JP2010104031A - 弾性表面波共振子、弾性表面波発振器および弾性表面波モジュール装置 - Google Patents
弾性表面波共振子、弾性表面波発振器および弾性表面波モジュール装置 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】水晶基板上に弾性表面波を励振する電極指を有するIDTが設けられた弾性表面波共振子において、IDTは、中央部に配置された第1領域と、第1領域の両側に配置された第2領域および第3領域とを備え、第1領域では周波数が一定であり、第2領域および第3領域ではIDTの端部に近づくに従い周波数が順次低くなる部分を含み、第1領域における周波数をFa、第2領域における端部の周波数をFbM、第3領域における端部の周波数をFcN、としたとき、0.9815<FbM/Fa<0.9953、かつ、0.9815<FcN/Fa<0.9953、である。
【選択図】図4
Description
近年、携帯機器の普及により、これらに使用される弾性表面波共振子の小型化が要求されている。弾性表面波共振子の小型化のために、すだれ状電極により形成されたIDT(Interdigital Transducer)の対数を減少させると、Q値の低下あるいはCI(クリスタルインピーダンス)値の増加が生じ、弾性表面波共振子の特性が充分に得られないという問題がある。
この対策として、例えば特許文献1では、電極指を交互に配置したIDTを3つの領域に区分し、各領域のIDTの電極指を2%以内で異なる一定の周期長で形成している。このようにすることにより、Q値を向上させて、弾性表面波共振子の小型化を可能とする。
また、特許文献2には、IDT内の隣接する2つの電極フィンガ(電極指)の中心と中心との間の間隔がIDTの全長にわたって変化する構造にすることで、良好な電気的結合度を達成するIDTが開示されている。
さらに、特許文献2ではIDTの全長にわたって電極指の間隔が変化して良好な電気的結合度を得ているが、Q値の向上について適正化が図られていない。
即ち、振動変位の大きい第1領域では、弾性表面波の反射波同士の位相ずれ低減による反射波同士の重畳の強化を重視し、領域内の周波数を一定にする。また、振動変位の小さい第2領域および第3領域では、反射波同士の位相の整合を犠牲にしてでも、周波数が順次低くなる部分を複数(好ましくは多数)形成し、周波数差に起因するIDT中央部への弾性表面波の反射を複数箇所(好ましくは多数箇所)で発生させる。
この重み付けにより、IDTの中央部の第1領域では反射波同士が位相ずれ少なく重畳するので振動変位が大きく保たれ、さらに第2領域および第3領域から第1領域への弾性表面波の反射を大きくできるため、IDT内の振動エネルギーの閉じ込め状態が高まり、Q値を向上させることができる。
そして、第1領域における周波数Faと、第2領域における端部の周波数FbM、第3領域における端部の周波数FcN、との比(FbM/Fa、FcN/Fa)を上記の範囲に設定することで、従来の弾性表面波共振子に比べてQ値が向上でき、弾性表面波共振子の小型化を可能とする。
そして、第1領域の電極指間隔Paと、前記第2領域の端部の電極指間隔PbM、前記第3領域の端部の電極指間隔PcNとの比(PbM/Pa、PcN/Pa)を上記の範囲に設定することで、従来の弾性表面波共振子に比べてQ値が向上でき、弾性表面波共振子の小型化を可能とする。
そして、前記第1領域のライン占有率ηaと、第2領域における端部のライン占有率ηbM、第3領域における端部のライン占有率ηcN、との比(ηbM/ηa、ηcN/ηa)を上記の範囲に設定することで、従来の弾性表面波共振子に比べてQ値が向上でき、弾性表面波共振子の小型化を可能とする。
(比較例としての弾性表面波共振子)
最初に、本発明の理解と実施形態との比較のため、比較例としての弾性表面波共振子について説明する。
図39は、一般的な弾性表面波共振子の概略を示す説明図である。
弾性表面波共振子100は、圧電基板としての水晶基板101上にすだれ状電極からなるIDT102と、弾性表面波が伝播する方向(矢印H方向)にIDT102を両側から挟むように形成された1対の反射器103と、を有している。
IDT102は、電気的な極性が異なる電極指102a,102bが交互に配列されて形成されている。この2本の電極指102a,102bを1対の電極指と呼ぶ。
また、隣接する電極指102aと電極指102bの中心と中心との間隔である電極指間隔PTは、IDT内で一様に形成されている。
反射器103は電極指103aが多数配列され、電気的に中立となるように形成されている。また、隣接する電極指103aの中心と中心との間隔である電極指間隔PTrは、反射器103内で一様に形成されている。
なお、IDT102と反射器103は金属材料のアルミニウム(Al)で形成され、所定の膜厚(0.06λ:λは弾性表面波の波長)に設定されている。そして、電極指の線幅は0.25λに設定されている。また、IDT102における電極指の対数は100対、反射器103はそれぞれ15対(30本)に設定されている(総対数130対)。IDT102の電極指間隔は5.1743μm、周波数は314.316MHzである。反射器103の電極指間隔PTrは、5.2003μmに設定されている。
以上のような弾性表面波共振子100において、IDT102にSH(Shear Horizon
tal)波が励振され、特性としてQ値10600を実現している。
図41はIDTと反射器における対数の和(総対数)とQ値との関係を示すグラフである。図42は図41の総対数におけるIDTと反射器の対数の内訳を示す表である。
総対数は、図42に示すように、IDTの電極指の対数を100対に固定して、左右の反射器の対数を変化させたときのQ値について調査した。
図41に示すように、総対数が多くなるとQ値は向上して大きくなる。総対数が110〜170対程度では、対数の増加に対してQ値の増加も大ききが、総対数が170対を超えると対数の増加に対してQ値の増加は少なくなり、飽和状態に近づく。
このように、電極指の総対数を増やすことでQ値を向上させることは可能であるが、対数が多くなることは弾性表面波共振子のサイズが大きくなり、弾性表面波共振子の小型化に相反することになる。弾性表面波共振子の小型化については、少ない電極指の総対数でQ値を向上させる必要がある。
図43は、特開2004−194275号公報の発明に基づく弾性表面波共振子の概略を示す説明図である。
弾性表面波共振子110は、圧電基板としての水晶基板111にIDT112と、弾性表面波が伝播する方向に形成された1対の反射器113と、を有している。
水晶基板111は、カット面及び弾性表面波伝搬方向をオイラー角(φ,θ,ψ)で表示すると、オイラー角(0°,38°,90°)の水晶基板である。
IDT112は、中央部に第1領域114a、その両側に第2領域114b、および第3領域114cの3つの領域に区分されている。ここで、隣接する電極指112aと電極指112bの中心と中心との間隔を電極指間隔PTとする。各領域内においては、電極指間隔PTが一様であるが、領域により電極指間隔PTを異ならせて形成している。第1領域114aの電極指間隔をPTc、第2領域114bおよび第3領域114cの電極指間隔をPTsとすると、PTc<PTs、となる関係にある。
反射器113は電極指113aが多数配列され、電気的に中立となるように形成されている。また、隣接する電極指113aの中心と中心との間隔である電極指間隔をPTrとすると、PTc<PTs<PTr、となる関係にある。
なお、IDT112と反射器113は金属材料のアルミニウム(Al)で形成され、所定の膜厚(0.06λ:λは弾性表面波の波長)に設定されている。また、IDT112における電極指の対数は100対であり、その内、第1領域114aは20対、第2領域114bおよび第3領域114cはそれぞれ40対に設定されている。そして、反射器113はそれぞれ15対に設定され、総対数130対の弾性表面波共振子110が構成されている。
以上のような弾性表面波共振子110において、IDT112にSH(Shear HorizoNtal)波が励振され、特性としてQ値12700を実現している。
(第1の実施形態)
図1は本実施形態の弾性表面波共振子の構成を示す模式平面図である。図2は水晶基板の切り出し角度及び弾性表面波伝搬方向を示す説明図である。図3は本実施形態の弾性表面波共振子における電極指位置と電極指間隔の関係を示す説明図である。図4は本実施形態の弾性表面波共振子における電極指位置と周波数の関係を示す説明図である。図5は本実施形態の弾性表面波共振子における電極指位置と電極指間隔の変化率を示す説明図である。
図2に示すように、水晶の結晶軸はX軸(電気軸)、Y軸(機械軸)およびZ軸(光軸)によって定義され、オイラー角(0°,0°,0°)はZ軸に垂直な水晶Z板8となる。ここで、オイラー角のφ(図示せず)は水晶Z板8の第1の回転に関するものであり、Z軸を回転軸とし、+X軸から+Y軸側へ回転する方向を正の回転角度とした第1回転角度である。オイラー角のθは水晶Z板8の第1の回転後に行う第2の回転に関するものであり、第1の回転後のX軸を回転軸とし、第1の回転後の+Y軸から+Z軸側へ回転する方向を正の回転角度とした第2回転角度である。水晶基板11のカット面は第1回転角度φと第2回転角度θとで決定される。オイラー角のψは水晶Z板8の第2の回転後に行う第3の回転に関するものであり、第2の回転後のZ軸を回転軸とし、第2の回転後の+X軸から第2の回転後の+Y軸側へ回転する方向を正の回転角度とした第3回転角度である。弾性表面波の伝搬方向は第2の回転後のX軸に対する第3回転角度ψで表される。弾性表面波共振子1は、第1回転角度φを−1°〜+1°とし、第2回転角度θを26.0°〜40.7°とした水晶基板11が用いられている。さらに、弾性表面波の伝搬方向がψ=85°〜95°の範囲となるようにIDT12が配置されている。この角度ψは面内回転角とも呼ばれている。この水晶基板は温度変化に対する周波数変動が小さく、周波数温度特性が良好である。
図1、図3に示すように、IDT12は、3つの領域に区分され、中央部が第1領域14a、その両側が第2領域14b、および第3領域14cである。第1領域14aにおける電極指の対数が20対、第2領域14bにおける電極指の対数が40対、第3領域14cにおける電極指の対数が40対であり、IDT12の対数は100対に設定されている。
反射器13において、隣接する2本の電極指13aをもって1対の電極指と数え、本実施形態では左右それぞれ15対(30対)の電極指13aが配置されている。
なお、IDT12と反射器13は金属材料のアルミニウム(Al)で形成され、所定の膜厚は0.06λ(λは弾性表面波の波長)に設定されている。そして、電極指の線幅は0.25λに設定されている。
電極指間隔はPa=5.1743μm、PbM=PcN=5.2354μm、Pr=5.2003μm、である。
IDT12の第1領域14aでは周波数はFaで一定である。第2領域14b内の周波数はFb0〜FbMで変化している。第2領域14bの周波数は第1領域14aと隣接する部分からIDT12の一方の端部に向かい周波数が順次小さくなるように変化している。第3領域14c内の周波数はFc0〜FcNで変化している。第3領域14cの周波数は第1領域14aと隣接する部分からIDT12の他方の端部に向かい周波数が順次小さくなるように変化している。
なお、周波数はFa=314.316MHz、FbM=FcN=310.666MHz、である。
図5は、IDT12の第1領域14aの電極指間隔を基準にした電極指間隔の変化率と電極指位置の関係を表している。第1領域14aと隣接する部分からIDT12の両端部に向かい、電極指間隔が順次大きく形成され、IDT12の両端部では、電極指間隔の変化率(PbM−Pa)/Pa×100及び(PcN−Pa)/Pa×100が1.2%になっている。また、反射器13における電極指間隔の変化率(Pr−Pa)/Pa×100は0.5%である。
以上のような弾性表面波共振子1において、IDT12にSH波が励振され、特性としてQ値20000を実現している。
振動変位の大きい第1領域において周波数を順次変化させてしまうと、弾性表面波の反射波同士の位相のずれが大きくなってしまい、反射波同士の効果的な重畳が実現し難くなる。さらには、弾性表面波からバルク波へ変換されてしまうことによる損失(変換損失)も大きくなってしまう。
振動変位の小さい第2領域および第3領域においても、周波数を順次変化させれば反射波同士の位相ずれやバルク波への変換損失は生じやすくなるが、それ以上に、周波数差に起因する弾性表面波の反射を多くの箇所で発生させること、即ち第1領域への反射波の量を増加したことの効果の方が大きい。なお、周波数差に起因する弾性表面波の反射については、特開平10−335966号公報に詳細に開示されているので、ここでは説明を省略する。
本実施形態ではIDTの端部の周波数を第1領域の周波数と比べて低くする手段として、IDTの電極指間隔を広く設定することで対応している。
図6はIDTと反射器における電極指の対数の和(総対数)とQ値との関係を示すグラフである。図7は図6の電極指の総対数におけるIDTと反射器の対数の内訳を示す表である。
IDTの電極指の対数は全体で100対であり、第1領域の対数が20対、第2領域および第3領域の対数をそれぞれ40対として固定している。そして、左右の反射器の対数を変化させたときのQ値について調査した。図6では比較のために、前述した従来の弾性表面波共振子100のデータを併記している。
この図から明らかなように、従来の弾性表面波共振子100に比べて、本実施形態の弾性表面波共振子1は、電極指の総対数が110〜150対の比較的電極指の対数が少ない範囲でのQ値の向上が顕著である。例えば、総対数130対において、Q値20000を得ることができる。
このように、本実施形態では電極指の対数が少なくてもQ値を高くできることから、弾性表面波共振子の小型化を可能にする。
また、例えばQ値10000の弾性表面波共振子を実現する場合、従来の弾性表面波共振子100では総対数が130対必要であったが、本発明にかかる弾性表面波共振子1では、総対数105対でQ値10000を実現できている。このように、本発明にかかる弾性表面波共振子1は、Q値を劣化させることなく小型化を実現できる。
Q値は電極指間隔の変化率が大きくなるに従い上昇し、電極指間隔の変化率がおよそ1.2%で最大のQ値が得られ、さらに電極指間隔の変化率が大きくなるとQ値が低下する。
このグラフから、電極指間隔の変化率が3.02%以下であれば、電極指間隔を変化させて、Q値を向上させることができる。そして、電極指間隔の変化率が0.47%を超え1.88%未満であれば、従来の弾性表面波共振子110のQ値12700を超えるQ値が得られる。また、電極指間隔の変化率が0.72%以上、1.49%以下であれば、17300以上のQ値が得られる。さらに、電極指間隔の変化率が0.81%以上、1.37%以下であれば、18500以上のQ値が得られる。
F=V/λ=V/2P ・・・(1)
ただし、F:周波数、V:弾性表面波の伝搬速度、λ:弾性表面波の波長、P:電極指間隔、である。
上記の式(1)の関係を用いて、電極指間隔の変化率から図9に示す値を換算した。
Paは第1領域における電極指間隔、PbMは第2領域における端部の電極指間隔、PcNは第3領域における端部の電極指間隔、である。ここでは、それぞれの電極指間隔を第1領域の電極指間隔Paで規格化(PbM/Pa、PcN/Pa)して示している。
また、Faは第1領域における周波数、FbMは第2領域における端部の周波数、FcNは第3領域における端部の周波数、である。ここでは、それぞれの周波数を第1領域の周波数Faで規格化(FbM/Fa、FcN/Fa)して示している。
例えば、規格化した電極指間隔(PbM/Pa、PcN/Pa)が1.0302以下であれば、電極指間隔を変化させた効果が得られることがわかる。そして、規格化した電極指間隔(PbM/Pa、PcN/Pa)が1.0047を超え1.0188未満であれば、従来の弾性表面波共振子110のQ値12700を超えるQ値が得られる。また、規格化した電極指間隔(PbM/Pa、PcN/Pa)が1.0072以上、1.0149以下であれば、17300以上のQ値が得られる。さらに、規格化した電極指間隔(PbM/Pa、PcN/Pa)が1.0081以上、1.0137以下であれば、18500以上のQ値が得られる。
図1に示すように、IDT12の第1領域における同極性を構成する電極指の中心と中心との間の間隔をLtとし、反射器13の一つの電極指の両側に隣接する電極指の中心と中心との間の間隔をLrとする。そしてLt/LrとQ値の関係を示したのが図10である。
図10のグラフより、Lt/Lrが0.980から1.000の範囲では、Lt/Lrが大きくなるに従い、Q値は低下する。つまり、IDTの電極指間隔Ltよりも反射器の電極指間隔Lrが大きい方がQ値は大きくなる。この傾向は、従来の弾性表面波共振子100と同様である。
図11はIDT対数全体に占める第1領域の対数の割合と、Q値の関係について示すグラフである。
このグラフより、IDT対数全体に占める第1領域の対数の割合が多くなるに従いQ値上昇し、第1領域の対数がおよそ20%でQ値が最大となり、以降、第1領域の対数の割合が多くなるとQ値が低下する。
この結果から、IDT対数全体に占める第1領域の対数の割合が31.2%以下であれば、Q値17300以上を確保できる。また、IDT対数全体に占める第1領域の対数の割合が11.1%以上、28.5%以下の範囲にあれば、Q値18500以上を確保できる。
なお、安定した特性を確保するためには、第1領域の対数は、2対以上が好ましい。
反射器の対数は、IDTの一方の側に設けた反射器の電極指の対数Nr1と、IDTの他方の側に設けた反射器の電極指の対数Nr2との和である。
このグラフより、IDT対数全体に占める第1領域の対数の割合が多くなるに従いQ値上昇し、第1領域の対数がおよそ16%でQ値が最大となり、以降、第1領域の対数の割合が多くなるとQ値が低下する。
この結果から、総対数に占める第1領域の対数の割合が24%以下であれば、Q値17300以上を確保できる。また、IDT対数全体に占める第1領域の対数の割合が8.8%以上、21.9%以下の範囲にあれば、Q値18500以上を確保できる。
なお、安定した特性を確保するためには、第1領域の対数は、2対以上が好ましい。
また、IDTの一方の側に設けた反射器の電極指の対数Nr1と、IDTの他方の側に設けた反射器の電極指の対数Nr2は、必ずしも同じ対数でなくても良い。
図13は隣接する電極指の電極指間隔のシフト量とQ値の関係について示すグラフである。
第2領域の一個所の電極指間隔をPbm、それに隣接する個所の電極指間隔をPbm+1としたとき、隣接する電極指の電極指間隔のシフト量は、|Pbm+1−Pbm|/Pbmである。また、第3領域の一個所の電極指間隔をPcn、それに隣接する個所の電極指間隔をPcn+1としたとき、隣接する電極指の電極指間隔のシフト量は、|Pcn+1−Pcn|/Pcnである。
このグラフによれば、隣接する電極指間隔のシフト量が大きくなるに従い、Q値は低下することがわかる。隣接する電極指間隔のシフト量が、0<|Pbm+1−Pbm|/Pbm<0.000225、かつ、0<|Pcn+1−Pcn|/Pcn<0.000225、の範囲において、Q値は従来の弾性表面波共振子100より向上し、12700を超える値を確保できる。
記第2領域の一個所の周波数をFbm、それに隣接する個所の周波数をFbm+1としたとき、隣接する電極指の周波数変化量は、|Fbm+1−Fbm|/Fbmである。また、第3領域の一個所の周波数をFcn、それに隣接する個所の周波数をFcn+1としたとき、隣接する個所の周波数変化量は|Fcn+1−Fcn|/Fcnである。
このグラフによれば、隣接する電極指間隔の周波数変化量が大きくなるに従い、Q値は低下することがわかる。
隣接する個所の周波数変化が、0<|Fbm+1−Fbm|/Fbm<0.000225、かつ、0<|Fcn+1−Fcn|/Fcn<0.000225、の範囲において、Q値は従来の弾性表面波共振子100より向上し、12700を超える値を確保できる。
図15は、規格化膜厚と周波数変化量の関係を示すグラフである。
規格化膜厚H/λはIDTの電極膜の厚さをHとし、弾性表面波の波長をλとして、電極膜の厚さHを波長λで規格化したものである。
図15では比較のために、従来の弾性表面波共振子100のデータを併記している。
このグラフより、従来の弾性表面波共振子100では規格化膜厚H/λが0.001変動すると周波数が約465ppm変動するが、本実施形態の弾性表面波共振子1では、規格化膜厚H/λの変動0.001に対して、周波数の変動が約432ppmである。
このように、本実施形態の弾性表面波共振子1は従来の弾性表面波共振子100と比べて、規格化膜厚H/λの変化に対して周波数変化量が小さい。つまり、IDTの膜厚ばらつきに対して、周波数の変動を小さくできる。よって、弾性表面波共振子の製造におけるIDTの膜厚に起因する周波数のばらつきを軽減し、周波数管理を容易にする。
このように、共振子としてのQ値を高めるためには、強い共振状態とするためにIDT中央部では等しい電極指間隔を有する周期構造を採り、IDT端部では周波数を低下させるような非周期構造とすることが好ましい。特に、共振状態が弱くなるIDT端部に近づくほど、周波数を低下させることが効果的である。
(変形例1)
図16は変形例1における弾性表面波共振子の電極指位置と電極指間隔の変化率を示す説明図である。変形例1は第1の実施形態と比べて、反射器における電極指間隔の変化率が異なる。
第1領域と隣接する部分からIDTの両端部に向かい、電極指間隔が順次大きく形成され、IDTの両端部では、電極指間隔の変化率が1.2%になっている。また、反射器における電極指間隔の変化率は2.0%である。
第1の実施形態では、反射器における電極指間隔の変化率はIDTの端部における電極指間隔の変化率より小さく形成したが、図16のように、反射器における電極指間隔の変化率はIDTの端部における電極指間隔の変化率より大きく形成しても良い。
このような構成においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
図17は弾性表面波共振子における変形例2の電極指位置と電極指間隔を示す説明図である。
変形例2は第1の実施形態と比べて、IDTの第2領域および第3領域の端部における電極指間隔(周波数)がそれぞれ異なるように構成されている。
また、反射器の隣接する電極指の中心と中心との間隔である電極指間隔はPrで一様である。
第1領域における電極指の対数が20対、第2領域における電極指の対数が40対、第3領域における電極指の対数が40対であり、IDTの対数は100対に設定されている。反射器は左右それぞれ15対の電極指が配置されている。
なお、電極指間隔はPa=5.1743μm、PbM=5.2354μm、PcN=5.2364μm、Pr=5.2003μm、である。
IDTの第1領域では周波数はFaで一定である。第2領域内の周波数はFb0〜FbMで変化している。そして、第2領域の周波数は第1領域と隣接する部分からIDTの一方の端部に向かい周波数が順次小さくなるように変化している。第3領域内の周波数はFc0〜FcNで変化している。第3領域の周波数は第1領域と隣接する部分からIDTの他方の端部に向かい周波数が順次小さくなるように変化している。そして、第2領域および第3領域の端部の周波数はFbM≠FcN、となっている。
なお、周波数はFa=314.316MHz、FbM=310.648MHz、FcN=310.588MHz、である。
以上のような構成の弾性表面波共振子において、IDTに弾性表面波が励振され、特性としてQ値19700を実現している。
図19は弾性表面波共振子における変形例3の電極指位置と電極指間隔を示す説明図である。
変形例3は第1の実施形態と比べて、IDTの第2領域および第3領域の対数がそれぞれ異なるように構成されている。
また、反射器の隣接する電極指の中心と中心との間隔である電極指間隔はPrで一様である。
第1領域における電極指の対数が20対、第2領域における電極指の対数が40対、第3領域における電極指の対数が35対であり、IDTの全対数は95対に設定されている。反射器は左右それぞれ15対の電極指が配置されている。
なお、電極指間隔はPa=5.1743μm、PbM=PcN=5.2354μm、Pr=5.2003μm、である。
IDTの第1領域では周波数はFaで一定である。第2領域内の周波数はFb0〜FbMで変化している。そして、第2領域の周波数は第1領域と隣接する部分からIDTの一方の端部に向かい周波数が順次小さくなるように変化している。第3領域内の周波数はFc0〜FcNで変化している。第3領域の周波数は第1領域と隣接する部分からIDTの他方の端部に向かい周波数が順次小さくなるように変化している。
なお、周波数はFa=314.316MHz、FbM=FcN=310.666MHz、である。
以上のような構成の弾性表面波共振子において、IDTに弾性表面波が励振され、特性としてQ値18500を実現している。
図21は弾性表面波共振子における変形例4の電極指位置と電極指間隔を示す説明図である。
変形例4は第1の実施形態と比べて、IDTの第2領域および第3領域の端部において、電極指間隔が一様な部分を有している。
IDTの第1領域内の電極指間隔はPaで一様である。第2領域の電極指間隔は第1領域と隣接する部分からIDTの一方の端部に向かい電極指間隔が順次大きくなるように変化している。第2領域内の電極指間隔はPb0〜PbMで変化し、IDTの一方の端部では電極指間隔がPbfで一様な部分を有している。IDTの端部の電極指間隔Pbfは第2領域内の電極指間隔PbMより小さく形成されている。
また、第3領域の電極指間隔は第1領域と隣接する部分からIDTの他方の端部に向かい電極指間隔が順次大きくなるように変化している。第3領域内の電極指間隔はPc0〜PcNで変化し、IDTの他方の端部では電極指間隔がPcfで一様な部分を有している。IDTの端部の電極指間隔Pcfは第3領域内の電極指間隔PcNより小さく形成されている。そして、第2領域および第3領域の電極指間隔はPbM=PcNM、Pbf=Pcf、となっている。
第1領域における電極指の対数が20対、第2領域における電極指の対数が40対であり、そのうち端部の電極指間隔が一様な部分が4対、第3領域における電極指の対数が40対であり、そのうち端部の電極指間隔が一様な部分が4対、IDTの全対数は100対に設定されている。反射器は左右それぞれ15対の電極指が配置されている。
なお、電極指間隔はPa=5.1743μm、PbM=PcN=5.2364μm、Pbf=Pcf=5.2157μm、Pr=5.2003μm、である。
IDTの第1領域では周波数はFaで一定である。第2領域の周波数は第1領域と隣接する部分からIDTの一方の端部に向かい周波数が順次小さくなるように変化している。
第2領域内の周波数はFb0〜FbMで変化し、IDTの一方の端部では周波数がFbfで一様な部分を有している。IDTの端部の周波数Fbfは第2領域内の周波数FbMより高く形成されている。
第3領域の周波数は第1領域と隣接する部分からIDTの他方の端部に向かい周波数が順次小さくなるように変化している。そして、第3領域内の周波数はFc0〜FcNで変化し、IDTの他方の端部では周波数がFcfで一様な部分を有している。IDTの端部の周波数Fcfは第2領域内の周波数FcNより高く形成されている。
なお、周波数はFa=314.316MHz、FbM=FcN=310.588MHz、Fbf=Fcf=311.821MHzである。
以上のような構成の弾性表面波共振子において、IDTに弾性表面波が励振され、特性としてQ値17200を実現している。
図23は弾性表面波共振子における変形例5の電極指位置と電極指間隔の変化率を示す説明図である。
変形例5は第1の実施形態と比べて、IDTの第2領域および第3領域において、電極指間隔が一様な部分を有している。
IDTの第1領域内の電極指間隔はPaで一様である。第2領域の電極指間隔は第1領域と隣接する部分からIDTの一方の端部に向かい電極指間隔が順次大きくなるように変化している。第2領域内の電極指間隔は、第1領域と隣接する部分を起点にPb0〜Pbgまで変化し、電極指間隔Pbgで一様な部分を確保して、さらにIDTの一方の端部へ向かい電極指間隔PbMまで変化している。
また、第3領域の電極指間隔は第1領域と隣接する部分からIDTの他方の端部に向かい電極指間隔が順次大きくなるように変化している。第3領域内の電極指間隔は、第1領域と隣接する部分を起点にPc0〜Pcgまで変化し、電極指間隔Pbgで一様な部分を確保して、さらにIDTの一方の端部へ向かい電極指間隔PcNまで変化している。
そして、第2領域および第3領域の電極指間隔はPbg=Pcg、PbM=PcN、となっている。
第2領域における電極指の対数が40対であり、そのうち電極指間隔Pb0〜Pbgが20対、電極指間隔が一様な部分が4対、電極指間隔Pbg〜PbMが16対である。同様に、第3領域における電極指の対数が40対であり、そのうち電極指間隔Pc0〜Pcgが20対、電極指間隔が一様な部分が4対、電極指間隔Pcg〜PcNが16対である。そして、第1領域における電極指の対数が20対、IDTの全対数は100対に設定されている。反射器は左右それぞれ15対の電極指が配置されている。
なお、電極指間隔はPa=5.1743μm、PbM=PcN=5.2364μm、Pbg=Pcg=5.2157μm、Pr=5.2003μm、である。
IDTの第1領域では周波数はFaで一定である。第2領域の周波数は第1領域と隣接する部分からIDTの一方の端部に向かい周波数が順次小さくなるように変化している。
第2領域内の周波数はFb0〜Fbgまで変化し、周波数Fbgで一様な部分を確保して、さらにIDTの一方の端部へ向かい周波数FbMまで変化している。
また、第3領域の周波数は第1領域と隣接する部分からIDTの他方の端部に向かい周波数が順次大きくなるように変化している。第3領域内の周波数は、第1領域と隣接する部分を起点にFc0〜Fcgまで変化し、周波数Fcgで一様な部分を確保して、さらにIDTの一方の端部へ向かい周波数FcNまで変化している。
そして、第2領域および第3領域の周波数はFbg=Fcg、FbM=FcN、となっている。
なお、周波数はFa=314.316MHz、FbM=FcN=310.588MHz、Fbf=Fcf=311.821MHzである。
以上のような構成の弾性表面波共振子において、IDTに弾性表面波が励振され、特性としてQ値15100を実現している。
図25は弾性表面波共振子における変形例6の電極指位置と電極指間隔の変化率を示す説明図である。
変形例6は第1の実施形態と比べて、IDTの第2領域および第3領域の端部において、電極指間隔がIDTの端辺に向かい順次小さくなる部分を有している。
IDTの第1領域内の電極指間隔はPaで一様である。第2領域内の電極指間隔は第1領域と隣接する部分からIDTの一方の端部に向かい電極指間隔が順次大きくなるようにPb0〜PbMで変化し、IDTの一方の端部では電極指間隔がPbM〜Pbhに電極指間隔が順次小さくなるように形成されている。
また、第3領域内の電極指間隔は第1領域と隣接する部分からIDTの一方の端部に向かい電極指間隔が順次大きくなるようにPc0〜PcNで変化し、IDTの一方の端部では電極指間隔がPcN〜Pchに電極指間隔が順次小さくなるように形成されている。そして、第2領域および第3領域の電極指間隔はPbM=PcN、Pbh=Pch、となっている。
第2領域における電極指の対数が40対であり、そのうち端部の電極指間隔が順次小さくなる部分が4対である。第3領域における電極指の対数が40対であり、そのうち端部の電極指間隔が順次小さくなる部分が4対である。そして、第1領域における電極指の対数が20対であり、IDTの全対数は100対に設定されている。また、反射器は左右それぞれ15対の電極指が配置されている。
なお、電極指間隔はPa=5.1743μm、PbM=PcN=5.2364μm、Pbh=Pch=5.2157μm、Pr=5.2003μm、である。
IDTの第1領域では周波数はFaで一定である。第2領域の周波数は第1領域と隣接する部分からIDTの一方の端部に向かい周波数が順次低くなるように変化している。
第2領域内の周波数はFb0〜FbMで変化して周波数が順次低くなり、IDTの一方の端部では周波数がFbM〜Fbhに変化して周波数が順次高くなる。
第3領域内の周波数はFc0〜FcNで変化して周波数が順次低くなり、IDTの他方の端部では周波数がFcN〜Fchに変化して周波数が順次高くなる。
なお、周波数はFa=314.316MHz、FbM=FcN=310.588MHz、Fbh=Fch=311.821MHzである。
以上のような構成の弾性表面波共振子において、IDTに弾性表面波が励振され、特性としてQ値17800を実現している。
図27は弾性表面波共振子における変形例7の電極指位置と電極指間隔の変化率を示す説明図である。
変形例7は第1の実施形態と比べて、IDTの第2領域および第3領域において、電極指間隔がIDTの端辺に向かい順次小さくなる部分を有している。
IDTの第1領域内の電極指間隔はPaで一様である。第2領域内の電極指間隔は第1領域と隣接する部分からIDTの一方の端部に向かい電極指間隔が順次大きくなるようにPb0〜Pbjで変化し、電極指間隔が順次小さくなるようにPbj〜Pbkで変化する。そして、電極指間隔がIDTの一方の端部に向かい電極指間隔が順次小さくなるようにPbk〜PbMに変化する。
また、第3領域内の電極指間隔は第1領域と隣接する部分からIDTの他方の端部に向かい電極指間隔が順次大きくなるようにPc0〜Pcjで変化し、電極指間隔が順次小さくなるようにPcj〜Pckで変化する。そして、電極指間隔がIDTの他方の端部に向かい電極指間隔が順次小さくなるようにPck〜PcNに変化する。
そして、第2領域および第3領域の電極指間隔はPbM=PcN、Pbj=Pcj、Pbk=Pck、となっている。
第2領域における電極指の対数が40対であり、そのうち電極指間隔が順次小さくなる部分が4対である。第3領域における電極指の対数が40対であり、そのうち電極指間隔が順次小さくなる部分が4対である。そして、第1領域における電極指の対数が20対であり、IDTの全対数は100対に設定されている。また、反射器は左右それぞれ15対の電極指が配置されている。
なお、電極指間隔はPa=5.1743μm、PbM=PcN=5.2364μm、Pbj=Pcj=5.2157μm、Pbk=Pck=5.2053μm、Pr=5.2003μm、である。
IDTの第1領域では周波数はFaで一定である。第2領域内の周波数はFb0〜Fbjで変化して周波数が順次低くなり、続いて電極指間隔が順次高くなるようにFbj〜Fbkで変化する。さらにIDTの一方の端部へ向かい周波数FbkからFbMに変化して周波数が順次低くなる。
同様に、第3領域内の周波数はFc0〜Fcjで変化して周波数が順次低くなり、続いて電極指間隔が順次高くなるようにFcj〜Fckで変化する。さらにIDTの一方の端部へ向かい周波数FckからFcNに変化して周波数が順次低くなる。
なお、周波数はFa=314.316MHz、FbM=FcN=310.588MHz、Fbj=Fcj=311.821MHz、Fbk=Fck=312.444MHzである。
以上のような構成の弾性表面波共振子において、IDTに弾性表面波が励振され、特性としてQ値15800を実現している。
他の水晶基板としてオイラー角(−1°〜+1°,113°〜135°,±(40°〜49°))の基板を利用できる。この水晶基板は、面内回転STカット水晶基板と呼ばれ、弾性表面波としてレイリー波を励振する。
弾性表面波共振子1は、図29に示すように、水晶Z板8から第1回転角度φ(図示せず)を−1°〜+1°とし、第2回転角度θを113°〜135°とした水晶基板11aが用いられている。さらに、第3回転角度ψが±(40°〜49°)の範囲となるようにIDT12が配置されている。この面内回転STカット水晶基板は温度変化に対する周波数変動が小さく、周波数温度特性が良好である。
このグラフのように、電極指間隔の変化率が大きくなるに従いQ値は上昇し、約1.2%でQ値は最大になる。このように、電極指間隔の変化率を1.2%以下とすることで、面内回転STカット水晶基板を用いた場合においても、Q値を向上させることが可能である。
(第2の実施形態)
本実施形態ではIDTの端部の周波数を第1領域の周波数と比べて低くする手段として、電極指のライン占有率を大きく設定することで対応している。
IDT22は、電気的な極性が異なるように電極指22a,22bが交互に配列されて形成されている。そして、IDT22における電極指間隔は一様に設定されている。なお、本実施形態では、この2本の電極指22a,22bをもって1対の電極指と数える。
図31、図32に示すように、IDT22は、3つの領域に区分され、中央部が第1領域24a、その両側が第2領域24b、および第3領域24cである。第1領域24aにおける電極指の対数が20対、第2領域24bにおける電極指の対数が40対、第3領域24cにおける電極指の対数が40対であり、IDT22の対数は100対に設定されている。
図32に示すように、第1領域24a内のライン占有率はηaで一様である。第2領域24b内のライン占有率はηb0〜ηbMで変化している。第2領域24bのライン占有率は第1領域24aと隣接する部分からIDT22の一方の端部に向かいライン占有率が順次大きくなるように変化している。また、第3領域24c内のライン占有率はηc0〜ηcNで変化している。第3領域24cのライン占有率は第1領域24aと隣接する部分からIDT22の他方の端部に向かいライン占有率が順次大きくなるように変化している。
第2領域24bまたは第3領域24cのように、隣接する電極指において、ライン占有率が異なる場合は、両側に隣接するスペース部分の間隔が異なるため、次のように算出する。
図34に示すように、隣接する電極指の線幅をそれぞれL0、L1、L2、隣接する電極指との間(電極指が形成されていないスペース部分)の寸法をSL、SR、隣接する電極指間隔をPTとする。電極指間隔PT=SL+1/2(L0+L1)、または、PT=SR+1/2(L1+L2)、であり、中央の電極指におけるライン占有率は、η=L1/(L1+1/2(SL+SR))、となる。
反射器23において、隣接する2本の電極指23aをもって1対の電極指と数え、本実施形態では左右それぞれ15対の電極指23aが配置されている。
なお、IDT22と反射器23は金属材料のアルミニウム(Al)で形成され、所定の膜厚は0.06λ(λは弾性表面波の波長)に設定されている。そして、ライン占有率はηa=0.44、ηbM=ηcN=0.57、ηr=0.57、である。
IDT22の第1領域24aでは周波数はFaで一定である。第2領域24b内の周波数はFb0〜FbMで変化している。第2領域24bの周波数は第1領域24aと隣接する部分からIDT22の一方の端部に向かい周波数が順次小さくなるように変化している。第3領域24c内の周波数はFc0〜FcNで変化している。第3領域24cの周波数は第1領域24aと隣接する部分からIDT22の他方の端部に向かい周波数が順次小さくなるように変化している。
なお、周波数はFa=311.620MHz、FbM=FcN=310.270MHz、である。
図35はIDT端部における電極指の規格化線幅とQ値の関係を示すグラフである。電極指の規格化線幅とは、IDTの第1領域の電極指線幅を基準にして、IDT端部における電極指線幅との比である。即ち、IDT端部における電極指線幅をIDTの第1領域の電極指線幅で除した値である。
この値は、電極指間隔が一様であれば、ライン占有率の比(ηbM/ηa、ηcN/ηa)と同じ値である。
Q値は規格化線幅が大きくなるに従い上昇し、規格化線幅がおよそ1.4で最大のQ値が得られ、さらに規格化線幅が大きくなるとQ値が低下する。
このグラフから、規格化線幅(ライン占有率の比:ηbM/ηaまたはηcN/ηa)が1.85以下であれば、規格化線幅を変化させて、Q値を向上させることができる。そして、規格化線幅(ライン占有率の比:ηbM/ηaまたはηcN/ηa)が1.15を超え1.70未満であれば、従来の弾性表面波共振子110のQ値12700を超えるQ値が得られる。
第2領域の一個所のライン占有率をηbm、それに隣接する個所のライン占有率をηbm+1としたとき、隣接する個所のライン占有率の変化は|ηbm+1−ηbm|/ηbmである。また、第3領域の一個所のライン占有率をηcn、それに隣接する個所のライン占有率をηcn+1としたとき、隣接する個所のライン占有率の変化は|ηcn+1−ηcn|/ηcnである。
このグラフによれば、隣接する個所のライン占有率の変化が大きくなるに従い、Q値は上昇し、ライン占有率の変化がおよそ0.005で最大のQ値が得られ、さらに規格化線幅が大きくなるとQ値が低下する。
隣接する個所のライン占有率の変化が、0.0106以下であれば、ライン占有率を変化させることでQ値が向上できることがわかる。また、隣接する個所のライン占有率の変化が、0.0018<|ηbm+1−ηbm|/ηbm<0.00885、かつ、0.0018<|ηcn+1−ηcn|/ηcn<0.00885、の範囲において、Q値は従来の弾性表面波共振子100より向上し、12700を超える値を確保できる。
このようにして、IDT22の中央部の第1領域24aでは振動変位を大きく保ち、IDT22の端部の第2領域24bおよび第3領域24cでは、弾性表面波の反射量を増すことができるため、IDT22内に振動エネルギーの閉じ込め状態が高まり、Q値を向上させることができる。
さらに、第1、第2の実施形態では、IDTの電極の膜厚を0.06λ(λは弾性表面波の波長)としたが、これ以外の電極膜厚でも、同様な効果が得られることを確認した。
また、第1の実施形態では、電極指の幅を0.25λとしたが、それ以外の電極指の幅としても効果を奏する。
また、第1、第2の実施形態では、IDTの周波数重み付けの具体的な実施形態として、電極指間隔重み付けとライン占有率重み付けを説明したが、他に、電極指の膜厚重み付け、電極指間の溝深さによる重み付けなどでもよい。電極指の膜厚重み付けおよび電極指上に設けた保護膜の膜厚重み付けでは、IDTの中央部から端部に向かって膜厚を厚くすればよい。なお、保護膜の材料として、酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(Si3N4)、アルミナなどが利用できる。電極指間の溝深さによる重み付けでは、水晶基板をエッチングして、溝をIDTの中央部から端部に向かって深く形成すればよい。
また、第1、第2の実施形態では、IDTの両側に反射器を設けた構成としたが、反射器のない構成としても、効果を得ることができる。
(第3の実施形態)
図37は弾性表面波共振子をパッケージ内に搭載した弾性表面波発振器を示す概略断面図である。
弾性表面波発振器30は、セラミックパッケージ31、ICチップ32、弾性表面波共振子1、蓋体37などを備えている。
セラミックパッケージ31は、セラミックシートを積層して開口された凹部38が形成されている。また、セラミックパッケージ31には開口を囲むようにコバールなどの金属材料で形成されたシームリング35が設けられている。さらに、セラミックパッケージ31の外周面には、回路基板などの外部との接続を果たす外部接続電極36が形成されている。なお、図示しないが外部接続電極36とセラミックパッケージ31の凹部38内とを接続する配線が設けられている。
このように、Q値が向上しCI値が低減した弾性表面波共振子1をセラミックパッケージ31内に搭載していることから、弾性表面波の励振が安定し、消費電力が低下した弾性表面波発振器30を得ることができる。
(第4の実施形態)
図38は弾性表面波モジュール装置の一例として、回路基板に弾性表面波共振子を搭載して受信機モジュールを構成した回路ブロック図である。
受信アンテナ41はLNA42を介して混合器43の入力に接続している。また、局部発振器44も混合器43の入力に接続している。この局部発振器44は、弾性表面波共振子と弾性表面波共振子を励振させる発振回路を備えている。これにより、局部発振器44は、周波数信号を混合器43に確実に出力できる。そして、混合器43の出力には、IF増幅器45と検波器46が直列に接続している。
なお、上記の受信機モジュールを外装などに取り付けて、電子機器として構成することも可能である。
Claims (15)
- 圧電基板上に弾性表面波を励振する電極指を有するIDTが設けられた弾性表面波共振子であって、
前記IDTは、中央部に配置された第1領域と、該第1領域の両側に配置された第2領域および第3領域とを備え、
前記第1領域では周波数が一定であり、前記第2領域および前記第3領域では前記第1領域に隣接する隣接部から前記IDTの端部に近づくに従い周波数が順次低くなる部分を含み、
前記第1領域における周波数をFa、前記第2領域における前記第1領域側とは反対側の端部の周波数をFbM、前記第3領域における前記第1領域側とは反対側の端部の周波数をFcN、としたとき、各端部の周波数変化が、
0.9815<FbM/Fa<0.9953、かつ、
0.9815<FcN/Fa<0.9953、
であることを特徴とする弾性表面波共振子。 - 請求項1に記載の弾性表面波共振子において、
0.9865≦FbM/Fa≦0.9920、かつ、
0.9865≦FcN/Fa≦0.9920、
であることを特徴とする弾性表面波共振子。 - 請求項1または2に記載の弾性表面波共振子において、
前記周波数が順次低くなる部分において、
前記第2領域の一個所の周波数をFbm、それに隣接する個所の周波数をFbm+1とし、前記第3領域の一個所の周波数をFcn、それに隣接する個所の周波数をFcn+1とした
とき、隣接する個所の周波数変化が、
0<|Fbm+1−Fbm|/Fbm<0.000225、かつ、
0<|Fcn+1−Fcn|/Fcn<0.000225、
であることを特徴とする弾性表面波共振子。 - 請求項1に記載の弾性表面波共振子において、
前記第1領域では隣接する2つの電極指の中心と中心の間の電極指間隔が一定であり、
前記第2領域では前記電極指間隔が、前記第1領域に隣接する隣接部から前記IDTの一方の端部に向かい、前記第1領域の前記電極指間隔より大きくかつ順次増加するように形成され、
前記第3領域では前記電極指間隔が、前記第1領域に隣接する隣接部から前記IDTの他方の端部に向かい、前記第1領域の前記電極指間隔より大きくかつ順次増加するように形成され、
前記第1領域の電極指間隔をPaとし、前記第2領域における端部の電極指間隔をPbM、前記第3領域における端部の電極指間隔をPcNとしたとき、各端部の電極指間隔の変化が、
1.0047<PbM/Pa<1.0188、かつ、
1.0047<PcN/Pa<1.0188、であることを特徴とする弾性表面波共振子。 - 請求項4に記載の弾性表面波共振子において、
1.0081≦PbM/Pa≦1.0137、かつ、
1.0081≦PcN/Pa≦1.0137、
であることを特徴とする弾性表面波共振子。 - 請求項4または5に記載の弾性表面波共振子において、
前記第2領域の一個所の電極指間隔をPbm、それに隣接する個所の電極指間隔をPbm+1とし、前記第3領域の一個所の電極指間隔をPcn、それに隣接する個所の電極指間隔をPcn+1としたとき、隣接する個所の電極指間隔の変化が、
0<|Pbm+1−Pbm|/Pbm<0.000225、かつ、
0<|Pcn+1−Pcn|/Pcn<0.000225、
であることを特徴とする弾性表面波共振子。 - 請求項1乃至6のいずれか一項に記載の弾性表面波共振子において、
前記IDTの電極指の対数をNi、前記IDTにおける前記第1領域の電極指の対数をNa、としたとき、
前記第1領域の電極指の対数Naが2対以上で、Na/Ni≦0.312、の範囲内にあることを特徴とする弾性表面波共振子。 - 請求項7に記載の弾性表面波共振子において、
0.111≦Na/Ni≦0.285、であることを特徴とする弾性表面波共振子。 - 請求項7に記載の弾性表面波共振子において、
前記IDTの両側に反射器を備え、
前記IDTの一方の側に設けた反射器の電極指の対数をNr1、前記IDTの他方の側に設けた反射器の電極指の対数をNr2としたとき、
Na/(Ni+Nr1+Nr2)≦0.24、の範囲内にあることを特徴とする弾性表面波共振子。 - 請求項9に記載の弾性表面波共振子において、
0.088≦Na/(Ni+Nr1+Nr2)≦0.219、
であることを特徴とする弾性表面波共振子。 - 請求項1に記載の弾性表面波共振子において、
前記電極指の幅を隣接する前記電極指の中心と中心との間隔である電極指間隔で除した値をライン占有率とし、
前記第1領域ではライン占有率が一定であり、
前記第2領域では前記ライン占有率が、前記第1領域に隣接する隣接部から前記IDTの一方の端部に向かい、前記第1領域の前記ライン占有率より大きくかつ順次増加するように形成され、
前記第3領域では前記ライン占有率が、前記第1領域に隣接する隣接部から前記IDTの他方の端部に向かい、前記第1領域の前記ライン占有率より大きくかつ順次増加するように形成され、
前記第1領域のライン占有率をηaとし、前記第2領域における前記第1領域側とは反対側の端部のライン占有率をηbM、前記第3領域における前記第1領域側とは反対側の端部のライン占有率をηcNとしたとき、各端部のライン占有率の変化が、
1.15<ηbM/ηa<1.70、かつ、
1.15<ηcN/ηa<1.70、
であることを特徴とする弾性表面波共振子。 - 請求項11に記載の弾性表面波共振子において、
前記第2領域の一個所のライン占有率をηbm、それに隣接する個所のライン占有率をηbm+1とし、前記第3領域の一個所のライン占有率をηcn、それに隣接する個所のライン占有率をηcn+1としたとき、隣接する個所のライン占有率の変化が、
0.0018<|ηbm+1−ηbm|/ηbm<0.00885、かつ、
0.0018<|ηcn+1−ηcn|/ηcn<0.00885、
であることを特徴とする弾性表面波共振子。 - 請求項1乃至12のいずれか一項に記載の弾性表面波共振子において、
前記圧電基板が水晶基板であることを特徴とする弾性表面波共振子。 - 請求項1乃至13のいずれか一項に記載の弾性表面波共振子と回路素子をパッケージに搭載したことを特徴とする弾性表面波発振器。
- 請求項1乃至13のいずれか一項に記載の弾性表面波共振子を回路基板に搭載したことを特徴とする弾性表面波モジュール装置。
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