JP2010120184A - 液体吐出ヘッド - Google Patents
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Abstract
【課題】ノズルから液体を吐出するのに利用される熱エネルギーを液体に作用するための発熱部を有する基板と、前記ノズルに対応して設けられ、前記発熱部による熱エネルギーの作用に伴う前記液体の発泡に応じて変位可能な可動弁を支持する弁支持部材とを具えた液体吐出ヘッドにおいて、液体のリフィル性能や製造時の取り扱い性の低下を抑制する。
【解決手段】可動弁の厚みを前記弁支持部材の厚みより小とする。これによれば、可動弁の流路抵抗を減少させて液体吐出後のリフィル性が向上する一方、弁支持部材には所定の厚みを確保することで剛性を付与することが可能となる。
【選択図】図3
【解決手段】可動弁の厚みを前記弁支持部材の厚みより小とする。これによれば、可動弁の流路抵抗を減少させて液体吐出後のリフィル性が向上する一方、弁支持部材には所定の厚みを確保することで剛性を付与することが可能となる。
【選択図】図3
Description
本発明は、液体吐出ヘッドに関する。特に本発明は、熱エネルギーを液体に与えることで、液体に急峻な体積変化(気泡の発生)を伴う状態変化を生じさせ、この状態変化に基づく作用力によって吐出口から液体を吐出させる方式の液体吐出ヘッドに関するものである。
この種の液体吐出ヘッドには、一般に、液体供給方向上流側から吐出口に向う流路が設けられ、その流路に、例えば通電に応じ液体に熱エネルギーを発生する素子(電気熱変換体)が配されている。そして電気熱変換体の駆動に伴い、流路に面した熱作用部上にある液体に状態変化(膜沸騰による発泡)を生じさせることで、熱作用部より吐出口側に存在する液体を吐出させる圧力を作用させるものである。しかし発泡現象自体には指向性がなく、従って発泡による圧力は流路において液体を吐出させる方向だけではなく、液体供給方向上流側にも作用する。この結果、液体供給方向上流側へのエネルギー損失を生じて液体吐出に有効に寄与するエネルギー量が減殺され、液体の吐出速度が減少して記録品位の低下を招くことになる。またそれだけではなく、液体供給方向上流側に向かう圧力が、吐出によって失われた分の液体を流路に補充(リフィル)する動作を遅らせ、記録速度の高速化を阻害する要因ともなる。
近年では、記録品位の安定した画像を高速に記録する要求が高まっており、これは特に産業用途の記録装置において著しい。そこで、発泡に応じ弁として作動する可動部材を流路内に設け、液体供給方向上流側への泡の成長を規制することにより、エネルギー利用の効率化およびリフィル動作の円滑化を図る構成が採用されることがある。
このような可動部材を備えるために、特許文献1には、電気熱変換体が設けられる基板の一部を利用して、その基板の一部に弁を一体形成した構成が開示されている。同文献に開示された製造方法では、上記の一体構造物を作成する過程において、基板上に所定材料(同文献ではポリシリコン)でなる層を形成してからその上に可動弁となる部分を積層し、その可動弁下方の流路部分に存在している層のエッチングが実施される。従って、エッチングを可動弁周辺から可動弁下方に向って行う必要があるため、片持ち支持される可動弁の被支持部分を除く可動弁周辺部分には、エッチング工程を受容するために、ある程度の空隙を要する。つまり、エッチング工程を考慮して、可動弁の寸法が制約されてしまうことになる。このため、所望の可動弁寸法すなわち熱作用部への可動弁の投影面積が小さくなり、所期の目的である吐出エネルギーの有効利用およびリフィル動作の円滑化を十分に達成できなくなる恐れがある。これは特に、産業用途など、安定した吐出動作を高速に行うことが厳しく要求される液体吐出ヘッドを用いる場合に問題となり得る。
従って、所期の目的に見合う寸法をもつ可動弁が形成されていることが強く望ましく、そのためには別体に形成された基板と弁支持部材とを貼り付けた二体構造を採用する方が、設計および製造上有効である。特許文献2には、このような構成を有し、液体吐出時に可動弁を支持する部材に熱膨張が発生しても可動弁への影響が少なく、高精度で安定した接着状態を得ることができる液体吐出ヘッドが開示されている。すなわち、弁支持部材に欠損部(穴およびスリット)を設けたことで、弁支持部材が熱膨張しても膨張の影響が可動弁に及ばないようにし、以って安定した吐出動作を高速に行うことができるようにしている。
このように、エネルギー利用の効率化およびリフィル動作の円滑化を図るべく流路内に可動弁が設けられ、かつ、これを液体吐出時に熱膨張の影響を受けにくい構造とした液体吐出ヘッドにおいても、まだ改良の余地がある。すなわち、近年の記録速度のさらなる高速化およびノズルの高密度化の要求に伴って、次のような二つの新たな問題が顕在化してきているからである。
第一に、ノズル内に配設された可動弁自身が、ノズル内の液体の供給性能を低下させる流路抵抗となる問題である。すなわち、ノズルから液体が吐出されると、即時にノズル内に液体が補充されるべきであるが、ノズルの断面積が小さい高精細の液体吐出ヘッドにおいては、ノズルに可動弁が配設されている分、断面積がさらに小さくなり、液体の円滑な流れが阻害され得る。これは特に、記録の高速化を図るべく液体吐出周波数を高くする場合において、液体吐出後の補充が間に合わなくなり、この結果画像のかすれ等を引き起こす恐れがある。このような問題を解決するために、可動弁を薄膜化し、ノズル断面積の大きな減少が生じないようにすることが考えられる。しかしこれを特許文献2に記載の構造に適用する場合においては、可動弁の薄膜化に伴い弁支持部材も薄くなり、その分、剛性が低下する。このため、基板に実装する際の弁支持部材の取り扱いが非常に難しくなり、また基板への接着した後にもうねりなどを発生しやすくなる。
第二の問題は、記録速度の高速化に伴う液体吐出ヘッドの昇温に伴うものである。液体を吐出させるために利用されるエネルギーを発生する素子として電気熱変換体を使用した場合、液体吐出時に電気熱変換体から発生した熱エネルギーの一部は液滴の吐出によって排出されるが、残った熱エネルギーは液体吐出ヘッド内に蓄積される。そのため、液体吐出ヘッド内の液体の温度も上昇し、それに伴い液体の粘度が低下することによって、電気熱変換体を同一条件で駆動しても液体吐出量が多くなってしまう恐れがある。このような問題を回避するために、記録動作の休止時間を設けることも考えられるが、これでは全体的な印刷時間の増大を招き、記録速度の高速化を図るという要望に応え得ないものとなってしまう。また、高温状態が継続されることによって電気熱変換体の劣化が促進され、液体吐出ヘッドの寿命を縮めてしまう恐れもある。従って、液体吐出ヘッドの昇温に対する対策は避けられない問題となっているのである。
本発明は、以上の問題に鑑み、高速・高精細の記録に対応してノズルを高密度に実装した液体吐出ヘッドにおいて、液体のリフィル性能や製造時の取り扱い性の低下が生じることのない液体吐出ヘッドを提供することを目的とする。
また本発明は、連続した高速記録を行う際の昇温を抑制できる液体吐出ヘッドを提供することを他の目的とする。
そのために、本発明は、ノズルから液体を吐出するのに利用される熱エネルギーを液体に作用するための発熱部を有する基板と、前記ノズルに対応して設けられ、前記発熱部による熱エネルギーの作用に伴う前記液体の発泡に応じて変位可能な可動弁を支持する弁支持部材とを具えた液体吐出ヘッドにおいて、前記可動弁の厚みを前記弁支持部材の厚みより小としたことを特徴とする。
本発明によれば、可動弁の流路抵抗を減少させて液体吐出後のリフィル性が向上する一方、弁支持部材には所定の厚みを確保することで剛性を付与し、その取り扱い性を向上することが可能となる。
さらに、弁支持部材が複数のノズルが共通に連通して液体を供給するための液室を具え、弁支持部材が液室に面するように基板に取り付けられている構成では、所定の厚みを確保しつつ弁支持部材を適切に構成することで、高速記録を行う際の昇温を抑制できる。すなわち、弁支持部材を二層構造とし、液室に面する上層を熱伝導率が高い材料で形成すること、あるいは、液室に面する弁支持部材の面に凹凸を設けることで、熱を共通液室内の液体に伝達し易くなり、液体吐出ヘッドへの蓄熱が低減される。
本発明の液体吐出ヘッドによれば、液体の供給性能を低下させることがなく、さらに放熱効果を有するため、ノズルの高密度化や記録速度の高速度化を達成することが可能である。
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態による液体吐出ヘッドを具えた記録装置111の内部構造の概略を示す正面図である。
図1において、記録装置111は、複数の液体吐出ヘッド110、各液体吐出ヘッド110に対応する個別の回復ユニット112、各液体吐出ヘッド110に供給する液体(インクなど)をそれぞれ収納するカートリッジ形態の複数のインクタンク113を具える。記録装置111はまた、記録媒体103を搬送する搬送部114、オペレーションパネル部115、記録媒体103を記録装置本体内に送給する給紙部116などを具える。
図2は、液体吐出ヘッド110を分解した状態で示す斜視図である。
図2において、101は液体吐出ヘッド110の主要部をなす吐出エレメントであり、一側面においてセラミック製のベースプレート100によって支持されている。吐出エレメント101の対向側面には配線基板102が配され、吐出エレメント101上に設けられる配線(発熱部やその駆動素子用のもの)の電極部とワイヤボンディングにより電気的に接続されている。
120は吐出エレメント101に対し液体を授受するための流路形成部材であり、流路形成部材に形成された開口を通して吐出エレメント101内に設けられる共通液室(後述)に接続される。本例の液体供給系は、液体吐出ヘッド110とインクタンク113との間で循環系を構成している。すなわち、インクタンク113から流路形成部材120を介して吐出エレメント101内の共通液室に対して液体が移送され、当該移送された液体が共通液室より複数配列されたノズルの各々に分配される。一方、共通液室からは流路形成部材120を介して吐出エレメント101を介してインクタンク113に液体が還流する。
図3は、本実施形態に係る液体吐出ヘッドの吐出エレメント101のノズル近傍を示す一部破断斜視図である。ヒーターボード1には液体を加熱発泡するための電気熱変換体などの発熱部(ヒーター)2が複数、ノズル14に対応した位置に配置されている。ヒーター2にはチッ化タンタル等の抵抗体が用いられ、厚みは0.01〜0.5μm、シート抵抗は単位正方形あたり10〜300Ωのものが用いられる。なお、ヒーターはチッ化タンタル以外の材料、例えばホウ化ハフニウムなどで形成されたものでもよく、厚みやシート抵抗についても特に限定されるものではない。
ヒーター2の両端部には通電を行うためのアルミニウム等でなる一対の電極配線(不図示)が接続されており、一方の電極配線には通電をオン/オフするためのスイッチングトランジスタ(不図示)が設けられている。スイッチングトランジスタは、ヘッド外部から入力される記録信号に応じ、ゲート素子等を含む回路からなる制御用ICによって駆動が制御される。
ヒーターボード1上の隣接するヒーター間にはノズル側壁8が形成され、さらにノズル側壁8の上面には、Si等で形成された天板9が接着等により配置される。これにより、ヒーターボード1、ノズル側壁8および天板9で囲まれた管状のノズル3が画成される。また、ヒーターボード1上、各ノズル3の吐出口4側にはノズル補強壁6が形成されている。天板8は開口(不図示)を備え、この開口に上述した液体流路形成部材120が接続されることで、複数のノズル3に共通に連通する共通液室5への液体導入等が可能となる。
ヒーターボード1上には、弁台座7を介して櫛歯状の部分を有する弁支持部材11が配置される。すなわち弁支持部材11には、各ノズルに対応する可動弁10が複数、片持ち支持された状態で形成されている。そして弁支持部材11は、可動弁10の自由端12の側が吐出口方向に延在し、可動弁支点が共通液室5内に位置するような状態で配置され、熱エネルギーの作用に伴う液体の発泡に応じて自由端側が変位可能となっている。また、後述するように弁支持部材11には適切に分布させた複数の穴が設けられている(図3には示されていない)。さらに、本実施形態において、弁支持部材11は可動弁10よりも大きい厚みを有している。
以上の構成において、ヘッド外部から入力される記録信号に応じ、制御用ICによってスイッチングトランジスタの駆動が制御され、これによってヒーター2の通電がオン/オフされる。共通液室5から各ノズル3に供給された液体は、ヒーター2上で加熱され、発泡する。液体の発泡が始まると、それに伴い可動弁10も変位を開始し、発泡の圧力を効果的に作用させて、液体の流れが吐出口方向へ向かうのを促進する。その後、発生した気泡内の圧力が減少することによって気泡は収縮し、吐出口から出た液体滴が切り離されて吐出される。
以下に、図4および図5を用いて本実施形態の液体吐出ヘッドの製造方法を説明する。なお、図4および図5は図3のY−Y断面図であり、本実施形態の製造方法に合わせて、2組の液体吐出ヘッドの吐出口面を付き合わせた状態の図である。2組の液体吐出ヘッドの吐出口面を付き合わせたものを一体で形成して、後工程において図中の一点鎖線部で切断することで吐出口を形成するという方法で液体吐出ヘッドを作製した。このような作製方法を用いることで、ノズルの位置精度が高くなり、より高画質の記録が可能な液体吐出ヘッドを作ることができる。また、図4および図5は説明を容易にするために図3の液体吐出ヘッドとは寸法関係を変えて、模式的に表している。
図4(a)は、ヒーターボード1にノズル補強壁6や弁台座7が形成された状態を示す図である。まず、シリコンウエハからなるヒーターボード1上に半導体製造工程で用いるものと同様の製造装置を用いて、チッ化タンタルやホウ化ハフニウム等からなるヒーター2を形成した。その後、ヒーターボード1表面に洗浄を施し、さらに密着性の向上を目的としてヒーターボード1表面に紫外線−オゾン等による表面改質を行った。次に、ヒーターボード1上に紫外線感光樹脂フィルムをラミネートし、フォトマスクを介して、紫外線感光性樹脂フィルムのノズル補強壁6および弁支持部材11を接着するための弁台座7として残す部分に、紫外線を照射した。図4(b)は、ノズル側壁8を作るための紫外線感光性樹脂フィルムを、ノズル補強壁6および弁台座7の上にラミネートした図である。図4(c)は、図4(b)でラミネートした紫外線感光性樹脂フィルムに紫外線を照射して、ノズル側壁8を形成した状態の図である。紫外線の照射後にキシレンとブチルセルソルブアセテートとの混合液からなる現像液で現像し、未露光部分を融解させ、露光して硬化した部分がノズル側壁8として形成される。
図5は、図4以降の工程を示す図である。図5(a)は、弁台座7に可動弁10を取り付けた状態を示す図である。可動弁10は、その自由端12を吐出口側に向けた片持ち状態で弁台座7に固定されている。図5(b)は、天板9を取り付けた図である。すなわちノズル壁8には、天板9が溶着されている。その後、図中一点鎖線部で切断して図5(c)のように吐出口4が形成される。
図6は、本実施形態の液体吐出ヘッドの吐出口4の周辺の構成を示す断面図である。液体は流路形成部材120の流路105を通過した後、供給開口13を矢印のように通り、共通液室5に供給される。
ここで、まず基本的な構成として本発明でも採用可能な、特許文献2に記載された液体吐出ヘッドを説明する。
図7の(a)はその液体吐出ヘッドを、天板を取り外した状態で示す上面図、(b)はノズル方向に沿って切断した側断面図である。この基本的な構成では、弁支持部材11と弁台座7の接着工程における加熱や記録動作に伴って生じる熱的影響を考慮して、弁支持部材11の熱膨張による寸法の変化を極力抑える目的で、貫通部である複数の穴19が設けられている。この穴19の形状としては、当該目的に適うものであれば、円形その他の適宜の形状とすることができ、スリット状のものであってもよい。また、同じく穴19の寸法や個数、配置態様についても適宜定め得るものである。
ここで、図7の液体吐出ヘッドは、600dpi(ドット/インチ;参考値である。以下同様)でノズルを配列したものとして実現されている。ただし、図7は模式図であり、実際の縮尺およびノズル個数についてはあくまでも説明のためのものである。なお、図7の液体吐出ヘッドにおいては、ヒーターボード1の面に直交する方向のノズル高さは約18μm、可動弁10’および弁支持部材11’の厚みは約5μmに設定されている。
図8は図7の液体吐出ヘッドにおける可動弁10’および弁支持部材11’の製造工程の説明図である。A−A断面およびB−B断面は図7の(a)の各切断線に対応しており、A−A断面は可動弁の部分、B−B断面は弁支持部材の部分の断面図である。
まず、可動弁10’および弁支持部材11’を形成するためのウェハを母材300として、図8の(1)のように、そこに紫外線感光樹脂フィルム301をラミネートする。次に、マスクを介してフィルム上に紫外線を露光し、(2)に示すような所望のパターンを作成する。そして(3)のように、これを使用して電鋳によって母材300上にNiを厚み5μm程度までの厚みまで成長させる。その後、パターンを溶解させることにより母材300上に可動弁10’および弁支持部材11’が一体形成された状態となる。これを母材から剥がして(5)のように可動弁10と弁支持部材11’とが完成する。
次に、かかる構成と、本発明で採用した構成との相違について説明する。
図9(a)は本発明に係る可動弁10および弁支持部材11の斜視図、(b)は図7に示した構成の可動弁10’および弁支持部材11’の斜視図である。
本発明においては、可動弁10の厚みは弁支持部材11の厚みより小となっている。可動弁10はノズル3内に配設されるが、液体の流れの方向に対して垂直なノズル断面において、当該断面積に対して可動弁10の断面積が占める割合が大きい場合、ノズル内の流路抵抗が大幅に大きくなり、液体の供給性能を低下させてしまう恐れがある。そこで本発明においては、可動弁を図9(b)に示す構成よりも薄く形成している。従ってノズルの断面積が小さい高精細の液体吐出ヘッドを用い、記録の高速化を図るべく液体吐出周波数を高くする場合においても、液体吐出後の補充が円滑かつ迅速に行われることになる。この結、果画像のかすれ等を引き起こす恐れを大幅に少なくすることができる。
また、弁支持部材を基板に実装する際、当該実装を行うための装置の可動部に弁支持部材を圧着(吸着)させてから、基板上に移動させる工程が用いられる。従って、弁支持部材は圧着による変形が発生しないように十分な剛性を持つことが強く望ましい。そのため、本発明のように可動弁を薄膜化する一方、弁支持部材を厚くすることで弁実装時の変形を防止し、取り扱い性を向上して歩留まりの低下を抑制することができるとともに、基板への接着後におけるうねりなども緩和される。
次に、本発明を適用した高精細の液体吐出ヘッドの諸実施形態を説明する。なお、可動弁10および弁支持部材11の厚みなどに関して記載される数値はあくまでも例示であって、本発明所期の目的に適うものであれば、適宜の値とすることができることは言うまでもない。
図10の(a)は、本発明の第一の実施形態に係る液体吐出ヘッドを、天板を取り外した状態で示す上面図、(b)はノズル方向に沿って切断した側断面図である。
本実施形態の液体吐出ヘッドは、1200dpiでノズルを配列したものとして実現され、ヒーターボード1の面に直交する方向のノズル高さは約9μmである。すなわち、本実施形態の液体吐出ヘッドは、図7の構成の1/2の間隔ノズルが配列されており、その高さも約半分となっている。また、可動弁10および弁支持部材11の厚みは異なっており、それぞれ、3μmおよび約5μmに形成されている。
図11は図10の液体吐出ヘッドにおける可動弁10および弁支持部材11の製造工程の説明図である。A−A断面およびB−B断面は図10の(a)の各切断線に対応しており、A−A断面は可動弁の部分、B−B断面は弁支持部材の部分の断面図である。
まず、可動弁10および弁支持部材11を形成するためのウェハを母材300として、図11の(1)のように、そこに紫外線感光樹脂フィルム301をラミネートする。次に、マスクを介してフィルム上に紫外線を露光し、(2)に示すような所望のパターンを作成する。そして(3)のように、これを使用して電鋳によって母材上にNiを厚み3μm程度までの厚みまで成長させる。その後、(4)のように、さらに電鋳の成長面側に紫外線感光樹脂フィルム301をラミネートし、マスクを介してフィルム上に紫外線を露光する。その際使用するマスクは、弁支持部材11となる部分の直上以外に紫外線が照射されるパターンとなっており、(5)のように弁支持部材11となる部分以外が紫外線感光樹脂で覆われた形となる。これを使用して、2回目の電鋳を行う。これによって、(6)のように1回目の電鋳によって形成された弁支持部材11上にさらに2μm程度のNi膜が形成される。その後、紫外線感光樹脂を溶解させることにより、(7)のように母材300上に可動弁10および弁支持部材11が一体形成された状態となる。これを母材から剥がすことで、(8)のように厚みが異なる可動弁10と弁支持部材11が完成する。
以上の第一の実施形態によれば、可動弁10の厚みを小とすることで液体吐出後のリフィル性が向上する一方、弁支持部材11には所定の厚みを確保することで剛性を付与し、その取り扱い性を向上することが可能となる。
図12の(a)は、本発明の第二の実施形態に係る液体吐出ヘッドを、天板を取り外した状態で示す上面図、(b)はノズル方向に沿って切断した側断面図である。
本実施形態の液体吐出ヘッドは、可動弁10と弁支持部材11以外は第一の実施形態と同じ構成を有している。本実施形態においても第一の実施形態と同様に可動弁10および弁支持部材11の厚みは異なっているが、しかし弁支持部材11は二層構造として形成されている。すなわち、本実施形態の弁支持部材11は、可動弁10に連続して同一材料で形成され、かつ可動弁10と同一の厚みを有した下層11Aと、可動弁10以外の部分に下層11Aと同一形状で積層された上層11Bとからなっている。下層11Aは弁台座7に接着され、上層11Bは共通液室5内に配置されることになる。
ここで、連続して高速印刷が行われる際の液体吐出ヘッド内の昇温問題について述べる。前述したように、液体が吐出する際にはまずヒーターに電気エネルギーが付与されて発熱する。そして、気泡が発生し、その気泡発生に基づく圧力により気泡の成長方向を吐出口方向に導くように可動弁が変位し、吐出口から液体が吐出する。この液体吐出の過程において、ヒーター部で発生した熱は大部分が吐出する液滴に伝達される。しかしながら、高速で連続して印刷が行われると、残留した熱がヒーター近傍に蓄積され、やがてはヒーターボード全体、ひいては液体吐出ヘッド全体が昇温することになる。
すると、液室内の液体の温度が高くなることによって液体の粘度が大幅に低下してしまい、所期の吐出量を得るべくヒーターを駆動しても、当該所期の吐出量を超える量の液体が吐出されてしまう恐れがある。また、高温状態が継続されることによってヒーターの劣化が促進され、液体吐出ヘッドの寿命を縮めてしまう恐れもある。
以上のような理由から、連続して高速印刷が行われる場合、液体吐出ヘッド内、特にヒーターボード上に残留した熱は速やかに放出させることが強く望ましい。
そこで第二の実施形態においては、まず弁支持部材11を二層構造とし、下層11Aはは弁台座7に接着され、上層11Bは共通液室5内に配置される弁台座7に接着され、上層は共通液室5内に配置されるものとしている。さらに、上層11Bは下層11Aよりも熱伝導率が高い材料により形成する。よって、ヒーターボード1の上面に形成された弁台座7に接着された弁支持部材11の下層11Aから上層11Bに速やかに熱が伝達される。上層11Bは共通液室5内に配置されるため、ここに満たされた液体により迅速に冷却されることになる。かつ、その液体は、連続して高速印刷が行われる場合、すぐにノズルを介して吐出されることになるので、液体吐出ヘッドへの蓄熱が低減されるものとなる。
図13は図12の液体吐出ヘッドにおける可動弁10および弁支持部材11の製造工程の説明図である。A−A断面およびB−B断面は図12の(a)の各切断線に対応しており、A−A断面は可動弁の部分、B−B断面は弁支持部材の部分の断面図である。
図13の(1)〜(5)までの製造工程は、それぞれ、上述した第一の実施形態に係る図11の(1)〜(5)と同様である。本実施形態では、図13の(6)において2回目の電鋳を行うが、1回目の電鋳時よりも熱伝導率の高い材料を用いる。その例としては、銅や金などが挙げられる。これによって、(6)に示すように、1回目の電鋳によって形成された弁支持部材11となる部分上にはさらに2μm程度の高熱伝導率材による膜が形成される。その後、紫外線感光樹脂を溶解させることにより、(7)のように母材300上に可動弁10および弁支持部材11が一体形成された状態となる。これを母材から剥がすことで、(8)に示すように、可動弁10と弁支持部材11の厚みが異なり、かつ下層11Aおよび上層11Bの二層構造を有した弁支持部材11が完成する。
以上の第二の実施形態によれば、上記第一の実施形態と同様の効果が得られることに加え、連続して高速印刷が行われる際の蓄熱の影響を少なくすることが可能となる。すなわち、二層構造とした弁支持部材11の構成により、液体吐出ヘッド内の熱を放熱しやすくなり、連続駆動時における液体吐出量を安定化することで、記録速度の高速化を達成しつつも、安定した記録品位を保つことが可能となる。さらには、高温状態が継続されることによるヒーターの劣化が生じにくく、従って液体吐出ヘッドの寿命を縮めてしまう問題も生じにくいものとなる。
図14の(a)は、本発明の第三の実施形態に係る液体吐出ヘッドを、天板を取り外した状態で示す上面図、(b)はノズル方向に沿って切断した側断面図である。
本実施形態の液体吐出ヘッドは、可動弁10と弁支持部材11以外は第一の実施形態と同じ構成を有している。本実施形態において、弁支持部材11は、その上面(共通液室5に面して位置する面)が平面状ではなく、凹凸状をなしており、凹部11Cの厚みは可動弁10と同一、凸部11Dの厚みは可動弁10よりも大きく形成されている。
図15は図14の液体吐出ヘッドにおける可動弁10および弁支持部材11の製造工程の説明図である。A−A断面、B−B断面およびC−C断面は図14の(a)の各切断線に対応しており、A−A断面は可動弁の部分、B−B断面は弁支持部材の凸部の断面図、C−C断面は弁支持部材の凹部の断面図である。
図15の(1)〜(4)までの製造工程は、それぞれ、上述した第一の実施形態に係る図11の(1)〜(4)と同様である。本実施形態では、図15の(5)において、電鋳の成長面側に紫外線感光樹脂フィルム301をラミネートし、マスクを介してフィルム上に紫外線を露光する。その際使用するマスクは、弁支持部材11の凸部となる部分以外に紫外線が照射されるパターンとなっており、(5)のように弁支持部材11の凸部となる部分以外が紫外線感光樹脂で覆われた状態となる。これを使用して、2回目の電鋳を行う。これによって、(6)に示すように、1回目の電鋳によって形成された弁支持部材11となる部分上にはさらに2μm程度のNi膜が形成される。その後、紫外線感光樹脂を溶解させることにより、(7)のように母材300上に可動弁10および弁支持部材11が一体形成された状態となる。これを母材から剥がすことで、(8)に示すように、可動弁10と弁支持部材11の厚みが異なり、かつ所望の凹部11Cおよび凸部11Dを有した弁支持部材11が完成する。
以上の第三の実施形態によれば、弁支持部材11に凹凸部を設けることで、共通液室5内の液体に接触する表面積が大きくなる。従って、連続して高速印刷が行われる際にヒーターボードが昇温しても、弁支持部材11を通して熱を共通液室5内の液体に一層放熱しやすくなる。よって、連続駆動時における液体吐出量をさらに安定化し、安定した記録品位を保つことが可能となる。また、高温状態が継続されることによるヒーターの劣化、ひいては液体吐出ヘッドの寿命を縮めてしまう問題も生じにくいものとなる。
なお、図14では、ノズル配列方向に延在する凹部11Cとノズル配列方向に延在する凸部11Dとが交互に現れる凹凸形状が例示されている。しかし可動弁の厚みを小としてリフィル性を向上する一方、弁支持部材11に所定の剛性を付与してその取り扱い性を向上し、かつ表面積を増大して放熱性を高めるという効果が得られる範囲で、凹凸部の形状・寸法を適宜定め得ることは勿論である。例えば、可動弁10と連続する平面上に、突起状の部分が分散して配置されたような形状とすることも可能である。
1 ヒーターボード
2 ヒーター
3 ノズル
4 吐出口
5 共通液室
7 弁台座
10,11’ 可動弁
11,11’ 弁支持部材
11A,11B 弁支持部材の構成層
11A,11B 弁支持部材の凹凸部
2 ヒーター
3 ノズル
4 吐出口
5 共通液室
7 弁台座
10,11’ 可動弁
11,11’ 弁支持部材
11A,11B 弁支持部材の構成層
11A,11B 弁支持部材の凹凸部
Claims (6)
- ノズルから液体を吐出するのに利用される熱エネルギーを液体に作用するための発熱部を有する基板と、前記ノズルに対応して設けられ、前記発熱部による熱エネルギーの作用に伴う前記液体の発泡に応じて変位可能な可動弁を支持する弁支持部材とを具えた液体吐出ヘッドにおいて、前記可動弁の厚みを前記弁支持部材の厚みより小としたことを特徴とする液体吐出ヘッド。
- 前記ノズルが複数配列され、該複数のノズルが共通に連通して液体を供給するための液室を具えるとともに、前記弁支持部材は前記液室に面するように前記基板に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
- 前記弁支持部材は、前記可動弁と同一の材料かつ同一の厚みで形成されて前記基板に取り付けられる下層と、該下層とは異なる材料で形成され、前記液室に面する上層とを有することを特徴とする請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
- 前記上層は、前記下層より熱伝導率が高い材料で形成されていることを特徴とする請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
- 前記液室に面する前記弁支持部材の面は凹凸を有することを特徴とする請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
- 前記弁支持部材の凹部は、前記可動弁と同一の厚みであることを特徴とする請求項5に記載の液体吐出ヘッド。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008293594A JP2010120184A (ja) | 2008-11-17 | 2008-11-17 | 液体吐出ヘッド |
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- 2008-11-17 JP JP2008293594A patent/JP2010120184A/ja not_active Withdrawn
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