JP2010111837A - 導電性エラストマーの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 導電性エラストマーの製造方法を、水と混和しない有機溶剤および水を含む混合溶媒中、式(I)[M(XARn)m]で示される有機プロトン酸またはその塩の存在下、−15℃以下の温度にてアニリンを化学酸化重合させることによりポリアニリン誘導体を得るポリアニリン誘導体合成工程と、該ポリアニリン誘導体と、ウレタン結合を有するエラストマーと、を混合するエラストマー混合工程と、を有するよう構成する。
【選択図】 なし
Description
[式(I)中、
Mは、水素原子、有機遊離基、無機遊離基から選ばれる一種であり、
Xは、酸性基であり、
Aは、置換基を含んでもよい炭化水素基であり、
Rは、−R1、−OR1、−COR1、−COOR1、−CO(COR1)、−CO(COOR1)から選ばれる一種であり{R1は、炭素数が4以上の置換基を含んでもよい炭化水素基、シリル基、アルキルシリル基、−(R2O)x−R3基、−(OSiR3 2)x−OR3基(R2はアルキレン基、R3は各々同一でも異なってもいてもよい炭化水素基、xは1以上の整数)から選ばれる一種}、
nは、2以上の整数であり、
mは、Mの価数である。]
本発明の製造方法によると、ポリアニリン誘導体合成工程において、有機溶剤と水との二相系、具体的には、油分の中の水滴中(W/Oミセル)で、アニリンの化学酸化重合を行う。これにより、−15℃以下という低温下においても、重合が可能となる。また、アニリンを−15℃以下で重合することにより、直鎖状に規則的に配列した、極めて高分子量のポリアニリン誘導体を得ることができる。直鎖状で分子量が大きいため、得られるポリアニリン誘導体の導電性は高い。
本工程は、水と混和しない有機溶剤および水を含む混合溶媒中、次式(I)で示される有機プロトン酸またはその塩の存在下、−15℃以下の温度にてアニリンを化学酸化重合させることによりポリアニリン誘導体を得る工程である。
[式(I)中、
Mは、水素原子、有機遊離基、無機遊離基から選ばれる一種であり、
Xは、酸性基であり、
Aは、置換基を含んでもよい炭化水素基であり、
Rは、−R1、−OR1、−COR1、−COOR1、−CO(COR1)、−CO(COOR1)から選ばれる一種であり{R1は、炭素数が4以上の置換基を含んでもよい炭化水素基、シリル基、アルキルシリル基、−(R2O)x−R3基、−(OSiR3 2)x−OR3基(R2はアルキレン基、R3は各々同一でも異なってもいてもよい炭化水素基、xは1以上の整数)から選ばれる一種}、
nは、2以上の整数であり、
mは、Mの価数である。]
アニリンの化学酸化重合に使用する混合溶媒は、水と混和しない有機溶剤と、水と、を含む。水は、酸性水溶液として存在していてもよい。また、水は、開始剤等を溶解した水溶液として添加されてもよい。水と混和しない有機溶剤は、例えば、オクタン、ヘキサン、ヘプタンベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン等の炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン等の含ハロゲン系溶剤、酢酸エチル等のエステル系溶剤等が挙げられる。なかでも、低温下でも粘度が低いという理由から、オクタン、トルエン等が好適である。
M(XCR4(CR5 2COOR6)COOR7)p ・・・(II)
式(II)において、Mは、上記式(I)と同様に、水素原子、有機遊離基、無機遊離基から選ばれる一種である。Xも、上記式(I)と同様に、酸性基である。pは、Mの価数である。
M(O3SCH(CH2COOR12)COOR13)m ・・・(III)
式(III)において、Mおよびmは、上記式(I)と同じである。また、R12、R13は、各々独立して、炭化水素基または−(R14O)r−R15基である。ここで、R14は炭化水素基またはシリレン基であり、R15は水素原子、炭化水素基、R16 3Si−基(R16は炭化水素基であり、3つのR16は同一でも異なっていてもよい)から選ばれる一種であり、rは1以上の整数である。なお、rは1〜10であることが望ましい。
本工程は、先の工程で合成されたポリアニリン誘導体と、ウレタン結合を有するエラストマーと、を混合する工程である。ウレタン結合を有するエラストマー(以下、適宜「ウレタンエラストマー」と称す)の種類は、特に限定されるものではない。例えば、エーテル系、エステル系、カプロラクトン系、アクリル系、脂肪族系等のウレタンエラストマーや、それにシリコーン系ポリオールまたはフッ素系ポリオールを共重合させたもの等を用いることができる。なかでも、ポリアニリン誘導体との相溶性が良好であるという理由から、ポリエステル系ウレタンエラストマーおよびポリカプロラクトン系ウレタンエラストマーから選ばれる一種以上が好適である。
まず、イソオクタン237mLに対して、ジイソオクチルスルホコハク酸ナトリウム(和光純薬工業(株)製「エーロゾルOT」)22.2g(50mmol)を添加し、攪拌して溶解させた。続いて、この溶液に、−10℃下で、過硫酸アンモニウム水溶液(過硫酸アンモニウム5.71g(25mmol)/水13mL)を添加し、W/Oミセルを形成させた。さらに、同溶液に、メタンスルホン酸4.81g(50mmol)を添加した。次に、この溶液を−20℃下で撹拌しながら、アニリン2.33g(25mmol)/エタノール37mL/イソオクタン200mL混合液を滴下して、化学酸化重合を開始した。重合は24時間とした。重合終了後、反応溶液を分液ロートに移し、二層に分離した反応溶液から水相を除いて、有機相をイオン交換水で2回、1N塩酸で2回洗浄した。目的物を含む溶液から揮発分(有機溶剤)を減圧留去して、固形状のポリアニリン誘導体を得た。
(1)ポリカプロラクトン系ウレタンエラストマー
まず、ポリカプロラクトンジオール(数平均分子量:2000)90重量部を、メチルエチルケトン(MEK)に、固形分重量が30重量%となるように溶解した。次に、触媒のジブチル錫ジラウレートを0.02重量部加え、80℃に保ち攪拌しながら、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートを12.5重量部添加し、さらに、1,6−ヘキサンジオール0.59重量部を添加して、ポリカプロラクトン系ウレタンエラストマー(数平均分子量:65,000)を得た。得られたポリカプロラクトン系ウレタンエラストマーの構造式を、以下の構造式(c)に示す。構造式(c)中、m:n:p=1:10:170である。
まず、5−ナトリウムスルホイソフタル酸84.1重量部、1,6−ヘキサンジオール155.8重量部、およびネオペンチルグリコール321.7重量部を混合し、200℃で5時間エステル交換反応を行った。続いて、アジピン酸334.7重量部およびテレフタル酸224.3重量部を加えて、200℃で10時間反応させた。その後、反応系を3時間かけて約0.27×105Paまで減圧し、さらに約6.67×102〜0.27×104Pa、210℃で2時間重縮合反応を行い、ポリエステルジオール(数平均分子量:2000)を得た。次に、得られたポリエステルジオール90重量部を、MEKに、固形分重量が30重量%となるように溶解した。そして、触媒のジブチル錫ジラウレートを0.02重量部加え、80℃に保ち攪拌しながら、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートを12.5重量部添加し、さらに、1,6−ヘキサンジオール1.18重量部を添加して、スルホン酸官能基を有するポリエステル系ウレタンエラストマー(数平均分子量:50,000、スルホン酸官能基量:0.2mmol/g)を得た。得られたポリエステル系ウレタンエラストマーの構造式を、以下の構造式(d)に示す。構造式(d)中、X:Y:Z:m:n:p=4.3:9.6:8.2:1:2:7.3である。
(1)実施例
まず、製造したポリアニリン誘導体30重量部を、トルエン600重量部に溶解し、ポリアニリン誘導体の5重量%トルエン溶液を調製した。また、製造した二種類のウレタンエラストマー70重量部を、各々、テトラヒドロフラン(THF)1500重量部に溶解し、二種類のエラストマーTHF溶液を調製した。次に、ポリアニリン誘導体のトルエン溶液を、二種類のエラストマーTHF溶液に各々添加して、攪拌した後、超音波分散した。さらに、二次ドーパントのm−クレゾール120重量部を添加して、超音波分散し、エラストマーの種類が異なる二種類の導電性エラストマーを得た。ポリカプロラクトン系ウレタンエラストマーを用いた導電性エラストマーを実施例1とし、ポリエステル系ウレタンエラストマーを用いた導電性エラストマーを実施例2とした。
ウレタンエラストマーに代えて、ポリアクリル酸ブチルを用いた以外は、上記実施例と同様にして、導電性ポリマーを製造した。得られた導電性ポリマーを、比較例1とした。
製造した導電性エラストマーおよび導電性ポリマー(以下、適宜「導電性エラストマー等」と称す)から薄膜を作製し、薄膜の物性等を評価した。薄膜は、評価項目別に、以下の二種類作製した。一つ目は、透明性および導電性の評価用として、スピンコート法により、後出の表1に示す膜厚の薄膜を作製した(以下「薄膜A」と称す)。スピンコートは、回転速度1000rpmで1分間行った。その後、60℃下で30分、真空乾燥させた。二つ目は、柔軟性の評価用として、キャスト法により、膜厚約20μmの薄膜を作製した(以下「薄膜B」と称す)。すなわち、導電性エラストマー等のTHF溶液を、アプリケータにより基材上にキャスティングし、60℃下で30分乾燥させた。
薄膜Aの全透過率を測定した。測定は、日本分光(株)製の紫外可視近赤外分光光度計「V−570」を用いて行った。波長400〜800nmの透過率を平均して算出した値を、全透過率とした。
薄膜Aの導電率を、(株)ダイアインスツルメント製の抵抗率計「ロレスタ(登録商標)GP」(JIS K7194(1994)の四探針法に準拠)により測定した。
薄膜Bの引張破壊伸びを、JIS K 7113(1995)に準じて測定した。試験片の形状は1号形とした。
実施例および比較例の薄膜の評価結果を、導電性エラストマー等の組成と併せて、表1に示す。なお、比較例2の薄膜については、使用した導電性ポリマーの原料および製造方法が他の実施例等と異なるため、組成を省略する。
Claims (5)
- 水と混和しない有機溶剤および水を含む混合溶媒中、次式(I)で示される有機プロトン酸またはその塩の存在下、−15℃以下の温度にてアニリンを化学酸化重合させることによりポリアニリン誘導体を得るポリアニリン誘導体合成工程と、
該ポリアニリン誘導体と、ウレタン結合を有するエラストマーと、を混合するエラストマー混合工程と、
を有することを特徴とする導電性エラストマーの製造方法。
M(XARn)m ・・・(I)
[式(I)中、
Mは、水素原子、有機遊離基、無機遊離基から選ばれる一種であり、
Xは、酸性基であり、
Aは、置換基を含んでもよい炭化水素基であり、
Rは、−R1、−OR1、−COR1、−COOR1、−CO(COR1)、−CO(COOR1)から選ばれる一種であり{R1は、炭素数が4以上の置換基を含んでもよい炭化水素基、シリル基、アルキルシリル基、−(R2O)x−R3基、−(OSiR3 2)x−OR3基(R2はアルキレン基、R3は各々同一でも異なってもいてもよい炭化水素基、xは1以上の整数)から選ばれる一種}、
nは、2以上の整数であり、
mは、Mの価数である。] - 前記混合溶媒における、前記水と前記有機溶剤との体積比率(水/有機溶剤)は、2/1〜200/1である請求項1に記載の導電性エラストマーの製造方法。
- 前記ポリアニリン誘導体合成工程と前記エラストマー混合工程との間、または該エラストマー混合工程の後に、フェノール性水酸基を有する化合物を二次ドーパントとして添加する二次ドーパント添加工程を有する請求項1または請求項2に記載の導電性エラストマーの製造方法。
- 前記ウレタン結合を有するエラストマーは、ポリエステル系ウレタンエラストマーおよびポリカプロラクトン系ウレタンエラストマーから選ばれる一種以上である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の導電性エラストマーの製造方法。
- 前記ウレタン結合を有するエラストマーは、さらにスルホン酸官能基を有する請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の導電性エラストマーの製造方法。
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