JP2010110666A - 汚泥脱水ケーキの臭気発生抑制方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】汚泥脱水ケーキを貯留槽に投入する時かその前に、汚泥脱水ケーキに消臭剤を連続的又は回分的に添加して、当該汚泥脱水ケーキから発生する臭気を抑制する臭気発生抑制方法であって、事前に求めた消臭剤添加率と消臭効果維持期間との検量関係により、当該汚泥脱水ケーキを少なくとも汚泥脱水ケーキ貯留期間が終了するまでの間消臭するのに必要な消臭剤添加率を求め、その求められた結果に基づいて消臭剤を添加する汚泥脱水ケーキの臭気発生抑制方法。
【選択図】図2
Description
脱水により得られる汚泥脱水ケーキは開放系で貯留、運搬される場合が多いので、臭気対策はより重要である。すなわち、汚泥脱水ケーキを貯留槽に貯留する場合、新たな汚泥脱水ケーキが定期的に投入されるため、覆蓋、臭気の吸引などによる処理が困難であり、臭気対策が難しく、貯留時に発生する悪臭が作業環境の悪化をもたらすことがある。
例えば、特許文献1には、汚泥脱水ケーキに、25℃において水100mLに20g以上溶解する亜硝酸塩水溶液等の静菌剤を添加し、汚泥脱水ケーキを混合しなくても十分な臭気抑制効果が得られる汚泥脱水ケーキの臭気発生抑制方法が開示されており、臭気抑制効果を落とすことなく消臭剤の使用量を低減することができるというものである。
また、特許文献2には、汚泥脱水ケーキに、亜硝酸塩及びピリチオン若しくはその誘導体を添加し、長期間にわたって臭気抑制効果が得られる汚泥脱水ケーキの臭気発生抑制方法が開示されており、臭気抑制効果を格段に向上させることができるというものである。
〔1〕 汚泥脱水ケーキを貯留槽に投入する時かその前に、汚泥脱水ケーキに消臭剤を連続的又は回分的に添加して、当該汚泥脱水ケーキから発生する臭気を抑制する臭気発生抑制方法であって、事前に求めた消臭剤添加率と消臭効果維持期間との検量関係により、当該汚泥脱水ケーキを少なくとも汚泥脱水ケーキ貯留期間が終了するまでの間消臭するのに必要な消臭剤添加率を求め、その求められた結果に基づいて消臭剤を添加する汚泥脱水ケーキの臭気発生抑制方法、
〔2〕 前記貯留槽に、消臭剤が添加された汚泥脱水ケーキを複数日にわたって積層する上記〔1〕に記載の汚泥脱水ケーキの臭気発生抑制方法、
〔3〕 前記消臭剤が、硝酸塩及び亜硝酸塩から選ばれるいずれか1種以上の硝酸塩系消臭剤である上記〔1〕又は〔2〕に記載の汚泥脱水ケーキの臭気発生抑制方法、
〔4〕 前記硝酸塩系消臭剤に、さらに、静菌剤系消臭剤、酸化剤系消臭剤及び硫酸塩系消臭剤から選ばれるいずれか1種以上を含有する上記〔3〕に記載の汚泥脱水ケーキの臭気発生抑制方法、
〔5〕 前記汚泥脱水ケーキが、有機性汚泥脱水ケーキである上記〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の汚泥脱水ケーキの臭気発生抑制方法、
である。
まず、下水が沈砂池1へ導入され、ポンプの損耗や処理施設の閉塞を防止するために、下水中の粗大物や砂分が除去される。粗大物や砂分が除去された下水は、最初沈殿池2に導入され、下水中の比較的比重の大きい物質が沈降分離して、初沈生汚泥が発生する。初沈生汚泥は、重力濃縮槽3に送られ、通常は汚泥濃度1.5重量%以上に濃縮される。必要に応じて、最初沈殿池2と重力濃縮槽3の間Aにおいて、初沈生汚泥に亜硝酸塩など消臭剤を添加することができる。
最初沈殿池2で比較的比重の大きい物質を除去した上澄水は、曝気槽5に導入され、好気性微生物を多量に含む活性汚泥と混合され、曝気される。下水中の有機物は、微生物に吸着され、生物代謝により分解される。曝気槽5からの流出水は、最終沈殿池6に導入され、混合液中の汚泥が沈殿除去され、清澄な処理水が得られる。
最終沈殿池6から引き抜かれた汚泥は、一部を返送汚泥として曝気槽5に返送してふたたび生物処理に用いる。余った汚泥は、余剰汚泥として余剰汚泥受槽7にいったん貯留したのち、遠心濃縮機8により濃縮され、混合汚泥貯留槽4に送られる。
そして、貯留槽11内に一定期間貯留された汚泥脱水ケーキは、4日や5日毎など定期的にトラックやダンプカー等により最終処分場へ搬出される。
本発明に用いられる消臭剤の種類は特に限定されないが、例えば、硝酸塩系消臭剤、静菌剤系消臭剤、酸化剤系消臭剤、硫酸塩系消臭剤等を用いることができる。ここで、静菌剤系消臭剤とは、細菌の発育あるいは増殖を阻止する薬剤であるが、一般に殺菌剤と称されている薬剤も、低濃度で用いることにより静菌作用を発現させ、静菌剤系消臭剤として使用することができる。
硝酸塩系消臭剤としては、硝酸塩及び亜硝酸塩等を挙げることができ、静菌剤系消臭剤としては、イソチアゾロン系化合物、チウラム系化合物、チアジアジン系化合物等の粉末状の有機系殺菌剤、亜硝酸塩、次亜塩素酸塩、第四級アンモニウム塩、エタノール、ホルムアルデヒド、ピリチオン及びその誘導体等を挙げることができ、酸化剤系消臭剤としては、過酸化水素、次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、塩素酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、p−スルホンジクロロアミド安息香酸、過酸化ベンゾイル、塩素化シアヌル酸等を挙げることができ、硫酸塩系消臭剤としては、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩等を挙げることができる。
そして、これらの消臭剤を水等の溶媒に溶解させて水溶液等を調整し、この消臭剤水溶液等の状態で汚泥脱水ケーキに添加するのが一般的であり、消臭剤水溶液等は、消臭剤の拡散性、消臭剤添加の作業性等の観点からも好ましい。
消臭剤を溶解する溶媒としては、消臭剤を溶解ものであればよく、水、アルコール等が好ましく用いられる。
なお、消臭剤を粉末状で用いる場合の添加方法としては、例えば、加圧空気による注入を用いることができる。これは、空気を加圧して汚泥脱水ケーキに供給する通気配管を設置し、その配管中に消臭剤をインライン供給することにより消臭剤を汚泥脱水ケーキに添加するというものである。
まず、汚泥脱水ケーキ貯留期間を決定する。この汚泥脱水ケーキ貯留期間は、貯留槽11に投入された汚泥脱水ケーキが、貯留槽11から搬出されるまでの期間又は貯留槽11から搬出され運搬が終了するまでの期間である。この汚泥脱水ケーキ貯留期間は、汚泥脱水ケーキからの臭気発生を抑制するための期間であり、汚泥脱水ケーキが貯留槽11から搬出されるまでの期間とするか、その後のトラックやダンプカー等により、最終処分地までの運搬が終了するまでの期間とするかは、トラックやダンプカー等の有蓋無蓋、消臭設備の有無、トラックやダンプカー等が通過するコースの人口などの要素等を考慮して決定することができる。
所定量の汚泥脱水ケーキサンプルを複数用意し、それぞれ異なる量の消臭剤を添加して汚泥脱水ケーキサンプルから発生する臭気が所定値以上になるまでの期間である消臭効果維持期間を測定し、消臭剤添加率と消臭効果維持期間との関係から事前に検量関係を求め、この検量関係から、添加される消臭剤の最適な量を求める方法である。以下この方法について説明する。
用意する汚泥脱水ケーキサンプルの数は、特に限定されるものではないが、2個以上であればよく、好ましくは3個以上である。
消臭剤の添加方法は特に限定されないが、消臭剤を水等の溶媒に溶解させて水溶液等を調整し、この消臭剤水溶液等を汚泥脱水ケーキに散布、噴霧、滴下等するのが好ましく、これらの場合、消臭剤が拡散により汚泥脱水ケーキ全体に行き渡るので、特に汚泥脱水ケーキを混合しなくてもよい。
測定する臭気は、特に限定されるものではないが、一般に、汚泥脱水ケーキから検出される物質としては、硫化水素及びメチルメルカプタンが多い。臭気として、硫化水素及びメチルメルカプタンを選択した場合、硫化水素の分析にはガステック社製ガス検知管4LT、4LL、4L、4M又は4Hを用いることができ、メチルメルカプタンの分析にはガステック社製ガス検知管71及び71Hを用いることができる。この中で硫化水素とメチルメルカプタンを最も低濃度まで検知できるのは、それぞれ4LT、71であり、また検出限界下限は、それぞれ0.05ppm、0.1ppm(容量比)である。
この測定により、消臭剤添加率と消臭効果維持期間との関係が求まり、検量関係を求めることができる。
そして、上記検量関係により、貯留される折々の汚泥脱水ケーキに対して、少なくとも汚泥ケーキ貯留期間が終了するまでの間消臭効果が維持される消臭剤添加率を求め、この求められた結果に基づいて消臭剤を汚泥脱水ケーキに添加する。
また、消臭剤の種類、添加方法については、上記した消臭剤の種類、添加方法を適宜採用することができる。
さらに、貯留槽11に投入される前のケーキコンベア10における移動中の汚泥脱水ケーキに消臭剤を添加することもできる。
すなわち、図2は、貯留槽11に汚泥脱水ケーキを4日間にわたり投入し、汚泥脱水ケーキ貯留期間として、貯留槽11から搬出されるまでの期間とした場合の汚泥脱水ケーキの積層状態を示すものであり、汚泥脱水ケーキの層が4層形成されている。図2中、最下層の第1日のケーキは、4日前に投入された汚泥脱水ケーキであり、消臭効果維持期間4日の量に相当する消臭剤が添加されており、その上の第2日のケーキは、3日前に投入された汚泥脱水ケーキであり、消臭効果維持期間3日の量に相当する消臭剤が添加されており、第3日のケーキは、2日前に投入された汚泥脱水ケーキであり、消臭効果維持期間2日の量に相当する消臭剤が添加されており、第4日のケーキは、1日前に投入された汚泥脱水ケーキであり、消臭効果維持期間1日の量に相当する消臭剤が添加されている。そして、当日すべての汚泥脱水ケーキが搬出され、トラックやダンプカー等で運搬されることになる。
<検量関係の作成>
(1) 消臭剤として亜硝酸ナトリウムを用いた場合
下水処理場の混合生汚泥(pH5.1、懸濁物質濃度2.2重量%)250mLに、脱水剤[栗田工業(株)、クリフィックスCP604、カチオンポリマー]30mgを添加して凝集したのち、直径60cmのカラムを用いて2分間重力ろ過し、カラムを取りはずして、さらに圧力0.05MPaで2分間圧搾脱水し、直径約80mm、厚さ5mmの有機性汚泥脱水ケーキサンプル4個を得た。得られた汚泥脱水ケーキサンプルの質量はそれぞれ25gであり、含水率はそれぞれ78質量%であった。
その結果、消臭剤(亜硝酸ナトリウム)の添加率と消臭効果維持期間の関係は表1に示すような結果が得られた。
消臭剤として亜硝酸ナトリウムを用いて、38質量%亜硝酸ナトリウム水溶液を作製し、静菌剤系消臭剤としてナトリウムピリチオンを用いて、40質量%ナトリウムピリチオン水溶液を作製した。
そして、38質量%亜硝酸ナトリウム水溶液と40質量%ナトリウムピリチオン水溶液とを質量混合比90:10で混合し、混合消臭剤水溶液を作製し、この混合消臭剤水溶液を用いたほかは、上記(1)の場合と同様にして、混合消臭剤の添加率と消臭効果維持期間の関係を求めたところ、表2に示すような結果が得られた。
下水処理場の混合生汚泥(pH5.1、懸濁物質濃度2.2重量%)2400kgを図1に示すような下水処理工程により、有機性汚泥脱水ケーキを貯留槽11に投入した。この汚泥脱水ケーキの汚泥脱水ケーキ貯留期間は、貯留槽11から搬出されるまでの期間である4日間とした。
そして、第1日(汚泥脱水ケーキ貯留期間は4日間)として、貯留槽11に投入された汚泥脱水ケーキに、上記検量関係の作成の(1)に用いた消臭剤水溶液(25質量%亜硝酸ナトリウム水溶液)と同じ消臭剤水溶液を用いて、当該検量関係により求められた最適な量である48.0kg/日の量の消臭剤を有する消臭剤水溶液を図1に示すC2から散布した。
消臭剤使用量(kg/日)=消臭剤添加量(kg/時)×脱水機運転時間(8時間/日)
消臭剤添加量(kg/時)=消臭剤添加率(質量%)×汚泥脱水ケーキ生成速度(300kg/時)
そして、汚泥脱水ケーキを貯留槽11から搬出し、ダンプカーで運搬する前に、ダンプカー上部の汚泥脱水ケーキの硫化水素とメチルメルカプタンを測定したところ、硫化水素とメチルメルカプタンは検出されなかった。
比較例1を表4に、比較例2を表5に、比較例3を表6にそれぞれ示す。これらの比較例では、消臭剤水溶液を均等量で散布したほかは、実施例1と同様にし、汚泥脱水ケーキを貯留槽11から搬出し、ダンプカー上部の汚泥脱水ケーキの硫化水素とメチルメルカプタンを測定した。
その結果、比較例1では、硫化水素が150ppm、メチルメルカプタンが30ppm検出され、4日間散布した消臭剤使用量の総量は91.2kgで、実施例1と同じ添加量であるにもかかわらず、汚泥脱水ケーキ貯留期間中消臭効果を維持することができなかった。
さらに、比較例3では、硫化水素及びメチルメルカプタンは検出されず、汚泥脱水ケーキ貯留期間中消臭効果を維持することができたが、4日間散布した消臭剤使用量の総量は192.0kgで、消臭剤の使用量が実施例の約2.1倍となった。
これにより、消臭剤の使用量を減少させてコストの低減を図ることができた。
上記検量関係の作成の(2)に用いた混合消臭剤水溶液(38質量%亜硝酸ナトリウム水溶液と40質量%ナトリウムピリチオン水溶液とを質量混合比90:10で混合した水溶液)と同じ混合消臭剤水溶液を用いたほかは、実施例1と同様にして、当該検量関係により求められた最適な量の消臭剤を有する混合消臭剤水溶液を図1に示すC2から散布した。貯留された泥脱水ケーキの総量は9600kgであり、4日間散布した混合消臭剤使用量の総量は180.0kgであった。表7に、消臭剤添加率、消臭剤添加量、消臭剤使用量、汚泥脱水ケーキ貯留期間等を示す。
その結果、消臭剤の添加量を最適化することにより、消臭剤を均等量で添加した場合に比べ消臭剤の使用量を約47質量%とすることができ、約53%の消臭剤を削減することができた。
これにより、消臭剤の使用量を減少させてコストの低減を図ることができた。
2 最初沈殿池
3 重力濃縮槽
4 混合汚泥貯留槽
5 曝気槽
6 最終沈殿池
7 余剰汚泥受槽
8 遠心濃縮機
9 ベルトプレス脱水機
10 ケーキコンベア
11 貯留槽
Claims (5)
- 汚泥脱水ケーキを貯留槽に投入する時かその前に、汚泥脱水ケーキに消臭剤を連続的又は回分的に添加して、当該汚泥脱水ケーキから発生する臭気を抑制する臭気発生抑制方法であって、事前に求めた消臭剤添加率と消臭効果維持期間との検量関係により、当該汚泥脱水ケーキを少なくとも汚泥脱水ケーキ貯留期間が終了するまでの間消臭するのに必要な消臭剤添加率を求め、その求められた結果に基づいて消臭剤を添加する汚泥脱水ケーキの臭気発生抑制方法。
- 前記貯留槽に、消臭剤が添加された汚泥脱水ケーキを複数日にわたって積層する請求項1に記載の汚泥脱水ケーキの臭気発生抑制方法。
- 前記消臭剤が、硝酸塩及び亜硝酸塩から選ばれるいずれか1種以上の硝酸塩系消臭剤である請求項1又は2に記載の汚泥脱水ケーキの臭気発生抑制方法。
- 前記硝酸塩系消臭剤に、さらに、静菌剤系消臭剤、酸化剤系消臭剤及び硫酸塩系消臭剤から選ばれるいずれか1種以上を含有する請求項3に記載の汚泥脱水ケーキの臭気発生抑制方法。
- 前記汚泥脱水ケーキが、有機性汚泥脱水ケーキである請求項1〜4のいずれか1項に記載の汚泥脱水ケーキの臭気発生抑制方法。
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