JP2010127790A - 微粒子の粒径分布測定方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】測定対象粒子を媒体中に回収する。次いで、測定対象粒子が回収された前記媒体を複数に分割することで複数の試料を作製する。次いで、この後に行われる各試料の粒径分布測定において前記各試料の粒径分布測定結果が各試料毎に異なるように、あらかじめ、各試料に対して異なる条件で分級操作を行う。各試料の粒径分布を各々測定し、前記測定結果を基に微粒子の粒径分布を求める。ここで、このように、微粒子の粒径分布を計測するに際し、分級操作により、分割した試料毎に、段階的に、平均粒径を変化させ、粒径・散乱強度の変化分をその粒径範囲に存在する粒子からの散乱光として定量的に利用する事により、分布頻度に関する精度を飛躍的に向上させることができる。
【選択図】図2
Description
このような微細な粒子の特異的な性能を利用した技術は微粒子の粒径と密接に関係しているため、材料の開発とともにナノオーダー粒子の粒径分布を正確に測定(計測)する方法および装置の開発も盛んに行われている。
例えば、特許文献1には、微粒子の粒径分布を計測する方法が開示されている。
また、特許文献2には、粒径の大きい粒子と小さい粒子をそれぞれ独立した光学系で評価する方法が開示されている。
これは、現在、一般的に微細な粒子の平均粒径を計測するのに用いている動的光散乱法(以下、DLS法と称す場合もある)において、光の散乱強度が粒径の6乗に比例するため、1測定において正確さを持って評価可能な粒径分布の範囲(幅)がせいぜい1桁程度と考えられているためである。このため、粒径分布が広い試料の粒径分布を正確に計測することは極めて困難であると考えられる。
このように、現状においては、数nmから数百nmの広い領域にわたって粒径分布を有するような試料の場合には、正確な粒径分布を求めることは原理的に困難である。
ナノ粒子の製造自体を目的とする場合には、粒径の分布幅を抑制することは比較的容易であるが、鋼中の介在物・析出物などの場合は存在する化合物の種類も多く、粒径を狭幅化することは困難である。このような極めて広範囲に粒径分布を有する試料を測定対象とした場合には、上記従来技術では、光の散乱強度の原理に基づき大径側の粒子分布が強調されることになり、正確な分布の評価を行なう事は難しい。
そこで、本発明では、この2つの特長を活かしつつ、粒径分布が広い場合においても正確に粒径分布を測定する方法を検討した。
その結果、測定対象となる試料を分割し、分割した各々の試料の粒径分布を数段階に変化させることで、DLS法の特長を生かしつつ上記問題点を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
[1]測定対象粒子を媒体中に回収し、次いで、測定対象粒子が回収された前記媒体を複数に分割することで複数の試料を作製し、次いで、前記試料の粒径分布を各々測定し、前記測定結果を基に微粒子の粒径分布を求める微粒子の粒径分布測定方法であり、さらに、前記各試料の粒径分布測定結果が各試料毎に異なるように、各試料の粒径分布測定前に、あらかじめ、少なくとも1以上の試料に対して、異なる条件で分級操作を行うことを特徴とする微粒子の粒径分布測定方法。
[2]前記[1]において、前記分級操作は、各試料に対して異なるしきい値以下の微粒子を分離し回収する操作であることを特徴とする微粒子の粒径分布測定方法。
[3]前記[1]または[2]において、前記媒体が微粒子に対して分散性を有する液体であり、各試料の粒径分布を動的光散乱法により測定することを特徴とする粒径分布測定方法。
[4]前記[1]〜[3]のいずれかにおいて、微粒子の粒径分布を、各試料の平均粒径の差分と粒径算出のためにモニタしているプローブ光の散乱強度の差分の数値から求めることを特徴とする微粒子の粒径分布測定方法。
[5]前記[1]〜[4]のいずれかにおいて、前記分級操作をろ過法により行うことを特徴とする微粒子の粒径分布測定方法。
[6]前記[1]〜[5]のいずれかにおいて、前記分級操作を遠心分離法により行うことを特徴とする微粒子の粒径分布測定方法。
[7]前記[1]〜[6]のいずれかにおいて、前記測定対象粒子は鋼から抽出した析出物・介在物であることを特徴とする微粒子の粒径分布測定方法。
[8]前記[3]〜[6]のいずれかにおいて、前記分散性を有する溶液としてヘキサメタリン酸水溶液を用いることを特徴とする微粒子の粒径分布測定方法。
[9]前記[1]〜[8]のいずれかにおいて、測定対象粒子が回収された前記媒体を5個以上に分割することを特徴とする微粒子の粒径分布測定方法。
また、各段階での光強度の減衰分を利用することにより、その粒径範囲にある粒子からの散乱強度を独立に定量的に評価できるため、各粒径粒子の分布頻度に関する正確さが格段に向上する。
以上により、本発明では、粒径分布の幅によらず、あらゆる微粒子の粒径分布を精度良く分析することが可能となり、得られた測定結果をもとに材料の諸性質に関する知見が得られ、新材料の開発や工程管理に有益な情報が得られることになる。
本発明は、様々な形態の微粒子分析に適用することができ、特に、測定対象の微粒子粒径の最大粒径が最小粒径の10倍程度以上の広い領域にわたって粒径分布を持つ試料に対して好適に適用することができる。
(1)初めに、鋼材を適当な大きさに加工して、電解用試料とし、電解を行う。
(2)次に、電解操作により抽出した鋼中微粒子を、媒体中に回収する。この時、用いる媒体としては、粒子に対して溶解性が無く、かつ粒子が液中で凝集せずに分散した状態を保ち得る様な溶液(以下、分散性溶液)が好ましい。特に、粒径分布の評価を行なう場合には、粒子が溶解する液中では計測が行なえないし、凝集した場合も1次粒子に対する正しい評価がなされない。また、後述する分級操作に際しても、粒子が凝集体であっては粒径に応じた分離が出来ない為に操作を行う意味が無くなる。
いくつかの種類の介在物・析出物については、分散性を改善するための添加剤(分散剤)が経験的に知られており、例えば、ヘキサメタリン酸は、多くの無機微粒子に対して分散性改善の効果が報告されている。一般的な添加濃度としては0.2mass%前後が目安とされているが、過剰な添加はかえって分散効果の妨げになるため、粒子の性状や密度に応じて分散液の種類や濃度を適宜最適化する必要がある。特に分散性溶液の溶媒が水の場合には、粒子の表面電荷と分散性には密接な相関があるため、ゼータ電位計などを利用して粒子表面の電荷状態を把握し、最適な分散性溶液の条件を確定することが好ましい。
本発明では、各試料毎に異なる粒径分布測定結果を基に、測定対象粒子の粒径分布を求める。そのためには、複数の試料を準備した後に、これら各試料の粒径分布が異なるように、各試料に対して異なる条件で分級操作を行い、次いで、各試料の粒径分布を測定する。
このような操作により各試料により得られる粒径分布は、例えば、平均粒径が各試料により異なりその平均粒径の値は段階的に変化することになる。ここで、分割数、すなわち、分級により粒径分布が異なった試料の数(水準数)を多く設定するほど緻密な分布を算出できる。しかし、水準数が多いと詳細な分布状態を把握できるが、多くの時間を要することになるため、目的に応じて適切な水準数の設定を行なうことが必要である。精度の高い粒径分布を求める目的からは、最低3水準、可能であれば5水準以上の設定とすることが好ましい。
また、分割するのにあたり、各々の試料に対して充分な量が得られない場合には、(1)の電解操作から(2)の操作を数回繰り返して量を確保しても構わない。但し、分割後分級前の各試料に存在する粒子の状態は等しいことが必要であるため、分割前にこれらを混合・攪拌するなどして均一な微粒子分散液としておくことが望ましい。
なお、本発明のここでの分級操作とは、例えば、測定対象粒子中に含まれる大径粒子を除去して中径粒子を中心とする粒径分布に変更する操作であり、分割後の各試料中に含まれる粒子を粒子径により区別することを意味する。
以下は、一例として、遠心分離法を用いた分級操作により正確な粒径分布を求める方法について記載するが、本発明はこれに限定されず、例えば、分級の方法としてろ過法でも構わないし、それ以外の手段でも構わない。
遠心分離操作の時間を変えて分級操作を行なう。この時、分級後に行う粒径分布の測定において、各試料の測定結果が大粒径から小粒径へと平均粒径が段階的にずれていくように、遠心分離の操作時間を設定することが好ましい。
例えば、特に粒径が1μm以下の微細な粒子を粒径分布測定の対象とする場合には、ストークスの式をもとに、溶媒・粒子の密度と重力加速度から各粒径粒子の沈降速度が計算できるため、大まかな平均粒径の推移を推測できる。例えば、9000rpmの回転数で純水中にある比重5g/cm3、粒径0.1μmの粒子を遠心分離に供する場合、10分で60mm以上の移動度となるので、50mmのセルを用いた場合は全て沈降している状態となる。このように、粒子の大きさに合わせ、適切な回転数・時間およびセル形状の選定を行なうことが必要となる。勿論、必要があれば、初期状態として遠心分離操作を行なわない分割された試料があっても構わない。
なお、分布状態が全く予期できない試料の場合には、一度、大まかに沈降挙動を調査した後に、適切な遠心分離時間を再設定する手段もある。
粒径分布の方法は、特に限定されず通常の方法で測定することができる。例えば、平均粒径および散乱強度を測定することにより粒径分布を求めることができる。いずれかの手段により平均粒径と量の評価を行なった後、データ処理により分布状態を算出する。具体的には、例えば、遠心分離時間を5分の条件で分級操作を行った試料では平均粒径が60nmとなり、10分の条件で分級操作を行った試料では平均粒径が50nmとなったとする。この場合、これらの量の変化が50nm〜60nmの間に存在する粒径粒子からの寄与であると考えることができる。よって、これらの情報を元に、粒径範囲を横軸、量の変化を縦軸にプロットすることで、正確な粒径分布を算出することが可能となる。
表1、表2および図1には、この方法で算出した各分級水準の平均粒径・散乱強度の推移と、求めた粒径分布のイメージをそれぞれ示す。
なお、実際の計測時は検出できる光強度の最大値が100000cps程度である装置が一般的なため、計測器の光透過用フィルタの透過率や試料の希釈率から計算により正味の光強度を算出することが必要となる。但し、光の散乱強度は粒径の6乗に比例する性質を有するため、求めたい分布が体積分布や個数分布である場合には計算による補正が必要である。定量分析などで量(縦軸)の評価をする場合には、体積分布がダイレクトに算出されるが、個数分布を算出する際にはやはり再計算する必要がある。
散乱強度を測定できない場合や、更に量的な正確さが要求される場合には、分級後のスラリーを溶解した後、定量分析によって評価を行なっても良い。
なお、上記においては、まず、測定対象粒子が回収された前記媒体を複数に分割した後、各試料に対して分級操作を行い、各試料の粒径分布を測定している。しかし、これに限定されず、例えば、分級の手段や計測装置の構成によっては、初めに媒体を分割するのではなく、逐次的に分級・計測を繰り返す方法も考えられる。この場合でも、代表性確保の観点からは、常に分散液の均一性に留意する必要がある。
そして、本発明は新たな計測器やシステムを必要とせず、散乱強度と平均粒径の計測ができるシステムであれば適用することができるため、汎用的に利用できる。これにより、従来は評価の難しかった粒径分布幅の広い試料に関しても、通常の計測器を用いた評価が可能となる。
以上により得られた結果を図4に示す。また、比較例として、上記において、分割ならびに分級操作を行なわず、そのままの試料を粒径分布測定に用いた以外は、本発明例と同様に行った場合の測定結果も図4に併せて示す。
図4において、比較例では分布が1つのピークであるのに対し、本発明例での評価結果は2ピークの分布形状を示している。これは、従来法での評価では分布に関する測定精度が充分でないために、小径側のピークの存在を検知できていないことを示している。
また、図4に示す結果は散乱強度の分布であることから、実際の体積分布あるいは個数分布については40nm前後に現れる粒径粒子が支配的である。特に鉄鋼材料においては粒径が小さく、数的に多い析出物が重要な役割を果たす材料が多く、これらの正確な評価が不可欠である。この観点から、本法により正確な分布状態を把握することは極めて有益な情報をもたらすと考えられる。
Claims (9)
- 測定対象粒子を媒体中に回収し、次いで、測定対象粒子が回収された前記媒体を複数に分割することで複数の試料を作製し、次いで、前記試料の粒径分布を各々測定し、前記測定結果を基に微粒子の粒径分布を求める微粒子の粒径分布測定方法であり、さらに、前記各試料の粒径分布測定結果が各試料毎に異なるように、各試料の粒径分布測定前に、あらかじめ、少なくとも1以上の試料に対して、異なる条件で分級操作を行うことを特徴とする微粒子の粒径分布測定方法。
- 前記分級操作は、各試料に対して異なるしきい値以下の微粒子を分離し回収する操作であることを特徴とする請求項1に記載の微粒子の粒径分布測定方法。
- 前記媒体が微粒子に対して分散性を有する液体であり、各試料の粒径分布を動的光散乱法により測定することを特徴とする請求項1または2に記載の粒径分布測定方法。
- 微粒子の粒径分布を、各試料の平均粒径の差分と粒径算出のためにモニタしているプローブ光の散乱強度の差分の数値から求めることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の微粒子の粒径分布測定方法。
- 前記分級操作をろ過法により行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の微粒子の粒径分布測定方法。
- 前記分級操作を遠心分離法により行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の微粒子の粒径分布測定方法。
- 前記測定対象粒子は鋼から抽出した析出物・介在物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の微粒子の粒径分布測定方法。
- 前記分散性を有する溶液としてヘキサメタリン酸水溶液を用いることを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の微粒子の粒径分布測定方法。
- 測定対象粒子が回収された前記媒体を5個以上に分割することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の微粒子の粒径分布測定方法。
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