射強度を、該光学シートを構成する拡散要素を有さない基材の正反射強度で除した値Sと、拡散正反射方向に対して±2度での反射強度と±1度での反射強度とを結ぶ直線を拡散正反射角度に外挿した拡散強度の1/3の強度を示す拡散角度βの積を用いることで、防眩性の評価を簡便に行い得ること、及び光学シートの製造過程において、これを指標として、材料の特定、製造条件などを制御することで、防眩性の高い光学シートを効率よく、且つ安定して製造し得ることを見出した。本発明はこれらの知見を基に完成したものである。
すなわち、本発明は、基材の少なくとも一方の面に機能層を有し、該機能層の最表面及び/又は内部に拡散要素を有する光学シートの製造方法であって、下記式(I)の関係を有するように製造条件を制御することを特徴とする表示素子表面に用いる光学シートの製造方法を提供するものである。
S×β<0.70 (I)
S;拡散正反射強度/基材の正反射強度
β;拡散正反射方向に対して±2度での反射強度と±1度での反射強度とを結ぶ直線を拡散正反射角度に外挿した拡散強度の1/3の強度を示す拡散角度
本発明によれば、従来のヘイズ値では評価し得なかった防眩性の評価が簡便に行え、防眩性の高い光学シートを効率よく製造する方法を提供することができる。
本発明の光学シートの製造方法は、基材の少なくとも一方の面に機能層を有し、該機能層の最表面及び/又は内部に拡散要素を有する表示素子表面に用いる光学シートの製造方法であって、S×β<0.70の関係を有するように製造条件等を制御することを特徴とする。
以下、図3及び4を用いて、S及びβの算出方法について説明する。
(Sの算出方法)
Sは光学シートの拡散正反射強度を、該光学シートを構成し、拡散要素を有さない基材の正反射強度で除した値(拡散正反射強度/基材の正反射強度)として定義される。
図3に示すように、光学シート1に、4の方向から可視光線を照射すると、5の方向に拡散正反射されるとともに、一部の光が拡散される。この5の方向が拡散正反射方向であり、拡散正反射方向における光の強度が、拡散正反射強度と定義される。なお、後に記載するように、裏面反射を抑制し、実使用時の条件とあわせるために、基材2の裏面には接着剤を介して黒色のアクリル板などの可視光線吸収材8を貼付する。
一方、図3において、光学シート1に代えて、拡散要素を有さない基材2を用いて、同様に測定した場合の5の方向が正反射方向であり、正反射方向における光の強度が、基材の正反射強度と定義される。
(βの算出方法)
図3に示すように、光学シート1に4の方向から可視光線を照射すると、5の方向に拡散正反射されるとともに、一部の光が拡散される。本発明では、拡散正反射方向に対して±2度の方向(図3におけるθが2度の場合)での反射強度R2、及び拡散正反射方向に対して±1度の方向(図3におけるθが1度の場合)での反射強度R1をそれぞれ測定し、R2とR1とを結ぶ直線を拡散正反射角度に外挿した拡散強度(以下「仮想正反射拡散強度」と称する。)の1/3の強度を示す拡散角度をβと定義する(図4参照)。なお、後に記載するように、裏面反射を抑制し、実使用時の条件とあわせるために、基材2の裏面には接着剤を介して黒色のアクリル板などの可視光線吸収材8を貼付する。
そして、光学シートの製造過程において、S×βを指標として、材料の選定、製造条件の制御などを行い、上記式(I)を満足する光学シートを得るものである。
なお、拡散反射強度の測定は、具体的には以下のように測定する。
(拡散反射強度の測定方法)
光学シートの裏面(表面層を有さない面、観察者側と反対側の面)を、透明粘着剤を介して凹凸や反りのない平坦な黒アクリル板に貼付して評価用サンプルを作製する。なお、ここで用いる黒色のアクリル板は、上述のように裏面反射を防止するためのものであり、光学シートの裏面に空気層を有さないように、かつ可視光を吸収し得るものであれば、特に制限はない。例えば、製造ラインにおいて測定する場合などでは、光学シートの検査用部分の裏面に黒色塗料を塗布する等の方法によりオンラインで測定することも可能である。
次に、評価用サンプルを測定装置に設置し、評価用サンプルの光学シート側の面に対し面の法線から45度の角度より光束を入射する。光束が評価用サンプルの光学シート面に入射し拡散反射した光に対して、一定の範囲、例えば、光学シート1の表面の法線方向に対して、−85度〜85度の範囲の拡散反射強度を測定する。このうち、拡散正反射方向に対して±1度の方向の反射強度、及び拡散正反射方向に対して±2度の方向での反射強度を、上述のように、仮想正反射拡散強度の算出に用いる。なお、拡散が小さい場合については、時間短縮の為、拡散反射強度の結果に大きく寄与しない程度に測定範囲を狭めても良い。拡散反射強度を測定する装置については、特に制限はないが、本発明においては、日本電色工業(株)製「GC5000L」を使用した。
次に、光学シートにおける上記S×βが防眩性を決定する理由を説明する。光学シートにおいては、平面状態のところに凹凸の山が散在する及び/又は内部に拡散粒子が疎に存在するので、反射拡散特性は、外光が拡散要素に衝突しないで“素抜ける”光と拡散要素に衝突する光の合成となる。したがって、正反射方向のみに反射強度を持つ部分と滑らかな反射強度を持つ部分とを合成したものが、図4に示す本来の正反射を持つ反射特性となる。一方、防眩性は拡散要素に衝突する光の拡散特性により決定されるので、拡散要素に衝突する光の拡散特性を知る必要がある。すなわち、図4における仮想の正反射を持つ反射特性が前記拡散要素に衝突する光の正反射と近似される。
ここで、S×βは図4における斜線部の三角形の面積をあらわしている。すなわち、前記拡散要素に衝突する光の正反射近傍での拡散角度に対する強度の関係を示す曲線で囲まれる面積を近似している。なお、防眩性に影響する拡散要素による拡散の状態を正反射近傍での拡散角と強度をもちいた理由は、拡散要素による拡散角による強度の変化は正反射近傍で顕著に現れるためである。ゆえに、S×βは正反射近傍での拡散要素による拡散角度と強度の状態を示すこととなり、ひいては拡散要素の拡散性能と等価となるためであると類推している。
本発明の製造方法では、下記式(I)を指標として制御することが特徴である。
S×β<0.70 (I)
S×βが0.70未満となるように製造することによって、防眩性に優れた光学シートを得ることができる。より良好な防眩性を得るとの観点からは、S×βは0.30未満であることが好ましく(式(II))、0.27未満であることがさらに好ましい(式(III))。
本発明におけるS×β<0.70を達成するには、内部拡散要素及び外部拡散要素によって透過輝度分布及び強度を調整することによって達成できる。
内部拡散要素によって透過輝度分布及び強度を調整する方法として、機能層を構成する樹脂に透光性無機粒子及び/又は透光性有機粒子(以下、単に「透光性粒子」と記載することがある。)を分散させる方法がある。さらには、機能層を構成する透明樹脂、透明樹脂に分散される透光性粒子の形状、分散状態、粒子径、添加量、屈折率等を制御することにより行い得る。また、透明樹脂に添加し得る透光性粒子以外の添加剤の濃度等も前記内部拡散要素による拡散透過強度に影響を与える。
一方、外部拡散要素によって拡散透過強度を調整する方法としては、例えば、
(1)表面に微細な凹凸を有する型を用いて光学シートの表面に凹凸形状を転写する方法、
(2)電離放射線硬化性樹脂など機能層を構成する樹脂の硬化収縮により表面に凹凸を形成する方法、
(3)透光性微粒子を前記表面層から突出固化させて表面に凹凸を形成する方法、
(4)外部からの圧力により表面凹凸を付与する方法、等がある。
上記(1)の方法としては、例えば、基材に電離放射線硬化性樹脂を配し、該電離放射線硬化性樹脂の塗工層に微細な凹凸を有する型を密着させ、電離放射線により硬化することで光学シートの表面に凹凸形状を設けることができる。
上記(2)の方法は、滑らかな表面を持つ微細な凹凸が得られることからギラツキ防止に有効であり、また上記(3)の方法は、透光性粒子と透明樹脂の選定、塗膜の厚さ、溶剤の選定、乾燥条件、基材への浸透性等により性能調整ができるため、プロセスが短くかつ作業が単純となり、低コストで製造できる点で有効である。
なお、凹凸表面に設ける反射防止層や、防汚層、ハードコート層、帯電防止層等の機能層も前記外部拡散要素による拡散透過強度に影響を与えるものである。具体的には、凹凸表面に他の機能層を設けて2層構成とすることで、表面凹凸を緩やかにし、表面拡散を抑制することができる。なお、前記他の機能層の塗膜の厚さを厚くすることで、表面凹凸を緩やかにしたり、塗布液組成、塗布及び乾燥条件等によっても表面拡散を制御することができる。
上述の外部拡散要素を得るための方法の(3)は、用いる透光性微粒子の種類によっては、外部拡散と内部拡散を同時に付与することができ、製造プロセスを簡略化できるという点で好適な方法である。
一方、上記(3)以外の方法を用いる場合には、外部拡散要素によって拡散透過強度を調整する方法と内部拡散要素によって拡散透過強度を調整する方法を、別個独立に設計することができるため、防眩性以外の、解像度、ギラツキ、コントラスト等の光学性能の調整が容易となる点で好ましい。しかも、用いる樹脂の光学性能を考慮することなく、外部拡散要素によって拡散透過強度を調整することができるため、表面樹脂のハードコート性、防汚性、帯電防止性等の物理性能を発揮する樹脂の選定が容易である。
[透光性粒子]
透明樹脂に分散される透光性粒子の好ましい範囲について、以下詳細に記載する。
透光性粒子は有機粒子であっても、無機粒子であってもよいし、有機粒子と無機粒子を混合して使用してもよい。
本発明の光学シートにおいて、用いる透光性粒子の平均粒径は、0.5〜20μmの範囲が好ましく、より好ましくは1〜10μmである。この範囲内であれば、内部拡散及び/又は外部拡散による拡散透過強度分布を調整することが可能である。特に、透光性粒子の平均粒径が0.5μm以上であると、粒子の凝集が過度にならず、凹凸形成の調整が容易になり、20μm以下であると、ギラツキやざらついた画像が出にくいために、拡散透過強度分布を設計する上での自由度が確保される。
また、透光性粒子の粒径のばらつきが少ないほど、散乱特性にばらつきが少なく、拡散透過強度分布設計が容易となる。より具体的には、重量平均による平均径をMV、累積25%径をd25、累積75%径をd75としたとき(d75−d25)/MVが0.25以下であることが好ましく、0.20以下であることが更に好ましい。なお、累積25%径とは、粒径分布における粒径の小さい粒子からカウントして25質量%となったときの粒子径をいい、累積75%径とは、同様にカウントして75質量%となったときの粒子径をいう。
粒径のばらつきの調整方法としては、例えば、合成反応の条件を調整することで行うことができ、また、合成反応後に分級することも有力な手段である。分級では、その回数を上げることやその程度を強くすることで、望ましい分布の粒子を得ることができる。分級には風力分級法、遠心分級法、沈降分級法、濾過分級法、静電分級法等の方法を用いることが好ましい。
さらに、機能層を構成する透明樹脂と透光性粒子の屈折率差が0.01〜0.25であることが好ましい。屈折率差が0.01以上であると、防眩性シートにおけるギラツキを抑制することができ、0.25以下であると拡散透過強度分布設計が容易となる。以上の観点から、該屈折率差は0.01〜0.2が好ましく、0.02〜0.15であることがより好ましい。なお、透光性粒子の屈折率は、屈折率の異なる2種類の溶媒の混合比を変化させて屈折率を変化させた溶媒中、透光性粒子を等量分散して濁度を測定し、濁度が極小になった時の溶媒の屈折率をアッベ屈折計で測定することで測定される。
また、比重差が0.1以上の2種以上の透光性粒子を併用したり、粒子径の差が0.5μm以上である異なる粒径を有する2種以上の透光性粒子を併用したり、屈折率差が0.01以上の2種以上の透光性粒子を併用したり、球状の透光性粒子と不定形の透光性粒子を併用することによっても拡散透過強度の調整を行うことが可能である。
なお、比重は液相置換法、気相置換法(ピクノメーター法)等で、粒子径はコールターカウンター法や光回折散乱法等で、屈折率は、アッベ屈折計で直接測定するか、分光反射スペクトルや分光エリプソメトリーを測定するなどして定量的に評価できる。
透光性有機粒子としては、ポリメチルメタクリレート粒子、ポリアクリル−スチレン共重合体粒子、メラミン樹脂粒子、ポリカーボネート粒子、ポリスチレン粒子、架橋ポリスチレン粒子、ポリ塩化ビニル粒子、ベンゾグアナミン−メラミンホルムアルデヒド粒子、シリコーン粒子、フッ素系樹脂粒子、ポリエステル系樹脂粒子等が用いられる。
また、透光性無機粒子としては、シリカ粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、チタニア粒子また中空や細孔を有する無機粒子等が挙げられる。
また、屈折率、粒径分布が同一な透光性微粒子であっても、透光性粒子の凝集の程度により拡散透過強度分布は異なるので、凝集状態の異なる2種類以上の透光性粒子を組み合わせて使用したり、シランカップリング処理の条件の異なる2種以上の無機粒子を用いることで凝集状態を変えて拡散透過強度分布を調整することができる。
なお、透光性粒子の凝集防止には、可視光線の波長以下の粒子径、例えば50nm以下程度の粒子径を有するシリカなどを添加する方法が好適に挙げられる。
また、内部拡散の効果を得るためには、可視光線の波長以上の粒子径を有するシリカなどの不定形透光性粒子が有効である。球状粒子に比べて、不定形粒子は透過拡散角度の分布を広くする作用があるためである。しかしながら、不定形透光性粒子は内部反射分布も広くするので、塗膜の拡散性に影響を及ぼし、拡散透過強度の調整が困難となる場合があるので、広い透過拡散を得たい場合等必要に応じて添加することが好ましい。より具体的には、不定形透光性粒子を、球状粒子と不定形透光性粒子との合計量に対して、4質量%未満の範囲内で添加することが好ましい。
透光性粒子は、透明樹脂(固形分)中に1〜30質量%含有されるように配合されることが好ましく、2〜25質量%の範囲がより好ましい。1質量%以上であると、十分な防眩性や光拡散性を生じさせることができ、良好な視認性を得ることができる。一方、30質量%以下であると、解像性を低下させず画像がぼけることがない。
[透明樹脂]
機能層を構成する透明樹脂としては、電離放射線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂を用いることができる。機能層を形成するには、電離放射線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂を含有する樹脂組成物を基材に塗布し、該樹脂組成物中に含まれるモノマー、オリゴマー及びプレポリマーを架橋及び/又は重合させることにより形成することができる。
モノマー、オリゴマー及びプレポリマーの官能基としては、電離放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。
光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等が挙げられる。
また、プレポリマー及びオリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等のアクリレート、シロキサン等の珪素樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂等が挙げられる。
モノマーとしては、スチレン、α‐メチルスチレン等のスチレン系モノマー;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸‐2‐エチルヘキシル、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のアクリル系モノマー;トリメチロールプロパントリチオグリコレート、トリメチロールプロパントリチオプロピレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコール等の分子中に2個以上のチオール基を有するポリオール化合物などが挙げられる。
また、バインダーとして、ポリマーを上記樹脂組成物に添加して用いることも可能である。ポリマーとしては、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)等が挙げられる。ポリマーを添加することで、塗液の粘度調整が可能であり、このことによって、塗工を容易にするとともに、粒子の凝集による凹凸形成の調整が容易になるといった利点がある。
また、上記樹脂組成物には、必要に応じて、光ラジカル重合開始剤を添加することができる。光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物等が用いられる。
アセトフェノン類としては、2,2−ジメトキシアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシ−ジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシ−ジメチル−p−イソプロピルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン等が挙げられ、ベンゾイン類としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等が挙げられる。また、ベンゾフェノン類としては、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノンおよびp−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等が使用可能である。
また、光増感剤を混合して用いることもでき、その具体例としては、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ−n−ブチルホスフィン等が挙げられる。
また、透明樹脂として、相分離可能な複数の樹脂を用いることでも内部拡散要素による拡散透過強度を調整することが可能である。すなわち、上記したプレポリマー、オリゴマー、モノマー、及びポリマーにおいて、相溶性成分と非相溶性成分とを混合して使用することで、前記内部拡散要素による拡散透過強度を調整することも可能である。例えば、一方の樹脂がスチレン系樹脂(ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体等)である場合、他方の樹脂はセルロース誘導体(セルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステルなど)、(メタ)アクリル系樹脂(ポリメタクリル酸メチル等)、脂環式オレフィン系樹脂(ノルボルネンを単量体とする重合体等)、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂などが好適に挙げられる。また、一方の樹脂がセルロース誘導体(セルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステルなど)である場合、他方の樹脂は、スチレン系樹脂(ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体等)、(メタ)アクリル系樹脂(ポリメタクリル酸メチル等)、脂環式オレフィン系樹脂(ノルボルネンを単量体とする重合体等)、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂などが好適に挙げられる。
組み合わせる樹脂の比率(質量比)は、1/99〜99/1の範囲から選択でき、5/95〜95/5の範囲が好ましく、10/90〜90/10の範囲がさらに好ましく、20/80〜80/20の範囲、特には30/70〜70/30の範囲が好ましい。
さらには、前記プレポリマー、オリゴマー及びモノマーとして、重合収縮が大きいものを用いることで前記外部拡散要素による拡散透過強度を調整することも可能である。重合収縮が大きいほど、表面の凹凸が大きくなり、拡散透過強度分布が広くなる。
また、上記放射線硬化性樹脂組成物には、通常、粘度を調節したり、各成分を溶解または分散可能とするために溶剤を用いる。該溶剤は、用いる溶剤の種類によって、塗布、乾燥の工程により塗膜の表面状態が異なるため、外部拡散による透過強度分布を調整し得ることを考慮して、適宜選択することが好ましい。具体的には、飽和蒸気圧、基材への浸透性等を考慮して選定される。
本発明の製造方法において、機能層を形成するための樹脂組成物は、透明樹脂としての電離放射性硬化性樹脂、透光性粒子、及び溶媒を含有することが好ましい。ここで、該樹脂組成物は、基材に含浸する溶剤(以下「浸透性溶剤」ということがある。)及び/又は基材に含浸する電離放射線硬化性樹脂と、基材に含浸しない溶剤及び/又は基材に含浸しない電離放射線硬化性樹脂とを含むことが好ましい。基材への含浸量を調整することによって、機能層の厚さを制御することができ、結果として拡散透過強度を調整できるためである。
さらに詳細には、基材への含浸量と透光性粒子の大きさによって、拡散透過強度を制御することができる。具体的には、溶剤及び/又は電離放射線硬化性樹脂(以下「溶剤等」と表記する場合がある。)の基材への含浸量が小さく、かつ透光性粒子が小さい場合には、溶剤等の中に大部分の粒子が埋め込まれた形で機能層が形成されるが、透光性粒子が凝集しやすくなることから、表面の凹凸は比較的大きいものになる。一方、基材への含浸量の大きい溶剤等と小さい粒径の透光性粒子を組み合わせて用いた場合には、透光性粒子の凝集が少なくなるため、表面の凹凸は比較的小さいものになる。
また、基材への含浸量の大きい溶剤及び/又は電離放射線硬化性樹脂と大きい粒径の透光性粒子を組み合わせて用いた場合には、機能層の厚さが薄くなるために、透光性粒子が機能層から突出する形となり、透光性粒子に起因する表面凹凸が得られる。これに対し、基材への含浸量の小さい溶剤等と大きい粒径の透光性粒子を組み合わせて用いた場合には、機能層の厚さが厚くなるために、透光性粒子の表面への突出が抑制され、表面の凹凸は比較的小さいものになる。
このように、溶剤及び/又は電離放射線硬化性樹脂の基材への含浸量を調整し、これと透光性粒子の粒径を組み合わせて制御することで、種々の大きさの表面凹凸形状を形成させることができる。
特に、基材がセルロース系樹脂からなる場合に本手法は有効である。
さらに、上記溶剤として、1種類を単独で又は、常温・常圧における沸点の異なる2種以上の溶剤を含むことができる。2種以上の溶剤を用いることで、溶剤の乾燥速度を多様に制御することができる。乾燥速度が速いと、粒子の凝集が十分に起こる前に、揮発して溶剤が減少し粘度が高くなるため、それ以上の凝集が進まなくなる。したがって、乾燥速度を制御することは、透光性粒子の粒径を制御することになり、上述のように、溶剤及び/又は電離放射線硬化性樹脂の基材への浸透度との関係で、拡散透過強度を制御することにつながる。
具体的な溶剤としては、上記観点から適宜選択することができるが、具体的には、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤や、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノンなどのケトン類が好適に挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。芳香族系溶剤の少なくとも1種とケトン類の少なくとも1種を混合して使用することが好ましい。その他、乾燥速度を制御するために、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類やセロソルブアセテート類、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類を混合してもよい。
本発明にかかる光学シートにおいて、透明樹脂中に透光性粒子以外の添加剤が、必要に応じて配合される。例えば、硬度などの物理特性、反射率、散乱性などの光学特性などの向上のため、各種無機粒子を添加することができる。
無機粒子としては、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモン等の金属やZrO2、TiO2、Al23、In23、ZnO、SnO2、Sb23、ITO、ATO、SiO2等の金属酸化物が挙げられる。その他カーボン、MgF、珪素、BaSO4、CaCO3、タルク、カオリンなどが含まれる。
該無機粒子の粒径は、拡散透過強度分布への影響を少なくするために、機能層を塗工する際の樹脂組成物中でなるべく微細化されていることが好ましく、平均粒径が100nm以下の範囲であることが好ましい。無機粒子を100nm以下に微細化することで透明性を損なわない光学シートを形成できる。なお、無機粒子の粒子径は、光散乱法や電子顕微鏡写真により測定できる。
また本発明では、凝集防止効果及び沈降防止効果、その他、レベリング性などの特性の向上のため、各種界面活性剤を用いることができる。界面活性剤としては、シリコーンオイル、フッ素系界面活性剤、好ましくはパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系界面活性剤などが挙げられる。
さらに、本発明では防汚剤、帯電防止剤、着色剤(顔料、染料)、難燃剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤などを添加することができる。
本発明の光学シートに用いられる基材としては、透明樹脂フィルム、透明樹脂板、透明樹脂シートや透明ガラスなど、通常光学シートに用いられるものであれば特に限定は無い。
透明樹脂フィルムとしては、トリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム)、ジアセチルセルロースフィルム、アセチルブチルセルロースフィルム、アセチルプロピルセルロースフィルム、環状ポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリアクリル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリロニトリルフィルム、ポリノルボルネン系樹脂フィルム等が使用できる。特に、本発明の光学シートを偏光板とともに用いる場合では、偏光を乱さないことからTACフィルム、環状ポリオレフィンフィルムが、機械的強度と平滑性を重視する場合は、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどのポリエステルフィルムが好ましい。
また、前記基材は多層であっても単層であっても良いし、塗膜との接着性を目的として表面にプライマー層を設けても良い。また、基材と塗膜層に実質的な屈折率差がある場合に界面で生じる干渉縞を防止するために、例えば基材と塗膜層との間に中間の屈折率をもつ干渉縞防止層を設けることや、表面粗さ(十点平均粗さRz)として、0.3〜1.5μm程度の凹凸を設けておくことも可能である。なお、RzはJIS B0601 1994に準拠して測定した値である。
本発明の製造方法により製造される光学シートは優れた防眩性を有する。防眩性については、好ましくは後述するハードコート性を付与することのできる透明樹脂に、防眩性を付与するための透光性粒子、及び溶媒を含有し、透光性粒子自体の突起あるいは複数の粒子の集合体で形成される突起によって表面の凹凸が形成されるものであることが好ましい。防眩性の評価は次の方法により行う。
(防眩性の評価方法)
平坦な黒アクリル板に光学シートを貼付することにより測定サンプルを作製する。測定サンプルの法線方向に対し15度の方向から光源を入射し、鏡面方向の位置に設置したCCDカメラにより光源の反射像を撮影し、反射光の最大ピーク強度を求める。この測定を、大きさの異なる2つの光源で行い、大きい光源で測定したときの反射光ピーク強度値をPL、小さい光源で測定したときの反射光ピーク強度値をPSとしたとき、以下の式(IV)により防眩性を評価する。
50×log(PL/PS) (IV)
この数値が大きいほど防眩性が高いことを表す。この評価では、20以上であることが好ましく、40以上であることがさらに好ましく、60以上であることが特に好ましい。
また、平坦な黒アクリル板に光学シートを貼付することにより測定サンプルを作製し、900ルクス程度の光源を、例えば、15度の角度で写し込んで、正反射方向から見たぼやけ具合を目視にて評価してもよい。
また、本発明にかかる光学シートには防眩性以外に、ハードコート性、反射防止性、帯電防止性、防汚性等の機能を持たせることが可能である。
ハードコート性は、通常、鉛筆硬度(JIS K5400に準拠して測定)やスチールウール#0000で荷重をかけながら10往復擦り試験を行い、裏面に黒テープを貼付した状態でキズが確認されない最大荷重で評価する(耐スチールウール擦り性)。本発明にかかる光学シートにおいては、鉛筆硬度ではH以上が好ましく、2H以上がさらに好ましい。また、耐スチールウール擦り性では、200g/cm2以上であることが好ましく、500g/cm2以上であることがさらに好ましく、700g/cm2以上であることが特に好ましい。
次に、反射防止性はシートの反射率を低減するために、最表面に低屈折率層を設ける。低屈折率層の屈折率は、1.5以下であることが好ましく、1.45以下であることがより好ましい。
低屈折率層は、シリカ又はフッ化マグネシウムを含有する材料、低屈折率樹脂であるフッ素樹脂などにより形成される。
低屈折率層の厚さdは、d=mλ/4nを満たすものが好ましい。ここで、mは正の奇数を表し、nは低屈折率層の屈折率を表わし、λは波長を表わす。mは好ましくは1であり、λは好ましくは480〜580nmである。また、低反射率化の点から、120<n・d<145の関係を有することが好ましい。
また、光学シート表面での静電気防止の点で帯電防止性能を付与することが好ましい。帯電防止性能を付与するには、例えば、導電性微粒子、導電性ポリマー、4級アンモニウム塩、チオフェンなどと反応性硬化樹脂を含む導電性塗工液を塗工する方法、或いは透明膜を形成する金属や金属酸化物等を蒸着やスパッタリングして導電性薄膜を形成する方法等の従来公知の方法を挙げることができる。また、帯電防止層をハードコート、防眩、反射防止等の機能層の一部として使用することもできる。
帯電防止性を示す指標として表面抵抗値があり、本発明では、表面抵抗値が、1012Ω/□以下が好ましく、1011Ω/□以下がさらに好ましく、1010Ω/□以下が特に好ましい。また、該光学フィルムが蓄積できる最大電圧である、いわゆる飽和帯電圧としては、10kVの印加電圧で2kV以下であることが好ましい。
また、本発明の光学シートの最表面には防汚層を設けることができる。防汚層は表面エネルギーを下げ、親水性あるいは親油性の汚れを付きにくくするものである。防汚層は防汚剤の添加により付与することができ、防汚剤としては、フッ素系化合物、ケイ素系化合物、またはこれらの混合物が挙げられ、特にフロロアルキル基を有する化合物が好ましい。
以下、本発明の光学シートの製造方法について詳細に記載する。本発明では、上述のように、式S×β<0.70を指標として、これを満足するように、製造条件を制御することが肝要である。
本発明の光学シートは、基材に機能層を構成する樹脂組成物を塗布して製造する。塗布の方法としては、種々の方法を用いることができ、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ブレードコート法、マイクログラビアコート法、スプレーコート法、スピンコート法等の公知の方法が用いられる。
本発明においては、塗布量により透過拡散輝度特性が変化するので、機能層の厚さを1〜20μmの範囲で安定して得やすいロールコート法、グラビアコート法、ダイコート法が好ましい。
前記の方法のいずれかで塗布した後、溶剤を乾燥するために加熱されたゾーンに搬送され各種の公知の方法で溶剤を乾燥する。ここで固形分濃度、塗布液温度、乾燥温度、乾燥風の風速、乾燥時間、乾燥ゾーンの溶剤雰囲気濃度等を選定することにより、表面凹凸形状のプロファイルによる外部拡散及び前記透光性粒子や前記添加剤による内部拡散を調整できる。特に、乾燥条件の選定によって透過拡散輝度特性を調整する方法が簡便で好ましい。具体的な乾燥温度としては、30〜120℃、乾燥風速では0.2〜50m/sであることが好ましく、この範囲内で適宜調整することで透過拡散輝度特性を調整することができる。
より具体的には、乾燥温度を高くすることで、樹脂及び溶剤の基材への浸透性が向上する。すなわち、乾燥温度を制御することで、樹脂及び溶剤の基材への浸透性を制御することができ、上述したように、透光性粒子の粒径との関係で、拡散透過強度を制御することにつながる。
例えば、機能層を形成するための樹脂組成物が、透明樹脂、透光性粒子及び溶剤からなり、透明樹脂の浸透性を有する成分の屈折率が透光性粒子の屈折率より低く、レべリング性及び透光性粒子の沈降や凝集が同程度の場合には、硬化までの乾燥時間が長くなると、透明樹脂中の低屈折成分が基材に浸透し、透明樹脂の屈折率が上昇して、透光性粒子との屈折率差が減少する。一方、透明樹脂に対する透光性粒子の割合が増加するため、透光性粒子が表面に突出しやすくなり、表面凹凸が発現しやすくなる。従って、乾燥時間が長くなることにより、内部拡散は小さくなると同時に、外部拡散が大きくなる。なお、この浸透性を利用することによりアンカー効果による基材と機能層の密着性や、基材と機能層との屈折率差が0.03以上で顕著となる干渉縞の発生を防止することも可能となる。これは、透明樹脂中の低屈折成分が基材に浸透して生じた浸透層が、基材と機能層の間に屈折率が連続的に変化する屈折率調整層としての機能を発現し、界面を解消する作用を有するためである。
また、乾燥速度を早くすることで、透光性粒子の凝集時間が短くなるため凝集が進まず、実質的に作用する透光性粒子の粒径は小さくなったと同様な作用を呈することとなる。すなわち、乾燥速度を制御することで、実質的に作用する透光性粒子の粒径を制御することができ、やはり上述したように、溶剤及び/又は電離放射線硬化性樹脂の基材への浸透度との関係で、拡散透過強度を制御することにつながる。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
(評価方法)
1.Sの算出
各製造例にて作製された光学シートについて、明細書本文中に記載される方法により、日本電色工業(株)製「GC5000L」を用いて拡散反射強度を測定し、Sを算出した。
2.βの算出
各製造例にて作製された光学シートについて、明細書本文中に記載される方法により、日本電色工業(株)製「GC5000L」を用いて拡散反射強度を測定し、βを算出した。なお、拡散反射強度は、光学シートの表面の法線方向に対して−85度〜85度の範囲で測定した。
3.ヘイズの測定
各製造例にて作製された光学シートについて、(株)村上色彩技術研究所製「ヘイズメーターHM−150」で測定した。
4.防眩性
各製造例にて作製された光学シートについて、平坦な黒アクリル板に光学シートを貼付することにより測定サンプルを作製し、900ルクスの光源を、15度の角度で写し込んで、正反射方向から見たぼやけ具合を目視にて評価した。評価1が最も防眩性が悪く、評価5が最も防眩性が良好である。
製造例1
基材としてトリアセチルセルロース(富士フィルム(株)製、厚さ80μm)を用意した。透明樹脂としてペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、及びポリメタクリル酸メチル(PMMA)の混合物(質量比;PETA/DPHA/PMMA=86/5/9)を用い(屈折率1.51)、これに透光性粒子として、ポリスチレン粒子(屈折率1.6、平均粒径3.5μm、(d75−d25)/MVが0.05)及びスチレン−アクリル共重合粒子(屈折率1.56、平均粒径3.5μm、(d75−d25)/MVが0.04)を、透明樹脂100質量部に対して、各々18.5及び3.5質量部含有させた。これに溶剤としてトルエン(沸点110℃)とシクロヘキサノン(沸点156℃)の混合溶剤(質量比7:3)を、透明樹脂100質量部に対して、190質量部配合して得られた樹脂組成物を、前記基材に塗工し、0.2m/sの流速で70℃の乾燥空気を流通させ、1分間乾燥させた。その後、紫外線を照射して(窒素雰囲気下にて200mJ/cm2)透明樹脂を硬化させ、光学シート(防眩シート)を作製した。塗膜厚は3.5μmとした。この光学シートに関し、上記方法にて評価した結果を第2表に示す。
製造例2〜7及び製造例10〜18
製造例1において、基材の種類、透明樹脂の種類、透光性粒子の種類及び含有量、溶剤の種類及び含有量、乾燥条件、及び塗膜厚を第1表に記載するように変化させて光学シート(防眩シート)を作製した。それぞれの光学シートに関し、製造例1と同様に評価した結果を第2表に示す。
製造例8
基材としてトリアセチルセルロース(富士フィルム(株)製、厚さ80μm)を用意した。透明樹脂としてペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA、屈折率1.51)を用い、これに透光性粒子として、スチレン−アクリル共重合粒子(屈折率1.51、平均粒径9.0μm、(d75−d25)/MVが0.04)及びポリスチレン粒子(屈折率1.6、平均粒径3.5μm、(d75−d25)/MVが0.05)を、それぞれ透明樹脂100質量部に対して、10.0質量部、及び16.5質量部含有させた。これに溶剤としてトルエン(沸点110℃)とシクロヘキサノン(沸点156℃)の混合溶剤(質量比7:3)を、透明樹脂100質量部に対して、190質量部配合して得られた樹脂組成物を、前記基材に塗工し、1m/sの流速で85℃の乾燥空気を流通させ、1分間乾燥させた。これに紫外線を照射して(空気雰囲気下にて100mJ/cm2)透明樹脂を硬化させた(防眩層の形成)。
該塗膜層(防眩層)の上に、透明樹脂としてPETA(ペンタエリスリトールトリアクリレート、屈折率1.51)、及び溶剤としてトルエン(沸点110℃)とシクロヘキサノン(沸点156℃)の混合溶剤(質量比7:3)を、透明樹脂100質量部に対して、190質量部配合して得られた樹脂組成物を塗工し、5m/sの流速で70℃の乾燥空気を流通させ、1分間乾燥させた(ハードコート層の形成)。これに紫外線を照射して(窒素雰囲気下にて200mJ/cm2)透明樹脂を硬化させ、光学シート(ハードコート層を有する防眩シート)を作製した。塗膜厚は全体で12.0μmとした。この光学シートに関し、製造例1と同様に評価した結果を第2表に示す。
製造例9
製造例8において、透光性粒子であるポリスチレン粒子の含有量を、透明樹脂100質量部に対して、6.5質量部とし、塗膜厚を全体で13.0μmとしたこと以外は製造例8と同様にして、光学シート(ハードコート層を有する防眩シート)を作製した。製造例1と同様に評価した結果を第2表に示す。
Figure 2010128108
A;ポリスチレン粒子(屈折率1.6、平均粒径3.5μm、(d75−d25)/MVが0.05)
B;スチレン−アクリル共重合粒子(屈折率1.56、平均粒径3.5μm、(d75−d25)/MVが0.04)
C;スチレン−アクリル共重合粒子(屈折率1.51、平均粒径9.0μm、(d75−d25)/MVが0.04)
D;不定形シリカ(屈折率1.45、平均粒径1.5μm、(d75−d25)/MVが0.6)
E;不定形シリカ(屈折率1.45、平均粒径2.5μm、(d75−d25)/MVが0.8)
F;メラミン粒子(屈折率1.66、平均粒径2.0μm、(d75−d25)/MVが0.2)
P;ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、及びポリメタクリル酸メチル(PMMA)の混合物(質量比;PETA/DPHA/PMMA=86/5/9)(屈折率1.51)
Q;ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)(屈折率1.51)
X;トルエン(沸点110℃)とメチルイソブチルケトン(沸点116℃)の混合物(質量比8:2)
Y;トルエン(沸点110℃)とシクロヘキサノン(沸点156℃)の混合物(質量比7:3)
Figure 2010128108
実施例1
製造例1〜18において、拡散透過強度の測定結果からS×βを計算し、横軸にS×βを、縦軸に防眩性をプロットした結果を図5に示す。S×βと防眩性は相関を示すことが実証された。
比較例1
製造例1〜18において、ヘイズ値の測定結果から、横軸にヘイズを、縦軸に防眩性をプロットした結果は図1に示すものとなる。さらにまた、横軸に内部ヘイズと総ヘイズの比を、縦軸に防眩性をプロットした結果は図2に示すものとなる。ヘイズと防眩性、内部ヘイズ/総ヘイズの比と防眩性では相関を示さないことがわかる。
本発明の光学シートの製造方法によれば、従来のヘイズ値では評価し得なかった防眩性の評価が簡便に行え、防眩性の低下の少ない光学シートを効率よく製造することができる。
ヘイズ値と防眩性の関係を示す図である。 内部ヘイズ/総ヘイズの比と防眩性の関係を示す図である。 本発明における拡散反射強度の測定方法を示す概念図である。 βの算出方法を説明する図である。 S×βと防眩性の相関を示す図である。
符号の説明
1.光学シート
2.基材
4.光束の入射方向
5.拡散正反射方向
6.機能層(防眩層)
7.透光性粒子
8.可視光吸収材料(黒色のアクリル板)

Claims (19)

  1. 基材の少なくとも一方の面に機能層を有し、該機能層の最表面及び/又は内部に拡散要素を有する光学シートの製造方法であって、下記式(I)の関係を有するように製造条件を制御することを特徴とする表示素子表面に用いる光学シートの製造方法。
    S×β<0.70 (I)
    S;拡散正反射強度/基材の正反射強度
    β;拡散正反射方向に対して±2度での反射強度と±1度での反射強度とを結ぶ直線を拡散正反射角度に外挿した拡散強度の1/3の強度を示す拡散角度
  2. さらに、下記式(II)の関係を有するように制御する請求項1に記載の光学シートの製造方法。
    S×β<0.30 (II)
  3. さらに、下記式(III)の関係を有するように制御する請求項1に記載の光学シートの製造方法。
    S×β<0.27 (III)
  4. 前記機能層が、透明樹脂に透光性無機粒子及び/又は透光性有機粒子を分散させてなる請求項1〜3のいずれかに記載の光学シートの製造方法。
  5. 前記機能層が透明樹脂からなり、該透明樹脂が相分離可能な複数の樹脂から構成される請求項1〜3のいずれかに記載の光学シートの製造方法。
  6. 前記透明樹脂と透光性無機粒子及び/又は透光性有機粒子との屈折率が異なる請求項4に記載の光学シートの製造方法。
  7. 前記透光性無機粒子及び/又は透光性有機粒子により機能層の表面に凹凸を設ける請求項4又は6に記載の光学シートの製造方法。
  8. 前記透明樹脂と透光性無機粒子及び/又は透光性有機粒子との屈折率差が0.01〜0.25である請求項6又は7に記載の光学シートの製造方法。
  9. 前記透光性無機粒子及び/又は透光性有機粒子の平均粒径が0.5〜20μmである請求項4及び6〜8のいずれかに記載の光学シートの製造方法。
  10. 前記透光性無機粒子及び/又は透光性有機粒子の重量平均による平均径をMV、累積25%径をd25、累積75%径をd75としたときに、(d75−d25)/MVが0.25以下である請求項4及び6〜9のいずれかに記載の光学シートの製造方法。
  11. 前記透光性無機粒子及び/又は透光性有機粒子が前記透明樹脂中に1〜30質量%含有される請求項4及び6〜10のいずれかに記載の光学シートの製造方法。
  12. 型の表面に設けられた凹凸を反転転写して、前記機能層の表面に凹凸を設ける請求項1〜11のいずれかに記載の光学シートの製造方法。
  13. 前記透明樹脂が電離放射線硬化性樹脂であり、前記機能層は該電離放射線硬化性樹脂を含有する電離放射線硬化性樹脂組成物を基材上に塗布し、架橋硬化して形成する請求項1〜12のいずれかに記載の光学シートの製造方法。
  14. 前記基材がセルロース系樹脂からなり、電離放射線硬化性樹脂組成物は、基材に含浸する溶剤及び/又は基材に含浸する電離放射線硬化性樹脂と、基材に含浸しない溶剤及び/又は基材に含浸しない電離放射線硬化性樹脂とを含み、基材への含浸量を調整することにより、前記式(I)〜式(III)のいずれかの関係を有するように制御する請求項13に記載の光学シートの製造方法。
  15. 前記基材がトリアセチルセルロースである請求項14に記載の光学シートの製造方法。
  16. 前記基材がポリエチレンテレフタレートである請求項1〜13のいずれかに記載の光学シートの製造方法。
  17. 前記機能層がハードコート層を含み、耐スチールウール擦り性が200g/cm2以上である請求項1〜16のいずれかに記載の光学シートの製造方法。
  18. 最表層に反射防止機能層を形成する請求項1〜17のいずれかに記載の光学シートの製造方法。
  19. 請求項1〜18のいずれかに記載の製造方法により得られる光学シート。
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