本発明は、セラミック部材の組立体に関し、特に、生産効率を高めるために大型化してきているガラス基板を製造工程内で支持して搬送するのに用いられるセラミック部材の組立体を有する搬送用部材に関する。
近年、生産効率を高めるために液晶テレビ(LCD),プラズマテレビ(PDP),ノートパソコンなどの平面ディスプレイ(FPD)を作るための主要な部材であるガラス基板の大型化が進んでいる。最近の第10世代と言われるガラス基板の寸法は2850mm×3050mmであり、この大型化したガラス基板を搬送する搬送用部材は、アームあるいはフォークと言われる細長い形状で、長さがガラス基板より長い必要がある。
そして、従来よりガラス基板の搬送用部材には、耐食性,耐熱性や剛性に優れるセラミック部材が用いられているが、3〜4mを超える長さのセラミック部材ともなると、セラミック原料から作製する成形体の成形後の乾燥や成形体を焼結体とするための焼成によって、形状が反ったり、表面あるいは内部に亀裂や破損が生じたりして製造効率が悪いため、1〜2mの比較的短いセラミック部材を複数本作製し、これらを締結部材により締結して組み立てたセラミック部材の組立体が用いられている。
図5は、従来のセラミック部材の組立体を示す、(a)は平面図であり、(b)は側面図であり、(c)は(a)のX−X’線での断面図である。
この図5に示すセラミック部材の組立体20は、ボルト24aおよびナット24bからなる締結部材24と、貫通孔25を有するセラミック部材22とにより構成され、ボルト24aを複数のセラミック部材22の貫通孔25に通してナット24bで締結されて組み立てられており、このような、セラミック部材の組立体20を複数用いて、セラミック部材22の図5(a)に示す面にガラス基板を載置して搬送するために用いられている。
このセラミック部材22の組立体20において、締結部材24と接触するセラミック部材22のエッジ部22aは、締結時にボルト24aの頭部およびナット24bから受ける押圧力によって欠けやすい部分となっている。また、このセラミック部材22の組立体20を重量物であるガラス基板の搬送用部材として用いた際には、組立体20にかかる応力とボルト24aの頭部およびナット24bから受ける押圧力とによって、セラミック部材22の貫通孔25の開口の近傍に亀裂や破損を生じやすいという問題があった。よって、この問題を解決するために、セラミック部材22と締結部材24との間に金属板を挟んで締結することが行なわれている。
図6は、従来のセラミック部材の組立体の他の例を示す、(a)は平面図であり、(b)は側面図であり、(c)は(a)のY−Y’線での断面図である。
このように、金属板30を挟んで組み立てられた従来のセラミック部材32の組立体30は、ボルト34aおよびナット34bからなる締結部材34と、貫通孔35を有するセラミック部材32と、貫通孔35と重なる孔33aを有する金属板33とにより構成され、金属板33の孔33aおよび複数のセラミック部材32の貫通孔35にボルト34aを通してナット34bで締結されて、複数のセラミック部材32が組立体30として組み立てられている。
また、特許文献1には、セラミック部材同士を締結する方法として、ボルトおよびナットからなる締結部材がセラミックス製であり、室温より高温で軟化する介在部材を締結部材に被装させ、その状態にて加熱軟化および冷却硬化の軟硬工程を経るセラミック部材の締結方法が提案されている。この締結方法を用いてセラミック部材同士を締結すれば、締結部に衝撃荷重が負荷されても締結部材に対して局部的な応力集中が生じることやボルトの溝の欠損などのおそれが解消され、結合強度が大きく向上するというものである。
特開昭59−190510号公報
しかしながら、図6に示すセラミック部材の組立体30および特許文献1の締結方法により締結されたセラミック部材は、図5に示すセラミック部材22をボルト24aおよびナット24bからなる締結部材24のみで締結したセラミック部材の組立体20に比べれば、ボルト34aの頭部およびナット34bとセラミック部材32とが直接接触しないように金属板33を挟んで締結、または硬化した介在部材を介在しているので、締結時にボルト34aの頭部およびナット34bから受ける押圧力によってこれら締結部材34と接触するセラミック部材32の貫通孔35aの開口の周囲のエッジ部32aは欠けにくくなる。また、このセラミック部材の組立体30を重量物であるガラス基板の搬送用部材として用いた際には、組立体30にかかる応力とボルト34aの頭部およびナット34bから受ける押圧力とによって、セラミック部材32の貫通孔35の開口の近傍に亀裂や破損が生じることを減らすことはできるものの、さらに十分に亀裂や破損が生じることを抑制した、長期間の使用に耐え得るセラミック部材の組立体およびこれを用いた搬送用部材が求められている。
本発明は、上記課題を解決すべく案出されたものであり、複数のセラミック部材を締結するときの締結部材から受ける押圧力によってセラミック部材の貫通孔の開口の周囲のエッジ部が欠けることの少ないセラミック部材の組立体、およびその組立体を有する、重量物であるガラス基板の搬送の際に、組立体にかかる応力と締結部材から受ける押圧力とによってセラミック部材の貫通孔の開口の近傍に亀裂や破損が生じたりすることが少ない搬送用部材を提供することを目的とする。
本発明のセラミック部材の組立体は、対応する貫通孔を重ねて配置された複数のセラミック部材と、該セラミック部材の表面に配置され、前記貫通孔と重なる孔を有する金属板と、前記孔および前記貫通孔に通されて頭部で前記金属板を押圧する締結部材とを有するセラミック部材の組立体であって、前記セラミック部材は、前記表面で前記貫通孔の開口が前記締結部材の前記頭部よりも大きくなっていることを特徴とするものである。
また、本発明のセラミック部材の組立体は、上記構成において、前記セラミック部材が前記貫通孔の途中に、前記貫通孔の径を大きくした、前記貫通孔と同軸の中空部を有していることを特徴とするものである。
また、本発明のセラミック部材の組立体は、上記いずれかの構成において、前記貫通孔が前記セラミック部材に複数並んでおり、前記貫通孔間で連続する前記開口を有していることを特徴とするものである。
また、本発明の搬送用部材は、上記いずれかの構成のセラミック部材の組立体を有することを特徴とするものである。
また、本発明の搬送用部材は、上記構成において、前記セラミック部材の間に支持部材を挟んでいることを特徴とするものである。
本発明のセラミック部材の組立体によれば、対応する貫通孔を重ねて配置された複数のセラミック部材と、このセラミック部材の表面に配置され、貫通孔と重なる孔を有する金属板と、それら孔および貫通孔に通されて頭部で金属板を押圧する締結部材とを有するセラミック部材の組立体であって、セラミック部材は、表面で貫通孔の開口が締結部材の頭部よりも大きくなっていることにより、締結時に締結部材からセラミック部材が受ける押圧力は、セラミック部材の貫通孔の開口以外の金属板と接する面にかかり、金属板が撓むことによって締結部材からセラミック部材が受ける押圧力が貫通孔の開口の周辺に分散されるため、セラミック部材の貫通孔の開口の周囲のエッジ部にかかる応力を低減させることができるので、セラミック部材のエッジ部を欠かすことなく複数のセラミック部材を良好に締結して組み立てた状態を維持することができる。
また、本発明のセラミック部材の組立体によれば、セラミック部材が貫通孔の途中に、貫通孔の径を大きくした、貫通孔と同軸の中空部を有しているときには、強度を大きく低下させることなくセラミック部材の組立体の軽量化を図ることができる。
また、本発明のセラミック部材の組立体によれば、貫通孔がセラミック部材に複数並んでおり、これら貫通孔間で連続する開口を有しているときには、セラミック部材の強度を大きく低下させることなく、貫通孔の開口が締結部材の頭部よりも大きくなるように研削加工する時間を個々の貫通孔ごとに加工する場合よりも短縮することができるものとなる。また、これら貫通孔および開口がセラミック部材の長さ方向に配置されていれば、セラミック部材の長さ方向に垂直な断面形状が同じであるものとなることから、押出成形法にて成形することができるので、貫通孔の開口を締結部材の頭部よりも大きく形成するために研削加工を施す必要がないものとすることができ、製造コストを低下させることができる。
また、本発明の搬送用部材によれば、本発明のセラミック部材の組立体を有することから、セラミック部材の貫通孔の開口の近傍に亀裂や破損が生じることを抑制することができる。
また、本発明の搬送用部材によれば、セラミック部材の間に支持部材を挟んでいるときには、支持部材との組合せによって種々の仕様に対応することができるとともに、重量物であるガラス基板を搬送した際に、組立体にかかる応力と締結部材から受ける押圧力とによってセラミック部材の貫通孔の開口の近傍に亀裂や破損が生じることを抑制し、長期間の使用に耐え得る搬送用部材とすることができる。
以下、本発明のセラミック部材の組立体の実施の形態の例について図面を用いて説明する。
図1は、本発明のセラミック部材の組立体の実施の形態の一例を示す、(a)は平面図であり、(b)は側面図であり、(c)は(a)のA−A’線での断面図である。
図1(a)〜(c)に示すように、本発明のセラミック部材の組立体1は、ボルト4aおよびナット4bからなる締結部材4と、貫通孔5および開口6を有する、対応する貫通孔5を重ねて配置された複数のセラミック部材2と、貫通孔5と重なる孔3aを有する金属板3とにより構成され、金属板3の孔3aおよび複数のセラミック部材2の対応する貫通孔5に締結部材4のボルト4aを通してナット4bで締結されて組み立てられている。このとき、セラミック部材2の表面の貫通孔5の開口6が締結部材4の頭部よりも大きくなっていることが重要である。なお、締結部材4の頭部とは、ボルト4aの頭部およびナット4bのことをいう。
このように、貫通孔5の開口6が締結部材4の頭部、即ちボルト4aの頭部およびナット4bよりも大きくなっていることにより、ボルト4aの頭部およびナット4bと金属板3とが接触している部分に相当するセラミック部材2に向かい合う金属板3の面は、セラミック部材2と接していない。
そのため、締結時にボルト4aの頭部およびナット4bから受ける押圧力は、貫通孔5の開口6を除くセラミック部材2が金属板3と接する面にかかることとなり、金属板3が開口6の内側で撓むことによってボルト4aの頭部およびナット4bから受ける押圧力がセラミック部材2の開口6の周辺に分散されるため、セラミック部材2の貫通孔5の開口6の周囲のエッジ部2aにかかる応力を低減させることができるので、セラミック部材2のエッジ部2aを欠かせることなく複数のセラミック部材2を良好に締結して組み立てることができる。ここで、セラミック部材2のエッジ部2aは、エッジ部2aにかかる応力をより低減させることができる点で、C面やR面などに面取り加工が施されていることが好ましい。
また、本発明のセラミック部材の組立体1に用いられるセラミック部材2の材質としては、アルミナ,イットリア,YAG(イットリウム−アルミニウム−ガーネット),ジルコニア,コージェライト,ムライト,窒化珪素や炭化珪素などのセラミックス、あるいはこれらセラミックスのうちの2種以上からなる複合体を用いることが可能である。また、本発明のセラミック部材の組立体1は、同じ材質のセラミック部材2を用いて組み立てたものでもよく、異なる材質のセラミック部材2を用いて組み立てたものでもよい。
また、本発明のセラミック部材の組立体1に用いられる金属板3の材質としては、あらゆる金属材料を適用可能と考えられるが、締結部材4から押圧力を受けた際に剛性が高く過度に撓みにくいものを用いるのが好適であり、この観点から、ステンレス鋼(SUS),炭素工具鋼(SK),合金工具鋼(SKD)を用いるのがよい。
また、本発明のセラミック部材の組立体1に用いられる締結部材4は、頭部の最大径が開口6より小さく、頭部を除く部分の径の大きさが貫通孔5および金属板3の孔3aの内径よりも小さく、頭部を除く部分の長さが複数のセラミック部材2を両側に金属板3を配して締結可能な長さを有するボルト4aと、頭部の最大径が開口6より小さいナット4bとを用いる。
図2は、本発明のセラミック部材の組立体の実施の形態の他の例を示す、(a)は平面図であり、(b)は側面図であり、(c)は(a)のB−B’線での断面図である。
図2に示す本発明のセラミック部材の組立体1は、セラミック部材2が、貫通孔5の途中に、貫通孔5の径を大きくした、貫通孔5と同軸の中空部7を有しており、中空部7の周囲には、中実部分であるいわゆるリブ8を有している。このような構造とすることにより、強度を大きく低下させることなくセラミック部材の組立体1の軽量化を図ることができる。このとき、中空部7を有していることにより、その大きさによってはセラミック部材2の貫通孔5付近での強度低下が懸念されるが、締結時の締結部材4から受ける押圧力によって金属板3を介してセラミック部材2の表面にかかる応力は、貫通孔5に平行な中実部分であるリブ8にかかることとなり、リブ8は中実であることから十分な強度を有しているので、リブ8に亀裂が入り、その亀裂が起因となってセラミック部材2が破損するおそれは少ない。
この貫通孔5の途中に設けられた中空部7は、貫通孔5のそれぞれに貫通孔5の径を大きくして同軸の円柱状に形成されたものの他に、並んでいる貫通孔5間にわたって連続して形成された、貫通孔5の断面で見て、貫通孔5の径を大きくした、貫通孔5と同軸の中空部と見なせるものであってもよい。
図3は、本発明のセラミック部材の組立体のセラミック部材の表面に形成される開口の実施の形態の複数の例を示す、(a)および(b)は平面図であり、(c)および(d)は平面図および断面図である。
図3(a)および(b)に示す例ではセラミック部材2の表面に四角形または円形の開口6を貫通孔5ごとに形成してあり、(c)に示す例ではセラミック部材2の表面に幅方向に並んでいる2つの貫通孔5に対応する四角形の開口6が形成してあり、(d)に示す例ではセラミック部材2の表面に開口6が長さ方向に先端と後端との貫通孔5間で連続して形成してある。図3(a)〜(d)に示す例のセラミック部材2の構造を比較すると、金属板3との接触部を図中に波線を施して示すように、隣接する貫通孔5の間に金属板3との接触面を有する図3(a),(b)および(d)に示す例では、締結時の締結部材4から受けるよりも大きな押圧力に耐えることができる。また、図3(a)に示す例の四角形の開口6よりも図3(b)に示す例の円形の開口6の方が成形しやすく、金属板3を介して伝えられる押圧力をセラミック部材2の開口6の周囲の環状のエッジ部2aで均一に受けることができるので、エッジ部2aが欠けにくいものとなる点で好ましい。図3(c)に示す例では、並んでいる貫通孔5間で開口6が連続していることから開口6の面積が大きくなっており、締結時の締結部材4から受ける押圧力によってこの開口6を覆うように配置されている金属板3が撓みやすいものの、過度に撓まないようにするには剛性の高い金属板3を用いればよく、並んでいる貫通孔5間で開口6が連続していない図3(a)および(b)に示す例のセラミック部材2よりも研削加工の時間を短縮することができる。また、図3(d)に示す例のように、貫通孔5がセラミック部材2の長さ方向に複数並んでおり、これら貫通孔5間で連続する開口6を有しているときには、図3(d)に並べて示しているD−D’線での断面図に示すようにセラミック部材2の長さ方向に垂直な断面形状が同じであることから、押出方向に同じ断面形状を有する押出成形法にて成形することができ、押出成形法によって成形する場合には、図3(a)〜(c)に示す例のセラミック部材2に対して必要なように製造コストを大幅に増加させる研削加工を施して表面に開口6を形成する必要がない。そのため、セラミック部材2を締結時の締結部材4から受ける押圧力に耐えるものとしつつ製造コストを低下させるには、押出成形法を用いて成形することが好ましい。また、押出成形法を用いれば、貫通孔5の途中に断面で見ると貫通孔5と同軸で径を大きくしたものとみなせる中空部7を同時に形成することができるので、強度を大きく低下させることなく軽量化も図れて好適である。
次に、本発明のセラミック部材の組立体1を含む本発明の搬送用部材の実施の形態の例について説明する。
図4は、本発明の搬送用部材の実施の形態の一例を示す、(a)は平面図であり、(b)はE−E’線での断面図である。
本例の搬送用部材10は、セラミック部材の組立体1のセラミック部材2の間に挟まれた支持部材9を含む、即ちセラミック部材2の間に支持部材9を配置して、金属板3の孔3a,支持部材9の貫通孔9aおよびセラミック部材2の貫通孔5に締結部材4のボルト4aを通してナット4bで締結されて組み立てられていることから、支持部材9の締結部材4の方向の長さを搬送物の大きさに合わせて調整することにより、小型から大型まで様々な大きさの搬送物を積載することができる。
なお、図4に示す例の搬送用部材10ではセラミック部材2の間に支持部材9を挟んで構成されているが、支持部材9は搬送用部材10として必ずしも必要なものではなく、支持部材9を用いないでセラミック部材2同士を直接重ねて構成したものであってもよいことは言うまでもない。
本発明の搬送用部材10によれば、支持部材9を配していない例と同様に、重量物であるガラス基板を搬送した際に、組立体1にかかる応力とボルト4aの頭部およびナット4bから受ける押圧力とによって、セラミック部材2の貫通孔5の開口6の近傍に亀裂や破損が生じることを抑制することができるので、長期間の使用に耐え得る搬送用部材10とすることができる。なお、セラミック部材2の間に支持部材9を配置して組み立てられている搬送用部材10は、図4(a)における上下方向が使用時には左右方向とされ、セラミック部材2および支持部材9の図4(a)に示す面が載置面となるように用いられる。
そして、支持部材9は、金属およびセラミックスのどちらの材質も適用可能であるが、搬送用部材10の軽量化や搬送物を積載したままで加熱処理を可能とできる耐熱性を考慮するとセラミックス製とするのが好ましい。なお、本発明の搬送用部材10の実施の形態の一例として、図4においては2本のセラミック部材2の間に支持部材9を配置して組み立てた例を示したが、本発明の搬送用部材はこの内容に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内であれば種々変更してもよいことは言うまでもない。上述のように支持部材9を用いないものであってもよく、また例えば、3本を並べて配置されたセラミック部材2のそれぞれの間に支持部材9を配置して組み立てて搬送用部材としたり、長い支持部材9をセラミック部材2の間に配置して長尺の搬送物に対応した搬送用部材としたりすることも可能である。また、図1や図2に示したセラミック部材の組立体1を複数用いて搬送用部材を構成しても基板の搬送を行なうことは可能である。
次に、本発明のセラミック部材の組立体1の製造方法について以下に説明する。
まず、セラミック部材2は、純度が90%以上であり平均粒径が1μm程のセラミック原料を用意し、これに焼結助剤,バインダ,溶媒および分散剤等を所定量添加してスラリーとした後、これを噴霧造粒法(スプレードライ法)により造粒し、2次原料とする。そして、この2次原料を所定形状のゴム型内へ投入し、静水圧プレス成形法(ラバープレス法)により成形し、その後、成形体をゴム型から取り外して所定形状となるように切削加工を施す。次に、焼成炉に入れて所定温度で焼成し、得られた焼結体に研削加工を施して貫通孔5および開口6を設けることによりセラミック部材2を得る。
また、セラミック部材2の他の製造方法としては、純度が90%以上であり平均粒径が1μm程のセラミック原料を用意し、これに所定量の焼結助剤,バインダおよび溶媒を添加して攪拌混合機で混合・撹拌する。さらに、ニーダーで混練して坏土を得た後、この坏土を所定形状に押出可能な金型を取り付けた押出成形機を用いて押出成形する。このように、所定形状の金型を取り付けて押し出して成形することによって、貫通孔5の断面において貫通孔5の途中に貫通孔5の径を大きくした同軸の中空部7とみなせる中空部を有するものとすることや、成形体に切削加工を施して開口6を設けることなく、セラミック部材2の表面に並んでいる貫通孔5間で連続する開口6を設けることができる。
次に、金属板3については、剛性が高く撓みにくい金属の板材から所定形状に切り出し、ボール盤を用いてセラミック部材2に設けた貫通孔5と同じ内径の孔3aを開ける加工を施す。孔3aは、あるいはパンチング加工によって開けてもよい。また、締結部材4として、頭部の最大径が開口6より小さく、頭部を除く部分の径の大きさが貫通孔5および金属板3の孔3aの内径よりも小さく、頭部を除く部分の長さが複数のセラミック部材2を両側に金属板3を配して締結可能な長さを有するボルト4aと、頭部の最大径が開口6より小さいナット4bとを用意する。
そして、複数のセラミック部材2を対応する貫通孔5が重なるように並べて、次に、貫通孔5と金属板3の孔3aとが重なるように金属板3を配置し、孔3aおよび貫通孔5にボルト4aを通して、締結部材4であるボルト4aとナット4bとにより締結することによって、本発明のセラミック部材の組立体1を得ることができる。
このようにして得られた本発明のセラミック部材の組立体1は、対応する貫通孔5を有し、それら対応する貫通孔5を重ねて配置されたセラミック部材2と、このセラミック部材2の表面に配置され、貫通孔5と重なる孔3aを有する金属板3と、孔3aおよび貫通孔5に通されて頭部で金属板3を押圧する締結部材4とを有し、セラミック部材2の表面で貫通孔5の開口6が締結部材4の頭部よりも大きくなっていることから、締結部材4であるボルト4aの頭部およびナット4bと金属板3とが接触している部分に相当するセラミック部材2に向かい合う金属板3の面は、セラミック部材2と接することがない。そのため、締結時にボルト4aの頭部およびナット4bから受ける押圧力は、貫通孔5の開口6を除くセラミック部材2が金属板3と接する面(開口6の周辺の面)にかかり、金属板3が適度に撓むことによってボルト4aの頭部およびナット4bから受ける押圧力がセラミック部材2の貫通孔5の開口6の周辺に分散されるため、セラミック部材2の開口6の周囲のエッジ部2aにかかる応力を低減させることができるので、セラミック部材2のエッジ部2aからの亀裂や破損を発生させることなく複数のセラミック部材2を良好に締結して組み立てることができる。
以下、本発明の実施例について詳細を説明する。
(実施例1)
図1に示す例のセラミック部材の組立体1を製造し、締結時の締結部材4から受ける押圧力によるセラミック部材2の貫通孔5の開口6の周囲のエッジ部2aにおける欠けの有無について確認を行なった。
まず、純度が95%であり,平均粒径が1μmの市販のアルミナ1次原料を用意し、この1次原料100質量%に対して、Ca,Si,Mgの酸化物からなる焼結助剤を1〜5質量%と、PVA等のバインダを1〜1.5質量%と、溶媒を100質量%と、分散剤を0.5質量%としてそれぞれ計量し、攪拌機の容器内に入れて混合・攪拌してスラリーとした後、これを噴霧造粒法(スプレードライ法)により造粒して、2次原料を得た。そして、この2次原料を所定形状のゴム型内へ投入し、静水圧プレス成形法(ラバープレス法)により成形し、その後、成形体をゴム型から取り外して、所定形状となるように切削加工を施した。次に、この切削加工を施した成形体を焼成炉に入れて、大気雰囲気中で1680℃の焼成温度で焼成した。
焼成後、組立体1を構成する複数のセラミック部材2に、金属板3と接する表面の先端と後端となる部分(重ねて配置されたセラミック部材2の両側の表面となる部分)に、直径が40mmで深さが3mmの円形の開口6と、円形の開口6の中心に内径が13mmの貫通孔5とを設ける研削加工を施した。なお、複数のセラミック部材2を締結したときの重なる部分の長さが50mmとなるようにして、それぞれのセラミック部材2の先端または後端からの距離が25mmであり、側面の上部および下部からの距離が25mmの位置を中心として、開口6および貫通孔5を形成する研削加工を行なうことにより、長さが1500mmで長さ方向に垂直な断面が一辺が50mmの正方形のアルミナ質焼結体からなるセラミック部材2を得た。
次に、ステンレス鋼の板材から厚みが3mmで一辺が50mmの正方形の板を切り出し、これにボール盤を用いてセラミック部材2の貫通孔5と同様の内径が13mmの孔3aを板の中央に開ける加工を施して、金属板3を得た。
次に、締結部材4として、頭部の厚みが10mmであり、頭部を除く部分の長さが120mmであり、頭部の最大径が21.9mmであるM12の六角ボルト4aと、厚みが10mmであり、頭部の最大径が21.9mmであるM12の六角ナット4bとを用意した。そして、上記の製造方法にて作製したセラミック部材2を3本と、金属板3を4枚と、2組の締結部材4とを用い、これらを図1に示すように組み立てて、本発明のセラミック部材の組立体1の実施例を得た。
次に、比較例として、図6に示す従来のセラミック部材の組立体を作製した。この作製方法は、セラミック部材2に開口6を設けないこと以外は、本発明のセラミック部材の組立体1と同様の方法および同様の部材を用いて行なった。
そして、本発明の実施例のセラミック部材の組立体1および比較例のセラミック部材の組立体を用いて、ナット4bから突出しているボルト4aの長さが同じになるように確認しながら、締結部材4による押圧力を増すために増し締めを行ない、その後、ボルト4aを緩めて金属板3を外して、本発明のセラミック部材の組立体1の構成部材であるセラミック部材2の貫通孔5の開口6の周囲のエッジ部2aおよび比較例のセラミック部材の組立体の構成部材であるセラミック部材の貫通孔の周囲のエッジ部における欠けの有無の確認を行なった。なお、この評価試験においては、いずれかに欠けが確認されるまで、「組み立て」、「増し締め」、「欠けの有無の確認」を繰り返し行なった。
その結果、比較例のセラミック部材の組立体の方が先にセラミック部材のエッジ部に欠けが確認された。これにより、本発明の実施例のセラミック部材の組立体1は、対応する貫通孔5を重ねて配置された複数のセラミック部材2と、このセラミック部材2の表面に配置され、貫通孔5と重なる孔3aを有する金属板3と、孔3aおよび貫通孔5に通されて頭部で金属板3を押圧する締結部材4とを有するセラミック部材2の組立体であって、セラミック部材2は、表面で貫通孔5の開口6が締結部材4の頭部よりも大きくなっていることにより、締結時に締結部材4から受ける押圧力は、貫通孔5の開口6を除くセラミック部材2が金属板3と接する面にかかり、金属板3が適度に撓むことによって締結部材4から受ける押圧力が貫通孔5の開口6の周辺に分散されるため、開口6の周囲のエッジ部2aにかかる応力を低減させることができるので、セラミック部材2の貫通孔5の開口6の周囲のエッジ部2aから亀裂や破損を発生させることなく、複数のセラミック部材2を良好に締結して組み立てることができることが確認された。
(実施例2)
次に、図2に示す例の本発明のセラミック部材の組立体1を製造し、セラミック部材2のリブ8の部分における亀裂の有無について確認を行なった。
まず、実施例1で用いた、純度が95%以上であり、平均粒径が1μmの市販のアルミナ1次原料を用意し、この1次原料100質量%に対して、Ca,Si,Mgの酸化物からなる焼結助剤を1〜5質量%と、メチルセルロース等のバインダを5〜10質量%と、溶媒を15質量%としてそれぞれ計量し、攪拌機の容器内に入れて混合・攪拌した後、さらにニーダーで混練して押出成形用の坏土を得た。次に、この坏土を所定形状に押し出し可能な金型を取り付けた押出成形機を用いて成形し、成形体を得た。そして、この成形体を焼成炉に入れて、大気雰囲気中で1680℃の焼成温度で焼成した。
焼成後に、上述のように開口6および貫通孔5を設ける研削加工を施し、長さが1500mmで高さが50mmで幅が140mmの複数のセラミック部材2を得た。なお、このセラミック部材2は、図2(c)の断面図に示すように、縦が20mmで横が40mmの2つの中空部7を有し、中空部7同士の間に厚みが20mmのリブ8を有しているものとした。また、セラミック部材2の金属板3と接する表面の先端および後端となる部分に、一辺が40mmの正方形で深さが3mmの開口6と、内径が13mmの貫通孔5とをそれぞれ2箇所ずつ設け、複数のセラミック部材2を締結したときの重なる部分が50mmとなるように、セラミック部材2の先端または後端からの距離が25mmであり、セラミック部材2の幅側の端面からの距離が35mmの位置を中心として、開口6および貫通孔5の研削加工が施されているものとした。
次に、金属板3については、ステレンレス鋼の板材から厚みが3mmで縦が50mmで横が140mmの長方形の板を切り出し、ボール盤を用いてセラミック部材2の貫通孔5と重なる内径が13mmの孔3aを板の2箇所に開ける加工を施して、金属板3を得た。さらに、締結部材4については、実施例1と同様の六角ボルト4aおよびナット4bを用意した。
そして、上述の製造方法にて作製したセラミック部材2を3本と、金属板3を4枚と、4組の締結部材4とを用いて、図2に示すように組み立てて、本発明の実施例のセラミック部材の組立体1を得た。
次に、セラミック部材2が中空部7を有していない、即ち中実体であること以外は、上述と同様の方法および同様の部材を用いてセラミック部材の組立体1を作製した。なお、このセラミック部材の組立体1も本発明の範囲内のものであるが、識別するために、中空のセラミック部材の組立体1および中実のセラミック部材の組立体1とした。
そして、これらのセラミック部材の組立体1を片持ち支持の形で固定し、それぞれのセラミック部材の組立体1の上に50kgの荷重をかけた。その結果、いずれのセラミック部材の組立体1も破損することはなかった。その後、ボルト4aを緩めて金属板3を外し、中空のセラミック部材の組立体1のリブ8を確認するためにセラミック部材2を切断したが、リブ8に亀裂は確認されなかった。
これにより、中空のセラミック部材の組立体1は、リブ8に亀裂も見られず、中実のセラミック部材の組立体1と同様の荷重に耐えることができ、強度を低下させることなく中空であることから、軽量化できているので搬送装置等の駆動にかかる負荷を小さくできることが確認された。
(実施例3)
次に、図4に示す本発明の搬送用部材10を製造して、組み立て後および荷重負荷後のセラミック部材2の貫通孔5の開口6の近傍における亀裂や破損の有無について確認を行なった。
まず、搬送用部材10に用いるセラミック部材2を、実施例2と同様の坏土を用いて、図4(b)に示すセラミック部材2を得ることのできる断面形状の金型を備えた押出成形機を用いて成形し、成形体を得た。そして、この成形体を焼成炉に入れて、大気雰囲気中で1680℃の焼成温度で焼成し、焼成後に開口6および貫通孔5を設ける研削加工を施して、長さが5000mmで高さが50mmで幅が140mmであり、内部に縦が20mmで横が40mmの2つの中空部7を有し、中空部7同士の間に20mmのリブを有した長尺のセラミック部材2を得た。なお、長尺のセラミック部材2の金属板3と接する面は、長さ方向の先端から後端まで連続する幅が40mmで深さが3mmの開口6を有し、先端から1000mm,2500mmおよび4000mmの位置にそれぞれ内径が13mmの貫通孔5を2箇所ずつ設けてあるものとした。
次に、セラミック部材2と同様の坏土を用いて、支持部材9を作製した。この支持部材9の作製においては、押出成形機で押し出し成形し、成形体を得た後、所定の長さで切断した。そして、この成形体を焼成炉に入れて、大気雰囲気中で1680℃の焼成温度で焼成し、焼成後に貫通孔9aを設ける研削加工を施した。得られた支持部材9は、縦が60mmで横が140mmで高さが40mmであり、セラミック部材2の貫通孔5と重なるように、高さ方向を貫く内径が13mmの貫通孔9aを2箇所ずつ設けてあるものとした。
次に、金属板3については、ステレンレス鋼の板材から厚みが3mmで縦が50mmで横が150mmの板を切り出し、ボール盤を用いてセラミック部材2の貫通孔5と重なる内径が13mmの孔3aを板の2箇所に開ける加工を施して、金属板3を得た。さらに、締結部材4については、頭部を除く部分の長さが160mmであること以外は実施例1と同様の六角ボルト4aおよびナット4bを用意した。
そして、上述の製造方法にて作製したセラミック部材2を2本と、支持部材9を3個と、金属板3を8枚と、8組の締結部材4とを用いて、図4に示すように組み立てて、本発明のセラミック部材の組立体1からなる実施例の搬送用部材10を得た。
次に、セラミック部材2に開口6を設けないこと以外は同様の方法および同様の部材を用いて、比較例の搬送用部材を作製した。
そして、本発明の実施例の搬送用部材10および比較例の搬送用部材についてそれぞれの一端を片持ち支持の形で固定し、本発明の実施例の搬送用部材10および比較例の搬送用部材の上の中央部にそれぞれ100kgの荷重をかけた。その後、ボルト4aを緩めて金属板3を外して荷重を外し、本発明の実施例の搬送用部材10の構成部材であるセラミック部材2および比較例の搬送用部材の構成部材であるセラミック部材の貫通孔の開口の近傍の亀裂や破損の確認を行なった。
その結果、比較例の搬送用部材の構成部材であるセラミック部材の貫通孔の開口の近傍には亀裂が確認されたものの、本発明の実施例の搬送用部材10の構成部材であるセラミック部材2の貫通孔5の開口6の近傍には亀裂や破損は生じていなかった。
この結果より、本発明の搬送用部材10は、セラミック部材の組立体1に支持部材9を含み、即ちセラミック部材2の間に支持部材9を挟んで組み立てられていることから、重量物であるガラス基板を搬送した際に、組立体1にかかる応力とボルト4aの頭部およびナット4bから受ける押圧力とによって、セラミック部材2の貫通孔5の開口6の近傍に亀裂や破損が生じることを抑制することができ、長期間の使用に耐え得る搬送用部材10とできることが確認された。
本発明のセラミック部材の組立体の実施の形態の一例を示す、(a)は平面図であり、(b)は側面図であり、(c)は(a)のA−A’線での断面図である。
本発明のセラミック部材の組立体の実施の形態の他の例を示す、(a)は平面図であり、(b)は側面図であり、(c)は(a)のB−B’線での断面図である。
本発明のセラミック部材の組立体のセラミック部材の表面に形成される開口の実施の形態の複数の例を示す、(a)および(b)は平面図であり、(c)および(d)は平面図および断面図である。
本発明の搬送用部材の実施の形態の一例を示す、(a)は平面図であり、(b)はE−E’線での断面図である。
従来のセラミック部材の組立体を示す、(a)は平面図であり、(b)は側面図であり、(c)は(a)のX−X’線での断面図である。
従来のセラミック部材の組立体の他の例を示す、(a)は平面図であり、(b)は側面図であり、(c)は(a)のY−Y’線での断面図である。
符号の説明
1:セラミック部材の組立体
2:セラミック部材
3:金属板
4:締結部材
4a:ボルト
4b:ナット
5:貫通孔
6:開口
7:中空部
8:リブ
9:支持部材
10:搬送用部材