JP2010116541A - 無機材料用インク - Google Patents

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竜太 深澤
Tetsuo Hara
哲郎 原
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Abstract

【課題】鉛フリーであっても十分な耐性を有する無機材料用インクを提供する。
【解決手段】ビスマス系ガラスなどのいわゆる無鉛低融点ガラスに、ポリビニールアルコールなどの粘性剤と、グリセリンなどの分散剤とを、所定割合で混合する。さらに、塗布対象の色に応じて着色剤を混合し、必要に応じて濡れ性の向上のためにレベリング剤を混合する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ガラスなどの無機材料に印字する無機材料用インクに関し、特に、無鉛低融点ガラスを用いた無機材料用インクに関する。
プラズマディスプレイの封止剤、電球などのガラスに製品番号等を印字するインクなどに、低融点ガラスが用いられている。低融点ガラスは、環境に対する配慮から、一酸化鉛などの鉛類が含まれていない、いわゆる鉛フリーのものが要求されている。
特許文献1には、モル%表示で、P:15〜50、SnO:2〜35、ZnO:5〜45、B:0.1〜30、SnO/ZnO<1、MgO+CaO+SrO+BaO:0〜35、Al+In+WO:0〜10、LiO+NaO+KO:0〜3、からなる無鉛低融点ガラスが開示されている。
特許第4061792号
しかし、無鉛低融点ガラスは、プラズマディスプレイの封止剤に用いる場合には十分な耐性を有しているかもしれないが、これのみでは、電球などのガラスに製品番号等を印字するインクに要求される耐性、つまり、剥がれ落ちにくさを有していない。これは、上記無鉛低融点ガラスは、剥がれ落ちの防止機能を有していた鉛を含んでいないためである。
このため、ガラス製品、たとえば電球の製造ラインにおいても、電球から製品番号等が剥がれ落ちることがある。例えば、電球の搬送用のロボットアームが、電球の印字部分を把持した状態で、電球とロボットアームとが擦れた場合などである。印字が剥がれ落ちた電球は、最悪の場合には、電球としての機能に問題がないとしても、出荷条件等を満たさず、不良品扱いとされてしまうことがある。
これでは、鉛フリーのインクを用いて環境面で貢献できる製品が製造できたとしても、製品のコストアップを回避することができず問題である。
そこで、本発明は、鉛フリーであっても十分な耐性を有する無機材料用インクを提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明の無機材料用インクは、
塗布対象の軟化点以下の軟化点を有する無鉛ガラス粉体と、
前記無鉛ガラス粉体と混合される分散剤と、
前記無鉛ガラス粉体と前記分散剤との混合物に粘性を付与する粘性剤と、を含む。
ガラス粉体としては、いわゆる無鉛低融点ガラスに分類されるものを用いる。具体的には、ビスマス系ガラス、バナジウム系ガラス、リン酸系ガラス、リン酸−錫系ガラス、リン酸−亜鉛系ガラス、リン酸−錫−亜鉛系ガラス、酸化銅−リン酸塩系ガラス、ホウ珪酸塩系ガラスのいずれかとすることができる。
粘性剤としては、親水性及び水溶性を有するものを用いる。例えば、ポリビニールアルコールを含むものとする。
分散剤としては、吸湿性及びアルコール溶性を有するものを用いる。例えば、グリセリンを含むものとする。なお、グリセリンは、粘性剤としても機能するので有用である。
発明の実施の形態
まず、本発明の実施形態の無機材料用インクの概要について説明する。本実施形態の無機材料用インクは、以下説明する、ガラス粉体と、粘性剤と、分散剤と、着色剤と、レベリング剤とを含み、これらを順序不問で混合して成る。
1.ガラス粉体について
ガラス粉体は、鉛を全く含まない或いは鉛を実質的に含まない、ビスマス系ガラス、バナジウム系ガラス、リン酸(P)系ガラス、リン酸−錫(P−SnO)系ガラス、リン酸−亜鉛(P−ZnO)系ガラス、或いは、リン酸−錫−亜鉛(P−SnO−ZnO)系ガラス、ホウ珪酸塩系ガラスなどの粉体を用いることができる。
ここで、ガラス粉体は、塗布対象の軟化点以下の軟化点を有するものとする必要がある。具体的には、例えば、電球、蛍光灯などのガラス、ウィンドウガラスその他のガラスを含む無機材料を塗布対象とする場合には、これらにインクを転写した後に、300℃〜500℃程度の温度で焼付を行うことが一般的である。とすると、インクの所望の焼付を行うためには、この範囲の温度の軟化点を有するインクを製造することが必要である。本実施形態のガラス粉体としては、この400℃〜450℃の軟化点を有するものを選択している。
つぎに、ガラス粉体の成分、配合量等について説明する。ここでは、ビスマス系ガラスとして、Bi−B系ガラスを例に説明するが、他のガラスであっても、下記の考え方に沿って適宜成分を選択し、配合すればよい。Bi−B系ガラスは、たとえば、Biと、ZnOと、Bと、BaOと、SiOと、Alとを含む。
Biは、ガラスの軟化点の低下を促進するものである。本実施形態においては、ガラス粉体は、製造工程における塗布対象に付与される最高温度以下の軟化点とする必要があるので、重要な役割を担う。Biの含有量は、例えば、20重量%〜85重量%、好ましくは60重量%〜80重量%の範囲から適宜選択すればよい。
この範囲は、一般的なプラズマディスプレイの封止剤用の低融点ガラスのものとは相違する。すなわち、当該低融点ガラスの場合には、失透防止の観点から、Biの含有量の上限を60重量%程度に抑えていることが多い。これに対して、本実施形態の場合には、ガラスの軟化点を低下させる必要があるので、Biの含有量は、相対的に多くなる。
ZnOは、ガラス溶融時の失透を抑制するものである。ZnOの含有量は、例えば、5重量%〜30重量%、好ましくは10重量%〜20重量%の範囲から適宜選択すればよい。この範囲を遵守すれば、焼成時にガラスが結晶化しやすくなって流動性が悪くなることが防止できる。本実施形態の場合には、Biを相対的に多くしたことによるガラスの失透対策として、ZnOの含有量も、一般的なプラズマディスプレイの封止剤用の低融点ガラスのものよりは多めである。
は、ガラスを形成するための必須成分である。Bの含有量は、5重量%〜10重量%、好ましくは6重量%〜8重量%である。この範囲も、一般的なプラズマディスプレイの封止剤用の低融点ガラスのものとは相違する。すなわち、当該低融点ガラスの場合には、ガラスの流動性欠如による焼結性の低下防止の観点から、Bの含有量の下限を25重量%程度に抑えていることが多い。これに対して、本実施形態の場合には、Bi及びZnOの含有量を多くしていることから、相対的に、Bの含有量は少なくなる。
BaOは、ガラス溶融時の失透を抑制するものである。BaOの含有量は、0.1重量%〜3重量%、好ましくは0.2重量%〜0.5重量%の範囲から適宜選択すればよい。BaOについても、ZnOの場合と同様の理由により、その含有量は、一般的なプラズマディスプレイの封止剤用の低融点ガラスのものよりは多めである。
SiOは、耐候性を高めてガラスを安定化させるために選択的に用いられるものである。SiOの含有量は、0〜5重量%の範囲から適宜選択すればよい。
Alは、ガラス焼成時に結晶の析出抑制のために選択的に用いられるものである。Alの含有量は、0〜5重量%の範囲から適宜選択すればよい。
なお、塗布対象のガラスが高歪点ガラス(85×10−7/℃)、ソーダ板ガラス(90×10−7/℃)等の場合には、ガラス粉末に対して、ウイレマイト、コーディエライト、β−ユークリプタイト、ジルコン、酸化スズ、ムライト、石英ガラス、アルミナ等の耐火性フィラー粉末を混合するとよい。
2.粘性剤について
粘性剤は、親水性及び水溶性を有するものを用いる。本実施形態では、粘性剤は、水を主成分としたものを用いる。水は、たとえば40重量%〜95重量%程度とし、その他の成分としては、ポリビニールアルコール及び所要の添加剤をたとえば5%〜60%程度とする。
粘性剤の添加剤としては、メタノール、酢酸メチルなどを用いることができる。水に対するポリビニールアルコール等の配合量が多すぎると、ガラス用インクの粘度が増加することによって、ゴム製の転写用ローラに付着したまま、或いは、金属製の転写用ローラに付着しないといった状況となる。これでは、結果として、塗布対象のガラスにうまくインクを転写することができないので留意すべきである。具体的には、ゴム製の転写用ローラの場合には、水の下限は、40重量%程度とすべきである。
3.分散剤について
分散剤は、水溶性又はアルコール溶性を有するものを用いる。具体的には、高純度のグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコールなどを用いる。なお、グリセリン等は、粘性剤としても機能しうる。したがって、粘性剤と分散剤とを兼用することも可能である。
4.着色剤について
着色剤は、塗布対象のガラスの色に応じて適宜選択することができる。
例えば、無色透明ガラス、半透明ガラス或いは白色ガラスに対する印字の色は、黒系色が好まれることが多い。この場合には、高純度の酸化銀又は、Cu−Cr−Mn系、Ni−Mn−Fe−Co系、Co−Cr−Fe系、Co−Cr−Ni系の顔料を選択することができる。この結果、印字の色は、黒っぽい紫金色となる。あるいは、高純度の酸化銀とCu−Cr−Mn系等の黒色顔料との混合物を選択することができる。この結果、印字の色は、黒系色となる。
例えば、琥珀色ガラスに対する印字の色は、黒系色、銀系色が好まれることが多い。この場合には、高純度の酸化銀とCu−Cr−Mn系等の黒色顔料との混合物を選択することができる。この結果、酸化銀の配合量が相対的に多い場合には、印字の色は銀系色となり、酸化銀の配合量が相対的に少ない場合には黒系色となる。
例えば、青色ガラスに対する印字の色は、金系、黄系の色が好まれることが多い。この場合には、高純度の酸化銀、或いは、Ti−Sb−Cr系、Ti−Sb−Ni系の顔料を選択することができる。この結果、印字の色は金系色又は黄系色となる。
例えば、黄色ガラスに対する印字の色は、黒系色、青系色が好まれることが多い。青系色としたいCo−Cr−Al系、Co−Si系、Co−Al系の場合の顔料を選択することができる。
なお、着色剤として、酸化銀を用いる場合には、その配合を、無機材料用インク全体に対して30重量%以上とすると、100℃を超える発熱が生じる場合がある。したがって、人手を介してインクを製造する場合には、配合量に留意すべきである。なお、酸化銀は、粘性剤としても機能しうる。したがって、粘性剤と着色剤とを兼用することも可能である。
また、着色剤として黒色顔料を用いる場合には、無機材料用インク全体に対して10重量%以上としても、酸化銀を用いた場合のような高温の発熱は見られなかった。このほかにも、着色剤として、釉薬、墨汁などを用いることもできる。
5.レベリング剤について
レベリング剤は、無機材料用インクの濡れ性を向上させて、インクと塗布対象との接触角を調整するためのものである。このレベリング剤は、アクリルポリマーとジプロピレングリコールモノメチルエーテルとが約半分ずつを含むものとしている。
なお、無機材料用インクの各剤の配合比率は、ガラス粉体が20%〜75%、粘性剤が5〜10%と、分散剤が15%〜30%と、着色剤が1%〜30%と、レベリング剤が0.8%〜2%の範囲から適宜選択可能である。
(実施例1)
本実施例では、以下のものを用いて無機材料用インクを製造した。
1.ガラス粉体
日本山村硝子社製のBT328を用いた。配合比率は、73.8%とした。なお、このガラス粉体は、軟化点が418℃である。
2.粘性剤
クラレ社製のPVA−205を用いた。配合比率は、6.2%とした。
3.分散剤
和光純薬工業社製のグリセリン(製品元コード:072−00626)を用いた。このグリセリンは、純度97%のものである。配合比率は、16.0%とした。
4.着色剤
和光純薬工業社製の酸化銀(製品元コード:191−00881)を用いた。この酸化銀は、純度99%のものである。配合比率は、3.0%とした。
5.レベリング剤
ビックケミージャパン社のアクリル系レベリング剤(BYK−380N)を用いた。配合比率は、1.0%とした。このレベリング剤は、アクリルポリマーが53重量%、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルが47重量%である。
ガラス粉体等を混合してから、攪拌器を用いて十分に攪拌したものを用いて、実際の製造ラインで、300個の自動車用電球に製品番号等を転写してみた。そして、自動車用電球からインクの剥げ落ちの有無について検証してみた。この結果、すべての自動車用電球からのインクの剥げ落ちは確認されなかった。
なお、上記のような攪拌器を用いた攪拌によらずとも、人手によって目視で十分攪拌されたと判断できたものを用いて自動車用電球に製品番号等を転写した場合でも、インクの剥げ落ちは確認できなかった。もっとも、攪拌が十分でないと、印字部分の見栄えが悪くなったり、場合によっては印字部分の一部が塗布対象から剥げ落ちたりすることがあるので、攪拌機を用いて攪拌する方が好ましい。
ここで、自動車用電球からインクの剥げ落ちが存在しない理由は、ガラス粉体に対して、粘性剤等を所要の割合で混合してから焼き付けた結果、インクと自動車用電球との接触角が小さくなり、自動車用電球表面に馴染むように、インクが塗布されていることがわかった。すなわち、自動車用電球の表面と印字部分との間に凹凸差が少ないため、インク界面に応力がかかりにくくなっていることから、インクの剥げ落ちを防止できていることがわかった。
また、印字の色については、無色透明ガラス或いは半透明ガラスに対する印字の色は黒っぽい紫金色となり、有色ガラスに対する印字の色は金色となった。
表1は、本実施例のインクの成分分析結果を示す表である。この成分分析結果は、長野県工業技術総合センターにて行われた、SEM−EDSによる定性分析結果である。なお、表1には、本実施例のインクの顕微鏡写真も添付してある。
表1に示すように、本実施例の無機材料用インクは、2keV付近のBiの含有量が約13000カウント強と多く、次いで、1.5keV未満のZn、Oがともに2000カウント強と多く、さらに、3keV付近のAgの含有量が約1000カウントと多いことがわかる。これらは、いずれも、ガラス粉体又は着色剤の成分である。
(実施例2)
本実施例では、着色剤を、上記酸化銀に黒色顔料を混合したものとした。その他の各剤は、実施例1で用いた各剤とした。各剤の配合比率を以下のとおりである。
1.ガラス粉体(日本山村硝子社BT328)
配合比率:63.8%
2.粘性剤(クラレ社PVA−205)
配合比率:6.2%
3.分散剤(和光純薬工業社072−00626)
配合比率:16.0%
4.着色剤
酸化銀(和光純薬工業社191−00881):配合比率:3.0%
黒色顔料:配合比率:10.0%
5.レベリング剤(ビックケミージャパン社BYK−380N)
配合比率:1.0%
まず、印字の色については、黒色顔料を配合したことにより、若干、黒色感が増したが、無色透明ガラス或いは半透明ガラスに対する印字の色は黒っぽい紫金色であり、有色ガラスに対する印字の色は金色であったと評価できるものであった。
そして、実施例1と同様に、実際の製造ラインで、300個の自動車の自動車用電球に製品番号等を転写してみたところ、すべての自動車用電球からのインクの剥げ落ちは確認されなかった。
(実施例3)
本実施例では、実施例2で用いた各剤を用いた。配合比率は、以下のとおりである。
1.ガラス粉体(日本山村硝子社BT328)
配合比率:56.1%
2.粘性剤(クラレ社PVA−205)
配合比率:2.6%
3.分散剤(和光純薬工業社072−00626)
配合比率:15.1%
4.着色剤
酸化銀(和光純薬工業社191−00881):配合比率:2.6%
黒色顔料(日本山村硝子社):配合比率:19.8%
5.レベリング剤(ビックケミージャパン社BYK−380N)
配合比率:0.9%
実施例2のものに対して、黒色顔料の配合比率を高めてみた。実施例2の場合に比してさらに黒色感が増した。
そして、実施例1と同様に、実際の製造ラインで、300個の自動車の自動車用電球に製品番号等を転写してみたところ、すべての自動車用電球からのインクの剥げ落ちは確認されなかった。
(実施例4)
分散剤及び粘性剤として、既述の和光純薬工業社製のグリセリンを用いた。粘性剤として、クサカベ社製のアラビアガム粉末を水で薄めて40%濃度に希釈したアラビアガムの希釈液を用いた。なお、着色剤、レベリング剤は用いなかった。各剤の配合比率は以下のとおりである。
1.ガラス粉体(日本山村硝子社BT328)
配合比率:69.6%
2.分散剤及び粘性剤(和光純薬工業社072−00626)
配合比率:13.0%
3.粘性剤(クサカベ社製アラビアガム粉末の希釈液)
配合比率:17.4%
本実施例の無機材料用インクは、保存性においてやや難があるものの、インク自体が塗布される金属ローラに対する伸びが向上する、金属ローラ又はゴム製の転写用ローラの洗浄が容易であるといった利点が得られるインクが製造できた。もっとも、インクの耐性も十分であった。
(実施例5)
分散剤として、既述の和光純薬工業社製のグリセリンに対して、クサカベ社製のアラビアガム粉末を水で薄めて40%濃度に希釈したアラビアガム液を用いた。着色剤として、各々福田金属箔粉工業社製の銅と亜鉛とを、9:1の割合で混合した粉末を用いた。各剤の配合比率は以下のとおりである。
1.ガラス粉体(日本山村硝子社BT328)
配合比率:69.6%
2.分散剤及び粘性剤(和光純薬工業社072−00626)
配合比率:17.7%
3.粘性剤(クサカベ社製アラビアガム粉末の希釈液)
配合比率:6.3%
4.着色剤(福田金属箔粉工業社の銅及び亜鉛)
配合比率:6.3%
本実施例の無機材料用インクも、保存性においてやや難があるものの、インク自体が塗布される金属ローラに対する伸びが向上する、金属ローラ又はゴム製の転写用ローラの洗浄が容易であるといった利点が得られるインクが製造できた。もっとも、インクの耐性も十分であった。なお、着色剤を、和光純薬工業社製の酸化銀に変更し、その他の条件は本実施例の通りとしたところ、更に、印字の色もはっきりした。
(実施例6)
本実施例では、着色剤を、上記酸化銀に黒色顔料(焼成顔料:川村化学社KR200)を混合したものとした。その他の各剤は、実施例1で用いた各剤とした。各剤の配合比率を以下のとおりである。
1.ガラス粉体(日本山村硝子社BT328)
配合比率:55.8%
2.粘性剤(クラレ社PVA−205)
配合比率:7.0%
3.分散剤(和光純薬工業社072−00626)
配合比率:14.0%
4.着色剤
酸化銀(和光純薬工業社191−00881):配合比率:3.0%
黒色顔料(焼成顔料:川村化学社KR200):配合比率:19.2%
5.レベリング剤(ビックケミージャパン社BYK−380N)
配合比率:1.0%
まず、印字の色については、上記の黒色顔料を配合したことにより、無色透明ガラス、半透明ガラス、有色ガラスのいずれにおいても黒色と評価できるものであった。
そして、実施例1と同様に、実際の製造ラインで、300個の自動車の自動車用電球に製品番号等を転写してみたところ、すべての自動車用電球からのインクの剥げ落ちは確認されなかった。
(実施例7)
本実施例では、実施例6での各剤を用い、それらの配合比率を変更したものである。
1.ガラス粉体(日本山村硝子社BT328)
配合比率:23.4%
2.粘性剤(クラレ社PVA−205)
配合比率:9.0%
3.分散剤(和光純薬工業社072−00626)
配合比率:24.0%
4.着色剤
酸化銀(和光純薬工業社191−00881):配合比率:18.4%
黒色顔料(焼成顔料:川村化学社KR200):配合比率:24.2%
5.レベリング剤(ビックケミージャパン社BYK−380N)
配合比率:1.0%
まず、印字の色については、各実施例のなかで、しっかりと黒色となることが確認できた。これは、黒色顔料の配合量を増加させたことに起因すると考えられる。また、粘度についても、粘性剤を増加させたことによって硬さがなくなり、適当なものとなった。その結果、印字の転写状態が格段に良くなり、また、印字の剥がれ落ち、欠けなどの現象が発生しないことも確認できた。
そして、実施例1と同様に、実際の製造ラインで、15000個の自動車の自動車用電球に製品番号等を転写してみたところ、すべての自動車用電球からのインクの剥げ落ちは確認されなかった。
表2は、実施例1〜7の無機材料用インクを無色透明ガラス、琥珀色ガラスに印字した後に焼成した状態を撮影した写真である。各実施例の一対の写真のうち、上側のものが無色透明ガラスに係る写真であり、下側のものが琥珀色ガラスに係る写真である。
表2によれば、実施例1〜7の無機材料用インクのうち、無色透明ガラスに印字した場合に視認性が高いと言えるのは、実施例1〜3,6,7のものといえる。半透明ガラス或いは白色ガラスの場合にも、これらの実施例のものを用いた場合に視認性が高かった。一方、琥珀色ガラスに印字した場合に視認性が高いと言えるのは、実施例4,5,7のものといえる。このことから、無色透明ガラス等と琥珀色ガラスとの双方のガラスに共通して用いる無機材料用インクとしては、実施例7のものが好ましいといえる。
また、実施例7のものは、酸化銀が多く含有されていることから、青色ガラスの印字にも向いていることがわかった。したがって、実施例7のものは、多岐にわたる色のガラスに対して好適に用いることができ、汎用性が高いことが窺える。もっとも、実施例1〜6のものもガラスの色という点で汎用性が高くないとはいえ、粘性、インクの剥げ落ちなどの点で問題があるわけではないので、ガラスの色に応じて使い分けすればよい。

Claims (6)

  1. 塗布対象の軟化点以下の軟化点を有する無鉛ガラス粉体と、
    前記無鉛ガラス粉体と混合される分散剤と、
    前記無鉛ガラス粉体と前記分散剤との混合物に粘性を付与する粘性剤と、
    を含む、無機材料用インク。
  2. 前記ガラス粉体は、ビスマス系ガラス、バナジウム系ガラス、リン酸系ガラス、リン酸−錫系ガラス、リン酸−亜鉛系ガラス、リン酸−錫−亜鉛系ガラス、ホウ珪酸塩系ガラスのいずれかである、請求項1記載の無機材料用インク。
  3. 前記粘性剤は、親水性又は水溶性を有する、請求項1記載の無機材料用インク。
  4. 前記粘性剤は、ポリビニールアルコールを含む、請求項1記載の無機材料用インク。
  5. 前記分散剤は、吸湿性を有する、請求項1記載の無機材料用インク。
  6. 前記分散剤は、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコールのいずれかを含む、請求項1記載の無機材料用インク。
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