JP2010115177A - 分解耐性を有するrnaアプタマー分子の修飾ヌクレオチド配列の選択方法 - Google Patents

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巌 和賀
Minoru Akitomi
穣 秋冨
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Abstract

【課題】既に探索されている、天然のヌクレオチドで構成されているRNAアプタマー分子の塩基配列を基に、対象タンパク質に対する、特異的で高い結合能を保持し、分解耐性が向上した修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子を作製する上で有効な分子設計手法を提供する。
【解決手段】RNAアプタマー分子の塩基配列中、天然のヌクレオチドU,Cを、例えば、2’−位のOHにメチル基置換した、対応の修飾ヌクレオチドにより置き換え、分解耐性の向上を図る際、その置換に伴って、対象タンパク質との結合能を低下させる置換位置を排除するため、該修飾ヌクレオチドに置換した修飾RNAアプタマー分子と対象タンパク質の複合体形成時の結合エネルギーを、分子軌道法を適用して推定計算し、結合エネルギーの低下を引き起こす置換位置を該計算結果に基づき特定する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、対象のタンパク質分子に対するRNAアプタマー分子のヌクレオチド配列として、分解耐性が向上した修飾ヌクレオチド配列を選択する方法に関する。
水溶液中に存在している対象のタンパク質を検出する方法として、該タンパク質に対して、高い結合能を示す物質を利用して、水溶液中に溶解している対象タンパク質を捕獲固定する手法がある。例えば、対象のタンパク質に対する特異的な抗体分子を利用して、水溶液中に溶解している対象タンパク質を捕獲固定する手法は、古くから利用されている。
さらに、近年、特定のタンパク質に対して、高い結合能を示す物質として、核酸アプタマー分子を利用して、対象タンパク質を捕獲固定する手法の利用も進められている。核酸アプタマー分子としては、DNAアプタマー分子とRNAアプタマー分子が知られている。特に、個々のタンパク質に対して、「当該タンパク質にRNAアプタマー分子」が実際に存在するか否かを確認するための「ランダム・スクリーニング」に類する手法として、SELEX(ystematic volution of igands by Exponetial Enrichment)の手法がある。SELEX法では、5’末端の固定領域と、3’末端の固定領域との間に、ランダムな塩基配列を有する、特定の塩基長(N)部分が挿入されている形態の、「ランダム一本鎖核酸分子ライブラリー」を利用する。すなわち、in vitro転写系を利用する一本鎖RNA分子の作製と、PCR法を利用する、cDNAの作製を利用するため、各プライマーと相補的な塩基配列を有する、前記5’末端の固定領域と、3’末端の固定領域を具えている。この「ランダム一本鎖核酸分子ライブラリー」中から、対象タンパク質に対して高い結合能を示す「一本鎖RNA分子」を選別している。
対象タンパク質の発揮する生理学的な機能は、核酸との結合性を必要としていない場合であっても、SELEX法を適用することによって、相当の頻度で、高い結合能を示すRNAアプタマー分子が選別される。また、対象タンパク質の発揮する生理学的な機能は、核酸との結合性を必要とする場合、選別されるRNAアプタマー分子が、該タンパク質の核酸結合部位に結合していることも少なくない。例えば、転写因子タンパク質は、目的の遺伝子DNAと結合するが、このDNA結合型タンパク質である転写因子タンパク質とRNAアプタマー分子の複合体の一例として、NF−κB/RNAアプタマー分子の複合体のX線結晶構造解析の結果が報告されている(非特許文献1)。
対象タンパク質上における、RNAアプタマー分子の結合部位の特定を目的として、対象タンパク質とRNAアプタマー分子の複合体の結晶構造解析も行われている。具体的には、対象タンパク質とRNAアプタマー分子の複合体のX線結晶構造解析によって、複合体を形成している、対象タンパク質とRNAアプタマー分子を構成する原子の座標が特定されている。
X線結晶構造解析では、水素原子上の電子密度は、技術的に特定困難であり、水素原子の座標は特定されない。また、結晶中においても、回転異性に起因して、複数の配向が共存している原子団に関しては、該原子団を構成する原子上の電子密度の分布は、各配向の存在比率に依存する加重平均として、算出される。その結果、複数の配向が共存している原子団に関して、電子密度の分布のピーク位置の特定が困難な場合が多い。
対象タンパク質とRNAアプタマー分子の複合体の結晶は、相当量の水分子を含んでいる。該複合体の結晶中に含有されている、水分子のうち、相当数は、対象タンパク質とRNAアプタマー分子に対して、複数の相対的な配置を採ることが可能である。これら複数の相対的な配置を採ることが可能な水分子では、該水分子の酸素原子上の電子に由来する電子密度の分布は、やはり、複数の相対的な配置の存在比率に依存する加重平均として、算出される。その結果、複数の配向が共存している原子団に関して、電子密度の分布のピーク位置の特定が困難な場合が多い。一方、該複合体の結晶中に含有されている、水分子のうち、一部は、対象タンパク質とRNAアプタマー分子に対して、特定の相対的な配置を採っている。この特定の相対的な配置を採っている水分子では、該水分子の酸素原子上の電子に由来する電子密度の分布は、そのピーク位置の特定が可能である。
対象タンパク質とRNAアプタマー分子の複合体のX線結晶構造解析では、複合体を形成している、対象タンパク質とRNAアプタマー分子を構成する原子の座標に加えて、該複合体に対して、特定の相対的な配置を採っている、水分子の酸素原子の座標も特定される。X線結晶構造解析により決定される、複合体を形成している、対象タンパク質とRNAアプタマー分子を構成する原子の座標に基づき、該対象タンパク質上における、RNAアプタマー分子の結合部位が特定されている。
対象タンパク質とRNAアプタマー分子の複合体は、一種の分子間化合物であり、対象タンパク質とRNAアプタマー分子に解離させることが可能であり、解離平衡状態となっている。例えば、表面プラズモン共鳴装置を利用して、複合体形成過程の速度定数:ka(M-1・s-1)と、解離過程の速度定数:kd(s-1)を測定し、平衡解離定数:KD(M)は、KD=kd/kaとして、算定されている。当然、対象タンパク質とRNAアプタマー分子の複合体(分子間化合物)の安定性は、対象タンパク質とRNAアプタマー分子の間の分子間相互作用に依存する。具体的には、解離平衡過程では、対象タンパク質とRNAアプタマー分子の複合体(分子間化合物)から、過渡的な中間状態を経て、対象タンパク質とRNAアプタマー分子に解離する。その際、複合体(分子間化合物)から、過渡的な中間状態に達する過程で、エネルギー変化:ΔEがある。一般に、このエネルギー変化:ΔEが大きいほど、対象タンパク質とRNAアプタマー分子の複合体(分子間化合物)の安定性は高くなっている。すなわち、解離平衡過程では、平衡解離定数:KD(M)は、exp(−ΔE/kT)という温度Tに対する依存性を示す。
塩基長が15〜60程度の一本鎖RNA分子は、その塩基配列によっては、分子内で、相補的な塩基間;G−C、A−Uの塩基対によって、部分的に二本鎖状の構造を構成し、全体として、三次元構造を構成することもある。例えば、かかる分子内における、部分的に二本鎖状の構造形成に伴い、全体として、三次元構造を構成する、天然の一本鎖RNA分子の代表例として、t−RNA分子を挙げることができる。その他、各種のmRNA分子においても、分子内で、部分的に二本鎖状の構造形成が起こり、さらに、全体として、三次元構造を構成する可能性を示唆する報告がなされている。各種のリボザイムも、一本鎖RNA分子であり、分子内で、部分的に二本鎖状の構造形成が起こり、さらに、全体として、三次元構造を構成することで、その酵素活性を発揮している。
一本鎖RNA分子である、RNAアプタマー分子も、一般に、部分的に二本鎖状の構造を構成し、全体として、三次元構造を構成している。対象タンパク質とRNAアプタマー分子の複合体(分子間化合物)では、RNAアプタマー分子は、全体としては、その本来の三次元構造を保持している。特に、SELEX法によって選別されるRNAアプタマー分子は、一般に、その三次元構造の安定性が高く、対象タンパク質と複合体を形成した状態でも、その三次元構造を実質的に維持している。
一本鎖RNA分子は、各核酸残基間は、ヌクレオチドの糖成分のD−リボースが、3’,5’−ホスホジエステル結合で連結されている。一本鎖RNA分子は、一本鎖DNA分子と異なり、アルカリに対して不安定であり、加水分解を受ける。このアルカリによる加水分解を受けた際、一本鎖RNA分子から生成する、ヌクレオチド一リン酸は、ヌクレオチド5’−リン酸ではなく、ヌクレオチド2’−リン酸とヌクレオチド3’−リン酸の混合物である。そのアルカリ加水分解の反応機構では、一旦、分子内で環状リン酸エステルが形成された後、該環状リン酸エステルが加水分解を受ける。その際、環状リン酸エステルが加水分解される過程では、ヌクレオチド2’−リン酸とヌクレオチド3’−リン酸がほほ等しい比率で生成される。すなわち、ヌクレオチドの糖成分のD−リボース間を連結している、3’,5’−ホスホジエステル結合を開裂する過程は、糖成分のD−リボースの2’−位のヒドロキシル基が関与するSN2機構に因っている。
Biochemistry, Vol.38, p.3168-3174 (1999)
対象タンパク質に対して、高い結合能を有するRNAアプタマー分子の探索は、例えば、SELEX法を適用することで、比較的に簡単に行えるようになっている。しかしながら、探索されたRNAアプタマー分子は、一本鎖RNA分子であるため、その水溶液を長期に保存する間に、ヌクレオチドの糖成分のD−リボースの2’−位のヒドロキシル基が関与するSN2機構に因る、3’,5’−ホスホジエステル結合の非酵素的な開裂が生じる場合が少なくない。RNAアプタマー分子の利用を拡大する上では、この一本鎖RNA分子は、加水分解を引き起こし易いという本質的な欠点を克服することが必要となる。具体的には、探索されたRNAアプタマー分子が示す、対象タンパク質に対する、特異的で高い結合能を保持しつつ、上記の分子内機構が関与する、3’,5’−ホスホジエステル結合の非酵素的な開裂を抑制する手段の開発が必要である。
さらに、RNAアプタマー分子は、上記の3’,5’−ホスホジエステル結合の加水分解(非酵素的な開裂)に加えて、各種の酵素的な分解を受ける。例えば、該RNAアプタマー分子の三次元構造が解消された段階では、その塩基配列中に、リボザイムによって開裂可能な塩基配列を内在している場合がある。その際には、リボザイムの作用によって、該リボザイムに特異的な開裂部位において、一本鎖RNA分子の開裂が引き起こされる。その際、3’,5’−ホスホジエステル結合の3’位側のエステル結合を開裂が生じると推測される。
また、各種の3’−エキソヌクレアーゼ活性を有する酵素タンパク質を作用させると、一本鎖RNA分子の3’−末端に一本鎖構造が存在すると、該3’−末端の一本鎖構造部分は、該酵素タンパク質による分解を受ける。該3’−エキソヌクレアーゼ型酵素タンパク質は、3’,5’−ホスホジエステル結合の5’位側のエステル結合を開裂する。
また、DNA分子の一本鎖部分、RNA分子の一本鎖部分に対して作用する、エンドヌクレアーゼ活性を有する酵素タンパク質:S1 nucleaseは、一本鎖RNA分子の3’−末端に一本鎖構造が存在すると、該3’−末端の一本鎖構造部分を分解する。さらに、S1 nucleaseは、一本鎖RNA分子が三次元構造を形成している際、例えば、ヘアピン構造が存在すると、一本鎖構造である該ヘアピン構造の開裂を行う場合もある。また、S1 nucleaseは、RNAが二本鎖構造を形成している部位においても、場合によっては、開裂を引き起こすこともある。恐らくは、二本鎖構造中に稀に形成されるバルジ構造部は、塩基対が形成されてなく、該S1 nucleaseが作用して、酵素的に3’,5’−ホスホジエステル結合の5’位側のエステル結合を開裂すると予測される。
特に、SELEX法によって選別されるRNAアプタマー分子は、その3’−末端、5’−末端の部分塩基配列は、選別に利用されるRNAランダムライブラリーに固有の固定塩基配列を具えている。そのため、三次元構造を形成した際、その3’−末端または5’−末端に一本鎖構造部分が残余する場合が少なくない。この3’−末端または5’−末端に一本鎖構造部分が酵素的な分解によって完全に失われた場合、二本鎖構造部の安定性に影響を及ぼすこともある。また、複合体を形成する際、RNAアプタマー分子の3’−末端または5’−末端に一本鎖構造部分自体が、その複合体の安定性に寄与している場合もある。
その他、種々の3’−エキソリボヌクレアーゼ活性、エンドリボヌクレアーゼ活性を示すRNase酵素タンパク質が報告されている。しばしば、RNase酵素タンパク質の混入が生じるので、RNase酵素タンパク質に対する失活処理、阻害剤の添加を行った状態で、一本鎖RNA分子の保存を行っている。
また、種々の細胞培養物中には、該培養細胞由来の内因性のRNase酵素タンパク質が存在しており、組み換え発現したタンパク質の精製過程で除去している。
RNAアプタマー分子を利用する各種のアッセイ系では、上記の酵素的な一本鎖RNA分子の分解を回避するため、種々の3’−エキソリボヌクレアーゼ活性、エンドリボヌクレアーゼ活性を示すRNase酵素タンパク質の混入を防止している。しかし、用いるRNAアプタマー分子自体も、酵素的な分解に対して、分解耐性が向上していることが好ましいことは勿論のことである。具体的には、探索されたRNAアプタマー分子が示す、対象タンパク質に対する、特異的で高い結合能を保持しつつ、各種のRNase酵素タンパク質が関与する、3’,5’−ホスホジエステル結合の酵素的な開裂を抑制する手段の開発も必要である。
本発明は、前記の課題を解決するものである。すなわち、本発明の目的は、既に探索されているRNAアプタマー分子の塩基配列を基に、該塩基配列を構成している複数個のヌクレオチドから選択される、特定の個数のヌクレオチドを修飾ヌクレオチドに置換することで、本来のRNAアプタマー分子が示す、対象タンパク質に対する、特異的で高い結合能を保持しつつ、上記の分子内機構が関与する、非酵素的な3’,5’−ホスホジエステル結合の開裂、あるいは、酵素的な3’,5’−ホスホジエステル結合の開裂が抑制された、分解耐性が向上した修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子を選択する方法を提供することにある。
本発明の目的は、特には、既に探索されているRNAアプタマー分子の塩基配列を基に、該塩基配列を構成しているヌクレオチドを修飾ヌクレオチドに置換した一本鎖RNA分子の多数種を実際に作製して、実験的に、その分解耐性と、対象タンパク質に対する結合能の評価することで、対象タンパク質に対する、特異的で高い結合能を保持し、分解耐性が向上した修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子を選択するスクリーニング手法と同等の確度で、非実験的な手段を活用して、対象タンパク質に対する、特異的で高い結合能を保持し、分解耐性が向上した修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子を選択する方法を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決するため、まず、一本鎖RNA分子の分解耐性を向上する手法に関して、検討を行った。
まず、一本鎖RNA分子の分解機構には、酵素的分解機構と、非酵素的分解機構がある。酵素的分解機構の抑制・防止は、各種RNA分解酵素タンパク質の混入を防止する、あるいは、各種RNA分解酵素タンパク質の阻害剤を添加する手法が広く利用されている。また、各種RNA分解酵素タンパク質は、一般に、加熱処理を施すことで、該タンパク質の熱変性を引き起こし、酵素活性の失活処理を行うことが可能である。
RNAアプタマー分子自体は、一本鎖RNA分子であり、加熱処理を施すと、その三次元構造は一旦失われるが、その後、徐々に冷却する間に、本来の三次元構造が再構築される。すなわち、RNAアプタマー分子自体は、その三次元構造は、self-holding過程によって形成されるため、熱的にde-folding処理を施した後、熱的にre-folding処理を行うことが可能である。この特徴を利用して、RNAアプタマー分子を含有する水溶液を、例えば、90℃程度に加熱処理し、熱的de-folding処理を施し、その後、re-folding処理を行うと、混入している各種RNA分解酵素タンパク質の熱的な失活を行うことが可能である。
なお、各種RNA分解酵素タンパク質による、一本鎖RNA分子の酵素的な分解速度を低減させる手法として、ヌクレオチドの糖成分のD−リボースの2’−位のヒドロキシル基を、アルコキシ基(R−O−)、例えば、メトキシ(CH3−O−)に変換することが有効であることを示す報告がなされている。
従って、一本鎖RNA分子の分解耐性を向上させるためには、酵素的な分解機構の抑制・防止に加えて、非酵素的分解機構をも抑制・防止することが必要である。一本鎖RNA分子の非酵素的分解機構では、ヌクレオチドの糖成分のD−リボースの2’−位のヒドロキシル基が関与するSN2機構に因る、3’,5’−ホスホジエステル結合の開裂が生じている。その分子科学的な反応機構は、下記のように理解される。
通常、一本鎖RNA分子の主鎖を構成している3’,5’−ホスホジエステル結合中心のP原子は、D−リボースの2’−位のヒドロキシル基のO原子と近接可能な立体配置を占めていない。一方、一本鎖RNA分子の主鎖に歪みを生じた場合、3’,5’−ホスホジエステル結合部分において、局所的な立体配置の変異(回転異性化)が誘起され、その結果、エステル結合中心のP原子に対して、D−リボースの2’−位のヒドロキシル基のO原子と近接可能な立体配置となる。その配置において、2’−位のヒドロキシル基のO原子は、求核試薬として作用すると、P原子を中心として、5つのO原子がbi-pyramidalな5配位座に位置する、中間体が形成される。その後、2’−位のヒドロキシル基(−OH)の水素原子が離脱し、一方、5’−位のO原子に水素原子が付与されると、5’−位のO原子は、ヒドロキシル基(−OH)に変換され、エステル結合の開裂が起こる。同時に、2’−位のO原子と、P原子との間に、エステル結合が形成される。
この反応機構は、ヌクレオチドの糖成分のD−リボースの2’−位に、求核試薬として作用するヒドロキシル基(−OH)に代えて、メトキシ基(−OCH3)が存在すると、メトキシ基(−OCH3)のメチル基(−CH3)の離脱は進行しないため、仮に、過渡的な中間体の形成が起こっても、最終的には、反応は進行しないことに、想到した。また、ヒドロキシル基(−OH)に代えて、メトキシ基(−OCH3)が存在する場合、メトキシ基(−OCH3)自体、求核試薬の機能は格段に劣っているので、そもそも、中間体の形成自体も、進行しないことに、想到した。加えて、メトキシ基(−OCH3)のメチル基(−CH3)は、ヒドロキシル基(−OH)の水素原子(H)と比較すると、嵩高であるため、中間体の形成過程において、立体障害ともなり、中間体の形成可能な配置の達成も阻害されることに、想到した。
すなわち、ヌクレオチドの糖成分のD−リボースの2’−位のヒドロキシル基(−OH)を、例えば、メトキシ基(−OCH3)のような、アルコキシ基(−OR)に置換することで、3’,5’−ホスホジエステル結合の非酵素的な開裂反応を効果的に阻害できることに、想到した。
さらには、ヌクレオチドの糖成分のD−リボースの2’−位のヒドロキシル基(−OH)を、求核試薬としての作用を示さない原子団で置換することで、3’,5’−ホスホジエステル結合の非酵素的な開裂反応を機能的に阻害できることに、想到した。例えば、フッ素原子Fのような、ハロゲン原子や、あるいは、例えば、メチル基(−CH3)のような、アルキル基で置換することで、3’,5’−ホスホジエステル結合の非酵素的な開裂反応を機能的に阻害できることに、想到した。
前記の置換基の候補について、さらに、下記の観点から、より適するものを選別した。ヌクレオチドの糖成分のD−リボースの2’−位のヒドロキシル基(−OH)を置き換えた場合、一本鎖RNA分子が三次元構造を形成する際、嵩高い置換基は、一本鎖RNA分子の主鎖が、適正な立体構造を採る上で立体障害となる可能性を含んでいる。その点を考慮すると、メトキシ基(−OCH3)、例えば、フッ素原子Fのような、ハロゲン原子、ならびに、メチル基(−CH3)が、好ましい候補となることに、想到した。
次に、臭素原子などのハロゲン原子は、場合によっては、水酸化物イオン(HO-)による、SN2型求核置換反応によって、ヒドロキシル基(−OH)に置換される可能性があることに想到した。但し、ハロゲン原子のうち、フッ素原子は、前記のSN2型求核置換反応による、ヒドロキシル基(−OH)への置換を受けないので、より好ましい候補となることに、想到した。
また、メチル基(−CH3)は、非親水性な原子団であり、結果的に、ヌクレオチドの糖成分のD−リボースの2’−位、3’−位の近傍における、水分子の配向を制約するため、一本鎖RNA分子の主鎖が、適正な立体構造を採る上で障害となる可能性を含んでいる。その点を考慮すると、メチル基(−CH3)は、より好ましい候補として、採用できないことに、想到した。
一方、メトキシ基(−OCH3)は、酸素原子における回転の自由度を残しているため、該酸素原子に結合しているメチル基(−CH3)が、一本鎖RNA分子の主鎖が、適正な立体構造を採る上で障害となる可能性を低い。その点を考慮すると、メトキシ基(−OCH3)は、より好ましい候補となることに、想到した。
以上の検討の結果、ヌクレオチドの糖成分のD−リボースの2’−位のヒドロキシル基(−OH)を、置き換える置換基として、メトキシ基(−OCH3)、あるいは、フッ素原子を採用することはより好ましいという、結論に達した。
なお、フッ素原子を採用すると、逆に、サイズが小さいことに伴って、該フッ素原子と、3’,5’−ホスホジエステル結合に残余する、P−OHの水素原子が、フッ素原子に水素結合を形成する可能性が残る。その場合、係る部分では、一本鎖RNA分子の主鎖の立体配置に制約を生じさせる懸念が残る。この点も考慮すると、ヌクレオチドの糖成分のD−リボースの2’−位のヒドロキシル基(−OH)を、置き換える置換基として、メトキシ基(−OCH3)を採用することが、さらに、望ましいと、総合的な判断を行った。
一本鎖RNA分子を構成するヌクレオチドの全てに対して、D−リボースの2’−位のヒドロキシル基(−OH)を、メトキシ基(−OCH3)または、フッ素原子で置換すると、得られる一本鎖核酸分子全体の疎水性は、大幅に上昇する。その結果、得られる一本鎖核酸分子は、本来の一本鎖RNA分子が有する三次元構造に相当する立体構造にfoldingされない可能性が高いことに、想到した。従って、一本鎖RNA分子を構成するヌクレオチドの一部について、D−リボースの2’−位のヒドロキシル基(−OH)を、メトキシ基(−OCH3)または、フッ素原子で置換する形態を選択した。その際、プリン塩基型ヌクレオチドのA、Gと、ピリミジン塩基型ヌクレオチドのU、Cのうち、ピリミジン塩基型ヌクレオチドのU、Cに対して、D−リボースの2’−位のヒドロキシル基(−OH)を、メトキシ基(−OCH3)または、フッ素原子で置換する形態を選択した。すなわち、一本鎖RNA分子のヌクレオチド配列中に含まれる、U、Cを、前記2’−位に修飾がなされた、対応する修飾ヌクレオチドで置換する形態を選択した。
RNAアプタマー分子を構成するヌクレオチドのうち、ピリミジン塩基型ヌクレオチドのU、Cを、対応する修飾ヌクレオチドで置換した場合、本来のRNAアプタマー分子が有する、対象タンパク質に対する結合能を保持するか、否かを、検討する必要がある。例えば、RNAアプタマー分子のヌクレオチド配列中に、ピリミジン塩基型ヌクレオチドのU、Cが、合計N個存在していたと仮定する。その際、合計N個のピリミジン塩基型ヌクレオチドのU、Cのうち、対応する修飾ヌクレオチドで置換した場合、本来のRNAアプタマー分子が有する、対象タンパク質に対する結合能を保持できないものを排除する必要がある。ピリミジン塩基型ヌクレオチドのU、Cが、合計N個のうち、1〜N個を対応する修飾ヌクレオチドで置換した修飾ヌクレオチド配列の種類は、(2N−1)種類である。その全てについて、実際に一本鎖核酸分子を合成した上で、対象タンパク質に対する結合能を評価すると、要する労力は相当なものとなる。
この実験的な検証方法に代えて、下記の非実験的な検証方法が利用可能であることを見出した。
まず、本来のRNAアプタマー分子:AP(0)と対象タンパク質の複合体の構造は、すでに、X線結晶構造解析によって、特定されているとする。このX線結晶構造解析によって特定されている複合体の構造において、対象タンパク質と本来のRNAアプタマー分子の結合エネルギー:Ebinding-R/P(0)を、分子軌道法、例えば、フラグメント分子軌道法を適用して、数値計算によって、推定する。
一方、ピリミジン塩基型ヌクレオチドのU、C、合計N個のうち、i番目(i=1、…、N)を、1個を修飾ヌクレオチドで置換してなる修飾ヌクレオチド配列を有する一本鎖核酸分子は、本来のRNAアプタマー分子と本質的に等しい三次元構造を具えた修飾RNAアプタマー分子となり、対象タンパク質と複合体を構成すると仮定する。形成される複合体における、対象タンパク質と、i番目に修飾ヌクレオチドによる置換を有する、i番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)の相対配置は、本来のRNAアプタマー分子と対象タンパク質の複合体の構造と本質的に等しいと仮定する。
前記の仮定された相対配置において、対象タンパク質とi番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)との間で、i番目の修飾ヌクレオチドのD−リボースの2’−位に存在する置換基が、立体障害を引き起こすことが無いように、該置換基の近傍の相対配置を調整する。
その上で、i番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)と対象タンパク質の複合体が、前記調整済の仮定された構造を採る際、対象タンパク質とi番目修飾RNAアプタマー分子の結合エネルギー:Ebinding-Rmod/P(i)を、分子軌道法、例えば、フラグメント分子軌道法を適用して、数値計算によって、推定する。
本来のRNAアプタマー分子:AP(0)と対象タンパク質の複合体について、推定される結合エネルギー:Ebinding-R/P(0)と、i番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)と対象タンパク質の複合体について、推定される結合エネルギー:Ebinding-Rmod/P(i)とを比較する。Ebinding-Rmod/P(i)≧Ebinding-R/P(0)である場合、ピリミジン塩基型ヌクレオチドのU、C、合計N個のうち、i番目を修飾ヌクレオチドで置換することに伴って、複合体形成時の結合エネルギーの低下は誘起されないと判断する。逆に、Ebinding-Rmod/P(i)<Ebinding-R/P(0)である場合、ピリミジン塩基型ヌクレオチドのU、C、合計N個のうち、i番目を修飾ヌクレオチドで置換することに伴って、複合体形成時の結合エネルギーの低下が誘起されると判断する。
複合体形成時の結合エネルギーの低下が誘起されると判断される、修飾ヌクレオチドの置換位置を排除する。その結果、修飾ヌクレオチドで置換することに伴って、複合体形成時の結合エネルギーの低下は誘起されないと判断される、置換位置の群が、一次選定される。この一次選定される、置換位置の総数は、N1≦Nであり、その置換位置の群は、{i1(j):j=1、…、N1}と表記される。
一次選定される、置換位置{i1(j):j=1、…、N1}の全てを、修飾ヌクレオチドで置換してなる修飾ヌクレオチド配列を有する一本鎖核酸分子も、本来のRNAアプタマー分子と本質的に等しい三次元構造を具えた修飾RNAアプタマー分子となり、対象タンパク質と複合体を構成すると仮定する。該N1個の修飾ヌクレオチドによる置換を有する、N1個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(N1))の三次元構造において、各i1(j)番目の修飾ヌクレオチドにおける、D−リボースの2’−位に存在する置換基の配置は、それぞれ、対応するi1(j)番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)における配置と本質的に等しいと仮定する。従って、形成される複合体の構造は、N1個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(N1))の、各i1(j)番目の修飾ヌクレオチドにおける、D−リボースの2’−位に存在する置換基の近傍の相対配置は、それぞれ、対応するi1(j)番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(j))との複合体における、該置換基の近傍の相対配置と本質的に等しいと仮定する。
その上で、N1個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(N1))と対象タンパク質の複合体が、前記調整済の仮定された構造を採る際、対象タンパク質とN1個修飾RNAアプタマー分子の結合エネルギー:Ebinding-Rmod/P(i1(1),…,i1(N1))を、分子軌道法、例えば、フラグメント分子軌道法を適用して、数値計算によって、推定する。
本来のRNAアプタマー分子:AP(0)と対象タンパク質の複合体について、推定される結合エネルギー:Ebinding-R/P(0)と、N1個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(N1))と対象タンパク質の複合体について、推定される結合エネルギー:Ebinding-Rmod/P(i1(1),…,i1(N1))とを比較する。Ebinding-Rmod/P(i1(1),…,i1(N1))≧Ebinding-R/P(0)である場合、該N1個の修飾ヌクレオチドで置換することに伴って、複合体形成時の結合エネルギーの低下は誘起されないと判断する。逆に、Ebinding-Rmod/P(i1(1),…,i1(N1))<Ebinding-R/P(0)である場合、該N1個の修飾ヌクレオチドで置換することに伴って、複合体形成時の結合エネルギーの低下が誘起されると判断する。
binding-Rmod/P(i1(1),…,i1(N1))≧Ebinding-R/P(0)である場合、該N1個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(N1))は、本来のRNAアプタマー分子:AP(0)よりも分解耐性が向上しており、また、形成される複合体の安定性も保持されると予測される、修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子の第一の候補として、選択することができる。
そもそも、一次選定される、置換位置{i1(j):j=1、…、N1}の全ては、修飾ヌクレオチドで置換した際、複合体形成時の結合エネルギーの低下は誘起されないと判断されたものである。従って、該N1個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(N1))において、Ebinding-Rmod/P(i1(1),…,i1(N1))<Ebinding-R/P(0)となる可能性は、本来、皆無であるべきものである。
利用している、フラグメント分子軌道法を適用する数値計算の近似精度に起因して、極く稀に、Ebinding-Rmod/P(i1(1),…,i1(N1))<Ebinding-R/P(0)となる可能性は排除できない。
仮に、Ebinding-Rmod/P(i1(1),…,i1(N1))<Ebinding-R/P(0)となった場合は、前記置換位置{i1(j):j=1、…、N1}のうち、(N1−1)箇所を修飾ヌクレオチドで置換してなる修飾ヌクレオチド配列を有する一本鎖核酸分子、合計N1種類について、同様の手順で、複合体形成時の結合エネルギーを推定計算する。
一次選定される、置換位置{i1(j):j=1、…、N1}中、(N1−1)箇所を修飾ヌクレオチドで置換してなる修飾ヌクレオチド配列を有する一本鎖核酸分子も、本来のRNAアプタマー分子と本質的に等しい三次元構造を具えた修飾RNAアプタマー分子となり、対象タンパク質と複合体を構成すると仮定する。i1(k)の位置を除く、(N1−1)個の修飾ヌクレオチドによる置換を有する、(N1−1)個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))の三次元構造においても、各i1(j)番目の修飾ヌクレオチドにおける、D−リボースの2’−位に存在する置換基の配置は、それぞれ、対応するi1(j)番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)における配置と本質的に等しいと仮定する。従って、形成される複合体の構造は、該(N1−1)個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))の、各i1(j)番目の修飾ヌクレオチドにおける、D−リボースの2’−位に存在する置換基の近傍の相対配置は、それぞれ、対応するi1(j)番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)との複合体における、該置換基の近傍の相対配置と本質的に等しいと仮定する。
その上で、(N1−1)個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))と対象タンパク質の複合体が、前記調整済の仮定された構造を採る際、対象タンパク質と(N1−1)個修飾RNAアプタマー分子の結合エネルギー:Ebinding-Rmod/P(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))を、分子軌道法、例えば、フラグメント分子軌道法を適用して、数値計算によって、推定する。
1(k)の位置を除く、(N1−1)個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))、合計N1種類について、
本来のRNAアプタマー分子:AP(0)と対象タンパク質の複合体について、推定される結合エネルギー:Ebinding-R/P(0)と、該(N1−1)個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))と対象タンパク質の複合体について、推定される結合エネルギー:Ebinding-Rmod/P(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))とを比較する。
binding-Rmod/P(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))≧Ebinding-R/P(0)である場合、該(N1−1)個の修飾ヌクレオチドで置換することに伴って、複合体形成時の結合エネルギーの低下は誘起されないと判断する。逆に、Ebinding-Rmod/P(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))<Ebinding-R/P(0)である場合、該(N1−1)個の修飾ヌクレオチドで置換することに伴って、複合体形成時の結合エネルギーの低下が誘起されると判断する。
binding-Rmod/P(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))≧Ebinding-R/P(0)である場合、該(N1−1)個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))は、本来のRNAアプタマー分子:AP(0)よりも分解耐性が向上しており、また、形成される複合体の安定性も保持されると予測される、修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子の候補として、選択することができる。
合計N1種類の、(N1−1)個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))から、前記の判定基準に基づき選択される、修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子の候補は、通常、複数種、N2種類(N2≦N1)となる。このN2種類(N2≦N1)の修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子の候補を、第二の候補群とする。
以上の推定計算を利用する選択工程で選択される、修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子の第一の候補、あるいは、N2種類(N2≦N1)の修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子からなる第二の候補群について、
実際に、該修飾ヌクレオチド配列を有する一本鎖RNA分子を作製し、その分解性を評価する。本来のRNAアプタマー分子:AP(0)における分解性と比較して、分解性が実際に低下しているものを、修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子の最終候補として、選択する。
この分解耐性の向上が実験的に検証された、修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子の最終候補に対して、対象タンパク質と複合体を形成させて、実験的に、平衡解離定数:KD F(M)を評価する。該修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子の最終候補の平衡解離定数:KD F(M)と、本来のRNAアプタマー分子:AP(0)の平衡解離定数:KD O(M)とを比較し、KD F(M)/KD O(M)<10の条件を満たすことを確認する。
例えば、上記の一連の手順を適用することで、実験的な検証を行う労力を最小源に抑えて、対象タンパク質に対する、特異的で高い結合能を保持し、分解耐性が向上した修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子を選択することが可能であることを確認した。
本発明者らは、上記の知見に基づき、本発明を完成させた。
すなわち、本発明にかかる、分解耐性を有するRNAアプタマー分子の修飾ヌクレオチド配列の選択方法は、
既に対象タンパク質に対するRNAアダプター分子として探索されている、天然のヌクレオチドで構成される一本鎖RNA分子からなるRNAアプタマー分子の塩基配列を基に、該対象タンパク質に対する、特異的な結合能を保持し、分解耐性の向上した修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子を選択する方法であって、
前記天然のヌクレオチドで構成される一本鎖RNA分子からなる、本来のRNAアプタマー分子:AP(0)と対象タンパク質の複合体の構造は、すでに、X線結晶構造解析によって、特定されており、
目的とする修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子は、前記本来のRNAアプタマー分子:AP(0)の天然のヌクレオチドで構成される塩基配列中に存在する、複数個の天然のヌクレオチドU,Cのうち、その一部を、対応する修飾ヌクレオチドである、該ヌクレオチドU,Cの糖成分のD−リボースの2’−位のヒドロキシル基(−OH)を、メトキシ基(−OCH3)で置換した、2’−位にO−メチル化修飾されたU(2'-O-methylated U),2’−位にO−メチル化修飾されたC(2'-O-methylated C)で、それぞれ置換した修飾ヌクレオチド配列からなる一本鎖RNA分子からなり、
該修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子を選択する工程は、
下記の工程(i)〜工程(x)を含んでなる:
工程(i)
X線結晶構造解析によって、特定されている、前記複合体の構造において、対象タンパク質と本来のRNAアプタマー分子の結合エネルギー:Ebinding-R/P(0)を、分子軌道法を適用して、数値計算によって、推定する;
工程(ii)
前記本来のRNAアプタマー分子:AP(0)の天然のヌクレオチドで構成される塩基配列中に存在する、天然のヌクレオチドU,Cの合計をN個と表記し、
該N個のうち、i番目(i=1、…、N)の天然ヌクレオチド1個を、前記の対応する修飾ヌクレオチドで置換してなる修飾ヌクレオチド配列を有する一本鎖RNA分子は、本来のRNAアプタマー分子:AP(0)と本質的に等しい三次元構造を具えた修飾RNAアプタマー分子となり、対象タンパク質と複合体を構成すると仮定し、
形成される複合体における、対象タンパク質と、i番目に修飾ヌクレオチドによる置換を有する、i番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)の相対配置は、本来のRNAアプタマー分子:AP(0)と対象タンパク質の複合体の構造と本質的に等しいと仮定し、
前記の仮定された相対配置において、対象タンパク質とi番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)との間で、i番目の修飾ヌクレオチドのD−リボースの2’−位に存在するメトキシ基(−OCH3)が、立体障害を引き起こすことが無いように、該メトキシ基(−OCH3)の近傍の相対配置を調整する;
工程(iii)
前記i番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)と対象タンパク質の複合体が、前記工程(ii)によって調整済の仮定された構造を採る際、対象タンパク質とi番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)の結合エネルギー:Ebinding-Rmod/P(i)を、分子軌道法を適用して、数値計算によって、推定する;
工程(iv)
本来のRNAアプタマー分子:AP(0)と対象タンパク質の複合体について、推定される結合エネルギー:Ebinding-R/P(0)と、i番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)と対象タンパク質の複合体について、推定される結合エネルギー:Ebinding-Rmod/P(i)とを比較し、
binding-Rmod/P(i)≧Ebinding-R/P(0)である場合、上記天然のヌクレオチドU,Cの合計N個のうち、i番目を、対応する修飾ヌクレオチドで置換することに伴って、複合体形成時の結合エネルギーの低下は誘起されないと判断し、
逆に、Ebinding-Rmod/P(i)<Ebinding-R/P(0)である場合、上記天然のヌクレオチドU,Cの合計N個のうち、i番目を、対応する修飾ヌクレオチドで置換することに伴って、複合体形成時の結合エネルギーの低下が誘起されると判断する;
工程(v)
上記天然のヌクレオチドU,Cの合計N個のうち、
複合体形成時の結合エネルギーの低下が誘起されると判断される、修飾ヌクレオチドの置換位置を排除し、
修飾ヌクレオチドで置換することに伴って、複合体形成時の結合エネルギーの低下は誘起されないと判断される、置換位置の群を、一次選定し、
この一次選定される、置換位置の総数を、N1(N1≦N)と表記し、一次選定された置換位置の群を、{i1(j):j=1、…、N1}と表記する;
工程(vi)
一次選定される、置換位置{i1(j):j=1、…、N1}の全てを、対応する修飾ヌクレオチドで置換してなる修飾ヌクレオチド配列を有する一本鎖核酸分子も、本来のRNAアプタマー分子と本質的に等しい三次元構造を具えた修飾RNAアプタマー分子となり、対象タンパク質と複合体を構成すると仮定し、
該N1個の修飾ヌクレオチドによる置換を有する、N1個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(N1))の三次元構造において、各i1(j)番目の修飾ヌクレオチドにおける、D−リボースの2’−位に存在するメトキシ基(−OCH3)の配置は、それぞれ、対応するi1(j)番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)における配置と本質的に等しいと仮定し、
形成される複合体の構造は、N1個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(N1))の、各i1(j)番目の修飾ヌクレオチドにおける、D−リボースの2’−位に存在するメトキシ基(−OCH3)の近傍の相対配置は、それぞれ、対応するi1(j)番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(j))との複合体における、該メトキシ基(−OCH3)の近傍の相対配置と本質的に等しいと仮定する;
工程(vii)
1個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(N1))と対象タンパク質の複合体が、前記工程(vi)において、調整済の仮定された構造を採る際、対象タンパク質とN1個修飾RNAアプタマー分子の結合エネルギー:Ebinding-Rmod/P(i1(1),…,i1(N1))を、分子軌道法を適用して、数値計算によって、推定する;
工程(viii)
本来のRNAアプタマー分子:AP(0)と対象タンパク質の複合体について、推定される結合エネルギー:Ebinding-R/P(0)と、N1個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(N1))と対象タンパク質の複合体について、推定される結合エネルギー:Ebinding-Rmod/P(i1(1),…,i1(N1))とを比較し、
binding-Rmod/P(i1(1),…,i1(N1))≧Ebinding-R/P(0)である場合、該N1個の修飾ヌクレオチドで置換することに伴って、複合体形成時の結合エネルギーの低下は誘起されないと判断し、
逆に、Ebinding-Rmod/P(i1(1),…,i1(N1))<Ebinding-R/P(0)である場合、該N1個の修飾ヌクレオチドで置換することに伴って、複合体形成時の結合エネルギーの低下が誘起されると判断し、
binding-Rmod/P(i1(1),…,i1(N1))≧Ebinding-R/P(0)である場合、該N1個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(N1))を、本来のRNAアプタマー分子:AP(0)よりも分解耐性が向上しており、また、形成される複合体の安定性も保持されると予測される、修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子の第一の候補として、選択する;
工程(ix)
前記工程(viii)において、Ebinding-Rmod/P(i1(1),…,i1(N1))<Ebinding-R/P(0)である場合には、
一次選定される、置換位置{i1(j):j=1、…、N1}中、(N1−1)箇所を修飾ヌクレオチドで置換してなる修飾ヌクレオチド配列を有する一本鎖RNA分子も、本来のRNAアプタマー分子と本質的に等しい三次元構造を具えた修飾RNAアプタマー分子となり、対象タンパク質と複合体を構成すると仮定し、
1(k)の位置を除く、(N1−1)個の修飾ヌクレオチドによる置換を有する、(N1−1)個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))の三次元構造においても、各i1(j)番目の修飾ヌクレオチドにおける、D−リボースの2’−位に存在するメトキシ基(−OCH3)の配置は、それぞれ、対応するi1(j)番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)における配置と本質的に等しいと仮定し、
形成される複合体の構造は、該(N1−1)個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))の、各i1(j)番目の修飾ヌクレオチドにおける、D−リボースの2’−位に存在するメトキシ基(−OCH3)の近傍の相対配置は、それぞれ、対応するi1(j)番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)との複合体における、該メトキシ基(−OCH3)の近傍の相対配置と本質的に等しいと仮定する;
工程(x)
(N1−1)個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))と対象タンパク質の複合体が、前記工程(ix)において、調整済の仮定された構造を採る際、対象タンパク質と(N1−1)個修飾RNAアプタマー分子の結合エネルギー:Ebinding-Rmod/P(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))を、分子軌道法を適用して、数値計算によって、推定する;
工程(xi)
1(k)の位置を除く、(N1−1)個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))、合計N1種類について、
本来のRNAアプタマー分子:AP(0)と対象タンパク質の複合体について、推定される結合エネルギー:Ebinding-R/P(0)と、該(N1−1)個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))と対象タンパク質の複合体について、推定される結合エネルギー:Ebinding-Rmod/P(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))とを比較し、
binding-Rmod/P(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))≧Ebinding-R/P(0)である場合、
該(N1−1)個の修飾ヌクレオチドで置換することに伴って、複合体形成時の結合エネルギーの低下は誘起されないと判断し、
逆に、Ebinding-Rmod/P(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))<Ebinding-R/P(0)である場合、
該(N1−1)個の修飾ヌクレオチドで置換することに伴って、複合体形成時の結合エネルギーの低下が誘起されると判断し、
binding-Rmod/P(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))≧Ebinding-R/P(0)である場合、該(N1−1)個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))は、本来のRNAアプタマー分子:AP(0)よりも分解耐性が向上しており、また、形成される複合体の安定性も保持されると予測される、修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子の候補として、選択し、
合計N1種類の、(N1−1)個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))から、前記の判定基準に基づき選択される、修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子の候補、合計N2種類(N2≦N1)を、第二の候補群として、選択する;
工程(xii)
前記工程(viii)において選択される、修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子の第一の候補、あるいは、前記工程(xi)において選択される、N2種類(N2≦N1)の修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子からなる第二の候補群について、
実際に、該修飾ヌクレオチド配列を有する一本鎖RNA分子を作製し、その分解性を評価し、
本来のRNAアプタマー分子:AP(0)における分解性と比較して、分解性が実際に低下しているものを、修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子の最終候補として、選択する;
工程(xiii)
前記工程(xii)において、分解耐性の向上が実験的に検証された、修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子の最終候補に対して、
対象タンパク質と複合体を形成させて、実験的に、該対象タンパク質との複合体における、平衡解離定数:KD F(M)を評価し、
該修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子の最終候補の平衡解離定数:KD F(M)と、本来のRNAアプタマー分子:AP(0)の平衡解離定数:KD O(M)とを比較し、KD F(M)/KD O(M)<10の条件を満たすことを確認する;
工程(xiv)
前記工程(xiii)において、KD F(M)/KD O(M)<10の条件を満たすことの確認がなされた、修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子を、
該対象タンパク質に対する、特異的な結合能を保持し、分解耐性の向上した修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子として、選択する;
ことを特徴とする、分解耐性を有するRNAアプタマー分子の修飾ヌクレオチド配列の選択方法である。
上記の構成を有する、本発明の方法においては、
各複合体の構造において、対象タンパク質とRNAアプタマー分子の結合エネルギーを、分子軌道法を適用して、数値計算によって、推定する際、
X線結晶構造解析によって、特定されている、前記複合体の構造において、対象タンパク質と本来のRNAアプタマー分子:AP(0)のいずれからも、3.5Å以内の範囲に、その酸素原子の位置が特定されている水分子に関して、
対象タンパク質とRNAアプタマー分子に直接的な分子間相互作用を示すと仮定し、
対象タンパク質とRNAアプタマー分子の結合エネルギーを計算する際、前記水分子の関与する分子間相互作用に起因するエネルギーも算入する
ことが好ましい。
その際、前記水分子の関与する分子間相互作用に起因するエネルギーは、前記水分子と対象タンパク質との間の分子間相互作用に起因するエネルギーと、前記水分子とRNAアプタマー分子との間の分子間相互作用に起因するエネルギーとの和として近似する形態を採用することが好ましい。
また、前記工程(ii)において、
前記の仮定された相対配置において、対象タンパク質とi番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)との間で、i番目の修飾ヌクレオチドのD−リボースの2’−位に存在するメトキシ基(−OCH3)が、立体障害を引き起こすことが無いように、該メトキシ基(−OCH3)の近傍の相対配置を調整する際、
該メトキシ基(−OCH3)の酸素原子の位置を固定し、
該酸素原子とD−リボースの2’−位の炭素原子のC−O結合を回転軸とする、該メトキシ基(−OCH3)のメチル基(−CH3)の回転異性、ならびに、
該メトキシ基(−OCH3)のO−C結合を回転軸とする、メチル基(−CH3)の水素原子の回転異性を考慮し、
前記メトキシ基(−OCH3)の酸素原子、炭素原子から、6Å以内の範囲に位置可能な、対象タンパク質を構成するアミノ酸残基を構成する水素原子以外の原子との相対配置を調整する形態を選択することが望ましい。
前記の仮定された相対配置において、対象タンパク質とi番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)との間で、i番目の修飾ヌクレオチドのD−リボースの2’−位に存在するメトキシ基(−OCH3)が、立体障害を引き起こすことが無いように、該メトキシ基(−OCH3)の近傍の相対配置を調整する際、
該メトキシ基(−OCH3)の酸素原子の位置を固定し、
該酸素原子とD−リボースの2’−位の炭素原子のC−O結合を回転軸とする、該メトキシ基(−OCH3)のメチル基(−CH3)の回転異性、ならびに、
該メトキシ基(−OCH3)のO−C結合を回転軸とする、メチル基(−CH3)の水素原子の回転異性を考慮し、
X線結晶構造解析によって、特定されている、前記複合体の構造において、対象タンパク質と本来のRNAアプタマー分子:AP(0)のいずれからも、6Å以内の範囲に、その酸素原子の位置が特定されている水分子のうち、
前記メトキシ基(−OCH3)の酸素原子、炭素原子から、6Å以内の範囲に位置可能な、水分子の酸素原子との相対配置を調整する形態を選択することが望ましい。
本発明にかかる方法おいては、
各複合体の構造において、対象タンパク質とRNAアプタマー分子の結合エネルギーを、分子軌道法を適用して、数値計算によって、推定する際、
前記分子軌道法を適用する数値計算では、フラグメント分子軌道法を適用して、数値計算を行うことができる。
例えば、各複合体の構造において、対象タンパク質とRNAアプタマー分子の結合エネルギーを、フラグメント分子軌道法を適用して、数値計算によって、推定する際、
対象タンパク質に関して、該対象タンパク質を構成するアミノ酸残基毎に一フラグメントを構成するように、フラグメント分割を行うことが好ましい。前記対象タンパク質に関して、該対象タンパク質を構成するアミノ酸残基毎に一フラグメントを構成するように、フラグメント分割を行う際、アミノ酸残基相互を連結するアミド結合のCO−Nの結合の分割を回避するように、フラグメント分割部位を選択することが好ましい。
各複合体の構造において、対象タンパク質とRNAアプタマー分子の結合エネルギーを、フラグメント分子軌道法を適用して、数値計算によって、推定する際、
RNAアプタマー分子に関して、該RNAアプタマー分子を構成するヌクレオチド毎に二フラグメントを構成するように、各ヌクレオチドを構成する、塩基成分とD−リボース成分とを連結する、前記D−リボースの1’−位の炭素原子と、前記塩基の窒素原子の間のC−N結合を、該ヌクレオチド内のフラグメント分割部位として選択することが好ましい。
各複合体の構造において、対象タンパク質とRNAアプタマー分子の結合エネルギーを、フラグメント分子軌道法を適用して、数値計算によって、推定する際、
該フラグメント分子軌道法に基づく、数値計算用プログラムとして、ABINIT−MPを採用することができる。前記フラグメント分子軌道法に基づく、数値計算用プログラムとして、ABINIT−MPを採用する際、各フラグメントを構成する原子の電子軌道の形成に利用する基底関数系として、6−31G基底関数を選択することができる。
本発明にかかる方法においては、
前記工程(xii)において評価される、RNAアプタマー分子を構成した、一本鎖RNA分子の分解性は、例えば、非酵素的な一本鎖RNA分子の分解性である形態とすることができる。
あるいは、前記工程(xii)において評価される、RNAアプタマー分子を構成した、一本鎖RNA分子の分解性は、酵素的な一本鎖RNA分子の分解性である形態とすることもできる。
また、前記工程(xiii)において、該対象タンパク質との複合体における、平衡解離定数の評価では、
表面プラズモン共鳴装置を利用して、複合体形成過程の速度定数:ka(M-1・s-1)と、解離過程の速度定数:kd(s-1)を測定し、平衡解離定数:KD(M)は、KD=kd/kaとして、算定する形態を採用することが好ましい。
本発明を適用することで、本来のRNAアプタマー分子と対象タンパク質の複合体の構造は、すでに、X線結晶構造解析によって、特定されている際、該本来のRNAアプタマー分子が有する、対象タンパク質に対する、特異的で高い結合能を保持し、分解耐性が向上した修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子を、実験的な検証を行う労力を最小限に抑えて、選択することが可能となる。
本発明にかかる、分解耐性を有するRNAアプタマー分子の修飾ヌクレオチド配列の選択方法について、以下に、より詳しく説明する。
まず、本発明の選択方法が目標とする、RNAアプタマー分子の分解耐性の向上は、該RNAアプタマー分子を構成している、一本鎖RNA分子の分解を引き起こす可能性を有する、酵素的な分解過程と、非酵素的な分解過程のうち、主として、非酵素的な分解過程に対する、分解耐性を向上するものである。
前記一本鎖RNA分子の非酵素的な分解過程では、例えば、RNA分子のアルカリ加水分解の過程と同様に、通常、一本鎖RNA分子の主鎖を構成している3’,5’−ホスホジエステル結合のうち、D−リボースの5’−位との間に形成されているエステル結合の開裂が生じ、D−リボースの5’−位には、HO−CH2−の形態のヒドロキシル基が生成する。最終的には、一本鎖RNA分子の非酵素的な分解過程によって、一本鎖RNA分子の鎖を構成している、各リボヌクレオチドから、対応するリボヌクレオシド−3’−リン酸とリボヌクレオシド−2’−リン酸の二種の混合物は生成されるが、リボヌクレオシド−5’−リン酸の生成は見出されない。
例えば、RNA分子のアルカリ加水分解過程では、前記3’,5’−ホスホジエステル結合の開裂反応において、反応中間体として、分子内2’,3’−ホスホジエステル結合が形成されている、環状リボヌクレオシド一リン酸が形成されることが確認されている。アルカリ加水分解過程では、系内に、求核試薬として機能する、水酸化物イオン(HO-)が存在しているにも係わらず、反応中間体として、分子内2’,3’−ホスホジエステル結合が形成されている、環状リボヌクレオシド一リン酸が形成される。従って、この分子内2’,3’−ホスホジエステル結合の形成過程は、D−リボースの2’−位のヒドロキシル基(HO−)が求核試薬として作用する、SN2型求核置換反応を介して進行する。すなわち、隣接するヌクレオチドのD−リボースの5’−位との間に形成されているエステル結合の開裂が生じ、一方、D−リボースの2’−位のヒドロキシル基(HO−)の酸素原子との間に分子内エステル結合が形成される。
反応中間体である、分子内2’,3’−ホスホジエステル結合構造が、その後、加水分解を受けると、リボヌクレオシド−3’−リン酸とリボヌクレオシド−2’−リン酸の二種の混合物を生成する。
前記一本鎖RNA分子の非酵素的な分解過程においても、RNA分子のアルカリ加水分解過程と同様に、3’,5’−ホスホジエステル結合の開裂反応において、反応中間体として、分子内2’,3’−ホスホジエステル結合が形成されている、環状リボヌクレオシド一リン酸が形成される。勿論、この分子内2’,3’−ホスホジエステル結合の形成過程は、D−リボースの2’−位のヒドロキシル基(HO−)が求核試薬として作用する、SN2型求核置換反応を介して進行する。すなわち、隣接するヌクレオチドのD−リボースの5’−位との間に形成されているエステル結合の開裂が生じ、一方、D−リボースの2’−位のヒドロキシル基(HO−)の酸素原子との間に分子内エステル結合が形成される。
本発明では、前記のD−リボースの2’−位のヒドロキシル基(HO−)が求核試薬として作用する、SN2型求核置換反応を機能的に阻害することにより、一本鎖RNA分子の非酵素的な分解過程を回避する手法としている。
具体的には、リボヌクレオチドの糖成分のD−リボースの2’−位に、求核試薬として作用するヒドロキシル基(−OH)に代えて、メトキシ基(−OCH3)が存在する、2’−位にO−メチル化修飾されたリボヌクレオチド(2'-O-methylated ribonucleotide)を利用する。
なお、前記のD−リボースの2’−位のヒドロキシル基(HO−)が求核試薬として作用する、分子内のSN2型求核置換反応が実際に起こることは、他の事例からも査証されている。例えば、ある種のアミノアシル化t−RNA分子において、一旦、t−RNA分子の3’−末端のD−リボースの3’−位のヒドロキシル基のアミノアシル化が生じた後、D−リボースの2’−位のヒドロキシル基へ、アミノアシル基の転移が生じることが確認されている。その際、D−リボースの2’−位のヒドロキシル基を、メトキシ基(−OCH3)に変換すると、このアミノアシル基の転移反応は、完全に阻害される。

通常、一本鎖RNA分子の主鎖を構成している3’,5’−ホスホジエステル結合中心のP原子は、D−リボースの2’−位のヒドロキシル基のO原子と近接可能な立体配置を占めていない。一方、一本鎖RNA分子の主鎖に歪みを生じた場合、3’,5’−ホスホジエステル結合部分において、局所的な立体配置の変異(回転異性化)が誘起され、その結果、エステル結合中心のP原子に対して、D−リボースの2’−位のヒドロキシル基のO原子と近接可能な立体配置となる。その配置において、2’−位のヒドロキシル基のO原子は、求核試薬として作用すると、P原子を中心として、5つのO原子がbi-pyramidalな5配位座に位置する、中間体が形成される。その後、2’−位のヒドロキシル基(−OH)の水素原子が離脱し、一方、5’−位のO原子に水素原子が付与されると、5’−位のO原子は、ヒドロキシル基(−OH)に変換され、エステル結合の開裂が起こる。同時に、2’−位のO原子と、P原子との間に、エステル結合が形成される。
この反応機構は、ヌクレオチドの糖成分のD−リボースの2’−位に、求核試薬として作用するヒドロキシル基(−OH)に代えて、メトキシ基(−OCH3)が存在すると、メトキシ基(−OCH3)のメチル基(−CH3)の離脱は進行しないため、仮に、過渡的な中間体の形成が起こっても、最終的には、反応は進行しないことに、想到した。また、ヒドロキシル基(−OH)に代えて、メトキシ基(−OCH3)が存在する場合、メトキシ基(−OCH3)自体、求核試薬の機能は格段に劣っているので、そもそも、中間体の形成自体も、進行しないことに、想到した。加えて、メトキシ基(−OCH3)のメチル基(−CH3)は、ヒドロキシル基(−OH)の水素原子(H)と比較すると、嵩高であるため、中間体の形成過程において、立体障害ともなり、中間体の形成可能な配置の達成も阻害される。
上記の一本鎖RNA分子の主鎖を構成している3’,5’−ホスホジエステル結合の開裂反応を促進する酵素として、ヘアピン型リボザイムが存在している。該ヘアピン型リボザイムによって、切断を受ける部位は、例えば、U*GUCのように、ウラシルUの3’−末端に存在しており、この3’,5’−ホスホジエステル結合部分において、D−リボースの5’−位との間に形成されているエステル結合の開裂が生じていると推定される。ヘアピン型リボザイムは、対象の一本鎖RNA分子の主鎖中のU*GUC部分に歪みを誘起させる結果、かかる部位における、3’,5’−ホスホジエステル結合の開裂を引き起こしていると、推定される。
一本鎖RNA分子を構成するヌクレオチドの全てに対して、D−リボースの2’−位のヒドロキシル基(−OH)を、メトキシ基(−OCH3)で置換すると、得られる一本鎖核酸分子全体の疎水性は、大幅に上昇する。その結果、得られる一本鎖核酸分子は、本来の一本鎖RNA分子が有する三次元構造に相当する立体構造にfoldingされない可能性が高い。従って、一本鎖RNA分子を構成するヌクレオチドの一部について、D−リボースの2’−位のヒドロキシル基(−OH)を、メトキシ基(−OCH3)で置換する形態を選択している。その際、プリン塩基型ヌクレオチドのA、Gと、ピリミジン塩基型ヌクレオチドのU、Cのうち、ピリミジン塩基型ヌクレオチドのU、Cに対して、D−リボースの2’−位のヒドロキシル基(−OH)を、メトキシ基(−OCH3)で置換する形態を選択している。すなわち、一本鎖RNA分子のヌクレオチド配列中に含まれる、U、Cを、2’−位にO−メチル化修飾されたU(2'-O-methylated U),2’−位にO−メチル化修飾されたC(2'-O-methylated C)で置換する形態を選択している。
RNAアプタマー分子を構成するヌクレオチドのうち、ピリミジン塩基型ヌクレオチドのU、Cを、対応する修飾ヌクレオチド(2'-O-methylated U、2'-O-methylated C)で置換した場合、本来のRNAアプタマー分子が有する、対象タンパク質に対する結合能を保持するか、否かを、検討する必要がある。例えば、RNAアプタマー分子のヌクレオチド配列中に、ピリミジン塩基型ヌクレオチドのU、Cが、合計N個存在していたと仮定する。その際、合計N個のピリミジン塩基型ヌクレオチドのU、Cのうち、対応する修飾ヌクレオチド(2'-O-methylated U、2'-O-methylated C)で置換した場合、本来のRNAアプタマー分子が有する、対象タンパク質に対する結合能を保持できないものを排除する必要がある。ピリミジン塩基型ヌクレオチドのU、Cが、合計N個のうち、1〜N個を対応する修飾ヌクレオチドで置換した修飾ヌクレオチド配列の種類は、(2N−1)種類である。その全てについて、実際に一本鎖核酸分子を合成した上で、対象タンパク質に対する結合能を評価すると、要する労力は相当なものとなる。
本発明では、この実験的な検証方法に代えて、下記の非実験的な検証方法を利用することで、合計N個のピリミジン塩基型ヌクレオチドのU、Cのうち、対応する修飾ヌクレオチド(2'-O-methylated U、2'-O-methylated C)で置換した場合、本来のRNAアプタマー分子が有する、対象タンパク質に対する結合能を保持できないものを排除する。
具体的には、前記の本来のRNAアプタマー分子が有する、対象タンパク質に対する結合能を低下させる可能性を有する、置換部位の排除には、下記の手順を利用している。すなわち、下記の工程(i)〜工程(v)に記載する手順を採用している。
まず、本発明にかかる選択方法は、既に対象タンパク質に対するRNAアダプター分子として探索されている、天然のヌクレオチドで構成される一本鎖RNA分子からなるRNAアプタマー分子の塩基配列を基に、該対象タンパク質に対する、特異的な結合能を保持し、分解耐性の向上した修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子を選択する方法である。さらに、前記天然のヌクレオチドで構成される一本鎖RNA分子からなる、本来のRNAアプタマー分子:AP(0)と対象タンパク質の複合体の構造は、すでに、X線結晶構造解析によって、特定されている場合に、本発明にかかる選択方法は利用される。
また、本発明にかかる選択方法では、目的とする修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子は、前記本来のRNAアプタマー分子:AP(0)の天然のヌクレオチドで構成される塩基配列中に存在する、複数個の天然のヌクレオチドU,Cのうち、その一部を、対応する修飾ヌクレオチドである、該ヌクレオチドU,Cの糖成分のD−リボースの2’−位のヒドロキシル基(−OH)を、メトキシ基(−OCH3)で置換した、2’−位にO−メチル化修飾されたU(2'-O-methylated U),2’−位にO−メチル化修飾されたC(2'-O-methylated C)で、それぞれ置換した修飾ヌクレオチド配列からなる一本鎖RNA分子に限定されている。
但し、一本鎖RNA分子の3’末端のヌクレオチドは、そのD−リボース成分の3’−位のヒドロキシル基は、リン酸エステル構造となっていないので、一本鎖RNA分子の3’末端のヌクレオチドが、U,Cであっても、前記の修飾ヌクレオチドへの置換を行う必要はない。また、一本鎖RNA分子の5’末端のヌクレオチドに関しても、U,Cであっても、前記の修飾ヌクレオチドへの置換を行わない。
その前提条件の下、下記の工程(i)〜工程(v)に記載する手順を実施する。
工程(i)
X線結晶構造解析によって、特定されている、前記複合体の構造において、対象タンパク質と本来のRNAアプタマー分子の結合エネルギー:Ebinding-R/P(0)を、分子軌道法を適用して、数値計算によって、推定する。
工程(ii)
前記本来のRNAアプタマー分子:AP(0)の天然のヌクレオチドで構成される塩基配列中に存在する、天然のヌクレオチドU,Cの合計をN個と表記し、
該N個のうち、i番目(i=1、…、N)の天然ヌクレオチド1個を、前記の対応する修飾ヌクレオチドで置換してなる修飾ヌクレオチド配列を有する一本鎖RNA分子は、本来のRNAアプタマー分子:AP(0)と本質的に等しい三次元構造を具えた修飾RNAアプタマー分子となり、対象タンパク質と複合体を構成すると仮定し、
形成される複合体における、対象タンパク質と、i番目に修飾ヌクレオチドによる置換を有する、i番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)の相対配置は、本来のRNAアプタマー分子:AP(0)と対象タンパク質の複合体の構造と本質的に等しいと仮定し、
前記の仮定された相対配置において、対象タンパク質とi番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)との間で、i番目の修飾ヌクレオチドのD−リボースの2’−位に存在するメトキシ基(−OCH3)が、立体障害を引き起こすことが無いように、該メトキシ基(−OCH3)の近傍の相対配置を調整する。
工程(iii)
前記i番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)と対象タンパク質の複合体が、前記工程(ii)によって調整済の仮定された構造を採る際、対象タンパク質とi番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)の結合エネルギー:Ebinding-Rmod/P(i)を、分子軌道法を適用して、数値計算によって、推定する。
工程(iv)
本来のRNAアプタマー分子:AP(0)と対象タンパク質の複合体について、推定される結合エネルギー:Ebinding-R/P(0)と、i番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)と対象タンパク質の複合体について、推定される結合エネルギー:Ebinding-Rmod/P(i)とを比較し、
binding-Rmod/P(i)≧Ebinding-R/P(0)である場合、上記天然のヌクレオチドU,Cの合計N個のうち、i番目を、対応する修飾ヌクレオチドで置換することに伴って、複合体形成時の結合エネルギーの低下は誘起されないと判断し、
逆に、Ebinding-Rmod/P(i)<Ebinding-R/P(0)である場合、上記天然のヌクレオチドU,Cの合計N個のうち、i番目を、対応する修飾ヌクレオチドで置換することに伴って、複合体形成時の結合エネルギーの低下が誘起されると判断する。
工程(v)
上記天然のヌクレオチドU,Cの合計N個のうち、
複合体形成時の結合エネルギーの低下が誘起されると判断される、修飾ヌクレオチドの置換位置を排除し、
修飾ヌクレオチドで置換することに伴って、複合体形成時の結合エネルギーの低下は誘起されないと判断される、置換位置の群を、一次選定し、
この一次選定される、置換位置の総数を、N1(N1≦N)と表記し、一次選定された置換位置の群を、{i1(j):j=1、…、N1}と表記する。
上記工程(i)、工程(iii)における、分子軌道法を適用する数値計算では、例えば、フラグメント分子軌道法を適用する数値計算の形態を選択することができる。
さらには、主として、RNAアプタマー分子と対象タンパク質の複合体中における、分子間相互作用を数値計算する形態であり、一般的な分子軌道法を採用して、考慮の対象である複合体と、その周囲の水分子を含め、スーパー・モレキュール計算を行う形態を選択することもできる。あるいは、一般的な分子軌道法を採用する際には、対象とする系のサイズを考慮して、所謂、QM/MM法を利用することができる。
また、RNAアプタマー分子と対象タンパク質の複合体中における、分子間相互作用の計算では、分子力場(MM)法を応用した、MM−PB/SA法を利用する形態も採用可能である。
例えば、分子軌道法を適用する数値計算に、フラグメント分子軌道法を適用する数値計算を採用する形態を例に採り、工程(i)〜工程(v)をより具体的に説明する。
工程(i)では、対象タンパク質と本来のRNAアプタマー分子の結合エネルギー:Ebinding-R/P(0)を、フラグメント分子軌道法を適用して、数値計算によって、推定する際、対象タンパク質と本来のRNAアプタマー分子:AP(0)の複合体の構造は、基本的に、既に、X線結晶構造解析によって、特定されている該複合体の原子座標を採用する。実際のX線結晶構造解析によって、特定されている該複合体の原子座標は、水素原子以外の原子に関する原子座標は、基本的に全て特定されている。
一方、水素原子に関しては、X線結晶構造解析では、水素原子上の電子密度分布のピーク位置は、原理的に特定できないため、相当数の水素原子の原子座標は、推定された位置となっている。例えば、ペプチド結合(−CO−NH−)の水素原子は、該ペプチド結合は、ケト−エノール互変異性:−CO−NH− ⇔ −C(OH)=N−が可能な平面状の配置を維持すると仮定して、該水素原子の原子座標の推定がなされている。また、アミノ酸残基(−NH−CH(R)−CO−)のα位炭素原子上の水素原子は、該α位炭素原子の電子軌道は、sp3混成軌道であるという前提に基づき、該アミノ酸残基の2面角(φ,ψ)、結合角(ω)に基づき、該水素原子の原子座標の推定がなされている。また、一般に、メチン(HC)構造の水素原子に関しては、同様に、該炭素原子の残る結合の配置に基づき、該水素原子の原子座標の推定がなされている。また、メチレン構造(−CH2−)の炭素原子上の水素原子に関しても、該炭素原子の残る結合の結合角(ω)に基づき、該水素原子の原子座標の推定がなされている。
一方、本来水素結合を形成していない、ヒドロキシル基(−OH)上の水素原子など、回転異性構造を採ることが可能である水素原子に関しては、本質的に、該水素原子の配置に関して、推定はなされていない。これらのX線結晶構造解析によって、特定されている該複合体の原子座標上、その原子座標が合理的に推定されていない水素原子に関しては、例えば、下記の条件下で、その水素原子の原子座標を推定する。
まず、対象タンパク質と本来のRNAアプタマー分子:AP(0)の複合体は、本来、水溶液中に溶解しているものであり、該複合体の周囲は、水分子によって被覆された状態となっている。すなわち、該複合体の周囲を取り囲むように、水のケージが構成されているはずである。
実際に、X線結晶構造解析において、該複合体の周囲において、その酸素原子の位置が特定される水分子も相当数存在しているが、実際に構成されている、水のケージの相当部分は、複数の配置間で擬似的な平衡関係にあり、それらの水分子の酸素原子の原子座標は決定されていない。
そのため、仮想的に、該複合体の周囲を取り囲むように、水分子を配置する形態とする。その際、例えば、対象タンパク質と本来のRNAアプタマー分子:AP(0)の複合体の表面に存在する、塩基性原子団ならびに酸性原子団は、それぞれ、イオン化した状態と仮定する。
具体的には、対象タンパク質のN末端アミノ基、リシン残基の側鎖のアミノ基、ならびに、アルギニン残基の側鎖のグアニジノ基は、プロトンが付加した形状;−NH3 +、−NH−C+(NH22として、取り扱う。また、ヒスチジン残基の側鎖のイミダゾール環のアミノ水素は、τ配置、すなわち、α−アミノ−1H−イミダゾール−4−プロパン酸に相当する配置として、取り扱う。対象タンパク質のC末端カルボキシル基、アスパラギン酸の側鎖のカルボキシル基、ならびに、グルタミン酸の側鎖のカルボキシル基は、プロトンが解離した形状;−COO-として、取り扱う。
また、本来のRNAアプタマー分子:AP(0)の主鎖の3’,5’−ホスホジエステル結合中の>P(O)OHも、プロトンが解離した形状;>P(O)O-として、取り扱う。なお、本来のRNAアプタマー分子:AP(0)の3’−末端と5’−末端に関しては、一方は、リン酸エステル構造、他方は、ヒドロキシル基となっているが、リン酸エステル構造部分は、プロトンが解離した形状;−O−PO3 2-として、取り扱う。
各ヌクレオチドの塩基に関しては、イオン化していない形状として、取り扱う。分子内において、二重鎖構造を形成している領域では、相補的なヌクレオチドの塩基対が形成されている。それ以外の領域のヌクレオチドの塩基は、イオン化してなく、該塩基の−NH2は、平面形状を示し、その水素原子も、該塩基のヘテロ芳香環と同一平面上に位置する形態とする。
上記の仮定した形状において、アニオン原子団、−COO-と>P(O)O-に対しては、二つの酸素原子は、原則的には、等価として取り扱い、カウンター・カチオン種として、Na+が位置しているとして、取り扱う。

実際のタンパク質では、その表面に存在する塩基性原子団ならびに酸性原子団は、水分子が水素結合しており、その水分子との間で、プロトン交換を行っている。
例えば、ポリアラニンのようなペプチドでは、水溶液に溶解している際、N末端アミノ基とC末端カルボキシル基とは、それぞれ、イオン化して、全体としては、電荷中性な状態の両性イオン(zwitter ion)となっている。同様に、タンパク質も、水溶液に溶解している際、そのN末端アミノ基とC末端カルボキシル基とは、それぞれ、イオン化して、両性イオン(zwitter ion)となっている。一方、タンパク質の表面に露呈している、アミノ酸残基の側鎖の塩基性原子団ならびに酸性原子団は、部分的にしかイオン化していない状態となっている。すなわち、タンパク質全体としては、ほぼ、電荷中性状態として、水溶液中に溶解している。その状態において、タンパク質の表面に露呈している、塩基性原子団ならびに酸性原子団は、イオン化していない状態に対して、水分子が水素結合を形成している形態と実質的には同じ状態である。その際、塩基性原子団ならびに酸性原子団に水素結合している水分子は、全体として、プロトン・トンネリング機構による、プロトン移送が可能な、緩やかなケージ構造を構成している。
このイオン化していない塩基性原子団ならびに酸性原子団に水素結合している水分子が構成する、緩やかなケージ構造は、塩基性原子団ならびに酸性原子団をイオン化させた状態で、該イオン種に対して、水素結合している水分子が構成する、緩やかなケージ構造と、共役状態となっている。
また、一本鎖RNA分子においては、その主鎖の3’,5’−ホスホジエステル結合中の>P(O)OHは、通常、イオン化していない状態となっている。但し、>P(O)OHに水素結合している水分子との間で、プロトン交換を行うことで、結果的に、>P(O)OHの二つの酸素原子間で、プロトンの交換が行われている。すなわち、>P(O)OHに水素結合している水分子は、全体として、プロトン・トンネリング機構による、プロトン移送が可能な、緩やかなケージ構造を構成している。
このイオン化していない>P(O)OHに水素結合している水分子が構成する、緩やかなケージ構造は、>P(O)OHをイオン化させた状態で、該イオン種:>P(O)O-に対して、水素結合している水分子が構成する、緩やかなケージ構造と、共役状態となっている。
従って、上記のタンパク質表面に露呈する塩基性原子団ならびに酸性原子団、ならびに、一本鎖RNA分子の3’,5’−ホスホジエステル結合中の>P(O)OHと、末端のリン酸エステル構造に関して、イオン化状態と仮定して、その周囲を取り囲む水分子を配置すると、実際の水溶液中における水分子の配置と、実質的に共役的な配置となっている。すなわち、配置される水分子の酸素原子の座標は、実質的に等価となっている。
ヒスチジン残基の側鎖のイミダゾール環に存在する塩基性窒素原子は、水素結合している水分子とプロトン交換する結果、二つの塩基性窒素原子間における互変異性が生じる。すなわち、イミダゾール環に存在する塩基性窒素原子に水素結合可能な配置で、水分子を配置することで、配置される水分子の酸素原子の座標は、前記の互変異性を考慮したものとなっている。
また、一本鎖RNA分子中、塩基対を構成していない、ヌクレオチドの塩基においても、塩基性窒素原子、オキソ構造の酸素原子の間では、ケト/エノール型の互変異性が生じるが、それぞれ、水素結合している水分子とのプロトン交換として、その互変異性を考慮したものとなっている。
上記の仮定に従って、複合体の周囲に水分子を配置した上で、その水分子の酸素原子の座標を固定した状態で、複合体の表面に露呈する各種の原子団との間で立体障害を引き起こさないように、回転異性が可能な水素原子の座標を特定する。その際、例えば、AMBER force fieldなどを利用して、分子力場を考慮して、複合体の周囲に配置される水分子の酸素原子の座標、適正は水素原子の座標を特定する。少なくとも、水分子の酸素原子と、該水分子が水素結合する対象原子との距離、例えば、O−H…N、O…H−NのO−N間の距離は、凡そ、2.8Å以上であり、配置される水分子の酸素原子の座標は、複合体の周囲に存在する水素原子以外の原子から、前記の距離以内に位置しないように、選択される。
実際の複合体の周囲を取り囲む水分子は、全体として、ケージ構造を構成しており、その際、該ケージ構造は、凡そ、水分子が二層〜三層程度で複合体の周囲に存在する状態に相当している。その点を考慮し、複合体の周囲、6Å以内に配置された水分子のみ、対象タンパク質と本来のRNAアプタマー分子の結合エネルギー:Ebinding-R/P(0)の推定計算の際、考慮する。すなわち、上記の水素結合距離の凡そ2倍程度の範囲に酸素原子が位置する水分子は、複合体の周囲を取り囲む水分子からなるケージ構造を構成すると推定され、その範囲を考慮していることに相当する。
上記の条件下で、X線結晶構造解析によって、特定されている該複合体の原子座標、推定される水素原子の座標、複合体の周囲を取り囲むように配置される水分子の座標を適正に決定し、その原子座標系において、対象タンパク質と本来のRNAアプタマー分子の結合エネルギー:Ebinding-R/P(0)を、フラグメント分子軌道法を適用して、数値計算によって、推定する。
X線結晶構造解析によって、特定されている該複合体の原子座標は、例えば、Protein Data Bank(PDB)に登録され、公表されている座標データを利用することができる。なお、自ら、X線結晶構造解析によって、対象となる複合体の原子座標を予め特定して、その座標データを利用することもできる。
適正に特定された水分子を含む、複合体の構造において、対象タンパク質とRNAアプタマー分子の結合エネルギーを、フラグメント分子軌道法を適用して、数値計算によって、推定する際、対象タンパク質に関して、該対象タンパク質を構成するアミノ酸残基毎に一フラグメントを構成するように、フラグメント分割を行うことが好ましい。前記対象タンパク質に関して、該対象タンパク質を構成するアミノ酸残基毎に一フラグメントを構成するように、フラグメント分割を行う際、アミノ酸残基相互を連結するアミド結合のCO−Nの結合の分割を回避するように、フラグメント分割部位を選択することが好ましい。
また、本体のRNAアプタマー分子:AP(0)に関しては、該RNAアプタマー分子:AP(0)を構成するヌクレオチド毎に、少なくとも、一フラグメントを構成するように、フラグメント分割を行う。さらには、該RNAアプタマー分子:AP(0)を構成するヌクレオチド毎に二フラグメントを構成するように、各ヌクレオチドを構成する、塩基成分とD−リボース成分とを連結する、前記D−リボースの1’−位の炭素原子と、前記塩基の窒素原子の間のC−N結合を、該ヌクレオチド内のフラグメント分割部位として選択することがより好ましい。
一方、複合体の周囲を取り囲むように配置される水分子のうち、対象タンパク質と本来のRNAアプタマー分子:AP(0)のいずれからも、3.5Å以内の範囲に、その酸素原子の位置が特定されている水分子は、対象タンパク質と本来のRNAアプタマー分子:AP(0)の双方と、水素結合に類する分子間相互作用を有している可能性がある。従って、対象タンパク質とRNAアプタマー分子に直接的な分子間相互作用を示すと仮定し、対象タンパク質とRNAアプタマー分子の結合エネルギーを計算する際、前記水分子の関与する分子間相互作用に起因するエネルギーも算入する。
具体的には、少なくとも、水分子の酸素原子と、該水分子が水素結合する対象原子との距離、例えば、O−H…N、O…H−NのO−N間の距離は、凡そ、2.8Å以上である。その点を考慮すると、対象タンパク質と本来のRNAアプタマー分子:AP(0)のいずれからも、3.5Å以内の範囲に、その酸素原子の位置が特定されている水分子は、対象タンパク質と本来のRNAアプタマー分子:AP(0)のいずれとも、水素結合可能な距離に存在している。従って、対象タンパク質とRNAアプタマー分子に直接的な分子間相互作用を示すと仮定することができる。
そのため、対象タンパク質と本来のRNAアプタマー分子:AP(0)のいずれからも、3.5Å以内の範囲に、その酸素原子の位置が特定されている水分子は、各水分子を一フラグメントとして取り扱い、対象タンパク質とRNAアプタマー分子に分子間相互作用の計算を行う。該対象タンパク質と本来のRNAアプタマー分子:AP(0)の双方と、水素結合に類する分子間相互作用を有している水分子は、水素結合型の架橋構造と見做すことが可能です。
実際には、上記のフラグメント分割を行った、対象タンパク質由来のアミノ酸残基フラグメント:FP-amino、本来のRNAアプタマー分子:AP(0)由来のヌクレオチドの塩基成分フラグメント:FR-base、D−リボース成分フラグメント:FR-ribo、ならびに、前記水素結合型の架橋構造の水分子フラグメント:FW-bridgeの間について、フラグメント間相互作用エネルギー(IFIE:Interfragment Interaction Energy)を、まず、フラグメント分子軌道法を適用して、数値計算する。
対象タンパク質由来のアミノ酸残基フラグメント:FP-aminoと、本来のRNAアプタマー分子:AP(0)由来のヌクレオチドの塩基成分フラグメント:FR-base、D−リボース成分フラグメント:FR-riboとの間のフラグメント間相互作用エネルギーの推定値の総和を、ΣeP-R(0)と表記する。
対象タンパク質由来のアミノ酸残基フラグメント:FP-aminoと、前記水素結合型の架橋構造の水分子フラグメント:FW-bridgeとの間のフラグメント間相互作用エネルギーの推定値の総和を、ΣeP-W(0)と表記する。
本来のRNAアプタマー分子:AP(0)由来のヌクレオチドの塩基成分フラグメント:FR-base、D−リボース成分フラグメント:FR-riboと、前記水素結合型の架橋構造の水分子フラグメント:FW-bridgeとの間のフラグメント間相互作用エネルギーの推定値の総和を、ΣeR-W(0)と表記する。
その際、該複合体を形成した際、対象タンパク質と本来のRNAアプタマー分子:AP(0)の間における、水素結合型の架橋構造の水分子の寄与を含む、分子間相互作用エネルギーVR/P(0)は、下記のように表記することができる。
R/P(0)=ΣeP-R(0)+ΣeP-W(0)+ΣeR-W(0)
前記の分子間相互作用エネルギーVR/P(0)は、計算に用いた、適正に特定された水分子を含む、複合体の構造における、対象タンパク質と本来のRNAアプタマー分子の結合エネルギー:Ebinding-R/P(0)に相当している。
上記のフラグメント間相互作用エネルギー(IFIE:Interfragment Interaction Energy)を、フラグメント分子軌道法を適用して、数値計算する際、フラグメント分子軌道法に基づく、数値計算用プログラムとして、ABINIT−MPを採用することができる。前記フラグメント分子軌道法に基づく、数値計算用プログラムとして、ABINIT−MPを採用する際、各フラグメントを構成する原子の電子軌道の形成に利用する基底関数系として、6−31G基底関数を選択することができる。
具体的には、6−31G基底関数系と採用して、Muller-Plessetの二次摂動法(MP2法)により、電子相関を近似する、MP2/6−31G水準の数値計算を利用することが望ましい。
前記フラグメント分子軌道法に基づく、数値計算用プログラムである、ABINIT−MPは、公表されている。例えば、ABINIT−MPは、http://www.rss.iis.u-tokyo.ac.jp/result/download/ より参照でき、ABINIT−MPプログラム・パッケージは、http://www.fsis.iis.u-tokyo.ac.jp/en/result/software/ において、参照可能である。また、ABINIT−MP Ver. 4.1は、下記のサイト:http://www.ciss.iis.u-tokyo.ac.jp/dl/index.htmlにおいて、参照可能である。
その他、同様の目的に利用可能な、フラグメント分子軌道法に基づく、数値計算に利用可能な、量子化学計算用プログラム・パッケージである、GAMESSも公表されており、http://www.msg.ameslab.gov/GAMESS/GEMESS.html において、参照可能である。
工程(ii)では、本来のRNAアプタマー分子:AP(0)を構成する一本鎖RNA分子の塩基配列中に含まれる、天然のヌクレオチドU,Cの合計がN個である場合、このN個(N箇所)のうち、一つ(1箇所)を、対応する修飾ヌクレオチドで置換してなる修飾ヌクレオチド配列を有する一本鎖RNA分子を考えする。該N個のうち、i番目(i=1、…、N)の天然ヌクレオチド1個を、前記の対応する修飾ヌクレオチドで置換してなる修飾ヌクレオチド配列を有する一本鎖RNA分子は、本来のRNAアプタマー分子:AP(0)と本質的に等しい三次元構造を具えた修飾RNAアプタマー分子となり、対象タンパク質と複合体を構成すると仮定する。その際、形成される複合体における、対象タンパク質と、i番目に修飾ヌクレオチドによる置換を有する、i番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)の相対配置は、本来のRNAアプタマー分子:AP(0)と対象タンパク質の複合体の構造と本質的に等しいと仮定する。
具体的には、既にX線結晶構造解析によって、特定されている本来のRNAアプタマー分子:AP(0)と対象タンパク質の複合体の原子座標を参照して、本来のRNAアプタマー分子:AP(0)の位置に、i番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)を置き換える。その際、i番目(i=1、…、N)の天然ヌクレオチド1個が、D−リボースの2’−位のヒドロキシル基(−OH)を、メトキシ基(−OCH3)で置換した、対応の修飾ヌクレオチドで置換されているため、この部位のみに局所的な構造変化が引き起こされる可能性がある。
従って、この仮定された相対配置において、対象タンパク質とi番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)との間で、i番目の修飾ヌクレオチドのD−リボースの2’−位に存在するメトキシ基(−OCH3)が、立体障害を引き起こすことが無いように、該メトキシ基(−OCH3)の近傍の相対配置を調整する。
その際、D−リボースの2’−位に存在するメトキシ基(−OCH3)の酸素原子の座標は、本来のD−リボースの2’−位のヒドロキシル基(−OH)の酸素原子の座標と等しいと仮定する。該本来のD−リボースの2’−位のヒドロキシル基(−OH)の酸素原子の位置から、6Å以内の距離に位置する原子は、該メトキシ基(−OCH3)のメチル基(−CH3)と、何らかの相互作用をする可能性を有する。その際、該メトキシ基(−OCH3)のメチル基(−CH3)は、これらの原子と立体障害を引き起こすことが無いように、該メトキシ基(−OCH3)の酸素原子から、6Å以内の距離に位置する原子と、該メトキシ基(−OCH3)のメチル基(−CH3)との相対配置を調整する。
具体的には、少なくとも、水分子の酸素原子と、該水分子が水素結合する対象原子との距離、例えば、O−H…N、O…H−NのO−N間の距離は、凡そ、2.8Å以上である。その点を考慮すると、対象タンパク質、i番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)のいずれかから、3.5Å以内の範囲に、その酸素原子の位置が特定されている水分子は、対象タンパク質、i番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)のいずれかと、水素結合可能な距離に存在している。この3.5Å以内の範囲に、その酸素原子の位置が特定されている水分子に対して、水素結合する水分子は、複合体の表面に存在する、酸素原子、窒素原子から、6Å以内に存在しているはずである。
複合体の表面から、3.5Å以内の範囲に、その酸素原子の位置が特定されている水分子の一群(第一の水分子の層)の周囲に、この水分子と、水素結合可能な水分子の一群(第二の水分子の層)を考慮すると、複合体の表面から、6Å以内に位置している水分子に相当する、
実際は、工程(i)と同様に、上記の仮定に従って、複合体の周囲に水分子を配置した上で、その水分子の酸素原子の座標を固定した状態で、複合体の表面に露呈する各種の原子団との間で立体障害を引き起こさないように、回転異性が可能な水素原子の座標を特定する。その際、例えば、AMBER force fieldなどを利用して、分子力場を考慮して、該メトキシ基(−OCH3)のメチル基(−CH3)の座標、ならびに、該複合体の周囲に配置される水分子の酸素原子の座標、適正は水素原子の座標を特定する。少なくとも、水分子の酸素原子と、該水分子が水素結合する対象原子との距離、例えば、O−H…N、O…H−NのO−N間の距離は、凡そ、2.8Å以上であり、配置される水分子の酸素原子の座標は、複合体の周囲に存在する水素原子以外の原子から、前記の距離以内に位置しないように、選択される。
本来、複合体の周囲を取り囲む水分子は、全体として、ケージ構造を構成しており、その際、該ケージ構造は、凡そ、水分子が二層〜三層程度で複合体の周囲に存在する状態に相当している。その点を考慮し、該複合体の周囲、6Å以内に配置された水分子のみ、対象タンパク質とi番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)の結合エネルギー:Ebinding-Rmod/P(i)の推定計算の際、考慮する。すなわち、上記の水素結合距離の凡そ2倍程度の範囲に酸素原子が位置する水分子は、複合体の周囲を取り囲む水分子からなるケージ構造を構成すると推定され、その範囲を考慮していることに相当する。
工程(iii)では、前記i番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)と対象タンパク質の複合体が、前記工程(ii)によって調整済の仮定された構造を採る際、対象タンパク質とi番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)の結合エネルギー:Ebinding-Rmod/P(i)を、フラグメント分子軌道法を適用して、数値計算によって、推定する。
工程(ii)において推定される、適正に特定された水分子を含む、複合体の構造において、対象タンパク質とRNAアプタマー分子の結合エネルギーを、フラグメント分子軌道法を適用して、数値計算によって、推定する。工程(i)と同様に、対象タンパク質に関して、該対象タンパク質を構成するアミノ酸残基毎に一フラグメントを構成するように、フラグメント分割を行う。前記対象タンパク質に関して、該対象タンパク質を構成するアミノ酸残基毎に一フラグメントを構成するように、フラグメント分割を行う際、アミノ酸残基相互を連結するアミド結合のCO−Nの結合の分割を回避するように、フラグメント分割部位を選択する。
また、i番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)に関しても、工程(i)と同様に、該i番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)を構成するヌクレオチド毎に、少なくとも、一フラグメントを構成するように、フラグメント分割を行う。例えば、該i番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)を構成するヌクレオチド毎に二フラグメントを構成するように、各ヌクレオチドを構成する、塩基成分とD−リボース成分とを連結する、前記D−リボースの1’−位の炭素原子と、前記塩基の窒素原子の間のC−N結合を、該ヌクレオチド内のフラグメント分割部位として選択する。
一方、複合体の周囲を取り囲むように配置される水分子のうち、対象タンパク質とi番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)のいずれからも、3.5Å以内の範囲に、その酸素原子の位置が特定されている水分子は、対象タンパク質とi番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)の双方と、水素結合に類する分子間相互作用を有している可能性がある。従って、対象タンパク質とRNAアプタマー分子に分子間相互作用を示すと仮定し、対象タンパク質とRNAアプタマー分子の結合エネルギーを計算する際、前記水分子の関与する分子間相互作用に起因するエネルギーも算入する。
そのため、対象タンパク質とi番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)のいずれからも、3.5Å以内の範囲に、その酸素原子の位置が特定されている水分子は、各水分子を一フラグメントとして取り扱い、対象タンパク質とRNAアプタマー分子に分子間相互作用の計算を行う。該対象タンパク質とi番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)の双方と、水素結合に類する分子間相互作用を有している水分子は、水素結合型の架橋構造と見做すことが可能です。
実際には、上記のフラグメント分割を行った、対象タンパク質由来のアミノ酸残基フラグメント:FP-amino-i、i番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)由来のヌクレオチドの塩基成分フラグメント:FRmod-base-i、D−リボース成分フラグメント:FRmod-ribo-i、ならびに、前記水素結合型の架橋構造の水分子フラグメント:FW-bridge-iの間について、フラグメント間相互作用エネルギー(IFIE:Interfragment Interaction Enrgy)を、まず、フラグメント分子軌道法を適用して、数値計算する。
対象タンパク質由来のアミノ酸残基フラグメント:FP-amino-iと、i番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)由来のヌクレオチドの塩基成分フラグメント:FR-base-i、D−リボース成分フラグメント:FR-ribo-iとの間のフラグメント間相互作用エネルギーの推定値の総和を、ΣeP-R(i)と表記する。
対象タンパク質由来のアミノ酸残基フラグメント:FP-amino-iと、前記水素結合型の架橋構造の水分子フラグメント:FW-bridge-iとの間のフラグメント間相互作用エネルギーの推定値の総和を、ΣeP-W(i)と表記する。
i番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)由来のヌクレオチドの塩基成分フラグメント:FR-base-i、D−リボース成分フラグメント:FR-ribo-iと、前記水素結合型の架橋構造の水分子フラグメント:FW-bridge-iとの間のフラグメント間相互作用エネルギーの推定値の総和を、ΣeR-W(i)と表記する。
その際、該複合体を形成した際、対象タンパク質とi番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)の間における、水素結合型の架橋構造の水分子の寄与を含む、分子間相互作用エネルギーVR/P(i)は、下記のように表記することができる。
R/P(i)=ΣeP-R(i)+ΣeP-W(i)+ΣeR-W(i)
前記の分子間相互作用エネルギーVR/P(i)は、計算に用いた、適正に特定された水分子を含む、複合体の構造における、対象タンパク質とi番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)の結合エネルギー:Ebinding-Rmod/P(i)に相当している。
工程(i)と同様に、上記のフラグメント間相互作用エネルギー(IFIE:Interfragment Interaction Energy)を、フラグメント分子軌道法を適用して、数値計算する際、フラグメント分子軌道法に基づく、数値計算用プログラムとして、ABINIT−MPを採用する。前記フラグメント分子軌道法に基づく、数値計算用プログラムとして、ABINIT−MPを採用する際、各フラグメントを構成する原子の電子軌道の形成に利用する基底関数系として、6−31G基底関数を選択する。具体的には、6−31G基底関数系と採用して、Muller-Plessetの二次摂動法(MP2法)により、電子相関を近似する、MP2/6−31G水準の数値計算を利用する。
工程(iv)では、本来のRNAアプタマー分子:AP(0)と対象タンパク質の複合体について、推定される結合エネルギー:Ebinding-R/P(0)と、i番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)と対象タンパク質の複合体について、推定される結合エネルギー:Ebinding-Rmod/P(i)とを比較し、
binding-Rmod/P(i)≧Ebinding-R/P(0)である場合、上記天然のヌクレオチドU,Cの合計N個のうち、i番目を、対応する修飾ヌクレオチドで置換することに伴って、複合体形成時の結合エネルギーの低下は誘起されないと判断し、
逆に、Ebinding-Rmod/P(i)<Ebinding-R/P(0)である場合、上記天然のヌクレオチドU,Cの合計N個のうち、i番目を、対応する修飾ヌクレオチドで置換することに伴って、複合体形成時の結合エネルギーの低下が誘起されると判断する。
工程(v)では、上記天然のヌクレオチドU,Cの合計N個のうち、
複合体形成時の結合エネルギーの低下が誘起されると判断される、修飾ヌクレオチドの置換位置を排除し、
修飾ヌクレオチドで置換することに伴って、複合体形成時の結合エネルギーの低下は誘起されないと判断される、置換位置の群を、一次選定する。この一次選定される、置換位置の総数を、N1(N1≦N)と表記し、一次選定された置換位置の群を、{i1(j):j=1、…、N1}と表記する。
上記の工程(v)において、一次選定された置換位置の群:{i1(j):j=1、…、N1}の全てを、対応する修飾ヌクレオチドで置換してなる修飾ヌクレオチド配列を有する一本鎖核酸分子で構成される修飾RNAアプタマー分子は、対象タンパク質と複合体を構成できるはずである。また、該修飾RNAアプタマー分子と対象タンパク質の複合体について、推定される結合エネルギーは、本来のRNAアプタマー分子:AP(0)と対象タンパク質の複合体について、推定される結合エネルギー:Ebinding-R/P(0)と比較した際、低下していないはずである。
但し、該修飾RNAアプタマー分子は、置換位置の総数はN1(N1≦N)に上っており、実際に、推定される結合エネルギーの低下を引き起こしていないことを、検証する必要性は僅かに残っている。
その検証は、下記の工程(vi)〜工程(viii)に記載する手順で行う。
その際、工程(vii)における、分子軌道法を適用する数値計算では、例えば、フラグメント分子軌道法を適用する数値計算の形態を選択することができる。
さらには、主として、RNAアプタマー分子と対象タンパク質の複合体中における、分子間相互作用を数値計算する形態であり、一般的な分子軌道法を採用して、考慮の対象である複合体と、その周囲の水分子を含め、スーパー・モレキュール計算を行う形態を選択することもできる。あるいは、一般的な分子軌道法を採用する際には、対象とする系のサイズを考慮して、所謂、QM/MM法を利用することができる。
また、RNAアプタマー分子と対象タンパク質の複合体中における、分子間相互作用の計算では、分子力場(MM)法を応用した、MM−PB/SA法を利用する形態も採用可能である。
例えば、分子軌道法を適用する数値計算に、フラグメント分子軌道法を適用する数値計算を採用する形態を例に採り、工程(vi)〜工程(viii)をより具体的に説明する。
工程(vi)では、一次選定される、置換位置{i1(j):j=1、…、N1}の全てを、対応する修飾ヌクレオチドで置換してなる修飾ヌクレオチド配列を有する一本鎖核酸分子も、本来のRNAアプタマー分子と本質的に等しい三次元構造を具えた修飾RNAアプタマー分子となり、対象タンパク質と複合体を構成すると仮定する。
該N1個の修飾ヌクレオチドによる置換を有する、N1個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(N1))の三次元構造において、各i1(j)番目の修飾ヌクレオチドにおける、D−リボースの2’−位に存在するメトキシ基(−OCH3)の配置は、それぞれ、対応するi1(j)番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)における配置と本質的に等しいと仮定する。
その際、形成される複合体の構造は、N1個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(N1))の、各i1(j)番目の修飾ヌクレオチドにおける、D−リボースの2’−位に存在するメトキシ基(−OCH3)の近傍の相対配置は、それぞれ、対応するi1(j)番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(j))との複合体における、該メトキシ基(−OCH3)の近傍の相対配置と本質的に等しいと仮定する。
既に、工程(ii)において、対応するi1(j)番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(j))との複合体における、i1(j)番目の修飾ヌクレオチドにおける、D−リボースの2’−位に存在するメトキシ基(−OCH3)の近傍の相対配置は、調整されている。その調整を受ける範囲は、該メトキシ基(−OCH3)の酸素原子から、6Å以内の範囲である。従って、N1個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(N1))において、他の置換位置の修飾ヌクレオチドと対象タンパク質との相互作用に関与する部位の構造自体に、直接影響は及ぼす可能性は、本来皆無である。
しかしながら、N1個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(N1))と対象タンパク質との複合体の周囲を取り囲む水分子の配置は、場合によっては、影響を受ける可能性がある。
すなわち、上記工程(ii)に記載する手法を同様の手法を用いて、N1個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(N1))と対象タンパク質との複合体の周囲を取り囲む水分子の配置を決定している。実際は、工程(i)と同様に、上記の仮定に従って、複合体の周囲に水分子を配置した上で、その水分子の酸素原子の座標を固定した状態で、複合体の表面に露呈する各種の原子団との間で立体障害を引き起こさないように、回転異性が可能な水素原子の座標を特定する。
その際、各i1(j)番目の修飾ヌクレオチドにおける、D−リボースの2’−位に存在するメトキシ基(−OCH3)の近傍の水分子の相対配置は、ほぼ等しいはずである。但し、複合体の周囲に配置される水分子のうち、N1個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(N1))と対象タンパク質のいずれからも、3.5Å以内の範囲に、その酸素原子の位置が特定されている水分子の幾つかは、その酸素原子の座標が若干の偏移を示す可能性がある。結果的に、この工程(vi)において、その位置を調整された水分子を含む、複合体の調整済の仮定された構造において、若干の偏移を示す水分子の幾つか存在すると、最終的に特定される水素原子の座標も、付随して若干の偏移を示すことになる。
工程(vii)では、N1個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(N1))と対象タンパク質の複合体が、前記工程(vi)において、調整済の仮定された構造を採る際、対象タンパク質とN1個修飾RNAアプタマー分子の結合エネルギー:Ebinding-Rmod/P(i1(1),…,i1(N1))を、フラグメント分子軌道法を適用して、数値計算によって、推定する。
この工程(vii)における数値計算の手順は、工程(iii)における数値計算の手順と本質的に同じである。
実際には、同様のフラグメント分割を行った、対象タンパク質由来のアミノ酸残基フラグメント:FP-amino-Ni、N1個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(N1))由来のヌクレオチドの塩基成分フラグメント:FRmod-base-Ni、D−リボース成分フラグメント:FRmod-ribo-Ni、ならびに、前記水素結合型の架橋構造の水分子フラグメント:FW-bridge-Niの間について、フラグメント間相互作用エネルギー(IFIE:Interfragment Interaction Energy)を、まず、フラグメント分子軌道法を適用して、数値計算する。
対象タンパク質由来のアミノ酸残基フラグメント:FP-amino-Niと、N1個修飾RNAアプタマー分子由来のヌクレオチドの塩基成分フラグメント:FR-base-Ni、D−リボース成分フラグメント:FR-ribo-Niとの間のフラグメント間相互作用エネルギーの推定値の総和を、ΣeP-R(N1)と表記する。
対象タンパク質由来のアミノ酸残基フラグメント:FP-amino-Niと、前記水素結合型の架橋構造の水分子フラグメント:FW-bridge-Niとの間のフラグメント間相互作用エネルギーの推定値の総和を、ΣeP-W(N1)と表記する。
1個修飾RNAアプタマー分子由来のヌクレオチドの塩基成分フラグメント:FR-base-Ni、D−リボース成分フラグメント:FR-ribo-Niと、前記水素結合型の架橋構造の水分子フラグメント:FW-bridge-Niとの間のフラグメント間相互作用エネルギーの推定値の総和を、ΣeR-W(N1)と表記する。
その際、該複合体を形成した際、対象タンパク質とN1個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(N1))の間における、水素結合型の架橋構造の水分子の寄与を含む、分子間相互作用エネルギーVR/P(N1)は、下記のように表記することができる。
R/P(N1)=ΣeP-R(N1)+ΣeP-W(N1)+ΣeR-W(N1
前記の分子間相互作用エネルギーVR/P(N1)は、計算に用いた、適正に特定された水分子を含む、複合体の構造における、対象タンパク質とN1個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(N1))の結合エネルギー:Ebinding-Rmod/P(i1(1),…,i1(N1))に相当している。
工程(viii)では、本来のRNAアプタマー分子:AP(0)と対象タンパク質の複合体について、推定される結合エネルギー:Ebinding-R/P(0)と、N1個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(N1))と対象タンパク質の複合体について、推定される結合エネルギー:Ebinding-Rmod/P(i1(1),…,i1(N1))とを比較する。
binding-Rmod/P(i1(1),…,i1(N1))≧Ebinding-R/P(0)である場合、該N1個の修飾ヌクレオチドで置換することに伴って、複合体形成時の結合エネルギーの低下は誘起されないと判断し、
逆に、Ebinding-Rmod/P(i1(1),…,i1(N1))<Ebinding-R/P(0)である場合、該N1個の修飾ヌクレオチドで置換することに伴って、複合体形成時の結合エネルギーの低下が誘起されると判断し、
binding-Rmod/P(i1(1),…,i1(N1))≧Ebinding-R/P(0)である場合、該N1個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(N1))を、本来のRNAアプタマー分子:AP(0)よりも分解耐性が向上しており、また、形成される複合体の安定性も保持されると予測される、修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子の第一の候補として、選択する。
例えば、上記の工程(v)において、一次選定された置換位置の群:{i1(j):j=1、…、N1}の全てが、Ebinding-Rmod/P(i)≒Ebinding-R/P(0)である場合には、Ebinding-Rmod/P(i1(1),…,i1(N1))≒Ebinding-R/P(0)となる可能性が高い。その場合、計算に用いた、適正に特定された水分子を含む、複合体の構造の特定の確度、あるいは、フラグメント分子軌道法を適用して、数値計算によって、推定する際に採用している近似に起因して、Ebinding-Rmod/P(i1(1),…,i1(N1))≒Ebinding-R/P(0)ではあるが、Ebinding-Rmod/P(i1(1),…,i1(N1))<Ebinding-R/P(0)となる可能性が僅かに存在している。
そのような場合には、N1個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(N1))を第一の候補として、選択することができない。そのため、下記の工程(ix)〜工程(xi)に記載する手順に従って、第二の候補群を選択する。
その際、工程(x)における、分子軌道法を適用する数値計算では、例えば、フラグメント分子軌道法を適用する数値計算の形態を選択することができる。
さらには、主として、RNAアプタマー分子と対象タンパク質の複合体中における、分子間相互作用を数値計算する形態であり、一般的な分子軌道法を採用して、考慮の対象である複合体と、その周囲の水分子を含め、スーパー・モレキュール計算を行う形態を選択することもできる。あるいは、一般的な分子軌道法を採用する際には、対象とする系のサイズを考慮して、所謂、QM/MM法を利用することができる。
また、RNAアプタマー分子と対象タンパク質の複合体中における、分子間相互作用の計算では、分子力場(MM)法を応用した、MM−PB/SA法を利用する形態も採用可能である。
例えば、分子軌道法を適用する数値計算に、フラグメント分子軌道法を適用する数値計算を採用する形態を例に採り、工程(ix)〜工程(xi)をより具体的に説明する。
工程(ix)では、前記工程(viii)において、Ebinding-Rmod/P(i1(1),…,i1(N1))<Ebinding-R/P(0)である場合には、
一次選定される、置換位置{i1(j):j=1、…、N1}中、(N1−1)箇所を修飾ヌクレオチドで置換してなる修飾ヌクレオチド配列を有する一本鎖RNA分子も、本来のRNAアプタマー分子と本質的に等しい三次元構造を具えた修飾RNAアプタマー分子となり、対象タンパク質と複合体を構成すると仮定する。
1(k)の位置を除く、(N1−1)個の修飾ヌクレオチドによる置換を有する、(N1−1)個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))の三次元構造においても、各i1(j)番目の修飾ヌクレオチドにおける、D−リボースの2’−位に存在するメトキシ基(−OCH3)の配置は、それぞれ、対応するi1(j)番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)における配置と本質的に等しいと仮定する。
その際、形成される複合体の構造は、該(N1−1)個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))の、各i1(j)番目の修飾ヌクレオチドにおける、D−リボースの2’−位に存在するメトキシ基(−OCH3)の近傍の相対配置は、それぞれ、対応するi1(j)番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)との複合体における、該メトキシ基(−OCH3)の近傍の相対配置と本質的に等しいと仮定する。
すなわち、上記工程(ii)に記載する手法を同様の手法を用いて、(N1−1)個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))と対象タンパク質との複合体の周囲を取り囲む水分子の配置を決定している。実際は、工程(i)と同様に、上記の仮定に従って、複合体の周囲に水分子を配置した上で、その水分子の酸素原子の座標を固定した状態で、複合体の表面に露呈する各種の原子団との間で立体障害を引き起こさないように、回転異性が可能な水素原子の座標を特定する。
工程(x)では、
(N1−1)個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))と対象タンパク質の複合体が、前記工程(ix)において、調整済の仮定された構造を採る際、対象タンパク質と(N1−1)個修飾RNAアプタマー分子の結合エネルギー:Ebinding-Rmod/P(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))を、フラグメント分子軌道法を適用して、数値計算によって、推定する。
この工程(x)における数値計算の手順は、工程(iii)における数値計算の手順と本質的に同じである。
実際には、同様のフラグメント分割を行った、対象タンパク質由来のアミノ酸残基フラグメント:FP-amino-Ni/k、(N1−1)個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))由来のヌクレオチドの塩基成分フラグメント:FRmod-base-Ni/k、D−リボース成分フラグメント:FRmod-ribo-Ni/k、ならびに、前記水素結合型の架橋構造の水分子フラグメント:FW-bridge-Ni/kの間について、フラグメント間相互作用エネルギー(IFIE:Interfragment Interaction Enrgy)を、まず、フラグメント分子軌道法を適用して、数値計算する。
対象タンパク質由来のアミノ酸残基フラグメント:FP-amino-Ni/kと、(N1−1)個修飾RNAアプタマー分子由来のヌクレオチドの塩基成分フラグメント:FR-base-Ni/k、D−リボース成分フラグメント:FR-ribo-Ni/kとの間のフラグメント間相互作用エネルギーの推定値の総和を、ΣeP-R(N1/k)と表記する。
対象タンパク質由来のアミノ酸残基フラグメント:FP-amino-Ni/kと、前記水素結合型の架橋構造の水分子フラグメント:FW-bridge-Ni/kとの間のフラグメント間相互作用エネルギーの推定値の総和を、ΣeP-W(N1/k)と表記する。
(N1−1)個修飾RNAアプタマー分子由来のヌクレオチドの塩基成分フラグメント:FR-base-Ni/k、D−リボース成分フラグメント:FR-ribo-Ni/kと、前記水素結合型の架橋構造の水分子フラグメント:FW-bridge-Niとの間のフラグメント間相互作用エネルギーの推定値の総和を、ΣeR-W(N1/k)と表記する。
その際、該複合体を形成した際、対象タンパク質との間における、水素結合型の架橋構造の水分子の寄与を含む、分子間相互作用エネルギーVR/P(N1/k)は、下記のように表記することができる。
R/P(N1/k)=ΣeP-R(N1/k)+ΣeP-W(N/k1)+ΣeR-W(N1/k)
前記の分子間相互作用エネルギーVR/P(N1/k)は、計算に用いた、適正に特定された水分子を含む、複合体の構造における、対象タンパク質と(N1−1)個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))の結合エネルギー:Ebinding-Rmod/P(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))に相当している。
工程(xi)では、
1(k)の位置を除く、(N1−1)個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))、合計N1種類について、
本来のRNAアプタマー分子:AP(0)と対象タンパク質の複合体について、推定される結合エネルギー:Ebinding-R/P(0)と、該(N1−1)個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))と対象タンパク質の複合体について、推定される結合エネルギー:Ebinding-Rmod/P(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))とを比較する。
binding-Rmod/P(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))≧Ebinding-R/P(0)である場合、
該(N1−1)個の修飾ヌクレオチドで置換することに伴って、複合体形成時の結合エネルギーの低下は誘起されないと判断し、
逆に、Ebinding-Rmod/P(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))<Ebinding-R/P(0)である場合、
該(N1−1)個の修飾ヌクレオチドで置換することに伴って、複合体形成時の結合エネルギーの低下が誘起されると判断する。
binding-Rmod/P(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))≧Ebinding-R/P(0)である場合、該(N1−1)個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))は、本来のRNAアプタマー分子:AP(0)よりも分解耐性が向上しており、また、形成される複合体の安定性も保持されると予測される、修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子の候補として、選択し、
合計N1種類の、(N1−1)個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))から、前記の判定基準に基づき選択される、修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子の候補、合計N2種類(N2≦N1)を、第二の候補群として、選択する。
例えば、上記の工程(v)において、一次選定された置換位置の群:{i1(j):j=1、…、N1}の全てが、Ebinding-Rmod/P(i)≒Ebinding-R/P(0)である場合には、Ebinding-Rmod/P(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))≒Ebinding-R/P(0)となる可能性が相当に高い。その場合、計算に用いた、適正に特定された水分子を含む、複合体の構造の特定の確度、あるいは、フラグメント分子軌道法を適用して、数値計算によって、推定する際に採用している近似に起因して、Ebinding-Rmod/P(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))≒Ebinding-R/P(0)ではあるが、Ebinding-Rmod/P(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))<Ebinding-R/P(0)となる可能性が僅かに存在している。
実際に、上記の工程(v)において、一次選定された置換位置の群:{i1(j):j=1、…、N1}の全てが、Ebinding-Rmod/P(i)≒Ebinding-R/P(0)である場合において、
binding-Rmod/P(i1(1),…,i1(N1))≒Ebinding-R/P(0)となっており、また、Ebinding-Rmod/P(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))≒Ebinding-R/P(0)となる場合は、
上記の工程(v)において、一次選定された置換位置の群:{i1(j):j=1、…、N1}の全ては、結合性の低下を引き起こさないことを明確に示唆する結果と解釈される。その場合には、N1個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(N1))を第一の候補として、また、i1(k)の位置を除く、(N1−1)個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))、合計N1種類を第二の候補群として、選択することができる。
前記工程(viii)において選択される、修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子の第一の候補と、前記工程(xi)において選択される、N2種類(N2≦N1)の修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子からなる第二の候補群について、その分解性を比較すると、第一の候補の分解性の方が低いはずである。
しかしながら、上記の工程(v)において、一次選定された置換位置の群:{i1(j):j=1、…、N1}以外の塩基位置において、より選択的に一本鎖RNA分子の分解が進行している場合、第一の候補、第二の候補のいずれも、その分解性は、本来のRNAアプタマー分子の分解性と実質的な差違を示さない。
その可能性を考慮すると、第一の候補、第二の候補について、実際に、該修飾ヌクレオチド配列を有する一本鎖RNA分子を作製し、その分解性を評価する必要性がある。
工程(xii)では、前記工程(viii)において選択される、修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子の第一の候補、あるいは、前記工程(xi)において選択される、N2種類(N2≦N1)の修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子からなる第二の候補群について、
実際に、該修飾ヌクレオチド配列を有する一本鎖RNA分子を作製し、その分解性を評価する。その評価の結果に基づき、本来のRNAアプタマー分子:AP(0)における分解性と比較して、分解性が実際に低下しているものを、修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子の最終候補として、選択する。
このRNAアプタマー分子の分解性の評価では、例えば、非酵素的な分解について、以下のように評価を行う。
該修飾ヌクレオチド配列を有する一本鎖RNA分子を化学合成した後、該一本鎖RNA分子のre-folding処理を行って、目的の三次元構造を有するRNAアプタマー分子とする。re-folding処理済のRNAアプタマー分子のアルカリ加水分解を行い、所定の反応時間の間に分解される比率を測定する。
なお、前記の分解反応の条件は、適正な三次元構造を有する本来のRNAアプタマー分子:AP(0)において、所定の反応時間の間に分解される比率が、1/2〜3/4となるように選択することが好ましい。
非酵素的な分解過程では、通常、適正の三次元構造を有するRNAアプタマー分子と、一本鎖RNA分子とでは、その分解性に相当の差違がある。しかし、本発明では、対象とするRNAアプタマー分子を、例えば、長期保存する際の分解性を低下させることを目的としており、通常の保存状態における、適正な三次元構造を有するRNAアプタマー分子と、一本鎖RNA分子とが混在する状態に対する評価を行う。従って、上記の一本鎖RNA分子のre-folding処理後、目的の三次元構造を有するRNAアプタマー分子と、一本鎖RNA分子との含有比率を予め測定する必要はない。
実際には、目的の三次元構造を有するRNAアプタマー分子となっていない一本鎖RNA分子は、大半は、不適正な構造を形成している、mis-foldingRNA分子となっている。このmis-foldingRNA分子は、一旦、de-folding処理を施した後、re-folding処理を施すと、そのほとんどは、目的の三次元構造を有するRNAアプタマー分子となる。一旦、re-folding処理を行った後、非酵素的な分解反応を行うことで、適正な三次元構造を有するRNAアプタマー分子の含有比率を高めた状態で、分解性の評価を行うことができる。
勿論、RNA分解酵素が誤って混入すると、非酵素的な分解過程に加えて、酵素的な分解も進行するため、非酵素的な分解過程に関する分解性は正当に評価できない。RNA分解酵素の混入を防止する、あるいは、RNA分解酵素を加熱により失活させた状態で、非酵素的な分解反応を行う。さらに、RNA分解酵素に対する、阻害剤の存在下で、非酵素的な分解反応を行うことが望ましい。
一方、RNAアプタマー分子の分解性の評価では、非酵素的な分解ではなく、主に、酵素的な分解に対して、評価を行う形態を選択することもできる。具体的には、本来のRNAアプタマー分子:AP(0)において、特定に部位において、酵素的な分解が生じることが判明している場合、その酵素的な分解に対する耐性の評価を行う。
なお、酵素的な分解の評価は、RNAアプタマー分子は、三次元構造を形成している状態でその評価を行う。
上記の工程(i)〜工程(xi)においては、対象タンパク質とRNAアプタマー分子の複合体における、結合エネルギーを推定計算して、該結合エネルギーの減少を行さない、修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子の候補を選択している。
該結合エネルギーの大小は、一旦、形成された複合体の安定性を反映している。すなわち、複合体の解離過程の速度定数:kd(s-1)の大小関係を反映していると理解される。
一方、対象タンパク質とRNAアプタマー分子の複合体の平衡解離定数:KD(M)は、複合体形成過程の速度定数:ka(M-1・s-1)と、解離過程の速度定数:kd(s-1)とを用いて、KD=kd/kaと表記される。従って、平衡解離定数:KD(M)は、複合体の解離過程の速度定数:kd(s-1)に加えて、複合体形成過程の速度定数:ka(M-1・s-1)にも依存している。
この点を考慮すると、複合体の解離過程の速度定数:kd(s-1)と、複合体形成過程の速度定数:ka(M-1・s-1)を実際に測定して、平衡解離定数:KD(M)の評価を行う必要がある。
工程(xiii)では、前記工程(xii)において、分解耐性の向上が実験的に検証された、修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子の最終候補に対して、
対象タンパク質と複合体を形成させて、実験的に、該対象タンパク質との複合体における、平衡解離定数:KD F(M)を評価する。
該修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子の最終候補の平衡解離定数:KD F(M)と、本来のRNAアプタマー分子:AP(0)の平衡解離定数:KD O(M)とを比較し、KD F(M)/KD O(M)<10の条件を満たすことを確認する。
該対象タンパク質との複合体における、平衡解離定数の評価では、表面プラズモン共鳴装置を利用して、複合体形成過程の速度定数:ka(M-1・s-1)と、解離過程の速度定数:kd(s-1)を測定し、平衡解離定数:KD(M)は、KD=kd/kaとして、算定する形態を採用することが好ましい。
具体的には、対象タンパク質を固定化した後、該固定化された対象タンパク質へのRNAアプタマー分子の複合体形成過程と、解離過程を、表面プラズモン共鳴装置を利用して、観測し、複合体形成過程の速度定数:ka(M-1・s-1)と、解離過程の速度定数:kd(s-1)を求める。
最終的に、工程(xiv)において、
前記工程(xiii)において、KD F(M)/KD O(M)<10の条件を満たすことの確認がなされた、修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子を、
該対象タンパク質に対する、特異的な結合能を保持し、分解耐性の向上した修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子として、選択する。
なお、一本鎖RNA分子の酵素分解反応では、例えば、ヘビ毒ホスホジエステラーゼは、3’,5’−ホスホジエステル結合の3’−位側のエステル結合を加水分解し、リボヌクレオシド−5’−リン酸を生成させる。その際、2’−位にメトキシ基が存在し、該酵素タンパク質の反応中心への近接が阻害されると、酵素的分解が抑制される。
また、例えば、脾臓ホスホジエステラーゼやリボヌクレアーゼT2は、3’,5’−ホスホジエステル結合の5’−位側のエステル結合を加水分解し、リボヌクレオシド−3’−リン酸を生成させる。その際、2’−位のヒドロキシル基がメトキシ基に変換され、該酵素タンパク質の反応中心における、3’,5’−ホスホジエステル結合が反応中間体の配置へと変換される過程が阻害されると、酵素的分解が抑制される。
前述のヘビ毒ホスホジエステラーゼや、リボヌクレアーゼT2などのRNA分解酵素は、一本鎖RNA分子中のピリミジン塩基、プリン塩基のいずれに対しても、その3’,5’−ホスホジエステル結合を開裂させる機能を有している。本発明が目的とする修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子は、ピリミジン塩基の相当数が、修飾ヌクレオチドへと置換されるため、前述の酵素的分解過程に対しても、その分解性は一定に割合で低下されたものとなる。
以下に、さらに、具体的な事例を参照して、本発明の好ましい実施形態について、説明を加える。なお、下記の具体的な事例は、本発明の最適な実施形態の一例ではあるが、本発明は、この事例により例示される形態に限定されるものではない。
(第一の実施態様)
第一の実施態様は、本発明にかかる選別方法を、NF−κB/RNAアプタマー複合体のX線結晶構造解析の結果に基づき、対象タンパク質に対する、特異的な結合能を保持し、分解耐性の向上した修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子の選別に適用した事例に相当する。
NF−κB/RNAアプタマー複合体のX線結晶構造解析に基づき、決定された構造の原子座標は、PDB ID:1OOAに公表されている。該NF−κB/RNAアプタマー複合体に関しては、非特許文献1:Biochemistry, Vol.38, p.3168-3174 (1999)に、詳細に開示されている。NF−κBタンパク質は、313アミノ酸残基で構成されており、RNAアプタマー分子は、29塩基長である。該RNAアプタマー分子の塩基配列は、5’−CAUACUUGAAACUGUAAGGUU GGCGUAUG−3’である。
X線結晶構造解析された構造では、NF−κB/RNAアプタマー複合体は、2量体(chain A/C, chain B/D)を構成している。前記2量体化自体は、NF−κBタンパク質間で行われており、各RNAアプタマー分子は、各NF−κBタンパク質とのみ相互作用している形態である。その際、該2量体(chain A/C, chain B/D)は、2回対称性を示している。その点を考慮して、該2量体(chain A/C, chain B/D)のうち、chain A/C部分のNF−κB/RNAアプタマー複合体の原子座標のみを利用して、本発明の方法を適用している。
X線結晶構造解析の結果では、chain A/C部分のNF−κB/RNAアプタマー分子の複合体において、NF−κBタンパク質とRNAアプタマー分子から3.5Å以内に存在する水分子が、17個特定されている。これら酸素原子の座標が特定されている水分子は、NF−κBタンパク質とRNAアプタマー分子のいずれとも水素結合的な分子間相互作用を有すると、推定される。すなわち、NF−κB/RNAアプタマー分子の複合体において、該水分子は、NF−κBタンパク質とRNAアプタマー分子との間に、水素結合を介する、架橋構造を形成していると、推断される。
RNAアプタマー分子自体は、全体としては、ヘアピン型の高次構造を形成している。NF−κBタンパク質自体は、DNA結合性タンパク質であり、そのDNA結合部位に相当する領域において、該RNAアプタマー分子と複合体を構成している。該NF−κBタンパク質の表面から、3.5Å以内に存在するヌクレオチドとして、8G,9A,10A,11A,12C,14G,15U,17A,18G,19G,20U,21U,22G,23G,24C,25Gが特定される。
X線結晶構造解析の結果を参照すると、chain A/C部分のNF−κB/RNAアプタマー分子の複合体から、6Å以内に酸素原子の位置が特定されている水分子が多数存在している。後述するFMO計算においては、NF−κB/RNAアプタマー分子の複合体から、6Å以内に酸素原子の位置が特定されている水分子(結晶水)を計算系に含められている。
対象タンパク質とRNAアプタマー分子の複合体において、NF−κBタンパク質とRNAアプタマー分子の双方と相互作用を示す水分子に因る、架橋構造の寄与を含め、該複合体を構成した際の結合力の評価を行っている。具体的には、NF−κB/RNAアプタマー間相互作用エネルギー:VP-Rの評価に際して、利用される複合体を構成した配置において、FMO計算で推定計算する、フラグメント間相互作用エネルギー(IFIE: Interfragment Interaction Energy)は、下記のように定義している。
P-R =ΣeP-R +ΣeP-W+ΣeR-W
P-R:タンパク質−RNA間のIFIE;
P-W:タンパク質−水分子間のIFIE;
R-W:RNA−水分子間のIFIE

以下に記述するように、NF−κB/RNAアプタマー複合体の基準構造、および修飾モデリング構造を計算し、上記の定義に従って算出される、フラグメント間相互作用エネルギーVP-Rを指標として、結合力を、それぞれ評価している。
修飾構造について、算出されるNF−κB/修飾RNAアプタマー間相互作用エネルギー:VP-R(modification)と、基準構造について、算出されるNF−κB/本来のRNAアプタマー間相互作用エネルギー:VP-R(native)との比較を行っている。差分 VP-R(modification)−VP-R(native)を計算し、複合体を形成した際、その結合力に対して、修飾が与える影響の指標として、評価を行っている。
[NF−κB/RNAアプタマー複合体の基準構造計算]
まず、PDB ID:1OOAに公表されている、二量体の構造から、chain A/C部分のNF−κB/RNAアプタマー分子の複合体の原子座標を取得する。このNF−κB/RNAアプタマー複合体の構造に対して、AMBER8を用いて、Na+で中和し、TIP3P型で水を添加する。その後、重原子を固定して、力場ff02により、水分子を含め、構造最適化を行っている。
該最適化された構造は、NF−κBタンパク質:アミノ酸313残基;RNAアプタマー分子:29塩基;複合体から6Å以内に酸素原子の位置が特定されている水分子:197水分子で構成されている。
FMO法を適用する際、対象フラグメントは、NF−κBタンパク質:アミノ酸313残基の313フラグメント;RNAアプタマー分子:29塩基に由来する塩基部分とD−リボース成分の29×2フラグメント;複合体から6Å以内に酸素原子の位置が特定されている水分子:197水分子としている。
次に、最適化されて構造において、NF−κB/RNAアプタマー複合体と、該複合体から6Å以内に酸素原子が特定されている水分子(結晶水)について、FMO法を実装したABINIT−MPを用いて、MP2/6−31Gで、フラグメント間相互作用エネルギーの計算を行っている。
[修飾モデリング構造計算]
修飾モデリングのため、該RNAアプタマー分子の塩基配列中、5’−末端のCを除く、全てのピリミジン塩基C/U(13個):5’−CACUUGAAACUAAGGUU GGG−3’について、それぞれ2’‐O‐メチル修飾した構造を、モデリングにより構築する。各修飾RNAアプタマー分子とNF−κBタンパク質の複合体について、前記の手法を応用して、水分子を含め、構造最適化を行っている。
なお、前記構造最適化において、修飾RNAアプタマー分子の修飾ヌクレオチドの2’‐O‐メチル修飾部位から、6Å以内の重原子について、その拘束を段階的に解く手法を採用している。
次に、最適化されて構造において、NF−κB/修飾RNAアプタマー複合体と、該複合体から6Å以内に酸素原子が特定されている水分子(結晶水)について、FMO法を実装したABINIT−MPを用いて、MP2/6−31Gで、フラグメント間相互作用エネルギーの計算を行っている。
なお、上記のフラグメント間相互作用エネルギーの計算では、ABINIT-MP Ver. 4.1 (http://www.ciss.iis.u-tokyo.ac.jp/dl/index.html)を利用している。
まず、NF−κB/RNAアプタマー複合体の基準構造について、上記のFMO法を適用して、RNAアプタマー分子:29塩基に由来する塩基部分とD−リボース成分の29×2フラグメントと、NF−κBタンパク質との間のIFIE:eP-Rを計算した結果を、図1に示す。RNAアプタマー分子を構成する各ヌクレオチドのD−リボース成分フラグメントと、NF−κBタンパク質との間のIFIEの寄与を示す計算結果となっている。
X線結晶構造解析の結果を参照すると、NF−κBタンパク質の表面から、3.5Å以内に存在するヌクレオチドのうち、11A,12C,14G,15U,19G,20U,21U,22G,23G,24Cでは、その塩基部分が、アミノ酸残基の側鎖の近傍に位置しており;8G,9A,17A,18G,25Gでは、そのD−リボース成分が、アミノ酸残基の側鎖の近傍に位置している。
図1を参照すると、そのD−リボース成分が、アミノ酸残基の側鎖の近傍に位置している、8G,9A,17A,18G,25Gでは、D−リボース成分フラグメントと、NF−κBタンパク質との間のIFIEが、大きな寄与を示す計算結果となっている。また、その塩基部分が、アミノ酸残基の側鎖の近傍に位置している、11A,12C,14G,15U,19G,20U,21U,22G,23G,24Cでは、塩基成分フラグメントと、NF−κBタンパク質との間のIFIEが、実際に寄与を有することを示唆する計算結果となっている。
次に、上記の13箇所のピリミジン塩基C/Uに、それぞれ、2’‐O‐メチル修飾を施した修飾RNAアプタマー分子について、複合体を形成した際のNF−κB/修飾RNAアプタマー間相互作用エネルギー:VP-R(modification)を、FMO法によって計算している。差分 VP-R(modification)−VP-R(native)を計算し、複合体を形成した際、その結合力に対して、修飾が与える影響の指標として、評価を行った結果を、図2に示す。
3U、6U、12C、15U、21U、26U、28Uを修飾ヌクレオチドに置き換えた場合、差分 VP-R(modification)−VP-R(native)>0となっている。一方、5C、7U、13U、20U、24Cを修飾ヌクレオチドに置き換えた場合、差分 VP-R(modification)−VP-R(native)≦0となっている。
この結果から、5C、7U、13U、20U、24Cを修飾ヌクレオチドに置き換えた場合、複合体を形成した際、少なくとも、その結合力の低下は生じないと推断される。
前記5C、7U、13U、20U、24Cを、全て、修飾ヌクレオチドに置き換えた、5箇所修飾RNAアプタマー分子についても、複合体を形成した際のフラグメント間相互作用エネルギー:VP-R(modification)を、FMO法によって計算している。この5箇所修飾RNAアプタマー分子について、差分 VP-R(modification)−VP-R(native)を計算した結果も、図2に示してある。この5箇所修飾RNAアプタマー分子でも、差分 VP-R(modification)−VP-R(native)<0となっており、複合体を形成した際、少なくとも、その結合力の低下は生じないと推断される。
本発明にかかる方法は、対象タンパク質に対して、特異的で高い結合能を具える、天然のヌクレオチドで構成されているRNAアプタマー分子の塩基配列を基に、該本来のRNAアプタマー分子が有する、対象タンパク質に対する、特異的で高い結合能を保持し、分解耐性が向上した修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子を作製する上で有効な分子設計手法として利用可能である。
NF−κB/RNAアプタマー複合体の基準構造について、FMO法を適用して、RNAアプタマー分子:29塩基に由来する塩基部分とD−リボース成分の29×2フラグメントと、NF−κBタンパク質との間のIFIE:eP-Rを計算した結果を示す図である。 13箇所のピリミジン塩基C/Uに、それぞれ、2’‐O‐メチル修飾を施した修飾RNAアプタマー分子について、差分 VP-R(modification)−VP-R(native)を算出し、複合体を形成した際、その結合力に対して、修飾が与える影響の指標として、評価を行った結果示す。

Claims (14)

  1. 既に対象タンパク質に対するRNAアダプター分子として探索されている、天然のヌクレオチドで構成される一本鎖RNA分子からなるRNAアプタマー分子の塩基配列を基に、該対象タンパク質に対する、特異的な結合能を保持し、分解耐性の向上した修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子を選択する方法であって、
    前記天然のヌクレオチドで構成される一本鎖RNA分子からなる、本来のRNAアプタマー分子:AP(0)と対象タンパク質の複合体の構造は、すでに、X線結晶構造解析によって、特定されており、
    目的とする修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子は、前記本来のRNAアプタマー分子:AP(0)の天然のヌクレオチドで構成される塩基配列中に存在する、複数個の天然のヌクレオチドU,Cのうち、その一部を、対応する修飾ヌクレオチドである、該ヌクレオチドU,Cの糖成分のD−リボースの2’−位のヒドロキシル基(−OH)を、メトキシ基(−OCH3)で置換した、2’−位にO−メチル化修飾されたU(2'-O-methylated U),2’−位にO−メチル化修飾されたC(2'-O-methylated C)で、それぞれ置換した修飾ヌクレオチド配列からなる一本鎖RNA分子からなり、
    該修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子を選択する工程は、
    下記の工程(i)〜工程(x)を含んでなる:
    工程(i)
    X線結晶構造解析によって、特定されている、前記複合体の構造において、対象タンパク質と本来のRNAアプタマー分子の結合エネルギー:Ebinding-R/P(0)を、分子軌道法を適用して、数値計算によって、推定する;
    工程(ii)
    前記本来のRNAアプタマー分子:AP(0)の天然のヌクレオチドで構成される塩基配列中に存在する、天然のヌクレオチドU,Cの合計をN個と表記し、
    該N個のうち、i番目(i=1、…、N)の天然ヌクレオチド1個を、前記の対応する修飾ヌクレオチドで置換してなる修飾ヌクレオチド配列を有する一本鎖RNA分子は、本来のRNAアプタマー分子:AP(0)と本質的に等しい三次元構造を具えた修飾RNAアプタマー分子となり、対象タンパク質と複合体を構成すると仮定し、
    形成される複合体における、対象タンパク質と、i番目に修飾ヌクレオチドによる置換を有する、i番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)の相対配置は、本来のRNAアプタマー分子:AP(0)と対象タンパク質の複合体の構造と本質的に等しいと仮定し、
    前記の仮定された相対配置において、対象タンパク質とi番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)との間で、i番目の修飾ヌクレオチドのD−リボースの2’−位に存在するメトキシ基(−OCH3)が、立体障害を引き起こすことが無いように、該メトキシ基(−OCH3)の近傍の相対配置を調整する;
    工程(iii)
    前記i番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)と対象タンパク質の複合体が、前記工程(ii)によって調整済の仮定された構造を採る際、対象タンパク質とi番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)の結合エネルギー:Ebinding-Rmod/P(i)を、分子軌道法を適用して、数値計算によって、推定する;
    工程(iv)
    本来のRNAアプタマー分子:AP(0)と対象タンパク質の複合体について、推定される結合エネルギー:Ebinding-R/P(0)と、i番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)と対象タンパク質の複合体について、推定される結合エネルギー:Ebinding-Rmod/P(i)とを比較し、
    binding-Rmod/P(i)≧Ebinding-R/P(0)である場合、上記天然のヌクレオチドU,Cの合計N個のうち、i番目を、対応する修飾ヌクレオチドで置換することに伴って、複合体形成時の結合エネルギーの低下は誘起されないと判断し、
    逆に、Ebinding-Rmod/P(i)<Ebinding-R/P(0)である場合、上記天然のヌクレオチドU,Cの合計N個のうち、i番目を、対応する修飾ヌクレオチドで置換することに伴って、複合体形成時の結合エネルギーの低下が誘起されると判断する;
    工程(v)
    上記天然のヌクレオチドU,Cの合計N個のうち、
    複合体形成時の結合エネルギーの低下が誘起されると判断される、修飾ヌクレオチドの置換位置を排除し、
    修飾ヌクレオチドで置換することに伴って、複合体形成時の結合エネルギーの低下は誘起されないと判断される、置換位置の群を、一次選定し、
    この一次選定される、置換位置の総数を、N1(N1≦N)と表記し、一次選定された置換位置の群を、{i1(j):j=1、…、N1}と表記する;
    工程(vi)
    一次選定される、置換位置{i1(j):j=1、…、N1}の全てを、対応する修飾ヌクレオチドで置換してなる修飾ヌクレオチド配列を有する一本鎖核酸分子も、本来のRNAアプタマー分子と本質的に等しい三次元構造を具えた修飾RNAアプタマー分子となり、対象タンパク質と複合体を構成すると仮定し、
    該N1個の修飾ヌクレオチドによる置換を有する、N1個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(N1))の三次元構造において、各i1(j)番目の修飾ヌクレオチドにおける、D−リボースの2’−位に存在するメトキシ基(−OCH3)の配置は、それぞれ、対応するi1(j)番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)における配置と本質的に等しいと仮定し、
    形成される複合体の構造は、N1個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(N1))の、各i1(j)番目の修飾ヌクレオチドにおける、D−リボースの2’−位に存在するメトキシ基(−OCH3)の近傍の相対配置は、それぞれ、対応するi1(j)番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(j))との複合体における、該メトキシ基(−OCH3)の近傍の相対配置と本質的に等しいと仮定する;
    工程(vii)
    1個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(N1))と対象タンパク質の複合体が、前記工程(vi)において、調整済の仮定された構造を採る際、対象タンパク質とN1個修飾RNAアプタマー分子の結合エネルギー:Ebinding-Rmod/P(i1(1),…,i1(N1))を、分子軌道法を適用して、数値計算によって、推定する;
    工程(viii)
    本来のRNAアプタマー分子:AP(0)と対象タンパク質の複合体について、推定される結合エネルギー:Ebinding-R/P(0)と、N1個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(N1))と対象タンパク質の複合体について、推定される結合エネルギー:Ebinding-Rmod/P(i1(1),…,i1(N1))とを比較し、
    binding-Rmod/P(i1(1),…,i1(N1))≧Ebinding-R/P(0)である場合、該N1個の修飾ヌクレオチドで置換することに伴って、複合体形成時の結合エネルギーの低下は誘起されないと判断し、
    逆に、Ebinding-Rmod/P(i1(1),…,i1(N1))<Ebinding-R/P(0)である場合、該N1個の修飾ヌクレオチドで置換することに伴って、複合体形成時の結合エネルギーの低下が誘起されると判断し、
    binding-Rmod/P(i1(1),…,i1(N1))≧Ebinding-R/P(0)である場合、該N1個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(N1))を、本来のRNAアプタマー分子:AP(0)よりも分解耐性が向上しており、また、形成される複合体の安定性も保持されると予測される、修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子の第一の候補として、選択する;
    工程(ix)
    前記工程(viii)において、Ebinding-Rmod/P(i1(1),…,i1(N1))<Ebinding-R/P(0)である場合には、
    一次選定される、置換位置{i1(j):j=1、…、N1}中、(N1−1)箇所を修飾ヌクレオチドで置換してなる修飾ヌクレオチド配列を有する一本鎖RNA分子も、本来のRNAアプタマー分子と本質的に等しい三次元構造を具えた修飾RNAアプタマー分子となり、対象タンパク質と複合体を構成すると仮定し、
    1(k)の位置を除く、(N1−1)個の修飾ヌクレオチドによる置換を有する、(N1−1)個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))の三次元構造においても、各i1(j)番目の修飾ヌクレオチドにおける、D−リボースの2’−位に存在するメトキシ基(−OCH3)の配置は、それぞれ、対応するi1(j)番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)における配置と本質的に等しいと仮定し、
    形成される複合体の構造は、該(N1−1)個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))の、各i1(j)番目の修飾ヌクレオチドにおける、D−リボースの2’−位に存在するメトキシ基(−OCH3)の近傍の相対配置は、それぞれ、対応するi1(j)番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)との複合体における、該メトキシ基(−OCH3)の近傍の相対配置と本質的に等しいと仮定する;
    工程(x)
    (N1−1)個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))と対象タンパク質の複合体が、前記工程(ix)において、調整済の仮定された構造を採る際、対象タンパク質と(N1−1)個修飾RNAアプタマー分子の結合エネルギー:Ebinding-Rmod/P(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))を、分子軌道法を適用して、数値計算によって、推定する;
    工程(xi)
    1(k)の位置を除く、(N1−1)個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))、合計N1種類について、
    本来のRNAアプタマー分子:AP(0)と対象タンパク質の複合体について、推定される結合エネルギー:Ebinding-R/P(0)と、該(N1−1)個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))と対象タンパク質の複合体について、推定される結合エネルギー:Ebinding-Rmod/P(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))とを比較し、
    binding-Rmod/P(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))≧Ebinding-R/P(0)である場合、
    該(N1−1)個の修飾ヌクレオチドで置換することに伴って、複合体形成時の結合エネルギーの低下は誘起されないと判断し、
    逆に、Ebinding-Rmod/P(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))<Ebinding-R/P(0)である場合、
    該(N1−1)個の修飾ヌクレオチドで置換することに伴って、複合体形成時の結合エネルギーの低下が誘起されると判断し、
    binding-Rmod/P(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))≧Ebinding-R/P(0)である場合、該(N1−1)個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))は、本来のRNAアプタマー分子:AP(0)よりも分解耐性が向上しており、また、形成される複合体の安定性も保持されると予測される、修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子の候補として、選択し、
    合計N1種類の、(N1−1)個修飾RNAアプタマー分子:APmod(i1(1),…,i1(k−1),i1(k+1),…,i1(N1))から、前記の判定基準に基づき選択される、修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子の候補、合計N2種類(N2≦N1)を、第二の候補群として、選択する;
    工程(xii)
    前記工程(viii)において選択される、修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子の第一の候補、あるいは、前記工程(xi)において選択される、N2種類(N2≦N1)の修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子からなる第二の候補群について、
    実際に、該修飾ヌクレオチド配列を有する一本鎖RNA分子を作製し、その分解性を評価し、
    本来のRNAアプタマー分子:AP(0)における分解性と比較して、分解性が実際に低下しているものを、修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子の最終候補として、選択する;
    工程(xiii)
    前記工程(xii)において、分解耐性の向上が実験的に検証された、修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子の最終候補に対して、
    対象タンパク質と複合体を形成させて、実験的に、該対象タンパク質との複合体における、平衡解離定数:KD F(M)を評価し、
    該修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子の最終候補の平衡解離定数:KD F(M)と、本来のRNAアプタマー分子:AP(0)の平衡解離定数:KD O(M)とを比較し、KD F(M)/KD O(M)<10の条件を満たすことを確認する;
    工程(xiv)
    前記工程(xiii)において、KD F(M)/KD O(M)<10の条件を満たすことの確認がなされた、修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子を、
    該対象タンパク質に対する、特異的な結合能を保持し、分解耐性の向上した修飾ヌクレオチド配列を有するRNAアプタマー分子として、選択する;
    ことを特徴とする、分解耐性を有するRNAアプタマー分子の修飾ヌクレオチド配列の選択方法。
  2. 各複合体の構造において、対象タンパク質とRNAアプタマー分子の結合エネルギーを、分子軌道法を適用して、数値計算によって、推定する際、
    X線結晶構造解析によって、特定されている、前記複合体の構造において、対象タンパク質と本来のRNAアプタマー分子:AP(0)のいずれからも、3.5Å以内の範囲に、その酸素原子の位置が特定されている水分子に関して、
    対象タンパク質とRNAアプタマー分子に直接的な分子間相互作用を示すと仮定し、
    対象タンパク質とRNAアプタマー分子の結合エネルギーを計算する際、前記水分子の関与する分子間相互作用に起因するエネルギーも算入する
    ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 前記水分子の関与する分子間相互作用に起因するエネルギーは、
    前記水分子と対象タンパク質との間の分子間相互作用に起因するエネルギーと、
    前記水分子とRNAアプタマー分子との間の分子間相互作用に起因するエネルギーとの和として近似する
    ことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
  4. 前記工程(ii)において、
    前記の仮定された相対配置において、対象タンパク質とi番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)との間で、i番目の修飾ヌクレオチドのD−リボースの2’−位に存在するメトキシ基(−OCH3)が、立体障害を引き起こすことが無いように、該メトキシ基(−OCH3)の近傍の相対配置を調整する際、
    該メトキシ基(−OCH3)の酸素原子の位置を固定し、
    該酸素原子とD−リボースの2’−位の炭素原子のC−O結合を回転軸とする、該メトキシ基(−OCH3)のメチル基(−CH3)の回転異性、ならびに、
    該メトキシ基(−OCH3)のO−C結合を回転軸とする、メチル基(−CH3)の水素原子の回転異性を考慮し、
    前記メトキシ基(−OCH3)の酸素原子、炭素原子から、6Å以内の範囲に位置可能な、対象タンパク質を構成するアミノ酸残基を構成する水素原子以外の原子との相対配置を調整する
    ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記の仮定された相対配置において、対象タンパク質とi番目修飾RNAアプタマー分子:APmod(i)との間で、i番目の修飾ヌクレオチドのD−リボースの2’−位に存在するメトキシ基(−OCH3)が、立体障害を引き起こすことが無いように、該メトキシ基(−OCH3)の近傍の相対配置を調整する際、
    該メトキシ基(−OCH3)の酸素原子の位置を固定し、
    該酸素原子とD−リボースの2’−位の炭素原子のC−O結合を回転軸とする、該メトキシ基(−OCH3)のメチル基(−CH3)の回転異性、ならびに、
    該メトキシ基(−OCH3)のO−C結合を回転軸とする、メチル基(−CH3)の水素原子の回転異性を考慮し、
    X線結晶構造解析によって、特定されている、前記複合体の構造において、対象タンパク質と本来のRNAアプタマー分子:AP(0)のいずれからも、6Å以内の範囲に、その酸素原子の位置が特定されている水分子のうち、
    前記メトキシ基(−OCH3)の酸素原子、炭素原子から、6Å以内の範囲に位置可能な、水分子の酸素原子との相対配置を調整する
    ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 各複合体の構造において、対象タンパク質とRNAアプタマー分子の結合エネルギーを、分子軌道法を適用して、数値計算によって、推定する際、
    前記分子軌道法を適用する数値計算では、フラグメント分子軌道法を適用して、数値計算を行う
    ことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 各複合体の構造において、対象タンパク質とRNAアプタマー分子の結合エネルギーを、フラグメント分子軌道法を適用して、数値計算によって、推定する際、
    対象タンパク質に関して、該対象タンパク質を構成するアミノ酸残基毎に一フラグメントを構成するように、フラグメント分割を行う
    ことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
  8. 前記対象タンパク質に関して、該対象タンパク質を構成するアミノ酸残基毎に一フラグメントを構成するように、フラグメント分割を行う際、アミノ酸残基相互を連結するアミド結合のCO−Nの結合の分割を回避するように、フラグメント分割部位を選択する
    ことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
  9. 各複合体の構造において、対象タンパク質とRNAアプタマー分子の結合エネルギーを、フラグメント分子軌道法を適用して、数値計算によって、推定する際、
    RNAアプタマー分子に関して、該RNAアプタマー分子を構成するヌクレオチド毎に二フラグメントを構成するように、各ヌクレオチドを構成する、塩基成分とD−リボース成分とを連結する、前記D−リボースの1’−位の炭素原子と、前記塩基の窒素原子の間のC−N結合を、該ヌクレオチド内のフラグメント分割部位として選択する
    ことを特徴とする、請求項6〜8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 各複合体の構造において、対象タンパク質とRNAアプタマー分子の結合エネルギーを、フラグメント分子軌道法を適用して、数値計算によって、推定する際、
    該フラグメント分子軌道法に基づく、数値計算用プログラムとして、ABINIT−MPを採用する
    ことを特徴とする、請求項6〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記フラグメント分子軌道法に基づく、数値計算用プログラムとして、ABINIT−MPを採用する際、各フラグメントを構成する原子の電子軌道の形成に利用する基底関数系として、6−31G基底関数を選択する
    ことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
  12. 前記工程(xii)において評価される、RNAアプタマー分子を構成した、一本鎖RNA分子の分解性は、非酵素的な一本鎖RNA分子の分解性である
    ことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 前記工程(xii)において評価される、RNAアプタマー分子を構成した、一本鎖RNA分子の分解性は、酵素的な一本鎖RNA分子の分解性である
    ことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
  14. また、前記工程(xiii)において、該対象タンパク質との複合体における、平衡解離定数の評価では、
    表面プラズモン共鳴装置を利用して、複合体形成過程の速度定数:ka(M-1・s-1)と、解離過程の速度定数:kd(s-1)を測定し、平衡解離定数:KD(M)は、KD=kd/kaとして、算定する
    ことを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
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