JP2010125960A - 車両用スタビライザシステム - Google Patents

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Abstract

【課題】 ロール抑制制御非実行時に、路面入力によってアクチュエータが動作させられることによる悪影響を防止若しくは軽減可能な車両用スタビライザシステムを提供する。
【解決手段】 スタビライザバーと、動力源となる電磁モータを有してそのスタビライザバーの捩れ量を変更するアクチュエータと、そのアクチュエータを制御することでロール抑制制御を実行する制御装置とを備えた車両用スタビライザシステムであって、その制御装置が、ロール抑制制御(S8)が実行されていない場合において、路面入力によるアクチュエータの動作の速度が設定速度を超えたときに(S11)、電磁モータの作動モードを、電磁モータのそれに生じる起電力に依拠する動作抵抗が小さい小動作抵抗モード(S12)から、その動作抵抗が大きい大動作抵抗モード(S13)に切り換える。アクチュエータの動作音が防止若しくは軽減される。
【選択図】 図7

Description

本発明は、車体のロールを抑制するための車両用スタビライザシステムに関する。
近年、アクチュエータを用いて車体のロールをアクティブに抑制するシステムの開発が進み、一部の車両では、既に搭載されるに至っている。このような車両用スタビライザシステムでは、アクチュエータの作動を制御するための条件を定め、その条件を充足した場合に、アクチュエータの制御によって車体のロールを抑制することも検討されており、例えば、下記特許文献に記載のシステムでは、操舵角が所定値以上となった場合に、アクチュエータの制御を実行するようにされている。
特開平6−270638号公報
上記条件を充足しない場合には、車体のロールを抑制するためのアクティブな制御はされないが、路面の起伏等に起因する車輪の上下動、つまり、路面入力によって、アクチュエータが動作させられる場合がある。その場合に、そのアクチュエータの動作が、車両の乗り心地等に悪影響を与える虞がある。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、制御されていない状態でアクチュエータが動作させられることによる悪影響を防止若しくは軽減可能な車両用スタビライザシステムを提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明の車両用スタビライザシステムは、スタビライザバーと、動力源となる電磁モータを有してそのスタビライザバーの捩れ量を変更するアクチュエータと、そのアクチュエータを制御することでロール抑制制御を実行する制御装置とを備えた車両用スタビライザシステムであって、その制御装置が、ロール抑制制御が実行されていない場合において、路面入力による前記アクチュエータの動作の速度が設定速度を超えたときに、前記電磁モータの作動モードを、前記電磁モータのそれに生じる起電力に依拠する動作抵抗が小さい小動作抵抗モードから、その動作抵抗が大きい大動作抵抗モードに切り換えるモータ作動モード切換制御を実行することを特徴とする。
後に詳しく説明するが、ロール抑制制御が実行されていない状態において路面入力によってアクチュエータが動作させられた場合、電磁モータの動作抵抗が小さい状態では、アクチュエータが高速で動作させられ易く、その高速動作の際、アクチュエータの動作音が大きくなってしまう。その動作音は、乗員に対して耳障りであることが多く、車両の乗り心地が悪化させる一因となる。本発明の車両用スタビライザシステムでは、上記モータ作動モード切換制御によって、アクチュエータの動作が速い場合に、その動作が減速させられることになり、耳障りな動作音を低減若しくは防止することが可能となり、その結果、当該システムを搭載した車両の乗り心地に与える悪影響を防止若しくは軽減することが可能となる。
発明の態様
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から何某かの構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
なお、下記(1)項は、請求可能発明の前提となる態様を示す項であり、(1)項を引用する(2)項以下の項が、請求可能発明の態様を示す項となる。ちなみに、(1)項,(4)項,(8)項,(9)項を合わせたものが、請求項1に、相当し、請求項1に(3)項の技術的特徴による限定を加えたものが、請求項2に、請求項1または請求項2に(10)項の技術的特徴による限定を加えたものが、請求項3に、請求項1ないし請求項3のいずれか1つに(11)項の技術的特徴による限定を加えたものが、請求項4に、請求項1ないし請求項4のいずれか1つに(16)項の技術的特徴による限定を加えたものが、請求項5に、請求項5に(18)項の技術的特徴による限定を加えたものが、請求項6に、それぞれ相当する。
(1)車体のロールによって捩られるとともに、捩れ量に応じた大きさの捩り反力をロール抑制力として車体に作用させるスタビライザーバーと、
駆動源となる電磁モータを有し、自身の動作によって前記スタビライザーバーの捩れ量を変更するアクチュエータと、
そのアクチュエータを制御する制御装置と
を備えた車両用スタビライザシステムであって、
前記制御装置が、
設定条件を充足した場合に、前記スタビライザーバーの捩り反力が車両旋回に起因して車体が受けるロールモーメントに応じた大きさとなるように前記アクチュエータを制御するロール抑制制御を実行するように構成された車両用スタビライザシステム。
本項に記載の車両用スタビライザシステムは、先に述べたように、請求可能発明の前提となる態様であり、請求可能発明の車両用スタビライザシステムが備えるべき基本的な構成要素を列挙した項である。ちなみに、本項に記載のシステムは、スタビライザバーの剛性、言い換えれば、車体のロール剛性を、アクティブに変更できるシステムであり、いわゆるアクティブスタビライザシステムと呼ばれるシステムである。
本項の車両用スタビライザシステムは、それの具体的な構成が限定されるものではない。特に、「スタビライザバー」と「アクチュエータ」とを含んで「スタビライザ装置」が構成されているとした場合に、そのスタビライザ装置の具体的な構成が限定されるものではない。例えば、後に説明するように、スタビライザバーを、従来から存在するスタビライザバーを中間部で2つに分割して1対のスタビライザバー部材からなるように構成し、アクチュエータが、それら1対のスタビライザバー部材を相対回転させることでそのスタビライザバーの捩れ量を変更するような構成とすることができる。また、例えば、スタビライザバーの一方の端部と、左右の車輪の一方を保持する車輪保持部材との間に、アクチュエータを配置し、その一方の端部とその車輪保持部材との間隔を変更することで、そのスタビライザバーの捩れ量を変更するような構成とすることもできる。
「ロール抑制制御」は、当該スタビライザシステムの基本となる制御であり、ロール剛性を変更すべく、いわゆるスタビライザバーの剛性、詳しく言えば、見かけ上の剛性を変更する制御と考えることができる。例えば、車両の旋回に起因して車体が受けるロールモーメント(以下、本明細書では、断りのない限り、「ロールモーメント」という文言は、そのロールモーメントのことを意味する)が大きい場合に、あたかもスタビライザバーの剛性が高くされたような状態を実現するような制御とすることができる。
ロール抑制制御は、スタビライザバーの捩り反力の大きさを対象とするような制御、例えば、アクチュエータの発生させる力であるアクチュエータ力を直接の対象とする制御であってもよく、また、スタビライザバーの捩れ量を対象とする制御、例えば、アクチュエータの動作量を直接の対象とする制御であってもよい。すなわち、制御装置によって行われるロール抑制制御は。力を対象とする制御であっても、動作位置を対象とする制御であってもよいのである。なお、アクチュエータ力を対象とする制御を行う場合には、その制御の一態様として、便宜的に、駆動源である電磁モータが発生させる力であるモータ力を対象とする制御としてもよく、また、アクチュエータの動作量を対象とする制御の場合は、その制御の一態様として、便宜的に、電磁モータの動作量を対象として制御としてもよい。アクチュエータの動作量を対象とする制御の場合、その動作量は、車両が平坦かつ水平な路上において静止している状態におけるアクチュエータの動作位置(以下、「中立動作位置」という場合がある)を基準とした動作量を採用することができる。ちなみに、本明細書において、アクチュエータ若しくは電磁モータの「動作量」は、特に断りのない限り、この中立動作位置を基準とした動作量を意味するものとする。
ロール抑制制御に関する上記「設定条件」は、ロール抑制制御を開始するための条件と考えることができる。ロール抑制制御が何らかのパラメータに依拠して行われるような場合、そのパラメータ(以下、「依拠パラメータ」という場合がある)の値がある限度となるまでは、ロール抑制制御の実行を行わないようにすることがある。つまり、ロール抑制制御では、いわゆる制御不感帯が設けられることがある。上記設定条件は、車両のおかれている状況がこの制御不感帯を脱したことを示す条件と考えることができる。具体的には、例えば、車両が直進しているような場合には、車両旋回に起因するロールを抑制する制御を行う必要がなく、このような場合にロール抑制制御を実行させないための条件として、上記設定条件を設定することができる。さらに言えば、上記設定条件は、特別なものに限定される必要がなく、例えば、後に説明するように、ロールモーメントが依拠パラメータとされている場合に、そのロールモーメントが設定された程度を超えたことを設定条件とすることができる。
(2)前記制御装置が、
車両旋回に起因して車体が受けるロールモーメントを指標するロールモーメント指標に基づき、前記スタビライザーバーの捩り反力がそのロールモーメント指標の値に応じた大きさとなるように前記アクチュエータを制御するようにして、前記ロール抑制制御を実行するように構成された(1) 項に記載の車両用スタビライザシステム。
本項に態様は、ロール抑制制御における依拠パラメータを上記「ロールモーメント指標」に限定した態様である。このロールモーメント指標は、車両旋回に起因して車体が受けるロールモーメントを指標するものであればよく、具体的な何かに限定されるものではない。例えば、横加速度、ステアリング操作部材の操作量,車輪の転舵量等の操舵量、ヨーレート、コーナリングフォース、横力等、種々のパラメータを採用することができる。
(3)前記制御装置が、
車両旋回に起因して車体が受けるロールモーメントを指標するロールモーメント指標が、設定された大きさのロールモーメントを指標する値を超えた場合に、前記設定条件を充足したとして、前記ロール抑制制御を実行するように構成された(1) 項または(2) 項に記載の車両用スタビライザシステム。
本項の態様は、ロール抑制制御の開始の条件、言い換えれば、車両のおかれている状況が上記制御不感帯を脱する条件についての限定を加えた態様である。「ローモーメント指標」は、先の項において説明されているので、ここでの説明は省略する。本項の態様は、ロールモーメント指標を依拠パラメータとする上記態様と組み合わせることによって、より有効な態様となる。
(4)前記アクチュエータが、路面から車輪に作用する力である路面入力によっても動作させられる構造とされた(1) 項ないし(3) 項のいずれか1つに記載の車両用スタビライザシステム。
ロール抑制制御が行われていない状態(以下、「非制御状態」という場合がある)において路面入力によってアクチュエータが動作させられる場合、後に詳しく説明するように、車両の乗り心地等に悪影響を与える虞がある。したがって、本項の態様において、その悪影響を、緩和若しくは排除すれば、実用性の高い車両用スタビライザシステムを構築することが可能である。
(5)前記スタビライザバーが捩られていない状態における前記アクチュエータの動作位置を中立動作位置と定義した場合において、
前記制御装置が、
前記ロール抑制制御を実行していない場合において、路面入力による前記アクチュエータの動作における前記中立動作位置からの前記アクチュエータの動作量が設定動作量を超えたときに、前記アクチュエータの動作量を小さくするように前記アクチュエータを制御する動作量減少制御を実行するように構成された(4) 項に記載の車両用スタビライザシステム。
非制御状態において路面入力によってアクチュエータが動作させられる場合、アクチュエータは何らかの抵抗力を発生させる。例えば、その動作によって電磁モータが動作させられる場合には、電磁モータは、起電力に依拠した発電電流に応じた大きさの動作抵抗を有することになり、アクチュエータの抵抗力は、この動作抵抗に依存することになる。起電力に依拠する電磁モータの動作抵抗は、アクチュエータが、すなわち、電磁モータが、比較的速く動作させられる場合には、比較的大きく、ゆっくりと動作させられる場合には、比較的小さい。したがって、路面入力によって車輪が比較的ゆっくりとした上下動をする場合には、アクチュエータは、比較的容易に動作させられ、逆に、車輪が比較的速い上下動をする場合には、比較的動作させられ難くなっている。
ここで、スタビライザバーをある方向に捩るような路面入力があり、その際の車輪の上下動が比較的ゆっくりしている場合を考える。この場合、アクチュエータは、それの動作位置が中立動作位置からシフトする。つまり、アクチュエータは、ある動作量その方向に動作させられる。そのため、スタビライザバーは、実質的には捩られず、捩り反力を殆ど発生させない状態となる。この状態から、スタビライザバーを反対方向に捩るような路面入力があり、その際の車輪上下動が比較的速い場合には、アクチュエータがある動作量動作させられた状態において、動作させられなくなるため、スタビライザバーの捩り反力は、アクチュエータの動作位置が中立動作位置となっているときに比べて、その動作量に応じた分大きくなってしまう。このことは、車両の乗り心地を悪化させる一因となる。言い換えれば、非制御状態において、アクチュエータの動作位置が中立動作位置からある程度シフトしているときにおける逆方向の路面入力は、車両の乗り心地に悪影響を与えるのである。
また、別の観点からすれば、アクチュエータの動作抵抗の大小に拘わらず、以下のような問題もある。上述したように、上記設定条件を充足した場合、つまり、車両のおかれている状況が上述の制御不感帯を脱した場合に、アクチュエータは、非制御状態から制御される状態(以下、「制御状態」という場合がある)に移行する。一般に、アクチュエータの動作位置が中立動作位置に位置している状態(以下、「中立状態」という場合がある)を基準として、アクチュエータの制御が行われるため、アクチュエータの動作位置が中立動作位置からシフトしている状態において非制御状態から制御状態に移行すれば、その移行がスムーズに行われない可能性がある。つまり、制御状態への移行時に、アクチュエータの動作が急激なものとなる可能性があるのである。このような、アクチュエータのステップ的な動作(段差的な動作)は、車両の乗り心地を悪化させる一因となる。言い換えれば、非制御状態において、アクチュエータの動作位置が中立動作位置からある程度シフトしている状態での制御の開始は、車両の乗り心地に悪影響を与えるのである。
上記の実情に鑑み、本項の態様のシステムでは、非制御状態において、動作位置が中立動作位置からある程度シフトしている場合、つまり、アクチュエータの動作量が設定動作量を超えている場合に、その動作量を小さくするようにアクチュエータが制御される。したがって、本項の態様のシステムでは、上記動作量減少制御が実行されることで、非制御状態においてアクチュエータの動作位置は中立動作位置から大きくシフトすることがなく、上述した逆方向の路面入力による車両の乗り心地に対する悪影響や、上述した非制御状態から制御状態への移行の際の車両の乗り心地に対する悪影響が、緩和若しくは排除されることなる。
(6)前記制御装置が、
前記動作量減少制御を実行している場合に、前記アクチュエータの動作量が前記設定動作量より小さく設定された第2の設定動作量を下回った場合に、その動作量減少制御の実行を停止するように構成された(5) 項に記載の車両用スタビライザシステム。
アクチュエータの動作量が設定動作量を超えた場合に上記動作量減少制御が実行されるが、その設定動作量以下となった場合に直ちに動作量減少制御を実行を停止するようにすれば、直後に設定動作量を超えるようなときに、間をおかずに、動作量減少制御が再度実行されることになる。つまり、動作量減少制御の実行,非実行が極めて短い時間に繰り返される可能性があり、場合によっては、制御ハンチングを起こす可能性もある。本項の態様は、動作量減少制御の開始の閾値と、停止の閾値とを異ならせるべく、設定動作量より小さく設定された上記第2の設定動作量を下回った場合に、動作量減少制御の実行を停止するようにしている。このことにより、動作量減少制御の実行,非実行が極めて短い時間に繰り返されるとう事態が、回避されることなる。
(7)前記制御装置が、
車両旋回に起因して車体が受けるロールモーメントに応じて前記アクチュエータの目標動作量を決定し、前記アクチュエータの動作量がその目標動作量となるように前記アクチュエータを制御するようにして、前記ロール抑制制御を実行するように構成された(5) 項または(6) 項に記載の車両用スタビライザシステム。
本項の態様によれば、先に説明したところの、アクチュエータの動作位置を対象としたロール抑制制御が行われる。このようなロール抑制制御では、中立動作位置を基準としたアクチュエータの制御が行われるため、先に説明した事象、つまり、アクチュエータの動作位置が中立動作位置からある程度を超えてシフトしている状態において非制御状態から制御状態に移行する際に発生するアクチュエータのステップ的な動作が、発生し易くなる。したがって、本項の態様のシステムにおいて、上記動作量減少制御は、車両の乗り心地への悪影響を緩和若しくは排除するために、特に有効である。
(8)前記アクチュエータが、路面入力によって動作されられた場合にその動作に伴って前記電磁モータが動作させられる構造とされた(4) 項ないし(7) 項のいずれか1つに記載の車両用スタビライザシステム。
本項の態様によれば、電磁モータは、動作させられた場合に、起電力に依拠した発電電流に応じた大きさの動作抵抗を有することになる。先に述べたように、そのような動作抵抗に依拠した抵抗力を発生させるアクチュエータは、上述の問題、つまり、非制御状態における車両の乗り心地に悪影響を与えるという問題を抱えることになる。したがって、このようなアクチュエータを備えた本態様のシステムにおいては、上述の動作量減少制御は、車両の乗り心地を良好に保つために、有効な手段となる。
(9)前記制御装置が、
前記ロール抑制制御を実行していない場合において、路面入力による前記アクチュエータの動作の速度が設定速度を超えたときに、前記電磁モータの作動モードを、前記電磁モータのそれに生じる起電力に依拠する動作抵抗が比較的小さい小動作抵抗モードから、その動作抵抗が比較的大きい大動作抵抗モードに切り換えるモータ作動モード切換制御を実行するように構成された(8) 項に記載の車両用スタビライザシステム。
路面入力によって電磁モータが動作させられるアクチュエータを有する場合、先に述べたように、その電磁モータは、起電力に依拠する動作抵抗を有する。この動作抵抗が小さい状態では、路面入力に対するアクチュエータの抵抗力は比較的小さい。非制御状態においては、原則的には、電磁モータの動作抵抗が小さい状態の方が、大きい状態に比べて、車両の乗り心地は良好である。これは、スタビライザバーの捩り反力が小さくなるため、車輪の上下動が車体のロール動作としては伝達され難くなるからである。したがって、その観点からすれば、電磁モータの動作抵抗は、可及的に小さいことが望ましい。
しかしながら、電磁モータの動作抵抗が小さい状態では、路面入力によってアクチュエータが高速で動作させられ易く、その高速動作の際、アクチュエータの動作音が大きくなってしまう。その動作音は、乗員に対して耳障りであることが多く、そのような場合には、別の意味において、車両の乗り心地が悪化することになる。そのような動作音の観点からすれば、アクチュエータがある程度以上の速さで動作させられる場合には、その動作を遅くすることが望ましいのである。
本項の態様によれば、非制御状態において、アクチュエータの動作がある程度高速になる場合に、電磁モータの作動モードが、動作抵抗の小さいモードから、動作抵抗の大きいモードに切り変えられる。したがって、アクチュエータの動作が速い場合に、その動作が減速させられることになり、耳障りな動作音を低減若しくは防止することが可能となる。本項の態様によれば、このようにして、車両の乗り心地に対する悪影響が緩和若しくは排除されることになる。
(10)前記小動作抵抗モードが、前記電磁モータが動作させられることによって生じる発電電流が比較的小さいモードであり、前記大動作抵抗モードが、その発電電流が比較的大きいモードである(9) 項に記載の車両用スタビライザシステム。
起電力に依拠する電磁モータの動作抵抗は、電磁モータを流れる発電電流量に依存し、発電電流量が少ない場合に小さく、多い場合に大きくなる。本項の態様は、そのような原理を利用し、動作抵抗の小さいモードの場合に、発電電流量が少なくなるようにされ、動作抵抗の大きいモードの場合に、発電電流量が多くなるようにされる。
(11)前記制御装置が、前記電磁モータが有する複数の通電端子を開放させることによって前記小動作抵抗モードを実現し、かつ、それら複数の通電端子を相互に導通させることによって前記大動作抵抗モードを実現するように構成された(9) 項または(10) 項に記載の車両用スタビライザシステム。
電磁モータの通電端子を開放させれば、起電力に基づく発電電流は流れず、電磁モータの動作抵抗は小さく、比較的自由に動作させられる状態となる。逆に、電磁モータの通電端子を相互に導通させれば、電磁モータのコイルは閉ループとなるため、比較的多くの発電電流が流れ、電磁モータの動作抵抗は比較的大きくなる。ちなみに、電磁モータの通電端子を短絡させるように相互に導通させれば、電磁モータの動作抵抗は、最も大きくなる。前者は、いわゆるフリーモードと呼ばれる作動モードであり、後者は、いわゆるブレーキモードと呼ばれる作動モードである。
(12)当該車両用スタビライザシステムが、前記電磁モータの電源となるバッテリと、それらバッテリと電磁モータとの間に配設されてその電磁モータを駆動するための駆動回路とを備え、
前記制御装置が、その駆動回路を介して、前記アクチュエータを制御するものとされた(9) 項ないし(11) 項のいずれか1つに記載の車両用スタビライザシステム。
(13)前記駆動回路が、
前記電磁モータが有する複数の通電端子に対応してそれら複数の通電端子と前記バッテリの高電位側端子との間に設けられた複数の高電位側スイッチング素子と、
前記複数の通電端子に対応してそれら複数の通電端子と前記バッテリの低電位側端子との間に設けられた複数の低電位側スイッチング素子と
を有する(12) 項に記載の車両用スタビライザシステム。
(14)前記駆動回路が、前記複数の高電位側スイッチング素子および前記複数の低電位側スイッチング素子に対応してそれらと並列的に設けられた複数の還流ダイオードを有する(13) 項に記載の車両用スタビライザシステム。
上記3つの項は、電磁モータの制御手段を具体的に限定した態様である。上記スイッチング素子を備えた駆動回路として、いわゆるインバータを採用することができる。また、スイッチング素子に還流ダイオードを並設することによって、電磁モータによって発電された電気エネルギをバッテリに回生することが可能となる。
(15)前記制御装置が、前記駆動回路の前記複数の高電位側スイッチング素子のすべてと前記複数の低電位側スイッチング素子とのすべてとを開状態とすることによって、前記小動作抵抗モードを実現させ、かつ、前記複数の高電位側スイッチング素子と前記複数の低電位側スイッチング素子との一方のすべてを開状態とするとともに他方のすべてを閉状態とすることによって、前記大動作抵抗モードを実現させるように構成された(13) 項または(14) 項に記載の車両用スタビライザシステム。
本項の態様によれば、電磁モータの作動モードの切換が駆動回路によって行われるため、その切換のために何らかの機器を必要としないことから、簡便なシステムを構築することができる。
(16)前記スタビライザバーが、
左右の車輪に対応して設けられ、それぞれが、車幅方向に延びて配設されるトーションバー部と、そのトーションバー部に連続してそのトーションバー部と交差して延びるとともに先端部において左右の車輪のうちの自身に対応するものを保持する車輪保持部に連結されるアーム部とを有する1対のスタビライザバー部材を含んで構成され、
前記アクチュエータが、
前記1対のスタビライザバー部材のトーションバー部を相対回転させるように構成された(1) 項ないし(15) 項のいずれか1つに記載の車両用スタビライザシステム。
(17)前記アクチュエータが、前記電磁モータの回転を減速する減速機と、前記電磁モータと前記減速機とを保持するハウジングとを有し、
前記1対のスタビライザバー部材の一方のトーションバー部が、前記ハウジングに相対回転不能に接続され、他方のトーションバー部が、前記減速機の出力部に相対回転不能に接続された(16) 項に記載の車両用スタビライザシステム。
上記2つの項は、スタビライザ装置の構成に対する限定が加えられた態様に関する項である。上記2つの項に記載の態様によれば、いわゆるアクティブスタビライザシステムを容易に構築することが可能である。
(18)前記減速機の減速比が、1/100以下である(17) 項に記載の車両用スタビライザシステム。
上記減速機の減速比は、電磁モータの回転速度に対するアクチュエータの動作速度(回転速度)の比として表すことができるものであり、一般的な概念として、その値が小さい場合に「減速比が大きい」と言われ、その値が大きい場合に「減速比が小さい」と言われる。以下の説明では、減速比の大小を、その一般的概念に従って示すことにする。ちなみに、本項の態様における減速機は、減速比がかなり大きな減速機とされている。
減速機の減速比が大きい場合には、電磁モータが比較的小さくても、アクチュエータは比較的大きな力を発生させることができるため、スタビライザ装置を小型化できるという利点がある。したがって、その利点を享受するためには、減速比を大きくすることが望ましい。その場合の減速機の具体的な機構は、特に限定されるものではないが、例えば、ハーモニックギヤ機構(「ハーモニックドライブ(登録商標)機構」,「ストレインウェーブギヤリング機構」等と呼ばれることもある)、ハイポサイクロイド減速機構等、種々の機構を有する減速機を採用することが可能である。
一方で、減速比が大きい減速機を使用した場合、アクチュエータの正逆効率比が大きくなってしまう。ここでいう「正逆効率比」とは、アクチュエータの逆効率に対する正効率の比であり、「正効率」とは、例えば、外部からの力がアクチュエータに作用している状態において、その力に抗してアクチュエータが動作するのに最低必要な電磁モータの力と定義することができ、また、「逆効率」とは、外部からの力がアクチュエータに作用している状態において、その力によってもアクチュエータが動作させられないために最低必要な電磁モータの力と定義することができるものである。したがって、アクチュエータの正逆効率比が大きい場合は、摩擦に起因する動作抵抗もさることながら、アクチュエータ動作速度に対して電磁モータの回転速度が高くなるため、例えば、起電力が高くなって、発電電流が多くなり、起電力に基づく動作抵抗が大きくなる。その結果として、アクチュエータは、路面入力によっても動作させられ難くなる。
先に述べたように、非制御状態において、アクチュエータの動作位置が中立動作位置からある程度シフトしている状態における逆方向の路面入力は、車両の乗り心地を悪化させる一因となる。そのことは、減速比の大きい減速機を用いた場合に、特に、顕著となる。したがって、本項の態様のスタビライザシステムにおいては、上述の動作量減少制御は、特に有効な制御となる。
また、本項の態様によれば、起電力に依拠する動作抵抗が比較的大きいため、上述の小動作抵抗モードにおける動作抵抗と程度と、大動作抵抗モードにおける動作抵抗の程度との差が、比較的大きくなる。したがって、本項の態様のシステムにおいては、動作抵抗の大きな作動モードとした場合において、アクチュエータの動作速度を低くする効果が高くなることから、上述のモータ作動モード切換制御を実行することによる効果が高くなるのである。
以下、請求可能発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
≪車両用サスペンションシステムの構成≫
(a)サスペンションシステムの全体構成
図1に、本実施例の車両用サスペンションシステムを模式的に示す。本サスペンションシステムは、車両の前輪側、後輪側の各々に配設された2つのスタビライザ装置14を含んで構成されている。スタビライザ装置14はそれぞれ、両端部において左右の車輪16を保持する車輪保持部材としてのサスペンションアーム(図2,3参照)に連結されたスタビライザバー20を備えている。そのスタビライザバー20は、それが分割された1対のスタビライザバー部材22を含む構成のものとされている。それら1対のスタビライザバー部材22は、アクチュエータ26によって相対回転可能に接続されている。
(b)サスペンション装置の構成
本システムを搭載する車両には、各車輪16に対応した独立懸架式の4つのサスペンション装置が設けられている。転舵輪である前輪のサスペンション装置と非転舵輪である後輪のサスペンション装置とは、車輪を転舵可能とする機構を除き略同様の構成とみなせるため、説明の簡略化に配慮して、後輪のサスペンション装置を代表して説明する。
図2,3に示すように、サスペンション装置30は、マルチリンク式サスペンション装置とされている。サスペンション装置30は、それぞれがサスペンションアームである第1アッパアーム32,第2アッパアーム34,第1ロアアーム36,第2ロアアーム38,トーコントロールアーム40を備えている。5本のアーム32,34,36,38,40のそれぞれの一端部は、車体に回動可能に連結され、他端部は、車輪16を回転可能に保持するアクスルキャリア42に回動可能に連結されている。それら5本のアーム32,34,36,38,40により、アクスルキャリア42は、車体に対して略一定の軌跡を描くような上下動が可能とされている。また、サスペンション装置30は、コイルスプリング44と液圧式のショックアブソーバ46とを備えており、それらは、それぞれ、ばね上部の一構成部分であるタイヤハウジングに設けられたマウント部48と、ばね下部の一構成部分である第2ロアアーム38との間に、互いに並列的に配設されている。つまり、サスペンション装置30は、ばね上部とばね下部とを弾性的に相互支持するとともに、それらの接近離間に伴う振動に対する減衰力を発生させているのである。
(c)スタビライザ装置の構成
スタビライザ装置14の各スタビライザバー部材22はそれぞれ、図2,3に示すように、概して車幅方向に延びるトーションバー部50と、トーションバー部50と一体をなしてそれと交差して概ね車両の前方に延びるアーム部52とに区分することができる。各スタビライザバー部材22のトーションバー部50は、アーム部52に近い箇所において、車体に固定的に設けられた保持具54によって回転可能に保持され、互いに同軸的に配置されている。各トーションバー部50の端部(アーム部52側とは反対側の端部)は、それぞれ、後に詳しく説明するようにアクチュエータ26に接続されている。一方、各アーム部52の端部(トーションバー部50側とは反対側の端部)は、リンクロッド56を介して第2ロアアーム38に連結されている。第2ロアアーム38には、リンクロッド連結部57が設けられ、リンクロッド56の一端部は、そのリンクロッド連結部57に、他端部はスタビライザバー部材22のアーム部52の端部に、それぞれ遥動可能に連結されている。
スタビライザ装置14の備えるアクチュエータ26は、図4に示すように、駆動源としての電磁モータ60と、その電磁モータ60の回転を減速して伝達する減速機62とを含んで構成されている。これら電磁モータ60と減速機62とは、アクチュエータ26の外殻部材であるハウジング64内に設けられている。そのハウジング64の一端部には、1対のスタビライザバー部材22の一方のトーションバー部50の端部が固定的に接続されており、一方、1対のスタビライザバー部材22の他方は、ハウジング64の他端部からそれの内部に延び入る状態で配設されるとともに、後に詳しく説明するように、減速機62と接続されている。さらに、1対のスタビライザバー部材22の他方は、それの軸方向の中間部において、ブシュ型軸受70を介してハウジング64に回転可能に保持されている。
電磁モータ60は、ハウジング64の周壁の内面に沿って一円周上に固定して配置された複数のコイル72と、ハウジング64に回転可能に保持された中空状のモータ軸74と、コイル72と向きあうようにしてモータ軸74の外周に固定して配設された永久磁石76とを含んで構成されている。電磁モータ60は、コイル72がステータとして機能し、永久磁石76がロータとして機能するモータであり、3相のDCブラシレスモータとされている。なお、ハウジング64内に、モータ軸74の回転角度、すなわち、電磁モータ60の回転角度を検出するためのモータ回転角センサ78が設けられている。モータ回転角センサ78は、エンコーダを主体とするものであり、アクチュエータ26の制御、つまり、スタビライザ装置14の制御に利用される。
減速機62は、波動発生器(ウェーブジェネレータ)80,フレキシブルギヤ(フレクスプライン)82およびリングギヤ(サーキュラスプライン)84を備え、ハーモニックギヤ機構(「ハーモニックドライブ(登録商標)機構」,「ストレインウェーブギヤリング機構」等と呼ばれることもある)として構成されている。波動発生器80は、楕円状カムと、それの外周に嵌められたボールベアリングとを含んで構成されるものであり、モータ軸74の一端部に固定されている。フレキシブルギヤ82は、周壁部が弾性変形可能なカップ形状をなすものとされており、周壁部の開口側の外周に複数の歯(本減速機62では、400歯)が形成されている。このフレキシブルギヤ82は、先に説明した1対のスタビライザバー部材22の他方のトーションバー部50の端部に接続され、それによって支持されている。詳しく言えば、そのスタビライザバー部材22のトーションバー部50は、モータ軸74を貫通しており、それから延び出す部分の外周面において、当該減速機62の出力部としてのフレキシブルギヤ82の底部を貫通する状態でその底部とスプライン嵌合によって相対回転不能に接続されているのである。リングギヤ84は、概してリング状をなして内周に複数の歯(本減速機62においては、402歯)が形成されたものであり、ハウジング64に固定されている。フレキシブルギヤ82は、その周壁部が波動発生器80に外嵌して楕円状に弾性変形させられ、楕円の長軸方向に位置する2箇所においてリングギヤ84と噛合し、他の箇所では噛合しない状態とされている。このような構造により、波動発生器80が1回転(360度)すると、つまり、電磁モータ60のモータ軸74が1回転すると、フレキシブルギヤ82とリングギヤ84とが、2歯分だけ相対回転させられる。つまり、減速機62の減速比は、1/200とされている。
以上の構成から、車両の旋回等によって、車体に左右の車輪16の一方と車体との距離と、左右の車輪16の他方と車体との距離とを相対変化させる力、すなわちロールモーメントが作用する場合、左右のスタビライザバー部材22を相対回転させる力、つまり、アクチュエータ26に対する外力が作用する。その場合、電磁モータ60が発生させる力であるモータ力(電磁モータ60が回転モータであることから、回転トルクと考えることができるため、回転トルクと呼ぶ場合がある)によって、アクチュエータ26がその外力に対抗する力を発生させているときには、それら2つのスタビライザバー部材22によって構成された1つのスタビライザバー20が捩じられることになる。この捩りにより生じる捩り反力は、ロールモーメントに対抗する力となる。つまり、スタビライザ装置14は、それを構成するスタビライザバー20が、車体のロールによって捩られるとともに、捩れ量に応じた大きさの捩り反力をロール抑制力として車体に作用させるように構成されているのである。そして、モータ力によってアクチュエータ26の回転量(動作量)を変化させることで、左右のスタビライザバー部材22の相対回転量を変化させれば、スタビライザーバー20の捩れ量が変化し、それによって、上記ロール抑制力が変化する。つまり、アクチュエータの回転量を変化させることで、車体のロールをアクティブに抑制することが可能とされているのである。
なお、ここでいうアクチュエータ26の回転量とは、車両が平坦路に静止している状態を基準状態としてその基準状態でのアクチュエータ26の回転位置(動作位置)を中立位置(中立動作位置)とした場合において、その中立位置からの回転量(動作量)を意味する。また、スタビライザ装置14の制御においては、アクチュエータ26の回転量と、電磁モータ60の回転角(アクチュエータ26がの回転位置が中立位置にあるときを0とした場合の回転角)とは対応関係にあるため、実際には、アクチュエータ26の回転量に代えて、モータ回転角センサ78によって取得されるモータ回転角を対象とした制御が行われる。
(d)制御システムの構成
本システムでは、図1に示すように、電子制御ユニット(ECU)90が設けられている。ECU90は、各スタビライザ装置14、詳しくは、各アクチュエータ26の作動を制御するための制御ユニットであり、各アクチュエータ26が有する電磁モータ60に対応する駆動回路としての2つのインバータ92と、CPU,ROM,RAM等を備えたコンピュータを主体とする制御装置としてのコントローラ96とを備えている(図10参照)。インバータ92の各々は、コンバータ98を介してバッテリ100に接続されており、対応するスタビライザ装置14の電磁モータ60に接続されている。電磁モータ60は定電圧駆動され、電磁モータ60への供給電力は、供給電流量を変更することによって変更される。供給電流量の変更は、インバータ92がPWM(Pulse Width Modulation)によるパルスオン時間とパルスオフ時間との比(デューティ比)を変更することによって行われる。
コントローラ96には、上記モータ回転角センサ78とともに、操舵量としてのステアリング操作部材の操作量であるステアリングホイールの操作角を検出するためのステアリングセンサ102,車体に実際に発生している横加速度である実横加速度を検出する横加速度センサ104が接続されている。コントローラ96には、さらに、ブレーキシステムの制御装置であるブレーキ電子制御ユニット(以下、「ブレーキECU」という場合がある)108が接続されている。ブレーキECU108には、4つの車輪のそれぞれに対して設けられてそれぞれの回転速度を検出するための車輪速センサ110が接続され、ブレーキECU108は、それら車輪速センサ110の検出値に基づいて、車両の走行速度(以下、「車速」という場合がある)を推定する機能を有している。コントローラ96は、必要に応じ、ブレーキECU108から車速を取得するようにされている。さらに、コントローラ96は、各インバータ92にも接続され、それらを制御することで、各スタビライザ装置14の電磁モータ60を制御する。なお、コントローラ96のコンピュータが備えるROMには、後に説明するスタビライザ装置14の制御に関するプログラム,各種のデータ等が記憶されている。なお、車室内には、後に説明する非制御状態における電磁モータ60の作動モードを選択するために運転者によって操作されるモード選択スイッチ112が設けられており、このモード選択スイッチ112も、コントローラ96に接続されている。
≪電磁モータの作動モード≫
(a)インバータの構成
図5に示すように、電磁モータ60は、Δ結線された3相のDCブラシレスモータであり、各相(U,V,W)に対応してそれぞれ通電端子122u,122v,122w(以下、総称して「通電端子122」という場合がある)を有している。インバータ92は、各通電端子、つまり各相(U,V,W)に対応して、high(正)側,low(負)側の2つのスイッチング素子を備えている。つまり、3つの高電位側スイッチング素子(以下、3つのスイッチング素子の各々を、「UHC」,「VHC」,「WHC」と呼ぶ場合がある)124と3つの低電位側スイッチング素子(以下、3つのスイッチング素子の各々を、「ULC」,「VLC」,「WLC」と呼ぶ場合がある)126とを備えている。さらに、インバータ92は、各スイッチング素子124,126に対応してそれらの各々と並列的に配置された6つの還流ダイオード128を備えており、電磁モータ60に生じる起電力がコンバータ98の出力電圧を超えるような場合には、その起電力に依拠した発電電流が、それら還流ダイオード128を介してコンバータ98へ流れることを許容している。また、スイッチング素子切換回路は、電磁モータ60に設けられた3つのホール素子HA,HB,HC(図では、Hと表記している)の検出信号により回転角(詳しくは、電気角である)を判断し、その回転角に基づいて6つのスイッチング素子の各々のON/OFFの切り換えを行う。なお、インバータ92は、バッテリ100の高電位側の端子130hと低電位側の端子130lとにコンバータ98を介して接続されている。
本システムでは、電磁モータ60は、3つの作動モードで作動可能とされており、その3つの作動モードの中から設定された条件等に基づいて選択された1つの作動モードで作動させられる。作動モードは、インバータ92の作動状態、言い換えれば、各スイッチング素子124,126の切換形態によって定まるものとされている。詳しく言えば、作動モードの切り換えは、このインバータ92のスイッチング素子124,126のON/OFFの切換えの形態を変更することによって行われる。
作動モードは、大きくは、2つのモードに分けることができる。その1つは、制御通電モードであり、デューティ比に従ったON/OFF制御、つまり、デューティ制御が行われるようになっており、バッテリ100から電磁モータ60への電力供給が可能な作動モードである。もう1つは、バッテリ100から電磁モータ60への電力供給が行われない作動モードであり、本システムにおいては、ブレーキモード,フリーモードの2つが用意されている。以下に、各作動モードについて説明する。
(b)制御通電モード
図6を参照しつつ説明すれば、制御通電モードでは、いわゆる120゜通電矩形波駆動と呼ばれる方式にて、各スイッチング素子UHC,ULC,VHC,VLC,WHC,WLCのON/OFFが、電磁モータ60の回転角に応じて切り換えられる。詳しく言えば、高電位側スイッチング素子UHC,VHC,WHCのうちの1つのスイッチング素子と低電位側スイッチング素子ULC,VLC,WLCのうちの1つのスイッチング素子とがON状態(閉状態)とされるとともに、残りのスイッチング素子の全てがOFF状態(開状態)とされ、ON状態(閉状態)とされる2つのスイッチング素子が3つのホール素子HA,HB,HCの検出信号に応じて変更される。つまり、本作動モードの下においては、バッテリ100の高電位側の端子130hから電磁モータ60の1つの通電端子122への通電が許容され、電磁モータ60のその1つの通電端子以外のもう1つの通電端子122からバッテリ100の低電位側の端子130lへの通電が許容される。
また、低電位側スイッチング素子ULC,VLC,WLCのみが、デューティ制御を実行するようになっており、そのデューティ比を変更することによって、電磁モータ60への供給電流量が変更されるようになっている。図6における「1*」は、そのことを示している。ちなみに、各スイッチング素子の切換形態は、モータ力の発生方向に応じて異なっており、その方向を、便宜的に、右方向(CW方向)と左方向(CCW方向)と呼ぶこととする。
上述のように、制御通電モードは、電磁モータ60がモータ力を発生させる方向(以下、「モータ力発生方向」という場合がある)および電磁モータ60への供給電力量が制御可能なモードであり、この制御通電モードにおいては、電磁モータ60は供給電流量に応じた大きさのモータ力を、任意の方向に発生させることが可能となる。したがって、電磁モータ60への供給電流量を制御することで、スタビライザ装置14が発生させるロール抑制力を、望む大きさに制御することが可能である。
(c)ブレーキモード
ブレーキモードでは、電磁モータ60の各通電端子が相互に導通させられる。つまり、スイッチング素子のうちのhigh側,low側の一方に配置されたすべてのものを閉状態に維持し、high側,low側の他方に配置されたすべてのものを開状態に維持する。具体的に言えば、本システムでは、図6に示すように、高電位側スイッチング素子UHC,VHC,WHCのいずれもが、ON状態(閉状態)とされ、低電位側スイッチング素子ULC,VLC,WLCのいずれもが、OFF状態(開状態)とされる。それらON状態とされた高電位側スイッチング素子UHC,VHC,WHCにより、電磁モータ60の3つの通電端子は、あたかも相互に短絡させられた状態となる。このような状態では、電磁モータ60が外部入力によって回転させられる場合に、比較的大きな発電電流が流れ、電磁モータ60に対して、いわゆる短絡制動の効果が得られることになる。したがって、アクチュエータ26が路面入力等によって動作を強いられる場合に、バッテリ100から電磁モータ60に電力が供給されなくても、電磁モータ60は比較的大きな動作抵抗を有することになり、アクチュエータ26は、その動作に対して、比較的大きな抵抗力を発生させることになる。その結果、スタビライザバー20の捩り反力が得られ、スタビライザ装置14は、左右の車輪の相対的な上下方向の動作に対しての抵抗力を発生させることになる。以上のことから、このブレーキモードは、電磁モータ60の動作抵抗が比較的大きい作動モード、すなわち、大動作抵抗モードとされているのである。
(d)フリーモード
フリーモードでは、バッテリ100の高電位側の端子130hから電磁モータ60の3つの通電端子122への通電が禁止されるとともに、電磁モータ60の3つの通電端子122からバッテリ100の低電位側の端子130lへの通電が禁止される。具体的に言えば、図6に示すように、スイッチング素子UHC,ULC,VHC,VLC,WHC,WLCのすべてが、OFF状態(開状態)とされる。簡単に言えば、電磁モータ60の各相の通電端子が開放されたような状態となる。したがって、このモードでは、原則的には、発電電流は電磁モータ60を流れることがなく、電磁モータ60は、殆ど動作抵抗を有しない状態なる。したがって、路面入力がアクチュエータ動作させられたとしても、電磁モータ60の動作抵抗は小さく、アクチュエータ60は、自身の動作に対して、殆ど抵抗力を発生させない状態となる。その結果、スタビライザ装置14は、路面入力による左右の車輪の上下方向の相対動作に対して、殆ど抵抗力を発生させない状態となるのである。言い換えれば、1対のスタビライザバー部材22の比較的自由な相対回転が許容され、スタビライザバー20は、殆ど捩り反力を発生させない状態となるのである。以上のことから、このブレーキモードは、電磁モータ60の動作抵抗が比較的小さい作動モード、すなわち、小動作抵抗モードとされているのである。
なお、各スイッチング素子UHC,ULC,VHC,VLC,WHC,WLCには還流ダイオード128が設けられていることから、フリーモードとされていても、電磁モータ60の起電力がコンバータ98の出力電圧を超えるような場合には、発電された電気エネルギの一部がバッテリ100に回生されることになる。その場合には、フリーモードであっても、スタビライザ装置14は、ある程度の抵抗力を発生させることになる。
≪車両用スタビライザシステムの制御≫
以下に、本車両用スタビライザシステムの制御について説明するが、当該システムでは、2つのスタビライザ装置14の両方が、互いに同様に制御されることから、ここからの説明は、特に断りのない限り、一方のスタビライザ装置14の制御、つまり、一方のスタビライザ装置14が有するアクチュエータ26の制御についてのみ行う。
(a)ロール抑制制御
本実施例の車両スタビライザシステムでは、車両の旋回に起因して生じる車体のロールを抑制するための制御であるロール抑制制御が実行される。ロール抑制制御では、スタビライザーバー20の捩り反力が車両旋回に起因して車体が受けるロールモーメントに応じた大きさとなるように、アクチュエータ26が制御される。詳しく言えば、車両の旋回に起因して車体が受けるロールモーメントに応じたロール抑制力を発生させるべく、車体が受けるロールモーメントを指標するロールモーメント指標に基づいて、電磁モータ60の制御の目標となるモータ回転角である目標モータ回転角θ*が決定され、電磁モータ60の実際のモータ回転角である実モータ回転角θがその目標モータ回転角θ*となるように制御される。
具体的に言えば、ステアリングホイールの操舵角δと車両走行速度vに基づいて推定される推定横加速度Gycと、実測される実横加速度Gyrとに基づいて、制御に利用される横加速度である制御横加速度Gy*が、次式に従って決定される。つまり、本ロール抑制制御では、この制御横加速度Gy*を、ロールモーメント指標として採用しているのである。
Gy*=KA・Gyc+KB・Gyr
ここで、KA,KBはゲインであり、そのように決定された制御横加速度Gy*に基づいて、目標モータ角θ*が決定される。コントローラ96内には制御横加速度Gy*をパラメータとする目標モータ角θ*のマップデータが格納されており、そのマップデータを参照して、目標モータ角θ*が決定される。
そして、実モータ回転角θが上記目標モータ回転角θ*になるように、電磁モータ60が制御される。電磁モータ60の制御において、電磁モータ60に供給される電力は、実モータ回転角θの目標モータ回転角θ*に対する偏差であるモータ回転角偏差Δθ(=θ*−θ)に基づいて決定される。詳しく言えば、モータ回転角偏差Δθに基づくフィードバック制御の手法に従って決定される。具体的には、まず、電磁モータ60が備えるモータ回転角センサ78の検出値に基づいて、上記モータ回転角偏差Δθが認定され、次いで、それをパラメータとして、次式に従って、目標供給電流i*が決定される。
*=KP・Δθ+KI・Int(Δθ)
この式は、PI制御則に従う式であり、第1項,第2項は、それぞれ、比例項、積分項を、KP,KIは、それぞれ、比例ゲイン,積分ゲインを意味する。また、Int(Δθ)は、モータ回転角偏差Δθの積分値に相当する。
ちなみに、上記目標供給電流i*は、それの符号により電磁モータ60のモータ力発生方向を表すものとなっており、電磁モータ60の駆動制御にあたっては、目標供給電流i*に基づいて、電磁モータ60を駆動するためのデューティ比およびモータ力発生方向が決定される。そして、それらデューティ比およびモータ力発生方向についての指令がインバータ92に発令され、インバータ92によって、上記制御作動モードの下、その指令に基づいた電磁モータ60の駆動制御がなされる。
(b)制御不感帯
上記ロール抑制制御は、設定条件を充足した場合に実行される。詳しく言えば、特定の開始条件を充足した場合に、開始されるようになっている。この設定条件は、「ロールモーメント指標である制御横加速度Gy*が設定閾加速度Gy0を超えること」であり、制御横加速度Gy*が設定閾加速度Gy0を超えた場合に、ロール抑制制御が実行される。つまり、本ロール抑制制御は、制御横加速度Gy*が設定閾加速度Gy0以下の場合において実行されないことから、制御不感帯が設けられているのである。
制御不感帯を設ける意義は、車両の旋回に起因する車体のロールを適切に抑制することにあり、例えば、車両直進時において、敢えて必要としてない当該ロール抑制制御の実行を禁止することにある。本ロール抑制制御では、制御横加速度Gy*が設定閾横加速度Gy0以下の場合を、車両のおかれている状況、つまり、車体に作用するロールモーメントを指標するロールモーメント指標が制御不感帯内であるとし、その場合において、アクチュエータ26は、制御が行われない状態、つまり、非制御状態に置かれる。
(c)非制御状態における電磁モータの作動モード
アクチュエータ26が制御されない非制御状態、言い換えれば、ロール抑制制御が実行されない状態において、本車両用スタビライザシステムでは、電磁モータ60の作動モードが、上述したフリーモードとブレーキモードとのいずれかとされる。それら2つのモードのうちのどちらとされるかは、原則的には、上記モード選択スイッチ112によって、フリーモードが選択されているか、ブレーキモードとされているかに従って決定される。
フリーモードは、小動作抵抗モードと呼ぶことができるモードであり、このモードでは、先に説明したように、電磁モータ60は、殆ど動作抵抗を有しない状態なる。したがって、路面入力によってアクチュエータ動作させられたとしても、電磁モータ60の動作抵抗は小さく、アクチュエータ60は、自身の動作に対して、殆ど抵抗力を発生させない状態となる。つまり、上述の車体の横揺れという観点からすれば、車両の乗り心地は良好であり、一般的には、そのような特性を望む場合に、運転者によってフリーモードが選択される。
一方、ブレーキモードは、大動作抵抗モードと呼ぶことができるモードであり、このモードでは、先に説明したように、バッテリ100から電磁モータ60に電力が供給されなくても、電磁モータ60は比較的大きな動作抵抗を有する状態となる。したがって、アクチュエータ26は、路面入力等によって動作を強いられる場合に、その動作に対して、比較的大きな抵抗力を発生させることになり、その結果として、スタビライザバー20の捩り反力が得られる。つまり、車体姿勢の安定という点で優れており、一般的には、そのような特性を望む場合に、運転者によってブレーキモードが選択される。
(d)モータ作動モード切換制御
先に述べたように、非制御状態において電磁モータ60の作動モードがフリーモードとされている場合には、電磁モータ60の動作抵抗は相当に小さい。そのため、路面入力によって車輪が高速で上下動するときには、アクチュエータ26は、高速で動作させられる可能性が高い。高速で動作させられる際のアクチュエータ26の動作音は大きく、その動作音は、乗員に対して耳障なものとなる。したがって、車両の静粛性とういう観点からすれば、そのような動作音は、車両の乗り心地を悪化させてしまうことになる。
上記のような実情に鑑み、本システムでは、非制御状態においてフリーモードとされていても、アクチュエータ26が高速で動作させられる場合には、電磁モータ60の作動モードが、フリーモードからブレーキモードに切り換えられる。このような作動モードの切換、つまり、モータ作動モード切換制御の実行により、アクチュエータ26の動作が減速させられることになり、上記動作音を低減若しくは防止することが可能となる。
具体的には、モータ回転角の変化に基づいて、電磁モータ60の回転速度であるモータ回転速度Sθが算出され、そのモータ回転速度Sθが設定閾回転速度Sθ0を超えているときに、アクチュエータ26の動作速度が設定速度を超えているものとみなして、作動モードが、フリーモードからブレーキモードに切り換えられる。なお、モード選択スイッチ112によって、フリーモードが選択されている場合には、モータ回転速度Sθが設定閾回転速度Sθ0以下となった場合に、ブレーキモードからフリーモードに戻される。
(e)動作量低減制御
非制御状態において、アクチュエータ26が路面入力によって動作させれた場合には、アクチュエータ26の回転位置は、中立位置からシフトする。つまり、電磁モータ60のモータ回転角は、0ではなくなる。このような状態から、上記ロール抑制制御が開始された場合を考える。この場合、ロール抑制制御は、アクチュエータ26が中立位置に位置している状態を基準に実行されるため、例えばアクチュエータ26の回転位置がシフトしている向きによっては、制御開始時点でのアクチュエータ26の動作が急激なものとなる虞がある。このような急激な動作は、すなわち、ステップ的な動作は、車両の乗り心地を悪化させることなる。
また、非制御状態においてブレーキモードとされている場合に、アクチュエータ26が比較的ゆっくりと動作させられるときには、アクチュエータ26の回転位置は、比較的容易に中立位置からシフトする。それに対して、アクチュエータ26が比較的速く動作させられるような路面入力があった場合、電磁モータ60の動作抵抗は比較的大きくなるため、アクチュエータ26は路面入力に追従する程には動作させられず、スタビライザバー20は、捩り反力を発生させることになる。したがって、比較的ゆっくりとした動作によって、アクチュエータ26の回転位置がある方向にシフトした状態から、反対方向に比較的速く動作させる路面入力があった場合には、中立位置にある状態からの場合に比較して、スタビライザバー20の捩り反力は、回転位置がシフトしている分大きくなる。このような大きな捩り反力の発生も、車両の乗り心地を悪化させる一因となる。
上記のような乗り心地の悪化を軽減若しくは防止すべく、本スタビライザシステムでは、非制御状態において、アクチュエータ26の回転量が、設定された動作量である設定回転量を超えた場合に、その回転量を少なくするようにアクチュエータ26が制御される。この制御が、動作量低減制御であり、この制御では、具体的には、電磁モータ60の実モータ回転角θが、第1設定閾回転角θ1を超えた場合に、その実モータ回転角θが0になる方向に電磁モータ60を作動させる。より具体的に言えば、目標モータ回転角θ*を0とし、モータ回転角偏差Δθ(=θ*−θ)に基づき、次式に従って、目標供給電流i*が決定され、
*=KP・Δθ (KPは比例ゲイン)
次いで、この目標供給電流i*に基づいて、電磁モータ60を駆動するためのデューティ比およびモータ力発生方向が決定される。そして、それらデューティ比およびモータ力発生方向についての指令がインバータ92に発令され、インバータ92によって、上記制御作動モードの下、その指令に基づいた電磁モータ60の駆動制御がなされる。
なお、上記動作量低減制御によって、実モータ回転角θが、上記第1設定閾回転角θ1より小さい値に設定された第2設定閾回転角θ2を下回った場合に、アクチュエータ26の回転量が第2の設定回転量を下回ったとみなされて、その動作量低減制御の実行が停止される。この実行の停止にあたっては、デューティ比が0とされ、そのデューティ比についての指令がインバータ92に発令される。ちなみに、上記第2設定閾回転角θ2に基づいて動作量低減制御の実行を停止する理由は、動作量減少制御の実行,停止が極めて短い時間に繰り返されるとう事態を回避するためであり、いわゆる制御ハンチングを防止するためである。
≪制御プログラムと制御のフロー≫
本スタビライザシステムにおいて、スタビライザ装置14の制御は、図7にフローチャートを示すスタビライザ制御プログラムがコントローラ96によって実行されることによって行われる。このプログラムは、イグニッションスイッチがON状態とされている間、短い時間間隔(例えば、数msec)をおいて繰り返し実行される。以下に、制御のフローを、図に示すフローチャートを参照しつつ、簡単に説明する。
本制御プログラムに従う処理では、まず、ステップ1(以下、「S1」と略す。他のステップも同様である。)において、ステアリングホイールの操作角δが、ステアリングセンサ102の検出値に基づいて取得され、続く、S2において、車速vが、ブレーキECU108から取得される。次いで、S3において、取得されたステアリングホイールの操作角δと車速vとに基づいて、推定横加速度Gycが算出される。次に、S4において、横加速度センサ104の検出値に基づいて、実横加速度Gyrが取得され、S5において、それら取得された推定横加速度Gycと実横加速度Gyrとに基づき、上記式に従って、制御横加速度Gy*が算出される。
次いで、S6において、S5で算出された制御横加速度Gy*が設定閾横加速度Gy0を超えているか否かが判断される。制御横加速度Gy*が設定閾横加速度Gy0を超えている場合には、ロールモーメント指標である制御横加速度Gy*が制御不感帯を脱していると認定されて、S7において、後に説明する動作量減少制御実行フラグFrが“OFF”とされ、続いて、S8において、ロール抑制制御が実行される。
ロール抑制制御は、図8にフローチャートを示すロール抑制制御サブルーチンが実行されることによって行われる。このサブルーチンに従う処理では、まず、S21において、S5で算出された制御横加速度Gy*に基づいて、目標モータ回転角θ*が決定され、次いで、S22において、その目標モータ回転角θ*と、回転角センサ78の検出値から取得される実モータ回転角θとに基づいて、モータ回転角偏差Δθが認定され、続くS23において、そのモータ回転角偏差Δθに基づき、上記式に従って、電磁モータ60へ供給される目標供給電流i*が決定される。そして、S24において、その目標供給電流i*に基づき、インバータ92による電磁モータ60の駆動制御に必要なデューティ比,モータ力発生方向が決定され、S25において、それらデューティ比,モータ力発生方向に基づく指令が、インバータ92に発令される。このS25の処理が終了して、本サブルーチンに従う処理が終了し、スタビライザ制御プログラムに従う一連の処理が終了する。
先のS6において、制御横加速度Gy*が設定閾横加速度Gy0を超えていないと判断された場合には、制御横加速度Gy*が制御不感帯を脱していないと認定され、S9以下の非制御状態における処理が実行される。
この非制御状態における処理では、まず、S9において、動作量減少制御実行フラグFrが“ON”であるか否かが判断される。ちなみに、このフラグFrが“ON”とされている場合には、後に説明する動作量減少制御が実行中であり、“OFF”とされている場合には、動作量減少制御は実行されていない。フラグFrが“ON”の場合は、S10〜S14がスキップされて、S15の動作量減少制御の実行が継続される。
S9において動作量減少制御実行フラグFrが“ON”でないと判断された場合には、S10において、モード選択スイッチ112によって、電磁モータ60の作動モードとしてフリーモードが選択されているか否かが判断される。フリーモードが選択されている場合には、S11において、回転角センサ78の検出値から取得される実モータ回転角θの変化、詳しくは、前回の当該プログラムの実行時点における実モータ回転角θからの変化に基づいて取得されるモータ回転速度Sθが、設定閾回転速度Sθ0を超えているか否が判断される。モータ回転速度Sθが設定閾回転速度Sθ0を超えていない場合には、S12において、電磁モータ60の作動モードが、フリーモードに決定され、その旨が、インバータ92に発令される。
S10においてフリーモードが選択されていないと判断された場合は、ブレーキモードが選択されていると認定され、S13において、電磁モータ60の作動モードが、ブレーキモードに決定され、その旨が、インバータ92に発令される。なお、S11においてモータ回転速度Sθが設定閾回転速度Sθ0を超えていると判断された場合には、フリーモードが選択されている場合であっても、S13の処理が実行されることによって、作動モードがブレーキモードとされる。S11の判断に基づいてS13の処理を実行することによって、先に説明したモータ作動モード切換制御が実行されることになる。
電磁モータ60の作動モードがフリーモードとブレーキモードとのいずれかに決定された後、S14において、実モータ回転角θが第1設定閾回転角θ1を超えているか否かが判断される。実モータ回転角θが第1設定閾回転角θ1を超えていない場合には、S15の処理をスキップして、スタビライザ制御プログラムに従う一連の処理が終了する。それに対し、実モータ回転角θが第1設定閾回転角θ1を超えている場合には、S15において、動作量減少制御が実行される。
動作量減少制御は、図8にフローチャートを示す動作量減少制御サブルーチンが実行されることによって行われる。このサブルーチンに従う処理では、まず、S31において、実モータ回転角θが第2設定閾回転角θ2を下回っているか否かが判断される。実モータ回転角θが第2設定閾回転角θ2を下回っていない場合には、S32において、動作量減少制御実行フラグFrが“ON”とされて、S33〜S37の処理、つまり、動作量減少制御のための処理が実行される。
動作量減少制御のための処理では、まず、S33において、目標モータ回転角θ*が0に決定され、次いで、S34において、その目標モータ回転角θ*と実モータ回転角θとに基づいて、モータ回転角偏差Δθが認定され、続くS35において、そのモータ回転角偏差Δθに基づき、上記式に従って、電磁モータ60へ供給される目標供給電流i*が決定される。そして、S36において、その目標供給電流i*に基づき、インバータ92による電磁モータ60の駆動制御に必要なデューティ比,モータ力発生方向が決定され、S37において、それらデューティ比,モータ力発生方向に基づく指令が、インバータ92に発令される。このS37の処理が終了して、本サブルーチンに従う処理が終了し、スタビライザ制御プログラムに従う一連の処理が終了する。
一方、S31において実モータ回転角θが第2設定閾回転角θ2を下回っていると判断された場合には、S38において、動作量減少制御実行フラグFrが“OFF”とされ、次いで、S39において、デューティ比が0に決定され、S37において、そのデューティ比に基づく指令が、インバータ92に発令される。それらS38,S39,S37の処理により、動作量減少制御が終了されることになる。S37の処理の終了により、本サブルーチンに従う処理が終了し、スタビライザ制御プログラムに従う一連の処理が終了する。
≪制御装置の機能構成≫
上記スタビライザ制御プログラムを実行するコントローラ96は、本スタビライザシステムにおける制御装置として機能し、その実行処理に鑑みれば、図9にブロック図で示すような機能構成を有するものと考えることができる。図から解るように、コントローラ96は、ロールモーメント指標が制御不感帯を脱している状態において、当該プログラムのS8のロール抑制制御を実行する機能部として、ロール抑制制御部150を有している。
また、コントローラ96は、ロールモーメント指標が制御不感帯を脱していない状態において当該システムを制御する機能部、言い換えれば、上記ロール抑制制御が実行されていない場合においてアクチュエータ26を制御する機能部として、ロール抑制制御非実行時制御部152を有している。そのロール抑制制御非実行時制御部152は、電磁モータ60の作動モードを、フリーモードとブレーキモードとのいずれかに決定する機能部、つまり、スタビライザ制御プログラムにおけるS10〜S13の処理を実行する機能部として、モータ作動モード決定部154を有している。そして、そのモータ作動モード決定部154は、アクチュエータ26の動作の速度が設定速度を超えた場合に、フリーモードからブレーキモードに切り換える機能部、つまり、S11の判断に基づいてS13の処理を実行する機能部として、モータ作動モード切換制御部156を有している。
さらに、ロール抑制制御非実行時制御部152は、アクチュエータ26の回転量が設定回転量を超えたときに、アクチュエータ26の回転量を小さくするようにアクチュエータ26を制御する機能部、つまり、スタビライザ制御プログラムにおけるS15の動作量減少制御を実行する機能部として、動作量減少制御部158を有しているのである。
請求可能発明の実施例である車両用スタビライザシステムの全体構成を示す模式図である。 図1の車両用スタビライザシステムの備えるスタビライザ装置とサスペンション装置とを車両上方からの視点において示す模式図である。 図1の車両用スタビライザシステムの備えるスタビライザ装置とサスペンション装置とを車両前方からの視点において示す模式図である。 スタビライザ装置の備えるアクチュエータを示す概略断面図である。 図1の車両用スタビライザシステムの備えるインバータと図4のアクチュエータが有する電磁モータとが接続された状態での回路図である。 電磁モータの各作動モードにおける図5のインバータによるスイッチング素子の切り換え状態を示す表である。 図1の車両用スタビライザシステムにおいて実行されるスタビライザ制御プログラムを示すフローチャートである。 図7のスタビライザ制御プログラムにおいて実行されるロール抑制制御サブルーチンおよび動作量減少制御サブルーチンの各々を示すフローチャートである。 図1の車両用スタビライザシステムの制御を司る制御装置の機能を示すブロック図である。
符号の説明
10:車両用スタビライザシステム 14:スタビライザ装置 16:車輪 20:スタビライザバー 22:スタビライザバー部材 26:アクチュエータ 30:サスペンション装置 50:トーションバー部 52:アーム部 60:電磁モータ 62:減速機 64:ハウジング 78:モータ回転角センサ 90:電子制御ユニット(ECU) 92:インバータ 96:コントローラ 98:コンバータ 100:バッテリ 112:モード選択スイッチ 122u,122v,122w:通電端子 124:高電位側スイッチング素子 126:低電位側スイッチング素子 128:還流ダイオード 130h:高電位側端子
130l:低電位側端子 150:ロール抑制制御部 152:ロール抑制制御非実行時制御部 154:モータ作動モード決定部 156:モータ作動モード切換制御部 158:動作量減少制御部

Claims (6)

  1. (A) 車体のロールによって捩られるとともに、捩れ量に応じた大きさの捩り反力をロール抑制力として車体に作用させるスタビライザーバーと、(B) 駆動源となる電磁モータを有し、自身の動作によって前記スタビライザーバーの捩れ量を変更するアクチュエータと、(C) そのアクチュエータを制御する制御装置とを備え、
    その制御装置が、設定条件を充足した場合に、前記スタビライザーバーの捩り反力が車両旋回に起因して車体が受けるロールモーメントに応じた大きさとなるように前記アクチュエータを制御するロール抑制制御を実行するように構成された車両用スタビライザシステムであって、
    前記アクチュエータが、路面から車輪に作用する力である路面入力によっても動作させられる構造とされ、かつ、路面入力によって動作されられた場合にその動作に伴って前記電磁モータが動作させられる構造とされ、
    前記制御装置が、
    前記ロール抑制制御を実行していない場合において、路面入力による前記アクチュエータの動作の速度が設定速度を超えたときに、前記電磁モータの作動モードを、前記電磁モータのそれに生じる起電力に依拠する動作抵抗が比較的小さい小動作抵抗モードから、その動作抵抗が比較的大きい大動作抵抗モードに切り換えるモータ作動モード切換制御を実行するように構成された車両用スタビライザシステム。
  2. 前記制御装置が、
    車両旋回に起因して車体が受けるロールモーメントを指標するロールモーメント指標が、設定された大きさのロールモーメントを指標する値を超えた場合に、前記設定条件を充足したとして、前記ロール抑制制御を実行するように構成された請求項1に記載の車両用スタビライザシステム。
  3. 前記小動作抵抗モードが、前記電磁モータが動作させられることによって生じる発電電流が比較的小さいモードであり、前記大動作抵抗モードが、その発電電流が比較的大きいモードである請求項1または請求項2に記載の車両用スタビライザシステム。
  4. 前記制御装置が、
    前記電磁モータが有する複数の通電端子を開放させることによって前記小動作抵抗モードを実現し、かつ、それら複数の通電端子を相互に導通させることによって前記大動作抵抗モードを実現するように構成された請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の車両用スタビライザシステム。
  5. 前記スタビライザバーが、
    左右の車輪に対応して設けられ、それぞれが、車幅方向に延びて配設されるトーションバー部と、そのトーションバー部に連続してそのトーションバー部と交差して延びるとともに先端部において左右の車輪のうちの自身に対応するものを保持する車輪保持部に連結されるアーム部とを有する1対のスタビライザバー部材を含んで構成され、
    前記アクチュエータが、
    前記1対のスタビライザバー部材のトーションバー部を相対回転させるように構成された請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の車両用スタビライザシステム。
  6. 前記アクチュエータが、前記電磁モータの回転を減速する減速機と、前記電磁モータと前記減速機とを保持するハウジングとを有し、
    前記1対のスタビライザバー部材の一方のトーションバー部が、前記ハウジングに相対回転不能に接続され、他方のトーションバー部が、前記減速機の出力部に相対回転不能に接続され、かつ、
    前記減速機の減速比が、1/100以下である請求項5に記載の車両用スタビライザシステム。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN108137057A (zh) * 2015-10-23 2018-06-08 奥迪股份公司 主动底盘的状况识别

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