アコースティックピアノなど生音を発生する自然鍵盤楽器の鍵盤ユニットは、押鍵により回動するハンマーが打弦して発音するように構成されており、鍵とハンマーの間には、ジャックやウィッペンを有してなるアクション機構が設けられている。このアクション機構によって、演奏者の指に鍵から独特の反力が掛かるようになっており、自然鍵盤楽器の鍵盤ユニットでは、各楽器に特有の鍵タッチ感が得られる。
一方、電子音を発生する電子鍵盤楽器の鍵盤ユニットは、押鍵時に鍵を初期位置に復帰させるスプリングや質量体(擬似ハンマー)などを備えており、それらの反力によって自然鍵盤楽器の鍵タッチ感を模擬している。しかしながら、電子鍵盤楽器は、押鍵により電子音を発生させる装置であり、実際に打弦して発音する機構を有しないので、自然鍵盤楽器のような複雑なアクション機構がない。そのため、自然鍵盤楽器のアクション機構で生じる鍵タッチ感を忠実には再現しきれず、電子鍵盤楽器の鍵タッチ感は、厳密には自然鍵盤楽器の鍵タッチ感とは異なるものとなっている。
そこで、電子鍵盤楽器では、自然鍵盤楽器に近い鍵動作あるいは鍵タッチ感を得ることを目的として、押鍵に対する反力を変化させる鍵駆動装置や制御装置(力覚制御手段)などが提案されている。すなわち、特許文献1に記載の鍵盤ユニットは、ジャックやレペティションハンマーを備えており、これらが鍵と連動することで、自然鍵盤楽器のアクション機構に近い鍵タッチ感が得られるようになっている。また、特許文献2に記載の鍵盤ユニットは、鍵を駆動するためのソレノイドと、ソレノイドを制御する制御装置とを備えており、これらにより、鍵タッチ感を任意に調節して自然鍵盤楽器の演奏感覚を模擬するようになっている。
また、アコースティックピアノなどの自然鍵盤楽器は、押鍵による打弦時の音の響きや音量を変化させるためのペダル装置を備えている。ペダル装置は、幾つかのペダルを有しているが、そのうちのダンパーペダルは、踏込動作に連動してダンパーを移動させることで、弦に対するダンパーの当接状態を調節するペダルである。このダンパーペダルでは、打弦による音の響きを持続させたり抑えたりすることで、楽音の音色や響きを変化させることができる。
ダンパーペダルとダンパーとは、複数の連結部を介して連結され、各連結部の動作には若干の遊びがある。したがって、ダンパーペダルの踏み込みが浅いとき(踏込量が小さいとき)は、踏込動作がダンパーに伝達されず、ペダルに発生する反力(ペダルを介して演奏者に伝わる抵抗力)の変化率は小さい。その後、ダンパーペダルの踏込量が増してゆく段階で、連結部を介してダンパーに踏込動作が伝わり始め、各連結部が有する弾性要素の反力の増加、部分的に弦から離れたダンパーの重さや摩擦により、ペダルの反力の変化率が大きくなる。さらにペダルの踏込量が増すと、ダンパーが弦から完全に離れ、ダンパーの摩擦が減少するとともに、各連結部が有する弾性要素の反力が増加しなくなる。したがって、ペダルの反力の変化率が再び小さくなる。このように、ダンパーペダルの踏込動作では、踏込量に応じて反力の変化率が段階的に変化するようになっている。
また、ダンパーペダルの踏込動作において、ダンパーが弦から完全に離れる前の所定領域をハーフペダル領域と呼ぶことがある。上級演奏者は、ダンパーペダルの踏込深さを微妙に変化させて、このハーフベダル領域を効果的に活用し、弦から発生する楽音の音色や響きを微妙に変化させることができる。したがって、ハーフペダル領域は、演奏上、重要な役割を果たしている。
また、アコースティックピアノでは、ダンパーペダルを踏み込んでいない状態で、鍵のストローク(押鍵深さ)の所定範囲において、鍵に連動してダンパーが動作するようになっている。すなわち、押鍵時に鍵のストロークが所定以上になると、鍵によってダンパーが持ち上げられて弦から離間し、離鍵時に鍵のストロークが所定以下になると、鍵によって持ち上げられていたダンパーが弦に当接して止音が開始される。
ここで、上述のように、ダンパーペダルが所定以上踏み込まれた状態では、ダンパーは既に持ち上がっているので、ダンパーと鍵が連動するのは、ダンパーペダルが踏まれていないか、踏込量が所定以下の場合のみである。したがって、ダンパーペダルを所定以上踏み込んだ状態では、ダンパーペダルを踏み込んでいない状態よりも、鍵盤のタッチが軽くなる(鍵の反力が小さくなる)という性質がある。
一方、電子ピアノなどの電子鍵盤楽器にも、押鍵に伴う音の響きや音量を変化させるためのペダル装置を備えたものがある。しかしながら、電子鍵盤楽器は、アコースティックピアノのような弦やダンパーを有しないので、ダンパーペダルに相当するペダル(以下、単にダンパーペダルということがある。)の踏み込みでは、踏込位置に応じて、電子音源の音色や効果を制御して音の響きをコントロールするだけである。そのため、電子鍵盤楽器のペダル装置では、鍵盤ユニットと同様、スプリングなどの機械的な機構でペダルの反力(復帰力)を発生させている。
前述した特許文献1,2の電子鍵盤楽器は、鍵の反力を制御する機構を備えており、鍵タッチ感を自然鍵盤楽器に近づけることが可能である。しかしながら、ペダルの反力を制御する機構を備えていないので、ダンパーペダルの操作感覚を自然鍵盤楽器に近づけることはできない。したがって、鍵とダンパーペダルそれぞれの操作に対する反力に特徴があり、かつ、鍵とダンパーペダルの反力が所定の動作領域において関連を有する自然鍵盤楽器の演奏感覚を忠実に模擬することができなかった。
すなわち、特許文献1に記載の鍵盤ユニットは、ジャックやレペティションハンマーにより鍵タッチ感を改善するものではあるが、鍵とダンパーペダルの動作に関連を持たせる機構を有していない。したがって、ダンパーペダルの踏込操作に対する反力と、鍵の操作に対する反力との間には関連がなく、自然鍵盤楽器のようなダンパーペダルの踏み込みに伴う鍵タッチ感(反力)の変化を再現できない。なお、特許文献2には、ダンパーペダルのオン/オフを検出するとともに、検出したオン/オフに従って鍵の反力を制御するための力覚付与テーブルを切り替えることが開示されている。しかしながら、特許文献2の鍵盤ユニットでは、ダンパーペダルは、オン/オフの検出のみが可能であり、その反力を制御することはできない。
特許2657587号公報
特開2006−146259号公報
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明では、後述する鍵あるいはペダルの長手方向の両側のうち、電子鍵盤楽器の演奏者の側を手前あるいは前といい、その反対側を奥あるいは後という。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態にかかる力覚制御装置を備えた電子鍵盤楽器の全体構成例を示すブロック図である。同図に示す電子鍵盤楽器は、鍵11(操作子)を有する鍵盤装置10と、ペダル31(操作子)を有するペダル装置30と、鍵11及びペダル31の操作に対する反力を制御するための制御部(力覚制御手段)50とを備えている。鍵盤装置10及びペダル装置30と制御部50とは、バス5を介して互いに接続されている。
図2は、鍵盤装置10の構成を示す図であり、鍵11及びその周辺を示す概略側断面図である。なお、同図では、鍵盤装置10が備える1個の鍵11及びその周辺の構成部品を示している。鍵盤装置10は、電子鍵盤楽器本体に取り付けられたフレーム12と、フレーム12に対して揺動自在に支持された鍵11とを備えている。なお、図2では、鍵11が白鍵である場合を示しているが、黒鍵の場合も同様の構成になっている。
鍵11は、フレーム12に設けた鍵支点13に軸支されており、該鍵支点13を中心に長手方向が上下に揺動自在になっている。鍵11の鍵支点13より後側の下方には、フレーム12に固定された上限ストッパー14が設置されており、前側の下方には、フレーム12に固定された下限ストッパー15が設置されている。上限ストッパー14は、図2の実線で示す非押鍵位置(初期位置)にある鍵11の下面に当接し、鍵11の前端が非押鍵位置より上方へ回動することを規制する。下限ストッパー15は、図2の破線で示す押鍵位置(最下位置)にある鍵11の下面に当接し、鍵11の前端が押鍵位置より下方へ回動することを規制する。
また、鍵盤装置10には、鍵11の操作に対して電気的な駆動力による反力を発生させるソレノイド(反力発生手段)20が設けられている。ソレノイド20は、鍵支点13よりも後方の鍵11の上面側に設置されており、コイル21と、コイル21の中央に設置された進退移動可能なロッド22とを備えている。また、コイル21の外側(上下及び外周)を覆う位置には、ヨーク(磁性体)26が設置されている。ロッド22は、軸方向が上下方向に配置され、下端が鍵11の上面に当接している。また、ロッド22の上端には、平板状の板部材23が取り付けられている。板部材23は、その面がロッド22の軸方向と直交するように取り付けられており、板部材23がヨーク26の上端に当接する位置で、ロッド22の下端が非押鍵位置にある鍵11の上面に当接するようになっている。また、板部材23と、ソレノイド20の真上に張り出したフレーム12の上壁12aとの間には、コイル状のバネ(付勢手段)24が介在している。このバネ24により、ロッド22が下方へ付勢されている。
したがって、鍵11は、ロッド22を介して鍵11に付与されるバネ24の付勢力によって非押鍵位置へ付勢されている。そして、押鍵操作に伴い、鍵11は、バネ24の付勢力に抗してロッド22を押し上げながら鍵支点13を中心に回動する。一方、鍵11を押し下げている力が解除されると、鍵11は、バネ24の付勢力で自動的に非押鍵位置へ復帰する。また、このようなバネ24の付勢力による鍵11の動作において、コイル21への電圧印加によりロッド22を進退駆動すれば、バネ24の付勢力をアシストすることができる。したがって、制御部50によりソレノイド20の駆動を制御することで、鍵11の操作に対する反力の力覚制御を行うことができる。この力覚制御の手順については後述する。
また、鍵盤装置10には、鍵11の位置を検出する鍵位置センサ(動作検出手段)25が設けられている。ここでの鍵位置センサ25は、図2に示すように、鍵11に取り付けたシャッタ25aと、該シャッタ25aにより光路が遮蔽されるフォトセンサ25bとで構成される光学式センサである。この場合、鍵11の位置変化に応じて遮光量が連続的に変化するようにシャッタ25aの形状が設定され、フォトセンサ25bの出力信号から鍵11の位置が一義的に特定されるようにする。なお、鍵位置センサ25は、鍵11の位置を検出できるものであれば、上記のような遮光式センサ以外にも、図示は省略するが、鍵11の位置変化に応じて反射光量を連続的に変化させることが可能な反射面を鍵11に設置し、該反射面で反射した光を受光部で受光して鍵11の位置を検出するように構成した反射式センサでもよい。さらにいえば、光学式センサに限らず他の方式のセンサでもよい。また、図示は省略するが、鍵位置センサ25に代えて、鍵位置検出用のスイッチなどを設置してもよい。また、ここでは、鍵11の動作を検出する動作検出手段として、鍵位置センサ25を設置した場合を説明したが、それ以外にも、鍵11の速度、加速度、角度、角速度をそれぞれ検出する鍵速度センサ、鍵加速度センサ、鍵角度センサ、鍵角速度センサのいずれか、あるいはこれらのうちの複数を設置することも可能である。
また、図示は省略するが、鍵盤装置10には、楽音を発生させるために鍵11の動作を電気的な出力に変換するスイッチ接点やボリューム検出部などの機構も設けられている。
図3は、ペダル装置30の構成例を示す図で、(a)は概略側断面図、(b)は正面図である。ペダル装置30は、フレーム32に対して回動可能に支持された複数のペダルを備えており、本実施形態では、グランドピアノにおけるダンパーペダル、ソステヌートペダル、ソフトペダルに相当する3本のペダルが設置されているが、同図では、ダンパーペダルに相当する演奏者から見て最も右側に位置するペダル31のみを示し、他のペダルは図示を省略している。本発明の構成は、ダンパーペダルに相当するペダル31に適用されるので、以下では、ペダル31及びその周辺の構成部品について説明する。
フレーム32は、金属などで構成された板状部材を適宜に折り曲げて、略矩形の箱型に形成されている。フレーム32は、複数のペダルに対応する位置に跨る横長形状で、前壁32aにおけるペダル31の取付箇所には、開口部33が形成されている。ペダル31は、長尺状に形成された略平板状の部材からなり、前側が足で踏込操作する操作部31aになっており、後側がフレーム32に取り付けられる取付部31bになっている。そして、フレーム32の開口部33は、ペダル31の断面よりも大きな矩形状に形成されている。開口部33の内周には、両側の縁を後方に折り曲げてなる平板状の曲げ板部33a,33aが設けられている。
ペダル31は、取付部31bが開口部33からフレーム32内に差し込まれた状態で、操作部31aがフレーム32の前方に突出している。このとき、ペダル31は、取付部31bの中間がペダル支点34に支持されており、該ペダル支点34を中心として長手方向が上下に揺動自在になっている。
フレーム32内におけるペダル31の下面側には、復帰バネ(付勢手段)35が設置されている。復帰バネ35は、金属などの弾性を有する線材をコイル状に巻き回してなるバネ材であり、コイル軸方向に圧縮されることで弾発力(付勢力)を生じるものである。復帰バネ35は、ペダル支点34より前方に配置されており、その位置のペダル31を上方に向かって付勢するようになっている。
また、ペダル31の操作に対する反力を発生する反力発生手段(駆動手段)として、ペダル31の上面側に設置したソレノイド40を備えている。ソレノイド40は、ペダル支点34より後方に配置されており、鍵盤装置10のソレノイド20と同様、ヨーク46の内側に設置されたコイル41と、コイル41の中央に設置した進退可能なロッド42とを備えている。ロッド42の上端には、板部材43が一体に取り付けられており、該板部材43とフレーム32の上壁32bとの間には、コイル状のバネ(付勢手段)44が介在している。このバネ44により、ロッド42が軸方向の下方に向かって付勢されており、ロッド42の下端は、ペダル31の上面に当接している。
また、ペダル装置30には、ペダル31の位置を検出するペダル位置センサ(動作検出手段)45が設けられている。ペダル位置センサ45の具体的な構成は、鍵盤装置10が備える鍵位置センサ25と同じであり、シャッタ45aとフォトセンサ45bとで構成される光学式センサとすることができる。あるいは、図示は省略するが、ペダル位置センサ45に代えて、ペダル位置検出用のスイッチなどを設置してもよい。また、ペダルの位置を検出するセンサ以外にも、ペダル速度センサ、ペダル加速度センサ、ペダル角度センサ、ペダル角速度センサのいずれか、あるいはこれらのうちの複数を設置することも可能である。
また、ペダル31には、ガイド部材36が取り付けられている。ガイド部材36は、取付部31bの前端に設置された略矩形状の部材であり、その両側面には、小突起36aが複数個(図では両側に各2個ずつ)設けられている。小突起36aは、フレーム32の曲げ板部33aの内側面に当接している。これにより、ガイド部材36は、ペダル31の揺動に伴って小突起36aが曲げ板部33a,33aに対して摺動しながら、その内側を上下移動してペダル31の揺動をガイドする。また、ガイド部材36の上端に対向するフレーム32の壁面32cには、ペダル31の上限位置を規定するための上限ストッパー37が設置されている。上限ストッパー37は、ガイド部材36の衝突による衝撃を緩和するための緩衝材からなる。ペダル31は、踏込操作が開始される最上位置(以下、「初期位置」という。)にある状態で、ガイド部材36の上端が上限ストッパー37に当接するようになっている。
一方、開口部33の下端には、ペダル31の下限位置を規定するための下限ストッパー38が取り付けられている。下限ストッパー38は、ペダル31の衝突による衝撃を緩和する緩衝材で構成されており、初期位置にあるペダル31の下面に対して所定距離を有して対向するように設置されている。
なお、図示は省略するが、ペダル装置30には、ペダル31の動作を電気的な出力に変換するためのスイッチ接点やボリューム検出部などの機構も設けられている。
上記構成のペダル装置30の動作について説明する。ペダル31は、初期位置で、その自重と、ガイド部材36が上限ストッパー37を介してフレーム32の壁面32cに当接して受ける抗力と、復帰バネ35の付勢力と、バネ44の付勢力及びソレノイド40で発生する反力とが釣り合っている。したがって、初期位置における各力の釣り合いにより、ペダル31は、前後方向(長手方向)が略水平な状態で静止している。このペダル31を踏み込むと、ペダル支点34を中心に回動し、ペダル31に押された復帰バネ35が圧縮されるとともに、ソレノイド40のロッド42が上方へ移動する。これにより、ペダル31には、復帰バネ35の付勢力とバネ44の付勢力とが付与される。さらにペダル31を踏み込むと、下限ストッパー38に当接して停止する。一方、ペダル31を踏み込んでいる力を弱めると、復帰バネ35の付勢力とバネ44の付勢力とによりペダル31は逆向きに回動し、初期位置へ復帰する。このようにペダル31が復帰バネ35やバネ44の付勢力で移動する過程で、コイル41に電圧を印加してロッド42を駆動させれば、復帰バネ35やバネ44によりペダル31に与えられる付勢力をソレノイド40でアシストすることができる。したがって、制御部50によりソレノイド40の駆動を制御することで、ペダル31の操作に対する反力の力覚制御を行うことができる。この力覚制御の手順については後述する。
次に、図1に示す制御部50について説明する。制御部50は、CPU51、ROM52、RAM53、フラッシュメモリ(EEPROM)54を備えている。また、CPU51にはタイマ55が接続されている。CPU51は、鍵盤装置10及びペダル装置30を含む電子鍵盤楽器全体の制御を司る。ROM52やフラッシュメモリ54には、CPU51が実行する制御プログラムや各種テーブルデータのほか、後述する力覚付与テーブル80が記憶されている。RAM53は、演奏データ、テキストデータなどの各種入力情報、各種フラグやバッファデータ及び演算処理結果などを一時的に記憶する。タイマ55は、タイマ割り込み処理における割り込み時間などの各種時間を計時する。
また、電子鍵盤楽器には、制御部50のほか、設定操作部61、表示装置63、音声出力部65、外部記憶装置66、HDD67、通信インターフェイス68、MIDIインターフェイス69などが設けられている。通信インターフェイス68には、外部装置71を接続でき、MIDIインターフェイス69には、MIDI機器72を接続できる。また、通信インターフェイス68は、インターネットなどの通信ネットワーク73を介して外部のサーバ装置74との間で通信を行えるようになっている。設定操作部61には、演奏者が設定操作情報を入力するために用いる不図示の各種スイッチなどが含まれ、スイッチの操作による信号がCPU51に供給されるようになっている。外部記憶装置66やHDD67は、上記の制御プログラムを含む各種アプリケーションプログラムや各種楽曲データなどを記憶するものである。表示装置63は、表示制御回路62を介してバス5に接続されており、音声出力部65は、音源回路64を介してバス5に接続されている。
図4は、ROM52に格納された力覚付与テーブル80の構成例を示す図である。力覚付与テーブル80は、鍵盤装置10のソレノイド20が発生すべき反力のパターンを格納した鍵盤用力覚付与テーブル81と、ペダル装置30のソレノイド40が発生すべき反力のパターンを格納したペダル用力覚付与テーブル82とを有している。鍵盤用力覚付与テーブル81には、第1の制御パターンに対応する第1のテーブル81−1と、第2の制御パターンに対応する第2のテーブル81−2とがそれぞれ別に用意されている。ここでの第1の制御パターンは、アコースティックピアノにおいてダンパーの荷重が鍵に掛からない状態(ダンパーペダルによりダンパーが持ち上げられている状態)を再現した鍵11の反力パターンであり、第2の制御パターンは、アコースティックピアノにおいてダンパーの荷重が鍵に掛かる状態(ダンパーペダルによりダンパーが持ち上げられていない状態)を再現した鍵11の反力パターンである。
さらに、第1のテーブル81−1には、押鍵用のテーブル81−1aと離鍵用のテーブル81−1bとが用意されており、第2のテーブル81−2には、押鍵用のテーブル81−2aと離鍵用のテーブル81−2bとが用意されている。また、ペダル用力覚付与テーブル82は一種類であるが、それには、押ペダル用のテーブル82aと戻ペダル用のテーブル82bがそれぞれ用意されている。
さらに、これらテーブル81−1a,81−1b,81−2a,81−2b,82a,82bはそれぞれ、反力パターンテーブル80aと指令値テーブル80bを備えている。反力パターンテーブル80aは、鍵位置センサ25あるいはペダル位置センサ45の検出値(または該検出値から算出した鍵11あるいはペダル31の速度、加速度などの値)の信号に対するソレノイド20,40の出力値を参照するためのテーブルである。また、指令値テーブル80bは、ソレノイド20,40に上記の出力値を発生させる指令値を参照するためのテーブルである。
図1に示すように、制御部50からの制御信号は、ソレノイド制御ドライバ(駆動制御部)28を介して鍵盤装置10のソレノイド20に入力され、ソレノイド制御ドライバ(駆動制御部)48を介してペダル装置30のソレノイド40に入力されるようになっている。また、鍵位置センサ25の検出信号と、ペダル位置センサ45の検出信号は、いずれも制御部50に入力されるようになっている。
ここで、上記構成の電子鍵盤楽器における鍵11及びペダル31の操作に対する力覚制御の手順について説明する。ここでは、ペダル31の力覚制御の手順と鍵11の力覚制御の手順を順に説明する。図5は、ペダル31の力覚制御の手順を説明するためのフローチャートである。ペダル31の力覚制御では、まず、ペダル31の位置情報を初期化する(ステップST1−1)。その後、ペダル位置センサ45にて検出したペダル31の位置(踏込量)を読み込む(ステップST1−2)。また、ペダル速度センサを設けている場合は、検出したペダルの速度を読み込み(ステップST1−3)、ペダル加速度センサを設けている場合は、検出したペダルの加速度を読み込む(ステップST1−4)。ペダル速度センサを設けていない場合は、ペダル位置センサ45で検出したペダル位置データの差分からペダル速度を算出してもよい(ステップ1−3)。また、ペダル加速度センサを設けていない場合は、ペダル速度データの差分からペダル加速度を算出(ステップST1−4)してもよい。なお、ペダル装置30に角度センサや角速度センサを設置している場合は、それらで検出したペダル角度やペダル角速度を読み込んでもよい。
次に、ステップST1−3で読み込んだペダル速度の検出値(あるいは算出値)の符号(正負)を判定する(ステップST1−5)。その結果、ペダル速度が正である場合は、ペダル31が踏み込まれる(押ペダル)過程にあるので、ペダル用力覚付与テーブル(図4参照)82から押ペダル用テーブル82aを選択し、これを読み込む(ステップST1−6)。一方、ペダル31の速度が負である場合は、ペダル31の踏み込みが解除される(戻ペダル)過程にあるので、ペダル用力覚付与テーブル82から戻ペダル用テーブル82bを選択し、これを読み込む(ステップST1−7)。続いて、読み込んだ上記いずれかのテーブル82a,82bの反力パターンテーブル80aを参照して、ソレノイド40の出力を決定するとともに、指令値テーブル80bを参照して、ソレノイド40の出力を発生させるための指令値を決定する。そして、決定した指令値をソレノイド制御ドライバ48へ出力し(ステップST1−8)、ソレノイド40を駆動する。このようにして、ペダル用力覚付与テーブル82に基づくペダル反力の制御が行われる。その後、新たなペダル位置情報の入力が有るかを判断する(ステップST1−9)。その結果、ペダル位置情報の入力が有れば(YES)、ステップST1−2以降の手順を繰り返して行い、ペダル位置情報の入力が無ければ(NO)、処理を終了する。
図6は、上記の力覚制御を行った場合のペダル31の変位(踏込量)と荷重(反力)との関係を示すグラフである。このグラフの反力分布は、ペダル位置センサ(動作検出手段)45による一の検出値に対応する反力分布を一例として示したものである。すなわち、ペダル位置センサ45で検出された値が異なるものである場合は、同図に示すグラフとは別の反力分布となる。ペダル用力覚付与テーブル82による力覚制御では、同図に示すように、ペダル31の踏込量が小さく、反力の変化率が小さい領域A1と、ペダル31の踏込量が増して、反力の変化率が大きくなる領域A2と、さらにペダル31の踏込量が増して、再度、反力の変化率が小さくなる領域A3の三種類の領域を有している。領域A1では、アコースティックピアノにおいてダンパーの荷重がダンパーペダルに掛かる前の状態が再現され、領域A2では、ペダルとダンパーの連結部を介してダンパーに踏込力が伝わり始め、連結部全体が有する弾性要素からの反力が次第に増加する状態が再現され、領域A3では、ダンパーが完全に弦から離れて摩擦が減少するとともに、連結部全体が有する弾性要素からの反力が増加しなくなる状態が再現されている。このように、本実施形態の力覚制御装置では、アコースティックピアノのダンパーペダルの反力パターンを忠実に再現することができる。また、この場合、領域A2の後半から領域A3の前半にかかるハーフペダル領域の反力パターンも再現することができる。したがって、ペダル31がこのハーフペダル領域に位置する際の押鍵に伴う楽音の音色や響きを適宜に設定しておけば、電子鍵盤楽器の演奏者は、ハーフペダル領域を利用して、ペダル31の踏み込み深さに応じて楽音の音色や響きなどを微妙に変化させる高度な演奏操作を行うことが可能となる。
図7は、鍵11の力覚制御の手順を説明するためのフローチャートである。鍵11の力覚制御では、まず、鍵11の位置情報を初期化する(ステップST2−1)。その後、鍵位置センサ25で検出した鍵11の位置(押鍵による変位量)を読み込む(ステップST2−2)。続けて、鍵速度センサを設けている場合は、検出した鍵の速度を読み込み(ステップST2−3)、鍵加速度センサを設けている場合は、検出した鍵の加速度を読み込む(ステップST2−4)。鍵速度センサを設置していない場合は、鍵位置センサ25で検出した鍵位置データの差分から鍵速度を算出(ステップ2−3)してもよい。また、鍵加速度センサを設置していない場合は、鍵速度データの差分から鍵加速度を算出(ステップST2−4)してもよい。なお、鍵盤装置10に角度センサや角速度センサを設置している場合は、それらで検出した鍵11の角度や角速度を読み込んでもよい。
次に、ペダル装置30が備えるペダル位置センサ45で検出したペダル位置(踏込量)を読み込む(ステップST2−5)。なお、ここでは、ペダル角度センサを設置している場合は、ペダル位置以外にペダル角度を読み込んでもよい。続けて、読み込んだペダル位置(あるいはペダル角度、以下同じ)が所定の閾値以上か否かを判定する(ステップST2−6)。ここでの所定の閾値は、アコースティックピアノにおけるダンパーペダルの踏み込みによりダンパーの持ち上げが開始されるペダル位置とする。その結果、ペダル位置が閾値以上でない場合(NO)は、アコースティックピアノにおいてダンパーの反力が鍵に伝達される状態(ダンパーペダルによりダンパーが持ち上げられていない状態)を再現した第2の制御パターンを選択する(ステップST2−7)。その後、先のステップST2−3で読み込んだ鍵速度の符号を判定する(ステップST2−8)。その結果、鍵速度が正である場合は、鍵11が押される(押鍵)過程にあるので、鍵盤用力覚付与テーブル(図4参照)81の第2のテーブル81−2から押鍵用テーブル81−2aを選択し、これを読み込む(ステップST2−9)。一方、鍵速度が負である場合は、鍵11が初期位置へ戻る(離鍵)過程にあるので、第2のテーブル81−2から離鍵用テーブル81−2bを選択し、これを読み込む(ステップST2−10)。
一方、先のステップST2−6で、ペダル位置が所定の閾値以上である場合(YES)は、アコースティックピアノにおいてダンパーの荷重が鍵に掛からない状態(ダンパーペダルによりダンパーが持ち上げられている状態)を再現した第1の制御パターンを選択する(ステップST2−11)。その後、先のステップST2−3で読み込んだ鍵速度の符号を判定する(ステップST2−12)。その結果、鍵速度の符号が正である場合は、押鍵過程にあるので、鍵盤用力覚付与テーブル81の第1のテーブル81−1から押鍵用テーブル81−1aを選択し、これを読み込む(ステップST2−13)。一方、鍵速度の符号が負である場合は、離鍵過程にあるので、第1のテーブル81−1から離鍵用テーブル81−1bを選択し、これを読み込む(ステップST2−14)。
続いて、読み込んだいずれかのテーブル81−1a,81−1b,81−2a,81−2bの反力パターンテーブル80aを参照してソレノイド20の出力を決定するとともに、指令値テーブル80bを参照してソレノイド20の出力を発生させるための指令値を決定する。そして、決定した指令値をソレノイド制御ドライバ(駆動制御部)28へ出力し(ステップST2−15)、鍵盤装置10のソレノイド20を駆動する。このようにして、鍵盤用力覚付与テーブル81に基づく鍵11の反力の制御が行われる。その後、新たな鍵位置情報の入力が有るかを判断する(ステップST2−16)。その結果、鍵位置情報の入力が有れば(YES)、ステップST2−2以降の手順を繰り返して行い、鍵位置情報の入力が無ければ(NO)、処理を終了する。
図8は、上記の力覚制御を行った場合の鍵11の変位(押鍵量)と荷重(反力)の関係を示すグラフである。同図のグラフにおける実線は、第2の制御パターン(第2のテーブル81−2)に基づく反力特性であり、破線は、第1の制御パターン(第1のテーブル81−1)に基づく反力特性である。本実施形態の力覚制御装置による鍵11の力覚制御では、鍵11の変位量(押鍵量)が小さく、鍵11の操作に対する反力が比較的小さくその変化も少ない領域B1と、鍵11の変位量が増加して、鍵11の操作に対する反力が大きくなる領域B2とを有している。領域B1では、第1のテーブル81−1で、アコースティックピアノにおいて鍵にダンパーの荷重がかからない場合の反力が再現され(破線)、第2のテーブル81−2で、鍵にダンパーの荷重がかかる場合の反力が再現されている(実線)。したがって、第2のテーブル81−2は、鍵11のストロークの全領域に対する所定の中間領域である領域B1において、鍵11の同一変位量(鍵位置センサ25の同一検出値)に対して、第1のテーブル81−1よりも大きな反力値を有している。このように、第1、第2の制御パターンにより、アコースティックピアノにおけるダンパーの荷重の有無による押鍵時の反力の違いが再現されているので、ダンパーペダルの踏み込みによる鍵のタッチ感の変化を忠実に再現される。また、領域B2では、アコースティックピアノにおけるいわゆるジャック抜けに伴う急激な鍵盤の反力変化が再現されている。したがって、本実施形態の力覚制御装置では、アコースティックピアノの鍵盤の反力パターンを忠実に再現することができる。
上記では鍵11の力覚制御とペダル31の力覚制御の手順を別に説明したが、本実施形態の電子鍵盤楽器では、鍵11とペダル31それぞれの反力を制御するためのソレノイド(反力発生手段)20,40を設けているので、実際には、電子鍵盤楽器が演奏操作される際、鍵11の力覚制御とペダル31の力覚制御とが同時に行われる。したがって、アコースティックピアノにおける鍵のタッチ感とダンパーペダルの操作感覚の両方を再現可能となるので、自然鍵盤楽器の演奏感覚を忠実に模擬できるようになる。
以上説明したように、本実施形態の電子鍵盤楽器によれば、鍵11とペダル31それぞれの操作感覚を自然鍵盤楽器に近づけることができるとともに、鍵とダンパーペダルの反力が所定の動作領域において関連を有する自然鍵盤楽器の演奏感覚を忠実に再現することが可能となる。なお、本実施形態では、鍵盤用力覚付与テーブル81は、第1のテーブル81−1と、第2のテーブル81−2の二つのテーブルを有する場合を説明したが、鍵盤用力覚付与テーブル81には、第1のテーブル81−1と第2のテーブル81−2だけでなく、これらに加えて、ハーフペダル領域での鍵の反力(第1、第2のテーブル81−1,81−2の中間の反力)を再現した第3のテーブル(図示せず)などをさらに追加することも可能である。これによれば、ペダル31の踏込量に応じた鍵11の反力をより細かく制御することができるので、アコースティックピアノの鍵タッチ感をより忠実に再現可能となる。
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態にかかる電子鍵盤楽器について説明する。なお、第2実施形態の説明及び対応する図面においては、第1実施形態と同一又は相当する構成部分には同一の符号を付し、以下ではその部分の詳細な説明は省略する。また、以下で説明する事項以外の事項については、第1実施形態と同じである。これらの点は他の実施形態についても同様とする。
本実施形態の電子鍵盤楽器の構成及びその力覚制御手順を概説すると、第1実施形態では、鍵盤用力覚付与テーブル81とペダル用力覚付与テーブル82の制御パターンをそのまま参照して鍵11及びペダル31の力覚制御を行っていたが、本実施形態では、鍵盤用力覚付与テーブル81とペダル用力覚付与テーブル82をそれぞれ鍵盤用とペダル用の基準となる力覚付与テーブルとし、設定操作部61から入力された設定値に基づいて、これら基準となる力覚付与テーブルの値を任意に変更できるようになっている。そして、この変更した力覚付与テーブルを用いて、鍵11及びペダル31の力覚制御を行うようになっている。したがって、本実施形態の電子鍵盤楽器では、演奏者がペダル31の反力を基準値に対して変更するために、設定操作部61が備えるつまみなどの操作で、反力の基準値からの変更量(例えば+1,+2,0,−1,−2など)を入力するようになっている。以下、この点について詳細に説明する。
図9は、基準となる力覚付与テーブルを変更する手順を説明するためのフローチャートである。この手順では、まず、ペダル反力の設定値を初期化する(ステップST3−1)。続いて、設定操作部61から入力されたペダル反力の設定値(基準値からの変更量)を検出する(ステップST3−2)。図10は、図6のグラフに、変更したペダル用力覚付与テーブル82の反力特性(点線で示す)を追記したものである。ここで、設定操作部61から入力される設定値は、例えば、図10に示す領域A1,A2の境界の反力値P1と、領域A2,A3の境界の反力値P2との差とすることができる。ここでは、当該差の値がP2−P1からP2´−P1(P2<P2´)に変更される場合を示している。次に、検出したペダル反力の設定値が0(デフォルト)であるか否かを判断する(ステップST3−3)。その結果、設定値が0であれば(YES)、そのまま処理を終了する。すなわち、この場合は、鍵11及びペダル31の力覚制御において、基準となる力覚付与テーブル(鍵盤用力覚付与テーブル81及びペダル用力覚付与テーブル82)の反力パターンをそのまま用いて、第1実施形態と同様の力覚制御を行う。
一方、設定値が0でない場合(ステップST3−3でNO)は、検出した設定値に基づいて、基準となるペダル用力覚付与テーブル82の反力パターンを変更したものを算出する(ステップST3−4)。すなわち、検出した設定値と、押ペダル用のテーブル82aの基準値とに基づいて、領域A2の反力の傾きを計算し、図10のグラフにおいて点線で示す反力パターンを算出する。なお、変更する反力パターンの具体的な算出(計算)方法は、基準となる反力値と設定値とを用いて算出すれば、加算、乗算、比例計算、関数近似など何でも良い。そして、算出した反力パターンを新規のペダル用力覚付与テーブル81とし、これをRAM53などの記憶手段に記憶する(ステップST3−5)。
また、アコースティックピアノでは、ダンパーの荷重が鍵にも掛かるため、ダンパーの重さなどの要素が変わると、ダンパーペダルの反力だけでなく鍵の反力も変わる。この点を再現するために、設定操作部61から入力されたペダル反力の設定値に基づいて、基準となる鍵盤用力覚付与テーブル82の反力パターンを変更したものを算出する(ステップST3−6)。ここでは、ダンパーに関連する反力値を変更すべく、第2のテーブル81−2の反力パターンを変更する。なお、この際に変更する反力パターンの具体的な算出(計算)方法は、加算、乗算、比例計算、関数近似など何でも良い。そして、算出した反力パターンを新規の鍵盤用力覚付与テーブル82とし、RAM53などの記憶手段に記憶する(ステップST3−7)。
本実施形態では、第1実施形態と同様、図5に示す手順で鍵11の力覚制御を行い、図7に示す手順でペダル31の力覚制御を行うが、その際、第1実施形態で用いた基準となる鍵盤用力覚付与テーブル81とペダル用力覚付与テーブル82に代えて、先の手順で算出した新規の鍵盤用力覚付与テーブル81とペダル用力覚付与テーブル82を用いて、鍵11及びペダル31の力覚制御を行う。したがって、本実施形態の電子鍵盤楽器では、鍵11やペダル31の操作に対して生じる反力を演奏者自身が設定した反力とすることができる。また、ここでは、ペダルの反力パターンにおける領域A2と領域A3(図10参照)の反力パターンを変更することで、ハーフペダル領域の操作感覚を演奏者が所望する反力で再現できる。よって、演奏者は、所望のハーフペダル領域を利用して、ペダル31の踏み込み深さを微妙に変化させて楽音の音色などを変える高度な演奏操作を行うことが可能となる。
また、本発明の力覚制御装置では、基準となるペダル用力覚付与テーブル82の反力パターンを変更する際、鍵11の力覚制御を行うための第2のテーブル81−2の反力パターンも変更するので、ペダル31の操作感覚とともに鍵11の操作感覚も変更することができる。これにより、鍵とダンパーペダルの反力が所定の動作領域において関連を有するアコースティックピアノの操作感覚を忠実に再現することが可能となる。
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。たとえば、上記実施形態では、鍵盤装置10は、鍵11に対して電気的な駆動力による反力を付与するソレノイド20に加えて、物理的な付勢力による反力を付与するバネ24を備えており、ペダル装置30は、反力発生手段であるソレノイド40に加えて、ペダル31に対して付勢力を付与する復帰バネ35やバネ44を備えている。しかしながら、本発明にかかる鍵盤装置やペダル装置としては、復帰バネ35やバネ44などを省略し、ソレノイド20,40のみを設けることも可能である。それにより、鍵盤装置やペダル装置の部品点数を少なく抑えることができる。
なお、上記各実施形態のように、ソレノイド40に加えて、復帰バネ35やバネ44を備えていれば、それらで鍵11やペダル31の操作に対する反力を付与することができるので、ソレノイド20,40だけで鍵11やペダル31を駆動するように構成した場合と比較して、ソレノイド20,40で発生させる反力が小さくて済む。したがって、ソレノイド20,40や周辺機器の構成を簡単にして小型化できるので、鍵盤装置10やペダル装置30の小型化、軽量化を図ることができる。また、電子鍵盤楽器の消費電力を少なく抑えることができる。
また、上記実施形態では、鍵11やペダル31の操作に対して電気的な駆動力による反力を発生させる反力発生手段として、ソレノイド20,40を備える場合を説明したが、本発明の反力発生手段は、ソレノイドには限らず、他の構成のアクチュエータなどでも良い。
なお、上記実施形態では、ペダル31を付勢する付勢手段として、ソレノイド40のロッド42に連結されたバネ44と、ペダル31に直接当接して反力を与える復帰バネ35との両方を設置した場合を説明したが、ペダル31の踏込操作に対して反力を与える付勢手段としては、復帰バネ35とバネ44のいずれか一方のみを備えていればよい。したがって、復帰バネ35とバネ44のいずれかを省略することも可能である。