JP2010111631A - 虚血性心血管系疾患の治療剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】虚血性心血管系疾患の治療に有用な新規治療的血管新生療法を提供すること。
【解決手段】本発明では次の手段を提供する:セマフォリン3Eの特異的受容体であるプレキシンD1の膜外領域のアミノ酸配列からなるポリペプチド、該アミノ酸配列と相同性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド、および前記いずれかのポリペプチドを含むポリペプチドから選ばれるポリペプチドであって、セマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する作用を有するポリヌクレオチドを含む虚血性心血管系疾患の治療剤、並びに血管新生促進剤;前記いずれかのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む虚血性心血管系疾患の治療剤、並びに血管新生促進剤;前記ポリペプチドまたは前記ポリヌクレオチドを対象に投与することを含む、虚血性心血管系疾患の治療方法、並びに血管新生促進方法;およびセマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有する化合物の同定方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、セマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害することを特徴とする、虚血性心血管系疾患を治療する薬剤および方法、並びに血管新生の促進剤および促進方法に関する。より具体的には本発明は、セマフォリン3Eの特異的受容体であるプレキシンD1の膜外領域のアミノ酸配列からなるポリペプチド、該アミノ酸配列と相同性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド、および前記いずれかのポリペプチドを含むポリペプチドから選ばれるポリペプチドであって、セマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する作用を有するポリペプチドを含む虚血性心血管系疾患の治療剤、並びに血管新生促進剤に関する。また本発明は、前記いずれかのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む虚血性心血管系疾患の治療剤、並びに血管新生促進剤に関する。また本発明は、前記ポリペプチドまたは前記ポリヌクレオチドを対象に投与することを含む、虚血性心血管系疾患の治療方法、並びに血管新生促進方法に関する。さらに本発明は、セマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有する化合物の同定方法に関する。
セマフォリン(smaphorin)は胚発生過程で神経の進むべき方向性を決定する軸策ガイダンス(Axon guidance)因子として同定されてきた分子群である。軸策ガイダンスとは神経細胞から伸びた軸索を、神経結合を成立させる標的細胞付近まで適切に誘導することを意味する。セマフォリンは、神経軸索の伸張を抑制する反発因子として作用し、末梢神経系における正確な軸索ガイダンスに関与する。
セマフォリン分子は、アミノ末端に約420アミノ酸残基からなるsemaドメインを保存領域として持つことを特徴とし、現在までに20種類以上が同定され、巨大なファミリーを作っている。分泌型、細胞膜貫通型、細胞膜結合型などがあり、構造類似性により8種類に分類されている。クラス3-7は脊椎動物で発見され、クラス3は分泌型、クラス7はGPI(Glycosylphosphatidylinositol)結合型であり、クラス4-6は膜貫通型のタンパク質である。
セマフォリンの受容体としてニューロピリンとプレキシンの二種類が知られている。ニューロピリンおよびプレキシンもそれぞれ遺伝子ファミリーを形成する。ニューロピリンは、クラス3のセマフォリンに特異的に結合する。また、プレキシンはsemaドメインを持ち、膜貫通セマフォリンの機能的なレセプターとして、また、ニューロピリンと複合体を形成することによりクラス3セマフォリンのシグナルパートナーとして機能する。
セマフォリン分子群およびそれらの受容体であるプレキシン分子群はまた、胚発生過程で血管の形態を調節し、そして血管の網状組織の発達に重要な役割を果たすことが報告されている(非特許文献1、非特許文献2)。しかしながら、これら分子が生後の血管新生に関与するかは明らかにされていない。
成人における脈管形成の根底を成すメカニズムについては、胚発生過程における脈管形成メカニズムと同様に最近その理解に進展がみられ、それにより、従来の治療法を選択できない患者に対する新しい治療手段が利用できるようになってきている(非特許文献3)。これら新規治療は治療的血管新生療法と呼ばれ、向血管新生因子群(pro-angiogenicfactors)や幹細胞・始原細胞(stem/progenitor cells)を虚血性心血管系疾患の治療に使用する(非特許文献4、非特許文献5)。例えば、血管内皮成長因子(vascular endothelial growth factor、以下VEGFと略称することがある)による閉塞性動脈硬化症などの虚血性疾患への遺伝子治療が欧米を中心に展開されている。しかしながら、最近の臨床試験では、虚血性心血管系疾患を伴う患者における治療的血管新生療法は、利点が乏しい、あるいは利点がないと報告されており、それは患者がアテローム性動脈硬化に関する複数のリスク因子を抱えておりそのため治療に対する反応性が損なわれていることに起因する(非特許文献6、非特許文献7)。したがって、これら患者に対する新規な治療的血管新生療法戦略を開発することが重要である。
最近、セマフォリン群を含むいくつかの軸策誘導因子が血管の網状組織の形成にきわめて重要な役割を果たすことが示されてきた(非特許文献1、非特許文献8)。セマフォリン群およびその受容体群プレキシンは、現在では、軸策を反発するまたは引き付けるシグナリング分子(非特許文献9、非特許文献10)であるのみならず、多様な器官や組織で形態形成および恒常性維持の重要な調節因子であると認識されている(非特許文献11)。
また、プレキシンD1によりコードされるタンパク質の膜外領域とイムノグロブリンG1(以下、IgG1と略称することがある)のFc部分との融合ポリペプチドが、新生仔マウス網膜血管発生を阻害することが報告されている(特許文献1)。
セマフォリン3E(以下、sema3Eと略称することがある)はクラス3セマフォリンの1つであるが、その特異的受容体はプレキシンD1であり、ニューロピリンとは結合せず、また、ニューロピリンを補助受容体として必要としないことが知られている(非特許文献12)。セマフォリン3Eは、直接プレキシンD1と相互作用して胚発生時の脈管発達のパターンの調節に重要な役割を示すことが報告されている(非特許文献13、非特許文献14)。しかしながら、成体における血管新生へのセマフォリン3EやプレキシンD1の関与は明らかになっていない。
国際公開第2005/056791号パンフレット。 Carmeliet,P. & Tessier-Lavigne, M. Common mechanisms of nerve and blood vesselwiring. Nature 436, 193-200 (2005). Dickson,B.J. Molecular mechanisms of axon guidance. Science 298, 1959-64 (2002). Carmeliet,P. Mechanisms of angiogenesis and arteriogenesis. Nat Med 6, 389-95 (2000). Losordo,D.W. & Dimmeler, S. Therapeutic angiogenesis and vasculogenesis forischemic disease. Part I: angiogenic cytokines. Circulation 109, 2487-91(2004). Losordo,D.W. & Dimmeler, S. Therapeutic angiogenesis and vasculogenesis forischemic disease: part II: cell-based therapies. Circulation 109, 2692-7(2004). Jolicoeur,E.M. et al. Bringing cardiovascular cell-based therapy to clinical application:perspectives based on a National Heart, Lung, and Blood Institute Cell TherapyWorking Group meeting. Am Heart J 153, 732-42 (2007). Rissanen,T.T. & Yla-Herttuala, S. Current status of cardiovascular gene therapy. MolTher 15, 1233-47 (2007). Neufeld, G.& Kessler, O. The semaphorins: versatile regulators of tumour progressionand tumour angiogenesis. Nat Rev Cancer 8, 632-45 (2008). Luo, Y.,Raible, D. & Raper, J.A. Collapsin: a protein in brain that induces thecollapse and paralysis of neuronal growth cones. Cell 75, 217-27 (1993). Tamagnone,L. et al. Plexins are a large family of receptors for transmembrane, secreted,and GPI-anchored semaphorins in vertebrates. Cell 99, 71-80 (1999). Kruger,R.P., Aurandt, J. & Guan, K.L. Semaphorins command cells to move. Nat RevMol Cell Biol 6, 789-800 (2005). Gu, C. etal. Semaphorin 3E and plexin-D1 control vascular pattern independently ofneuropilins. Science 307, 265-8 (2005). Gitler,A.D., Lu, M.M. & Epstein, J.A. PlexinD1 and semaphorin signaling arerequired in endothelial cells for cardiovascular development. Dev Cell 7,107-16 (2004). Torres-Vazquez,J. et al. Semaphorin-plexin signaling guides patterning of the developingvasculature. Dev Cell 7, 117-23 (2004).
本発明の目的は、虚血性心血管系疾患治療に有用な新規治療的血管新生療法を開発する手段を提供することである。
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意研究を行い、クラス3セマフォリンの1つであるsema3Eが、ヒト臍帯静脈内皮細胞(human umbilical vein endothelial cells、以下HUVECsと略称することがある)のインビトロでの増殖および管形成に対するVEGFの増強作用を著しく抑制すること、また、該抑制は、sema3Eと結合してその機能を阻害するポリペプチドにより阻害されることを見出した。また本発明者らは、マウスの虚血肢において、sema3EおよびプレキシンD1の発現が著しく増加方向に調節されていること、そしてsema3Eと結合してその機能を阻害するポリペプチドを該虚血肢で発現させることにより血管形成の著しい改善が認められることを見出した。さらに本発明者らは、糖尿病モデルマウスでsema3Eの発現がp53の発現と共に増加していること、および、VEGF処理後も虚血組織における新規血管形成が乏しかったが、sema3Eと結合してその機能を阻害するポリペプチドおよびVEGFを該虚血組織で発現させると新規血管形成が著しく改善されることを見出した。これら知見から、本発明者らは、sema3EがプレキシンD1受容体を介して血管新生抑制作用を示すこと、並びに、sema3Eの血管新生抑制作用の阻害が、治療的血管新生療法のための、特にVEGFによる血管新生効果が認められない症例の治療のための、新規戦略となり得ることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、下記(i)〜(v)からなる群から選ばれるポリペプチドを含む、虚血性心血管系疾患の治療剤に関する
(i)配列番号1に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチド、
(ii)配列番号1に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性を有するアミノ酸配列で表わされるポリペプチドであって、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチド、
(iii)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1乃至10個のアミノ酸の変異を有するポリペプチドであって、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチド、
(iv)前記(i)から(iii)のいずれかのポリペプチドを含むポリペプチドであって、かつsema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチド、および
(v)前記(i)から(iii)のいずれかのポリペプチドとイムノグロブリンG1のFc部分のポリペプチドとの融合ポリペプチドであって、かつsema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチド。
また本発明は、下記(vi)〜(xi)からなる群から選ばれるポリヌクレオチドを含む、虚血性心血管系疾患の治療剤に関する
(vi)配列番号1に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(vii)配列番号2に記載の塩基配列で表される前記(vi)のポリヌクレオチド、
(viii)配列番号2に記載の塩基配列と少なくとも90%の相同性を有する塩基配列で表わされるポリヌクレオチドであって、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(ix)配列番号2に記載の塩基配列において、1乃至30個のヌクレオチドの変異を有するポリヌクレオチドであって、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(x)前記(vi)から(ix)のいずれかのポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドであって、かつsema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および
(xi)前記(vi)から(ix)のいずれかのポリヌクレオチドとイムノグロブリンG1のFc部分のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとの融合ポリヌクレオチドであって、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
さらに本発明は、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドとイムノグロブリンG1のFc部分のポリペプチドとの融合ポリペプチドを含む、虚血性心血管系疾患の治療剤に関する。
さらにまた本発明は、配列番号2に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドとイムノグロブリンG1のFc部分のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとの融合ポリヌクレオチドを含む、虚血性心血管系疾患の治療剤に関する。
また本発明は、VEGFおよび/またはVEGFをコードするポリヌクレオチドをさらに含む、前記いずれかの治療剤に関する。
さらに本発明は、虚血性心血管系疾患が糖尿病に合併する虚血性心血管系疾患である前記いずれかの治療剤に関する。
さらにまた本発明は、下記(i)〜(v)からなる群から選ばれるポリペプチドを含む、血管新生促進剤に関する
(i)配列番号1に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチド、
(ii)配列番号1に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性を有するアミノ酸配列で表わされるポリペプチドであって、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチド、
(iii)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1乃至10個のアミノ酸の変異を有するポリペプチドであって、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチド、
(iv)前記(i)から(iii)のいずれかのポリペプチドを含むポリペプチドであって、かつsema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチド、および
(v)前記(i)から(iii)のいずれかのポリペプチドとイムノグロブリンG1のFc部分のポリペプチドとの融合ポリペプチドであって、かつsema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチド。
また本発明は、下記(vi)〜(xi)からなる群から選ばれるポリヌクレオチドを含む、血管新生促進剤に関する
(vi)配列番号1に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(vii)配列番号2に記載の塩基配列で表される前記(vi)のポリヌクレオチド、
(viii)配列番号2に記載の塩基配列と少なくとも90%の相同性を有する塩基配列で表わされるポリヌクレオチドであって、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(ix)配列番号2に記載の塩基配列において、1乃至30個のヌクレオチドの変異を有するポリヌクレオチドであって、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(x)前記(vi)から(ix)のいずれかのポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドであって、かつsema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および
(xi)前記(vi)から(ix)のいずれかのポリヌクレオチドとイムノグロブリンG1のFc部分のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとの融合ポリヌクレオチドであって、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
さらに本発明は、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドとイムノグロブリンG1のFc部分のポリペプチドとの融合ポリペプチドを含む、血管新生促進剤に関する。
さらにまた本発明は、配列番号2に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドとイムノグロブリンG1のFc部分のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとの融合ポリヌクレオチドを含む、血管新生促進剤に関する。
また本発明は、下記(i)〜(v)からなる群から選ばれるポリペプチドを対象に投与することを含む、虚血性心血管系疾患の治療方法に関する
(i)配列番号1に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチド、
(ii)配列番号1に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性を有するアミノ酸配列で表わされるポリペプチドであって、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチド、
(iii)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1乃至10個のアミノ酸の変異を有するポリペプチドであって、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチド、
(iv)前記(i)から(iii)のいずれかのポリペプチドを含むポリペプチドであって、かつsema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチド、および
(v)前記(i)から(iii)のいずれかのポリペプチドとイムノグロブリンG1のFc部分のポリペプチドとの融合ポリペプチドであって、かつsema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチド。
さらに本発明は、下記(vi)〜(xi)からなる群から選ばれるポリヌクレオチドを対象に投与することを含む、虚血性心血管系疾患の治療方法に関する
(vi)配列番号1に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(vii)配列番号2に記載の塩基配列で表される前記(vi)のポリヌクレオチド、
(viii)配列番号2に記載の塩基配列と少なくとも90%の相同性を有する塩基配列で表わされるポリヌクレオチドであって、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(ix)配列番号2に記載の塩基配列において、1乃至30個のヌクレオチドの変異を有するポリヌクレオチドであって、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(x)前記(vi)から(ix)のいずれかのポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドであって、かつsema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および
(xi)前記(vi)から(ix)のいずれかのポリヌクレオチドとイムノグロブリンG1のFc部分のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとの融合ポリヌクレオチドであって、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
さらにまた本発明は、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドとイムノグロブリンG1のFc部分のポリペプチドとの融合ポリペプチドを対象に投与することを含む、虚血性心血管系疾患の治療方法に関する。
また本発明は、配列番号2に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドとイムノグロブリンG1のFc部分のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとの融合ポリヌクレオチドを対象に投与することを含む、虚血性心血管系疾患の治療方法に関する。
さらに本発明は、VEGFおよび/またはVEGFをコードするポリヌクレオチドを対象にさらに投与することを含む、前記いずれかの治療方法に関する。
さらにまた本発明は、虚血性心血管系疾患が糖尿病に合併する虚血性心血管系疾患である前記いずれかの治療方法に関する。
また本発明は、下記(i)〜(v)からなる群から選ばれるポリペプチドを対象に投与することを含む、血管新生促進方法に関する
(i)配列番号1に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチド、
(ii)配列番号1に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性を有するアミノ酸配列で表わされるポリペプチドであって、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチド、
(iii)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1乃至10個のアミノ酸の変異を有するポリペプチドであって、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチド、
(iv)前記(i)から(iii)のいずれかのポリペプチドを含むポリペプチドであって、かつsema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチド、および
(v)前記(i)から(iii)のいずれかのポリペプチドとイムノグロブリンG1のFc部分のポリペプチドとの融合ポリペプチドであって、かつsema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチド。
さらに本発明は、下記(vi)〜(xi)からなる群から選ばれるポリヌクレオチドを対象に投与することを含む、血管新生促進方法に関する
(vi)配列番号1に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(vii)配列番号2に記載の塩基配列で表される前記(vi)のポリヌクレオチド、
(viii)配列番号2に記載の塩基配列と少なくとも90%の相同性を有する塩基配列で表わされるポリヌクレオチドであって、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(ix)配列番号2に記載の塩基配列において、1乃至30個のヌクレオチドの変異を有するポリヌクレオチドであって、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(x)前記(vi)から(ix)のいずれかのポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドであって、かつsema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および
(xi)前記(vi)から(ix)のいずれかのポリヌクレオチドとイムノグロブリンG1のFc部分のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとの融合ポリヌクレオチドであって、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
さらにまた本発明は、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドとイムノグロブリンG1のFc部分のポリペプチドとの融合ポリペプチドを対象に投与することを含む、血管新生促進方法に関する。
また本発明は、配列番号2に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドとイムノグロブリンG1のFc部分のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとの融合ポリヌクレオチドを対象に投与することを含む、血管新生促進方法に関する。
さらに本発明は、虚血性心血管系疾患の治療剤または血管新生促進剤の製造における、下記(i)〜(v)からなる群から選ばれるポリペプチドの使用に関する
(i)配列番号1に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチド、
(ii)配列番号1に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性を有するアミノ酸配列で表わされるポリペプチドであって、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチド、
(iii)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1乃至10個のアミノ酸の変異を有するポリペプチドであって、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチド、
(iv)前記(i)から(iii)のいずれかのポリペプチドを含むポリペプチドであって、かつsema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチド、および
(v)前記(i)から(iii)のいずれかのポリペプチドとイムノグロブリンG1のFc部分のポリペプチドとの融合ポリペプチドであって、かつsema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチド。
さらにまた本発明は、虚血性心血管系疾患の治療剤または血管新生促進剤の製造における、下記(vi)〜(xi)からなる群から選ばれるポリヌクレオチドの使用に関する
(vi)配列番号1に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(vii)配列番号2に記載の塩基配列で表される前記(vi)のポリヌクレオチド、
(viii)配列番号2に記載の塩基配列と少なくとも90%の相同性を有する塩基配列で表わされるポリヌクレオチドであって、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(ix)配列番号2に記載の塩基配列において、1乃至30個のヌクレオチドの変異を有するポリヌクレオチドであって、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(x)前記(vi)から(ix)のいずれかのポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドであって、かつsema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および
(xi)前記(vi)から(ix)のいずれかのポリヌクレオチドとイムノグロブリンG1のFc部分のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとの融合ポリヌクレオチドであって、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
また本発明は、虚血性心血管系疾患の治療剤または血管新生促進剤の製造における、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドとイムノグロブリンG1のFc部分のポリペプチドとの融合ポリペプチドの使用に関する。
さらに本発明は、虚血性心血管系疾患の治療剤または血管新生促進剤の製造における、配列番号2に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドとイムノグロブリンG1のFc部分のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとの融合ポリヌクレオチドの使用に関する。
さらにまた本発明は、下記(1)〜(3)の工程を含む、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有する化合物の同定方法に関する
(1)被検化合物をsema3Eおよび/またはプレキシンD1と接触させる工程、
(2)sema3EとプレキシンD1の結合を測定する工程、
(3)sema3EとプレキシンD1の結合を阻害する被検化合物を、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有する化合物として選択する工程。
また本発明は、プレキシンD1が培養細胞に発現されているプレキシンD1である前記同定方法に関する。
さらに本発明は、sema3Eの血管新生抑制作用が、VEGFによる血管新生に対するsema3Eの血管新生抑制作用である前記同定方法に関する。
さらにまた本発明は、下記(1)〜(3)の工程を含む、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有する化合物の同定方法に関する
(1)被検化合物をsema3Eおよび/またはプレキシンD1を発現する細胞と接触させる工程、
(2)sema3Eおよび/またはプレキシンD1の発現を測定する工程、
(3)sema3Eおよび/またはプレキシンD1の発現を阻害する被検化合物を、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有する化合物として選択する工程。
また本発明は、下記(1)〜(4)の工程を含む、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有する化合物の同定方法に関する
(1)被検化合物を、VEGF受容体およびプレキシンD1を発現した培養血管内皮細胞と接触させる工程、
(2)VEGF、または、VEGFおよびsema3Eを上記細胞に接触させる工程
(3)細胞の増殖および/または脈管形成を測定する工程、
(4)細胞の増殖および/または脈管形成を促進する被検化合物を、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有する化合物として選択する工程。
本発明によれば、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害することを特徴とする、虚血性心血管系疾患を治療する薬剤および方法、並びに血管新生の促進剤および促進方法を提供できる。具体的には、本発明により、sema3Eの特異的受容体であるプレキシンD1の膜外領域のアミノ酸配列からなるポリペプチド、該アミノ酸配列と相同性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド、および前記いずれかのポリペプチドを含むポリペプチドから選ばれるポリペプチドであって、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する作用を有するポリペプチドを含む虚血性心血管系疾患の治療剤、並びに血管新生促進剤を提供できる。また本発明により、前記いずれかのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む虚血性心血管系疾患の治療剤、並びに血管新生促進剤を提供できる。また本発明により、前記ポリペプチドまたは前記ポリヌクレオチドを対象に投与することを含む、虚血性心血管系疾患の治療方法、並びに血管新生促進方法を提供できる。本治療剤は、VEGFおよび/またはVEGFをコードするポリヌクレオチドをさらに含むことができる。本治療方法は、VEGFおよび/またはVEGFをコードするポリヌクレオチドをさらに投与することができる。
本発明に係る虚血性心血管系疾患の治療剤および治療方法は、例えば糖尿病に合併する虚血性心血管系疾患の治療に有用である。あるいは、VEGFによる治療効果が低いまたは認められない虚血性心血管系疾患症例、例えば糖尿病に合併する虚血性心血管系疾患の治療に有用である。
さらに本発明によれば、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有する化合物の同定方法を提供することができる。
本発明は、このように、医薬分野において優れた効果を示すものである。
本発明は、sema3Eが血管新生抑制作用を有すること、虚血組織においてsema3Eおよびその特異的受容体であるプレキシンD1の発現が増加していること、並びにsema3Eの血管新生抑制作用を阻害するポリペプチドにより、VEGFによるHUVECのインビトロでの増殖および脈管形成の増加に対するsema3Eの抑制作用が阻害されること、および虚血組織における血流回復が改善されることを見出し、それより達成したものである。具体的には、後述する実施例に示すように、sema3Eは、VEGFによるHUVECのインビトロでの増殖および脈管形成の増加を有意に抑制した(実施例1参照)。また、sema3EはVEGFの細胞内情報伝達経路において重要なリン酸化酵素である細胞外シグナル調節キナーゼ(extracellular signal-regulated kinase、ERK)およびAktのリン酸化を阻害した。これらから、sema3EはVEGFの細胞内シグナル伝達経路を阻害することにより血管新生を負に調節すると考えることができる。一方、VEGFによるHUVECのインビトロでの増殖および脈管形成の増加に対するsema3Eの抑制作用は、sema3Eと結合してその機能を阻害するポリペプチドにより阻害された(実施例1参照)。マウス後肢急性虚血モデルにおいては、sema3Eおよびその特異的受容体プレキシンD1の発現が増加しており、また、sema3Eと結合してその機能を阻害するポリペプチドを虚血肢で発現させることにより無処理の虚血肢と比較して血流回復が改善された(実施例2参照)。虚血肢におけるsema3E発現の増加は、血中酸素減少により誘導されるp53に依存的な経路によることが判明し、それにより虚血肢では血流回復が阻害されることが示唆された。また、マウス後肢急性虚血モデルにVEGF遺伝子を導入することにより、虚血組織の血流回復および血管面積が増加したが、sema3E遺伝子の導入により該増加は抑制され、さらにsema3Eと結合してその機能を阻害するポリペプチドを虚血肢に発現させることにより、sema3Eによる抑制が改善された(実施例2参照)。これらは、sema3Eおよびその特異的受容体プレキシンD1が生後の血管新生を負に調節することを示唆する。糖尿病モデルマウスの虚血肢においても、VEGF導入による血管新生は、野生型マウスと比較して低下していたが、sema3Eと結合してその機能を阻害するポリヌクレオチドを導入すると、虚血肢における血管新生が改善された(実施例3参照)。
上記sema3Eの血管新生抑制作用を阻害するポリペプチドは、sema3Eの特異的受容体プレキシンD1の膜外領域とIgG1のFc部分との融合ポリペプチドであり、該膜外領域部分においてsema3Eと結合して、sema3EとプレキシンD1との結合を阻害し、その結果、sema3Eの機能を阻害して、虚血組織における血管新生を促進した。該融合ポリペプチドは、新生仔マウス網膜血管発生を阻害することが報告されている(特許文献1)が、本発明においては、該融合ポリペプチドが虚血組織で血管新生を促進することを見出した。本発明で見出した該融合ポリペプチドの作用は、報告されている作用とは全く異なる作用であり、むしろ逆の作用である。
一方、sema3Eと同様にクラス3型セマフォリンに分類されるセマフォリンA(以下、semaAと略称する)が、血管内皮細胞の増殖を抑制すること、および、semaA阻害剤M162により血管内皮細胞の増殖が促進されることに基づき、クラス3型セマフォリンの血管新生抑制剤、および、クラス3型セマフォリンの有する成長円錐退縮縮活性を阻害する物質を含む血管内皮細胞増殖促進剤についての発明が出願されている(国際公開第01/015721号パンフレット)。しかしながら、semaAとsema3Eは、同じ血管内皮細胞増殖抑制作用を示すといっても、そのメカニズムが違うと考えられる。semaAの血管内皮細胞に対する作用は、その受容体であるニューロピリンとプレキシンとの複合体を介する作用であるのに対し、sema3Eの同作用はプレキシンとの結合を介する作用である。sema3Eはニューロピリンとは結合しないことから、semaAの作用とsemaEの作用メカニズムは異なるものであると考えることができる。また、semaAが比較的多くのプレキシンファミリーとニューロピリンを介して結合するのに対し、semaEはプレキシンD1にのみ親和性が非常に高いことが知られている。したがって、プレキシンD1の膜外領域とIgG1のFc部分との上記融合ポリペプチドは、直接的にsemaEの作用を特異的に抑制できる。また、本発明においてsema3Eおよびその特異的受容体プレキシンD1の発現が増加していることを見出したが、semaAの虚血組織で発現については報告がない。
本発明において明らかにした上記知見によれば、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害することにより、虚血組織における血管新生を促進でき、ひいては虚血性心血管系疾患、例えば糖尿病に合併する虚血性心血管系疾患の治療を可能にする。
すなわち、本発明は、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害することを特徴とする、虚血性心血管系疾患を治療する薬剤および方法に関する。
また、本発明は、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害することを特徴とする、血管新生の促進剤および促進方法に関する。
「血管新生」は、発生学や組織学の観点から、広義には2種類に大別される。一方は、発生過程における内皮細胞前駆細胞である血管芽細胞(endothelial progenitor cell)からの新規な脈管形成(vasculogenesis)であり、もう一方は、生後の組織に既に存在する血管系からの内皮細胞増殖による血管枝の形成で狭義の血管新生(angiogenesis)である。生後の血管新生は、狭義の血管形成であると考えられてきたが、最近、虚血組織においてまず血液中に存在する血管内皮前駆細胞による脈管形成が生じ、次いで血管系に存在する内皮細胞の増殖による血管形成が起こることが明らかにされている。本発明において血管新生は、広義の血管新生を意味し、血管内皮前駆細胞による脈管形成および内皮細胞の増殖による血管形成のいずれも含む。
「血管新生抑制作用」とは、新たな血管の形成を低下させる作用、または、新たな血管を形成させなくする作用をいう。
「血管新生抑制作用の阻害」とは、血管新生抑制作用を妨げることをいい、その結果、血管新生抑制を改善し、新たな血管の形成を促進することをいう。
「sema3Eの血管新生抑制作用」とは、新たな血管の形成を低下させるsema3Eの作用、または、新たな血管を形成させなくするsema3Eの作用をいう。sema3Eの血管新生抑制作用は、好ましくはVEGFによる血管新生に対するsema3Eの抑制作用である。
「sema3Eの血管新生抑制作用の阻害」とは、sema3Eの血管新生抑制作用を妨げることをいい、その結果、血管新生抑制を改善し、新たな血管の形成を促進することをいう。sema3Eの血管新生抑制作用の阻害は、好ましくはVEGFによる血管新生に対するsema3Eの抑制作用の阻害である。
「血管新生の促進」とは、血管新生を促進させる前の状態と比較して、新たな血管形成が増加することをいう。血管新生の促進は、血流の増加や血管面積の増加により判定できる。本発明において血管新生の促進とは、好ましくはsema3Eの血管新生抑制作用を妨げて、新たな血管形成を増加させることをいう。
sema3Eの血管新生抑制作用の阻害は、sema3Eとその受容体であるプレキシンD1の結合を阻害すること、sema3Eおよび/またはその受容体であるプレキシンD1の発現を阻害すること、または、sema3E若しくはプレキシンD1の機能を阻害することにより実施できる。言いかえれば、sema3Eの血管新生抑制作用の阻害は、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する化合物、例えば、sema3Eとその受容体であるプレキシンD1の結合を阻害する化合物、sema3Eおよび/またはその受容体であるプレキシンD1の発現を阻害する化合物、または、sema3E若しくはプレキシンD1の機能を阻害する化合物を用いて実施できる。
すなわち、本発明に係る虚血性心血管系疾患の治療剤は、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する化合物のうちの少なくとも1を有効成分としてその有効量含むことを特徴とする。また、本発明に係る虚血性心血管系疾患の治療方法は、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する化合物のうちの少なくとも1を対象に投与することを特徴とする。
「対象」とは、血管新生を誘発させることが好ましい生体を意味する。そのような生体として、虚血性心血管系疾患の患者を挙げることができる。
「虚血性心血管系疾患」は、組織や臓器への十分な血液供給が保たれず、組織や臓器に損傷が与えられる疾患をいい、下肢の血流が低下する末梢性血管疾患(peripheral arterial disease)および心臓の血流が低下する虚血性心疾患を含む。末梢性血管疾患として、具体的には閉塞性動脈硬化症、バージャー病、神経変性疾患、四肢の血行障害、尋常性乾癬などを例示できるが、これらに限定されず、末梢組織への血流の低下に起因して組織障害を生じる疾患であればいずれも含まれる。虚血性心疾患として、具体的には狭心症や心筋梗塞を例示できるが、これらに限定されず、心臓への血流の低下に起因して心臓組織障害を生じる疾患であればいずれも含まれる。糖尿病は、主に動脈硬化による血流低下に起因する数々の合併症を生じることがよく知られており、これら合併症を総称して糖尿病性血管合併症と呼ぶ。糖尿病性血管合併症として、網膜症、腎障害、神経障害などの細小血管障害、並びに、心筋梗塞、脳梗塞、壊疽などの大血管障害を例示できる。本発明に係る虚血性心血管系疾患の治療剤および治療方法は、例えば糖尿病に合併する虚血性心血管系疾患の治療に有用である。あるいは、VEGFによる治療効果が低いまたは認められない虚血性心血管系疾患症例の治療に有用である。
sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する化合物として、sema3Eの特異的受容体プレキシンD1の膜外領域のアミノ酸配列からなるポリペプチドを例示できる。このようなポリペプチドは、sema3Eと結合して、sema3EとプレキシンD1との結合を阻害し、その結果、sema3Eの機能を阻害する。本発明において、単離された若しくは合成の蛋白質;単離された若しくは合成のポリペプチド;または単離された若しくは合成のオリゴペプチドを意味する総称的用語として「ポリペプチド」という用語を使用し、ここでポリペプチド若しくはオリゴペプチドは最小サイズが2アミノ酸である。以降、アミノ酸を表記する場合、1文字または3文字にて表記することがある。
sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する化合物として、具体的には、配列番号1に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチドを例示できる。本ポリペプチドはマウスプレキシンD1の膜外領域のアミノ酸配列からなるポリペプチドである。後述する実施例に示すように、本ポリペプチドとイムノグロブリンG1(以下、IgG1と略称することがある)のFc部分のポリペプチドとの融合ポリペプチド(以下、プレキシンD1-Fcと略称することがある)は、VEGFによるヒト臍帯静脈内皮細胞のインビトロでの増殖および管形成に対するsema3Eの抑制作用を阻害し、該細胞の増殖および管形成を回復させた。このように、本ポリペプチドはマウス由来ではあるが、ヒト細胞にも効果を示す。また、プレキシンD1-Fc融合ポリペプチドにおいてsema3Eと結合する部分はプレキシンD1の膜外領域であるため、プレキシンD1-Fc 融合ポリペプチドのsema3E機能阻害作用はプレキシンD1膜外領域からなるポリペプチドの部分に担われていると考えることができる。したがって、配列番号1に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチドは、それ自体、ヒトにおける血管新生にも効果を示すと考えることができる。
sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する化合物として、配列番号1に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチドの他、該ポリペプチドと配列相同性を有し、かつ、該ポリペプチドと実質的に同質の生物学的機能を有するポリペプチドを例示できる。また、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する化合物として、前記ポリペプチドを含むポリペプチドを例示できる。
配列番号1に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチドと配列相同性を有し、かつ、該ポリペプチドと実質的に同質の生物学的機能を有するポリペプチドとして、ヒトプレキシンD1の膜外領域のアミノ酸配列からなるポリペプチドを挙げることができる。ヒトプレキシンD1は、マウスプレキシンD1と約90%以上の高い配列相同性を有する(特許文献1)。また、ヒトプレキシンD1はsema3Eと結合することが知られている。したがって、ヒトプレキシンD1の膜外領域のアミノ酸配列からなるポリペプチドは、sema3Eと結合して、sema3EとヒトプレキシンD1との結合を阻害し、その結果、sema3Eの機能を阻害すると考えることができる。
また、配列番号1に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチドと配列相同性を有し、かつ、該ポリペプチドと実質的に同質の生物学的機能を有するポリペプチドとして、該アミノ酸配列の一部分のアミノ配列からなるポリペプチドであって、該ポリペプチドと実質的に同質の生物学的機能を有するポリペプチドを例示できる。かかるポリペプチドは、そのアミノ酸配列中にsema3Eとの結合ドメインを有していることが好ましい。かかるポリペプチドは、配列番号1に記載のアミノ酸配列に基づいて適宜設計して作成し、作成されたポリペプチドが、例えば内皮細胞の増殖および/または管形成に対するsema3Eの抑制作用を阻害するか否かを後述する実施例1に記載の如く測定し、該抑制作用を阻害するものを選択することにより取得することができる。
配列番号1に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチド、または該ポリペプチドと配列相同性を有し、かつ、該ポリペプチドと実質的に同質の生物学的機能を有するポリペプチド含むポリペプチドとして、配列番号1に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチド、または該ポリペプチドと配列相同性を有し、かつ、該ポリペプチドと実質的に同質の生物学的機能を有するポリペプチドと、別のポリペプチド、例えばIgGのFc部分、好ましくはIgG1のFc部分のアミノ酸配列で表わされるポリペプチドなどとの融合ポリペプチドを例示できる。好ましくは、IgGのFc部分、より好ましくはIgG1のFc部分のアミノ酸配列で表わされるポリペプチドとの融合ポリペプチドを例示できる。より具体的には、配列番号1に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチドとIgG1のFc部分のアミノ酸配列で表わされるポリペプチドとの融合ポリペプチドを例示できる。
sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する化合物として、また、sema3Eの特異的受容体プレキシンD1の膜外領域のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを例示できる。本ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチド自体、またはベクターに組み込んで、対象の所望の組織、例えば虚血組織で発現させることにより、sema3Eと結合して、sema3EとプレキシンD1との結合を阻害し、sema3Eの機能を阻害する。本発明において、単離された完全長DNAおよび/またはRNA;合成完全長DNAおよび/またはRNA;単離されたDNAオリゴヌクレオチド類および/またはRNAオリゴヌクレオチド類;あるいは合成DNAオリゴヌクレオチド類および/またはRNAオリゴヌクレオチド類を意味する総称的用語として「ポリヌクレオチド」という用語を使用し、ここでそのようなDNAおよび/またはRNAは最小サイズが2ヌクレオチドである。
sema3Eの特異的受容体プレキシンD1の膜外領域のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとして、配列番号1に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを例示できる。該ポリヌクレオチドとして好ましくは配列番号2に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドを例示できる。本ポリヌクレオチドとIgG1のFc部分をコードするポリヌクレオチドとの融合ポリヌクレオチドは、マウス後肢急性虚血モデルの虚血肢、および糖尿病モデルマウスの虚血肢で発現させることにより、sema3Eによる血管新生抑制作用を阻害し、その結果、これらマウスの虚血肢における血流回復を改善した。前記融合ポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドにおいて、sema3Eと結合する部分はプレキシンD1の膜外領域であるため、該ポリペプチドのsema3E機能阻害作用はプレキシンD1膜外領域からなるポリペプチドの部分に担われていると考えることができる。したがって、配列番号1に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをIgG1のFc部分をコードするポリヌクレオチドと融合させずに発現させることによっても、sema3Eによる血管新生抑制作用を阻害することができる。
sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する化合物として、配列番号1に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの他、該ポリヌクレオチドと相同性を有し、かつ、該ポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドと実質的に同質の生物学的機能を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを例示できる。また、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する化合物として、前記ポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを例示できる。
配列番号1に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと配列相同性を有し、かつ、該ポリペプチドと実質的に同質の生物学的機能を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとして、ヒトプレキシンD1の膜外領域のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを挙げることができる。ヒトプレキシンD1は、マウスプレキシンD1と約90%以上の高い配列相同性を有する。したがって、ヒトプレキシンD1の膜外領域のアミノ酸配列からなるポリペプチドは、ヒトプレキシンD1と結合して、sema3EとヒトプレキシンD1との結合を阻害し、その結果、sema3Eの機能を阻害すると考えることができる。すなわち、ヒトプレキシンD1の膜外領域のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチド自体、またはベクターに組み込んで、対象の所望の組織、例えば虚血組織で発現させることにより、sema3Eと結合して、sema3EとヒトプレキシンD1との結合を阻害し、sema3Eの機能を阻害すると考えることができる。
また、配列番号1に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと配列相同性を有し、かつ、該ポリペプチドと実質的に同質の生物学的機能を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとして、該アミノ酸配列の一部分のアミノ配列からなるポリペプチドであって、該ポリペプチドと実質的に同質の生物学的機能を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを例示できる。例えば、配列表の配列番号2に記載の塩基配列の一部分の塩基配列からなるポリヌクレオチドであって、配列番号1に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチドと実質的に同質の生物学的機能を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを挙げることができる。かかるポリヌクレオチドは、その塩基配列中にsema3EとプレキシンD1の結合ドメインをコードする塩基配列を有していることが好ましい。かかるポリヌクレオチドは、配列番号2に記載の塩基配列に基づいて適宜設計して作成し、該作成されたポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドが、例えば内皮細胞の増殖および/または管形成に対するsema3Eの抑制作用を阻害するか否かを後述する実施例1に記載の如く測定し、該抑制作用を阻害するものを選択することにより取得することができる
配列番号1に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、または該ポリヌクレオチドと配列相同性を有し、かつ、該ポリペプチドと実質的に同質の生物学的機能を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドとして、配列番号2に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチド、または該ポリヌクレオチドと配列相同性を有し、かつ、該ポリペプチドと実質的に同質の生物学的機能を有するポリヌクレオチドと、別のポリヌクレオチド、例えばIgGのFc部分、好ましくはIgG1のFc部分のアミノ酸配列で表わされるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドなどとの融合ポリヌクレオチドを例示できる。好ましくは、IgGのFc部分、より好ましくはIgG1のFc部分のアミノ酸配列で表わされるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとの融合ポリペプチドを例示できる。より具体的には、配列番号2に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドとIgG1のFc部分のアミノ酸配列で表わされるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとの融合ポリペプチとの融合ポリヌクレオチドを例示できる。
「配列番号1に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチドと実質的に同質の生物学的機能」とは、該ポリペプチドの細胞、組織、または生体に対する作用や効果と同じ作用や効果を奏することを意味し、その程度が該ポリペプチドの機能と比較して強くても弱くてもよい。
配列番号1に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチドと実質的に同質の生物学的機能として、sema3Eと結合する機能、好ましくはsema3Eと結合してその作用を阻害する機能を挙げることができる。
「配列相同性」とは、通常、塩基配列またはアミノ酸配列の全体で70%以上、好ましくは80%、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上であることが適当である。
配列番号1に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチドと配列相同性を有するポリペプチドとして、例えば、配列番号1に記載のアミノ酸配列において1個以上、例えば1〜100個、好ましくは1〜30個、より好ましくは1〜20個、さらにより好ましくは1個〜10個、またさらに好ましくは1個〜5個、またさらに好ましくは1個のアミノ酸の変異、例えば欠失、置換、付加または挿入といった変異を有するアミノ酸配列で表されるポリペプチドドが例示できる。アミノ酸の変異の程度およびそれらの位置等は、該変異を有するポリペプチドが、配列番号1に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチドドと実質的に同質の機能を有するものである限り特に制限されない。
配列番号1に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと配列相同性を有するポリヌクレオチドには、配列番号2に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドの塩基配列において1個以上、例えば1〜100個、好ましくは1〜30個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜10個、さらにより好ましくは1個〜5個、またさらに好ましくは1個のヌクレオチドの欠失、置換、付加または挿入といった変異が存する塩基配列で表されるポリヌクレオチドが含まれる。好ましくは、このようなポリヌクレオチドであって、配列番号2に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドの生物学的機能と実質的に同質の機能を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが望ましい。変異の程度およびそれらの位置等は、該変異を有するポリヌクレオチドが配列番号2に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドと同様の構造的特徴を有し、配列番号2に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドによりコードされるポリヌクレオチドと実質的に同質の生物学的機能を有するものである限り特に制限されない。
変異を有するポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、天然に存在するものであってよく、また天然由来の遺伝子に基づいて変異を導入して得たものであってもよい。変異を導入する手段は自体公知であり、例えば、部位特異的変異導入法、遺伝子相同組換え法、プライマー伸長法またはポリメラーゼ連鎖反応(以下、PCRと略称する)などを単独でまたは適宜組合せて使用できる。例えば成書に記載の方法(サムブルック(Sambrook)ら編、「モレキュラークローニング,ア ラボラトリーマニュアル 第2版」、1989年、コールドスプリングハーバーラボラトリー;村松正實編、「ラボマニュアル遺伝子工学」、1988年、丸善株式会社)に準じて、あるいはそれらの方法を改変して実施することができ、ウルマーの技術(Ulmer, K.M. Science 219, 666-71 (1983))を利用することもできる。ポリペプチドの場合、変異の導入において、当該ポリペプチドの基本的な性質(物性、機能、生理活性または免疫学的活性等)を変化させないという観点からは、例えば、同族アミノ酸(極性アミノ酸、非極性アミノ酸、疎水性アミノ酸、親水性アミノ酸、陽性荷電アミノ酸、陰性荷電アミノ酸および芳香族アミノ酸等)の間での相互の置換は容易に想定される。
ポリペプチドの製造は、遺伝子工学的手法、化学合成、および無細胞タンパク質合成により実施できる。ポリペプチドは、製造された後に、さらに精製して用いることができる。
ポリペプチドの製造は、該ポリペプチドをコードする遺伝子の塩基配列情報に基づいて一般的な遺伝子工学的手法(サムブルック(Sambrook)ら編、「モレキュラークローニング,ア ラボラトリーマニュアル 第2版」、1989年、コールドスプリングハーバーラボラトリー;村松正實編、「ラボマニュアル遺伝子工学」、1988年、丸善株式会社;Ulmer, K.M. Science 219, 666-71 (1983);エールリッヒ(Ehrlich, H.A.)編、「PCRテクノロジー,DNA増幅の原理と応用」、1989年、ストックトンプレス)により実施できる。例えば、該ポリペプチドの発現が確認されている各種の細胞や組織、またはこれらに由来する培養細胞から常法に従ってcDNAライブラリーをまず調製する。次いで、該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイゼーションするプライマーを使用して、該cDNAライブラリーから所望のcDNAを取得することができる。得られたcDNAの発現誘導を公知の遺伝子工学的手法を利用して行うことにより、該ポリペプチドを取得できる。ポリペプチドの取得は、具体的には例えば、該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクターを適当な宿主にトランスフェクションして取得した形質転換体を培養し、次いで得られた培養物から該蛋白質を回収することにより実施できる。形質転換体の培養は、各々の宿主に最適な自体公知の培養条件および培養方法で実施できる。培養は、形質転換体中または形質転換体外に産生されたポリペプチド自体あるいはその機能を指標にして培養してもよく、培地中の形質転換体量を指標にして継代培養またはバッチ培養を行ってもよい。ポリペプチドが形質転換体の細胞内あるいは細胞膜上に発現する場合には、形質転換体を破砕して該蛋白質を抽出する。また、ポリペプチドが形質転換体外に分泌される場合には、培養液自体、または遠心分離処理等により形質転換体を除去した培養液が使用される。
配列表の配列番号1に記載のポリペプチド、および該ポリペプチドとIgG1のFc部分のポリペプチドとの融合ポリペプチドの製造は、具体的には、特許文献1に記載の方法に準じて実施することができる。
ポリペプチドの製造はまた、一般的な化学合成法により製造できる。ポリペプチドの化学合成方法として、例えば、固相合成方法や液相合成方法等が知られているがいずれも利用できる。かかる蛋白質合成法は、より詳しくは、アミノ酸配列情報に基づいて、各アミノ酸を1個ずつ逐次結合させて鎖を延長させていくいわゆるステップワイズエロンゲーション法と、アミノ酸数個からなるフラグメントを予め合成し、次いで各フラグメントをカップリング反応させるフラグメントコンデンセーション法とを包含する。上記蛋白質合成法において利用される縮合法も常法に従って実施できる。縮合法として、アジド法、混合酸無水物法、DCC法、活性エステル法、酸化還元法、DPPA(ジフェニルホスホリルアジド)法、DCC+添加物(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、N−ヒドロキシサクシンアミド、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド等)法、およびウッドワード法等を例示できる。
ポリペプチドの精製および/または分離は、その物理的性質、化学的性質等を利用した各種分離操作方法により実施できる。分離操作方法として、硫酸アンモニウム沈殿、限外ろ過、ゲルクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーおよび透析法等の公知の方法を例示できる。これら方法は単独でまたは適宜組合せて使用できる。好ましくは、ポリペプチドのアミノ酸配列情報に基づき、これらに対する特異的抗体を作製し、該抗体により特異的に吸着する方法、例えば該抗体を結合させたカラムを利用するアフィニティクロマトグラフィーが推奨される。
ポリヌクレオチドの取得は、ポリヌクレオチドの配列情報に基づいて、公知の遺伝子工学的手法(サムブルック(Sambrook)ら編、「モレキュラークローニング,ア ラボラトリーマニュアル 第2版」、1989年、コールドスプリングハーバーラボラトリー;村松正實編、「ラボマニュアル遺伝子工学」、1988年、丸善株式会社;Ulmer, K.M. Science 219, 666-71 (1983);エールリッヒ(Ehrlich, H.A.)編、「PCRテクノロジー,DNA増幅の原理と応用」、1989年、ストックトンプレス)により容易に実施できる。
ポリヌクレオチドの取得は、具体的には、ポリヌクレオチドの発現が確認されている適当な起源から、常法に従ってcDNAライブラリーを調製し、該cDNAライブラリーから所望のクローンを選択することにより実施できる。cDNAの起源として、所望のポリヌクレオチドの発現が確認されている各種の細胞や組織、またはこれらに由来する培養細胞を例示できる。これら起源からの全RNAの分離、mRNAの分離や精製、cDNAの取得とそのクローニング等はいずれも常法に従って実施できる。cDNAライブラリーから所望のクローンを選択する方法も特に制限されず、慣用の方法を利用できる。例えば、所望のポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイゼーションするプローブやプライマー等を使用して所望のクローンを選択できる。具体的には、所望のポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイゼーションするプローブを使用するプラークハイブリダイゼーション法、コロニーハイブリダイゼーション法等やこれらを組合せた方法等を例示できる。所望のポリヌクレオチドの取得には、PCRによるDNA/RNA増幅法が好適に利用できる。cDNAライブラリーから全長のcDNAが得られ難いような場合には、RACE法(「実験医学」、1994年、第12巻、第6号、p.35-)、特に5'−RACE法(Frohman, M.A. et al. Proceedings of The National Academy of Sciences of The United Statesof America 85, 23, 8998-9002 (1988))等の採用が好適である。PCRに使用するプライマーは、ポリヌクレオチドの塩基配列情報に基づいて適宜設計でき、常法に従って合成により得ることができる。増幅させたDNA/RNAの単離精製は、常法、例えばゲル電気泳動法等により実施できる。ベクターDNAは宿主中で複製可能なものであれば特に限定されず、宿主の種類および使用目的により適宜選択される。代表的なベクターDNAとして、プラスミド、バクテリオファージおよびウイルス由来のベクターDNAを例示できる。プラスミドDNAとして、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミド、酵母由来のプラスミド等を例示できる。バクテリオファージDNAとして、λファージを例示できる。ウイルス由来のベクターDNAとして、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、パポバウイルス、SV40、鶏痘ウイルス、および仮性狂犬病ウイルス等の動物ウイルス由来のベクター、あるいはバキュロウイルス等の昆虫ウイルス由来のベクターを例示できる。ベクターDNAには、所望の遺伝子の機能が発揮されるように該遺伝子を組込むことが必要であり、少なくとも所望の遺伝子とプロモーターとをその構成要素とする。これら要素に加えて、所望によりさらに、複製そして制御に関する情報を担持した遺伝子配列を組合せて自体公知の方法によりベクターDNAに組込むことができる。かかる遺伝子配列として、リボソーム結合配列、ターミネーター、シグナル配列、エンハンサー等のシスエレメント、スプライシングシグナル、および選択マーカー(ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子等)等を例示できる。これらから選択した1種類または複数種類の遺伝子配列をベクターDNAに組込むことができる。ベクターDNAに所望の遺伝子を組込む方法は、自体公知の方法を適用できる。例えば、所望の遺伝子を適当な制限酵素により処理して特定部位で切断し、次いで同様に処理したベクターDNAと混合し、リガーゼにより再結合する方法が利用できる。あるいは、所望の遺伝子に適当なリンカーをライゲーションし、これを目的に適したベクターのマルチクローニングサイトへ挿入することによっても、所望の組換えベクターが取得できる。宿主として、適当な原核生物および真核生物をいずれも使用できる。適当な原核生物として、大腸菌(エシェリヒアコリ(Escherichia coli))等のエシェリヒア属、枯草菌等のバシラス属、シュードモナスプチダ(Pseudomonas putida)等のシュードモナス属、リゾビウムメリロティ(Rhizobiummeliloti)等のリゾビウム属に属する細菌を例示できる。適当な真核生物として、酵母、昆虫細胞および哺乳動物細胞等の動物細胞を例示できる。酵母は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセスポンベ(Schizosaccharomycespombe)を例示できる。昆虫細胞は、Sf9細胞やSf21細胞を例示できる。哺乳動物細胞は、サル腎由来細胞(COS細胞、Vero細胞等)、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、マウスL細胞、ラットGH2細胞、ヒトHeLa細胞、ヒトFL細胞およびヒト293細胞を例示できる。好ましくは哺乳動物細胞が使用される。より好ましくはヒト由来細胞が使用される。ベクターDNAの宿主細胞への導入は、自体公知の手段が応用され、例えば成書に記載されている標準的な方法(サムブルック(Sambrook)ら編、「モレキュラークローニング,ア ラボラトリーマニュアル 第2版」、1989年、コールドスプリングハーバーラボラトリー)により実施できる。より好ましい方法として、遺伝子の安定性を考慮するならば染色体内へのインテグレート法を例示できるが、簡便には核外遺伝子を利用した自律複製系を使用できる。具体的には、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、マイクロインジェクション、陽イオン脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、スクレープ負荷(scrape loading)、バリスティック導入(ballisticintroduction)および感染等の方法を例示できる。
本発明に係る薬剤は、必要に応じて、血管新生作用を有する化合物、例えばポリペプチドおよび/または該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをさらに含む医薬組成物として製造することができる。また、本治療方法は、血管新生作用を有するポリペプチドおよび/または該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをさらに投与することを含むことができる。血管新生作用を有するポリペプチドとして、VEGF、線維芽細胞増殖因子(fibroblast growth factor、以下FGFと略称する)、肝細胞増殖因子(hepatocyto growth factor、以下HGFと略称する)などを例示できる。好ましくはVEGFを使用できる。VEGFは脈管形成や血管新生、リンパ管新生に関与する増殖因子として知られるタンパク質ファミリーを形成し、VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、VEGF-D、VEGF-Eなどが知られている。さらにいくつかのVEGFファミリーメンバーは、オルタナティブスプライシングによりいくつかの亜型が存在する。VEGF-Aは、ヒトでは通常アミノ酸数が121個 (VEGF121)、165個 (VEGF165)、189個 (VEGF189)、206個(VEGF206)の4種類が主に知られている。本発明においてはVEGFであればいずれを使用することもできるが、好ましくは血管新生作用の強いVEGF165を使用できる。VEGFの取得は、その公知塩基配列に基づいて、一般的遺伝子工学的手法(サムブルック(Sambrook)ら編、「モレキュラークローニング,ア ラボラトリーマニュアル 第2版」、1989年、コールドスプリングハーバーラボラトリー;村松正實編、「ラボマニュアル遺伝子工学」、1988年、丸善株式会社);Ulmer, K.M. Science 219, 666-71 (1983);エールリッヒ(Ehrlich, H.A.)編、「PCRテクノロジー,DNA増幅の原理と応用」、1989年、ストックトンプレス等を参照)により実施できる。例えば、VEGFをコードする遺伝子の発現が確認されている各種の細胞や組織、またはこれらに由来する培養細胞から常法に従ってcDNAライブラリーを調製し、該遺伝子に特有の適当なプライマーを用いて該遺伝子を増幅し、得られた遺伝子を公知の遺伝子工学的手法により発現誘導することによりVEGF遺伝子を取得でき、さらに該遺伝子を用いてタンパク質を発現することができる。また、ヒトVEGFは市販されており、これら製品を利用することができる。
本発明に係る薬剤は、必要に応じて、医薬用に許容される担体(医薬用担体)を含む医薬組成物として製造できる。
医薬用担体は、製剤の使用形態に応じて通常使用される、充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤および賦形剤を例示できる。これらは得られる製剤の投与形態に応じて適宜選択して使用される。より具体的には、水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトースを例示できる。これらは、本薬剤の剤形に応じて適宜1種類または2種類以上を組み合わせて使用される。その他、安定化剤、殺菌剤、緩衝剤、等張化剤、キレート剤、界面活性剤、およびpH調整剤等を適宜使用することもできる。安定化剤は、例えばヒト血清アルブミンや通常のL−アミノ酸、糖類、セルロース誘導体を例示できる。L−アミノ酸は、特に限定はなく、例えばグリシン、システイン、グルタミン酸等のいずれでもよい。糖類も特に限定はなく、例えばグルコース、マンノース、ガラクトース、果糖等の単糖類、マンニトール、イノシトール、キシリトール等の糖アルコール、ショ糖、マルトース、乳糖等の二糖類、デキストラン、ヒドロキシプロピルスターチ、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸等の多糖類等およびそれらの誘導体等のいずれでもよい。セルロース誘導体も特に限定はなく、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のいずれでもよい。界面活性剤も特に限定はなく、イオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤のいずれも使用できる。界面活性剤には、例えばポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル系、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系、ソルビタンモノアシルエステル系、脂肪酸グリセリド系等が包含される。緩衝剤は、ホウ酸、リン酸、酢酸、クエン酸、ε−アミノカプロン酸、グルタミン酸および/またはそれらに対応する塩(例えばそれらのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩)を例示できる。等張化剤は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、糖類、グリセリンを例示できる。キレート剤は、例えばエデト酸ナトリウム、クエン酸を例示できる。
本発明に係る薬剤中に含まれる有効成分の量は、広範囲から適宜選択される。通常約0.00001〜70重量%、好ましくは0.0001〜5重量%程度の範囲とするのが適当である。
本発明に係る薬剤の用量範囲は特に限定されず、含有される成分の有効性、投与形態、投与経路、疾患の種類、対象の性質(体重、年齢、病状および他の医薬の使用の有無等)、および担当医師の判断等応じて適宜選択される。一般的には適当な用量は、例えば対象の体重1kgあたり約0.01μg乃至100mg程度、好ましくは約0.1μg乃至1mg程度の範囲であることが好ましい。しかしながら、当該分野においてよく知られた最適化のための一般的な常套的実験を用いてこれらの用量の変更を行うことができる。上記投与量は1日1回乃至数回に分けて投与することができる。あるいは、虚血発生時に投与するといった投与形態をとることも可能である。
投与経路は、全身投与または局所投与のいずれも選択することができる。この場合、疾患、症状等に応じた適当な投与経路を選択する。本発明に係る薬剤は、経口経路および非経口経路のいずれによっても投与できる。非経口経路としては、通常の静脈内投与、動脈内投与の他、皮下、皮内、筋肉内等への投与を挙げることができる。さらに、経粘膜投与または経皮投与を実施することができる。
剤形は、特に限定されず、種々の剤形とすることができる。例えば、溶液製剤として使用できる他に、これを凍結乾燥化し保存し得る状態にした後、用時、水や生理的食塩水等を含む緩衝液等で溶解して適当な濃度に調製した後に使用することもできる。また本発明に係る薬剤は、持続性または徐放性剤形であってもよい。
具体的には、経口投与のためには、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、丸剤、液剤、乳剤、懸濁液、溶液剤、酒精剤、シロップ剤、エキス剤、エリキシル剤とすることができる。非経口剤としては、例えば、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤等の注射剤;経皮投与または貼付剤、軟膏またはローション;口腔内投与のための舌下剤、口腔貼付剤;ならびに経鼻投与のためのエアゾール剤;坐剤とすることができるが、これらには限定されない。これらの製剤は、製剤工程において通常用いられる公知の方法により製造することができる。
経口用固形製剤を調製する場合は、上記有効成分に賦形剤、必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤等を加えた後、常法により錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等を製造することができる。そのような添加剤としては、当該分野で一般的に使用されるものでよく、例えば、賦形剤としては、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、微結晶セルロース、珪酸等を、結合剤としては、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、エチルセルロース、シェラック、リン酸カルシウム、ポリビニルピロリドン等を、崩壊剤としては乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、乳糖等を、滑沢剤としては精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ砂、ポリエチレングリコール等を、矯味剤としては白糖、橙皮、クエン酸、酒石酸等を例示できる。
経口用液体製剤を調製する場合は、上記化合物に矯味剤、緩衝剤、安定化剤、矯臭剤等を加えて常法により内服液剤、シロップ剤、エリキシル剤等を製造することができる。この場合矯味剤としては上記に挙げられたもので良く、緩衝剤としてはクエン酸ナトリウム等が、安定化剤としてはトラガント、アラビアゴム、ゼラチン等を挙げることができる。
注射剤を調製する場合は、上記化合物にpH調節剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、局所麻酔剤等を添加し、常法により皮下、筋肉内及び静脈内用注射剤を製造することができる。この場合のpH調節剤及び緩衝剤としてはクエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等を挙げることができる。安定化剤としてはピロ亜硫酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、チオグリコール酸、チオ乳酸等を挙げることができる。局所麻酔剤としては塩酸プロカイン、塩酸リドカイン等を挙げることができる。等張化剤としては、塩化ナトリウム、ブドウ糖等が例示できる。
本発明において、ポリヌクレオチドを有効成分として使用する場合は、ポリヌクレオチド自体の代わりに、該ポリヌクレオチドを含む組み換えベクターまたは該組み換えベクターでトランスフェクションされてなる形質転換体を使用することもできる。
本発明において、ポリヌクレオチドを用いるときは、遺伝子治療を利用して、当該ポリヌクレオチドを対象中の細胞内で生成させてもよい。また、遺伝子治療の対象から細胞を採取し、in vitroで当該ポリヌクレオチドを細胞内で生成させた後、当該細胞を対象に投与することもできる。遺伝子治療は公知の方法が利用でき、例えば、ポリヌクレオチドを注射により直接投与する非ウイルス性のトランスフェクション法、あるいはウイルスベクターを利用したトランスフェクション法のいずれも適用することができる。非ウイルス性のトランスフェクション法においては、ポリヌクレオチドを注射により直接投与する方法のほか、ポリヌクレオチドをリポソーム等のリン脂質小胞に封入し、そのリポソームを投与する方法が推奨される。リポソームとしては、カチオン性リポソームの使用がより好ましい。また、非ウイルス性のトランスフェクション法として、非ウイルス性遺伝子発現ベクターに当該ポリヌクレオチドを組み込み、注射により直接投与する方法のほか、該ベクターをリポソーム等のリン脂質小胞に封入して投与する方法を用いることができる。ウイルスベクターを使用するトランスフェクション法において、ポリヌクレオチドを組込んでトランスフェクションに使用するウイルスベクターとして、好ましくはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター等のDNAウイルスベクター、あるいはRNAウイルスベクターが挙げられる。これらウイルスベクターを用いることにより、所望のポリヌクレオチドの効率良い発現が可能である。さらに、ウイルスベクターを用いるトランスフェクション法においても、該ベクターをリポソームに封入して、そのリポソームを投与する方法が推奨される。
本発明治療剤を遺伝子治療剤として用いる場合は、一般的には、注射剤、点滴剤、あるいはリポソーム製剤として調製することが好ましい。遺伝子治療剤が、遺伝子が導入された細胞を含む形態に調製される場合は、該細胞をリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)、リンゲル液、細胞内組成液用注射剤中に配合した形態等に調製することもできる。また、プロタミン等の遺伝子導入効率を高める物質と共に投与されるような形態に調整することもできる。遺伝子治療剤として用いる場合、本医薬組成物は、1日に1回または数回に分けて投与することができ、1日から数週間の間隔で間歇的に投与することもできる。投与の方法は、一般的な遺伝子治療法で用いられている方法に従うことができる。
本発明はまた、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有する化合物の同定方法に関する。sema3Eの機能には、sema3Eとその特異的受容体プレキシンD1との結合が関与する。すなわち、sema3Eの機能の阻害は、sema3EとプレキシンD1との結合の阻害、またはsema3Eおよび/またはプレキシンD1の発現の阻害によっても実施できる。したがって、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有する化合物の同定方法は、sema3Eとその特異的受容体プレキシンD1との結合を阻害する化合物、またはsema3Eおよび/またはプレキシンD1の発現を阻害する化合物を指標にして実施することもできる。
sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有する化合物の同定は、具体的には例えば、sema3EとプレキシンD1との結合を測定することのできる実験系を用いて実施できる。実験系はin vitroおよびin vivoのいずれの実験系でもよいが、in vitroの実験系が簡便であり好ましく使用できる。
sema3EとプレキシンD1との結合を測定することのできる実験系において、sema3EとプレキシンD1の結合を可能にする条件下で、sema3Eおよび/またはプレキシンD1と被検化合物を接触させ、ついで、sema3EとプレキシンD1の結合を測定する。被検化合物の存在下におけるsema3EとプレキシンD1の結合を被検化合物非存在下におけるsema3EとプレキシンD1の結合と比較することにより、被検化合物によるsema3EとプレキシンD1の結合の変化、例えば低減または消失を検出することができる。被検化合物の存在下におけるsema3EとプレキシンD1の結合が、被検化合物非存在下におけるsema3EとプレキシンD1の結合と比較して低減または消失した場合、該被検化合物にはsema3EとプレキシンD1の結合を阻害する作用があると判定できる。すなわち、sema3EとプレキシンD1の結合を阻害する被検化合物を、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有する化合物として選択することにより、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有する化合物を同定できる。
sema3EとプレキシンD1との結合を測定することのできる実験系おいて、sema3Eとして、可溶性タンパク質を用いることができ、また、sema3Eをコードするポリヌクレオチドを含む細胞、好ましくは培養細胞の細胞膜に発現したタンパク質を用いることができる。該細胞は、sema3Eをコードするポリヌクレオチド含むベクターを適当な培養細胞にトランスフェクションして得られた形質転換体であり得る。このような形質転換体の作成は、sema3Eをコードするポリヌクレオチドを用いて一般的遺伝子工学的手法により実施できる。
sema3EとプレキシンD1との結合の測定は、一般的な医薬品スクリーニングシステムで用いられている様々な結合解析方法を利用して実施できる。例えば、sema3EとプレキシンD1との結合反応を行い、sema3EとプレキシンD1との結合により形成される複合体と、結合していない遊離のsema3EおよびプレキシンD1を分離し、該複合体をイムノブロッティング等の公知の方法によって検出することにより実施できる。また、例えば、固相化したプレキシンD1とsema3Eとの結合反応を行い、その後、プレキシンD1に結合したsema3Eを、抗sema3E抗体を用いて検出することにより、sema3EとプレキシンD1の結合を測定できる。sema3Eに結合した抗sema3Eは、標識物質で標識した二次抗体を用いて検出できる。あらかじめ標識物質で標識化した抗sema3E抗体を用いて、プレキシンD1に結合したsema3Eを検出することもできる。あるいは、あらかじめ所望の標識物質で標識化したsema3Eを用いてプレキシンD1との結合反応を行い、該標識物質を検出することにより、sema3EをとリガンドプレキシンD1の結合を測定できる。標識物質として、一般的な結合解析方法で用いられている物質がいずれも利用でき、例えば、His-tag、Myc-tag、HA-tag、FLAG-tagまたはXpress-tag等のタグペプチド類、蛍光色素類、ホースラディッシュパーオキシダーゼ(HRP)、ビオチン、グルタチオン S−トランスフェラーゼ(GST)、放射性同位体元素等が例示できる。あるいは、sema3EとプレキシンD1との結合を阻害する化合物の同定は、ビアコアシステム(BIACORE system)等の表面プラズモン共鳴センサー、シンチレーションプロキシミティアッセイ法(Scintillation proximity assay;SPA)、または蛍光共鳴エネルギー転移(Fluorescence resonance energy transfer;FRET)を応用した方法を用いて実施できる。
より具体的には、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有する化合物の同定として、下記工程を含む方法を例示できる:
(1)被検化合物をsema3Eおよび/またはプレキシンD1と接触させる工程、
(2)sema3EとプレキシンD1の結合を測定する工程、
(3)sema3EとプレキシンD1の結合を阻害する被検化合物を、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有する化合物として選択する工程。
この方法は、工程(2)と工程(3)の間に、被検化合物の存在下におけるsema3EとプレキシンD1の結合を被検化合物非存在下におけるsema3EとプレキシンD1の結合と比較する工程をさらに含むことができる。
sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有する化合物の同定はまた、例えば、sema3Eおよび/またはプレキシンD1の発現を測定することのできる実験系を用いて実施できる。実験系はin vitroおよびin vivoのいずれの実験系でもよいが、in vitroの実験系が簡便であり好ましく使用できる。
sema3Eおよび/またはプレキシンD1の発現を測定することのできる実験系においてsema3Eをコードするポリヌクレオチドおよび/またはプレキシンD1をコードするポリヌクレオチドと被検化合物を接触させ、ついで、sema3Eをコードするポリヌクレオチドおよび/またはプレキシンD1をコードするポリヌクレオチドの発現を測定する。被検化合物の存在下におけるsema3Eをコードするポリヌクレオチドおよび/またはプレキシンD1をコードするポリヌクレオチドの発現を被検化合物非存在下におけるsema3Eをコードするポリヌクレオチドおよび/またはプレキシンD1をコードするポリヌクレオチドの発現と比較することにより、被検化合物によるsema3Eをコードするポリヌクレオチドおよび/またはプレキシンD1をコードするポリヌクレオチドの発現の変化、例えば低減または消失を検出することができる。被検化合物の存在下におけるsema3Eをコードするポリヌクレオチドおよび/またはプレキシンD1をコードするポリヌクレオチドの発現が、被検化合物非存在下におけるsema3Eをコードするポリヌクレオチドおよび/またはプレキシンD1をコードするポリヌクレオチドの発現と比較して低減または消失した場合、該被検化合物にはsema3Eをコードするポリヌクレオチドおよび/またはプレキシンD1をコードするポリヌクレオチドの発現を阻害する作用があると判定できる。すなわち、sema3Eをコードするポリヌクレオチドおよび/またはプレキシンD1をコードするポリヌクレオチドの発現を阻害する被検化合物を、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有する化合物として選択することにより、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有する化合物を同定できる。
sema3Eおよび/またはプレキシンD1の発現を測定することのできる実験系では、好ましくはsema3Eおよび/またはプレキシンD1を発現する細胞、好ましくは培養細胞を用いる。該細胞は、sema3Eをコードするポリヌクレオチドおよび/またはプレキシンD1をコードするポリヌクレオチド含むベクターを適当な培養細胞にトランスフェクションして得られた形質転換体であり得る。このような形質転換体の作成は、sema3Eをコードするポリヌクレオチドを用いて一般的遺伝子工学的手法により実施できる。
発現の測定は、ポリヌクレオチドよりコードされるポリペプチドを、公知のタンパク質検出法、例えばウエスタンブロッティング等により直接的に検出することにより実施できる。または、発現の指標となるシグナルを実験系に導入して該シグナルを検出することにより実施できる。シグナルとして、His-tag、Myc-tag、HA-tag、FLAG-tagまたはXpress-tag等のタグペプチド類、蛍光色素類、グルタチオン S−トランスフェラーゼ(GST)等を使用できる。
sema3Eおよび/またはプレキシンD1の発現を測定することのできる実験系にまた、sema3Eをコードする遺伝子のプロモーター領域の下流に、sema3Eをコードするポリヌクレオチドの代わりにレポーター遺伝子を連結したベクター、および/または、プレキシンD1をコードする遺伝子のプロモーター領域の下流に、プレキシンD1をコードするポリヌクレオチドの代わりにレポーター遺伝子を連結したベクターを適当な培養細胞にトランスフェクションして得られた形質転換体を用いることができる。このような形質転換体と被検化合物とを接触させ、レポーター遺伝子の発現の有無および変化を測定することにより、sema3Eおよび/またはプレキシンD1の発現を検出できる。被検化合物の存在下におけるポリヌクレオチドの発現が、被検化合物非存在下におけるポリヌクレオチドの発現と比較して低減または消失した場合、該被検化合物にはsema3Eをコードするポリヌクレオチドおよび/またはプレキシンD1をコードするポリヌクレオチドの発現を阻害する作用があると判定できる。レポーター遺伝子として、レポーターアッセイで一般的に用いられている遺伝子を使用でき、例えば、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼまたはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ等の酵素活性を有する遺伝子を例示できる。レポーター遺伝子の発現の検出は、その遺伝子産物の活性、例えば、上記例示したレポーター遺伝子の場合は酵素活性を検出することにより実施できる。
より具体的には、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有する化合物の同定として、下記工程を含む方法を例示できる:
(1)被検化合物をsema3Eおよび/またはプレキシンD1を発現する細胞と接触させる工程、
(2)sema3Eおよび/またはプレキシンD1の発現を測定する工程、
(3)sema3Eおよび/またはプレキシンD1の発現を阻害する被検化合物を、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有する化合物として選択する工程。
この方法は、工程(2)と工程(3)の間に、被検化合物の存在下におけるsema3Eおよび/またはプレキシンD1の発現を被検化合物非存在下におけるsema3Eおよび/またはプレキシンD1の発現と比較する工程をさらに含むことができる。
sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有する化合物の同定はまた、例えば、sema3Eの血管新生抑制作用を測定することのできる実験系を用いて実施できる。実験系はinvitroおよびin vivoのいずれの実験系でもよいが、invitroの実験系が簡便であり好ましく使用できる。
sema3Eの血管新生抑制作用を測定することのできる実験系では、sema3Eの受容体プレキシンD1および血管新生作用を有するポリペプチドの受容体を発現している細胞、好ましくは培養細胞、より好ましくは培養血管内皮細胞、例えばHUVECが用いられる。該細胞は、sema3Eの受容体であるプレキシンD1をコードするポリヌクレオチドおよび/または血管新生作用を有するポリペプチドの受容体をコードするポリヌクレオチドを適当な培養細胞にトランスフェクションして得られた形質転換体であり得る。このような形質転換体の作成は、sema3Eの特異的受容体であるプレキシンD1をコードするポリヌクレオチドおよび/または血管新生作用を有するポリペプチドの受容体をコードするポリヌクレオチドを用いて一般的遺伝子工学的手法により実施できる。血管新生作用を有するポリペプチドの受容体を発現している細胞に、該受容体のリガンドである血管新生作用を有するポリペプチドを接触させ、その結果生じる該細胞の増殖および/または脈管形成を測定することにより、該ポリペプチドの血管新生作用を検出できる。また、血管新生作用を有するポリペプチドと共に、sema3Eを該細胞に作用させることにより、該ポリペプチドによる血管新生に対するsema3Eの抑制作用を検出することができる。血管新生作用を有するポリペプチドおよびその受容体の組み合わせとして、VEGFおよびVEGF受容体、FGFおよびFGF受容体、HGFおよびHGF受容体の各組み合わせが例示できる。好ましくはVEGFおよびVEGF受容体の組み合わせ、より好ましくはVEGF165およびVEGF受容体の組み合わせを用いる。
具体的には、sema3Eの受容体であるプレキシンD1および血管新生作用を有するポリペプチドの受容体を発現している細胞と被検化合物とを接触させ、さらに、該ポリペプチド質およびsema3Eを該細胞に接触させる。次いで、該細胞を培養してその増殖および/または脈管形成を測定する。被検化合物の存在下における細胞増殖および/または脈管形成を被検化合物非存在下における細胞増殖および/または脈管形成と比較することにより、被検化合物による細胞増殖および/または脈管形成の変化、例えば増加または低減を検出することができる。被検化合物の存在下における細胞増殖および/または脈管形成が増加した場合、該被検化合物には、血管新生作用を有するポリペプチドによる細胞増殖および/または脈管形成に対するsema3Eの抑制作用を阻害する効果があると判定できる。すなわち、細胞増殖および/または脈管形成を増加させる被検化合物を、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有する化合物として選択することにより、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有する化合物を同定できる。
細胞増殖の測定は、公知の細胞増殖測定方法により容易に実施できる。細胞増殖測定方法として、3Hチミジンなどの放射性同位体を用いて細胞のDNAに取り込まれた放射性同位体の放射活性を定量する方法、ニュートラルレッドやクリスタルバイオレットなどの色素を用いて細胞に取り込まれた色素を定量する方法、3-(4,5-Dimethyl-2-thiazolyl)-2,5-diphenyl-2H tetrazolium bromide(MTT)などのテトラゾリウム塩を用いて細胞内でMTTから生成されたフォルマザンを定量する方法を例示できる。または、細胞数を計数することにより、細胞増殖を測定することができる。
脈管形成の測定は、簡便には市販の血管新生キット(例えば、Kurabo社製)を用いて実施できる。具体的には、HUVECを繊維芽細胞と所定の培養培地中でVEGF165存在下にて一定期間共培養することにより脈管形成させる。その後、形成された管腔をCD31(PECAM-1)染色またはフォンビルブランドファクター(vWF)染色する。染色は、CD31またはvWFに対する抗体および該抗体に対する標識化二次抗体を用いて実施できる。その後、毛細血管様脈管形成を倒立位相差顕微鏡下で評価し、また、総脈管長をAngiogenesis Image Analyzer(Kurabo社製)を用いて評価する。
sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有する化合物の同定として、より具体的には、下記工程を含む方法を例示できる:
(1)被検化合物を、VEGF受容体およびプレキシンD1を発現した培養血管内皮細胞と接触させる工程、
(2)VEGFおよびsema3Eを上記細胞に接触させる工程
(3)細胞の増殖および/または脈管形成を測定する工程、
(4)細胞の増殖および/または脈管形成を促進する被検化合物を、sema3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有する化合物として選択する工程。
この方法は、工程(3)と工程(4)の間に、被検化合物の存在下における細胞の増殖および/または脈管形成を被検化合物非存在下における細胞の増殖および/または脈管形成と比較する工程をさらに含むことができる。
被検化合物は、例えば化学ライブラリーや天然物由来の化合物、あるいはsema3またはプレキシンD1の一次構造や立体構造に基づいてドラッグデザインして得られた化合物等を用いることができる。
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例によって何ら限定されるものではない。
まず、本実施例で使用した材料および方法について説明する。
1.材料
組換えヒトVEGF165(293-VE)、モノクローナル抗ヒトVEGF抗体(MAB293)および組換えヒトセマフォリン3Eは、R&Dシステムズ社より購入した。プレキシンD1-Fc融合ポリペプチドは、マウスプレキシンD1の膜外領域のポリペプチド(配列番号1)と、IgG1のFc部分のポリペプチドとの融合ポリペプチドであり、ARKリソース社により製造された。
2.細胞培養
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVECs)はBioWhittaker社より購入し、製造業者の使用説明書に従って培養した。内皮細胞のインビトロにおける増殖の評価は、VEGF165(50ng/ml)の存在下で2日間培養した後に細胞数を測定することにより実施した。
HUVECsのレトロウイルスによる感染は、継代4-6回の内皮細胞の5×105個を直径100mmのシャーレに播種して24時間後に実施した。レトロウイルスストックの生産は、パッケージング細胞株PT67(Clontech社製)に一過性にトランスフェクションすることにより実施し、使用するまで−80℃で保存した。感染は、培養培地を、レトロウイルスストックに8μg/mlポリブレン(polybrene、シグマ社製)を加えたものと交換することにより実施した。感染48時間後に、0.8μg/mlピューロマイシン中で4日間培養して感染細胞群を選択した。高力価のアデノウイルスストック(109pfu)はAdeno-X Expression System(Clontech社製)を用いて製造業者の使用説明書に従って製造した。
3.脈管形成アッセイ
脈管形成アッセイは、市販のキット(Kurabo社製)を用いて製造業者の使用説明書に従って実施した。本アッセイにおいて、HUVECは繊維芽細胞と共培養した。VEGF165(10ng/ml)および被検物質の存在下で11日間培養し、その後、70%エタノールで室温にて固定した。そして固定した細胞は、マウス抗ヒトCD31抗体(1:4000希釈)と共にまず1時間、次いでヤギ抗マウスIgG アルカリホスファターゼ(AP)結合二次抗体と共にインキュベーションし、5-ブロモ-4-3-インドイル ホスフェートおよびニトロブルーテトラゾリウムを用いて可視化した。毛細血管様脈管形成の評価は、倒立位相差顕微鏡下で40倍の倍率にて写真撮影することにより実施した。総脈管長はAngiogenesisImage Analyzer(Kurabo社製)を用いて評価した。このアッセイはトリプリケートで行った。
4.ウエスタンブロット アッセイ
細胞を溶解バッファー(10 mM Tris-HCl, pH 8、140 mM NaCl、5 mM エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、0.025% NaN3、1%トリトンX-100(Triton X-100)、1% デオキシコレート(deoxycholate)、0.1% ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1 mM フェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)、5μg/ml ロイペプチン(leupeptin)、2μg/ml アプロチニン(aprotinin)、50 mM NaF, and 1 mM Na2VO3)で処理し、全細胞溶解物を作製した。該溶解物30-50μgはSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により分析した。タンパク質をポリビニリデンジフルオリド(PVDF)膜(Millipore社製)に転写し、一次抗体、ついで抗ウサギイムノグロブリンG−ホースラディシュペーオキシダーゼ抗体または抗マウスイムノグロブリンG−ホースラディシュペーオキシダーゼ抗体(Jackson社製)とインキュベーションした。特異的タンパク質はEnhanced Chemiluminescence(ECL、Amersham社製)を用いて検出した。免疫沈降は既報に記載のとおり実施した(非特許文献4)。ウエスタンブロットには次の一次抗体を使用した:抗pERK抗体(sc-7383)、抗ERK抗体(sc-154-G)、抗pAkt抗体(sc-7985-R)、抗Akt抗体(sc-1618)、抗p53抗体(sc-126、sc-99)、抗アクチン抗体(sc-8432)、抗flk-1抗体(sc-6251)、抗sema3E抗体(sc-49733)(以上、Santa Cruz社製)、および抗リン酸化チロシン抗体(4G10)(Upstate社製)。
5.RNA分析
総RNA30μgはGTC(guanidium thiocyanate-phenol chloroform)法によりRNAzol B(Tel Test社製)を用いて、製造業者の使用説明書に従って細胞から抽出した。相補的DNAはSuperScript First-Strand SynthesisSystem(Invitrogen社製)を用いてRT-PCR用に作製した。定量的リアルタイムPCR(Quantitative real Time PCR)は、LightCycler(Roche社製)とTaqman Universal ProbeLibraryおよびLightCyclerMaster(Roche社製)を用いて、製造業者の使用説明書に従って実施した。
6.実験動物
動物実験は千葉大学実験動物倫理審査委員会の許諾の下に実施した。C57BL/6マウスはSLC Japanより購入した。C57BL/6を背景とするp53ノックアウトマウスはJackson Laboratoryより購入した。I型糖尿病モデル作製のために、0.1M クエン酸ナトリウム(pH4.5)に溶解したストレプトゾトシン(streptozotocin)を50mg/kg体重の投与量で5日間、マウスに腹腔内注射した。C57BL/6を背景とするsema3Eノックアウトマウスの作製方法および遺伝子型は、既報に記載されている(非特許文献12)。
7.後肢虚血モデル
マウスを麻酔後に、大腿動脈の基部および膝窩動脈の遠位部を結紮し、全側枝が切除可能になった後に取り去った。後肢の血流の測定は、Laser Doppler perfusion analyzer(MoorInstruments社製)を用いて実施した。PBSで組織的灌流後に虚血後肢から大腿広筋および大腿直筋の筋組織を取り、直ぐにOCTコンパウンド(Sakura Finetechnical社製)中に埋め込んだ。次いで、各標本を液体窒素中で急速冷凍し、6μmの切片に切断した。切片はCD31(Pharmingen社製)、プレキシンD1、またはsema3E(SantaCruz Biotechnology社製)に対する抗体で染色した。2つの筋肉全体の横断切片を、100倍の倍率でデジタル撮影した。1匹のマウスについて12-16枚の写真を撮影した。そしてこれら写真を盲検で精査した。毛細血管内皮細胞はCD31への免疫反応性により同定し、そして、1領域当りの血管面積(%)として定量した。インビボの遺伝子導入は、可溶性プレキシンD1-Fc、VEGF、またはsema3Eをコードする発現ベクターを、外科手術後1週間目のマウスの大腿部筋肉に2回注射することにより実施した。
8.統計解析
データは平均値±標準誤差で表示した。多群比較は、一元配置分散分析(one-way ANOVA)に続くボンフェローニ法により平均値を比較して実施した。2群間の比較は、対応のないスチューデントt検定(unpaired Student's t-test)により分析した。p<0.05の値は、統計的に有意と考えられる。
血管内皮細胞増殖および血管新生へのsema3Eの作用をインビトロ アッセイで検討した。
HUVECをVEGFで処理すると、細胞数が著しく増加した(図1a)。この増加はsema3Eにより濃度依存的に強く阻害された(図1a)。sema3Eと結合してその活性を阻害するプレキシンD1-Fc融合タンパク質はsema3Eのこの作用に効果的に拮抗した(図1a)。HUVECを用いた血管新生アッセイでは、VEGF処理により、脈管形成が著しく増加したが、この増加はsema3Eにより有意に阻害された(図1b)。プレキシンD1-Fc融合タンパク質処理は、VEGFによる脈管形成へのsema3Eの作用にも拮抗した(図1c)。
これら結果から、sema3Eは抗血管新生活性を有することが示唆された。また、プレキシンD1-Fc融合タンパク質は、sema3Eの抗血管新生活性に拮抗することが判明した。
次に、sema3Eがどのように血管新生を阻害するか検討した。sema3Eは、VEGFによるERKおよびAktのリン酸化を抑制した(図1d)。ERKおよびAktはいずれもVEGFの細胞内情報伝達経路において重要なリン酸化酵素である。sema3EはまたVEGFによるVEGF受容体2(以下、VEGFR-2と略称することがある)のリン酸化を抑制した(図1e)。抗VEGF中和抗体の存在下ではsema3Eは細胞増殖および脈管形成を有意には阻害しなかった(図1fおよび図1g)。
これら結果から、sema3EはVEGF経路を阻害することにより血管新生を負に調節することが示唆された。
sema3EおよびプレキシンD1について、生後の血管新生における作用を、マウス後肢虚血モデルを用いて検討した。
sema3EおよびプレキシンD1の発現は、外科手術後3日目の虚血肢において著しく増加し、この増加は10日目まで持続した(図2a, b)。免疫組織化学分析により、sema3Eが虚血組織における細動脈、筋細胞、および毛細血管内皮細胞で発現されている一方、プレキシンD1は主に毛細血管内皮細胞で発現していることが判明した(図2c)。
sema3Eを阻害することにより血管新生が促進されるか検討するために、プレキシンD1-Fc遺伝子を含む発現ベクターを虚血肢に注入し、そして血流回復および虚血組織の血管面積を分析した。レーザードップラー血流画像化装置(laser doppler perfusion imaging)により、プレキシンD1-Fc群がコントロール群と比較して有意により良好な血流回復を示したことが明らかになった(図2d)。同様に、血管面積は プレキシンD1-Fc群でコントロール群と比較して有意に広かった(図2e)。虚血肢へのVEGF遺伝子の注入はコントロール群と比較して血流回復を有意に促進したが、一方、この効果はsema3E遺伝子の追加導入により抑制された(図2f)。血管面積もまた、SEma3E+VEGF群でVEGF群と比較して狭かった(図2f)。さらに、プレキシンD1-Fc遺伝子を、sema3EとVEGFとで処理した虚血肢に注入すると、SEma3E+VEGF群の所見と比較して、血流回復が有意に改善され、そして血管面積が増加した(図2f)。これら結果と一致して、sema3Eノックアウトマウスは野生型マウスよりもより良好な血流回復とより広い血管面積を示した(図2gおよび図2h)。
これら結果は、sema3EおよびプレキシンD1が生後の血管新生を負に調節することを示唆する。
sema3Eのプロモータ領域内には癌抑制タンパク質p53に結合すると推定される要素が存在する。p53の発現が血中酸素減少で増加することにより癌の血管新生が阻害されることが報告されている(Harris, S.L. & Levine, A.J. The p53 pathway: positive andnegative feedback loops. Oncogene 24, 2899-908 (2005).)。このことから、虚血肢において、血中酸素減少により誘導されるp53が、sema3E発現の増加方向への調節に関与すると考えることができる。
そこで、p53によるsema3E発現調節について検討した。p53を過剰発現させると、HUVECでのsema3E発現は増加方向へ調節された(図3a)。sema3Eの発現はまた、血中酸素減少の効果と類似する塩化コバルト処理により誘導された(データ未公開)。
p53とsema3Eとの関連をさらに解明するため、p53発現を妨げるHPV16E6遺伝子を含むレトロウイルスベクター(以下、E6と略称することがある)でHUVECを感染させ、次いで内皮細胞によるsema3E発現を試験した。血中酸素減少は空ウイルスベクターで感染させたHUVECにおけるsema3Eおよびp53発現を著しく増加方向に調節したが、一方E6感染細胞ではsema3は発現されなかった。このことから、血中酸素減少はp53依存的経路を介してsema3E誘導を促進することが示唆された。インビトロのデータと一致して、p53およびsema3E両方の発現は、外科手術後3日目に野生型マウスの虚血肢で著しく増加した(図2aおよび3c)。sema3Eの増加方向への調節は、p53ノックアウトマウスの虚血肢では認められなかった(図3d)ことから、p53の増加が虚血肢におけるsema3E発現を促進し、それにより血流回復を阻害することが示唆された。
虚血に対する血管新生反応は、糖尿病患者で低下している(Falanga, V.Wound healing and its impairment in the diabetic foot. Lancet 366, 1736-43(2005).)。そこで、ストレプトゾトシン(streptozotocin)誘発糖尿病マウスを用いて、糖尿病において低下した血管新生反応へのsema3Eの関与を検討した。
ストレプトゾトシン誘発糖尿病マウスでは、コントロールマウスと比較して虚血肢での血流回復が乏しく、そして血管面積が狭いことが判明した(図4a, b)。p53発現は糖尿病マウスで増加しており、そしてこの増加は虚血によりさらに増加した(図4c)。同様に、sema3Eの発現レベルは糖尿病マウスでコントロールマウスより有意に高かった(図4c)。その結果、糖尿病マウスにおけるVEGF処理後の血流回復および血管面積の増加は、VEGF処理コントロールマウスと比較して有意に低下していた。糖尿病マウスにおけるこのような血流回復および血管面積の低下は、プレキシンD1-Fc遺伝子の追加導入により効果的に改善された(図4dおよび図4e)。
これら結果から、sema3Eの過剰発現が糖尿病マウスにおける新規血管形成を低下させることが示唆された。また、プレキシンD1-Fcを発現させることにより、糖尿病マウスにおけるsema3Eによる新規血管形成の低下が改善されることが判明した。
上記のように、sema3EおよびプレキシンD1が後肢虚血のマウスモデルにおいて生後血管新生を阻害することが証明された。上記結果はまた、sema3EがVEGFR-2およびその伝達経路下流の活性化を妨げることにより血管新生を阻害することを示唆する。sema3Eはニューロピリン1(neuropillin-1)に結合しない(非特許文献12)が、sema3Eによる軸策ガイダンスはプレキシンD1に加えてニューロピリン1を必要とするため、リガンドおよび受容体複合体の会合がsema3Eの機能的作用に関連すると考えられる(Chauvet, S. et al.Gating of Sema3E/PlexinD1 signaling by neuropilin-1 switches axonal repulsionto attraction during brain development. Neuron 56, 807-22 (2007).)。他方、ニューロピリン1はまたVEGFR-2に結合し、VEGF情報伝達の調節に重要な役割を果たす(Soker, S., Takashima, S., Miao, H.Q., Neufeld, G. & Klagsbrun,M. Neuropilin-1 is expressed by endothelial and tumor cells as anisoform-specific receptor for vascular endothelial growth factor. Cell 92,735-45 (1998).)。したがって、sema3Eはニューロピリン1の供給を制限することによりVEGFによる血管新生を阻害するのかもしれない。抗VEGF中和抗体処理が血管新生に対するsema3Eの阻害作用を完全には解消しない(図1f)ことから、これら作用はsema3E-プレキシンD1の未知の情報伝達経路下流に起因するかもしれない。さらに上記結果はp53が虚血組織におけるsema3E発現の誘導に重要であることを示唆する。p53の抗血管新生活性はがん抑制に重要であるため、sema3EおよびプレキシンD1はp53変異を有する悪性腫瘍の治療の潜在的標的であり得る。血糖過多は活性酸素種の産生を増加することによりp53を活性化することが報告されている(Brodsky, S.V. et al.Prevention and reversal of premature endothelial cell senescence andvasculopathy in obesity-induced diabetes by ebselen. Circ Res 94, 377-84(2004).)。要するに、p53により誘導される抗血管新生因子、例えばsema3Eの増加方向への調節が、おそらく糖尿病患者の血管新生能の低下の原因である。したがって、従来の治療的血管新生療法が糖尿病における虚血性心血管系疾患でさほど効果的ではない(非特許文献4、非特許文献5)現状において、sema3EおよびプレキシンD1は有効な治療の標的となり得る。
VEGF処理後のヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の増殖がsema3Eにより濃度依存的に抑制されたこと、および、sema3Eによる該抑制がプレキシンD1-Fc融合タンパク質により改善されたことを示す図である。縦軸は細胞数(cell count)を示す。図中、「★」は、VEGF、sema3E、およびプレキシンD1-Fc融合タンパク質非処理の場合と比較してP<0.01で有意差があることを示す。「#」および「##」は、VEGF処理であってsema3EおよびプレキシンD1-Fc融合タンパク質非処理の場合と比較してそれぞれP<0.05およびP<0.01で有意差があることを示す。「§」は、VEGFおよびsema3処理であってプレキシンD1-Fc融合タンパク質非処理の場合と比較してP<0.01で有意差があることを示す。 VEGF処理後のHUVECによる脈管形成がsema3Eにより抑制されたことを示す図である。脈管形成は、血管面積の領域当りの割合(Vessel area(%/ field))で表示した。図中、「★」は、VEGFおよびsema3E非処理の場合と比較してP<0.01で有意差があることを示す。「#」および「##」は、VEGF処理であってsema3E非処理の場合と比較してそれぞれP<0.05およびP<0.01で有意差があることを示す。 VEGF処理後のHUVECによる脈管形成がsema3Eにより抑制されたこと、およびsema3Eによる該抑制がプレキシンD1-Fc融合タンパク質により改善されたことを示す図である。左上パネルは無処理のHUVEC(Control)、右上パネルはVEGF(50 ng/mL)で処理したHUVEC(VEGF)、左下パネルはVEGF(50 ng/mL)と sema3E (5 nM)で処理したHUVEC(V+S)、右下パネルはVEGF(50 ng/mL)、 sema3E(5 nM)およびプレキシンD1-Fc融合タンパク質(V+S+Fc)処理したHUVECを示す。目盛り線は300μm。 VEGF処理したHUVEC(VEGFと表示)と、VEGFおよびsema3Eで処理したHUVEC(V+Sと表示)において、細胞内VEGF情報伝達経路をウエスタンブロットにより比較検討した結果を示す図である。VEGF処理により増加したERKおよびAktのリン酸化(pERKおよびpAkt)は、sema3Eにより阻害された。図中、「Control」は無処理の細胞を示す。 VEGF処理したHUVEC(VEGFと表示)と、VEGFおよびsema3Eで処理したHUVEC(V+Sと表示)において、リン酸化VEGF受容体2(pVEGFR2)のレベルを比較検討した結果を示す図である。HUVECは溶解後、抗VEGFR2抗体により免疫沈降し(図中、IPと表示する)、抗リン酸化チロシン抗体を用いてpVEGFR2を検出した。図中、「Control」は無処理の細胞を示す。 VEGF処理による脈管形成を抗VEGF中和抗体の存在下で検討した結果を示す図である。抗VEGF中和抗体の存在下ではsema3EはVEGF処理による脈管形成を有意には阻害しなかった。脈管形成は、血管面積の領域当りの割合(Vessel area(%/ field))で表示した。図中、「Control」はVEGF処理細胞による脈管形成を示す。「nV」は抗VEGF中和抗体存在下でのVEGF処理細胞による脈管形成を示す。「nV+sema3」は抗VEGF中和抗体およびsema3E存在下でのVEGF処理細胞による脈管形成を示す。「★」は、Controlと比較してP<0.01で有意差があることを示す。 VEGF処理による細胞増殖を抗VEGF中和抗体の存在下で検討した結果を示す図である。抗VEGF中和抗体の存在下ではsema3EはVEGF処理による細胞増殖を有意には阻害しなかった。縦軸は細胞数(cell count)を示す。図中、「Control」はVEGF処理による細胞増殖を示す。「nV」は抗VEGF中和抗体存在下でのVEGF処理による細胞増殖を示す。「nV+sema3」は抗VEGF中和抗体およびsema3E存在下でのVEGF処理による細胞増殖を示す。「★」は、Controlと比較してP<0.01で有意差があることを示す。 マウス虚血肢モデルにおける外科手術後3日目、7日目、および10日目(図中、それぞれD3、D7、およびD10と表示)の虚血後肢のsema3E発現をウエスタンブロット解析した結果を示す図である。図中、「sham」は偽手術を施したマウスを示す図である。 マウス虚血肢モデルにおける外科手術後3日目、7日目、および10日目(図中、それぞれD3、D7、およびD10と表示)の虚血後肢のsema3EおよびプレキシンD1の発現をリアルタイムPCRで分析した結果を示す図である。図中、「sham」は偽手術を施したマウスを示す。「★」は、shamと比較してP<0.01で有意差があることを示す。データは平均値±標準誤差で表す。 マウス虚血肢モデルにおける外科手術後10日目の虚血後肢におけるsema3E(上パネル)およびプレキシンD1(下パネル)の発現を免疫組織化学分析した結果を示す図である。切片はCD31と共に二重染色した。左パネルはsema3EまたはプレキシンD1の染色像を、中央パネルはCD31の染色像を示す。右パネルは、左パネルの染色像と中央パネルの染色像とを重ね合わせた図である。目盛り線は100μm。 プレキシンD1-Fc発現ベクターまたはで空ベクターで処理したマウスの外科手術後10日目の虚血後肢における血流回復を比較して示す図である。図中、「plexinD1-Fc」はプレキシンD1-Fc発現ベクターで処理したマウス、「control」は空ベクターで処理したマウスを示す。縦軸は、虚血組織における血流の非虚血組織のものに対する割合(Blood flow ratio(Ischemic/Nonischemic)で示す。データは平均値±標準誤差で表す。「★★」は、controlと比較してP<0.01で有意差があることを示す。 プレキシンD1-Fc発現ベクターまたはで空ベクターで処理したマウスの虚血後肢における外科手術後10日目の血管新生を比較した図である。図中、「plexinD1-Fc」はプレキシンD1-Fc発現ベクターで処理したマウス、「control」は空ベクターで処理したマウスを示す。左パネルおよび中央パネルはCD31の免疫組織化学分析の結果を示し、目盛り線は100μmである。右パネルは、血管面積の領域当りの割合(Vessel area(%/ field))を示す。データは平均値±標準誤差で表す。「★」は、controlと比較してP<0.05で有意差があることを示す。 空ベクター(control)、VEGF発現ベクター(VEGF)、sema3E発現ベクターおよびVEGF発現ベクター(3E+VEGF)、またはsema3E発現ベクターおよびVEGF発現ベクターおよびプレキシンD1-Fc発現ベクター(3E+VEGF+Fc)で処理したマウスの虚血後肢における血流回復(左パネル)および血管面積(右パネル)を示す図である。また、データは平均値±標準誤差で表す。血流回復は、虚血組織における血流の非虚血組織のものに対する割合(Bloodflow ratio (Ischemic/Nonischemic)で示す。血管面積は、血管面積の領域当りの割合(Vessel area(%/ field))を示す。「★」および「★★」は、controlと比較してそれぞれP<0.05およびP<0.01で有意差があることを示す。「#」および「##」は、VEGF発現ベクター処理マウスと比較してそれぞれP<0.05およびP<0.01で有意差があることを示す。「§」および「§§」は、sema3E発現ベクターおよびVEGF発現ベクターで処理したマウスと比較してそれぞれP<0.05およびP<0.01で有意差があることを示す。 sema3Eノックアウトマウス(sema3E KO)および野生型マウス(WT)の虚血後肢における血流回復(上パネル)および血管面積(下パネル)を示す図である。血流回復は、外科手術後0日目(D0)、3日目(D3)、7日目(D7)、および10日目(D10)に測定し、虚血組織における血流の非虚血組織のものに対する割合(Blood flow ratio(Ischemic/Nonischemic)で示す。血管面積は10日目に測定し、血管面積の領域当りの割合(Vessel area(%/ field))を示す。データは平均値±標準誤差で表す。「★」は、野生型マウスと比較してP<0.05で有意差があることを示す。 sema3Eノックアウトマウス(sema3E KO)および野生型マウス(WT)の虚血後肢における血管新生を、CD31の免疫組織化学分析により比較して示す図である。目盛り線は100μmである。 p53をコードするアデノウイルスベクター(Ad-p53)または空ベクター(Ad-mock)を感染させた内皮細胞におけるsema3Eおよびp53の発現をウエスタンブロット解析した結果を示す図である。 HPV16E6をコードするレトロウイルスベクター(E6)または空ベクター(Mock)を感染させてCoCl2で12時間処理した内皮細胞におけるsema3Eおよびp53の発現をウエスタンブロット解析した結果を示す図である。図中、「Pre」は、CoCl2非処理の内皮細胞におけるそれぞれの発現を示す。 マウス虚血後肢におけるp53発現をウエスタンブロット解析した結果を示す図である。解析は、外科手術後3日目(D3)、7日目(D7)、および10日目(D10)に実施した。図中、「sham」は偽手術を施したマウスを示す。 p53ノックアウトマウス(p53 KO)および野生型マウス(WT)の外科手術後10日目(D10)の虚血後肢におけるsema3E発現をウエスタンブロット解析した結果を示す図である。図中、「sham」は偽手術を施したマウスを示す。 ストレプトゾトシン誘導糖尿病マウスおよびコントロールマウスの虚血後肢において、VEGF発現ベクターまたは空ベクターで処理後の血流回復を示す図である。図中、「Controlv(-)」は、ストレプトゾトシン無処理および空ベクター処理マウス、「Control v(+)」はストレプトゾトシン無処理およびVEGF発現ベクター処理マウス、「STZ v(-)」は、ストレプトゾトシン処理および空ベクター処理マウス、「STZ v(+)」は、ストレプトゾトシン処理およびVEGF発現ベクター処理マウスを示す。データは平均値±標準誤差で表す。血流回復は、外科手術後0日目(D0)、3日目(D3)、7日目(D7)、13日目(D13)、および21日目(D21)のに測定し、虚血組織における血流の非虚血組織のものに対する割合(Bloodflow ratio(Ischemic/Nonischemic)で示す。「★」は、controlと比較してP<0.05で有意差があることを示す。「#」は、ストレプトゾトシン無処理およびVEGF発現ベクター処理マウスと比較してP<0.05で有意差があることを示す。 ストレプトゾトシン誘導糖尿病マウスおよびコントロールマウスの虚血後肢において、VEGF発現ベクターまたは空ベクターで処理後の血管面積を示す図である。データは平均値±標準誤差で表す。図中、「Control」は、ストレプトゾトシン無処理マウス、「STZ」はストレプトゾトシン処理マウスを示す。血管面積は、血管面積の領域当りの割合(Vessel area(%/ field))で示す。「★」は、controlと比較してP<0.05で有意差があることを示す。「#」は、ストレプトゾトシン無処理およびVEGF発現ベクター処理マウスと比較してP<0.05で有意差があることを示す。 ストレプトゾトシン誘導糖尿病マウス(STZ+)およびコントロールマウス(STZ-)の後肢におけるsema3Eおよびp53の発現をウエスタンブロット解析した結果を示す図である ストレプトゾトシン誘導糖尿病マウスの虚血後肢において、VEGF発現ベクターのみ(Fc(-))またはVEGF発現ベクターおよびプレキシンD1-Fc発現ベクター(Fc(+))で処理後の血流回復を示す図である。血流回復は、虚血組織における血流の非虚血組織のものに対する割合(Blood flow ratio(Ischemic/Nonischemic)で示す。データは平均値±標準誤差で表す。「★」は、VEGF発現ベクターのみで処理した場合(Fc(-))と比較してP<0.05で有意差があることを示す。 ストレプトゾトシン誘導糖尿病マウスの虚血後肢において、VEGF発現ベクターのみ(Fc(-))またはVEGF発現ベクターおよびプレキシンD1-Fc発現ベクター(Fc(+))で処理後の血管面積を示す図である。血管面積は、血管面積の領域当りの割合(Vesselarea(%/ field))で示す。データは平均値±標準誤差で表す。「★」は、VEGF発現ベクターのみで処理した場合(Fc(-))と比較してP<0.05で有意差があることを示す。
配列番号1:マウスプレキシンD1の細胞外領域のアミノ酸配列。
配列番号2:配列番号1に記載のマウスプレキシンD1細胞外領域アミノ酸配列をコードする塩基配列。

Claims (29)

  1. 下記の群から選ばれるポリペプチドを含む、虚血性心血管系疾患の治療剤
    (i)配列番号1に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチド、
    (ii)配列番号1に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性を有するアミノ酸配列で表わされるポリペプチドであって、セマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチド、
    (iii)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1乃至10個のアミノ酸の変異を有するポリペプチドであって、セマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチド、
    (iv)前記(i)から(iii)のいずれかのポリペプチドを含むポリペプチドであって、かつセマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチド、および
    (v)前記(i)から(iii)のいずれかのポリペプチドとイムノグロブリンG1のFc部分のポリペプチドとの融合ポリペプチドであって、かつセマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチド。
  2. 下記の群から選ばれるポリヌクレオチドを含む、虚血性心血管系疾患の治療剤
    (vi)配列番号1に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
    (vii)配列番号2に記載の塩基配列で表される前記(vi)のポリヌクレオチド、
    (viii)配列番号2に記載の塩基配列と少なくとも90%の相同性を有する塩基配列で表わされるポリヌクレオチドであって、セマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
    (ix)配列番号2に記載の塩基配列において、1乃至30個のヌクレオチドの変異を有するポリヌクレオチドであって、セマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
    (x)前記(vi)から(ix)のいずれかのポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドであって、かつセマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および
    (xi)前記(vi)から(ix)のいずれかのポリヌクレオチドとイムノグロブリンG1のFc部分のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとの融合ポリヌクレオチドであって、セマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
  3. 配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドとイムノグロブリンG1のFc部分のポリペプチドとの融合ポリペプチドを含む、虚血性心血管系疾患の治療剤。
  4. 配列番号2に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドとイムノグロブリンG1のFc部分のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとの融合ポリヌクレオチドを含む、虚血性心血管系疾患の治療剤。
  5. 血管内皮成長因子(vascular endothelial growth factor、以下VEGFと略称することがある)および/またはVEGFをコードするポリヌクレオチドをさらに含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の治療剤。
  6. 虚血性心血管系疾患が糖尿病に合併する虚血性心血管系疾患である請求項1から5のいずれか1項に記載の治療剤。
  7. 下記の群から選ばれるポリペプチドを含む、血管新生促進剤
    (i)配列番号1に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチド、
    (ii)配列番号1に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性を有するアミノ酸配列で表わされるポリペプチドであって、セマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチド、
    (iii)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1乃至10個のアミノ酸の変異を有するポリペプチドであって、セマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチド、
    (iv)前記(i)から(iii)のいずれかのポリペプチドを含むポリペプチドであって、かつセマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチド、および
    (v)前記(i)から(iii)のいずれかのポリペプチドとイムノグロブリンG1のFc部分のポリペプチドとの融合ポリペプチドであって、かつセマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチド。
  8. 下記の群から選ばれるポリヌクレオチドを含む、血管新生促進剤
    (vi)配列番号1に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
    (vii)配列番号2に記載の塩基配列で表される前記(vi)のポリヌクレオチド、
    (viii)配列番号2に記載の塩基配列と少なくとも90%の相同性を有する塩基配列で表わされるポリヌクレオチドであって、セマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
    (ix)配列番号2に記載の塩基配列において、1乃至30個のヌクレオチドの変異を有するポリヌクレオチドであって、セマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
    (x)前記(vi)から(ix)のいずれかのポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドであって、かつセマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および
    (xi)前記(vi)から(ix)のいずれかのポリヌクレオチドとイムノグロブリンG1のFc部分のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとの融合ポリヌクレオチドであって、セマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
  9. 配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドとイムノグロブリンG1のFc部分のポリペプチドとの融合ポリペプチドを含む、血管新生促進剤。
  10. 配列番号2に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドとイムノグロブリンG1のFc部分のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとの融合ポリヌクレオチドを含む、血管新生促進剤。
  11. 下記の群から選ばれるポリペプチドを対象に投与することを含む、虚血性心血管系疾患の治療方法
    (i)配列番号1に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチド、
    (ii)配列番号1に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性を有するアミノ酸配列で表わされるポリペプチドであって、セマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチド、
    (iii)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1乃至10個のアミノ酸の変異を有するポリペプチドであって、セマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチド、
    (iv)前記(i)から(iii)のいずれかのポリペプチドを含むポリペプチドであって、かつセマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチド、および
    (v)前記(i)から(iii)のいずれかのポリペプチドとイムノグロブリンG1のFc部分のポリペプチドとの融合ポリペプチドであって、かつセマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチド。
  12. 下記の群から選ばれるポリヌクレオチドを対象に投与することを含む、虚血性心血管系疾患の治療方法
    (vi)配列番号1に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
    (vii)配列番号2に記載の塩基配列で表される前記(vi)のポリヌクレオチド、
    (viii)配列番号2に記載の塩基配列と少なくとも90%の相同性を有する塩基配列で表わされるポリヌクレオチドであって、セマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
    (ix)配列番号2に記載の塩基配列において、1乃至30個のヌクレオチドの変異を有するポリヌクレオチドであって、セマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
    (x)前記(vi)から(ix)のいずれかのポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドであって、かつセマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および
    (xi)前記(vi)から(ix)のいずれかのポリヌクレオチドとイムノグロブリンG1のFc部分のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとの融合ポリヌクレオチドであって、セマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
  13. 配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドとイムノグロブリンG1のFc部分のポリペプチドとの融合ポリペプチドを対象に投与することを含む、虚血性心血管系疾患の治療方法。
  14. 配列番号2に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドとイムノグロブリンG1のFc部分のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとの融合ポリヌクレオチドを対象に投与することを含む、虚血性心血管系疾患の治療方法。
  15. 血管内皮成長因子(vascular endothelial growth factor、以下VEGFと略称することがある)および/またはVEGFをコードするポリヌクレオチドを対象にさらに投与することを含む、請求項11から14のいずれか1項に記載の治療方法。
  16. 虚血性心血管系疾患が糖尿病に合併する虚血性心血管系疾患である請求項11から15のいずれか1項に記載の治療方法。
  17. 下記の群から選ばれるポリペプチドを対象に投与することを含む、血管新生促進方法
    (i)配列番号1に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチド、
    (ii)配列番号1に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性を有するアミノ酸配列で表わされるポリペプチドであって、セマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチド、
    (iii)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1乃至10個のアミノ酸の変異を有するポリペプチドであって、セマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチド、
    (iv)前記(i)から(iii)のいずれかのポリペプチドを含むポリペプチドであって、かつセマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチド、および
    (v)前記(i)から(iii)のいずれかのポリペプチドとイムノグロブリンG1のFc部分のポリペプチドとの融合ポリペプチドであって、かつセマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチド。
  18. 下記の群から選ばれるポリヌクレオチドを対象に投与することを含む、血管新生促進方法
    (vi)配列番号1に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
    (vii)配列番号2に記載の塩基配列で表される前記(vi)のポリヌクレオチド、
    (viii)配列番号2に記載の塩基配列と少なくとも90%の相同性を有する塩基配列で表わされるポリヌクレオチドであって、セマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
    (ix)配列番号2に記載の塩基配列において、1乃至30個のヌクレオチドの変異を有するポリヌクレオチドであって、セマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
    (x)前記(vi)から(ix)のいずれかのポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドであって、かつセマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および
    (xi)前記(vi)から(ix)のいずれかのポリヌクレオチドとイムノグロブリンG1のFc部分のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとの融合ポリヌクレオチドであって、セマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
  19. 配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドとイムノグロブリンG1のFc部分のポリペプチドとの融合ポリペプチドを対象に投与することを含む、血管新生促進方法。
  20. 配列番号2に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドとイムノグロブリンG1のFc部分のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとの融合ポリヌクレオチドを対象に投与することを含む、血管新生促進方法。
  21. 虚血性心血管系疾患の治療剤または血管新生促進剤の製造における、下記の群から選ばれるポリペプチドの使用
    (i)配列番号1に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチド、
    (ii)配列番号1に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性を有するアミノ酸配列で表わされるポリペプチドであって、セマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチド、
    (iii)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1乃至10個のアミノ酸の変異を有するポリペプチドであって、セマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチド、
    (iv)前記(i)から(iii)のいずれかのポリペプチドを含むポリペプチドであって、かつセマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチド、および
    (v)前記(i)から(iii)のいずれかのポリペプチドとイムノグロブリンG1のFc部分のポリペプチドとの融合ポリペプチドであって、かつセマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチド。
  22. 虚血性心血管系疾患の治療剤または血管新生促進剤の製造における、下記の群から選ばれるポリヌクレオチドの使用
    (vi)配列番号1に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
    (vii)配列番号2に記載の塩基配列で表される前記(vi)のポリヌクレオチド、
    (viii)配列番号2に記載の塩基配列と少なくとも90%の相同性を有する塩基配列で表わされるポリヌクレオチドであって、セマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
    (ix)配列番号2に記載の塩基配列において、1乃至30個のヌクレオチドの変異を有するポリヌクレオチドであって、セマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
    (x)前記(vi)から(ix)のいずれかのポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドであって、かつセマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および
    (xi)前記(vi)から(ix)のいずれかのポリヌクレオチドとイムノグロブリンG1のFc部分のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとの融合ポリヌクレオチドであって、セマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
  23. 虚血性心血管系疾患の治療剤または血管新生促進剤の製造における、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドとイムノグロブリンG1のFc部分のポリペプチドとの融合ポリペプチドの使用。
  24. 虚血性心血管系疾患の治療剤または血管新生促進剤の製造における、配列番号2に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドとイムノグロブリンG1のFc部分のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとの融合ポリヌクレオチドの使用。
  25. 下記の工程を含む、セマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有する化合物の同定方法
    (1)被検化合物をセマフォリン3Eおよび/またはプレキシンD1と接触させる工程、
    (2)セマフォリン3EとプレキシンD1の結合を測定する工程、
    (3)セマフォリン3EとプレキシンD1の結合を阻害する被検化合物を、セマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有する化合物として選択する工程。
  26. プレキシンD1が培養細胞に発現されているプレキシンD1である請求項25に記載の方法。
  27. セマフォリン3Eの血管新生抑制作用が、血管内皮成長因子(vascular endothelial growth factor)による血管新生に対するセマフォリン3Eの血管新生抑制作用である請求項25または26に記載の方法。
  28. 下記の工程を含む、セマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有する化合物の同定方法
    (1)被検化合物をセマフォリン3Eおよび/またはプレキシンD1を発現する細胞と接触させる工程、
    (2)セマフォリン3Eおよび/またはプレキシンD1の発現を測定する工程、
    (3)セマフォリン3Eおよび/またはプレキシンD1の発現を阻害する被検化合物を、セマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有する化合物として選択する工程。
  29. 下記の工程を含む、セマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有する化合物の同定方法
    (1)被検化合物を、血管内皮成長因子(vascularendothelial growth factor、以下VEGFと略称することがある)受容体およびプレキシンD1を発現した培養血管内皮細胞と接触させる工程、
    (2)VEGF、または、VEGFおよびセマフォリン3Eを上記細胞に接触させる工程
    (3)細胞の増殖および/または脈管形成を測定する工程、
    (4)細胞の増殖および/または脈管形成を促進する被検化合物を、セマフォリン3Eの血管新生抑制作用を阻害する効果を有する化合物として選択する工程。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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EP2941270A4 (en) * 2013-01-03 2016-11-02 Univ New York METHODS FOR TREATING INFLAMMATION

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