JP2009291951A - 液体吐出ヘッド及び液体吐出ヘッドの製造方法 - Google Patents

液体吐出ヘッド及び液体吐出ヘッドの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】発熱体によって加熱する発泡液と吐出液とを分離膜によって分離した液体吐出ヘッドにおいて、可動分離膜が発熱面に接触するのを避けることにより、可動分離膜の熱による劣化を軽減する。
【解決手段】可動分離膜113と基板100との間に発泡液室R2が形成され、可動分離膜113と吐出口形成部材140との間に発泡領域と分離された吐出液室R1が形成されている。発泡液室R2内の発泡液を発熱体101の熱によって発泡させると可動分離膜113は変位し、吐出液室R1内の吐出液は吐出口141から吐出される。発泡液室R2内には、可動分離膜113が発熱部101側へと変位した際に、その変位を規制する変位規制部130が設けられており、これによって可動分離膜113が発熱部101に接触することは回避される。
【選択図】図2

Description

本発明は、熱エネルギを用いて液体を吐出する液体吐出ヘッド及び液体吐出ヘッドの製造方法に関し、特に、気泡の発生を利用して変位する可動分離膜を用いる液体吐出方法及び液体吐出ヘッドに関する。
現在、記録媒体への記録を行う記録装置としては、インクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置が提案されている。このインクジェット記録装置では、熱エネルギを吐出すべき液体(以下、インクと称す)に与えることで、インク内に気泡を発生させ、その気泡発生時の圧力によって吐出口からインクを吐出するものが知られている。このようにインクの吐出エネルギとして熱エネルギを用いるインクジェット記録装置としては、特許文献1や特許文献2に開示されているような記録ヘッドを用いるものが知られている。この記録ヘッドは、インクを吐出するための吐出口と、この吐出口に連通するインク流路と、インク流路内に配されたインクを吐出するための吐出エネルギ発生手段としての発熱体(電気熱変換体)とを備えている。
一般にインクジェット記録装置では、品位の高い画像を高速、低騒音で記録できるという利点がある。また、吐出エネルギとして熱エネルギを用いる記録ヘッドではインクを吐出するための吐出口を高密度に配置することができる。このため、この種の記録ヘッドによれば小型な構成で高解像度の画像を形成することができる。さらに、異なる色のインクを吐出する複数の記録ヘッドを並設することにより、カラー画像の形成も可能になる。従って、この種のインクジェット記録方式は、プリンター、複写機、ファクシミリ等の多くのオフィス機器をはじめ、捺染装置、フォーム印刷機及びダンボール印刷機などの産業用印刷システムにまで広く利用されている。
一方、上記のような種々の利点を有する反面、従来の熱エネルギを用いたインクジェット記録ヘッドでは、発熱体がインクに接した状態で加熱を繰り返すため、発熱体の表面に色剤などの組成物やその炭化物などによる堆積物が付着し易い。こうした堆積物は、発熱体によるインクの加熱性能を低下させ、吐出される液滴の液量の減少あるいは吐出不良などを発生させる要因となる。さらに、吐出すべき液体が熱によって劣化し易い液体あるいは十分な発泡が得られにくい液体である場合には、吐出性能が低下する可能性はさらに高まる。
これに対して、吐出液を発熱体によって直接加熱しない構成の液体吐出ヘッドが特許文献3に開示されている。この液体吐出ヘッドは、オリフィスを備える作用室内の吐出液(インク)と、発熱体によって加熱される液体(被加熱液)とが分離膜によって分離されている。そして、発熱体によって被加熱液に状態変化(液体の蒸気化)を生じさせ、その作用力によって分離膜を変位させて吐出液の吐出を行う。したがって、この液体吐出ヘッドによれば、被加熱液として、熱による劣化、堆積が生じにくい液体を使用することが可能となり、発熱体による加熱性能を維持することが可能となる。
また、被加熱液と吐出液とを分離膜によって分離する構成を有する液体吐出ヘッドとして、特許文献4には、液体吐出ヘッド全体を大きな分離膜によって上下に分離する構成も開示されている。この大きな分離膜は、流路を形成する二つの板材によって挟持され、この膜によって二つの液路内の液体が互いに混合しないようになっている。このため、この特許文献4に開示の液体吐出ヘッドにおいても、上記特許文献3と同様に、発熱体の加熱性能を維持することが可能となる。
特公昭61−59911号公報 特公昭61−59914号公報 特開昭55−81172号公報 特開昭59−26270号公報
上記のように特許文献4及び5に示す液体吐出ヘッドでは、気泡の発生圧力によって分離膜が急激に吐出口側に向けて弾性変形し、その後は、気泡の収縮に伴って元の状態に復帰する。この復帰過程において、分離膜は復帰時の慣性力により、初期位置を通過して加熱体側へと変形し、加熱体に接触することがある。分離膜が発熱体に接触した場合、その加熱体の熱によって分離膜が劣化する虞がある。こうした分離膜の劣化は、気泡の発生圧力が高い場合および高速記録を行う場合などに特に生じ易い。
本発明は、発熱体によって加熱する発泡液と吐出液とを分離膜によって分離した液体吐出ヘッドにおいて、可動分離膜が発熱面に接触するのを避け、可動分離膜の熱による劣化を軽減することが可能な液体吐出ヘッド、及びその製造方法の提供を目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
すなわち、本発明の第1の形態は、吐出液を吐出させるための吐出口を形成した吐出口形成部材と、発熱面を有する基板と、前記吐出口形成部材と前記基板との間に設けられた可動分離膜と、を有し、前記可動分離膜と基板との間に発泡領域が形成されると共に、前記可動分離膜と前記吐出口形成部材との間に前記発泡領域と分離された前記吐出液室が形成され、前記発熱面の熱により前記発泡領域における発泡液を発泡させて前記可動分離膜を変位させることにより、前記吐出液室における吐出液を前記吐出口から吐出させる液体吐出ヘッドにおいて、前記可動分離膜の前記発熱面側への変位を規制する変位規制部を備えたことを特徴とする。
本発明の第2の形態は、発熱面を有する基板に、前記発熱面を囲む壁体部を形成する工程と、前記壁体部の表面に可動分離膜を設けることにより、基板と可動分離膜との間に発泡領域を形成する工程と、前記可動分離膜の表面に前記発泡領域と対向する吐出液室を形成する工程と、を備え、前記壁体部を形成する工程と前記吐出液室を形成する工程の少なくとも一方において前記可動分離膜の前記発熱面側への変位を規制する変位規制部を形成することを特徴とする。
本発明によれば、発泡領域に発生した気泡の収縮に伴って可動分離膜が発熱面側へと変位した時、可動分離膜が基板に形成されている発熱面に接触するのを避けることが可能となる。このため、可動分離膜が発熱面との熱によって損傷することもなくなり、記録ヘッドの寿命及び信頼性の向上を図ることができる。
以下、本発明に係る液体吐出ヘッド及び液体吐出ヘッドの製造方法の実施形態を図面を参照しつつ詳細に説明する。
(液体吐出ヘッドの第1の実施形態)
まず、本発明に係る液体吐出ヘッドの第1の実施形態を図1ないし図3を参照しつつ説明する。なお、図1はこの第1の実施形態における液体吐出ヘッドH1の内部構造を示す一部切欠斜視図、図2は図1に示したものの断面図である。また、図3は図1に示す液体吐出ヘッドの内部構造を示す説明平面図である。より具体的には、図3において、(a)は吐出口形成部材140を取り除いた内部の吐出液及び吐出液の流路(第2の流路)などを示し、(b)は(a)で図示した吐出液流路及び可動分離膜を取り除いた発泡液室及び発泡液の流路(第1の流路)などを示している。
図1ないし図3において、液体吐出ヘッドH1はシリコンからなる基板100と、基板100の表面(図では上面)に形成された第2の積層部120と、その表面(図では上面)に形成された第1の積層部110と、両積層部を覆う吐出口形成部材140とを備える。この吐出口形成部材140には、インクなどの吐出液を吐出する吐出口が一定のピッチを介して一列に配列されている。なお、以下の説明において、表面とは、液体吐出口形成部材140の外面(吐出口形成面)側に位置する面を指し、これと対向する面を裏面と称す。
基板100の表面には、複数の発熱部101が吐出口141の配列ピッチと同一のピッチで配列されており、各発熱部101と吐出口141とは互いに対向している。各発熱部101は、図2及び図3に示すように、所定の間隙を介して互いに対向する一対の発熱体101A,101Bによって構成されている。各発熱体101A,101Bの両端には、不図示の配線電極が接続されている。また、基板100の表面には、一対の発熱体101Aと101Bとの間において、直線状(ここでは、基板の長手方向)に延在するリブ状の突起130が形成されている。この突起は、後述の可動膜の基板側への変位を規制する変位規制部130となっている。なお、102は配線電極などに接続された電気接続部であり、ここには外部から電気信号などが入力される。
また、基板100の表面に形成される第2の積層部120は、その表面に接合される可動分離膜113及び基板100と共に、複数の発泡液室R2とこれに連通する第2の流路CH2とを形成している。発泡液室R2は吐出口141の配列方向に沿って複数配列されている。また、第2の流路CH2は吐出口141の配列方向に延出しており、その両端部は、基板100に形成された2個の貫通孔(第2の貫通孔)103及び104(図3(a)参照)に連通している。この2個の貫通孔103,104のうち、一方の貫通孔103は、発泡液を発泡液室R2に供給する発泡液供給口を構成し、他方の貫通孔104は、発泡液室R1から流出した発泡液を排出させる発泡液排出口を構成している。
各発泡液室R2は、一対の発熱体101A,101Bからなる各発熱部101をそれぞれ囲むように形成された複数の隔壁部121と、その上面に液密に接合される可動分離膜113とにより形成されている。各隔壁部121は、相対向する一対の側部121aと両側部121aを連結する連結部121bとから構成されている。また、各発泡液室R1は隣接する隔壁部121との間に形成される流入口g1を介して第2の流路CH2を構成する供給側流路CH21と連通し、流出口fg2を介して排出側流路CH22に連通している。なお、この各発泡液室R1内において、発熱体101の発熱面から可動分離膜113までの投影領域は、発熱部101の熱エネルギによって発泡液内に気泡が発生する発泡領域となっている。従って、隣接する発泡領域は発泡液室によって実質的に隔離されている。
また、排出側流路CH22は、第2の積層部120、可動膜113、隔壁121、及び基板100によって形成されている。供給側流路CH21は、第2の積層部120、可動膜113の表面側に設けられる後述の第1の積層部110、吐出口形成部材140、及び基板100によって形成されている。
一方、第1の積層部110は、第2の積層部120の表面に部分的に対向して設けられており、その両側壁部112は、第1の積層部110における両側壁部122の表面に液密に接合している。また、第1の積層部110の両側壁部の間には、第1の隔壁121の一部と可動分離膜113を介して対向する隔壁部111が形成されている。この隔壁部111は吐出口の配列方向に延出する側部111aと、ここから側方へと突出する複数の突出部111bとを有し、これらの部分は可動分離膜113に液密に接合している。また、複数の突出部111bは一定の間隔を介して形成されており、可動分離膜113及び吐出口形成部材140と共に複数の吐出液室R1を形成している。各吐出液室は、各吐出口に対応しており、隣接する吐出口とは実質的に隔離した領域を形成している。この吐出液室R1は可動分離膜113を介して発泡液室R2と対向している。また、各吐出液室R2は、第2の積層部120に形成された吐出液供給口123を介して基板100に形成された貫通孔(第1の貫通孔)104に連通している。この第1の貫通孔104から吐出液供給口123を経て発泡液室R1に至る空間領域が吐出液を供給する第1の流路CH1となっている。
次に、上記構成の液体吐出ヘッドにおける液体の吐出動作を、図2(a)〜(f)を参照しつつ説明する。
図2(a)に示す初期状態においては、第1の流路CH1内の吐出液Lが毛細管力によって吐出口141の近傍まで満たされている。また、この初期状態において、可動分離膜113は平坦な状態(図では水平な状態)に保たれている。この状態において発熱体101A,101Bに熱エネルギが与えられると、発熱体101A,101Bは急速に加熱され、気泡発生室R2内の発泡液を加熱発泡させる(図2(b),(c))。この加熱発泡により生じる気泡Bは、膜沸騰現象によって生じる気泡であり、発熱面全域に一斉にきわめて高い圧力を伴って発生するものである。このときに発生する圧力は、圧力波となって気泡発生室105内の発泡液L2内に伝播し、可動分離膜113に作用してこれを吐出口側へと変位させる。この可動分離膜113の変位によって第1の流路CH1内の吐出液L1の吐出が開始される。
発熱体101A,101Bそれぞれの表面全面に発生した気泡Bは急速に成長し、一つの気泡となって周囲の液体が膜状になる(図2(d))。発生初期のきわめて高い圧力による気泡の膨張は、可動分離膜113をさらに吐出口側へと変位させ、それに伴って吐出液は吐出口141さらに外方へと押し出されて行く。この可動分離膜113の吐出口側への変位は、気泡Bが最大になるまで行われる(図2(d))。
その後、気泡が消泡過程に入ると、気泡の収縮に伴って可動分離膜113は基板側へ向けて変位する(図2(e))。この変位が進むことにより、吐出口より押し出された液体は、飛翔する液滴LDと吐出液室R1に戻る液体L1とに分離される。飛翔した液体LDは吐出口形成部材の吐出口面と対向している記録媒体に着弾してドットを形成し、する。この際、可動分離膜113は気泡の収縮に伴って、一旦、図2(a)に示す初期状態の位置よりも下方(発熱部の表面側)に変位し(図2(f)参照)、その後、初期状態に復帰する。
こうした可動分離膜113の挙動において、可動分離膜113の発熱部101側への変位量が大きい場合には、可動分離膜113が発熱部101に接触することがある。可動分離膜113が発熱部101と接触した場合、可動分離膜113は発熱部101の熱によって劣化し易くなり、吐出性能の低下や破損などを生じさせ、記録ヘッドの寿命低下を招く要因となる。特に、可動分離膜113が破損した場合には、発泡液が気泡発生領域へ流入するため、インクの吐出性能に大きな影響を与えることとなる。
こうした弊害を回避するため、本実施形態では、上述のような一対の発熱体101A,101Bの間に基板表面から突出する突起130が設けられている。この突起130の形成位置は、消泡時において可動分離膜113が最も基板に近づく部分との対向位置、換言すれば発泡室の横幅(図2における左右方向の幅)の略中央部分に設定されている。このため、可動分離膜113が発熱部101側へと変位した場合にも、可動分離膜113の中の最も大きく変位可能な部分が突起130に当接し、それ以上の変位が規制される。このため、可動分離膜113と発熱体101A,101Bとの接触は回避され、発熱部の熱による可動分離膜113の劣化や寿命低下は大幅に低減される。しかも、本実施形態では、突起130が一対の発熱体101A,101Bの間に設けられているため、それぞれの発熱体101A,101Bからインクへの熱の伝播が突起130によって妨げられることはなく、良好な加熱効率を得ることができる。
次に、吐出液L1及び発泡液L2の供給、流動を図2及び図3に基づき説明する。
本実施形態では、吐出液L1及び発泡液L2が基板100の裏面側から供給された後、以下に説明する屈曲した流路を経て可動分離膜113の表面側に位置する吐出液室R1と、可動分離膜113の裏面側に形成される発泡室L2とに供給されるようになっている。
すなわち、基板100には貫通孔105が形成されており、この貫通孔105の裏面側(発熱面と反対側の面)の開口部には不図示の吐出液の供給源が接続され、ここから貫通孔105内へと吐出液が供給される。貫通孔105に供給された吐出液L1は、図2(a)の矢印Aに示すように吐出液供給口123を通過して吐出口形成部材140の裏面に当接した後、毛管力によって図2(a)及び図3(a)の矢印Bに示すように各吐出液室R1内に供給されて行く。これにより、各吐出液室R1内には吐出液L1が充填され、吐出口141にはメニスカスが形成される(図2(a)参照)。
一方、発泡液L2も基板100の裏面側から供給される。すなわち、基板100に形成された発泡液供給口としての貫通孔103には不図示の発泡液供給源が接続されており、ここから、貫通孔103を経て第2の流路CH2へと発泡液L2が供給される。この際、貫通孔103に供給された発泡液L2は、図2(a)の矢印Cに示すように吐出口形成部材140の裏面に当接した後、図2(a)及び図3(b)の矢印Dに示すように供給側流路CH21内へと流入する。その後、供給流路CH21に流入した発泡液L2は、図3(b)に示すように各気泡発生室R2内に毛細管力で流入して行き、各気泡発生室R2は発泡液L2で満たされる。さらに、発泡液室R2に流入した発泡液L2は、図3(b)の矢印Eに示すように、流出口g2を経て排出側流路CH22へと流入し、最終的に排出口を形成する貫通孔104から不図示の流路へと排出される。
また、発泡液室R2への発泡液L2の供給及び供給した発泡液L2の流動を可能としているため、高速記録を連続的に行った場合にも、発泡液L2を流動させることによって発泡液の高温化、劣化などを低減することが可能になる。但し、発泡液は吐出液のように消費されるものではないため、通常は大きな流れを必要としない。従って、必要に応じ、上流からの加圧、もしくは下流からの吸引を行うポンプなどの補助機能を用いて液体を流すようにし、安定した発泡状態を保つことが望ましい。
以上のように、この第1の実施形態においては、発泡液室R1及びこれに連通する第1の流路CH1と、吐出液室R2及びこれに連通する第2の流路CH2とが、互いに液体流通不能に分離されている。そして、第1、第2の流路CH1とCH2は、いずれも基板100に形成された貫通孔103、104、105に連結されている。従って各流路CH1、CH2での液体の流動及び各液室R1、R2への液体の供給及び排出は、基板の裏面側に開口する各貫通孔103、104、105に液体供給源を連結することで可能となる。従って、吐出口形成部材140の表面には何らの部材も取り付ける必要がない。このため、本実施形態の液体吐出ヘッドをインクジェット記録装置などに適用した場合、吐出口形成部材140の表面と記録媒体との間隔を、記録に適した距離まで接近させることが可能となる。従って、この第1の実施形態における液体吐出ヘッドは、高品位な画像形成に適したものとなる。また、吐出液を供給する貫通孔105は基板100に形成すれば良いため、その形成位置は必要に応じて自由に選択することができる。このため、貫通孔105との距離間隔が短縮化されるように吐出口141の形成位置を設定することが可能になり、高速かつ連続的な吐出を行ったとしても吐出液及び発泡液を、迅速かつ安定的に供給することが可能になる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。
図4は、この第2の実施形態における液体吐出ヘッドH2の断面図であり、吐出液及び発泡液の流れ及び吐出動作における可動分離膜の変化を段階的に示している。この第2の実施形態では、図4(a)の初期状態に示すように、可動分離膜113に対し、予め発泡領域側に凸状態となるたるみ113aが形成されており、この点が上記第1の実施形態と異なる。なお、本実施形態の可動分離膜以外の構成は、上述した第1の実施の形態と同様であり、図4において、上記第1の実施形態と同一もしくは相当部分には同一符号を付し、その説明詳細は省く。
図4(a)において、吐出液、発泡液は、上記第1の実施形態と同様に吐出液室R1、気泡発生室105に充填されている。この充填された状態において発熱部の一対の発熱体101A,101Bに熱エネルギが与えられると、発熱体101A,101Bは急速に加熱され、発泡領域に存在する発泡液L2が加熱されて気泡Bが発生する(図4(b)参照)。この気泡Bの発生時に生じた圧力は、上記の第1の実施形態と同様に、圧力波となって気泡発生室104内の発泡液に伝播し、可動分離膜113を吐出口側へと変位させ、その変位によって吐出液の吐出が開始される。この際、第2の実施形態における可動分離膜113には、予めにたるみ113aが形成されているため、可動分離膜113は気泡発生時の初期の圧力の伝播を受け易く、より効率的に吐出液の吐出を開始することができる。この後、可動分離膜113は、気泡Bの成長によって可動吐出口側へと変位し(図4(b)〜(d)参照)、消泡とともに発熱部110側へ向けて変位して、最終的に初期位置に復帰する。但し、本実施形態では、可動分離膜113にたるみ113aが形成されており、これが初期状態において発熱部101に接近した状態となっている。従って、本実施形態の可動分離膜113は、消泡過程において発熱部側へと変位した際に、発熱部101と接触し易い形状を有していることとなる。しかし、この第2の実施形態においても上記第1の実施形態と同様に、発熱部1A,1Bの間に変位規制部としての突起130が設けられており、これが可動分離膜113の中で最も変位量の大きな部分と対向している。すなわちこの第2の実施形態では、突起130がたるみ113aの中央部分との対向位置に設けられている。このため、可動分離膜113が発熱部101側へと変位する場合にも突起130がこれに当接するため、可動分離膜113の過剰な変位を規制することができ、可動分離膜113が発熱部に接触するのを回避することができる。
なお、この第2の実施形態においては、気泡の発生に伴って可動分離膜113のたるみ113aが変位するものとなっている。従って、可動分離膜113は、たるみ113aが変位可能な材質で形成されるものであれば良く、特に伸縮性を有していない材質で形成することも可能であるが、伸縮性を有する材質の膜を用いることも可能である。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を説明する。
図5はこの第3の液体吐出ヘッドH3の内部構造を示す一部切欠斜視図、図6は図5に示したものの断面図である。なお、図5及び図6において、上記第2の実施形態と同一もしくは相当部分には同一符号を付し、その説明の詳細は省く。
上記第1及び第2の実施形態では、液体を吐出する複数の吐出口141を一列に配置した液体吐出ヘッドを例に採り説明した。これに対し、この第3の実施形態における液体吐出ヘッドH3は、吐出液供給口123を挟んで2列の吐出口列(第1の吐出口列151と第2の吐出口列152)が設けられている。そしてこの2つの吐出口列151と152のそれぞれに対応して吐出液室R1、発泡液室R2、第1の流路CH1、第2の流路CH2などを有する液体供給構造が2組設けられている。この2組の液体供給構造は、吐出口列151を挟んで略対称な構成を有しており、いずれも上記第2の実施形態と同様の構成となっている。
但し、この第3の実施形態では、各吐出口列151を構成する吐出口141と、吐出口列152を構成する吐出口142とが、吐出口の配列方向において1/2ピッチだけずらした位置に配列されている。すなわち、一方の吐出口列における各吐出口141の中間位置に、他方の吐出口列の吐出口142が配置され、これによって液体吐出ヘッドの各吐出口から吐出されるドットを、1列の吐出口を備える場合に比べて2倍の密度で形成することが可能になっている。なお、この吐出口の配列に伴って各吐出口列151、152に対応する2組の内部構造も吐出口の配列ピッチの1/2だけ互いにずれた位置に形成されている。
また、この第3の実施形態における基板100には、吐出液供給口123に連通する1つの貫通孔105が形成されると共に、その貫通孔105の両側に発泡液供給口を形成する貫通孔103と、発泡液排出口を形成する貫通孔104が2組形成されている。このため、2組の吐出口列151、152への吐出液の供給、及び各吐出口列151、152に対応する各発泡室R2、R2への発泡液L2の供給は、いずれも基板100の裏面側から行うことができる。すなわち、発泡液L2は、不図示の発泡液供給源から、貫通孔105の両側に形成される2個の貫通孔103、103を経て、これらに連通する2個の供給側流路CH21,CH21内に流入する。そして、各貫通孔103、103を通過した発泡液L2は、図6の矢印Cに示すように、吐出口形成部材140の裏面に当接した後、矢印Dに示すように発泡室R2、R2へ向けて流動し、流入口g1,g1から発泡室R2、R2へと流入する。発泡室R2、R2内に充填された発泡液L2は、さらに流出口g2から排出側流路CH22、CH22に流入し、最終的に発泡液排出口を形成する貫通孔104、104から外部へと排出される。
また、吐出液L1は、不図示の吐出液供給源から中央部に形成された1つの貫通孔105及び吐出液供給口123へと供給される。そして、図6の矢印Aに示すように、吐出液供給口123を通過した吐出液L1は、吐出口形成部材140の裏面に当接した後、矢印B1、B2に示すように分流され、吐出口供給口123の両側に形成された複数の吐出液室R1、R1に流入される。これにより、各吐出液室R1、R1には吐出液が充填され、各吐出口141にはメニスカスが形成され、吐出動作可能な状態となる。各吐出口列151、152における各吐出口からの吐出液の吐出動作は第2の実施形態と同様に各発泡室R2,R2内に設けた発熱部101,101によって発泡液L2を発泡させ、可動分離膜113のたるみ113aを変位させることによって行うことができる。また、この第3の実施形態においても、各発熱部101は、所定の間隙を介して配置された一対の発熱体101A,101Bによって構成されている。そして、各発泡室R2,R2内に設けられた一対の発熱体101Aと101Bとの間には、基板表面から突出する変位規制部としての突起130が設けられており、これが可動分離膜113の中の最も大きく変位可能な部分に対応している。従って、発熱部側へ向けて大きく変位した場合にも、可動分離膜が突起130に当接し、それ以上の変位を規制するため、可動分離膜113と発熱体101A,101Bとの接触は回避され、可動分離膜113の劣化や寿命低下は大幅に低減される。また、突起130は一対の発熱体101A,101Bの間に設けられているため、発熱体101A,101Bからインクへの熱の伝播が突起130によって妨げられることもない。
なお、この第3の実施形態においても、可動分離膜113には伸縮性を有する膜を用いることが可能であることは勿論であり、伸縮性を有する膜を用いる場合には、上記第1の実施形態のように可動性分離膜113にたるみを設けない構成とすることも可能である。
以上述べたように、上記各実施形態の構成によれば、吐出液と発泡液とを別液体とし、吐出液を安定的に高速で吐出させることができる。このため、従来、熱を加えても発泡が十分に行われにくく吐出力が不十分であった高粘度の液体であっても、この液体を発泡室に供給し、発泡が良好に行われる液体を発泡液室に供給することで良好に液体を吐出させることができる。発泡を良好に行うことができる液体としては、例えば、エタノール:水=4:6の混合液(1〜2cp程度)がある。
また、発泡液として、熱を受けても発熱体の表面にコゲなどの堆積物を生じさせない液体を選択することにより、発泡を安定させ、良好な吐出を行うことができる。
また、加熱に弱い液体を吐出液として用いる場合にも、発泡室に熱的に変質しにくく良好な発泡を生じさせ得る液体を供給すれば、加熱に弱い液体に熱的な害が及ぶことはなくなり、しかも高速かつ高吐出力で液体を吐出させることができる。
なお、上記各実施形態では、吐出口列を1列または2列の吐出口列を有する液体吐出ヘッドを例に採り説明したが、本発明は、3列以上の吐出口列を有する液体吐出ヘッドにも適用可能である。例えば、吐出口列を奇数列備える場合には、上記第1または第2の実施形態と、第3の実施形態とを組み合わせた液体供給構造を用いれば良い。また、吐出口列を偶数列備える場合には、上記第3の実施形態における液体供給構造を複数備える構成とすれば良い。
また、本発明に係る液体吐出ヘッドは、記録媒体と液体吐出ヘッドとを相対的に移動させるインクジェット記録装置に適用可能である。このインクジェット記録装置としては、記録媒体の搬送方向と交差する方向へと液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型、又は位置を固定した液体吐出ヘッドに対し記録媒体を移動させるフルライン型のいずれにも適用可能である。
なお、上記各実施形態においては、可動分離膜の発熱側への変位を規制する変位規制部を、発泡室内での液体の流れの方向、すなわち吐出口の配列方向と直交する方向に延出するよう形成した場合を例に採り説明した。しかし、本発明は特にこれに限定されるものではなく、変位規制部を吐出口の配列方向と直交する方向以外の方向に形成しても良い。例えば、吐出口の配列方向と平行する方向に形成しても良く、これによれば発泡室内での発泡液の流動をよりスムーズに行うことが可能になる。また、この場合にも一対の発熱体を、変位規制部の形成位置を避けて形成することが望ましい。すなわち、吐出口の配列方向において異なる位置に分離して形成し、各発熱体の間に変位規制部を設けることが望ましい。
さらに、上記実施形態では一定方向に延在する1個のリブ状の変位規制部を設けた場合を示したが、変位規制部の形状、個数はリブ状のものに限定されるものではない。例えば、一つの発泡室内の複数箇所に可動分離膜の変位を規制する分離した複数個の変位規制部を点在させても良い。さらには、互いに交差する2方向に沿って点在、あるいは延在する変位規制部を形成しても良い。例えば、十字状に延在する変位規制部、あるいは十字方向に沿って点在する変位規制部を設けても良い。いずれにしても、変位規制部によって、気泡の生成が妨げられないようなものであれば、変位規制部の形状、配置は特に限定されない。また、変位規制部は上記実施形態のように基板上に設ける場合に限らず、発泡室を形成する壁体部(上記実施形態における隔壁部121)に形成することも可能である。
(液体吐出ヘッドの製造方法の実施形態)
次に、本発明に係る液体吐出ヘッドの製造方法の一実施形態を図7ないし図9に基づき説明する。なお本実施形態においては、図5に示すように、吐出液供給口123を挟んで2列の吐出口列が形成されている液体吐出ヘッドを製造する工程を説明する。但し、本実施形態における以下の製造工程では、各吐出口列の各吐出口が吐出液供給口を介して互いに対称となる位置に配列される場合を例に採り説明する。
図7は本実施形態における液体吐出ヘッドの基板100を複数面付けしたウエハを示す説明平面図、図8は液体吐出ヘッドの製造において、図7に示すウエハに対して行われる各工程を、ウエハ100内の一つの基板100に着目して説明する説明図である。 図8(a)に示す基板100には、シリコンなどの基体上に絶縁及び蓄熱を目的としたシリコン酸化膜または窒化シリコン膜が成膜されている。さらに、このシリコン膜の上に0.01〜0.2μm厚の発熱体101を構成する電気抵抗層と、0.2〜1.0μm厚のアルミニウムなどの配線電極とがパターニングされている。電気抵抗層は、ハフニウムボライド、窒化タンタル、タンタルアルミなどによって構成されている。各発熱体101の両端には、それぞれ配線電極が接続されており、この一対の配線電極から発熱体101に電圧を印加して電流を流すことにより、発熱体101を発熱させることができる。配線電極の間の電気抵抗層上には、酸化シリコンや窒化シリコンなどの保護層が0.1〜0.2μm厚で形成され、さらにその上に、0.1〜0.6μm厚のタンタルなどの耐キャビテーション層が成膜されている。電気抵抗層は、この保護層及び耐キャビテーション層によってインクなど各種の液体から保護される。特に、気泡の発生・消泡の際に発生する圧力や衝撃波は非常に強く、硬くて脆い酸化膜の耐久性を著しく低下させるため、金属材料のタンタルなどが耐キャビテーション層として用いられる。また、使用する液体、流路構成、抵抗材料の組み合わせによっては、上述の保護層を必要としない構成を採ることも可能である。
本実施形態においては、発熱体として、電気信号に応じて発熱する電気抵抗層で構成された発熱体101を有するものを用いたが、本発明に係る発熱体はこれに限定されるものではなく、吐出液を吐出させるのに十分な気泡を発泡液に生じさせるものであればよい。例えば、発熱部としてレーザなどの光を受けることで発熱するような光熱変換体や高周波を受けることで発熱するような発熱部を有する発熱体であってもよい。
なお、本製造方法で用意した基板100は、発熱部を構成する電気抵抗層とこの電気抵抗層に電気信号を供給するための配線電極とで構成される電気熱変換体を備えるものとなっている。しかし、基板100には、前記の電気熱変換体のほか、電気熱変換素子を選択的に駆動させるトランジスタ、ダイオード、ラッチ、シフトレジスタなどの機能素子が一体的に半導体製造工程によって作り込むことも可能である。
また、上述したような基板に設けられている電気熱変換体の発熱部を駆動し、液体を吐出するためには、電気抵抗層に配線電極を介して矩形パルスを印加し、配線電極間の電気抵抗層を急峻に発熱させればよい。
また、本実施形態では、発泡室R2の中央の変位規制部130を配置するため、図8(a)に示すように発熱部101を2つの発熱体101A,101Bに分割し、両発熱体101A,101Bの間に変位規制部130を形成した。図8(b)は、基板110上に形成されている複数の発熱体101A,101Bの間に変位規制部130を形成した状態を示している。本実施形態では、ウェハ上に形成された多数対の発熱体101A,101Bの間に同時に変位規制部130を形成している。すなわち、まず、基板100の表面全体に感光性樹脂のドライフィルムフォトレジスト(厚さ5μm(東京応化工業製、TMMR−DF)をラミネートする。次いで、変位規制部130を形成するパターンを露光、現像して所望の変位規制部120を得る。本実施形態では、発泡室R2における発泡液の流れの方向(発熱体の配列方向と直交する方向)に沿ってリブ状の変位規制部130を形成するためのパターンの露光、現像を行った。しかし、変位規制部の形状、形成位置は、パターンを変更することによって容易に変更可能であり、例えば、発泡室R2における発泡液の流れの方向と平行する方向に延在するリブ状の変位規制部を形成することも可能である。
次に、前述した基板100の上に、図8(c)に示す第2の流路CH2を形成する工程を述べる。
まず、基板100の表面全面に感光性樹脂のドライフィルムをラミネートし、第2の流路CH2を形成するためのパターンを露光、現像する。これにより、露光された部分が第2の積層部108aを形成し、現像によってドライフィルムが除去された部分が第2の流路CH2として形成される。この工程において、第2の積層部108aと基板100との密着力を向上させるために、基板100表面を、紫外線とオゾンからなる表面処理を行ってもよい。また、発熱部や基板100に外部から電気信号を入力する電気接続部115以外を感光性樹脂の薄い皮膜(1〜10μm)で覆い、その上に上述した第2の積層部108を形成してもよい。本実施形態では、変位規制部の密着力の向上と、基板表面の微小な凹凸を平坦化させることを目的として、5μm厚の感光性樹脂のドライフィルム(東京応化工業株式会社製;TMMR−DF)を密着力向上層としてラミネートしている。このドライフィルムに対しては、フォトマスクを介してステッパー(キヤノン製;FPA3000)により、除去すべき領域以外に露光を行う。第2の流路CH2として、18μm厚の感光性樹脂のドライフィルム(東京応化工業株式会社製TMMR−DF)をラミネートし、露光後、前記の密着力向上層と併せて現像する。この後、加熱キュアを行い所望の形状の第2の流路を得た。本実施形態においては感光性樹脂としてドライフィルムを用いたが、厚さが均等に形成されるものであればこの限りではなく、液状の感光性樹脂をスピンコートなどによって形成してもよい。
なお、前述の工程では、基板の表面全体にドライフィルムフォトレジストを形成した後、露光と現像とを順次行って変位規制部を形成した後に、第2の流路CH2を形成するためのドライフィルムの積層し、露光、現像を行うようにしている。しかしながら、変位規制部を形成するための現像と、第2の流路を形成するための現像とを、同一の工程で行うことも可能である。すなわち、基板の表面全体にドライフィルムフォトレジストを形成した後、変位規制部を形成するための露光のみを行い、続いてドライフィルムを積層して第2の流路を形成するための露光を行う。この後、変位規制部を形成するための現像と第2の流路を形成するための現像を、まとめて行う。これによれば、変位規制部の凹凸の影響を受けることなく、平坦で精度の良い第2の流路CHを形成することが可能になる。
この後、図8(d)に示すように、第1の流路CH1に吐出液を供給するための吐出液供給口123につながる貫通孔105と、第2の流路CH2に発泡液を供給するための貫通孔103と、発泡液を排出させるための貫通孔104とを形成する。吐出液供給口123は上述した第2の流路形成時に同時に形成することができる。第1の流路CH1に吐出液を供給するための貫通孔(吐出液供給孔)123及び貫通孔105は、複数の吐出口141に対応して複数配列された吐出液室R1(この時点ではまだ形成されていない)に、比較的多くの吐出液を連続的に供給する必要がある。このため、液体供給口123及び貫通孔105は、第2の積層部120及び基板100に対し、2本の吐出口列151、152の間に、吐出口141の配列方向に沿ってスリット状に形成する。
一方、第2の流路CH2内での発泡液の消費量は、吐出液の消費量に比較して著しく少ない。このため、第2の流路CH2において発泡液の供給、排出を行うための貫通孔103及び104は、気泡発生室105列の両端に円形状に形成されている。
これらの貫通孔103、104、105は、基板100の表面に形成された第2の流路CH2と、基板100上に形成された配線パターンとを保護した後、サンドブラストによって形成した。貫通孔103、104、105の他の形成方法としては、レーザ加工、ダイサーのチョップカット加工によるスリット形成、基板100の裏面側からの水酸化カリウムによる異方性エッチングなどによるスリット形成を行うことが可能である。さらに、上述のサンドブラスト加工やレーザ加工との複合加工で形成してもよい。
図8(e)は、可動分離膜113を第2の流路CH2を構成する第1の積層部120上に接合し、所望の形状に成形した状態を示している。可動分離膜113の材質としては、例えばポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォンなどのエンジニアリングプラスティックに代表される耐熱性、耐溶剤性、成形性や薄膜フィルム化などに良好な樹脂がある。この他、可動分離膜113の材質としては、シリコーンゴム、塩素化ポリエチレン、フッ素系エラストマなどの上記特性に加え、伸縮性のある樹脂及びそれらの化合物が望ましい。また可動分離膜113の厚さは、分離膜としての強度を達成でき、膨張、収縮が良好に動作するという観点からその材質と形状を考慮して決定すればよいが、0.5μm〜10μm程度が望ましい。
ここで、一例として、厚さ4μmの可動分離膜113を形成する方法を説明する。まず、塩素化ポリエチレン樹脂(昭和電工株式会社製)のトルエン8%溶液を、予め剥離層を形成したシリコンウエハ10上に滴下した。なお、剥離層は、例えば、ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製;ポバールPVA105H)の10%水溶液をスピンコータ(ミカサ株式会社製)で0.5〜1.0μmの厚さに塗布することによって形成することができる。そして、同様のスピンコータを1000rpmの回転数で使用し、シリコンウエハ10上に塩素化ポリエチレン樹脂のコーティングを行い、同樹脂を乾燥させることによって所望の厚さの膜を形成した。次いで、シリコンウエハ10ごと温水に浸漬し、形成した膜をシリコンウエハ10から剥離させ、その剥離させた膜を凸パターンがパターンニングされた、たるみ形成用の凸基板に貼り付けて加熱し、その凸パターンに従って膜にたるみ形状113aを形成した。
その後、貫通孔の加工を終了した基板100の第2の流路CH2上に厚さ2μm感光性樹脂を転写し、その感光性樹脂に紫外線を照射する。さらに紫外線照射によって反応が開始された感光性樹脂に、凸基板から剥離させた膜を配置する。このとき膜は、そのたるみ113aと各気泡発生室105とが合致するように配置する。その後15分間、膜に対して120℃の加熱を行いつつ2kgの圧力を加えることにより、膜と第2の流路CH2とを接合させる。
次いで、接合された膜のうち、気泡発生室105列の上部をマスキングした後、酸素プラズマアッシング装置によって約15分間の処理を行い、マスキングした部分以外の部分を除去する。この後、マスキングを外すことによって可動分離膜113の形成が終了する。
なお、本例では、不要部分の可動分離膜の除去に酸素プラズマアッシング装置を用いたが、可動分離膜を精度よく除去できれば他の加工方法を用いても良く、またエキシマレーザによるアブレーション加工や、ダイサーによる機械加工などを用いてもよい。
図8(e)は、前記可動分離膜113を形成した基板100に、第1の流路CH1を形成する第1の積層部107aを形成した状態を示す図である。本例において、第1の積層部107aの構造材としては、厚さ45μmのドライフィルム(東京応化工業株式会社製;TMMR−DF)を用いている。このドライフィルムを基板100上にラミネートし、フォトマスクを介してステッパー(キヤノン株式会社製;FPA3000)で露光し、現像を行う。その後、表面を平坦にするため、ダイヤモンド砥石で切削仕上げ加工を行い、表面粗さを0.5μm以下、基板面内を1μmの平面度に加工して、高さ20μmの第1の積層部107aを形成した。このように、本例においては、厚さ45μmのドライフィルムを用い、第1の積層部107aを形成した後に切削仕上げ加工を行っている。これは、基板100の表面には、第2の積層部108aと、可動分離膜113と、貫通孔111、112とが形成されており、それによって1の積層部107aを形成するためのドライフィルムに凹凸が生じるためである。この凹凸を前述の切削仕上げ加工によって平坦化することにより、この後の工程で行う吐出口形成部材240との接合を広範囲に亘って均一かつ安定的に行うことが可能になる。これにより、吐出口形成部材240と第1積層部107aとの間からの液体のリークを防止することができる。
次に、図9(g)〜(i)を参照しつつ吐出口形成部材140の形成工程について説明する。なお、この吐出口形成部材の形成工程は、複数の吐出口形成部材140を形成するための領域を含んだウエハ全体に対して対して以下の工程が行われるが、ここでは、ウェハ内の一つの基板200に着目して説明を行う。
まず、図9(g)に示すように、基板200上に吐出口101を形成する第1層210を形成する。なお、ここに示す基板200は、両面研磨を施したベアシリコンウエハを母材としている。ベアシリコンウエハには、剥離層としてポリビニルアルコール(クラレ製;ポバールPVA105H)の10%水溶液が、予め0.5〜1.0μmの厚さで塗布されている。
第1層210の構成材料としては、感光性樹脂のドライフィルム(東京応化工業株式会社製;TMMR−DF 18μm)を用いる。このドライフィルムを基板200上にラミネートし、フォトマスクを介してステッパー(キヤノン株式会社製;FPA3000)により、図9(g)に示す吐出口101となる部分など(図9(g)中、一点鎖線にて示す部分)を除いて露光する。
次いで、吐出口より大きく、吐出液室R1の一部空間を形成するための第2層220を第1層210と同様にラミネートし、図9(h)の一点鎖線にて示す部分220aに露光を行う。次いで、第1の流路106と、第2の流路105を隔離するための隔離壁230aを形成するための第3層230を上述の2つの層210,220と同様にラミネートし、露光を行う。その後、各層に対して一括して現像、熱キュアを行って吐出口形成部材140の形成が終了する(図9(i)参照)。吐出口形成部材140として、本実施形態では感光性樹脂を用い、これを露光、現像などの工程によって形成する場合を説明したが、精度よく吐出口が形成できると共に製造コストが抑えられる製法であれば、他の製法を用いてもよい。例えば、エレクトロフォーミングや、精密プレスによる吐出口形成などであってもよい。
本実施形態では、吐出液室の体積を確保するために3層の構成としたが、液滴の体積によっては層を簡略化することも可能である。
このようにして複数の吐出口形成部材140を含んだ吐出口形成基板(図示せず)を形成した後、その吐出口形成基板を、図8(f)までの工程が完了したシリコンウエハ10に重ねて接合する。この接合工程では、まず、基板100の第1の積層部110上に、感光性樹脂(東京応化工業株式会社製;TMMR−DF)を接着層として約2μmの厚さに転写塗布し、反応を開始させるために紫外線を約90mJ照射する。次いで、上述の工程を経て作製した液体吐出部材140を、基板200の裏面より赤外線透過機能のある顕微鏡で確認しつつ、吐出液室R1と吐出口101との位置合せを行う。本実施形態では、カールズース社製両面アライナーMA6を用いて吐出液室R1と吐出口101との位置合わせを行い、その後、60分間、120℃の加熱を行いつつ2kgの圧力を加えて複数の吐出口形成基板と複数の基板100とを接合した。
その後、赤外線透過顕微鏡を搭載したダイサー(株式会社ディスコ製;DFD341)を用いて、ウエハ10から各基板100を分割する。その後、各基板100を温水に浸漬して吐出口形成部材の基板200を剥離除去することにより、本実施形態の液体吐出ヘッドが完成した(図9(j)参照)。
第1の実施形態における液体吐出ヘッドの内部構造を示す一部切欠斜視図である。 図1に示したものの断面図である。 図1に示す液体吐出ヘッドの内部構造を示す説明平面図であり、(a)は吐出液及び吐出液の流路(第2の流路)などを示し、(b)は発泡液室及び発泡液の流路(第1の流路)などを示している。 第2の実施形態における液体吐出ヘッドの断面図であり、吐出液及び発泡液の流れ及び吐出動作における可動分離膜の変化を段階的に示している。 第3の実施形態における液体吐出ヘッドの内部構造を示す一部切欠斜視図である。 図5に示したものの断面図である。 液体吐出ヘッドを構成する基板を複数面付けしたウエハを示す説明平面図である。 本発明に係る液体吐出ヘッドの基板に対して行う各製造工程を示す説明図である。 本発明に係る液体吐出ヘッドの吐出口形成部材の各製造工程を示す説明図である。
符号の説明
H1,H2,H3 液体吐出ヘッド
CH1 第1の液体流路
CH2 第2の液体流路
R1 吐出液室
R2 発泡液室
101 発熱体
110 第1の積層部
113 可動分離膜
120 第2の積層部
123 吐出液供給口
130 突起(変位規制部)
140 吐出口形成部材

Claims (11)

  1. 吐出液を吐出させるための吐出口を形成した吐出口形成部材と、発熱面を有する基板と、前記吐出口形成部材と前記基板との間に設けられた可動分離膜と、を有し、前記可動分離膜と基板との間に発泡室が形成されると共に、前記可動分離膜と前記吐出口形成部材との間に前記発泡室と分離された前記吐出液室が形成され、前記発熱面の熱により前記発泡室における発泡液を発泡させて前記可動分離膜を変位させることにより、前記吐出液室における吐出液を前記吐出口から吐出させる液体吐出ヘッドにおいて、
    前記可動分離膜の前記発熱面側への変位を規制する変位規制部を備えたことを特徴とする液体吐出ヘッド。
  2. 前記変位規制部は、前記基板上に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
  3. 前記変位規制部は、可動性分離膜の最も変位量の大きな部分と対向する位置に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の液体吐出ヘッド。
  4. 前記変位規制部は、前記基板上に設けられた突起であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
  5. 前記変位規制部は、同一の前記発泡室内に設けられた複数の発熱部の間に位置していることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
  6. 前記変位規制部は、直線状に延在する突起によって形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
  7. 前記変位規制部は、互いに交差する2方向に沿って延在する突起によって形成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
  8. 前記吐出液室に連通する第1の流路と、
    前記発泡室に連通すると共に、前記第1の流路に対し液体流通不能に分離された第2の流路と、をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
  9. 前記発泡室は、前記可動分離膜と前記基板との間に設けられた壁体部と、前記可動分離膜と、前記基板と、によって形成され、
    前記変位規制部は、前記壁体部に設けられた突起によって構成されることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
  10. 前記変位規制部は、感光性樹脂によって形成されていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
  11. 発熱面を有する基板に、前記発熱面を囲む壁体部を形成する工程と、
    前記壁体部の表面に可動分離膜を設けることにより、基板と可動分離膜との間に発泡領域を形成する工程と、
    前記可動分離膜の表面に前記発泡領域と対向する吐出液室を形成する工程と、を備え、
    前記壁体部を形成する工程と前記吐出液室を形成する工程の少なくとも一方において前記可動分離膜の前記発熱面側への変位を規制する変位規制部を形成することを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2011221200A (ja) * 2010-04-08 2011-11-04 Sanyo Electric Co Ltd シート状部材が貼り付けられた機器

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