JP2010112203A - 燃料噴射装置 - Google Patents

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文明 有川
Yoshiharu Nonoyama
由晴 野々山
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Abstract

【課題】アクチュエータの変位に対し第1及び第2の弁部材を独立的に駆動する構成要素を簡素化する燃料噴射装置を提供。
【解決手段】第1弁部材121とアクチュエータ30との間に設けられ、アクチュエータの変位による内部の液圧の増圧で第1弁部材の開弁方向に液圧力が作用する第1液圧室201と、第2弁部材122とアクチュエータとの間に設けられ、アクチュエータの変位による内部の液圧の減圧で第2弁部材の開弁方向に液圧力が作用する第2液圧室202と、アクチュエータへ充電及び放電する充放電制御する駆動回路302を有する制御装置300とを備え、駆動回路302は、アクチュエータの伸縮により変位する変位位置範囲のうちの中間位置を、初期位置とし、第1弁部材の開弁時に充・放電の一方を制御し、その変位位置を初期位置から一方向に変位させ、第2弁部材の開弁時に充・放電の他方を制御し、その変位位置を初期位置から他方向に変位させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、燃料噴射装置に関し、例えば内燃機関に燃料を噴射供給する燃料噴射装置に適用して好適である。
従来、駆動体の駆動により噴孔を開閉する弁部材を直接的に操作することにより、弁部材を離座させ、噴孔から燃料を噴射する燃料噴射装置が知られている(特許文献1参照)。駆動体としては、燃料噴射圧を高圧化するために、圧電素子や磁歪素子のように駆動力の大きな素子が伸縮するアクチュエータを利用する技術が提案されている。
このような燃料噴射装置の一種として特許文献1に開示の装置では、互いに異なる噴孔を開閉する第1弁部材及び第2弁部材とを有する燃料噴射弁を備え、第1弁部材と第2弁部材を異なるタイミングで駆動させるのに、上記アクチュエータを用いるようにしている。
この技術では、上記第1及び第2の弁部材が内外二重に同軸的に配置され、それぞれの弁部材は、液圧室を介してアクチュエータに連結されている。また、両アクチュエータのうちの特定アクチュエータ側の圧電素子を放電することで、特定アクチュエータに連結される特定の弁部材のみが開弁する。
なお、上記液圧室は、アクチュエータの変位を直接的に弁部材に伝達するための「液圧連結要素」を構成するものである。
独国特許出願公開第102006038536A1号明細書
特許文献1による従来技術では、上記二組のアクチュエータを設けることにより、第1弁部材及び第2弁部材のいずれかを独立的に駆動させることは可能となる。しかしながら、充電及び放電することにより変位するアクチュエータが二つあるため、いずれかのアクチュエータを独立して充放電制御するための駆動回路が必要となるので、駆動回路を有する制御装置が大型化し、複雑化するという懸念がある。
また、アクチュエータも二つあるので、アクチュエータを内蔵する燃料噴射弁が大型化するという懸念がある。
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、アクチュエータの変位に対し第1及び第2の弁部材を独立的に駆動する構成要素を簡素化する燃料噴射装置を提供することにある。
本発明は、上記目的を達成するために以下の技術的手段を備える。
即ち、請求項1乃至5に記載の発明では、複数の噴孔と、互いに異なる噴孔を開閉する第1弁部材及び第2弁部材と、第1弁部材及び第2弁部材を直接または間接的に噴孔の閉方向及び開方向に駆動するアクチュエータであって、充電及び放電により伸縮するアクチュエータと、を有する燃料噴射弁を備え、アクチュエータの変位に対し第1弁部材及び第2弁部材のうちの特定弁部材のみが噴孔の開方向に開弁する燃料噴射装置において、
燃料噴射弁において少なくとも第1弁部材とアクチュエータとの間に設けられ、第1弁部材とアクチュエータを液圧的に連結する第1液圧室であって、アクチュエータの変位により内部の液圧が増圧されることで第1弁部材に対し第1弁部材の開弁方向に液圧力が作用する第1液圧室と、燃料噴射弁において少なくとも第2弁部材とアクチュエータとの間に設けられ、第2弁部材とアクチュエータを液圧的に連結する第2液圧室であって、アクチュエータの変位により内部の液圧が減圧されることで第2弁部材に対し第2弁部材の開弁方向に液圧力が作用する第2液圧室と、アクチュエータを駆動制御する制御装置であって、アクチュエータへ充電及び放電する充放電制御によりアクチュエータに印加される印加電圧特性の電圧状態を切換える駆動回路を有する制御装置と、を備え、
制御装置において駆動回路は、アクチュエータにおいて伸縮により変位する変位位置範囲のうちの中間位置を、アクチュエータを充放電制御する初期位置として設定し、第1弁部材の開弁時において充電及び放電の一方を制御し、アクチュエータの変位位置を、初期位置から一方向に変位させ、第2弁部材の開弁時において充電及び放電の他方を制御し、アクチュエータの変位位置を、初期位置から他方向に変位させることを特徴とする。
これによると、アクチュエータと、第1弁部材及び第2弁部材との間には、アクチュエータ及び第1弁部材、アクチュエータ及び第2弁部材を液圧的に連結する第1液圧室及び第2液圧室が介在している。上記各液圧室は、アクチュエータの変位に対し内部の容積が拡大及び縮小することで、液圧が減圧及び増圧される。
そのような上記第1液圧室及び第2液圧室は、その液圧が相反する圧力変化である増圧するとき、減圧するとき、言い換えるとアクチュエータが相反する変位方向に変位するとき、それぞれ、第1弁部材を開弁させる付勢力、第2弁部材を開弁させる付勢力を形成することになる。
さらに、このような第1液圧室及び第2液圧室の構成に加えて、制御装置の駆動回路は、アクチュエータにおいて伸縮により変位する変位位置範囲のうちの中間位置を、アクチュエータを充放電制御する初期位置として設定すると共に、アクチュエータの変位位置を初期位置から一方向に変位させる変位モードと、アクチュエータの変位位置を初期位置から他方向に変位させる変位モードとを有する構成としている。そして、上記第1液圧室及び第2液圧室に対し、アクチュエータの変位位置を初期位置から一方向に変位させる変位モードでは、第1弁部材のみを開弁動作させ、他方向に変位させる変位モードでは第1弁部材のみを開弁動作させることができるのである。
これにより、第1弁部材及び第2弁部材のいずれかを独立的に駆動するのに、一つの駆動回路で実施することができる。それ故に、従来技術のように第1弁部材及び第2弁部材に対応するアクチュエータを独立的に駆動するために独立した駆動回路を設ける必要がないので、駆動回路を有する制御装置を簡素化することができる。
以上の請求項1に記載の発明によれば、アクチュエータの変位に対し第1及び第2の弁部材を独立的に駆動する構成要素を簡素化することができる。
また、請求項2に記載の発明では、制御装置は、前記第1弁部材を駆動する第1モードと、前記第2弁部材を駆動する第2モードとを、前記駆動回路の充放電制御により切換えられる前記電圧状態の制御モードとして設定し、
前記第1モードにおいて前記駆動回路は、前記第1弁部材の開弁時において前記初期位置に対応する初期電圧から所定の電位差を形成する一方、前記第1弁部材の閉弁時において前記所定の電位差が形成された電圧状態から前記初期電圧に戻すと共に、
前記第2モードにおいて前記駆動回路は、前記第2弁部材の開弁時において前記初期電圧から前記所定の電位差に相反する電位差を形成する一方、前記第2弁部材の閉弁時において前記相反する電位差が形成された電圧状態から前記初期電圧に戻すことを特徴とする。
ここで、充電及び放電により伸縮するアクチュエータは、上記駆動回路がアクチュエータへ充電及び放電する充放電制御することにより、アクチュエータに印加される印加電圧特性の電圧状態が切換えられる。例えば所定の電位差が生じる一の電圧状態から他の電圧状態へ移行する場合には、アクチュエータへの充放または放電を実施することになるが、所定の電圧状態を維持する場合には、概ね充放及び放電のいずれかまたは両方を、実質的に継続実施する必要はほとんどない。内燃機関の燃焼サイクルにおいて燃料噴射期間及び非燃料噴射期間のいずれも概ね僅かな時間であるので、アクチュエータへ充電した充電エネルギはアクチュエータの圧電素子内に蓄えられているからである。
請求項2に記載の発明によれば、制御装置は、第1弁部材を駆動する第1モードと、第2弁部材を駆動する第2モードとを、制御モードとして設定している。第1モード及び第2モードにおいて、第1弁部材及び第2弁部材のうちの特定弁部材の燃料噴射期間、即ち特定弁部材を開弁及び閉弁動作する期間において、初期電圧から、所定の電位差またはこれに相反する電位差を形成する電圧状態へ移行する際に、駆動回路からアクチュエータへエネルギが供給及び放出される。しかしながら、非噴射期間においては電圧状態として初期電圧が継続されるので、非噴射期間において駆動回路は、アクチュエータへ供給するエネルギ消費は実質的にほとんど生じない。これより、エネルギの無駄消費が抑制されるので、駆動回路を有する制御装置の大型化が防止される。
請求項3に記載の発明では、第1液圧室及び第2液圧室は、第1液圧室及び第2液圧室の双方に液圧的に連結する共通の液密室であって、第1弁部材及び第2弁部材と、アクチュエータとの間に配置される液密室を有していることを特徴とする。
これによると、第1弁部材及び第2弁部材とアクチュエータとの間に配置され、かつ第1液圧室及び第2液圧室の双方に液圧的に連結する共通の液密室の容積を、アクチュエータの変位で拡大及び縮小するにより、容易に第1液圧室及び第2液圧室の液圧の圧力変化をもたらすことができるので、アクチュエータと第1弁部材及び第2弁部材との液圧連結要素としての第1液圧室及び第2液圧室の形成が簡単に実現できる。
請求項4に記載の発明では、第1液圧室及び前記第2液圧室は、双方が液圧的に連結する構成であって、前記第1液圧室及び前記第2液圧室のうちの特定液圧室が、前記アクチュエータ側の変位面と液圧的に直接連結する構成としたことを特徴とする。
これによると、第1液圧室及び第2液圧室のうちの特定液圧室が、前記アクチュエータ側の変位面と液圧的に直接連結する構成とするので、第1液圧室及び第2液圧室の容積空間の小型化が可能である。これにより、燃料噴射弁内にスペースに、第1液圧室及び第2液圧室の容積空間が占有する余裕が少ない場合において、燃料噴射弁が大型化するのを防止することができる。
請求項5に記載の発明によれば、第1弁部材及び第2弁部材は、燃料噴射弁内において内外二重に同軸的に配置され、アクチュエータを、前記第1弁部材及び前記第2弁部材を独立的に駆動する共通のアクチュエータとすることができる。
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一の符合を付すことにより、重複する説明を省略する。
(第1実施形態)
図1〜3は、本実施形態による燃料噴射装置を示している。図2及び3は、図1中の燃料噴射装置に適用する燃料噴射弁及び燃料噴射弁を駆動する制御装置の特徴的構成を示すものである。本発明の燃料噴射装置1は、例えばディーゼルエンジンまたは筒内噴射式火花点火内燃機関の気筒内へ直接的に燃料を噴射供給する。燃料供給装置1が取り扱う燃料は、ディーゼル燃料に限らずガソリン燃料、あるいはジメチルエーテルといったDMEや液化天然ガス(LPG)などの液化燃料のいずれであってもよい。
燃料供給装置1は、図示しない高圧燃料供給源、燃料噴射弁2、及び制御装置300などを備えている。燃料噴射弁2は、多気筒内燃機関の気筒に装着されている。高圧燃料供給源は、燃料タンク10から燃料を汲み上げ、圧送する圧送ポンプと、圧送ポンプから圧送される燃料を高圧状態で蓄えると共に、当該燃料を各気筒の燃料噴射弁2に分配するコモンレールといった蓄圧器3と備える周知の構成である。
燃料噴射弁2は、上記高圧燃料源から燃料が供給される一方、燃料噴射弁2に供給された燃料のうち、燃料噴射に利用されなかった燃料がリターン経路8より燃料タンク10に戻される。
燃料噴射弁2は、「弁閉鎖体」としてのノズル11、「液圧連結要素」としての複数の液圧室201、202、およびアクチュエータ部30とを含んで構成され、これらの構成要素は、棒状を呈するハウジング40に収容されている。
ハウジング40は、有底筒状の第1ハウジング区分40a及び第2ハウジング区分40bと、第1ハウジング区分40aと第2ハウジング区分40bの間に挟み込まれる第3ハウジング区分40cと、締結部材としてのリテーニングナット40dとを有しており、内部に上記構成要素11、30、201、202を収容するハウジング区分40a、40b、40cがリテーニングナット40dによって気密にねじ締結される周知構造のものである。
ハウジング40は、上記蓄圧器3からの高圧燃料が導入される燃料入口部41、およびリターン経路8に接続する燃料出口部42を有している。ハウジング40の軸方向一端側には、収容部43が形成されており、その収容部43には、燃料の噴射及び噴射停止を制御する、弁部材121、122を含むノズル11が収容されている。

ノズル11は、複数の弁部材121、122、複数のノズルスプリング161、162を有している。弁部材121、122は、第1弁部材121が第2弁部材122の内側に同軸的に配置され、収容部43内に摺動自在に保持されている。収容部43の軸方向一端側には、複数の噴孔44が形成されおり、噴孔44は、高圧燃料通路46を介して燃料入口部41と連通する。この噴孔44は、異なる弁部材121、122に開閉される噴孔441、442を有しており、第1噴孔441及び第2噴孔442においてこれら噴孔441、442の燃料入口部41側、即ち上流側には、上記各弁部材121、122に形成されているシート部131、132が着座する弁座45が形成されている。
上記弁部材121、122は、共通の弁座45に着座及び離座することにより、第1弁部材121が第1噴孔441を開閉すると共に、第2弁部材122が第2噴孔442を開閉する。即ち、弁座45に第1弁部材121の第1シート部131が着座することにより、第1噴孔441の入口への燃料の流れが閉塞され、第1噴孔441からの燃料の噴射が停止する。弁座45から第1弁部材121の第1シート部131が離座することにより、第1噴孔441の入口への燃料の流れが開放され、第1噴孔441から燃料が噴射する。一方、弁座45に第2弁部材121の第2シート部132が着座することにより、第2噴孔442の入口への燃料の流れが閉塞され、第2噴孔442からの燃料の噴射が停止する。弁座45から第2弁部材122の第2シート部132が離座することにより、第2噴孔442の入口への燃料の流れが開放され、第2噴孔442から燃料が噴射する。
また、上記収容部43の軸方向他端側には、第1弁部材121において第1シート部131とは反対側の端部に形成されるピストン部141が、内周側に摺動自在に、かつ液密に挿入されている。ピストン部141は収容部43の内壁とともに、内部に燃料が充填された第1液圧室201を形成する。
また、上記第1弁部材121においてピストン部141の第1液圧室201側とは反対の端部と、収容部43との間には、第1ノズルスプリング161が設けられている。この第1ノズルスプリング161は、第1弁部材121を、第1シート部131が弁座45に着座する方向、つまり閉弁方向に付勢する。
さらに、上記収容部43の軸方向他端側には、第2弁部材122において第2シート部132とは反対側の端部142が、ノズルシリンダ147の内周側に摺動自在に、かつ液密に挿入されている。ノズルシリンダ147は、第2弁部材122の上記反対側の端部142の内壁とともに、内部に燃料が充填された第2液圧室202を形成する。また、第2弁部材122において上記反対側の端部142と第2シート部132との間には、フランジ部152が形成され、このフランジ部152とノズルシリンダ147との間には、第2ノズルスプリング162が設けられている。この第2ノズルスプリング162は、第2弁部材122を、第2シート部132が弁座45に着座する方向、つまり閉弁方向に付勢する。
第1液圧室201及び第2液圧室202は、液圧的に連結する、共通の液密室203を有している。液密室203が、アクチュエータ部30においてピエゾスタック32の変位を伝達する「変位伝達要素」としての円筒状の可動部材34の伝達面に接している。これによると、アクチュエータ部30の変位、即ち伸縮により液密室203内の燃料圧力が増圧及び減圧する。そして、液密室203の圧力の増減は、第1液圧室201及び第2液圧室202内において燃料圧力を増圧及び減圧する。
具体的には、第3ハウジング区分40cが有底筒状に形成されており、上記可動部材34が第3ハウジング区分40cの内周側に摺動自在に、かつ液密的に挿入されている。そして、液密室203と第1液圧室201は連絡通路51を介して連通するとともに、液密室203と第2液圧室202は連絡通路52を介して連通している。
アクチュエータ部30は、ハウジング40の軸方向他端側に形成されるアクチュエータ室56に収容されている。アクチュエータ室56は、燃料出口部42に連通しており、リターン経路8に接続している。
燃料タンク10と燃料出口部42とを接続するリターン経路8には、アクチュエータ室56側の圧力を制御する背圧弁9が配置されている。蓄圧器3内に蓄えられた高圧燃料の圧力が100MPa以上であるのに対し、背圧弁9はアクチュエータ室56側の燃料圧力を1MPa程度に制御する。ここで、蓄圧器3を含む高圧燃料源から供給される燃料の圧力は、燃料噴射圧力相当の圧力であり、コモンレール圧という。また、リターン経路8に連通するアクチュエータ室56内の燃料の圧力は、リーク燃料圧という。
アクチュエータ部30は、ピエゾスタック32を含むピエゾアクチュエータ31、および可動部材34を有している。ピエゾアクチュエータ31は、主に圧電素体層を複数層積層させることにより構成されており、電荷の充放電により伸縮する。
ピエゾアクチュエータ31は、ピエゾスタック32及び金属製のケーシング33を有している。ケーシング33はピエゾスタック32の軸方向一端部側と軸方向他端部側とを伸縮可能に架橋してピエゾスタック32の周囲を気密に覆っている。このケーシング24はピエゾスタック32を燃料侵入から保護するものである。
ピエゾアクチュエータ31には、駆動回路302を介して充電電流が供給されるようになっており、この駆動回路302は制御回路301により制御される。なお、本実施形態では、ピエゾアクチュエータ31においてピエゾスタック32を充放電させる方法として、マルチスイッチング方式(以下、MS方式という)を採用している。
制御装置300は、駆動回路302と、制御回路301とを備えている。駆動回路302は、ピエゾアクチュエータ31に電気的に接続しており、ピエゾアクチュエータ31の充放電制御においてピエゾスタック32に充電電流を供給すべく比較的高い電圧(以下、ピエゾ電圧)を印加するものである。本実施例では、ピエゾアクチュエータ31の変位範囲において最大ピエゾ電圧Vfull(図3参照)を、150V程度とする。
また、駆動回路302には、制御回路301が電気的に接続されている。制御回路301は、各種情報に基づき、駆動回路302に与える図示しない充電制御信号及び放電制御信号を生成し、ピエゾスタック32を充放電制御する駆動回路302を制御することにより、ピエゾアクチュエータ31の伸縮を制御するものである。
駆動回路302は、図示しない充放電駆動部を備えている。充放電駆動部は、直流電源(図示せず)からインダクタ(図示せず)を介してピエゾアクチュエータ31のピエゾスタック32に通電する経路中に、直流電源を直接切り離すことができるスイッチング素子(図示せず)を有している。上記MS方式では、制御回路301からの充電制御信号に基づいて、当該スイッチング素子を複数回オン/オフすることにより、ピエゾアクチュエータ31においてピエゾスタック32を数回に分けて充電する。
上記スイッチング素子がオンしている間は、ピエゾスタック32へ漸増する充電電流が流れる。スイッチング素子がオフされると、フライホイール作用でピエゾスタック32へ漸減する充電電流が流れる。このようにピエゾスタック32に充電電流が流れる間、ピエゾスタック32におけるピエゾ電圧は増加し続ける(図2参照)。なお、MS方式の詳細な駆動方法や回路構成などは、例えば特開2001−53348号公報にて周知である。
制御回路301は、図示しないマイクロプロセッサ(以下、MPU)、及びROM、EEPROM、およびRAMといった記憶並びに読み出しを行なう記憶手段を有している。MPUは、上記記憶手段に記憶したプログラムに従って演算処理を実行する。また、制御回路301には、吸入空気量、アクセルペダル踏み込み量、内燃機関回転数、蓄圧器内の燃料圧力などを検出する各種センサ(図示せず)とも接続され、これらの各種センサからの信号が入力されるようになっている。
以上、燃料噴射装置1の基本構成について説明した。以下、燃料噴射装置1の特徴的構成について図1〜図3に基づいて説明する。図2はエンジンの通常状態における燃料噴射装置1を制御する制御装置300の制御ロジックを模式的に示しており、図3はエンジンの特定状態としての始動時における燃料噴射装置1を制御する制御装置300の制御ロジックを模式的に示すものである。
(特徴的構成)
ピエゾアクチュエータ31の充電及び放電による伸縮に対し、第1液圧室201及び第2液圧室202は、以下の特徴構成を有している。即ち、第1液圧室201は、その燃料圧力がピエゾアクチュエータ31の伸長に対し増圧され、当該増圧されることにより第1弁部材121に対し開弁方向に作用する構成としている。第2液圧室202は、その燃料圧力がピエゾアクチュエータ31の収縮に対し減圧され、当該減圧されることにより第2弁部材122に対し開弁方向に作用する構成としている。
言い換えると、ピエゾアクチュエータ31への充電によりピエゾ電圧を高めることで、第1液圧室201の圧力が増圧され、当該増圧された燃料圧力が第1弁部材121を開弁させるように作用する。一方、ピエゾアクチュエータ31からの放電によりピエゾ電圧を低くすることで、第2液圧室202の圧力が減圧され、当該減圧された燃料圧力が第2弁部材122を開弁させるように作用する。
具体的には、まず、第1弁部材121及び第1液圧室201について説明する。第1液圧室201内の燃料圧力が、第1弁部材121のピストン部141における第1シート部131と同じ側の端部に作用し、当該第1液圧室201内の燃料圧力により第1弁部材121を開弁方向に付勢する。
また、第1弁部材121においてピストン部141の第1液圧室201側とは反対の端部は、ノズルスプリング161、162が収容されるスプリング室53が形成され、スプリング室53は、高圧燃料通路46から分岐した高圧燃料通路47を介して高圧燃料が供給される。即ち、第1弁部材121のピストン部141においてスプリング室53の燃料圧力は、高圧燃料通路47から導かれる高圧燃料により第1弁部材121を閉弁方向に付勢する。
第1ノズルスプリング161は、第1弁部材121を閉弁方向に付勢する。また、第1弁部材121は、燃料入口部41から高圧燃料通路46を介して上記軸方向一端側の収容部43を経由して第1シート部131側に導かれる高圧燃料により、第1シート部131が弁座45から離座する方向、つまり開弁方向に付勢される。
以上の構成により、第1弁部材121は、スプリング室53に導かれる高圧燃料の圧力、第1液圧室201内の燃料圧力、第1シート部131側に導かれる高圧燃料の燃料圧力、および第1ノズルスプリング161の付勢力のバランスにより、閉弁方向または開弁方向への移動が決定される。これによると、ピエゾアクチュエータ31からの充電によりピエゾ電圧を高めることで、第1液圧室201の圧力が増圧されると、第1弁部材121が開弁する。一方、ピエゾアクチュエータ31への放電により元のピエゾ電圧(以下、初期電圧)に戻すことにより、第1液圧室201の圧力が、増圧される前の元の圧力(以下、初期圧力)に戻されると、第1弁部材121が閉弁する。
さらに、上記第1弁部材121は、第1液圧室201の燃料圧力が「初期圧力」としての上記高圧燃料の燃料圧力より増圧されないと、開弁しない構成としているので、例えピエゾアクチュエータ31からの放電及び充電によりピエゾ電圧を初期電圧より低くし、その後に初期電圧に戻す場合であったとしても、第1液圧室201の圧力が初期圧力以下となるため、第1弁部材121の閉弁が維持される。
次に、第2弁部材122及び第2液圧室202について説明する。第2液圧室202内の燃料圧力が、第2弁部材122において第2シート部132とは反対側の端部142に作用し、当該第2液圧室202内の燃料圧力により第2弁部材122を閉弁方向に付勢する。
第2ノズルスプリング162は、第2弁部材122を閉弁方向に付勢する。また、第2弁部材122は、燃料入口部41から高圧燃料通路46を介し上記軸方向一端側の収容部43を経由して第2シート部132側に導かれる高圧燃料により、第2シート部132が弁座45から離座する方向、つまり開弁方向に付勢される。
以上の構成により、第2弁部材122は、第2液圧室202内の燃料圧力、第2シート部132側に導かれる高圧燃料の燃料圧力、および第2ノズルスプリング162の付勢力のバランスにより、閉弁方向または開弁方向への移動が決定される。これによると、ピエゾアクチュエータ31からの放電によりピエゾ電圧を低くすることで、第2液圧室202の圧力が減圧されると、第2弁部材122が開弁する。一方、ピエゾアクチュエータ31への充電により元の電圧である初期電圧に戻すことにより、第2液圧室202の圧力が減圧される前の初期圧力に戻されると、第2弁部材122が閉弁する。
さらに、上記第2弁部材122は、第2液圧室202の燃料圧力が初期圧力である高圧燃料の燃料圧力より減圧されないと、開弁しない構成としているので、例えピエゾアクチュエータ31への充電及び放電によりピエゾ電圧を初期電圧より高くし、その後に初期電圧に戻す場合があったとしても、第2液圧室202の圧力が初期圧力以上となるため、第2弁部材122の閉弁が維持される。
このように構成された第1弁部材121及び第1液圧室201と第2弁部材122及び第2液圧室202との組合せにおいては、ピエゾアクチュエータ31の伸縮、言い換えると充電及び放電により、選択的に第1弁部材121及び第2弁部材122のいずれかの特定弁部材を駆動し、その特定弁部材に対応する第1噴孔441及び第2噴孔442の特定噴孔の開閉が可能となる。
さらに、ピエゾアクチュエータ31へ充放電制御する駆動回路302及び制御回路301を有する制御装置300は、以下の特徴構成を有している。即ち、制御装置300においては、駆動回路302を制御し、その駆動回路302は、ピエゾアクチュエータ31の伸縮により変位する変位範囲のうちの中間位置を、初期位置に設定する構成としている。具体的には、駆動回路302は、ピエゾアクチュエータ31への充電により、ピエゾアクチュエータ31のピエゾ電圧を、予め上記初期位置に相当する「中間電圧」としての初期電圧Vn(図2参照)に設定する。
上記初期電圧は、駆動回路302の充放電制御によりピエゾアクチュエータ31からの放電が行なわれない限り、ピエゾアクチュエータ31のピエゾスタック32に蓄えられている充電エネルギはほとんど放出されることはなく、実質的にピエゾ電圧、即ち初期電圧にあるピエゾ電圧は維持される。
上記駆動回路302は、ピエゾアクチュエータ31の変位位置を初期位置から一方方向に変位させる変位モード(以下、第1変位モード)と、ピエゾアクチュエータ31の変位位置を初期位置から他方方向に変位させる変位モード(以下、第2変位モード)とを、制御モードとして設定するようにしている。そして、駆動回路302は、第1変位モードでは、ピエゾアクチュエータ31への充電及び放電により、初期位置に相当する初期電圧Vnから一方方向への変位に相当する所定の電圧差ΔV1を生じさせ、その後、初期電圧Vnに戻すように充放電制御する(図2(a)参照)。また、駆動回路302は、第2変位モードでは、ピエゾアクチュエータ31からの放電及び充電により、初期電圧Vnから他方方向への変位に相当する上記所定電圧ΔV1に相反する電圧差ΔV2を生じさせ、その後、初期電圧Vnに戻すように充放電制御する(図2(b)参照)。
こうした構成の駆動回路302は、上記第1弁部材121及び第1液圧室201と第2弁部材122及び第2液圧室202との組合せに対し、第1変位モードでは第1弁部材121のみを駆動し、開弁させるのである。また、駆動回路302は、第2変位モードでは第2弁部材122のみを駆動し、開弁させるのである。
このような駆動回路302を有する制御装置300では、第1弁部材121及び第2弁部材122のいずれかを選択的に駆動するのに、一つの駆動回路302で実現することができる。これにより、燃料噴射装置1は、第1弁部材121及び第2弁部材122のいずれかを選択的に駆動する構成要素を簡素化することができる。
また、上記第1液圧室201及び第2液圧室202は、第1液圧室201及び第2液圧室202の双方に液圧的に連結する上記液密室203を有しており、液密室203が第1弁部材121及び第2弁部材122側とピエゾアクチュエータ31側との間に配置されている。これによると、液密室203の容積を、ピエゾアクチュエータ31の変位で直接または間接的に拡大及び縮小することにより、液密室203を共有する第1液圧室201及び第2液圧室202に対し、その液圧の圧力変化を容易にもたらすことができる。
なお、本実施例では第1弁部材121及び第2弁部材122側とピエゾアクチュエータ31側との間に、液密室203を区画する可動部材34及び第3ハウジング区分40cが設置されているので、液密室203の容積は、ピエゾアクチュエータ31の変位が可動部材34及び第3ハウジング区分40cを介して間接的に伝達されて拡大及び縮小される。
このような液密室203を有する第1液圧室201及び第2液圧室202は、アクチュエータ部30と第1弁部材121及び第2弁部材122とを液圧的に連結する液圧連結要素として、その構造が比較的簡素に実現可能となる。
また、本実施形態は、第1弁部材121及び第2弁部材122は、燃料噴射弁2内において開弁方向及び閉弁方向に移動可能に、内外二重に同軸的に配置されており、第1弁部材121及び第2弁部材122のいずれかを選択的に駆動する共通のピエゾアクチュエータ31で構成されている。言い換えると、一つのピエゾアクチュエータ31によって、第1弁部材121及び第2弁部材122のいずれかを選択的に駆動する駆動方法が実現されている。これにより、従来技術のように第1弁部材121及び第2弁部材122のいずれかを選択的に駆動するのに二つのピエゾアクチュエータを設ける必要がない。これにより、燃料噴射装置1は、第1弁部材121及び第2弁部材122のいずれかを選択的に駆動する構成要素を、更に簡素化することができる。
また、上記液密室203においては、ピエゾアクチュエータ31が収縮する方向、つまり内部の燃料圧力が減圧する方向に、可動部材34を付勢する付勢部材213が設けられていることが好ましい。これにより、ピエゾアクチュエータ31が収縮するときに、付勢部材213の付勢力によって可動部材34をピエゾアクチュエータ31の変位にスムースに追従させることができる。
なお、上記付勢部材213の配置は、図1に示す付勢部材213を液密室203内に設置する構成に限定されるものではなく、液密室203外に設置する構成であってもよい。
なお、ここで、アクチュエータ部30は請求範囲に記載のアクチュエータに相当する。また、制御装置300において駆動回路302が、アクチュエータ部30のピエゾアクチュエータ31を充放電制御する制御モードにおいて第1変位モード及び第2変位モードは請求範囲に記載の、第1弁部材を駆動する第1モード、及び第2弁部材を駆動する第2モードに相当する。
以上、燃料噴射装置1の特徴的構成について説明した。以下、燃料噴射装置1の作動について説明する。以下、図2に基づきエンジンの始動時以外の通常状態、図3に基づきエンジン始動時の特定状態を、それぞれ説明する。なお、図2において、図2(a)は第1弁部材121の燃料噴射において第1弁部材121及びピエゾアクチュエータ31の駆動過程を示し、図2(b)は第2弁部材122の燃料噴射において第2弁部材122及びピエゾアクチュエータ31の駆動過程を示している。
(通常状態)
通常運転状態においては、制御装置300において制御回路301により制御される駆動回路302が、ピエゾアクチュエータ31を充放電制御することにより、ピエゾ電圧を、予めピエゾアクチュエータ31の初期電圧Vnに設定している。
(第1弁部材121及び第2弁部材122の燃料噴射停止時)
ピエゾアクチュエータ31におけるピエゾ電圧が初期電圧Vnに維持されるとき、アクチュエータ部30の可動部材34及び第3ハウジング区分40c間の液密室203内の燃料圧力は、蓄圧室3から供給される上記高圧燃料の燃料圧力(以下、コモンレール圧という)と同じ圧力となっている。液密室203、第1液圧室201、及び第2液圧室202は液密的に構成されているが、スプリング室53内に収容されている第2液圧室202が、ノズルシリンダ147の内壁と第2弁部材122の反対側の端部142の外壁間の比較的僅かな摺動隙間等を介して高圧燃料通路47に実質的に連通しているからである。
第1液圧室201及び第2液圧室202は、いずれもその燃料圧力が、初期圧力であるコモンレール圧に対し増圧、及び減圧されことはなく、コモンレール圧に等しくなっている。これにより、第1液圧室201、第2液圧室202、及びスプリング室53の各燃料圧力は、高圧燃料通路46の燃料圧力、即ちコモンレール圧と等しくなる。第1液圧室201とスプリング室53との間の差圧は生じないので、第1液圧室201の燃料圧力による第1弁部材121への開弁方向の力は、作用しない。
このとき、第1弁部材121において第1シート部131側に導かれる上記高圧燃料の燃料圧力、即ち高圧燃料通路46の燃料圧力が第1弁部材121の周囲に作用することによる第1弁部材121に発生する開弁方向の力は、スプリング室53内の燃料圧力が第1弁部材121のピストン部141に作用することによる第1弁部材121に発生する閉弁方向の力、および第1ノズルスプリング161の付勢力による第1弁部材121に発生する閉弁方向の力の合計よりも小さい。そのため、第1弁部材121の第1シート部131が弁座45に着座し、第1噴孔441からの燃料の噴射が停止する。
また、第2弁部材122において第2シート部132側に導かれる燃料圧力、即ち高圧燃料通路46の燃料圧力が第2弁部材122の周囲に作用することによる第2弁部材122に発生する開弁方向の力は、第2液圧室202内の燃料圧力が第2弁部材122の反対側の端部142に作用することによる第2弁部材122に発生する閉弁方向の力、および第2ノズルスプリング162の付勢力による第2弁部材122に発生する閉弁方向の力の合計よりも小さい。そのため、第2弁部材122の第2シート部132が弁座45に着座し、第2噴孔442からの燃料の噴射が停止する。
(第1弁部材の燃料噴射時)
制御回路301からの指令(以下、第1弁部材駆動信号)により、ピエゾアクチュエータ31が、駆動回路302により充電されると、初期位置より伸長する。ピエゾアクチュエータ31の伸長にともなって可動部材34の変位面が弁部材121、122側に向かって移動すると、液密室203の容積が縮小され、液密室203の燃料圧力が増圧する。増圧された液密室203の燃料圧力にともなって第1液圧室201の燃料圧力が増圧される、即ち高圧燃料通路46の燃料圧力(コモンレール圧)より高くなる。これにより、第1液圧室201とスプリング室53との間の差圧が生じるので、第1液圧室201の燃料圧力による第1弁部材121への開弁方向の力が発生する。
第1弁部材121において第1シート部131側に導かれる上記高圧燃料の燃料圧力(コモンレール圧)による第1弁部材121に発生する開弁方向の力、及び第1液圧室201の燃料圧力による第1弁部材121に発生する開弁方向の力の合計と、スプリング室53内の燃料圧力(コモンレール圧)による第1弁部材121に発生する閉弁方向の力、および第1ノズルスプリング161の付勢力による第1弁部材121に発生する閉弁方向の力の合計とのバランスにより、閉弁方向または開弁方向への移動が決定される。第1弁部材121の先端部において第1シート部131が弁座45に着座しているとき、弁座45が着座する内側部には、上記高圧燃料の燃料圧力(コモンレール圧)が作用しないのである。言い換えると、第1弁部材121の閉弁時には、第1シート部131側に上記高圧燃料が導かれても、第1弁部材121の第1シート部131側の上記内側部には、第1弁部材121への開弁方向の力が発生しない。
そのため、第1弁部材121を開弁させるには、少なくとも第1シート部131側の上記内側部において発生しない開弁方向の力を補うように、第1液圧室201の燃料圧力を、所定以上に増圧する必要がある。
そこで、ピエゾアクチュエータ31が更に充電され、ピエゾ電圧が初期電圧Vnから所定電圧差ΔV1となる所定電圧V1に到達すると、第1液圧室201の燃料圧力が所定以上に増圧される。すると、上記第1弁部材121に発生する開弁方向の力の合計が、上記第1弁部材121に発生する閉弁方向の力の合計よりも大きくなる。これにより、第1弁部材121の第1シート部131が弁座45に離座し、第1噴孔441からの燃料の噴射が行なわれる。
なお、第1弁部材121が開弁すると、第1シート部131側の上記内側部にも上記高圧燃料が導かれるので、第1液圧室201の燃料圧力が上記高圧燃料の燃料圧力(コモンレール圧)に対し差圧が小さくなるように、第1弁部材121が上昇し、第1液圧室201の燃料圧力の増圧量が緩和される(例えば図3(b1)の第1液圧室201の圧力特性を参照)。
その後、制御回路301からの第1弁部材駆動信号により、ピエゾアクチュエータ31が、駆動回路302により放電されると、収縮して初期位置に戻される。言い換えると、駆動回路302は、ピエゾアクチュエータ31からの放電により、ピエゾアクチュエータ31におけるピエゾ電圧を、所定電圧V1から初期電圧Vnに戻す。これにより、液密室203の容積が拡大され、液密室203の燃料圧力が増圧される前の元に初期圧力(コモンレール圧)に戻される。
このとき、上記第1弁部材121に発生する開弁方向の力の合計が、上記第1弁部材121に発生する閉弁方向の力の合計よりも小さくなるので、第1弁部材121の第1シート部131が弁座45に着座し、第1噴孔441からの燃料の噴射が停止する。
また、ここで、第2液圧室202の燃料圧力も、上記液密室203及び第1液圧室201の燃料圧力の圧力変化にともなって上記高圧燃料の燃料圧力(コモンレール圧)に対し増圧されることになるが、第2液圧室202の燃料圧力が上記高圧燃料の燃料圧力(コモンレール圧)に対し減圧されることはない。そのため、第1弁部材121の燃料噴射時においては、第2弁部材122の第2シート部132が弁座45に着座し続けており、第2噴孔442から燃料が噴射されることはない。
(第2弁部材の燃料噴射時)
制御回路301からの第2弁部材駆動信号により、ピエゾアクチュエータ31が、駆動回路302により放電されると、初期位置より収縮する。ピエゾアクチュエータ31の収縮にともなって可動部材34の変位面が弁部材121、122側から遠ざかる方向に移動すると、液密室203の容積が拡大され、液密室203の燃料圧力が減圧する。減圧された液密室203の燃料圧力にともなって第2液圧室202の燃料圧力が減圧される、即ち高圧燃料通路46の燃料圧力(コモンレール圧)より低くなる。これにより、第2液圧室202の燃料圧力による第2弁部材122への閉弁方向の力が、上記高圧燃料の燃料圧力(コモンレール圧)に対し減圧された分、小さくなる。
第2弁部材122において第2シート部132側に導かれる上記高圧燃料の燃料圧力(コモンレール圧)による第2弁部材122に発生する開弁方向の力と、第2液圧室202の燃料圧力による第2弁部材122への閉弁方向の力、および第2ノズルスプリング162の付勢力による第2弁部材122に発生する閉弁方向の力の合計とのバランスにより、閉弁方向または開弁方向への移動が決定される。
第1弁部材121と同様に、第2弁部材122の閉弁時には、第2シート部132側に上記高圧燃料が導かれても、第2弁部材122の2シート部132側の内側部には、第2弁部材122への開弁方向の力が発生しない。そのため、第2弁部材122を開弁させるには、少なくとも第2シート部132側の内側部において発生しない開弁方向の力を相殺するように、第2液圧室202の燃料圧力を、所定以上に減圧する必要がある。
そこで、ピエゾアクチュエータ31が更に放電され、ピエゾ電圧が初期電圧Vnから所定電圧差ΔV2となる所定電圧V2に到達すると、第2液圧室202の燃料圧力が所定以上に減圧される。すると、上記第2弁部材122に発生する開弁方向の力の合計が、上記第2弁部材122に発生する閉弁方向の力の合計よりも大きくなる。これにより、第2弁部材122の第2シート部132が弁座45に離座し、第2噴孔442からの燃料の噴射が行なわれる。
なお、第2弁部材122が開弁すると、第2シート部132側の内側部にも上記高圧燃料が導かれるので、第2液圧室202の燃料圧力が上記高圧燃料の燃料圧力(コモンレール圧)に対し差圧が小さくなるように、第2弁部材122が上昇し、第2液圧室202の燃料圧力の減圧量が緩和される。
その後、制御回路301からの第2弁部材駆動信号により、ピエゾアクチュエータ31が、駆動回路302により充電されると、伸長して初期位置に戻される。言い換えると、駆動回路302は、ピエゾアクチュエータ31への充電により、ピエゾアクチュエータ31におけるピエゾ電圧を、所定電圧V2から初期電圧Vnに戻す。これにより、液密室203の容積が縮小され、液密室203の燃料圧力が減圧される前の元に初期圧力(コモンレール圧)に戻される。
このとき、上記第2弁部材122に発生する開弁方向の力の合計が、上記第2弁部材122に発生する閉弁方向の力の合計よりも小さくなるので、第2弁部材122の第2シート部132が弁座45に着座し、第2噴孔442からの燃料の噴射が停止する。
また、ここで、第1液圧室201の燃料圧力も、上記液密室203及び第2液圧室202の燃料圧力の圧力変化にともなって上記高圧燃料の燃料圧力(コモンレール圧)に対し減圧されることになるが、第1液圧室201の燃料圧力が上記高圧燃料の燃料圧力(コモンレール圧)に対し増圧されることはない。そのため、第2弁部材122の燃料噴射時においては、第1弁部材121の第1シート部131が弁座45に着座し続けており、第1噴孔441から燃料が噴射されることはない。
なお、図2中のピエゾ電圧において各電圧V1、Vn、V2の関係は、V1>Vn>V2であり、本実施形態では、例えばV1、Vn、V2を、それぞれ、約150V、75V、0V程度に設定されている。
(特定状態)
特定状態、即ちエンジンの始動状態の作動を、図3に基づいて説明する。図3(a)においては、燃料噴射弁2からの駆動信号の一例が示されている。エンジンの燃料サイクルは、気筒の順で説明すると、第1気筒(図3中の#1)、第3気筒、第4気筒、及び第2気筒の順で燃焼し、駆動信号もこれらの気筒順で発生する。
以下の説明では、駆動回路302が充電制御する特定燃料噴射弁2を、図3(a)中の第1気筒に搭載された燃料噴射弁2とし、当該燃料噴射弁2のピエゾアクチュエータ31への充放電制御について説明する。特定燃料噴射弁2において、特定駆動信号の発生期間が概ね特定燃料噴射期間に相当し、特定駆動信号以外の期間が特定噴射停止期間に相当する。
また、図3(b1)、図3(b2)、及び図3(b3)は、図3(a)中の特定燃料噴射弁2に係わるピエゾアクチュエータ31の駆動過程を示している。図3(b1)においては、ピエゾ電圧、第1液圧室201の燃料圧力、及び第1弁部材121並びに第2弁部材122の変位の各特性を示し、図3(b2)及び図3(b3)は、ピエゾ電圧の特性を示している。
上記エンジンの始動状態においては、ピエゾアクチュエータ31の変位位置を、初期位置に対応する初期電圧Vnに設定するため以下のように駆動回路302がピエゾアクチュエータ31を充放電制御する。この充放電制御の場合には、エンジン停止時においてピエゾアクチュエータ31からの放電によりピエゾスタック32に蓄積されている充電エネルギを放出していることを前提する。そのため、ピエゾアクチュエータ31のピエゾ電圧が、初期電圧Vnから電圧V2(V2=0)に戻された状態で、エンジン停止している。
制御装置300は、エンジンのスタータ等の始動装置が作動しているか否かを検出し、当該検出結果に基づいて始動装置が作動していると判断される場合には、始動状態にあると判定する。なお、上記検出結果に基づいて始動装置が作動していると判断されない場合には、エンジン停止状態にあると判定し、始動装置が作動していると判断されるまで判定を繰り返す。
そして、制御装置300は、エンジンが始動状態にあると判定されると、制御回路301から第1弁部材駆動信号のみを出力する。そして駆動回路302は、制御回路301からの第1弁部材駆動信号により、図2(b)に示すように、ピエゾアクチュエータ31への充放電制御において第1変位モードのみを実行する。
即ち、駆動回路302は、ピエゾアクチュエータ31への充電によりピエゾ電圧を、電圧V2(V2=0)から電圧V1に到達させる。そのため、第1弁部材121が開弁するまで第1液圧室の燃料圧力が漸増し増圧し続ける。このときエンジンは始動装置により始動開始しているため、圧送ポンプから圧送される高圧燃料によって蓄圧器3には高圧燃料による所定の燃料圧力(所定のコモンレール圧)が形成されるので、第1液圧室の燃料圧力はこの所定の燃料圧力(所定のコモンレール圧)に対し漸増し増圧する。
第1液圧室の燃料圧力が所定以上に増圧されると、第1弁部材121が開弁する。第1弁部材121が開弁すると、第1液圧室201の増圧量が緩和されつつ、第1弁部材121がリフトする。
その後、制御回路301からの第1弁部材駆動信号により、駆動回路302は、ピエゾアクチュエータ31からの放電によりピエゾ電圧を、電圧V1から電圧V2(図中の破線の特性)に向けて戻す。
このとき、ピエゾ電圧を電圧V2(V=0)に単に戻すのではなく、電圧V2に電圧差ΔVを残した電位を、次回特定燃料噴射期間における初期電圧とする。この電圧差ΔVは、第1弁部材121が閉弁可能なピエゾ電圧に設定されている。
ここで、第1液圧室201の燃料圧力は、第1弁部材121の閉弁直後に、上記電圧差ΔV分の圧力(以下、残圧という)が形成されることになる。しかしながら、特定噴射停止期間は特定燃料噴射期間に比べて十分長いため、次回特定燃料噴射期間の直前までには、第1液圧室201の燃料圧力は、高圧燃料通路46の高圧燃料の圧力と同等になるので、残圧が消えて所定の燃料圧力(所定のコモンレール圧)に戻るのである。
そして、ピエゾアクチュエータ31への充放電制御において駆動回路302は上記第1変位モードのみの制御を、図2(b2)の如く繰り返すのである。これにより、特定燃料噴射期間ごとに、次回特定燃料噴射期間における初期電圧が、電圧差ΔV分加算される。その繰返しの結果、図3(b3)に示すように、次回特定燃料噴射期間における初期電圧を、通常状態と同等の初期電圧Vnに設定することができる。
このようにエンジンの運転状態が特定状態である始動状態にある場合には、駆動回路302は、ピエゾアクチュエータ31への充放電制御を、第1弁部材121を駆動する第1変位モードのみを実行する制御に設定する。それにより、ピエゾアクチュエータ31の変位位置が、通常状態の初期位置である初期電圧Vnに比較的容易に設定できるのである。
以上説明した本実施形態では、第1液圧室201及び第2液圧室202は、各内部の燃料圧力が相反する圧力変化である増圧、および減圧、言い換えるとピエゾアクチュエータ31が相反する変位方向に変位することにより、それぞれ、第1弁部材121を開弁させる付勢力、第2弁部材122を開弁させる付勢力を形成する構成としている。
さらに、このような第1液圧室201及び第2液圧室202の構成に加えて、制御装置300の駆動回路302は、ピエゾアクチュエータ31への充放電制御において、ピエゾアクチュエータ31の変位位置範囲のうちの中間位置を、ピエゾアクチュエータ31を充放電制御する初期位置として設定すると共に、ピエゾアクチュエータ31の変位位置を初期位置から一方向に変位させる第1変位モードと、ピエゾアクチュエータ31の変位位置を初期位置から他方向に変位させる第2変位モードとを有する構成としている。
これにより、第1弁部材121及び第2弁部材122のいずれかを選択的に駆動するのに、一つの駆動回路302で実現することができる。それ故に、従来技術のように第1弁部材及び第2弁部材に対応するアクチュエータを独立的に駆動するために独立した駆動回路を設ける必要がないので、駆動回路302を有する制御装置300を簡素化することができる。
以上の本実施形態によれば、ピエゾアクチュエータの変位に対し第1弁部材121及び第2弁部材122を独立的に駆動する構成要素が簡素化されるのである。
ここで、充電及び放電により伸縮するピエゾアクチュエータ31は、上記駆動回路302によるピエゾアクチュエータ31への充放電制御により、ピエゾアクチュエータ31に印加される印加電圧特性の電圧状態が切換えられることになる。例えば所定の電位差が生じる一の電圧状態から他の電圧状態へ移行する場合には、ピエゾアクチュエータ31への充放または放電を行なうことになるが、所定の電圧状態を維持する場合には、概ね充放及び放電のいずれかまたは両方を、実質的に継続実施する必要はほとんどない。エンジンの燃焼サイクルにおいて燃料噴射期間及び非燃料噴射期間のいずれも概ね僅かな時間であるので、ピエゾアクチュエータ31に供給された充電エネルギはピエゾアクチュエータ31のピエゾスタック32内に蓄えられているからである。
以上説明した本実施形態によれば、制御装置300は、第1弁部材121を駆動する第1変位モードと、第2弁部材122を駆動する第2変位モードとを、制御モードとして設定している。そのため、第1変位モード及び第2変位モードにおいて、第1弁部材121及び第2弁部材122のうちの特定弁部材の燃料噴射期間、即ち特定弁部材を開弁及び閉弁動作する期間において、初期電圧Vnから、所定の電位差ΔV1またはこれに相反する電位差ΔV2を形成する電圧状態V1、V2へ移行する際に、駆動回路302からピエゾアクチュエータ31へのエネルギが供給及び放出される。しかしながら、非噴射期間においては電圧状態として初期電圧が継続されるので、非噴射期間において駆動回路302は、ピエゾアクチュエータ31へ供給するエネルギ消費は実質的にほとんど生じない。これより、エネルギの無駄消費が抑制されるので、駆動回路302を有する制御装置300の大型化が防止される。
(第2実施形態)
第2実施形態を図4に示す。第2実施形態は第1実施形態の変形例である。第2実施形態では、アクチュエータ部30を収容するアクチュエータ室156が、高圧燃料通路46に連通するように構成された一例を示すものである。
図4に示すように、アクチュエータ室156は、燃料入口部41に連通しており、蓄圧室3からの高圧燃料が供給される高圧燃料通路46に接続している。これにより、第2実施形態による燃料噴射装置2は、アクチュエータ部30においてピエゾアクチュエータ31の周囲に高圧燃料を導入する構成となるので、第1実施形態で説明した燃料出口部42及びリターン経路8をなくすことが可能となる。
したがって、第2実施形態による燃料噴射装置2は、その構成要素の簡素化が更に図れる。
(第3実施形態)
第3実施形態を図5に示す。第3実施形態は第2実施形態の変形例である。第3実施形態では、第1液圧室201及び第2液圧室202のうちの特定液圧室201が、アクチュエータ部30側の変位面と液圧的に直接連結する構成とする一例を示すものである。
燃料噴射弁200は、ノズル211、第1液圧室201、第2液圧室202、およびアクチュエータ部30を含んで構成され、これらの構成要素をハウジング40に収容されている。
ハウジング40は、有底筒状の第1ハウジング区分40a及び第2ハウジング区分40bと、リテーニングナット40cとを有しており、内部に上記構成要素211、30、201、202を収容するハウジング区分40a、40bがリテーニングナット40cによって気密にねじ締結される周知構造のものである。

アクチュエータ部30は、ピエゾアクチュエータ31、円筒状の可動部材34、およびピエゾアクチュエータ31と可動部材34の間に配置される、円柱状の変位伝達部材35を有している。
変位伝達部材35は、ピエゾアクチュエータ31の変位を可動部材34に伝達する。
可動部材34は、ハウジング40側に固定された固定ピストン36との間に第1液圧室201を形成するものであって、ハウジング40側に進退不変に固定されている固定ピストン36の圧力制御面361に対し、第1液圧室201を挟んで変位面341を有している。
具体的には、可動部材34は、内周面に段付き部を有する段付き円筒状の部材であって、段付き部の一方側に第1内周孔342が形成され、段付き部の他方側に、第1内周孔342よりも大径の第2内周孔343が形成されている。可動部材34は、第1内周孔342及び第2内周孔343がハウジング40の軸方向に沿って並んで配置されるように収容部243に収容されている。第1内周孔342は第2内周孔343よりも噴孔441、442側に配置されている。収容部243の軸方向他端側には、アクチュエータ部30が収容されている。
第1弁部材131においてピストン部141は、可動部材34の第1内周孔342に摺動可能に、かつ液密的に挿入されている。第1シート部131とピストン部141の間にはフランジ部151が取り付けられており、このフランジ部151と可動部材34との間には、第1ノズルスプリング161が設けられている。この第1ノズルスプリング161は、第1弁部材を閉弁方向に付勢する。
第2内周孔343には、固定ピストン36が摺動可能に挿入されている。固定ピストン36は、固定ピストン部362と、固定ピストン部362よりも径方向外側に突出するフランジ部363を有する。第2内周孔343には、固定ピストン部362のみが液密的に挿入されている。
固定ピストン部362と第1弁部材121のピストン部141との間には、可動部材34、固定ピストン部362、ピストン部141とに囲まれた第1液圧室201が形成される。この第1液圧室201には、第1内周孔342及びピストン部141間の摺動隙間、並びに第2内周孔343及び固定ピストン部362間の摺動隙間を介して上記軸方向他端側の収容部243、つまりアクチュエータ室156に連通している。
固定ピストン36のフランジ部363は、周方向に沿って図示しない複数(例えば3つ)に分割されており、その隣接するフランジ部363間に切欠き部が形成されている。フランジ部363において切欠き部には、可動部材34の軸方向他端側の端部が軸方向移動可能に挿入されて、変位伝達部材35に支持されている。
収容部243の内壁に支持されているフランジ部363と、収容部243の内壁との間には、固定スプリング37が設けられており、固定スプリング37の付勢力により固定ピストン36がハウジング40に対し固定されている。
また、第1弁部材121においてピストン部141の内壁側には、第2弁部材122の反対側の端部142が摺動可能に挿入されており、その反対側の端部142は、第2弁部材122において第2シート部132側の軸径より大きい外径のピストン状部143が形成されている。第1弁部材122側のピストン部141の内壁には、ピストン状部143の下端部のみが液密に挿入されている。ピストン状部143の下端部側の端面とピストン部141の内壁内の端面との間には、第2液圧室202が形成されている。第2液圧室202と第1液圧室201は、ピストン状部143内に形成された連絡通路155を介して液密的に連通する。
ピストン状部143の上端部は、固定ピストン36の固定ピストン部362の内壁に摺動可能に、かつ液密的に挿入されている。ピストン状部143の上端部側の端面と固定ピストン部362の内壁内の端面との間には、第2ノズルスプリング162が設けあれている。この第2ノズルスプリング162は、第2弁部材122を閉弁方向に付勢する。また、第2ノズルスプリング162を収容するスプリング室158は、連絡通路159を介して収容部243に連通している。
第1弁部材121は、第1液圧室201内の燃料圧力による第1弁部材121に発生する閉弁方向の力、および第1ノズルスプリング161の付勢力による第1弁部材121に発生する閉弁方向の力の合計の力と、第1弁部材121の第1シート部131側に導かれる高圧燃料の燃料圧力による第1弁部材121に発生する開弁方向の力とのバランスにより、閉弁方向または開弁方向への移動が決定される。
また、第2弁部材122は、第2弁部材122の第2シート部132側に導かれる高圧燃料の燃料圧力(コモンレール圧)による第2弁部材122に発生する開弁方向の力、および第2液圧室202内の燃料圧力による第2弁部材122に発生する開弁方向の力の合計の力と、スプリング室158内の燃料圧力(コモンレール圧)による第2弁部材122に発生する閉弁方向の力、および第2ノズルスプリング162の付勢力による第2弁部材122に発生する閉弁方向の力の合計の力とのバランスにより、閉弁方向または開弁方向への移動が決定される。
以上の構成による第3実施形態の燃料噴射弁200を適用する燃料噴射装置2は、第2実施形態と実質的にほぼ同様な効果を得ることができる。
また、以上説明した本実施形態では、第1液圧室201及び第2液圧室202のうちの特定液圧室201が、アクチュエータ部30側の変位面341と液圧的に直接連結する構成とするので、第1液圧室201及び第2液圧室202の容積空間の小型化が可能となる。これにより、燃料噴射弁200内にスペースに、第1液圧室201及び第2液圧室202の容積空間が占有する余裕が少ない場合において、燃料噴射弁200が大型化するのを防止することができる。
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定して解釈されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態に適用可能である。
(1)以上説明した本実施形態では、制御装置300において制御回路301から出力される駆動信号は、特定燃料噴射弁2から噴射される燃料の噴射形態として、エンジンの1燃焼サイクルで特定燃料噴射期間中に一つの噴射が実施されるものとして説明した。これに限らず、噴射形態として複数の噴射いわゆるマルチ噴射するものであってもよい。図6に示すように、複数の噴射を、第1弁部材121の駆動による噴射と、第2弁部材122の駆動による噴射とを選択的に実施するようにしてもよい。例えば図6(b1)に示すようにエンジンの出力を主に発生するメイン噴射を、第1弁部材121の駆動により実施し、メイン噴射の前後の噴射群を、第2弁部材122の駆動により実施する構成とすることができる。
(2)以上説明した本実施形態では、特定状態として、エンジンの始動時においては、ピエゾアクチュエータ31への充放電制御において駆動回路302は、第1変位モードのみを実行するようにする構成とした。この構成により、ピエゾアクチュエータ31のピエゾ電圧において初期電圧を、通常状態と同等の初期電圧Vnに設定できるようにした。
これに限らず、特定状態として、エンジン停止状態においてピエゾアクチュエータ31に蓄積されているエネルギに対し、エネルギ補償する充電を行なう構成としてもよい。この場合、エンジン停止時においてピエゾアクチュエータ31からの放電を実施しないまま、ピエゾスタック32に蓄積されている充電エネルギを維持するような構成としてもよい。
ピエゾスタック32に蓄積された充電エネルギのうち、時間経過により放出するエネルギはほとんど僅かであるため、エンジン停止時におけるピエゾアクチュエータ31へのエネルギ供給は僅か量で行なえる。
(3)また、以上説明した本実施形態では、駆動回路302による充放電制御において
ピエゾ電圧の制御範囲を、例えば電圧V2〜電圧V1である0V〜150Vの正電圧とし、初期電圧Vnをその中間電圧である75V程度に設定した。
これに限らず、初期電圧Vnを、0V程度とし、電圧V2を、負電圧とするようにしてもよい。この場合、ピエゾ電圧の制御範囲の拡大ができる。言い換えると、同一の変位量を確保するのであれば、ピエゾアクチュエータの小型化ができる。
(4)上記(3)の構成とする場合には、通常状態における初期電圧Vnが0V程度に設定されるため、エンジン始動時のような特定状態と、通常状態とで、上記充放電制御の方法を切換える必要がないので、燃料噴射装置の構成要素を更に簡素化することが可能となる。
(5)以上説明した第3実施形態では、可動部材34を円筒状としたが、これに限らず、断面形状が円状、四角状、あるいは楕円状などいずれの筒状であってもよい。
(6)また、以上説明した第3実施形態では、可動部材34を一つの筒状部材としたが、複数の筒状区分に分割される構成としてもよい。
本発明の第1実施形態による燃料噴射装置の構成を示す模式的断面図である。 図1の燃料噴射装置の作動を説明する模式図であって、図2(a)は燃料噴射弁において第1弁部材の作動を示すタイムチャート、図2(b)は燃料噴射弁において第2弁部材の作動を示すタイムチャートである。 図1の燃料噴射装置の作動、特に内燃機関の始動時における作動を説明する模式図であって、図3(a)は燃料噴射装置に適用する特定気筒に搭載の特定燃料噴射弁を駆動するための駆動信号、図3(b1)、図3(b2)、及び図3(b3)は特定燃料噴射弁への充放電制御の過程を説明するタイムチャートである。 第2実施形態に係わる燃料噴射装置を示す断面図である。 第3実施形態に係わる燃料噴射装置を示す断面図である。 他の実施形態に係わる燃料噴射装置の作動のための特徴的構成を示す模式図であって、図6(a)は燃料噴射装置において特定気筒に対応する特定燃料噴射弁を駆動するための駆動信号、図6(b1)、及び図6(b2)は上記特定燃料噴射弁の噴射形態を実現する第1弁部材及び第2弁部材駆動用の各駆動信号を示すタイムチャートである。
符号の説明
1 燃料噴射装置
2 燃料噴射弁
3 蓄圧器(コモンレール)
300 制御装置
301 制御回路
302 駆動回路
8 リターン経路
9 背圧弁
10 燃料タンク
11 ノズル(弁閉鎖体)
121 第1弁部材
122 第2弁部材
131、132 第1シート部、第2シート部
141 ピストン部
142 反対側の端部
147 ノズルシリンダ
152 フランジ部
161、162 第1ノズルスプリング、第2ノズルスプリング
201 第1液圧室
202 第2液圧室
203 液密室
30 アクチュエータ部
31 ピエゾアクチュエータ
32 ピエゾスタック
33 ケーシング
34 可動部材(変位伝達要素)
40 ハウジング
41 燃料入口部
42 燃料出口部
43 収容部
44 噴孔
441 第1噴孔
442 第2噴孔
45 弁座
46 高圧燃料通路
47 高圧燃料通路
51、52 連絡通路
53 スプリング室
56 アクチュエータ室

Claims (5)

  1. 複数の噴孔と、
    互いに異なる前記噴孔を開閉する第1弁部材及び第2弁部材と、
    前記第1弁部材及び前記第2弁部材を直接または間接的に前記噴孔の閉方向及び開方向に駆動するアクチュエータであって、充電及び放電により伸縮するアクチュエータと、
    を有する燃料噴射弁を備え、前記アクチュエータの変位に対し前記第1弁部材及び前記第2弁部材のうちの特定弁部材のみが前記噴孔の開方向に開弁する燃料噴射装置において、
    前記燃料噴射弁において少なくとも前記第1弁部材と前記アクチュエータとの間に設けられ、前記第1弁部材と前記アクチュエータを液圧的に連結する第1液圧室であって、内部の液圧が増圧されることで前記第1弁部材に対し前記第1弁部材の開弁方向に液圧力が作用する第1液圧室と、
    前記燃料噴射弁において少なくとも前記第2弁部材と前記アクチュエータとの間に設けられ、前記第2弁部材と前記アクチュエータを液圧的に連結する第2液圧室であって、内部の液圧が減圧されることで前記第2弁部材に対し前記第2弁部材の開弁方向に液圧力が作用する第2液圧室と、
    前記アクチュエータを駆動制御する制御装置であって、前記アクチュエータへ充電及び放電する充放電制御により前記アクチュエータに印加される印加電圧特性の電圧状態を切換える駆動回路を有する制御装置と、
    を備え、
    前記制御装置において前記駆動回路は、
    前記アクチュエータにおいて伸縮により変位する変位位置範囲のうちの中間位置を、前記アクチュエータを充放電制御する初期位置として設定し、
    前記第1弁部材の開弁時において充電及び放電の一方を制御し、前記アクチュエータの変位位置を、前記初期位置から一方向に変位させ、
    前記第2弁部材の開弁時において充電及び放電の他方を制御し、前記アクチュエータの変位位置を、前記初期位置から他方向に変位させることを特徴とする燃料噴射装置。
  2. 前記制御装置は、前記第1弁部材を駆動する第1モードと、前記第2弁部材を駆動する第2モードとを、前記駆動回路の充放電制御により切換えられる前記電圧状態の制御モードとして設定し、
    前記第1モードにおいて前記駆動回路は、前記第1弁部材の開弁時において前記初期位置に対応する初期電圧から所定の電位差を形成する一方、前記第1弁部材の閉弁時において前記所定の電位差が形成された電圧状態から前記初期電圧に戻すと共に、
    前記第2モードにおいて前記駆動回路は、前記第2弁部材の開弁時において前記初期電圧から前記所定の電位差に相反する電位差を形成する一方、前記第2弁部材の閉弁時において前記相反する電位差が形成された電圧状態から前記初期電圧に戻すことを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射装置。
  3. 前記第1液圧室及び前記第2液圧室は、前記第1液圧室及び前記第2液圧室の双方に液圧的に連結する共通の液密室であって、前記第1弁部材及び前記第2弁部材と、前記アクチュエータとの間に配置される液密室を有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料噴射装置。
  4. 前記第1液圧室及び前記第2液圧室は、双方が液圧的に連結する構成であって、前記第1液圧室及び前記第2液圧室のうちの特定液圧室が、前記アクチュエータ側の変位面と液圧的に直接連結する構成としたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料噴射装置。
  5. 前記第1弁部材及び前記第2弁部材は、前記燃料噴射弁内において内外二重に同軸的に配置され、
    前記アクチュエータは、前記第1弁部材及び前記第2弁部材を独立的に駆動する共通のアクチュエータであることを特徴する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の燃料噴射装置。
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