JP2010106887A - 動力伝達装置の潤滑機構 - Google Patents
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Abstract
【課題】動力伝達装置の内部の回転伝動経路の切替え状態に応じて適量のオイルを必要な噛合部位等に供給でき、損失トルクを抑えた効率的な動力伝達装置にできる動力伝達装置の潤滑機構を提供する。
【解決手段】複数の回転要素12、15、22、24、26、27、31のうちいずれかの切替え用回転要素15を軸方向に移動させて内部の回転伝動経路を切り替える動力伝達装置にあって、複数の回転要素のいずれかに潤滑または冷却用のオイルを通過させるオイル通路81が形成された動力伝達装置の潤滑機構において、切替え用回転要素15が、軸方向に移動するときにオイル通路81の一部81cを開閉し、オイル通路81の一部81cおよび残部81dへのオイルの供給状態を変化させる。
【選択図】図1
【解決手段】複数の回転要素12、15、22、24、26、27、31のうちいずれかの切替え用回転要素15を軸方向に移動させて内部の回転伝動経路を切り替える動力伝達装置にあって、複数の回転要素のいずれかに潤滑または冷却用のオイルを通過させるオイル通路81が形成された動力伝達装置の潤滑機構において、切替え用回転要素15が、軸方向に移動するときにオイル通路81の一部81cを開閉し、オイル通路81の一部81cおよび残部81dへのオイルの供給状態を変化させる。
【選択図】図1
Description
本発明は、動力伝達装置の潤滑機構、特に動力伝達装置の内部における回転伝動経路を切替え用回転要素の軸方向移動によって切り替えるように構成された動力伝達装置の潤滑機構に関する。
一般に、回転動力を伝達する動力伝達装置、例えば車両用の変速機やトランスファにおいては、歯車や歯付伝動要素の噛合部位、多数の回転要素の軸受部位、あるいは、摺動部位に潤滑(および冷却)用のオイルを供給する潤滑機構が設けられており、オイルポンプから圧送されたオイルを順次分岐させながらこれらの部位に供給し、潤滑後のオイルが末端の各部位から変速機ケースの底部側に流下するようになっている。
従来のこの種の動力伝達装置の潤滑機構としては、例えば高速運転時のみ潤滑を必要とするか潤滑不良を生じ易い部位にオイルを供給する分岐管路を、流量制御バルブにより高速運転時にのみオイルポンプ側に接続するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、トランスファケース内でチェーン伝動手段によってかき上げられオイルをオイルキャッチタンクに投入するためのオイルの投入口を、シフトフォークに付設した蓋体によってシフトフォークの移動を利用して開閉するようにしたものも知られている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、変速機内の複数の摩擦係合要素のうちブレーキに対しては冷却が必要なときだけオイルを供給するオイル分配手段を設けたものがある(例えば、特許文献3参照)。
その他、高車速時にライン圧を高めて潤滑系に流出する油量を増加させるようにしたものや、選択噛合式の歯車噛合機構で噛合選択されていない歯車組への供給オイル量を噛合選択された歯車組に比べて制限するようにしたものも知られている(例えば、特許文献4、5参照)。
実開平01−113665号公報
実開平01−118252号公報
特開平05−248519号公報
特開2000−046171号公報
特開2007−100883号公報
しかしながら、上述のような従来の動力伝達装置の潤滑機構にあっては、動力伝達装置の内部における回転伝動経路の切替え状態によって各部位の負荷や潤滑の必要性が異なるのに対して、専ら高速時に各潤滑部位へのオイルの供給量や供給圧が高められることになり、切替え状態に応じて適量のオイルを選択的に必要な噛合部位や摺動部位に供給するということができなかった。
そのため、車両の低燃費化が進む中にあって、例えばプラネタリギヤ方式の副変速機を有するトランスファユニットのような動力伝達装置では、高速モードでピニオンが空転する状態となるにもかかわらず多量のオイルが供給されるためにオイルのせん断抵抗が増すことになり、高速モード下でユニット下部の貯留オイルをチェーンや歯車でかき上げたり攪拌したりするための抵抗も増すことになっていた。その結果、動力伝達装置における損失トルクが増大してしまい、効率的でなかった。
本発明は、上述のような従来の問題を解決するためになされたもので、動力伝達装置の内部の回転伝動経路の切替え状態に応じて選択的に適量のオイルを必要な噛合部位や摺動部位に供給することができ、損失トルクを抑えた効率的な動力伝達装置とすることができる動力伝達装置の潤滑機構を提供することを目的とする。
本発明に係る動力伝達装置の潤滑機構は、上記目的達成のため、(1)複数の回転要素のうちいずれかの切替え用回転要素を軸方向に移動させて内部の回転伝動経路を切り替える動力伝達装置にあって、前記複数の回転要素のいずれかに潤滑または冷却用のオイルを通過させるオイル通路が形成された動力伝達装置の潤滑機構において、前記切替え用回転要素が、前記軸方向に移動するときに前記オイル通路の一部を開閉し、前記一部および前記オイル通路の残部への前記オイルの供給状態を変化させるものである。
この構成により、切替え用回転要素が軸方向に移動するときには、オイル通路の一部が開閉されて、オイル通路の一部および残部へのオイルの供給状態が変化することになり、切替え状態に応じて選択的に適量のオイルを必要な噛合部位や摺動部位に供給することが可能になる。
本発明に係る動力伝達装置の潤滑機構は、また、上記目的達成のため、(2)互いに軸方向に離間する歯部を有する第1回転要素および第2回転要素と、前記第1回転要素および前記第2回転要素のうち任意の回転要素の前記歯部に選択的に噛合する選択噛合歯部を有し、軸方向一方側への移動によって前記選択噛合歯部を前記第1回転要素の前記歯部に噛合させ、軸方向他方側への移動によって前記選択噛合歯部を前記第2回転要素の前記歯部に噛合させることができる移動可能な第3回転要素と、前記第1回転要素および前記第2回転要素に対して前記第3回転要素を前記軸方向に移動させ、前記第3回転要素への回転の入力経路を前記第1回転要素側と前記第2回転要素側とに切り替える切替え手段と、を備えた動力伝達装置にあって、前記第1回転要素および前記第2回転要素のうち少なくとも片方に潤滑または冷却用のオイルを通過させるオイル通路が形成された動力伝達装置の潤滑機構において、前記第3回転要素が、前記軸方向に移動するときに前記オイル通路の一部を開閉し、前記一部および前記オイル通路の残部への前記オイルの供給状態を変化させるものである。
この構成により、第3回転要素がその選択噛合歯部を第1回転要素および前記第2回転要素のうちいずれか一方に噛合させるよう軸方向に移動すると、第1回転要素および前記第2回転要素のうち少なくとも片方に形成されたオイル通路の一部が開閉され、オイル通路の一部および残部へのオイルの供給状態が変化することになる。したがって、第3回転要素の切替え状態に応じて選択的に適量のオイルを必要な噛合部位や摺動部位に供給することが可能になる。
上記(2)に記載の構成を有する動力伝達装置の潤滑機構においては、(3)前記第3回転要素が、前記オイル通路の一部を閉塞するとき、前記オイル通路の下流側のうち特定の通路部分に供給されるオイルが増加するようになっているのが好ましい。
この構成により、第3回転要素の特定の切替え状態下で特定の通路部分に必要量のオイルを供給できる。また、オイル通路の一部を閉塞するために第3回転要素を特に複雑な形状にする必要もない。
上記(3)に記載の動力伝達装置の潤滑機構においては、(4)前記第1回転要素および前記第2回転要素がそれぞれ遊星歯車変速機構の低速側および高速側の出力要素を構成しており、前記第3回転要素の前記選択噛合歯部が前記第1回転要素側の前記歯部に噛合し、前記第3回転要素への回転の入力経路が伝達トルクを増大させる低速側に切り替えられるときに、前記遊星歯車機構のピニオンの近傍に前記オイルを供給する前記特定の通路部分に供給されるオイルが増加するようにしたものである。
この構成により、第3回転要素が低速側に切り替えられるときにはピニオンの近傍に供給されるオイルの量が増加し、逆に、第3回転要素が高速側に切り替えられるときにはピニオンの近傍に供給されるオイルの量が減少することになり、ピニオンが空転する状態下で多量のオイルが供給されるためにオイルのせん断抵抗が増すという問題が解消される。
本発明に係る動力伝達装置の潤滑機構は、さらに、上記目的達成のため、(5)互いに軸方向に離間する歯部を有する第1回転要素および第2回転要素と、前記第1回転要素および前記第2回転要素のうち任意の回転要素の前記歯部に選択的に噛合する選択噛合歯部を有し、軸方向一方側への移動によって前記選択噛合歯部を前記第1回転要素の前記歯部に噛合させ、軸方向他方側への移動によって前記選択噛合歯部を前記第2回転要素の前記歯部に噛合させることができる移動可能な第3回転要素と、前記第3回転要素を内周側から支持するとともに前記第3回転要素の前記内周部に軸方向に相対移動可能に係合する第4回転要素と、前記第1回転要素および前記第2回転要素に対して前記第3回転要素を前記軸方向に移動させ、前記第3回転要素および前記第4回転要素への回転の入力経路を前記第1回転要素側と前記第2回転要素側とに切り替える切替え手段と、を備えた動力伝達装置にあって、少なくとも前記第4回転要素の内方側に潤滑または冷却用のオイルを収容可能な内部環状空間が形成される動力伝達装置の潤滑機構において、前記第4回転要素に前記内部環状空間に収容された前記オイルを外部に排出させるオイル排出通路が形成され、前記第3回転要素が前記第1回転要素および前記第2回転要素に対して前記軸方向に移動するときに、前記オイル排出通路が前記第3回転要素によって開閉されるものである。
この構成により、第3回転要素がその選択噛合歯部を第1回転要素および前記第2回転要素のうちいずれか一方に噛合させるよう軸方向移動すると、内部環状空間にオイルを収容可能な第4回転要素のオイル排出通路が閉塞され、第4回転要素の内部環状空間に収容されるオイルの量が増加する。一方、第3回転要素がその選択噛合歯部を第1回転要素および前記第2回転要素のうちいずれか他方に噛合させるよう軸方向移動すると、第4回転要素のオイル排出通路が開放され、第4回転要素の内部環状空間に収容されるオイルの量が減少する。したがって、大物歯車部品やチェーンが高速回転するときには第4回転要素の内部環状空間に収容されるオイルの量を増加させることで、それらの部品が貯留オイルをかき上げたり攪拌したりするための損失トルクを低減させることが可能になる。
上記(5)に記載の構成を有する動力伝達装置の潤滑機構においては、(6)前記第4回転要素が、該第4回転要素に入力される回転を2つの出力回転軸に差動可能に伝達する差動機構を収納しており、前記2つの出力回転軸のうち少なくとも一方に前記差動機構に前記オイルを供給する供給通路が形成されているのが好ましい。
この構成により、出力回転軸に形成された供給通路を通して第4回転要素の中心部側から差動機構にオイルが供給され、差動機構を潤滑したオイルが第4回転要素の外周側のオイル排出通路を通して内部環状空間から排出されることになり、オイル排出通路の開放時に所要量のオイルの流出が可能になる。
上記(6)に記載の動力伝達装置の潤滑機構においては、(7)前記差動機構が、4輪駆動車の前輪側に回転動力を伝達する第1の出力回転軸と、前記4輪駆動車の後輪側に回転動力を伝達する第2の出力回転軸とに、前記第4回転要素からの回転動力を伝達するとともに、前記第1の出力回転軸と前記第2の出力回転軸との差動を許容するセンターディファレンシャル機構であってもよい。
この構成により、第1、第2の出力回転軸に形成された供給通路を通して第4回転要素の中心部側から差動機構にオイルが供給され、センターディファレンシャル機構を潤滑したオイルが第4回転要素の外周側のオイル排出通路を通して内部環状空間から排出されることになる。したがって、センターディファレンシャル機構に必要なオイルを確保しつつ、オイル排出通路の開閉によって動力伝達装置の底部側の貯留オイル量を適宜減量し、損失トルクを低減させることができる。
上記(5)〜(7)に記載の動力伝達装置の潤滑機構においては、(8)前記第1回転要素および前記第2回転要素がそれぞれ遊星歯車変速機構の低速側および高速側の出力要素を構成しており、前記第3回転要素の前記選択噛合歯部が前記第2回転要素側の前記歯部に噛合し、前記第3回転要素への回転の入力経路が高速側に切り替えられるときに、前記オイル排出通路が閉塞されて前記第4回転要素内に収容されるオイルが増加するのが好ましい。
この構成により、遊星歯車変速機構の変速出力が高速側であるときには、オイル排出通路が閉塞されて第4回転要素の内部環状空間に収容されるオイルの量が増加し、差動機構を潤滑するオイル量が十分に確保されるとともに、動力伝達装置の底部側の貯留オイル量が減量されることで、チェーンや大物歯車等のオイルのかき上げによる損失トルクを低減させることができる。
本発明によれば、切替え用回転要素が軸方向に移動するときに、オイル通路の一部を開閉して、オイル通路の一部および残部へのオイルの供給状態を変化させるようにしているので、その切替え状態に応じて適量のオイルを必要な噛合部位や摺動部位に供給することができ、損失トルクを抑えた効率的な動力伝達装置とすることができる動力伝達装置の潤滑機構を提供することができる。
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る動力伝達装置の潤滑機構を示すその動力伝達装置の要部断面図で、入力軸の回転中心軸線より上側と下側とで内部の回転伝動経路の異なる切替え状態を示している。また、図2は、本発明の第1の実施の形態に係る動力伝達装置の潤滑機構を備えたその動力伝達装置の断面図である。なお、本実施形態は、本発明を動力伝達装置である4輪駆動車両用のトランスファ装置に適用したものであり、そのトランスファ装置は、図外のエンジンから主変速機を介して伝達される回転動力を入力するように主変速機の後段側に直列的に配置されている。また、以下の説明で回転要素について軸方向というときにはその回転中心軸線の方向を意味する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る動力伝達装置の潤滑機構を示すその動力伝達装置の要部断面図で、入力軸の回転中心軸線より上側と下側とで内部の回転伝動経路の異なる切替え状態を示している。また、図2は、本発明の第1の実施の形態に係る動力伝達装置の潤滑機構を備えたその動力伝達装置の断面図である。なお、本実施形態は、本発明を動力伝達装置である4輪駆動車両用のトランスファ装置に適用したものであり、そのトランスファ装置は、図外のエンジンから主変速機を介して伝達される回転動力を入力するように主変速機の後段側に直列的に配置されている。また、以下の説明で回転要素について軸方向というときにはその回転中心軸線の方向を意味する。
まず、その構成について説明する。
図1および図2に示すように、本実施形態のトランスファ装置10は、副変速機20と、差動機構であるセンターディファレンシャル機構30と、副変速機20を切替え操作する切替え操作機構50とを備えている。
このトランスファ装置10は、主変速機からの回転動力をさらに副変速機20により変速可能で、その副変速機20から回転動力を、切替え用回転要素15およびセンターディファレンシャル機構30を介して後輪側への出力回転軸41と前輪側への出力回転軸42とに差動可能に伝達するようになっている。なお、図示していないが、後輪側への出力回転軸41と前輪側への出力回転軸42は、それぞれ対応するプロペラシャフトに連結されて前輪側および後輪側に動力を伝達するようになっており、フロント側およびリヤ側でそれぞれ差動装置からドライブシャフトを介して左右の車輪に動力伝達がなされるようになっている。
前述の主変速機は、公知のものであるので図示しないが、複数の走行レンジ(複数の前進レンジ(例えば、D、L、2)、後進レンジ(例えば、R))およびニュートラルレンジ(例えば、N)のうち任意のレンジに選択操作され、選択されたレンジに応じて、それに対応する車両の走行レンジで自動変速制御を行うようになっている。
トランスファ装置10は、主変速機のアウトプットシャフト(図示していない)とスプライン結合するようトランスファケース11に回転自在に支持された入力軸12を有しており、この入力軸12の回転が副変速機20に入力される。
切替え用回転要素15は、一端部が内周側のスプライン歯16aおよび外周側のスプライン歯16bを有する円環状の板部16となっており、この板部16に入力軸12と同軸に配置された略円筒状のスリーブ17の前端部(図1中の左端側)が一体的に連結された有底筒状をなしている。
副変速機20は、後輪側への出力回転軸41と前輪側への出力回転軸42とに対して、入力した回転動力をそのまま高速で伝達する高速出力状態(以下、高速モードという)と、入力した回転動力を減速し低速で伝達する低速出力状態(以下、低速モードという)とに切替え可能な高・低2段の変速機構である。
また、副変速機20を切替え操作する切替え操作機構50は、例えばトランスファ装置10の後部側に装着された公知のアクチュエータユニット51と、切替え用回転要素15に係合するシフトフォーク52(詳細図示せず)と、トランスファケース11に軸方向摺動可能に支持されたシフトシャフト53とを有しており、アクチュエータユニット51によりシフトシャフト53を介してシフトフォーク52および切替え用回転要素15を軸方向に移動させるようになっている。
より具体的には、副変速機20は、入力軸12と一体に形成された外歯車からなるサンギヤ22と、そのサンギヤ22の周りに配された複数(例えば3つまたは4つ)のピニオン23と、これら複数のピニオン23を等角度間隔で支持するキャリア24と、複数のピニオン23が噛合するようにトランスファケース11の内部に固定された内歯のリングギヤ25とを有するプラネタリギヤタイプのものであり、入力軸12が複数回転(例えば2.6回転)する間にキャリア24が複数回自転しつつ1回公転するものである。
キャリア24には、内歯のスプライン歯27a(歯部)を有する環状体27が固着されており、この環状体27のスプライン歯27a(歯部)に切替え用回転要素15の板部16の外周側のスプライン歯16bをスプライン係合させることで、キャリア24の公転成分を低速出力として切替え用回転要素15に伝動させることができるようになっている。
ここで、キャリア24および環状体27は一体となって本発明にいう第1回転要素を構成している。なお、副変速機20の各ギヤは例えばヘリカルギヤ(はすば歯車)からなる。
ここで、キャリア24および環状体27は一体となって本発明にいう第1回転要素を構成している。なお、副変速機20の各ギヤは例えばヘリカルギヤ(はすば歯車)からなる。
また、入力軸12の内端部でもあるサンギヤ22の後端側の周壁部22bには、歯付ホイール26が固定されており、この歯付ホイール26は、サンギヤ22と共に高速出力用の第2回転要素を構成している。また、歯付ホイール26は、その外周の後端側(図1中の右端側)に外歯のスプライン歯26a(歯部)を有しており、そのスプライン歯26aは、入力軸12の軸方向において環状体27の内周側のスプライン歯27aから離間するように配置されている。
歯付ホイール26のスプライン歯26aは、切替え用回転要素15の板部16の内周側のスプライン歯16aに噛合可能な歯形を有しており、切替え用回転要素15のスプライン歯16aが歯付ホイール26のスプライン歯26aに噛合したとき、入力軸12からサンギヤ22への入力回転が、歯付ホイール26から切替え用回転要素15に速度比1:1で伝動されるようになっている。
すなわち、副変速機20は、切替え用回転要素15の一端側の外周側に設けられたスプライン歯16bが環状体27のスプライン歯27aに噛合したときに所定減速比の低速モードとなり、キャリア24からの低速出力(トルクの大きい出力)を環状体27および切替え用回転要素15を介して外部に出力することができ、一方、切替え用回転要素15のスプライン歯16aが歯付ホイール26のスプライン歯26aに噛合したときに速度比1:1の高速モードとなり、入力軸12からの入力回転を歯付ホイール26および切替え用回転要素15を介して外部に出力することができるようになっている。
また、切替え用回転要素15のスリーブ17は、その外周側の後端部にシフトフォーク52に係合する環状溝部17gを有しており、このスリーブ17の環状溝部17gに係合するシフトフォーク52がシフトシャフト53を介してアクチュエータユニット51により操作されることで切替え用回転要素15を軸方向に移動させ、副変速機20を高速モードから低速モードに、あるいはその逆に切り替えるようになっている。
さらに、切替え用回転要素15のスリーブ17の内周側には、軸方向の比較的広い範囲にスプライン歯17aが設けられており、切替え用回転要素15は、そのスプライン歯17aをセンターディファレンシャル機構30の外殻となるハウジング31(後述する)にスプライン係合している。すなわち、切替え用回転要素15は、ハウジング31に対し回転方向で一体的に結合され、軸方向にのみ相対移動可能な状態となっており、切替え用回転要素15を介した副変速機20からの出力は、センターディファレンシャル機構30のハウジング31に入力されるようになっている。
センターディファレンシャル機構30は、例えばプラネタリギヤタイプの差動制限機能付のものである。このセンターディファレンシャル機構30は、入力軸12と同一軸線上に配置された後輪側への出力回転軸41に回転自在に支持されるとともに、外周部でスリーブ17のスプライン歯17aにスプライン係合する外歯のスプライン歯31aを有するハウジング31と、ハウジング31の一端側内周部にスプライン結合されるとともに抜け止めされ、後輪側への出力回転軸41に軸受けを介して回転自在に支持された蓋状のピニオンキャリア32と、ピニオンキャリア32に回転自在に支持されて後輪側への出力回転軸41の周りに等角度間隔に配置された例えばヘリカルギヤからなる複数のピニオン33と、フロントドライブ用のチェーンスプロケット34に一体結合され、後輪側への出力回転軸41に回転自在に支持されたフロント側の出力部材35と、フロント側の出力部材35にスプライン結合するとともにピニオン33が噛合する外歯を有するサンギヤ36と、複数のピニオン33が噛合する内歯37aおよび複数のピニオン33の一端部に対向する環状板部37bを有するリングギヤ37と、リングギヤ37の環状板部37bにスプライン結合するとともに後輪側への出力回転軸41にスプライン結合した内筒部材38と、リングギヤ37の環状板部37bとハウジング31の間、およびリングギヤ37の環状板部37bと複数のピニオン33の間にそれぞれ設けられたシム39a、39bとを有している。
チェーンスプロケット34はチェーン47を介してドリブン側のチェーンスプロケット46およびそのチェーンスプロケット46と一体の前輪側の出力回転軸42に連結されており、前輪側の出力回転軸42にはフロント側のプロペラシャフトへの取付けブラケット42fが固定されている。また、後輪側への出力回転軸41には、リヤ側のプロペラシャフトへの取付けブラケット41fが固定されている。
センターディファレンシャル機構30においては、ハウジング31からピニオンキャリア32を介してピニオン33の公転運動が入力されると、サンギヤ36からフロント側の出力部材35へ、また、リングギヤ37から内筒部材38を介して後輪側への出力回転軸41へと回転が伝動されるとともに、サンギヤ36と一体回転するフロントドライブ用のチェーンスプロケット34と、リングギヤ37と一体回転する後輪側への出力回転軸41との差動が許容される。また、センターディファレンシャル機構30は、ヘリカルギヤからなるピニオン33に作用するスラスト方向の力を利用してリングギヤ37の環状板部37bをハウジング31の内壁側に押圧することで、前記差動を所定範囲内に制限できるようになっている。
また、ハウジング31の一端側の外周部にはデフロック切替え用のスリーブ48がスプライン係合している。このスリーブ48は、フロント側の出力部材35に固着された歯付ホイール49にスプライン結合したとき、センターディファレンシャル機構30のハウジング31とチェーンスプロケット34を回転方向一体に結合してデフロック状態(差動のないリジッドな4輪駆動とする結合状態)とすることができる。また、このデフロック切替え用のスリーブ48に係合するシフトフォーク55が、シフトシャフト53と平行にトランスファケース11に軸方向移動可能に支持されたシフトシャフト56を介してアクチュエータユニット51により操作されることで、デフロックのON/OFF切替えがなされるようになっている。ここで、シフトフォーク55およびシフトシャフト56は、切替え操作機構50の一部を構成している。
切替え操作機構50のアクチュエータユニット51は、シフトフォーク52、55を2つの切替え操作位置のうち任意の一方に駆動するように、例えば2つの電動パルスモータと、これらの電動パルスモータの回転を減速するとともに直線運動に変換する減速および運動変換機構(例えばラック・ピニオン機構)と、電動パルスモータの回転または運動方向変換後の直線変位を検出する図示しない変位検出器とを含んで構成されており、副変速制御およびデフロック切替え制御を行うトランスファ切替え制御用の電子制御ユニット(以下、トランスファECUという)によって制御されるようになっている。
なお、図中に示す軸受101、102、103、104はそれぞれ玉軸受けで構成されており、軸受105、106、107および符号なしの他の軸受はころ軸受やニードル軸受で構成されている。
一方、図3(a)および図3(b)に示すように、トランスファ装置10においては、上述のように複数の回転要素のうちいずれかの切替え用回転要素15を軸方向に移動させて内部の副変速機20を通る回転伝動経路を切り替えるようになっているが、複数の回転要素、例えば少なくとも入力軸12の後端部であるサンギヤ22の後端側の周壁部22b、高速段用の歯付ホイール26、キャリア24に固着された環状体27等には、潤滑・冷却用のオイルを専ら半径方向に通過させてピニオン23の近傍に供給するオイル通路81が形成されており、入力軸12、ハウジング31、後輪側への出力回転軸41等には、潤滑・冷却用のオイルを専ら軸方向に通過させる中心部のオイル通路82とそこから放射外方に延びる少なくとも複数のオイル通路83a、83b、83c等(符号なしを含む)とが形成されている。
さらに、複数の回転要素の間の隙間がオイル通路91、92、93等となり、これら複数のオイル通路81、82、83a〜83c、91〜93等を通して複数の歯車の噛合部や、回転要素の軸受部、摺動部等の潤滑部位にオイルが供給されるようになっている。そして、各潤滑部位に供給されたオイルは、そこから徐々にオイルの圧力が低い側に流れ、再度トランスファケース11内の底部側に流下する。
この潤滑に供されるオイルは、トランスファケース11に形成された図示しないオイル供給通路を通してオイルポンプ70から入力軸12の中心部のオイル通路12aに供給され、そこから後輪側への出力回転軸41の中心穴であるオイル通路82に導入された後、オイル通路82から放射外方に延びる複数組のオイル通路83a〜83c等を通して、各潤滑部位に供給されるようになっている。なお、オイルポンプ70は、入力軸12によって駆動される機械式のものでも電動式のものでもよい。
また、本実施形態においては、これら複数のオイル通路81、82、83a〜83c、91〜93等のうち副変速機20の歯車噛合部位にオイルを供給することができるオイル通路81の一部を、切替え用回転要素15の軸方向移動によって開閉することで、そのオイル通路81の一部および残部へのオイルの供給状態を変化させることができるようになっている。
具体的には、オイル通路81は、サンギヤ22を一体化した入力軸12の後端部および高速段用の歯付ホイール26を放射外方に貫通する複数本の第1通路81aと、環状体27の内周部が回転方向に摺動可能に嵌合している歯付ホイール26の図1中の左端部との間に形成される環状の第2通路81bと、この環状の第2通路81bからピニオン23の近傍に向かって放射外方に延びる複数本の第3通路81cと、これら第3通路81cからキャリア24の一部としてピニオン23を支持するピニオンピン24pの中心部に延びるとともに少なくとも1箇所でピニオンピン24pの外周面に開口する第4通路81dとを含んで構成されており、第3通路81cは、さらに環状体27の切替え用回転要素15と対向する対向面27r上に開口する開口81eを有している。
そして、切替え用回転要素15(第3回転要素)が、軸方向に移動するときにオイル通路81の一部である第3通路81cの開口81e(オイル通路の一部)を開閉し、第3通路81cおよび第4通路81dへのオイルの供給状態を変化させる。また、切替え用回転要素15が、第3通路81cの開口81eを閉塞するとき、オイル通路の下流側のうち特定の通路部分である第4通路81dに供給されるオイルが増加するようになっている。
すなわち、キャリア24およびサンギヤ22がそれぞれ低速側および高速側の出力要素を構成する副変速機20(遊星歯車変速機構)において、複数の回転要素のうち切替え用回転要素15の選択噛合歯部であるスプライン16bがキャリア24側の環状体27のスプライン歯27aに噛合し、切替え用回転要素15への回転の入力経路が伝達トルクを増大させる低速側に切り替えられるときに、歯面荷重が大きくなる副変速機20のピニオン23の近傍にオイルを供給する第4通路81d(特定の通路部分)への供給オイル量が増加するようになっている。
次に、作用について説明する。
上述のように構成された本実施形態の潤滑機構を備えたトランスファ装置10においては、トランスファECUにより、予め設定された切替え条件が成立するか否かが一定の短い周期で繰り返し判別され、切替え操作機構50のアクチュエータユニット51が制御されることで、副変速制御およびデフロック切替え制御が実行される。
このような状態においては、切替え用回転要素15が軸方向に移動するときには、オイル通路81の一部である開口81eが開閉されて、オイル通路81の第3通路81cおよび第4通路81dへのオイルの供給状態が変化することになり、切替え用回転要素15の切替えモードに応じて選択的に適量のオイルをそのモードで潤滑の必要な噛合部位や摺動部位に供給することが可能になる。
すなわち、図3(b)に示すように、切替え用回転要素15が低速側に切替え操作されてオイル通路81の第3通路81cの開口81eを閉塞するときには、第3通路81c内のオイルの圧力が高まり、下流側の第4通路81dに供給されるオイルの量が増加することになり、切替え用回転要素15への回転の入力経路が伝達トルクを増大させる低速側に切り替えられるときに、副変速機20のピニオン23の近傍に第4通路81dを通して供給される潤滑用のオイルが増加することになる。したがって、低速・高トルクの出力状態でも、副変速機20内の各噛合部位の良好な潤滑状態が確保される。しかも、オイル通路81の第3通路81cを閉塞するために切替え用回転要素15を特に複雑な形状にする必要もない。
一方、図3(a)に示すように、切替え用回転要素15が高速側に切替え操作されてオイル通路81の第3通路81cの開口81eが開放されるときには、第3通路81c内のオイルの圧力が低下して、ピニオン23の近傍に供給されるオイルの量が減少することになる。したがって、ピニオン23が空転する状態下でその周りに多量のオイルが供給されるためにオイルのせん断抵抗が増すといった従来の問題が解消されることになる。
このように、本実施形態の動力伝達装置の潤滑機構においては、切替え用回転要素15が軸方向に移動するときに、オイル通路81の一部である第3通路81cの開口81eを開閉して、オイル通路81の第3通路81cおよび第4通路81dへのオイルの供給状態を変化させるようにしているので、切替え用回転要素15の切替え状態に応じて適量のオイルを必要な噛合部位や摺動部位に供給することができ、損失トルクを抑えた効率的なトランスファ装置10とすることができる潤滑機構を提供することができる。
(第2の実施の形態)
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る動力伝達装置の潤滑機構を示すその動力伝達装置の要部断面図で、入力軸の回転中心軸線より上側と下側とで内部の回転伝動経路の異なる切替え状態を示している。なお、本実施形態は、上述の第1の実施の形態と切替え用回転要素付近と潤滑機構の構成が相違するものの、4輪駆動車両用のトランスファ装置としての全体の概略構成は第1の実施の形態と同様である。したがって、以下の説明においては、第1の実施の形態と同様の構成部分については図1〜図3中の対応する構成要素の符号を用いて、第1の実施の形態との相違点について詳述する。
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る動力伝達装置の潤滑機構を示すその動力伝達装置の要部断面図で、入力軸の回転中心軸線より上側と下側とで内部の回転伝動経路の異なる切替え状態を示している。なお、本実施形態は、上述の第1の実施の形態と切替え用回転要素付近と潤滑機構の構成が相違するものの、4輪駆動車両用のトランスファ装置としての全体の概略構成は第1の実施の形態と同様である。したがって、以下の説明においては、第1の実施の形態と同様の構成部分については図1〜図3中の対応する構成要素の符号を用いて、第1の実施の形態との相違点について詳述する。
図4に示すように、本実施形態のトランスファ装置10は、第1回転要素としてのキャリア24および環状体27(第1回転要素)と、第2回転要素としてのサンギヤ22および歯付ホイール76(第2回転要素)と、歯付ホイール76の外歯のスプライン歯76aおよび環状体27の内歯のスプライン歯27aのうち任意のスプライン歯76a、27aに選択的に噛合するスプライン歯75a、75b(選択噛合歯部)を一端側に有する略円筒状の切替え用回転要素75(第3回転要素)と、切替え用回転要素75を内周側から支持するとともに切替え用回転要素75の内周部に軸方向に相対移動可能に係合するセンターディファレンシャル機構30のハウジング31(第4回転要素)と、切替え用回転要素75を軸方向に移動させて、切替え用回転要素75およびセンターディファレンシャル機構30のハウジング31への回転の入力経路を低速側と高速側とに切り替える切替え操作機構50(切替え手段)とを備えている。
ここで、スリーブ状の切替え用回転要素75は、その外周側の後端部にシフトフォーク52に係合する環状溝部75gを有しており、この切替え用回転要素75の環状溝部75gに係合するシフトフォーク55がシフトシャフト56を介してアクチュエータユニット51により操作されることで、切替え用回転要素75が軸方向に移動し、副変速機20を高速モードから低速モードに、あるいはその逆に切り替えるようになっている。
さらに、切替え用回転要素75の内周側には、軸方向の比較的広い範囲にスプライン歯75aと同一の歯形を有するスプライン歯75cがスプライン歯75aから軸方向に離間するように設けられており、切替え用回転要素75は、そのスプライン歯75cをセンターディファレンシャル機構30のハウジング31にスプライン係合させている。すなわち、切替え用回転要素75は、ハウジング31に対し回転方向で一体的に結合され、軸方向にのみ相対移動可能な状態となっており、切替え用回転要素75を介した副変速機20からの出力がセンターディファレンシャル機構30のハウジング31に入力されるようになっている。
歯付ホイール76は、サンギヤ22の後端側の周壁部22bに強固にスプライン嵌合され固定された筒状部76vと、この筒状部76vから放射外方にフランジ状に突出する環状の板部76fとを有しており、環状の板部76fの外周には切替え用回転要素75のスプライン歯75a、75cにスプライン係合可能なスプライン歯(符号なし)が形成されている。
そして、少なくともセンターディファレンシャル機構30のハウジング31の内方側には、潤滑・冷却用のオイルを収容可能な内部環状空間31sが後輪側への出力回転軸41
を取り囲む環状に形成されており、ハウジング31の外周壁部31bにはその内部環状空間31sに収容されたオイルを外部に排出させることができる少なくとも1つのオイル排出通路31dが形成されている。
を取り囲む環状に形成されており、ハウジング31の外周壁部31bにはその内部環状空間31sに収容されたオイルを外部に排出させることができる少なくとも1つのオイル排出通路31dが形成されている。
このハウジング31のオイル排出通路31dは、切替え用回転要素75が一端側のスプライン歯75a、75bを歯付ホイール76の外歯のスプライン歯76aおよび環状体27の内歯のスプライン歯27aに対して軸方向に移動するとき、切替え用回転要素75の環状溝部75gの近傍部分によって開閉されるようになっている。
具体的には、図4中の入力軸12の回転中心軸線より上側に示すように、切替え用回転要素75がそのスプライン歯75aを歯付ホイール76の外歯のスプライン歯76a(第2回転要素側の歯部)に噛合させるように図4中で右側に移動して、切替え用回転要素75への回転の入力経路が高速側に切り替えられているときには、ハウジング31のオイル排出通路31dが切替え用回転要素75によって閉塞され、ハウジング31内に収容されるオイルが増加するようになっている。
ハウジング31は、切替え用回転要素75からハウジング31に入力される回転を2つの出力回転軸、例えば4輪駆動車の前輪側に回転動力を伝達する後輪側への出力回転軸41(第1の出力回転軸)と、4輪駆動車の後輪側に回転動力を伝達する前輪側への出力回転軸42(第2の出力回転軸)とに差動可能に伝達するセンターディファレンシャル機構30の主要部(差動機構)を収納しており、2つの出力回転軸41、42のうち少なくとも一方、例えば後輪側への出力回転軸41にはセンターディファレンシャル機構30の主要部にオイルを供給する供給通路としてのオイル通路83b、83c、83d、92、93等が形成されているからである。
このように構成された本実施形態の動力伝達装置の潤滑機構においては、図4中の入力軸12の回転中心軸線より上側に示すように、切替え用回転要素75が、その一端部のスプライン歯75a、75bをキャリア24側の環状体27とサンギヤ22側の歯付ホイール76とのうちいずれか一方、例えば歯付ホイール76に噛合させるよう図4中の右側に移動すると、内部環状空間31sにオイルを収容可能なハウジング31のオイル排出通路31dが、切替え用回転要素75のスリーブ17によって閉塞される。したがって、後輪側への出力回転軸41に形成された供給通路83b、83c、83d等を通してセンターディファレンシャル機構30の主要部にオイルが供給される状態でオイルの排出経路が絞られることになり、ハウジング31の内部環状空間31sに収容されるオイルの量が増加する。
一方、図4中の入力軸12の回転中心軸線より下側に示すように、切替え用回転要素75が、スプライン歯75a、75bをキャリア24側の環状体27とサンギヤ22側の歯付ホイール76とのうちいずれか他方、例えば環状体27に噛合させるよう図4中の左側に軸方向移動すると、センターディファレンシャル機構30のハウジング31のオイル排出通路31dが開放され、センターディファレンシャル機構30のハウジング31の内部環状空間31sに収容されるオイルの量が減少する。
したがって、トランスファ装置10内の大物歯車部品やチェーンが高速回転するときには、センターディファレンシャル機構30のハウジング31の内部環状空間31sに収容されるオイルの量が増加する一方で、トランスファケース11の底部側に貯留されるオイルの量が減少し、チェーンや大物歯車等が貯留オイルをかき上げたり攪拌したりするための損失トルクを低減させることが可能になる。
また、本実施形態では、後輪側への出力回転軸41に形成された供給通路83b〜83d等を通してセンターディファレンシャル機構30のハウジング31の中心部側から差動機構を構成するピニオン33の周辺の噛合部位や摺動部位にオイルが供給され、これらの部位を潤滑したオイルがセンターディファレンシャル機構30のハウジング31の外周側のオイル排出通路31dを通して内部環状空間31sから排出されることになり、オイル排出通路31dの開放時に、センターディファレンシャル機構30に必要なオイルを確保しながらも、所要量のオイルを流出させることができる。すなわち、ハウジング31内のオイルが長時間滞留することがない。
本実施形態においても、切替え用回転要素75が軸方向に移動するときに、オイル排出通路31dを開閉して、オイル排出通路31dの前後であるハウジング31の内外へのオイルの供給状態を変化させるようにしているので、その切替え状態に応じて適量のオイルを必要な噛合部位や摺動部位に供給することができ、上述の第1の実施の形態と同様な効果を奏するものである。
なお、上述の各実施形態においては、動力伝達装置を主変速機の後段に配置される副変速機を有するトランスファ装置としたが、主変速機の前段に副変速機が配置される場合や切替え用回転要素を軸方向に移動操作することで回転伝動経路を切り替える他の動力伝達装置にも本発明を適用することができ、その場合、その切替え機構の形態に応じて、オイル通路の配置が設定される。また、オイル通路の一部を開閉するために開口を設けていたが、オイル通路上に弁体を配置し、その弁体を切替え用の回転要素で操作するようにすることも考えられる。また、第2の実施の形態のように、回転するハウジングに形成したオイル排出通路(排出口)を切替え用回転要素で開閉する場合、図4中に仮想線で示すように、そのオイル排出通路31dの近傍で切替え用回転要素75の一部に径方向に貫通する穴75hを設けて排出のタイミングを早めることができる。
以上説明したように、本発明に係る動力伝達装置の潤滑機構は、切替え用回転要素が軸方向に移動するときに、オイル通路の一部を開閉してオイル通路の一部および残部へのオイルの供給状態を変化させるようにしているので、その切替え状態に応じて適量のオイルを必要な噛合部位や摺動部位に供給することができ、損失トルクを抑えた効率的な動力伝達装置とすることができる動力伝達装置の潤滑機構を提供することができるという効果を奏するものであり、動力伝達装置の内部における回転伝動経路を切替え用回転要素の軸方向移動によって切り替えるように構成された動力伝達装置の潤滑機構全般に有用である。
10 トランスファ装置
11 トランスファケース
12 入力軸(回転要素)
15、75 切替え用回転要素(第3回転要素)
16 円環状の板部
16a、16b、75a、75b スプライン歯(選択噛合歯部)
20 副変速機
22 サンギヤ(第2回転要素)
22b 周壁部(第2回転要素)
23 ピニオン
24 キャリア(第1回転要素)
26、76 歯付ホイール(第2回転要素)
26a、76a スプライン歯(歯部)
27 環状体(第1回転要素)
27a スプライン歯(歯部)
27r 対向面
30 センターディファレンシャル機構
31 ハウジング(第4回転要素)
31b 外周壁部
31d オイル排出通路
31s 内部環状空間
41 後輪側への出力回転軸
42 前輪側への出力回転軸
50 切替え操作機構
51 アクチュエータユニット
52、55 シフトフォーク
70 オイルポンプ
81、82、91、92、93 オイル通路
81a 第1通路
81b 第2通路
81c 第3通路(オイル通路の一部)
81d 第4通路(オイル通路の残部)
81e 開口
83a、83b、83c、83d オイル通路(供給通路)
11 トランスファケース
12 入力軸(回転要素)
15、75 切替え用回転要素(第3回転要素)
16 円環状の板部
16a、16b、75a、75b スプライン歯(選択噛合歯部)
20 副変速機
22 サンギヤ(第2回転要素)
22b 周壁部(第2回転要素)
23 ピニオン
24 キャリア(第1回転要素)
26、76 歯付ホイール(第2回転要素)
26a、76a スプライン歯(歯部)
27 環状体(第1回転要素)
27a スプライン歯(歯部)
27r 対向面
30 センターディファレンシャル機構
31 ハウジング(第4回転要素)
31b 外周壁部
31d オイル排出通路
31s 内部環状空間
41 後輪側への出力回転軸
42 前輪側への出力回転軸
50 切替え操作機構
51 アクチュエータユニット
52、55 シフトフォーク
70 オイルポンプ
81、82、91、92、93 オイル通路
81a 第1通路
81b 第2通路
81c 第3通路(オイル通路の一部)
81d 第4通路(オイル通路の残部)
81e 開口
83a、83b、83c、83d オイル通路(供給通路)
Claims (8)
- 複数の回転要素のうちいずれかの切替え用回転要素を軸方向に移動させて内部の回転伝動経路を切り替える動力伝達装置にあって、前記複数の回転要素のいずれかに潤滑または冷却用のオイルを通過させるオイル通路が形成された動力伝達装置の潤滑機構において、
前記切替え用回転要素が、前記軸方向に移動するときに前記オイル通路の一部を開閉し、前記一部および前記オイル通路の残部への前記オイルの供給状態を変化させることを特徴とする動力伝達装置の潤滑機構。 - 互いに軸方向に離間する歯部を有する第1回転要素および第2回転要素と、前記第1回転要素および前記第2回転要素のうち任意の回転要素の前記歯部に選択的に噛合する選択噛合歯部を有し、軸方向一方側への移動によって前記選択噛合歯部を前記第1回転要素の前記歯部に噛合させ、軸方向他方側への移動によって前記選択噛合歯部を前記第2回転要素の前記歯部に噛合させることができる移動可能な第3回転要素と、前記第1回転要素および前記第2回転要素に対して前記第3回転要素を前記軸方向に移動させ、前記第3回転要素への回転の入力経路を前記第1回転要素側と前記第2回転要素側とに切り替える切替え手段と、を備えた動力伝達装置にあって、前記第1回転要素および前記第2回転要素のうち少なくとも片方に潤滑または冷却用のオイルを通過させるオイル通路が形成された動力伝達装置の潤滑機構において、
前記第3回転要素が、前記軸方向に移動するときに前記オイル通路の一部を開閉し、前記一部および前記オイル通路の残部への前記オイルの供給状態を変化させることを特徴とする動力伝達装置の潤滑機構。 - 前記第3回転要素が、前記オイル通路の一部を閉塞するとき、前記オイル通路の下流側のうち特定の通路部分に供給されるオイルが増加するようにしたことを特徴とする請求項2に記載の動力伝達装置の潤滑機構。
- 前記第1回転要素および前記第2回転要素がそれぞれ遊星歯車変速機構の低速側および高速側の出力要素を構成しており、
前記第3回転要素の前記選択噛合歯部が前記第1回転要素側の前記歯部に噛合し、前記第3回転要素への回転の入力経路が伝達トルクを増大させる低速側に切り替えられるときに、前記遊星歯車機構のピニオンの近傍に前記オイルを供給する前記特定の通路部分に供給されるオイルが増加するようにしたことを特徴とする請求項3に記載の動力伝達装置の潤滑機構。 - 互いに軸方向に離間する歯部を有する第1回転要素および第2回転要素と、
前記第1回転要素および前記第2回転要素のうち任意の回転要素の前記歯部に選択的に噛合する選択噛合歯部を有し、軸方向一方側への移動によって前記選択噛合歯部を前記第1回転要素の前記歯部に噛合させ、軸方向他方側への移動によって前記選択噛合歯部を前記第2回転要素の前記歯部に噛合させることができる移動可能な第3回転要素と、
前記第3回転要素を内周側から支持するとともに前記第3回転要素の前記内周部に軸方向に相対移動可能に係合する第4回転要素と、
前記第1回転要素および前記第2回転要素に対して前記第3回転要素を前記軸方向に移動させ、前記第3回転要素および前記第4回転要素への回転の入力経路を前記第1回転要素側と前記第2回転要素側とに切り替える切替え手段と、を備えた動力伝達装置にあって、
少なくとも前記第4回転要素の内方側に潤滑または冷却用のオイルを収容可能な内部環状空間が形成される動力伝達装置の潤滑機構において、
前記第4回転要素に前記内部環状空間に収容された前記オイルを外部に排出させるオイル排出通路が形成され、前記第3回転要素が前記第1回転要素および前記第2回転要素に対して前記軸方向に移動するときに、前記オイル排出通路が前記第3回転要素によって開閉されることを特徴とする動力伝達装置の潤滑機構。 - 前記第4回転要素が、該第4回転要素に入力される回転を2つの出力回転軸に差動可能に伝達する差動機構を収納しており、前記2つの出力回転軸のうち少なくとも一方に前記差動機構に前記オイルを供給する供給通路が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の動力伝達装置の潤滑機構。
- 前記差動機構が、4輪駆動車の前輪側に回転動力を伝達する第1の出力回転軸と、前記4輪駆動車の後輪側に回転動力を伝達する第2の出力回転軸とに、前記第4回転要素からの回転動力を伝達するとともに、前記第1の出力回転軸と前記第2の出力回転軸との差動を許容するセンターディファレンシャル機構であることを特徴とする請求項6に記載の動力伝達装置の潤滑機構。
- 前記第1回転要素および前記第2回転要素がそれぞれ遊星歯車変速機構の低速側および高速側の出力要素を構成しており、
前記第3回転要素の前記選択噛合歯部が前記第2回転要素側の前記歯部に噛合し、前記第3回転要素への回転の入力経路が高速側に切り替えられるときに、前記オイル排出通路が閉塞されて前記第4回転要素内に収容されるオイルが増加することを特徴とする請求項5ないし請求項7のうちいずれか1の請求項に記載の動力伝達装置の潤滑機構。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2008277103A JP2010106887A (ja) | 2008-10-28 | 2008-10-28 | 動力伝達装置の潤滑機構 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2019049282A (ja) * | 2017-09-08 | 2019-03-28 | トヨタ自動車株式会社 | 軸受潤滑構造 |
DE102019205759A1 (de) * | 2019-04-23 | 2020-10-29 | Zf Friedrichshafen Ag | Planetenträger und Planetengetriebe sowie Kraftfahrzeug |
-
2008
- 2008-10-28 JP JP2008277103A patent/JP2010106887A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2019049282A (ja) * | 2017-09-08 | 2019-03-28 | トヨタ自動車株式会社 | 軸受潤滑構造 |
DE102019205759A1 (de) * | 2019-04-23 | 2020-10-29 | Zf Friedrichshafen Ag | Planetenträger und Planetengetriebe sowie Kraftfahrzeug |
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