JP2010107214A - 渦流測定における周波数選定方法および焼き入れ深さ測定方法 - Google Patents

渦流測定における周波数選定方法および焼き入れ深さ測定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】測定精度の温度依存性を低減または排除しつつ、渦流測定に用いられる交流励磁信号の異なる二種類の周波数の組み合わせを適正かつ容易に選定することが可能な渦流測定における周波数選定方法を提供する。
【解決手段】励磁コイル111により測定対象物102に異なる三つ以上の周波数の交流励磁信号を印加して誘導電流を発生させ、検出コイル121により各周波数に対応する検出信号を検出し、各周波数に対応する検出信号に基づいて各周波数に対応する交流励磁信号および検出信号の位相差を算出し、各周波数に対応する交流励磁信号および検出信号の位相差のうち位相差の差分が所定の範囲に収まる二つの周波数の組み合わせを抽出し、当該組み合わせにおける二つの周波数のうち低い方の周波数を第一の周波数とするとともに高い方の周波数を第二の周波数とすることにより、二種類の周波数の組み合わせを選定する。
【選択図】図1

Description

本発明は、渦電流を用いて測定対象物を非接触(非破壊)で測定する技術、例えば焼き入れ処理を施すことにより鉄鋼材料からなる部品等の表面に形成される焼き入れ層の深さ(焼き入れ深さ)を測定する技術に関する。
より詳細には、渦電流を発生させるための誘導電流の周波数を適正に選定する技術に関する。
従来、焼き入れ処理により鉄鋼材料からなる部品等の表面に形成される焼き入れ層の深さ(焼き入れ深さ)を測定する方法として、同一バッチで焼き入れ処理が施された部品等の一部を切断し、その切断面の組織観察を行う、あるいは当該切断面におけるビッカース硬度の深さ方向の分布を測定する方法が知られている。
しかし、この方法は、(1)製品となり得る部品等の一部を切断する工程を含むことから切断後の測定対象物を測定後に廃棄せざるを得ず、製品歩留まりの低下の要因となること、(2)切断、切断面の処理(研磨、エッチング等)、電子顕微鏡等による切断面の観察あるいはビッカース硬度計による硬度測定といった一連の工程を経て行われることから測定に要する時間が長いこと、(3)上記理由から全数検査に適用することが不可能であること、(4)そもそも抜き取り検査による全数の品質保証には限界があり、測定対象物の測定結果次第では同一バッチで焼き入れ処理が施された部品等を全て不良品扱いしなければならず、これも製品歩留まりの低下の要因となること、といった種々の問題がある。
このような問題を解消する方法として、いわゆる渦流センサを用いて非接触で行う焼き入れ深さの測定が検討されている。例えば特許文献1および特許文献2に記載の如くである。
特許文献1に記載の方法は、測定対象物に挿通された渦流センサの励磁コイルにより交流磁場を発生させ、当該交流磁場により測定対象物の表面に渦電流を発生させ、当該渦電流により発生する誘導磁場の大きさを測定対象物に挿通された渦流センサの検出コイルにより出力電圧の形で検出し、同種の材料からなる既知の測定対象物の焼き入れ深さと出力電圧との関係と当該検出コイルの出力電圧とを比較することにより焼き入れ層の深さを測定するものである。
特許文献2に記載の方法は、測定対象物に挿通された渦流センサの励磁コイルに複数の異なる周波数の交流電圧(交流励磁信号)を印加し、励磁コイルにより測定対象物の表面に渦電流を発生させ、当該渦電流に起因する誘導磁場の大きさを測定対象物に挿通された渦流センサの検出コイルの出力電圧(検出信号)として検出し、交流励磁信号と検出信号の振幅比に基づいて測定対象物の硬度の深さ方向の分布を測定するとともに、交流励磁信号に対する検出信号の位相差に基づいて測定対象物の焼き入れ深さを測定するものである。
特許文献2に記載の方法は、非接触で測定対象物の硬度の深さ方向の分布および焼き入れ深さの両方を同時に測定することが可能であり、全数検査への適用が可能である。
しかし、特許文献1および特許文献2に記載の方法は、測定対象物のロット変動や測定環境の変動等により測定対象物の測定時の温度が変動すると焼き入れ深さの測定結果が変動してしまい、焼き入れ深さを精度良く測定することが困難であるという問題がある。
これは、測定対象物の温度が変動すると測定対象物の透磁率や導電率が変化し、ひいては検出コイルの出力電圧(検出信号)が変動することによる。
測定対象物が高周波焼き入れを施した鉄鋼材料からなるドライブシャフトである場合、当該ドライブシャフトの製造工場の環境温度は真夏の昼間(35℃程度)と真冬の早朝(5℃程度)では約30℃の温度変動があり、同日でも昼夜で大きな温度変動がある。
また、高周波焼き入れを施した直後のドライブシャフトは環境温度よりも高温であるため、例えば一時休止していた製造工場が稼働を再開するとき等、通常の稼働時とは焼き入れを施してから焼き入れ深さの測定を開始するまでに要する時間が異なる場合には、焼き入れ深さの測定時におけるドライブシャフトの温度が変動する。
このような温度変動による焼き入れ深さの測定精度の低下を防止する方法としては、(1)空調設備を利用することにより測定対象物、測定装置およびその周囲の環境の温度を一定に保持して焼き入れ深さの測定を行う、(2)焼き入れ深さの測定を行う直前に測定対象物の温度を測定し、当該測定温度に基づいて焼き入れ深さの測定結果を補正する、等の方法が考えられる。
しかし、上記(1)の方法は設備コストが大きく、また測定対象物、測定装置およびその周囲の環境の温度が一定に保持されるまで測定を行うことができない(作業効率が良くない)という問題を有する。
また、上記(2)の方法は、焼き入れ深さの測定に加えて測定対象物の温度測定を行うため、工数が増大するという問題を有する。特に、温度測定は短時間で行うことが一般に困難である(測定温度が平衡状態に達するまで保持する必要がある)ことから、測定対象物一個当たりの焼き入れ深さの測定に要する時間が長くなり、測定対象物の製造工程における全数検査等に適用することが困難となる。
上記問題を解消する方法として、発明者は、励磁コイルによりドライブシャフトに異なる二種類の周波数の交流励磁信号を印加してドライブシャフトに異なる二種類の周波数にそれぞれ対応する渦電流からなる誘導電流を発生させ、検出コイルにより異なる二種類の周波数にそれぞれ対応する誘導電流に起因する検出信号を検出し、異なる二種類の周波数のうちの一方に対応する検出信号の振幅値、異なる二種類の周波数のうちの一方に対応する交流励磁信号および検出信号の位相差、異なる二種類の周波数のうちの他方に対応する検出信号の振幅値、並びに異なる二種類の周波数のうちの他方に対応する交流励磁信号および検出信号の位相差に基づいて以下の数1に示す差分値Dを算出し、当該差分値Dに基づいてドライブシャフトの焼き入れ深さを測定するという一連の作業を行う方法を実施することにより、環境温度およびドライブシャフト自身の温度の変化によらずにドライブシャフトの焼き入れ深さを非接触(非破壊)かつ高速で測定することが可能であり、ひいては測定対象物の全数検査(インライン検査)への適用が可能である、という知見を得ている。
Figure 2010107214
しかし、上記方法は、以下の問題を有する。
すなわち、上記の方法において十分な測定精度を確保するためにはドライブシャフトに印加される交流励磁信号の異なる二種類の周波数の組み合わせを適正に選定する必要があるが、異なる二種類の周波数の組み合わせを選定する作業は実際には試行錯誤により(具体的には、測定対象物の複数の測定部位について周波数の組み合わせを種々変更しつつ検出信号を取得し、これに基づいて焼き入れ深さを算出した結果と実際に測定部位を切断して顕微鏡観察あるいはビッカース硬度測定により求めた焼き入れ深さとを比較することにより)選定しなければならず、適正な二種類の周波数の組み合わせを選定するために多大な労力および時間を要する。
また、このような適正な二種類の周波数の組み合わせは測定対象物の形状あるいは測定部位が変わると変動するため、適正な二種類の周波数の組み合わせを選定する作業を測定対象物毎、あるいは測定部位毎に行わなければならない。
上記周波数の組み合わせを選定する作業において試行錯誤を伴う原因は測定時の環境温度および測定対象物の温度変動に伴う測定精度の低下によるものであり、測定精度の温度依存性のメカニズムを解明し、測定精度の温度依存性を一定の法則に従って効率良く低減または排除することが可能な周波数の組み合わせの選定方法が望まれる。
特開2002−14081号公報 特開2004−108873号公報
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、測定精度の温度依存性を低減または排除しつつ、渦流測定に用いられる交流励磁信号の異なる二種類の周波数の組み合わせを適正かつ容易に選定することが可能な渦流測定における周波数選定方法を提供するものである。
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
即ち、請求項1においては、
励磁コイルにより測定対象物に第一の周波数および前記第一の周波数と異なる第二の周波数の交流励磁信号を印加して前記測定対象物に前記第一の周波数および前記第二の周波数にそれぞれ対応する渦電流からなる誘導電流を発生させ、検出コイルにより前記第一の周波数および前記第二の周波数にそれぞれ対応する誘導電流に起因する検出信号を検出し、前記第一の周波数に対応する検出信号の振幅値Y1、前記第一の周波数に対応する交流励磁信号および検出信号の位相差X1、前記第二の周波数に対応する検出信号の振幅値Y2、並びに前記第二の周波数に対応する交流励磁信号および検出信号の位相差X2に基づいて数1に示す差分値Dを算出し、前記差分値Dに基づいて測定対象物を測定する渦流測定における周波数選定方法であって、
前記励磁コイルにより前記測定対象物に異なる三つ以上の周波数の交流励磁信号を印加して前記測定対象物に前記異なる三つ以上の周波数にそれぞれ対応する誘導電流を発生させ、前記検出コイルにより前記異なる三つ以上の周波数にそれぞれ対応する誘導電流に起因する検出信号を検出する周波数選定用励磁・検出工程と、
前記周波数選定用励磁・検出工程において検出された前記異なる三つ以上の周波数にそれぞれ対応する誘導電流に起因する検出信号に基づいて、前記異なる三つ以上の周波数のそれぞれに対応する交流励磁信号および検出信号の位相差を算出する位相差算出工程と、
前記位相差算出工程において算出された前記異なる三つ以上の周波数のうち、前記位相差の差分が所定の範囲に収まる二つの周波数の組み合わせを抽出し、当該組み合わせにおける二つの周波数のうち低い方の周波数を前記第一の周波数とするとともに高い方の周波数を前記第二の周波数とする周波数抽出工程と、
を具備するものである。
Figure 2010107214
請求項2においては、
前記差分値Dを数2に示す差分値D、測定対象物の焼き入れ深さH、定数Aおよび定数Bの関係式に代入することにより、前記測定対象物の焼き入れ深さHを算出するものである。
Figure 2010107214
請求項3においては、
励磁コイルにより測定対象物に第一の周波数および前記第一の周波数と異なる第二の周波数の交流励磁信号を印加して前記測定対象物に前記第一の周波数および前記第二の周波数にそれぞれ対応する渦電流からなる誘導電流を発生させ、検出コイルにより前記第一の周波数および前記第二の周波数にそれぞれ対応する誘導電流に起因する検出信号を検出する励磁・検出工程と、
前記第一の周波数に対応する検出信号の振幅値Y1、前記第一の周波数に対応する交流励磁信号および検出信号の位相差X1、前記第二の周波数に対応する検出信号の振幅値Y2、並びに前記第二の周波数に対応する交流励磁信号および検出信号の位相差X2に基づいて数1に示す差分値Dを算出する差分値算出工程と、
前記差分値算出工程において算出された差分値Dを数2に示す差分値D、測定対象物の焼き入れ深さH、定数Aおよび定数Bの関係式に代入することにより、前記測定対象物の焼き入れ深さHを算出する焼き入れ深さ算出工程と、
を具備するものである。
請求項1および請求項2に記載の発明は、測定精度の温度依存性を低減または排除しつつ、渦流測定に用いられる交流励磁信号の異なる二種類の周波数の組み合わせを適正かつ容易に選定することが可能である、という効果を奏する。
請求項3に記載の発明は、測定対象物の焼き入れ深さを非接触で精度良く測定することが可能である、という効果を奏する。
以下では、図1を用いて本発明に係る渦流測定における周波数選定方法の実施の一形態および本発明に係る焼き入れ深さ測定方法の実施の一形態が適用される焼き入れ深さ測定装置100の装置構成について説明する。
焼き入れ深さ測定装置100は測定対象物102の焼き入れ深さを測定するものであり、主として励磁部110、検出部120および制御装置130を具備する。
ここで、「焼き入れ深さ」は、日本工業規格の「鋼の炎焼入及び高周波焼入硬化層深さ測定方法(JIS G 0559)」に示される「有効硬化層深さ」(炭素濃度が0.45wt%の鋼の場合、ビッカース硬度が450Hvとなる深さ)に相当するが、本発明に係る焼き入れ深さはこれに限定されず、同じく日本工業規格の「鋼の炎焼入及び高周波焼入硬化層深さ測定方法(JIS G 0559)」に示される「全硬化層深さ(硬化層の表面から生地(母層)との物理的性質(硬さ)または化学的性質(マクロ組織)の差異が区別できなくなる位置までの深さ)」としても良く、他の方法で定めたものとしても良い。
測定対象物102は鉄鋼材料等の金属材料からなり、予め焼き入れ処理が施された部品等である。
本実施形態の測定対象物102は自動車の駆動力伝達機構に用いられるドライブシャフトであり、機械構造用炭素鋼であるS45C(炭素濃度:約0.45wt%)に高周波焼き入れを施したものであるが、本発明に係る測定対象物の形状(部品の種類等)および材質はこれに限定されず、焼き入れ処理を施し得る金属材料(主として鉄鋼材料)からなる部品等を広く含む。
また、本発明に係る渦流測定における周波数選定方法が適用される渦流測定の測定対象物は本実施形態の如き「焼き入れ処理が施された部品」に限定されず、種々の金属材料からなる物品を含む。本発明に係る測定対象物の他の実施形態としては、表面に浸炭処理が施された物品、表面に窒化処理が施された物品等が挙げられる。
励磁部110は、測定対象物102に交流磁場を作用させることにより測定対象物102に(より厳密には、測定対象物102の表面および内部に)誘導電流を発生させるものである。
励磁部110は励磁コイル111、交流電源112等を具備する。
励磁コイル111は本発明に係る励磁コイルの実施の一形態である。
励磁コイル111は導電体からなるコイルであり、複数の異なる周波数Fa、Fb・・・、Fxの交流励磁信号が印加されることにより測定対象物102に各周波数に対応する誘導電流(渦電流)を発生させるものである。
ここで、「交流励磁信号を印加する」とは、励磁コイルに所定の周波数を有する所定の振幅の交流電圧を印加することを指す。
励磁コイル111の両端にはそれぞれ端子111a・111bが形成される。
なお、本実施形態では図1に示す如く測定対象物102を励磁コイル111に挿通した状態で励磁コイル111に交流励磁信号を印加する構成としたが、本発明に係る焼き入れ深さ測定装置はこれに限定されず、例えば平板状の測定対象物の板面から所定の距離だけ離間した位置に励磁コイルを配置した状態で当該励磁コイルに交流励磁信号を印加する構成としても良い。
交流電源112は所定の周波数を有する所定の振幅の交流電圧を発生することにより、励磁コイル111に交流励磁信号(交流電圧)を印加するものである。交流電源112は励磁コイル111の端子111a・111bに接続される。
また、交流電源112は交流電圧の周波数を5Hz以上30kH以下の範囲で変更することが可能であり、5Hz以上30kH以下の範囲に収まる複数の周波数Fa、Fb、・・・、Fxの交流励磁信号(交流電圧)を選択的に励磁コイル111に印加することが可能である。
なお、本実施形態の焼き入れ深さ測定装置100の励磁コイルに印加される交流励磁信号の周波数の範囲は5Hz以上30kHz以下であるが、本発明はこれに限定されず、交流励磁信号の周波数の範囲を測定対象物の材質、大きさ、形状等に応じて適宜選択することが可能である。
検出部120は測定対象物102(より厳密には、測定対象物102の表面および内部)に発生する誘導電流に起因する誘導電圧(検出信号)を検出するものである。
検出部120は主として検出コイル121、電圧計122等を具備する。
検出コイル121は本発明に係る検出コイルの実施の一形態である。
検出コイル121は測定対象物102に挿通されるコイルであり、測定対象物102(より厳密には、測定対象物102の表面および内部)に発生する誘導電流に起因する検出信号を検出するものである。
検出コイル121の両端にはそれぞれ端子121a・121bが形成される。
検出コイル121および励磁コイル111は、両者の中心軸が略一直線となるように配置される。
なお、本実施形態では図1に示す如く測定対象物102を検出コイル121に挿通した状態で検出信号を検出する構成としたが、本発明に係る焼き入れ深さ測定装置はこれに限定されず、例えば平板状の測定対象物の板面から所定の距離だけ離間した位置に検出コイルを配置した状態で検出信号を検出する構成としても良い。
電圧計122は端子121a・121bに接続され、検出コイル121により検出される検出信号(誘導電圧)を所定のデジタル信号に変換するものである。
なお、本実施形態は励磁コイルたる励磁コイル111と検出コイルたる検出コイル121とを同一の筐体105に収容し、筐体105、励磁コイル111および検出コイル121を合わせたものを「渦流センサ」とする構成であるが、本発明はこれに限定されず、励磁コイルおよび検出コイルをそれぞれ別の筐体に収容する構成でも良い。
制御装置130は、焼き入れ深さ測定装置100の動作を制御するとともに検出部120からの検出信号に基づいて測定対象物102の焼き入れ深さを算出する(焼き入れ深さの測定結果を取得する)ものである。
制御装置130は主として制御部131、入力部132、表示部133等を具備する。
制御部131は種々のプログラム等を格納することができ、これらのプログラム等を展開することができ、これらのプログラム等に従って所定の演算を行うことができ、当該演算の結果等を記憶することができる。
制御部131は、実体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで相互に接続される構成であっても良く、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であっても良い。
本実施形態の制御部131は専用品であるが、市販のパーソナルコンピュータやワークステーション等に上記プログラム等を格納したもので達成することも可能である。
制御部131は交流電源112に接続され、交流電源112に所定の制御信号を送信することにより交流電源112の交流励磁信号の周波数および振幅を変更することが可能である。
また、制御部131は電圧計122に接続され、「検出コイル121により検出された検出信号(誘導電圧)を更に電圧計122により所定のデジタル信号に変換したもの」を取得することが可能である。
制御部131は、機能的には記憶部131a、周波数変更部131b、差分値算出部131c、焼き入れ深さ算出部131d、判定部131e、選定用周波数変更部131f、位相差算出部131gおよび選定用周波数抽出部131hを具備する。
実体的には、制御部131が、制御部131に格納されたプログラムに従って所定の演算等を行うことにより、記憶部131a、周波数変更部131b、差分値算出部131c、焼き入れ深さ算出部131d、判定部131e、選定用周波数変更部131f、位相差算出部131gおよび選定用周波数抽出部131hとしての機能を果たす。
制御部131のうち、記憶部131a、選定用周波数変更部131f、位相差算出部131gおよび選定用周波数抽出部131hが協働することにより、本発明に係る渦流測定における周波数選定方法の実施の一形態を構成する各工程が行われる。
制御部131のうち、記憶部131a、周波数変更部131b、差分値算出部131c、焼き入れ深さ算出部131dおよび判定部131eが協働することにより、本発明に係る焼き入れ深さ算出方法の実施の一形態を構成する各工程が行われる。
記憶部131a、周波数変更部131b、差分値算出部131c、焼き入れ深さ算出部131d、判定部131e、選定用周波数変更部131f、位相差算出部131gおよび選定用周波数抽出部131hのそれぞれの具体的な機能については、後述する。
入力部132は制御部131に接続され、制御部131に焼き入れ深さ測定装置100による焼き入れ深さの測定に係る種々の情報・指示等を入力するものである。
本実施形態の入力部132は専用品であるが、例えば市販のキーボード、マウス、ポインティングデバイス、ボタン、スイッチ等を用いても同様の効果を達成することが可能である。
表示部133は例えば入力部132から制御部131への入力内容、焼き入れ深さ測定装置100の動作状況、測定対象物102の焼き入れ深さの測定結果等を表示するものである。
本実施形態の表示部133は専用品であるが、例えば市販の液晶ディスプレイ(LCD;Liquid Crystal Display)やCRTディスプレイ(Cathode Ray Tube Display)等を用いても同様の効果を達成することが可能である。
本実施形態は入力部132と表示部133とを別体とする構成としたが、本発明はこれに限定されず、例えばタッチパネルの如く情報を入力する機能と情報を表示する機能を兼ねる構成(入力部と表示部とを一体とした構成)でも良い。
以下では、図2から図4を用いて焼き入れ深さ測定装置100の測定原理について説明する。
図2は焼き入れ処理が施された測定対象物102の結晶組織(層)、硬さおよび透磁率と測定対象物102の表面からの距離(深さ)との関係を示す模式図である。
図2に示す如く、測定対象物102の結晶組織は、表面から順に硬化層1、境界層2、母層3の三つの層で構成される。
硬化層1は測定対象物102の表面近傍に形成される層であり、焼き入れ処理時における冷却速度が最も大きい部分である。
硬化層1の主たる結晶組織はマルテンサイト(martensite)である。
境界層2は硬化層1よりも表面からの距離が大きく、焼き入れ処理時における冷却速度が硬化層1よりも小さい部分に形成される層である。
本実施形態では、測定対象物102を構成する材料であるS45Cは中炭素鋼に分類される(炭素濃度が0.45wt%程度)ものであり、境界層2の主たる結晶組織はトルースタイト(troostite)およびソルバイト(sorbite)からなる微細パーライト(fine pearlite)、熱影響層等である。
なお、境界層を構成する結晶組織は測定対象物を構成する材料の組成により異なるものであり、本実施形態に限定されるものではない。
境界層を構成し得る結晶組織の他の例としては、上部ベイナイト(upper bainite)および下部ベイナイト(lower bainite)等が挙げられる。
母層3は境界層2よりも表面からの距離が大きく、焼き入れ処理時における冷却速度が境界層2よりも小さい部分に形成される層である。
本実施形態では、測定対象物102を構成する材料であるS45Cは中炭素鋼に分類されるものであり、母層3の主たる結晶組織はパーライト(pearlite)およびフェライト(ferrite)の混合組織である。
なお、母層を構成する結晶組織は測定対象物を構成する材料の組成により異なるものであり、本実施形態に限定されるものではない。
母層を構成し得る結晶組織の他の例としては、パーライト組織、フェライトとセメンタイトとの混合組織等が挙げられる。
図2に示す如く、測定対象物102の硬度(ビッカース硬度)は結晶組織と密接な関係がある。
硬化層1を構成するマルテンサイトは一般に結晶粒径が小さく転位密度が大きいことから硬度が高い。ただし、硬化層1の硬度は一般に表面からの距離が変化してもほとんど変化しない。本実施形態の硬化層1の硬度はビッカース硬度で600〜700(Hv)程度である。
境界層2を構成する微細パーライトや熱影響層は、硬化層1を構成するマルテンサイトに比べて一般的に結晶粒径が大きく転位密度も小さいので、硬度も相対的に低い。
また、境界層2の硬度は表面からの距離が大きくなる(深くなる)ほど小さくなる。
母層3を構成するパーライトおよびフェライトの混合組織は、境界層2を構成する微細パーライトや熱影響層に比べて一般的に結晶粒径が大きいので、硬度も相対的に低い。ただし、母層3の硬度は一般に表面からの距離が変化してもほとんど変化しない。本実施形態の母層3の硬度はビッカース硬度で300(Hv)程度である。
図2に示す如く、測定対象物102の透磁率は結晶組織と密接な関係がある。これは、一般に測定対象物102の結晶粒径が小さくなると測定対象物102の透磁率は低くなる傾向があるとともに、鉄鋼材料は結晶粒径が小さくなるとその硬度が大きくなる傾向があることによるものである。従って、測定対象物102の透磁率と硬さとは略反比例の関係にある。
硬化層1の透磁率は低く、一般に表面からの距離が変化してもほとんど変化しない。
境界層2の透磁率は硬化層1よりも相対的に大きく、表面からの距離が大きくなる(深くなる)ほど大きくなる。
母層3の透磁率は硬化層1および境界層2よりも相対的に大きく、一般に表面からの距離が変化してもほとんど変化しない。
図3に示す如く、測定対象物102が励磁コイル111および検出コイル121の近傍に配置された状態で、複数の周波数Fa、Fb、・・・、Fxの交流励磁信号を励磁コイル111に印加すると、励磁コイル111の周囲に磁界が発生し、測定対象物102の表面および内部(特に、励磁コイル111に周囲が取り囲まれている部分)に誘導電流(渦電流)が発生する。
そして、当該誘導電流により発生する磁束が検出コイル121を貫通することにより、検出コイル121に検出信号(誘導電圧)が発生する。
また、表皮効果により、励磁コイル111に印加される交流励磁信号の周波数が大きくなる(高くなる)ほど誘導電流(渦電流)は測定対象物102の表面に集中し、誘導電流(渦電流)の浸透深さδは小さくなる傾向がある(δ=(π×Fn×μ×σ)−0.5;μは透磁率、σは導電率)。
すなわち、交流励磁信号の周波数を変更することにより誘導電流(渦電流)の浸透深さδを変更することが可能である。なお、誘導電流(渦電流)の浸透深さδは測定対象物の表面からの深さと対応する。
また、交流励磁信号と検出信号との位相差Xは表面からの深さdに比例し、浸透深さδに反比例する傾向を有する(X=d/δ)
図4に示す如く、検出信号は所定の振幅値Yを有するとともに、交流励磁信号に対して所定の位相差Xを有する。
測定対象物102の透磁率は、(1)検出信号の振幅値Y、および(2)交流励磁信号に対する検出信号の位相差Xと相関関係にある。
従って、交流励磁信号の周波数を適宜変更しつつ当該周波数に対応する検出信号を検出し、当該検出信号の振幅値Yや位相差Xを求めることは、測定対象物102において表面からの深さが交流励磁信号の各周波数における浸透深さに対応する部分の透磁率を求めることに相当する。
このように、測定対象物102の交流励磁信号の周波数(ひいては浸透深さ)と当該周波数に対応する検出信号の振幅値Yおよび位相差Xとの関係を求めることにより、測定対象物102の焼き入れ深さを非接触で(非破壊で)求めることが可能である。
以下では、図1、図5および図6を用いて本発明に係る渦流測定における周波数選定方法の実施の一形態について説明する。
本発明に係る渦流測定における周波数選定方法の実施の一形態は焼き入れ深さ測定装置100による測定対象物102の焼き入れ深さの測定に用いる二つの周波数(第一の周波数および第二の周波数)の組み合わせを選定する方法であり、焼き入れ深さ測定装置100による測定対象物102の焼き入れ深さの測定に先立って行われる。
図5に示す如く、本発明に係る渦流測定における周波数選定方法の実施の一形態は周波数選定用励磁・検出工程S1100、位相差算出工程S1200および周波数抽出工程S1300を具備する。
周波数選定用励磁・検出工程S1100は励磁コイル111により測定対象物102に異なる三つ以上の周波数の交流励磁信号を印加して測定対象物102に異なる三つ以上の周波数にそれぞれ対応する誘導電流を発生させ、検出コイル121により異なる三つ以上の周波数にそれぞれ対応する誘導電流に起因する検出信号を検出する工程である。
周波数選定用励磁・検出工程S1100において、制御部131の選定用周波数変更部131fは、交流電源112に周波数Fa、Fb、・・・、Fxの計24種類の周波数(図6参照)の交流励磁信号を順に印加する旨の制御信号を送信する。
制御部131の選定用周波数変更部131fから制御信号を受信した交流電源112は、当該制御信号に従って、励磁コイル111に周波数Fa、Fb、・・・、Fxの計24種類の周波数の交流電圧を印加し、励磁コイル111は周波数Fa、Fb、・・・、Fxの計24種類の周波数の交流励磁信号を測定対象物102に順に印加する。
その結果、測定対象物102には、各周波数に対応する誘導電流(渦電流)が順に発生する。このとき、検出コイル121は各周波数に対応する検出信号を検出する。
検出コイル121により検出された検出信号は電圧計122により所定のデジタル信号(制御部131が取得可能な形式のデジタル信号)に変換された上で制御部131に送信される。
制御部131に送信された検出信号は制御部131の記憶部131aにより記憶される。
このとき、記憶部131aにより記憶される検出信号は、パラメータとして「対応する周波数」、「振幅値」、および「位相」を有する。
記憶部131aは制御部131による制御や演算等を行う上で用いられる各種パラメータ(数値)、動作状況の履歴、演算結果(算出結果)等を記憶するものである。
記憶部131aは、実体的にはHDD(ハードディスクドライブ)、CD−ROM、DVD−ROM等の記憶媒体からなる。
周波数選定用励磁・検出工程S1100が終了したら、位相差算出工程S1200に移行する。
位相差算出工程S1200は、周波数選定用励磁・検出工程S1100において検出された「異なる三つ以上の周波数にそれぞれ対応する誘導電流に起因する検出信号」に基づいて、異なる三つ以上の周波数のそれぞれに対応する交流励磁信号および検出信号の位相差を算出する工程である。
位相差算出工程S1200において、位相差算出部131gは、記憶部131aが記憶している「交流電源112の動作履歴」および「検出コイル121により検出された検出信号」に基づいて、周波数Fa、Fb、・・・、Fxの計24種類の周波数のそれぞれについての交流励磁信号および検出信号の位相差(交流励磁信号の位相に対する検出信号の位相のずれ)Xa、Xb、・・・、Xxを算出する。
算出された位相差Xa、Xb、・・・、Xxは制御部131の記憶部131aにより記憶される。このとき、位相差Xa、Xb、・・・、Xxは、対応する周波数と関連付けられて記憶される。
位相差算出工程S1200が終了したら、周波数抽出工程S1300に移行する。
図6に示す如く、本実施形態では、各周波数に対応する検出信号を位相差−振幅値平面(交流励磁信号および検出信号の位相差Xを横軸とするとともに振幅値Yを縦軸とする平面)上にプロットし、これらプロットされた点を周波数が低い順に(Fa、Fb、・・・、Fxの順に)折れ線で結ぶと、当該折れ線は以下の傾向を示す。
周波数が比較的低い領域(Fa〜Fk)では、折れ線は位相差のマイナス方向にやや凸の形状を呈する。すなわち、周波数の増大に伴う位相差の変動量は比較的小さく、周波数の増大に伴う誘導電流の振幅値(検出信号の振幅値)の増大量は比較的大きい。また、位相差はマイナスの値を示す。
周波数が中間の領域(Fl〜Ft)では、折れ線は振幅値のプラス方向に凸の形状を呈する。すなわち、周波数の増大に伴う誘導電流の振幅値(検出信号の振幅値)の変動は比較的小さく、周波数の増大に伴う位相差の増大量は比較的大きい。
周波数が比較的高い領域(Fu〜Fx)では、折れ線は位相差のプラス方向にやや凸との形状を呈する。すなわち、周波数の増大に伴う位相差の変動量は比較的小さく、周波数の増大に伴う誘導電流の振幅値(検出信号の振幅値)の減少量は比較的大きい。
図6に示す如く、本実施形態では、周囲の環境温度が5℃(冬における工場内の雰囲気温度を想定)、25℃(春および秋における工場内の雰囲気温度を想定)、および45℃(夏における工場内の雰囲気温度を想定)の三つの場合についてそれぞれ周波数選定用励磁・検出工程S1100および位相差算出工程S1200を行った結果をそれぞれプロットしている。なお、測定対象物102の温度は周囲の環境温度と同じ温度に設定される。
図6に示す如く、周波数が比較的低い領域(Fa〜Fk)では、同じ周波数に対応するプロットの点の位置は温度が変化してもほとんど同じである(位相差および振幅値の温度依存性が小さい)。
これに対して、周波数が中間の領域(Fl〜Ft)では同じ周波数に対応するプロットの点の位置が温度の変化によりややばらつく傾向が表れる。
また、周波数が比較的高い領域(Fu〜Fx)では同じ周波数に対応するプロットの点の位置が温度により大きくばらつく(位相差および振幅値の温度依存性が大きい)。
図6に示す如き傾向が見られる原因としては、一般に周波数が比較的低い領域(Fa〜Fk)は測定対象物102の表面からの距離が比較的大きい(深い)部分に対応するので透磁率が支配的であるのに対して、周波数が比較的高い領域(Fu〜Fx)は測定対象物102の表面からの距離が比較的小さい(浅い)部分に対応するので導電率が支配的であること、および、導電率は電気抵抗率の逆数で表されるとともに電気抵抗率は一般的に温度の関数である(温度依存性を有する)こと、が挙げられる。
また、図6に示す位相差−振幅値平面の横軸たる位相差Xは以下の数3に示す関係式で表され、縦軸たる振幅値Yは以下の数4に示す関係式で表される。
Figure 2010107214
Figure 2010107214
ここで、数3におけるRは検出コイル121の抵抗成分を表し、数3におけるVは検出コイル121の両端起電力を表し、数4におけるωは検出コイル121の角周波数を表し、数4におけるLは検出コイル121のインダクタンス成分を表し、数3および数4におけるIは検出コイル121を流れる電流値を表す。
このように、図6に示す位相差−振幅値平面は、実質的には検出コイル121のインピーダンス平面と相似の関係にある。
渦流測定において問題となる測定結果の温度依存性は検出コイル121および測定対象物102のインピーダンスにおける抵抗成分の温度依存性に起因する。
従って、検出コイル121および測定対象物102のインピーダンスにおける抵抗成分を相殺することが可能な周波数の組み合わせを選定することにより、渦流測定における測定結果の温度依存性の問題を解消することが可能である。
周波数抽出工程S1300は、位相差算出工程S1200において算出された「異なる三つ以上の周波数(本実施形態の場合、Fa、Fb、・・・、Fx)」のそれぞれに対応する交流励磁信号および検出信号の位相差(本実施形態の場合、Xa、Xb、・・・、Xx)のうち、位相差の差分が所定の範囲に収まる二つの周波数の組み合わせを抽出し、当該組み合わせにおける二つの周波数のうち低い方の周波数を焼き入れ深さ測定装置100による測定対象物102の焼き入れ深さの測定に用いる「第一の周波数」とするとともに高い方の周波数を「第二の周波数」とする工程である。
周波数抽出工程S1300において、制御部131の選定用周波数抽出部131hは記憶部131aにより記憶されている検出信号の位相差Xa、Xb、・・・、Xxの差分を全ての組み合わせについて算出する(具体的には、Xa−Xb、Xa−Xc、・・・、Xv−Xx、Xw−Xxを算出する)。本実施形態の場合、計24種類の位相差の中から二つを選択して両者の差分を算出することから、算出される位相差の差分の値は276通り(=24×23/2)存在する。
次に、選定用周波数抽出部131hは算出された位相差の差分の値が「所定の範囲」に収まる(所定の範囲の下限値以上かつ上限値以下である)二つの周波数の組み合わせを抽出する。
ここで、「所定の範囲」はゼロを含み、かつその下限値および上限値が極力ゼロに近い値を選択することが望ましい。これは、位相差の差分がゼロに近い(位相差の差分の絶対値が小さい)ほど図6に示す位相差−振幅値平面における二つの周波数にそれぞれ対応するプロットを結ぶベクトル(白い矢印)の横軸方向の成分(インピーダンスにおける抵抗成分に相似な関係を有する成分)がゼロに近づき、ひいては検出コイル121および測定対象物102のインピーダンスにおける抵抗成分が相殺されることによる。
本実施形態の場合、位相差Xの値が近い「周波数FbとFjの組み合わせ」、「周波数FdとFiの組み合わせ」、および「周波数FfとFhの組み合わせ」の計三つの組み合わせが、「位相差の差分の値が所定の範囲に収まる組み合わせ」として抽出される(図6参照)。
続いて、選定用周波数抽出部131hは、抽出された三つの「位相差の差分の値が所定の範囲に収まる組み合わせ」のうち、測定対象物102の焼き入れ深さの想定範囲から外れている周波数を含む組み合わせを除外し、さらに周波数の差が最も大きくなる組み合わせを抽出し、抽出された組み合わせにおける二つの周波数のうち低い方の周波数を「第一の周波数」とするとともに高い方の周波数を「第二の周波数」とする。
ここで、「測定対象物102の焼き入れ深さの想定範囲」は、通常の作業手順に従って測定対象物102に焼き入れ処理を施した場合に想定し得る焼き入れ深さの範囲を指す。
本実施形態の場合、「周波数FbとFjの組み合わせ」、「周波数FdとFiの組み合わせ」、および「周波数FfとFhの組み合わせ」はいずれも測定対象物102の焼き入れ深さの想定範囲から外れている周波数を含まないので、選定用周波数抽出部131hは、これらの組み合わせのうち周波数の差が最も大きい組み合わせである「周波数FbとFjの組み合わせ」を抽出し、周波数Fbを第一の周波数として選定するとともに周波数Fjを第二の周波数として選定することとなる。
第一の周波数および第二の周波数の選定結果は、記憶部131aにより記憶される。
周波数の差が最も大きい組み合わせを抽出することにより、焼き入れ深さ測定装置100による測定対象物102の焼き入れ深さの測定時において測定対象物102に発生する誘導電流の浸透深さの範囲を極力広くし、ひいては測定結果を測定対象物102の深さ方向における広い範囲を反映したものとすることが可能である。
以上の如く、本発明に係る渦流測定における周波数選定方法の実施の一形態は、
励磁コイル111により測定対象物102に第一の周波数および第一の周波数と異なる第二の周波数の交流励磁信号を印加して測定対象物102に第一の周波数および第二の周波数にそれぞれ対応する渦電流からなる誘導電流を発生させ、検出コイル121により第一の周波数および第二の周波数にそれぞれ対応する誘導電流に起因する検出信号を検出し、第一の周波数に対応する検出信号の振幅値Y1、第一の周波数に対応する交流励磁信号および検出信号の位相差X1、第二の周波数に対応する検出信号の振幅値Y2、並びに第二の周波数に対応する交流励磁信号および検出信号の位相差X2に基づいて数1に示す差分値Dを算出し、差分値Dに基づいて測定対象物102(の焼き入れ深さ)を測定する渦流測定における周波数選定方法であって、
励磁コイル111により測定対象物102に異なる三つ以上の周波数(Fa、Fb、・・・Fx)の交流励磁信号を印加して測定対象物102に異なる三つ以上の周波数にそれぞれ対応する誘導電流を発生させ、検出コイル121により異なる三つ以上の周波数にそれぞれ対応する誘導電流に起因する検出信号を検出する周波数選定用励磁・検出工程S1100と、
周波数選定用励磁・検出工程S1100において検出された「異なる三つ以上の周波数にそれぞれ対応する誘導電流に起因する検出信号」に基づいて、異なる三つ以上の周波数のそれぞれに対応する交流励磁信号および検出信号の位相差を算出する位相差算出工程S1200と、
位相差算出工程S1200において算出された「異なる三つ以上の周波数(本実施形態の場合、Fa、Fb、・・・、Fx)」のそれぞれに対応する交流励磁信号および検出信号の位相差(本実施形態の場合、Xa、Xb、・・・、Xx)のうち、位相差の差分が所定の範囲に収まる二つの周波数の組み合わせを抽出し、当該組み合わせにおける二つの周波数のうち低い方の周波数を焼き入れ深さ測定装置100による測定対象物102の焼き入れ深さの測定に用いる「第一の周波数」とするとともに高い方の周波数を「第二の周波数」とする周波数抽出工程S1300と、
を具備する。
このように構成することは、以下の利点を有する。
すなわち、三つ以上の周波数のそれぞれについての交流励磁信号および検出信号の位相差を算出し、これらの差分値が所定の範囲に収まる周波数の組み合わせを抽出するだけで、測定精度の温度依存性を低減または排除しつつ適正な二つの周波数を容易に選定することが可能であり、ひいては適正な二つの周波数を選定する作業を省力化する(選定作業の労力削減および時間短縮を達成する)ことが可能である。
以下では、図1、図7、図8および図9を用いて本発明に係る焼き入れ深さ測定方法の実施の一形態について説明する。
本発明に係る焼き入れ深さ測定方法の実施の一形態は焼き入れ深さ測定装置100(図1参照)を用いて測定対象物102の焼き入れ深さを測定する方法である。
図7に示す如く、本発明に係る焼き入れ深さ測定方法の実施の一形態は励磁・検出工程S6100、差分値算出工程S6200、焼き入れ深さ算出工程S6300および判定工程S6400を具備する。
励磁・検出工程S6100は励磁コイル111により測定対象物102に第一の周波数(本実施形態の場合、周波数Fb)および第一の周波数と異なる第二の周波数(本実施形態の場合、周波数Fj)の交流励磁信号を印加して測定対象物102に第一の周波数および第二の周波数にそれぞれ対応する渦電流からなる誘導電流を発生させ、検出コイル121により第一の周波数および第二の周波数にそれぞれ対応する誘導電流に起因する検出信号を検出する工程である。
励磁・検出工程S6100において、周波数変更部131bは、記憶部131aにより記憶されている「第一の周波数および第二の周波数の選定結果」に基づいて、交流電源112に第一の周波数に対応する交流電圧を発生させる旨の制御信号を送信する。
交流電源112は、周波数変更部131bから受信した制御信号に従って、励磁コイル111に第一の周波数(周波数Fb)および第二の周波数(周波数Fj)の交流電圧を順に印加し、励磁コイル111は第一の周波数(周波数Fb)および第二の周波数(周波数Fj)の交流励磁信号を順に測定対象物102に印加する。
その結果、測定対象物102には、第一の周波数(周波数Fb)に対応する誘導電流(渦電流)および第二の周波数(周波数Fb)に対応する誘導電流が順に発生する。このとき、検出コイル121は第一の周波数(周波数Fb)に対応する検出信号および第二の周波数(周波数Fj)に対応する検出信号を順に検出する。
検出コイル121により検出された第一の周波数(周波数Fb)に対応する検出信号および第二の周波数(周波数Fj)に対応する検出信号は、電圧計122により所定のデジタル信号(制御部131が取得可能な形式のデジタル信号)に変換された上で制御部131に送信される。
制御部131に送信された第一の周波数(周波数Fb)に対応する検出信号および第二の周波数(周波数Fj)に対応する検出信号は制御部131の記憶部131aにより記憶される。
励磁・検出工程S6100が終了したら、差分値算出工程S6200に移行する。
差分値算出工程S6200は第一の周波数(周波数Fb)に対応する検出信号の振幅値Y1、第一の周波数に対応する交流励磁信号および検出信号の位相差X1、第二の周波数(周波数Fj)に対応する検出信号の振幅値Y2、並びに第二の周波数に対応する交流励磁信号および検出信号の位相差X2に基づいて数1に示す差分値Dを算出する工程である。
Figure 2010107214
差分値算出工程S6200において、差分値算出部131cは記憶部131aにより記憶されている第一の周波数(周波数Fb)に対応する検出信号および第二の周波数(周波数Fj)に対応する検出信号に基づいて、第一の周波数に対応する検出コイル121の検出信号の振幅値Y1、第一の周波数に対応する励磁コイル111の交流励磁信号および第一の周波数に対応する検出コイル121の検出信号の位相差X1、第二の周波数に対応する検出コイル121の検出信号の振幅値Y2、並びに第二の周波数に対応する励磁コイル111の交流励磁信号および第二の周波数に対応する検出コイル121の検出信号の位相差X2、をそれぞれ算出する。算出されたY1、X1、Y2およびX2は記憶部131aにより適宜記憶される。
次に、差分値算出部131cは、算出されたY1、X1、Y2およびX2を数1に示す差分値Dと前記Y1、X1、Y2およびX2との関係式に代入することにより、差分値Dを算出する。算出された差分値Dは記憶部131aにより適宜記憶される。
差分値算出工程S6200が終了したら、焼き入れ深さ算出工程S6300に移行する。
数1に示す差分値Dは、検出信号の振幅値をY軸、交流励磁信号および検出信号の位相差をX軸とする第一の周波数に係るベクトル(X1,Y1)の長さ((X1+Y10.5)から第二の周波数に係るベクトル(X2,Y2)の長さ((X2+Y20.5)を引いたものを、さらに第二の周波数に係るベクトルの長さで割った値である。
第一の周波数に係るベクトルには測定対象物102の表面から第一の周波数に対応する浸透深さまでの結晶組織および当該結晶組織の温度の影響が反映されている。
第二の周波数に係るベクトルには測定対象物102の表面から第二の周波数に対応する浸透深さまでの結晶組織および当該結晶組織の温度の影響が反映されている。
また、第一の周波数は第二の周波数よりも低いので、第一の周波数の交流励磁信号により測定対象物102に発生する誘導電流の浸透深さは第二の周波数の交流励磁信号により測定対象物102に発生する誘導電流の浸透深さよりも大きい(深い)。
従って、第一の周波数に係るベクトルの長さから第二の周波数に係るベクトルの長さを引くことにより、第一の周波数に係るベクトルおよび第二の周波数に係るベクトルに共通して含まれる情報である測定対象物102の表面から浅い部分の情報を相殺し、焼き入れ深さの測定に密接な関係を有する情報である焼き入れ深さ近傍の部分の情報を強調することが可能である。
特に、測定対象物102の温度は測定対象物102の表面と周囲の雰囲気との間の熱伝導により変動することから測定対象物102の表面から深い部分(バルク)よりも表面から浅い部分(表面近傍)の方が温度変動が大きくなる傾向があり、測定対象物102の表面から浅い部分(表面近傍)の方が温度変動による測定精度の低下への寄与が大きい。
従って、第一の周波数に係るベクトルおよび第二の周波数に係るベクトルに共通する情報である測定対象物102の表面から浅い部分の情報を相殺することは、測定対象物102の温度変動による焼き入れ深さの測定精度の低下を抑制する上で効果が大きい。
また、第一の周波数に係るベクトルから第二の周波数に係るベクトルの長さを引いたものを、さらに第二の周波数に係るベクトルの長さで割ることにより、強調された「焼き入れ深さ近傍の部分の情報」への温度変動の影響をさらに抑制することが可能である。
焼き入れ深さ算出工程S6300は差分値算出工程S6200において算出された差分値Dを数2に示す差分値D、測定対象物102の焼き入れ深さH、定数Aおよび定数Bの関係式に代入することにより、測定対象物102の焼き入れ深さHを算出する工程である。
Figure 2010107214
数2における定数Aおよび定数Bは、予め基準測定対象物を用いた実験を行うことにより求められる。
ここで、「基準測定対象物」は測定対象物と同じ材質、同じ形状、かつ同じ熱処理が施された部品等である。
焼き入れ深さ算出工程S6300において、焼き入れ深さ算出部131dは、差分値算出部131cにより算出された差分値Dを、数2に示す「焼き入れ深さHと差分値Dとの関係式(より厳密には、定数Aおよび定数B)」に代入することにより焼き入れ深さHを算出する。算出された焼き入れ深さHは記憶部131aにより適宜記憶される。
焼き入れ深さ算出工程S6300が終了したら、判定工程S6400に移行する。
図8は環境温度を5℃、25℃および45℃に設定したときの測定対象物102の複数の測定部位毎の焼き入れ深さHと差分値Dとの関係を示すグラフである。なお、図8の横軸の焼き入れ深さHは測定対象物102の測定部位を切断して切断面をビッカース硬度測定することにより求められた測定部位毎の焼き入れ深さを表すものである。
図8に示す如く、同じ測定部位のデータ間(横軸の値が同じデータ間)では、温度が変動しても差分値Dの変動は小さく、差分値Dの温度依存性が小さいことが分かる。
また、図8に示す如く、焼き入れ深さHと差分値Dとの関係を数2に示す如き三次関数で近似した場合には、焼き入れ深さHと差分値Dとの関係を一次関数(直線)で近似した場合よりも測定対象物102の測定部位を切断して切断面をビッカース硬度測定することにより求められた測定部位毎の焼き入れ深さ高い相関(R=0.982)が得られる。
すなわち、数2に示す如き三次関数に差分値Dを代入して焼き入れ深さHを算出することにより、測定対象物102の焼き入れ深さHを非接触で(非破壊で)精度良く測定することが可能である。
焼き入れ深さHと差分値Dとの関係を数2に示す如き三次関数で近似することは、第一の周波数および第二の周波数の二つの周波数を用いて焼き入れ深さHを測定する本発明の如き焼き入れ深さ測定方法の測定原理に好適である。
すなわち、第一の周波数および第二の周波数はそれぞれ測定対象物102への誘導電流の異なる二つの浸透深さに対応するものであるため、三次関数で近似した場合には、当該三次関数の二つの変曲点をそれぞれ第一の周波数および第二の周波数にそれぞれ対応する浸透深さの近傍に配置し、これら二つの変曲点で挟まれる部分については直線に近い近似を行うことが可能である。
また、三次関数のうち二つの変曲点で挟まれている部分以外の部分については差分値が少し変動したたけで焼き入れ深さが大きく変動する傾向を示すため、三次関数のうち二つの変曲点で挟まれている部分を焼き入れ深さの許容範囲と設定するとともに三次関数のうち二つの変曲点で挟まれている部分以外の部分を焼き入れ深さの許容範囲外と設定した場合には、焼き入れ深さが許容範囲外となる測定対象物をより確実に検知することが可能である。
図9は環境温度を5℃、25℃および45℃に設定したときの測定対象物102の複数の測定部位毎の位相差Xと焼き入れ深さHとの関係を示すグラフであり、温度が変動すると位相差Xが大きく変動すること、位相差Xと焼き入れ深さHとの関係を一次関数で近似した場合には相関が低く(R=0.681)、ひいては当該一次関数に基づいて焼き入れ深さHを算出しても環境温度の変動に起因する測定誤差が大きいこと、が分かる。
判定工程S6400は焼き入れ深さ算出工程S6300において算出された焼き入れ深さHと予め設定された許容焼き入れ深さ範囲とを比較し、焼き入れ深さHが許容焼き入れ深さ範囲に収まっている場合は測定対象物102が焼き入れ深さに関して良品であると判定し、焼き入れ深さHが許容焼き入れ深さ範囲に収まっていない場合は測定対象物102が焼き入れ深さに関して不良品であると判定する工程である。
「許容焼き入れ深さ範囲」は、測定対象物の焼き入れ深さとして許容し得る範囲を指す。
「焼き入れ深さが許容焼き入れ深さ範囲に収まっている」とは、焼き入れ深さが許容焼き入れ深さ範囲の下限値以上かつ許容焼き入れ深さ範囲の上限値以下であることを指す。
「焼き入れ深さが許容焼き入れ深さ範囲に収まっていない」とは、焼き入れ深さが許容焼き入れ深さ範囲の下限値より小さい、または許容焼き入れ深さ範囲の上限値より大きいことを指す。
判定工程S6400において、判定部131eは焼き入れ深さ算出部131dにより算出された焼き入れ深さHと記憶部131aに記憶されている許容焼き入れ深さ範囲の下限値および上限値とを比較する。
上記比較の結果、焼き入れ深さHが許容焼き入れ深さ範囲に収まっている場合には、判定部131eは測定対象物102が焼き入れ深さに関して良品であると判定する。
また、上記比較の結果、焼き入れ深さHが許容焼き入れ深さ範囲に収まっていない場合には、判定部131eは測定対象物102が焼き入れ深さに関して不良品であると判定する。判定部131eによる測定対象物102の判定結果は記憶部131aにより適宜記憶される。
以上の如く、本発明に係る焼き入れ深さ測定方法の実施の一形態は、
励磁コイル111により測定対象物102に第一の周波数(本実施形態の場合、周波数Fb)および第一の周波数と異なる第二の周波数(本実施形態の場合、周波数Fj)の交流励磁信号を印加して測定対象物102に第一の周波数および第二の周波数にそれぞれ対応する渦電流からなる誘導電流を発生させ、検出コイル121により第一の周波数および第二の周波数にそれぞれ対応する誘導電流に起因する検出信号を検出する励磁・検出工程S6100と、
第一の周波数(周波数Fb)に対応する検出信号の振幅値Y1、第一の周波数に対応する交流励磁信号および検出信号の位相差X1、第二の周波数(周波数Fj)に対応する検出信号の振幅値Y2、並びに第二の周波数に対応する交流励磁信号および検出信号の位相差X2に基づいて数1に示す差分値Dを算出する差分値算出工程S6200と、
差分値算出工程S6200において算出された差分値Dを数2に示す差分値D、測定対象物102の焼き入れ深さH、定数Aおよび定数Bの関係式に代入することにより、測定対象物102の焼き入れ深さHを算出する焼き入れ深さ算出工程S6300と、
を具備する。
このように構成することにより、測定対象物102の焼き入れ深さHを非接触(非破壊)で精度良く測定することが可能である。
本発明に係る渦流測定における周波数選定方法の実施の一形態および本発明に係る焼き入れ深さ測定方法の実施の一形態が適用される焼き入れ深さ測定装置を示す図。 測定対象物の結晶組織、硬さおよび透磁率と表面からの距離との関係を示す図。 本発明に係る渦流測定における周波数選定方法の実施の一形態および本発明に係る焼き入れ深さ測定方法の実施の一形態が適用される焼き入れ深さ測定装置の測定原理を示す図。 交流励磁信号と検出信号の関係を示す図。 本発明に係る渦流測定における周波数選定方法の実施の一形態を示すフロー図。 位相差Xと振幅値Yとの関係を示す図。 本発明に係る焼き入れ深さ測定方法の実施の一形態を示すフロー図。 焼き入れ深さHと差分値Dとの関係を示す図。 位相差Xと焼き入れ深さHとの関係を示す図。
符号の説明
100 焼き入れ深さ測定装置
102 測定対象物
111 励磁コイル
121 検出コイル

Claims (3)

  1. 励磁コイルにより測定対象物に第一の周波数および前記第一の周波数と異なる第二の周波数の交流励磁信号を印加して前記測定対象物に前記第一の周波数および前記第二の周波数にそれぞれ対応する渦電流からなる誘導電流を発生させ、検出コイルにより前記第一の周波数および前記第二の周波数にそれぞれ対応する誘導電流に起因する検出信号を検出し、前記第一の周波数に対応する検出信号の振幅値Y1、前記第一の周波数に対応する交流励磁信号および検出信号の位相差X1、前記第二の周波数に対応する検出信号の振幅値Y2、並びに前記第二の周波数に対応する交流励磁信号および検出信号の位相差X2に基づいて以下の数1に示す差分値Dを算出し、前記差分値Dに基づいて測定対象物を測定する渦流測定における周波数選定方法であって、
    前記励磁コイルにより前記測定対象物に異なる三つ以上の周波数の交流励磁信号を印加して前記測定対象物に前記異なる三つ以上の周波数にそれぞれ対応する誘導電流を発生させ、前記検出コイルにより前記異なる三つ以上の周波数にそれぞれ対応する誘導電流に起因する検出信号を検出する周波数選定用励磁・検出工程と、
    前記周波数選定用励磁・検出工程において検出された前記異なる三つ以上の周波数にそれぞれ対応する誘導電流に起因する検出信号に基づいて、前記異なる三つ以上の周波数のそれぞれに対応する交流励磁信号および検出信号の位相差を算出する位相差算出工程と、
    前記位相差算出工程において算出された前記異なる三つ以上の周波数のうち、前記位相差の差分が所定の範囲に収まる二つの周波数の組み合わせを抽出し、当該組み合わせにおける二つの周波数のうち低い方の周波数を前記第一の周波数とするとともに高い方の周波数を前記第二の周波数とする周波数抽出工程と、
    を具備する渦流測定における周波数選定方法。
    Figure 2010107214
  2. 前記差分値Dを以下の数2に示す差分値D、測定対象物の焼き入れ深さH、定数Aおよび定数Bの関係式に代入することにより、前記測定対象物の焼き入れ深さHを算出する周波数選定方法。
    Figure 2010107214
  3. 励磁コイルにより測定対象物に第一の周波数および前記第一の周波数と異なる第二の周波数の交流励磁信号を印加して前記測定対象物に前記第一の周波数および前記第二の周波数にそれぞれ対応する渦電流からなる誘導電流を発生させ、検出コイルにより前記第一の周波数および前記第二の周波数にそれぞれ対応する誘導電流に起因する検出信号を検出する励磁・検出工程と、
    前記第一の周波数に対応する検出信号の振幅値Y1、前記第一の周波数に対応する交流励磁信号および検出信号の位相差X1、前記第二の周波数に対応する検出信号の振幅値Y2、並びに前記第二の周波数に対応する交流励磁信号および検出信号の位相差X2に基づいて以下の数1に示す差分値Dを算出する差分値算出工程と、
    前記差分値算出工程において算出された差分値Dを以下の数2に示す差分値D、測定対象物の焼き入れ深さH、定数Aおよび定数Bの関係式に代入することにより、前記測定対象物の焼き入れ深さHを算出する焼き入れ深さ算出工程と、
    を具備する焼き入れ深さ測定方法。
    Figure 2010107214
    Figure 2010107214
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