JP2010111208A - サスペンション装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 要求減衰力の制御範囲が圧側における減衰力特性の可変範囲および伸側における減衰力特性の可変範囲の双方に適合した減衰力特性制御を行うこと。
【解決手段】 圧側領域では第一減衰係数CH1に基づいて可変絞り機構30が制御され、伸側領域では第二減衰係数CH2に基づいて可変絞り機構30が制御される。第一減衰係数CH1の第一線形減衰係数Cs1は圧側における減衰力特性の可変範囲Aに基づいて、第二減衰係数CH2の第二線形減衰係数Cs2は伸側における減衰力特性の可変範囲Bに基づいて、それぞれ予め設定されている。このため、圧側のリサージュ波形は可変範囲Aに良好に重ね合わされ、伸側のリサージュ波形は伸側の可変範囲Bに良好に重ね合わされる。よって、要求減衰力の制御範囲が圧側の可変範囲Aおよび伸側の可変範囲Bの双方に適合した減衰力特性制御を行うことができる。
【選択図】 図7

Description

本発明は、車両のサスペンション装置に係り、特に、減衰力特性を変更することができる可変減衰型の減衰力発生手段を備えるサスペンション装置に関する。
車両のサスペンション装置は、サスペンションスプリングおよびショックアブソーバを備える。サスペンションスプリングは路面から入力される上下振動を吸収する。ショックアブソーバは上記振動を減衰する減衰力を発生する。
乗り心地や接地性を向上させるために、車両の走行状況に応じて減衰力特性を変更することができるショックアブソーバが搭載されたサスペンション装置が知られている。このような可変減衰型のショックアブソーバにおいては、制御器(コントローラ)により計算された減衰係数に基づいてその減衰力特性が可変制御されることにより、最適な振動減衰制御が行われる。
ショックアブソーバの減衰力特性を可変制御するにあたり、可変分の制御量を計算する制御理論として非線形H∞制御則を適用するサスペンション装置も知られている。この可変制御によれば、予め設定されている線形減衰係数に非線形H∞制御則に基づき算出された可変減衰係数を加算して要求減衰係数が決定され、決定された要求減衰係数に基づいてショックアブソーバの減衰力特性が制御される。特許文献1には、各車輪に対応した各バネ下部材の上下方向に沿った振動に係る運動と、バネ上部材の上下方向に沿った振動に係る運動と、バネ上部材のローリングに係る運動と、バネ上部材のピッチングに係る運動とから導かれる合計7自由度の運動方程式に基づき、バネ上部材と各バネ下部材とを連結するショックアブソーバの減衰係数を非線形H∞制御則に基づいて制御するサスペンション装置が記載されている。
特開2006−160815号公報
ところで、実際のショックアブソーバの減衰力特性の可変範囲(実際に実現可能な減衰力特性の範囲)は、バネ上−バネ下相対速度が正である場合と負である場合とで異なることが多い。図9はショックアブソーバの減衰力特性を示した図である。図において、横軸がバネ上−バネ下相対速度(以下、相対速度という場合もある)xpw’−xpb’、縦軸が減衰力Fである。この図において、相対速度が正、すなわちショックアブソーバが縮む側(以下、圧側と称する)において最も勾配の小さい減衰力特性線と最も勾配の大きい減衰力特性線とに挟まれた範囲が、圧側における減衰力特性の可変範囲Aである。また、相対速度が負、すなわちショックアブソーバが伸びる側(以下、伸側と称する)において最も勾配の小さい減衰力特性線と最も勾配の大きい減衰力特性線とに挟まれた範囲が、伸側における減衰力特性の可変範囲Bである。図からわかるように、圧側における減衰力特性の可変範囲Aと伸側における減衰力特性の可変範囲Bは、原点を中心に対称とはならない。また、圧側の可変範囲Aは伸側の可変範囲Bよりも狭い。具体的には、圧側において可変範囲Aに対応する減衰力の可変幅は、伸側において可変範囲Bに対応する減衰力の可変幅よりも小さい。さらに、圧側における可変範囲Aのほぼ中央を通る平均的な勾配を表す圧側平均減衰係数Cは、伸側における可変範囲Bのほぼ中央を通る平均的な勾配を表す伸側平均減衰係数Cよりも小さい。
これに対し、特許文献1に記載のように非線形H∞制御則を用いて算出される要求減衰係数によって表される減衰力、すなわち制御目標となる要求減衰力は、原点を中心にほぼ対称に広がる。図10は、図9に示されるショックアブソーバの減衰力特性の可変範囲と、非線形H∞制御則を用いて計算した要求減衰係数により表される要求減衰力のバネ上−バネ下相対速度に対する変化を示すリサージュ波形を比較した図である。このリサージュ波形により表される範囲が、要求減衰力の制御範囲である。図10からわかるように、ショックアブソーバの圧側におけるリサージュ波形形状と伸側におけるリサージュ波形形状は、それぞれ同じような傾き角度となる。このため、圧側におけるリサージュ波形を圧側における減衰力特性の可変範囲に合わせた場合、伸側におけるリサージュ波形が伸側における減衰力特性の可変範囲にうまく一致しない。具体的には、伸側において、減衰力の小さい領域ではリサージュ波形が減衰力特性の可変範囲Bから飛び出してしまっているのに対し、減衰力の大きい領域では減衰力特性の可変範囲Bにリサージュ波形が重ね合わされていない不使用領域Cが存在する。この不使用領域Cは、図に示すように可変範囲Bのかなり広い領域に亘って形成されている。このことは、非線形H∞制御則を用いて減衰力特性を制御した場合に、ショックアブソーバの伸側において十分にショックアブソーバの発揮し得る減衰力特性が使い切れていないことを表す。
すなわち、従来の非線形H∞制御理論を利用した減衰力特性制御では、要求減衰力の制御範囲を圧側における減衰力特性の可変範囲と伸側における減衰力特性の可変範囲の双方に合わせた制御を行うことができなかった。故に、本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、非線形H∞制御則に基づいてショックアブソーバの減衰力特性を制御する場合において、要求減衰力の制御範囲が圧側における減衰力特性の可変範囲および伸側における減衰力特性の可変範囲の双方に適合した減衰力特性制御を行うことを、その技術的課題とする。
本発明の特徴は、車両のバネ下部材に対するバネ上部材の振動を減衰するための減衰力を発生する減衰力発生手段と、前記減衰力発生手段により発生される減衰力のバネ上−バネ下相対速度に対する特性である減衰力特性を変更する減衰力特性変更手段と、バネ上−バネ下相対速度が正である場合における前記減衰力特性の可変範囲に基づいて予め設定された第一線形減衰係数と、非線形H∞制御則に基づいて算出される第一可変減衰係数との和により第一減衰係数を計算する第一非線形H∞制御手段と、バネ上−バネ下相対速度が負である場合における前記減衰力特性の可変範囲に基づいて予め設定された第二線形減衰係数と、非線形H∞制御則に基づいて算出される第二可変減衰係数との和により第二減衰係数を計算する第二非線形H∞制御手段と、バネ上−バネ下相対速度が正であるときには前記第一減衰係数に基づいて前記減衰力特性変更手段を制御し、バネ上−バネ下相対速度が負であるときには前記第二減衰係数に基づいて前記減衰力特性変更手段を制御する統合制御手段と、を備えるサスペンション装置としたことにある。
上記発明によれば、相対速度が正であるときには、第一非線形H∞制御手段により計算される第一減衰係数に基づいて減衰力特性変更手段が制御される。第一減衰係数は、非線形H∞制御則に基づき算出される第一可変減衰係数に第一線形減衰係数を加算して求められる。ここで、第一線形減衰係数は、相対速度が正である場合における減衰力特性の可変範囲に基づいて予め設定されている。このため、第一線形減衰係数を用いて計算された第一減衰係数によって表される要求減衰力の制御範囲を、相対速度が正である場合における減衰力特性の可変範囲に合わせることができる。
また、相対速度が負であるときには、第二非線形H∞制御手段により計算される第二減衰係数に基づいて減衰力特性変更手段が制御される。第二減衰係数は、非線形H∞制御則に基づき算出される第二可変減衰係数に第二線形減衰係数を加算して求められる。ここで、第二線形減衰係数は、相対速度が負である場合における減衰力特性の可変範囲に基づいて予め設定されている。このため、第二線形減衰係数を用いて計算された第二減衰係数により表される要求減衰力の制御範囲を、相対速度が負である場合における減衰力特性の可変範囲に合わせることができる。
したがって、例えば相対速度が正である場合を減衰力発生手段としてのショックアブソーバの圧側とし、相対速度が負である場合をショックアブソーバの伸側とした場合、圧側においては第一減衰係数により表される要求減衰力に基づいて減衰力特性が制御される。このため圧側における要求減衰力の制御範囲を圧側の可変範囲に合わせることができる。また、伸側においては第二減衰係数により表される要求減衰力に基づいて減衰力特性が制御される。このため伸側における要求減衰力の制御範囲を伸側の可変範囲に合わせることができる。つまり、本発明によれば、圧側と伸側のそれぞれの可変範囲に基づいて線形減衰係数を別々に設定しているので、要求減衰力の制御範囲が圧側における減衰力特性の可変範囲および伸側における減衰力特性の可変範囲の双方に適合した減衰力特性制御を行うことができる。
この場合、第一線形減衰係数は、バネ上−バネ下相対速度が正である場合における減衰力特性の可変範囲に適合する減衰係数として予め設定され、第二線形減衰係数は、バネ上−バネ下相対速度が負である場合における減衰力特性の可変範囲に適合する減衰係数として予め設定されているとよい。さらに言えば、第一線形減衰係数は、減衰力特性図上にてバネ上−バネ下相対速度が正である場合(例えば圧側)における減衰力特性の可変範囲のほぼ中央を通る直線により表されるように予め設定され、第二線形減衰係数は、減衰力特性図上にてバネ上−バネ下相対速度が負である場合(例えば伸側)における減衰力特性の可変範囲のほぼ中央を通る直線により表されるように予め設定されているとよい。このように可変範囲に応じてそれぞれ線形減衰係数を別々に設定することにより、要求減衰力の制御範囲を示すリサージュ波形が圧側および伸側の減衰力特性の可変範囲の双方に良好に重ね合わされる。よって、リサージュ波形が可変範囲からはみ出す領域を減らすことができるとともに、リサージュ波形が可変範囲に重ね合わされていない領域(不使用領域)を小さくすることができる。
また、前記統合制御手段は、バネ上−バネ下相対速度が正であるときには前記第一減衰係数に基づいて要求減衰力を決定し、バネ上−バネ下相対速度が負であるときには前記第二減衰係数に基づいて要求減衰力を決定する要求減衰力決定手段と、前記要求減衰力に基づいて前記減衰力特性変更手段を制御する減衰力制御手段と、を備えるものであるのがよい。これによれば、要求減衰力決定手段によって、バネ上−バネ下相対速度の正負に基づき要求減衰力が決定される。そして、減衰力制御手段によって、決定された要求減衰力に基づき減衰力特性変更手段が制御される。
この場合、減衰力制御手段は、減衰力発生手段により発生される減衰力が、要求減衰力決定手段によって決定された要求減衰力となるように、減衰力特性変更手段を制御してもよい。また、減衰力特性が段階的に設定可能であって、減衰力特性が設定段数により表すことができるときは、統合制御手段は、要求減衰力決定手段により決定された要求減衰力に基づいて要求段数を決定する要求段数決定手段を備え、前記減衰力制御手段は、減衰力特性の設定段数が要求段数決定手段により決定された要求段数となるように、減衰力特性変更手段を制御するものであるのがよい。
また、前記第一非線形H∞制御手段は、バネ上−バネ下相対速度が正である場合における前記減衰力特性の可変範囲に対応する減衰力の可変幅に基づいて予め設定された非線形重みを用いて非線形H∞制御則に基づき前記第一可変減衰係数を算出し、前記第二非線形H∞制御手段は、バネ上−バネ下相対速度が負である場合における前記減衰力特性の可変範囲に対応する減衰力の可変幅に基づいて予め設定された非線形重みを用いて非線形H∞制御則に基づき前記第二可変減衰係数を算出するものであるのがよい。より好ましくは、第一非線形H∞制御手段は、バネ上−バネ下相対速度が正である場合における減衰力特性の可変範囲に対応する減衰力の可変幅と要求減衰力の制御範囲(リサージュ波形)の膨らみが同程度となるように予め設定された非線形重みを用いて、非線形H∞制御則に基づき可変減衰係数を算出するとよい。また、第二非線形H∞制御手段は、バネ上−バネ下相対速度が負である場合における減衰力特性の可変範囲に対応する減衰力の可変幅と要求減衰力の制御範囲(リサージュ波形)の膨らみが同程度となるように予め設定された非線形重みを用いて、非線形H∞制御則に基づき可変減衰係数を算出するものであるのがよい。
非線形H∞制御則に基づいて算出される可変減衰係数は、非線形重みの調整によりその大きさを調整することができる。このことは、非線形重みの調整により要求減衰力の制御範囲を示すリサージュ波形の膨らみを調整することができることを表す。したがって、例えば、相対速度が正の領域を圧側の領域とした場合には、圧側領域における減衰力特性の可変範囲に対応する減衰力の可変幅とリサージュ波形の膨らみが同程度となるように、可変幅に適合する非線形重み(圧側非線形重み)を設定し、この圧側非線形重み用いて非線形H∞制御則に基づき第一非線形減衰係数を算出することにより、圧側において要求減衰力のリサージュ波形と可変範囲とをより良好に重ね合わせることができる。これにより、リサージュ波形が圧側の可変範囲からはみ出す部分をより少なくすることができるとともに、圧側における減衰力特性の不使用領域をより小さくすることができる。同様に、例えば相対速度が負である領域を伸側の領域とした場合には、伸側領域における減衰力特性の可変範囲に対応する減衰力の可変幅とリサージュ波形の膨らみが同程度となるように、可変幅に適合する非線形重み(伸側非線形重み)を設定し、この伸側非線形重みを用いて非線形H∞制御則に基づき第二非線形減衰係数を算出することにより、伸側においてリサージュ波形と可変範囲とをより良好に重ね合わせることができる。これにより、リサージュ波形が可変範囲からはみ出す部分をより少なくすることができるとともに、減衰力特性の不使用領域をより小さくすることができる。
なお、非線形重みをどの程度の大きさに設定するのかは、実際の減衰力発生手段によって発生される減衰力の可変幅により異なるために一概に言えない。しかし、リサージュ波形の膨らみは、非線形重みが小さいほど小さくなり、大きいほど大きくなる傾向を呈するため、可変幅が小さい場合には非線形重みを小さく設定し、可変幅が大きい場合には非線形重みを大きく設定するのがよい。
本発明のサスペンション装置は、減衰力発生手段の減衰力特性の可変範囲が相対速度の正負によっては変わらないものにも適用してもよいが、相対速度の正負によって減衰力特性の可変範囲が異なるものに好適である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。図1は、本実施形態のサスペンション装置1の全体概略図である。このサスペンション装置1は、車両の上下振動を吸収および減衰するもので、サスペンション機構SPと電気制御装置ELを備えている。
サスペンション機構SPは、サスペンションスプリング10とショックアブソーバ20を備えている。サスペンションスプリング10およびショックアブソーバ20の一端(下端)はバネ下部材LAに接続され、他端(上端)はバネ上部材HAに接続されている。サスペンションスプリング10は、路面からバネ下部材LAを介して伝達される振動を吸収する。ショックアブソーバ20はサスペンションスプリング10と並行に配置されており、上記振動を減衰する。なお、車輪に連結されたナックルや、一端がナックルに連結されたロアアーム等がバネ下部材LAに相当する。バネ上部材HAは、サスペンションスプリング10およびショックアブソーバ20に支持される部材であり、車体もバネ上部材HAに含まれる。
ショックアブソーバ20は、シリンダ21と、ピストン22と、ピストンロッド23と、フリーピストン24を備える。シリンダ21は筒状部材であり、その下端がバネ下部材LAであるロアアームに連結されている。ピストン22はシリンダ21内に配設され、シリンダ21の内部空間を軸方向に移動可能に構成されている。ピストンロッド23は棒状の部材であって、その一端がピストン22に接続され、その接続端からシリンダ21の軸方向に延設されてシリンダ21の上端から外部に突き出ている。そして、他端がバネ上部材HAである車体に連結されている。フリーピストン24は、シリンダ21内にてピストン22の下方に配置されている。
図に示されるように、シリンダ21の内部に配設されたピストン22によって、シリンダ21内に上部室21aと下部室21bが区画形成されている。下部室21bの下部にフリーピストン24が配置されている。このフリーピストン24とシリンダ21の底面との間に高圧または大気圧のガス室25が形成されている。また、ピストン22には連通路22cが形成されている。この連通路22cは、上部室21aに面している上面22aと下部室21bに面している下面22bとに開口し、上部室21aと下部室21bとを連通している。
上記構造のショックアブソーバ20において、車両走行中に路面凹凸などによってバネ下部材LAが上下に振動した場合に、この上下振動がバネ下部材LAからショックアブソーバ20のシリンダ21に伝達され、シリンダ21も上下に振動する。ピストン22はシリンダ21内に配設されているから、シリンダ21の上下振動によって上下方向に相対変位する。この相対変位に伴い連通路22c内を粘性流体が流通する。この流通時に発生する粘性抵抗が上下振動に対する減衰力となって、バネ下部材LA(シリンダ21側)に対するバネ上部材HA(ピストン22側)の振動が減衰する。このように、本実施形態のショックアブソーバ20は、車両のバネ下部材LAとバネ上部材HAである車体との間に介装され、バネ下部材LAに対するバネ上部材HAの上下振動を減衰するための減衰力を発生する減衰力発生手段に相当する。
また、サスペンション機構SPは、可変絞り機構30を備える。この可変絞り機構30は、バルブ31およびアクチュエータ32を有する。バルブ31はピストン22に形成された連通路22cに設けられており、公知の絞り機構によって、連通路22cの少なくとも一部の流路断面積の大きさ、すなわち開度OPを変化させる。バルブ31は、例えば連通路22c内に組み込まれたロータリーバルブにより構成することができる。ロータリーバルブの回転角を変化させて流路断面積を変更させることにより、開度OPが変化される。また、アクチュエータ32はバルブ31に接続されている。このアクチュエータ32の駆動に連動してバルブ31が作動する。アクチュエータ32は、例えばバルブ31が上記のようにロータリーバルブである場合に、このロータリーバルブを回転させるためのモータにより構成することができる。なお、アクチュエータ32は段階的(間歇的)に作動する。このためアクチュエータ32の段階的な作動にしたがって、開度OPも段階的に設定される。
アクチュエータ32の駆動に伴うバルブ31の作動によって開度OPが変更された場合、連通路22c内を粘性流体が流通するときの抵抗力も変更される。この抵抗力は上述したようにショックアブソーバ20の減衰力である。したがって、開度OPが変更されれば、減衰力の大きさを表す減衰係数も変更される。
また、上述のように開度OPは段階的に設定されるため、ショックアブソーバ20の減衰力特性も図9に示すように段階的に変化していく。本実施形態において、開度OPは9段階に設定可能とされている。したがって、減衰力特性も、図に示すように開度OPの設定段数にしたがって9段階に変化する。各減衰力特性は、設定される開度OPの設定段数により表される。すなわち各減衰力特性は、開度OPの設定段数に習って、1段、2段、・・・、9段というように段数表示される。この段数は、上述のように可変絞り機構30の作動により変更される。したがって、可変絞り機構30が、本発明の減衰力特性変更手段に相当する。
また、ショックアブソーバ20の減衰力特性の可変範囲は、上述したようにバネ上−バネ下相対速度の正負によって異なる。すなわち、図9に示すように、相対速度が正であるときの減衰力特性の可変範囲、つまり圧側の可変範囲Aと、相対速度が負であるときの減衰力特性の可変範囲、つまり伸側の可変範囲Bとは、原点を中心に対称とはならない。また、可変範囲Aにおける減衰力の可変幅は、可変範囲Bにおける減衰力の可変幅よりも狭い。さらに、可変範囲Aのほぼ中央を通る平均的な勾配を表す圧側平均減衰係数Cは、可変範囲Bのほぼ中央を通る平均的な勾配を表す伸側平均減衰係数Cよりも小さい。
ちなみに、圧側平均減衰係数Cが伸側平均減衰係数Cよりも小さい理由は以下の通りである。ショックアブソーバ20が伸びるときには、ピストン22がシリンダ21に対して上方に変位するため、下部室21bの圧力が降下する。一方、ショックアブソーバ20が縮むときには、ピストン22がシリンダ21に対して下方に変位するため、上部室21aの圧力が降下する。また、ピストン22の相対変位に伴う上部室21aおよび下部室21bの圧力変化量は、ショックアブソーバ20の減衰力(減衰係数)が大きいほど大きくなる。この場合、ショックアブソーバ20が伸びたときにおける下部室21bの圧力降下は、ガス室25との間の圧力差によってフリーピストン24が上方移動することで緩和される。このため伸側における減衰力を多少大きくしても、すなわち伸側平均減衰係数Cを大きくしても、下部室21bの圧力降下を抑えることができる。これに対し、ショックアブソーバ20が縮んだときにおける上部室21aの圧力降下に対しては、フリーピストン24による圧力降下の抑制が望めない。このため、上部室21a内の圧力降下が大きくなってキャビテーションが発生することのないように、圧側における減衰力、すなわち圧側平均減衰係数Cは比較的小さく設定される。以上のことから、圧側平均減衰係数Cが伸側平均減衰係数Cよりも小さくされているのである。また、同様の理由から、可変範囲Aにおける減衰力の可変幅は、可変範囲Bにおける減衰力の可変幅よりも小さくされている。
次に、電気制御装置ELについて説明する。電気制御装置ELは、バネ上加速度センサ51と、バネ下加速度センサ52と、ストロークセンサ53と、タイヤ変位量センサ54と、マイクロコンピュータ60を備えて構成されている。バネ上加速度センサ51は車体に組み付けられていて、絶対空間に対するバネ上部材HAの上下方向の加速度であるバネ上加速度xpb”を検出し、検出したバネ上加速度xpb”に応じた信号を出力する。バネ下加速度センサ52はバネ下部材LAに固定され、絶対空間に対するバネ下部材LAの上下方向の加速度であるバネ下加速度xpw”を検出し、検出したバネ下加速度xpw”に応じた信号を出力する。ストロークセンサ53は、バネ上部材HAとバネ下部材LAとの間に配設されており、バネ上部材HAの基準位置からの上下方向の変位量であるバネ上変位量xpbとバネ下部材LAの基準位置からの上下方向の変位量であるバネ下変位量xpwとの差であるバネ上−バネ下相対変位量xpw−xpbを検出し、検出したバネ上−バネ下相対変位量xpw−xpbに応じた信号を出力する。タイヤ変位量センサ54は、路面の基準位置からの上下方向の変位量である路面変位量xprとバネ下変位量xpwとの差であるバネ下相対変位量xpr−xpwを検出し、検出したバネ下相対変位量xpr−xpwに応じた信号を出力する。
なお、バネ上加速度センサ51およびバネ下加速度センサ52は上方向に向かう加速度を正の加速度として検出し、下方向に向かう加速度を負の加速度として検出する。また、ストロークセンサ53は、正のバネ上変位量がバネ上部材HAの基準位置から上方向への変位量、負のバネ上変位量がバネ上部材HAの基準位置から下方向への変位量であり、正のバネ下変位量がバネ下部材LAの基準位置から上方向への変位量、負のバネ下変位量がバネ下部材LAの基準位置から下方向への変位量である場合における、相対変位量を検出する。また、タイヤ変位量センサ54は、正のバネ下変位量がバネ下部材LAの基準位置から上方向への変位量、負のバネ下変位量がバネ下部材LAの基準位置から下方向への変位量であり、正の路面変位量が路面の基準位置から上方向への変位量、負の路面変位量が路面の基準位置から下方向への変位量である場合における、相対変位量を検出する。
マイクロコンピュータ60は、バネ上加速度センサ51、バネ下加速度センサ52、ストロークセンサ53およびタイヤ変位量センサ54に電気的に接続されており、各センサから出力された信号に基づいて、減衰力特性の制御目標を表す要求段数Dreqを決定する。そして、決定した要求段数Dreqに応じた指令信号をアクチュエータ32に出力する。アクチュエータ32は上記指令信号に基づいて駆動して、バルブ31を作動させる。これにより可変絞り機構30はマイクロコンピュータ60により制御される。
また、マイクロコンピュータ60は、図1からわかるように第一非線形H∞制御器61(第一非線形H∞制御手段)、第二非線形H∞制御器62(第二非線形H∞制御手段)および統合制御部63を備える。第一非線形H∞制御器61は、各センサ51,52,53,54から信号を入力し、入力した値に基づいて第一減衰係数CH1を計算する。そして、計算した第一減衰係数CH1を出力する。第二非線形H∞制御器62は、各センサ51,52,53,54から信号を入力し、入力した値に基づいて第二減衰係数CH2を計算する。そして、計算した第二減衰係数CH2を出力する。統合制御部63は、第一減衰係数CH1および第二減衰係数CH2を入力し、車両の状態に基づいてCH1,CH2のいずれか一方を要求減衰係数Creqとして選択し、選択した要求減衰係数Creqに基づいて要求段数Dreqを決定する。そして、決定した要求段数Dreqに対応する信号を指示信号としてアクチュエータ32に出力する。
上記のように構成された本実施形態のサスペンション装置1において、乗員がイグニッションキーを操作することによりイグニッションがON状態になると、マイクロコンピュータ60の第一非線形H∞制御器61は図2に示す第一減衰係数計算処理プログラムを、第二非線形H∞制御器62は図3に示す第二減衰係数計算処理プログラムを、それぞれ所定の短時間ごとに繰り返し実行する。
第一非線形H∞制御器61は、図2のステップ100(以下、ステップ番号をSと略記する)にて第一減衰係数計算処理を開始し、次のS102にてバネ上加速度センサ51からバネ上加速度xpb”を、バネ下加速度センサ52からバネ下加速度xpw”を、ストロークセンサ53からバネ上−バネ下相対変位量xpw−xpbを、タイヤ変位量センサ54からバネ下相対変位量xpr−xpwを入力する。次に、S104にて、入力したバネ上加速度xpb”およびバネ下加速度xpw”をそれぞれ時間積分してバネ上部材HAの上下方向の速度であるバネ上速度xpb’およびバネ下部材LAの上下方向の速度であるバネ下速度xpw’を計算し、さらに入力したバネ上−バネ下相対変位量xpw−xpbを時間微分して、バネ上速度xpb’とバネ下速度xpw’との差であるバネ上−バネ下相対速度xpw’−xpb’を計算する。ここで、バネ上速度xpb’およびバネ下速度xpw’は、それが上方向に向かう速度である場合には正の速度として計算され、下方向に向かう速度である場合には負の速度として計算される。また、相対速度xpw’−xpb’は、それがバネ上部材HAとバネ下部材LAとの間隔を狭める方向に向かう速度である場合、つまり圧側である場合には正の速度として計算され、上記間隔を広げる方向に向かう速度である場合、つまり伸側である場合には負の速度として計算される。
次いで、第一非線形H∞制御器61は、S106にて、非線形H∞制御則に基づいて第一可変減衰係数Cv1を計算する。第一可変減衰係数Cv1は、非線形H∞制御則を用いて計算される可変分の減衰係数である。この計算については後述する。次に、S108にて、第一可変減衰係数Cv1に予め設定された第一線形減衰係数Cs1を加算することにより、第一減衰係数CH1を計算する。第一線形減衰係数Cs1は、ショックアブソーバ20の圧側における減衰力特性の可変範囲A(図9参照)に基づいて予め設定されている。具体的には、第一線形減衰係数Cs1により表される減衰力特性線が、ショックアブソーバ20の圧側における減衰力特性の可変範囲Aのほぼ中央を通る直線となるように(例えば可変範囲Aの面積を二分するように)、第一線形減衰係数Cs1が設定される。すなわち、圧側平均減衰係数Cが第一線形減衰係数Cs1に設定される。S108にて第一減衰係数CH1を計算した後は、第一非線形H∞制御器61はS110に進んで第一減衰係数CH1を出力する。その後、S112に進んでこの処理を終了する。
また、第二非線形H∞制御器62は、図3のS200にて第二減衰係数計算処理を開始する。続いてS202にてバネ上加速度xpb”、バネ下加速度xpw”、バネ上−バネ下相対変位量xpw−xpb、バネ下相対変位量xpr−xpwを入力する。次にS204にてバネ上速度xpb’およびバネ下速度xpw’を計算し、さらにバネ上−バネ下相対速度xpw’−xpb’を計算する。
次いで、第二非線形H∞制御器62は、S206にて、非線形H∞制御則に基づいて第二可変減衰係数Cv2を計算する。第二可変減衰係数Cv2は、非線形H∞制御則を用いて計算される可変分の減衰係数である。この計算についても後述する。次に、S208にて、第二可変減衰係数Cv2に予め設定された第二線形減衰係数Cs2を加算することにより、第二減衰係数CH2を計算する。第二線形減衰係数Cs2は、ショックアブソーバ20の伸側における減衰力特性の可変範囲B(図9参照)に基づいて予め設定されている。具体的には、第二線形減衰係数Cs2により表される減衰力特性線が、ショックアブソーバ20の伸側における減衰力特性の可変範囲Bのほぼ中央を通る直線となるように(例えば可変範囲Bの面積を二分するように)、第二線形減衰係数Cs2が設定される。すなわち、伸側平均減衰係数Cが第二線形減衰係数Cs2に設定される。第二減衰係数CH2を計算した後は、第二非線形H∞制御器62はS210に進んで第二減衰係数CH2を出力する。その後、S212に進んでこの処理を終了する。
第一可変減衰係数Cv1および第二可変減衰係数Cv2は、前述のように非線形H∞制御則を用いて計算される。この計算においては、まず図5に示すような車両の単輪モデルを想定する。図において、Mはバネ上部材HAの質量、Mはバネ下部材LAの質量、Kはサスペンションスプリング10のバネ定数、Kはタイヤ50のバネ定数、Cはショックアブソーバ20の線形減衰係数(第一線形減衰係数Cs1または第二線形減衰係数Cs2に相当)、Cはショックアブソーバ20の可変減衰係数(第一可変減衰係数Cv1または第二可変減衰係数Cv2に相当)である。
この場合、モデルの運動方程式は下記の式(1)および式(2)により表される。
Figure 2010111208
Figure 2010111208
上記式において、xpb,xpb’,xpb”,xpw,xpw’,xpw”,xprは、それぞれバネ上変位量、バネ上速度、バネ上加速度、バネ下変位量、バネ下速度、バネ下加速度、路面変位量であり、正負は先に述べたものと同じである。
また、制御入力uを可変減衰係数C、外乱wを路面の上下変位速度xpr’とし、このモデルを状態空間表現すると、下記式(3)のようになる。
Figure 2010111208
ここで、x、A、Bp1、Bp2(x)は、下記式(4)の通りである。
Figure 2010111208
サスペンション装置1の特性向上の目標は、バネ上部材HAの振動に大きく影響するバネ上速度xpb’、車両の乗り心地に大きく影響するバネ上加速度xpb”、およびバネ下部材LAの振動に大きく影響するバネ上−バネ下相対速度xpw’−xpb’を同時に抑制することである。したがって、評価出力zとして、バネ上速度xpb’、バネ上加速度xpb”およびバネ上−バネ下相対速度xpw’−xpb’が用いられる。また、サスペンション装置1においては、バネ上加速度xpb”とバネ上−バネ下相対変位量xpw−xpbとが比較的検出され易いので、バネ上加速度xpb”およびバネ上−バネ下相対変位量xpw−xpbが観測出力yとされる。また、観測出力yには観測ノイズwが含まれているとする。評価出力zおよび観測出力yを状態空間表現すると、下記式(5)および式(6)のようになる。
Figure 2010111208
Figure 2010111208
上記式(5)および(6)中のz,y,Cp1,Dp12(x),Cp2,Dp21,Dp22(x)は、それぞれ下記式(7)の通りである。
Figure 2010111208
ここで、モデルの状態空間表現を表す上記式(3)の右辺の第三項においては、係数Bp2(x)に状態量xが含まれ、このBp2(x)に制御入力uが掛け合わせられている。よって、このシステムは双線形システムであり、状態量xの原点近傍では制御入力uが作用せずに不可制御となる。この問題を解決するため、非線形な重み関数(非線形重み)を用いた非線形H∞状態フィードバック制御系が設計される。
図6は、評価出力zと制御入力uに周波数重みを加えた非線形H∞状態フィードバック制御系の一般化プラントを示すブロック図である。この図に示す一般化プラントにおいて、評価出力zと制御入力uに周波数重みW(s),W(s)がそれぞれ掛け合わされ、さらに、下記式(8)の条件を満たす、状態量xについての非線形な重み関数a(x),a(x)がそれぞれ掛け合わされている。
Figure 2010111208
周波数重みW(s)に対する状態空間表現は、周波数重みW(s)の状態量x、周波数重みW(s)の出力zおよび各定数行列A,B,C,Dにより、下記式(9)のように表される。また、周波数重みW(s)に対する状態空間表現は、周波数重みW(s)の状態量x、周波数重みW(s)の出力zおよび各定数行列A,B,C,Dにより、下記式(10)のように表される。なお、下記式(9)、(10)において、x’はxの1回微分を示し、x’はxの1回微分を示す。
Figure 2010111208
Figure 2010111208
上記式(3)に示すモデルの状態空間表現は、式(9)および式(10)を用いることによって下記式(11)のように表される。なお、下記式(11)において、x’はxの1回微分を示す。また、状態量x、各係数行列A,B,B(x),C11,D121(x),C12,D122(x)は、下記式(12)に示すように表される。
Figure 2010111208
Figure 2010111208
上記式(11)により表される状態空間表現は、下記式(13)に示す条件によって、下記式(14)のように表される。
Figure 2010111208
Figure 2010111208
ここで、係数行列D122 −1が存在し、所定の正定数γに対して下記式(15)に示すリカッチ方程式を満たす正定対称解Pが存在し、且つ、重み関数a(x),a(x)が下記式(16)の制約条件を満たす場合、閉ループシステムが内部安定となり、且つ、外乱に対するロバスト性を表すL2ゲインがγ以下となる制御入力u(=k(x))は下記式(17)に示すように表される
Figure 2010111208
Figure 2010111208
Figure 2010111208
式(16)を満たす重み関数a(x),a(x)が下記式(18)のように表された場合、式(17)により表される制御入力u=k(x)は、下記式(19)のように表される。
Figure 2010111208
Figure 2010111208
ここで、上記式(18)、(19)中のm(x)は任意の正定関数である。上記式(19)により、制御入力u、すなわち可変減衰係数Cが計算される。
また、マイクロコンピュータ60の統合制御部63は統合制御処理を行う。図4は、この統合制御処理プログラムの流れを示すフローチャートである。統合制御処理を行うにあたり、統合制御部63は図4のS300にて処理を開始し、次のS302にて第一非線形H∞制御器61から第一減衰係数CH1を入力する。次いで、S304にて第二非線形H∞制御器62から第二減衰係数CH2を入力する。続いて統合制御部63は、S306にて、相対速度xpw’−xpb’が正または0であるか否かを判定する。相対速度xpw’−xpb’が正または0である場合(S306:Yes)はS308に進み、要求減衰係数Creqを第一減衰係数CH1に設定する。一方、相対速度xpw’−xpb’が負である場合(S306:No)はS310に進み、要求減衰係数Creqを第二減衰係数CH2に設定する。
S308またはS310にて要求減衰係数Creqを設定した後は、統合制御部63はS312に進み、要求減衰係数Creqに基づいて要求減衰力Freqを計算する。要求減衰力Freqは、要求減衰係数Creqと相対速度xpw’−xpb’との積により計算される。次いで、統合制御部63はS314に進み、要求段数Dreqを決定する。なお、マイクロコンピュータ60は、図9に示されるショックアブソーバ20の減衰力特性を設定段数ごとに記憶した減衰力特性テーブルを有している。統合制御部63はS314にてこの減衰力特性テーブルを参照し、相対速度xpw’−xpb’に対応する減衰力を段数ごとに選択する。そして、選択した減衰力のうち、S312にて計算した要求減衰力Freqに最も近い減衰力についての設定段数を、要求段数Dreqとして決定する。このようにして要求段数Dreqが要求減衰力Freqに基づいて決定される。図4に示す処理において、S302〜S312の処理が、本発明の要求減衰力決定手段に相当し、S314の処理が、要求段数決定手段に相当する。
S314にて要求段数Dreqを決定した後は、統合制御部63はS316に進み、要求段数Dreqに応じた指令信号をアクチュエータ32に出力する。アクチュエータ32は指令信号に基づいて駆動される。これによりバルブ31が作動し、開度OPの段数、すなわちショックアブソーバ20の減衰力特性の設定段数が要求段数Dreqとなるように、可変絞り機構30が制御される。その後S318に進んでこの処理を終了する。S316の処理が、本発明の減衰力制御手段に相当する。また、図4に示す統合制御処理が、本発明の統合制御手段に相当する。
図7は、上記のようにして可変絞り機構30を制御した場合における要求減衰力Freqの制御範囲を示すリサージュ波形図と、ショックアブソーバ20の減衰力特性の可変範囲とを比較した図である。図に示すように、ショックアブソーバ20の圧側においては、リサージュ波形が圧側の可変範囲Aにほぼまんべんなく広がり、リサージュ波形が可変範囲Aに良好に重ね合わされていることがわかる。また、ショックアブソーバ20の伸側においても、リサージュ波形が伸側の可変範囲Bにまんべんなく広がり、リサージュ波形が可変範囲Bにも良好に重ね合わされていることがわかる。また、圧側の可変範囲Aからリサージュ波形がはみだしている部分が一部だけあるが、伸側の可変範囲Bからはリサージュ波形がはみだしていない。さらに、圧側、伸側の双方の可変範囲において、不使用領域(リサージュ波形が重ね合わされていない領域)は、従来の場合(図10)と比較して小さくなっていることがわかる。これらのことから、本実施形態の制御方法にしたがってショックアブソーバ20の減衰力特性を可変制御することにより、要求減衰力Freqの制御範囲が圧側における減衰力特性の可変範囲Aおよび伸側における減衰力特性の可変範囲Bの双方に適合した減衰力特性制御を行うことができる。
図7に示すリサージュ波形図は、圧側の可変範囲Aと伸側の可変範囲Bとのそれぞれの可変範囲に基づいて設定された線形減衰係数Cs1,Cs2を用いて減衰係数を別々に計算した場合におけるリサージュ波形を示しているが、線形減衰係数に加え、可変減衰係数Cv1,Cv2も、圧側と伸側の可変範囲のそれぞれに基づいて別々に計算することもできる。
この場合には、第一非線形H∞制御器61にて非線形H∞制御則に基づいて第一可変減衰係数Cv1を計算する際に用いる非線形重みa(x),a(x)と、第二非線形H∞制御器62にて非線形H∞制御則に基づいて第二可変減衰係数Cv2を計算する際に用いる非線形重みa(x),a(x)とを、別々に設定すればよい。つまり、第一可変減衰係数Cv1を計算する際には圧側非線形重みを用い、第二可変減衰係数Cv2を計算する際には伸側非線形重みを用いればよい。圧側非線形重みは、圧側(相対速度xpw’−xpb’が正である場合)におけるショックアブソーバ20の減衰力特性の可変範囲Aに対応する減衰力の可変幅に基づいて設定される。伸側非線形重みは、伸側(相対速度xpw’−xpb’が負である場合)におけるショックアブソーバ20の減衰力特性の可変範囲Bに対応する減衰力の可変幅に基づいて設定される。
圧側の可変範囲Aに対応する減衰力の可変幅は可変範囲Aの広がりを、伸側の可変範囲Bに対応する減衰力の可変幅は可変範囲Bの広がりを表す。また、上述のように圧側の可変範囲Aに対応する減衰力の可変幅は、伸側の可変範囲Bに対応する減衰力の可変幅よりも小さい。一方、要求減衰力の制御範囲の広がり、すなわちリサージュ波形の膨らみは、非線形重みa(x),a(x)を調整することによって調整することができる。具体的には、非線形重みa(x),a(x)が大きくなるほどリサージュ波形の膨らみは大きくなり、非線形重みa(x),a(x)が小さくなるほどリサージュ波形の膨らみは小さくなる。したがって、圧側非線形重みは、圧側におけるリサージュ波形の膨らみと可変範囲Aに対応する減衰力の可変幅とが同程度となるように、比較的小さめに設定される。また、伸側非線形重みは、伸側におけるリサージュ波形の膨らみと可変範囲Bに対応する減衰力の可変幅とが同程度となるように、比較的大きめに設定される。
なお、この場合、制御入力に係る非線形重みa(x)を省略し、評価出力に係る非線形重みa(x)のみを設定することもできる。さらに、非線形重みは定数としてもよい。例えば、圧側非線形重みを定数α1、伸側非線形重みを定数α2とし、各非線形重みの値を減衰力の可変幅に応じて、具体的には減衰力の可変幅が大きくなるほど大きくなるように(α1<α2となるように)、予め設定しておくことができる。
図8は、上記のように圧側と伸側とで非線形重みをそれぞれの可変範囲に対応する減衰力の可変幅に基づいて別々に設定して要求減衰係数を算出した場合におけるリサージュ波形と、ショックアブソーバ20の減衰力特性の可変範囲とを比較した図である。この図によれば、特に伸側の可変範囲Bに伸側のリサージュ波形がうまく重ね合わされていて、減衰力特性の不使用領域がより少なくなっていることがわかる。このため、ショックアブソーバ20の減衰力特性を十分に使い切ることができる。
以上のように、本実施形態においては、相対速度が正の領域、すなわち圧側領域では、第一非線形H∞制御器61により計算される第一減衰係数CH1に基づいて可変絞り機構30が制御され、相対速度が負の領域、すなわち伸側領域では、第二非線形H∞制御器62により計算される第二減衰係数CH2に基づいて可変絞り機構30が制御される。ここで、第一減衰係数CH1の線形分である第一線形減衰係数Cs1は、圧側におけるショックアブソーバ20の減衰力特性の可変範囲Aのほぼ中央を通る直線により表される減衰係数として予め設定されている。また、第二減衰係数CH2の線形分である第二線形減衰係数Cs2は、伸側におけるショックアブソーバ20の減衰力特性の可変範囲Bのほぼ中央を通る直線により表される減衰係数として予め設定されている。すなわち、第一線形減衰係数Cs1は圧側の可変範囲Aに基づいて予め設定され、第二線形減衰係数Cs2は伸側の可変範囲Bに基づいて予め設定されている。このため、第一減衰係数CH1によって表される圧側の要求減衰力の制御範囲を示すリサージュ波形は圧側の可変範囲Aに良好に重ね合わされ、第二減衰係数CH2によって表される伸側の要求減衰力の制御範囲を示すリサージュ波形は伸側の可変範囲Bに良好に重ね合わされる。よって、要求減衰力の制御範囲が圧側における可変範囲Aおよび伸側における可変範囲Bの双方に適合した減衰力特性制御を行うことができる。
また、図8の例によれば、第一非線形H∞制御器61は圧側非線形重みを用いて非線形H∞制御則に基づき第一可変減衰係数Cv1を算出し、第二非線形H∞制御器62は伸側非線形重みを用いて非線形H∞制御則に基づき可変減衰係数を算出している。圧側非線形重みは、圧側の可変範囲Aに対応する減衰力の可変幅と圧側のリサージュ波形の膨らみが同程度となるように、上記可変幅に基づいて比較的小さめに設定されている。また、伸側非線形重みは、伸側の可変範囲Bに対応する減衰力の可変幅と伸側のリサージュ波形の膨らみが同程度となるように、上記可変幅に基づいて比較的大きめに設定されている。このため、要求減衰力の制御範囲をより圧側および伸側の減衰力特性の可変範囲に合わせることができる。よって、要求減衰力の制御範囲が減衰力特性の可変範囲からはみ出す部分をより少なくすることができるとともに、減衰力特性の不使用領域をより小さくすることができる。これにより、減衰力発生手段の減衰力特性を十分に使い切ることができる。
本発明の本実施形態に係るサスペンション装置の全体概略図である。 第一減衰係数計算処理プログラムのフローチャートである。 第二減衰係数計算処理プログラムのフローチャートである。 統合制御処理プログラムのフローチャートである。 車両の単輪モデルである。 非線形H∞状態フィードバック制御系の一般化プラントである。 本発明の実施形態において、ショックアブソーバの減衰力特性の可変範囲とリサージュ波形とを比較した図である。 本発明の他の実施形態において、ショックアブソーバの減衰力特性の可変範囲とリサージュ波形とを比較した図である。 ショックアブソーバの減衰力特性図である。 従来技術において、ショックアブソーバの減衰力特性の可変範囲とリサージュ波形とを比較した図である。
符号の説明
1…サスペンション装置、10…サスペンションスプリング、20…ショックアブソーバ(減衰力発生手段)、30…可変絞り機構(減衰力特性変更手段)、31…バルブ、32…アクチュエータ、60…マイクロコンピュータ、61…第一非線形H∞制御器(第一非線形H∞制御手段)、62…第二非線形H∞制御器(第二非線形H∞制御手段)、63…統合制御部(統合制御手段)、CH1…第一減衰係数、Cs1…第一線形減衰係数、Cv2…第二可変減衰係数、CH2…第二減衰係数、Cs2…第二線形減衰係数、Cv1…第一可変減衰係数、Creq…要求減衰係数、Dreq…要求段数、Freq…要求減衰力、HA…バネ上部材、LA…バネ下部材、xpw’−xpb’…バネ上−バネ下相対速度

Claims (3)

  1. 車両のバネ下部材に対するバネ上部材の振動を減衰するための減衰力を発生する減衰力発生手段と、
    前記減衰力発生手段により発生される減衰力のバネ上−バネ下相対速度に対する特性である減衰力特性を変更する減衰力特性変更手段と、
    バネ上−バネ下相対速度が正である場合における前記減衰力特性の可変範囲に基づいて予め設定された第一線形減衰係数と、非線形H∞制御則に基づいて算出される第一可変減衰係数との和により第一減衰係数を計算する第一非線形H∞制御手段と、
    バネ上−バネ下相対速度が負である場合における前記減衰力特性の可変範囲に基づいて予め設定された第二線形減衰係数と、非線形H∞制御則に基づいて算出される第二可変減衰係数との和により第二減衰係数を計算する第二非線形H∞制御手段と、
    バネ上−バネ下相対速度が正であるときには前記第一減衰係数に基づいて前記減衰力特性変更手段を制御し、バネ上−バネ下相対速度が負であるときには前記第二減衰係数に基づいて前記減衰力特性変更手段を制御する統合制御手段と、
    を備えることを特徴とする、サスペンション装置。
  2. 請求項1に記載のサスペンション装置において、
    前記統合制御手段は、
    バネ上−バネ下相対速度が正であるときには前記第一減衰係数に基づいて要求減衰力を決定し、バネ上−バネ下相対速度が負であるときには前記第二減衰係数に基づいて要求減衰力を決定する要求減衰力決定手段と、
    前記要求減衰力に基づいて前記減衰力特性変更手段を制御する減衰力制御手段と、
    を備えることを特徴とする、サスペンション装置。
  3. 請求項1または2に記載のサスペンション装置において、
    前記第一非線形H∞制御手段は、バネ上−バネ下相対速度が正である場合における前記減衰力特性の可変範囲に対応する減衰力の可変幅に基づいて予め設定された非線形重みを用いて非線形H∞制御則に基づき前記第一可変減衰係数を算出し、
    前記第二非線形H∞制御手段は、バネ上−バネ下相対速度が負である場合における前記減衰力特性の可変範囲に対応する減衰力の可変幅に基づいて予め設定された非線形重みを用いて非線形H∞制御則に基づき前記第二可変減衰係数を算出することを特徴とする、サスペンション装置。
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