以下、図面とともに本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。図1は本発明の好適な実施形態に係る交換機を含む通信制御システム1の構成と、それらの接続関係を示す図である。
図1に示す通信制御システム1は、本実施形態に係る交換機(Mobile Switching Center/Visitor Location Register:MSC/VLR)20と、HLR(HomeLocation Register)30と、を含んで構成される。交換機20は、別の交換機40と接続することにより移動体通信網Nを構成する。また、HLR30は、移動体通信網Nに含まれる装置であり、交換機20及び交換機40と接続される。移動体通信網Nとは、例えば、広範囲のエリアをカバーする移動通信端末による音声通信を行うための公衆のネットワークである。
交換機20は、通信端末の移動体通信網Nを介した通信を制御する装置である。より具体的には、交換機20の配下に在圏する通信端末(例えば、図1に示す発信端末10)から送信される通信相手の通信端末を指定した接続要求を受信し、通信端末のユーザに関する情報(加入者情報)を格納するデータベース(加入者データベース)であるHLR30に対して通信相手となる通信端末の在圏情報等を問い合わせる。そして問い合わせに対してHLR30から送信される応答に基づいて通信相手となる通信端末が在圏する交換機(例えば、交換機40)に接続することによって、接続要求を送信した通信端末との呼接続を確立させる処理を行う。また、通信相手となる通信端末が例えば図1に示す着信端末50のように自機の配下に在圏する場合には、交換機20が配下の通信相手となる通信端末との間で呼接続に係る処理を行う。これにより、交換機20に接続する通信端末は、通信相手の通信端末との間で通信を行うことができる。なお、上述の通信端末は、それぞれ接続要求を送信する機能と、他の通信端末から送信された接続要求に基づき交換機との間で行われる呼接続に係る処理によって他の通信端末と呼接続を確立する機能と、を備える。以下の説明では、交換機20に接続し接続要求を送信した通信端末を「発信端末」とし、この接続要求で特定される通信相手となる通信端末を「着信端末」とする。
ここで、本実施形態における「交換機20の配下に在圏する」状態について説明する。本実施形態における「交換機20の配下に在圏する」状態とは、交換機20の位置登録エリア内に、通信端末が通信し得る状態で存在する状態をいう。このとき、通信端末は、交換機20の位置登録エリア内において交換機20及びHLR30と通信を行い、自端末の現在位置を登録する処理(在圏登録処理)が交換機20及びHLR30において行われることによって、通信端末が交換機20の配下に在圏する状態となる。本実施形態では、発信端末10及び着信端末50が上記の在圏登録処理を行ったことにより、交換機20の配下に在圏した状態となった場合について説明する。
なお、発信端末10及び着信端末50は、それぞれ無線通信により交換機20に接続する基地局装置(図示しない)との間で無線通信を行うことにより、情報の交換が行われる。また、交換機20と交換機40との間、交換機20とHLR30との間、交換機40とHLR30との間は、それぞれ有線のネットワークを介して接続される。
なお、図1に示す通信制御システム1では、交換機20及び交換機40がHLR30に対して接続されているが、これはHLR30に対して複数の交換機が接続することを説明する目的で記載したものである。また、交換機20に対しては2つの通信端末(発信端末10と着信端末50)が接続されているが、実際には、交換機20及び交換機40に対して複数の通信端末が接続されている。
次に、通信制御システム1に含まれる各装置の機能について説明する。なお、以下の各装置の機能に係る説明では、発信端末10と着信端末50が同じ交換機(交換機20)の配下に在圏している場合について、詳細に説明する。
発信端末10及び着信端末50となり得る通信端末は、通信端末の所有者(ユーザ)により用いられて、移動体通信網Nに接続して無線通信による音声通話を行うための通信端末であり、具体的には、例えば携帯電話等の通信機能を有する装置として実現される。
本実施形態では、ユーザの操作によって、発信端末10から着信端末50を相手とした音声通信を求める接続要求が送信される。この接続要求には、発信端末10を特定する情報(例えば、発信端末10の電話番号やユーザを識別する番号)と、着信端末50を特定する情報(例えば、着信端末50の電話番号)とが含まれる。
HLR30は、移動体通信網Nに接続して通信を行う通信端末のユーザに関する情報(加入者情報)を格納するデータベース(加入者データベース)である。HLR30において格納される加入者情報とは、ユーザを識別する番号(International Mobile User Identity:IMUI)、当該ユーザが取り扱う通信端末の電話番号、現在その通信端末が直接(他の交換機を介さず)接続することのできる(在圏する)交換機を特定する情報(例えば、MSC−Number)、及びユーザが加入している通信事業者が提供するサービス(例えば、留守番電話サービスや、迷惑電話対策のサービスなど)等が挙げられる。上記の情報のうち、通信端末の在圏する交換機を特定する情報は、当該通信端末の在圏エリアが移動した際等に通信端末が交換機20を介してHLR30に対して現在位置を登録することにより、接続可能な交換機20を通知する(在圏登録処理)際に更新される。その他の情報については、あらかじめ通信事業者等により入力されることによって、HLR30に格納される。
HLR30は、交換機20から発信端末10及び着信端末50の情報を含む呼接続に係る問い合わせが送信された場合には、上述の加入者情報を参照して、着信端末50が在圏する交換機を特定する。また、ユーザが付加サービスの契約を行っている場合には、当該サービス等によって発信端末10及び着信端末50の少なくとも一方で呼接続が制限されていないか等を確認する。HLR30が保持している付加サービスに係る情報のうち、呼接続に係る問い合わせに際して用いられる情報とは、着信端末50が発信端末10との間で呼接続を確立することを妨げることを示す情報である。具体的には、例えば、ユーザがパケット通信限定の契約であるか、通話停止状態であるか、改番等による一時廃止加入者であるか、発信端末10の番号が迷惑電話サービスの着信拒否リストに記載されているか、等である。
さらに、HLR30は、着信端末50が在圏する交換機から、交換機を特定する情報と着信端末50を特定する情報とが含まれ、着信端末50に接続するために用いられるローミング番号を取得する。そして、このローミング番号を、問い合わせを送信した交換機20に対して、問い合わせに対する応答として送信する。以上の処理によって、HLR30から交換機20に対して、呼接続を確立するための情報が提供される。なお、通信相手の通信端末の情報に関してHLR30において保持されていない場合や、ローミング番号が交換機から取得できなかった場合には、通信相手の通信端末に対して呼接続を確立することができない旨が問い合わせを行った交換機20に対して通知される。
交換機20は、本発明の特徴をなす装置であり、上述のように移動体通信網Nに接続する2つの通信端末の間(例えば、発信端末10と着信端末50)の呼接続を制御する機能を有する。基地局20は、在圏情報格納部21、接続要求受信部22、在圏情報判定部23、ページング処理部24、加入者情報処理部25、及び呼接続処理部26を含んで構成される。
在圏情報格納部21は、自機の配下に在圏する通信端末を特定する情報を格納する在圏情報格納手段として機能する。具体的には、例えば図2に示すような情報を格納する。図2に示すように、配下に在圏する通信端末を特定する情報である電話番号と、当該通信端末に対する接続可否を示す情報と、当該通信端末に対する付加サービス等が対応付けられて保存される。この接続可否を示す情報とは、例えば既に通信を行っている等の理由により音声通信を行うことができない状態である場合には、当該欄を“×”として、接続できない状況であることを示すものである。また、図2に示される付加サービスとしては、当該通信端末に対する呼接続処理に係るサービス等が挙げられ、例えば、当該通信端末は音声通信を行うことができないサービスにユーザが加入している場合などには、当該サービスが付加されていることが本欄に記載される。図2に示す情報は、例えば、交換機20の配下の通信端末(例えば、発信端末10)、交換機20、及びHLR30の間で行われる在圏登録処理中に、HLR30又は発信端末10から提供されることにより更新される。また、発信端末10が他の交換機(例えば交換機40)の配下に移動した場合には、発信端末10が交換機40を介して在圏登録処理を行うことによって、当該情報がHLR30もしくは交換機40から通知されることによって発信端末10に係る情報が図2に示す表から削除される。
接続要求受信部22は、発信端末10から送信される接続要求を受信する接続要求受信手段として機能する。接続要求受信部22により受信された接続要求は、在圏情報判定部23及び加入者情報処理部25に対して送られる。
在圏情報判定部23は、接続要求に含まれる着信端末50を特定する情報に基づいて、在圏情報格納部21を参照して、着信端末50が自機の配下に在圏するかどうか判定を行う在圏判定手段として機能する。より具体的には、着信端末50の電話番号が在圏情報格納部21において格納されているかを検索することによって着信端末50が自機の配下に在圏するかを判定する。在圏情報判定部23は、在圏情報格納部21に着信端末50の電話番号が格納されている(図2に示す表に着信端末50の電話番号を含む行がある)場合には、着信端末50が自機の配下に在圏すると判定する。さらに、図2に示すように在圏情報格納部21において接続可否や付加サービスに係る情報が格納されている場合は、当該情報が在圏情報判定部23により取得される。判定結果及び在圏情報格納部21から取得された情報は、ページング処理部24に対して通知される。なお、在圏情報格納部21において格納される情報に着信端末50の電話番号が含まれていない場合、着信端末50は交換機20の配下には在圏していないと判定され、在圏情報判定部23は呼接続処理部26に対してはその旨を通知する。また、例えば、着信端末50に対する接続可否情報が“×”である場合には、着信端末50に対する接続はできないため、この結果を呼接続処理部26に対して通知する。
ページング処理部24は、着信端末50に対して呼接続処理を行うためのページングを行い、着信端末50からの応答を受信するページング処理手段として機能する。ここでページング処理部24が着信端末50に対して行うページングとは、着信端末50が呼接続を確立することができる状態であるかを確認するものである。したがって、着信端末50からの応答を含むページングに係る処理は、着信端末50のユーザによる通信端末の操作等を介さずに行われる。例えば、着信端末50が一時的に圏外状態となっている場合には、着信端末50はページングに対して応答することができないため、ページング処理部24は着信端末50からの応答を取得することができない。したがって、ページング処理部24は、所定の時間(例えば、5秒)着信端末50からの応答を受信するために待機している間に、着信端末50から応答が無い場合は、着信端末50は呼接続を確立することができる状態ではないと判断し、その結果を呼接続処理部26に対して通知する。また、着信端末50が交換機20の配下に在圏し、ページングに対して着信端末50から応答があった場合には、当該応答と、在圏情報判定部23から送信された在圏情報格納部21において格納される着信端末50に対する付加サービスに係る情報があればこの情報と、を呼接続処理部26に対して送る。また、呼接続処理部26による呼接続に係る処理を行うために、ページング処理部24と着信端末50との間での認証・秘匿処理が行われる。
さらに、ページング処理部24は、現在ページング中である通信端末に関する情報を保持する機能を有する。図3(A)〜(C)は、ページング処理部24で保持される情報の例である。例えば、電話番号“09011111111”により特定される通信端末(例えば、着信端末50)に対して、ページングを行う前は、図3(A)に示すように当該電話番号の通信端末に係る情報は保持されない。そして、ページング処理部24により着信端末50に対してページングが行われ、着信端末50からの応答を待っている間は、図3(B)に示すように、着信端末50の電話番号と、呼び出し中である旨(“呼び出し中”)がこの表に記載される。さらに、着信端末50から送信されるページングに対する応答がページング処理部24により受信された場合には、図3(C)に示すように、応答があった旨の記載(“OK”)に呼び出し状態が変更される。ページング処理部24では、ページングを行う前に、現在ページング中である通信端末に関する情報が参照されて、この図3(A)〜(C)に、着信端末50の電話番号が保持されている場合(すなわち、図3(B)又は(C)の状態である場合)には、着信端末50に対しては再度ページングを行うことは禁止される。これにより、ページングに係る処理が行われている着信端末50に対して二重にページングを行うことを防止することができる。なお、この着信端末50の情報は、呼接続処理部26が着信端末50に対して呼接続を行う際に消去される。また、待機中に着信端末50から応答が無く(図3(B)に示す状態)、所定時間が経過した場合には、着信端末50から応答が無い旨を呼接続処理部26に対して通知した時点で、ページング処理部24において保持される着信端末50に係る情報は消去される。
加入者情報処理部25は、接続要求受信部22から送られた発信端末10からの接続要求に含まれる着信端末50を特定する情報(着信端末50の電話番号)に基づいて、HLR30に対して問い合わせを行い、着信端末50のユーザに関する情報を問い合わせに対する応答として取得する加入者情報処理手段として機能する。具体的には、発信端末10を特定する情報及び着信端末50を特定する情報を用いて、HLR30に対して呼接続に係る問い合わせを行う。そして、HLR30から問い合わせに対する応答として呼接続を確立するためのローミング番号が送信された場合には、これを取得する。このローミング番号には、上述のように着信端末50の情報と、着信端末50が接続することのできる交換機(すなわち、交換機20)の情報が含まれる。加入者情報処理部25により取得されたローミング番号は、呼接続処理部26に対して送られる。さらに、HLR30から着信端末50に対する呼接続に係る処理に関係する付加サービスの情報が送られた場合は、加入者情報処理部25により当該情報が取得され、呼接続処理部26に対して送られる。なお、着信端末50と呼接続を確立することができない旨がHLR30から通知された場合には、その旨が加入者情報処理部25から呼接続処理部26に対して通知される。
また、加入者情報処理部25は、HLR30から交換機20の配下に在圏する通信端末に関するローミング番号の送信要求が送信された場合には、交換機20の情報と当該通信端末の情報とを用いてローミング番号を生成し、HLR30に対して送信する機能を備える。このように、交換機20とHLR30との間で行われる一連の処理は、加入者情報処理部25により行われる。
呼接続処理部26は、ページング処理部24により行われたページングに対する着信端末50からの応答と、加入者情報処理部25によりHLR30に対して問い合わせることにより取得された着信端末50のユーザに係る情報(本実施形態では、ローミング番号及び着信端末50のIMUI)と、に基づいて、発信端末10と着信端末50との間で呼接続を確立する呼接続処理手段として機能する。具体的には、ページング処理部24による着信端末50へのページングに対する着信端末50からの応答の受信と、加入者情報処理部25によるHLR30から送信された着信端末50のユーザに係る情報(ローミング番号及びIMUI)の取得と、に基づいて、呼接続処理部26は、発信端末10から接続要求があったことを着信端末50のユーザに対して鳴動等により通知する着信要求を送信する。この着信要求に基づいて着信端末50が鳴動し、着信端末50のユーザがそれに対してボタンを操作する等により応答することで、着信端末50からは着信要求に対する応答が送信される。呼接続処理部26では、着信端末50から送信される着信要求に対する応答を受信すると、発信端末10と着信端末50との間で音声通信を行うための接続処理が行われた後に、音声通信が開始される。
なお、着信端末50が他の交換機(例えば、交換機40)の配下に在圏している場合には、加入者情報処理部25から送られるローミング番号により特定される着信端末50が接続することのできる交換機は交換機20ではない。したがって、呼接続処理部26は、当該ローミング番号により特定される交換機と接続することにより、呼接続に係る処理が行われる。
さらに、加入者情報処理部25から送られるローミング番号では自機(交換機20)が指定されているにもかかわらず、在圏情報判定部23から着信端末50との接続を行うことができない旨が通知された場合には、呼接続処理部26は発信端末10に対して着信端末50との呼接続を確立することができない旨を通知する。同様に、HLR30から着信端末50との接続を行うことができない旨が通知された場合にも、呼接続処理部26は発信端末10に対して着信端末50との呼接続を確立することができない旨を通知する。また、ページング処理部24から所定時間内にページングに対して着信端末50からの応答が無い旨が通知された場合は、呼接続処理部26はページング処理部24に対して再度ページングを行う旨を指示する。
また、交換機40は、図1では図示しないが、交換機20と同じ機能を有する。そして、交換機40の配下に在圏する通信端末から接続要求があった場合には、交換機40において、上記の交換機20と同様の処理が行われることで、接続要求を送信する通信端末と通信相手との呼接続が確立される。
以上説明した交換機20,40及びHLR30は、図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)101、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)102及びROM(Read Only Memory)103、通信を行うための通信モジュール104、並びにハードディスク等の補助記憶装置105等のハードウェアを備えるコンピュータとして構成される。そして、これらの構成要素が動作することにより、上述した各装置20,30及び40の各機能が発揮される。また、発信端末10及び着信端末50は、CPU、メモリ、通信モジュール等のハードウェアにより構成される。
次に、上述の通信制御システム1による通信制御方法について、図5に示すシーケンス図を用いて説明する。なお、以下の説明においても、図1に示すように発信端末10と着信端末50が同じ交換機(交換機20)の配下に在圏している場合の処理を説明する。
まず、発信端末10が交換機20の配下に在圏した際には、発信端末10が在圏登録要求を送信することにより、発信端末10、交換機20、及びHLR30の間で在圏登録処理(アタッチ、位置登録)が行われる(S11a,S11b)。これにより、HLR30における発信端末10の在圏情報が更新される。また、必要に応じて発信端末10のユーザが契約する付加サービスに関する情報等も更新される。交換機20では、上述のHLR30及び発信端末10との在圏登録処理により得られた情報を元に、在圏情報格納部21において格納される情報が更新される(S12)。具体的には、在圏情報格納部21において格納される情報(例えば図2に示す表)に、発信端末10の電話番号を含む行が新たに追加される。
上記の処理(S11,12)は、着信端末50が交換機20の配下に在圏した際にも同様に行われる。すなわち、在圏登録処理(S13a,S13b)が着信端末50、交換機20及びHLR30との間で行われた後、交換機20の在圏情報格納部21において格納される情報が更新される(S14)。
これにより、発信端末10及び着信端末50が交換機20の配下に在圏するという情報が交換機20の在圏情報格納部21に格納される。これにより、在圏情報格納部21において格納される情報(例えば図2に示す表)に、発信端末10及び着信端末50の電話番号を含む行が追加される。上記の処理(S11S14)は、発信端末10や着信端末50が交換機20の配下に在圏した任意のタイミングで行われる。
次に、交換機20は、接続要求受信部22において、発信端末10から送信される接続要求を受信する(S21、受信ステップ)。発信端末10からの接続要求の送信は、発信端末10のユーザが、発信端末10を操作することによって行われる。接続要求には、発信端末10を特定する情報である発信端末10のIMUIと、着信端末50を特定する情報である着信端末50の電話番号が含まれる。接続要求受信部22が受信した接続要求に含まれる情報は、在圏情報判定部23及び加入者情報処理部25に対して送られる。
これ以降、在圏情報判定部23で行われる処理と加入者情報処理部25で行われる処理とは同時に行われるため、まず在圏情報判定部23で行われる処理について説明する。
在圏情報判定部23では、接続要求受信部22から送られる接続要求に含まれる着信端末50の電話番号が在圏情報格納部21において格納されているかを検索することによって着信端末50が自機の配下に在圏するかを判定する(S22、在圏判定ステップ)。着信端末50に係る情報は在圏登録処理時に在圏情報格納部21に格納される(S14)ので、着信端末50が交換機20の配下に在圏することが確認される。在圏情報判定部23では、さらに着信端末50の電話番号に対応して付加サービスに係る情報が保持されている場合には、当該情報が取得され、在圏判定の結果と共にページング処理部24に対して通知される。
続いて、ページング処理部24では、在圏情報判定部23において在圏することが確認された着信端末50に対してページング(Paging)が行われる(S23、ページング処理ステップ)。このとき、在圏情報判定部23から付加サービスに係る情報が通知された場合には、この付加サービスに係る情報が着信端末50に対するページング処理に用いられる。同時にページング処理部24において保持されるページング中の通信端末に関する情報を更新し、着信端末50に対してページングを行っている旨(“呼び出し中”)が記載される。そして、ページング処理部24では、交換機20からのページングに対して着信端末50から送信されるページング応答が受信される(S24、ページング処理ステップ)。ページング処理部24では、着信端末50との間で呼接続に係る処理を行うための認証・秘匿処理が行われる(S25)。その後、ページング処理部24において取得された着信端末50からのページング応答が、呼接続処理部26に対して通知される。この際、ページング処理部24において保持される情報において、着信端末50に係る呼び出し状態に係る情報が“OK”に更新される。なお、着信端末50から所定時間内に応答が無い場合にも、その結果が呼接続処理部26に対して通知される。
次に、接続要求に含まれる情報が接続要求受信部22において受信され(S21)、加入者情報処理部25に送られた後の処理について説明する。
加入者情報処理部25は、接続要求に含まれる着信端末50を特定する情報(着信端末50の電話番号)に基づいて、HLR30に対して加入者情報問い合わせ要求(SendRoutingInfo)を行う(S26、加入者情報処理ステップ)。この際に加入者情報処理部25からHLR30に対して送信される情報は、発信端末10のIMUI及び着信端末50の電話番号である。
HLR30では、発信端末10のIMUI着信端末50の電話番号に基づいて、HLR30において保持される加入者情報を参照して、着信端末50の電話番号に基づいて、着信端末50に対して接続することのできる交換機(本実施形態では、交換機20)の情報(MSC−Number)と着信端末50のIMUIとが取得される。また、必要に応じて付加サービス情報を参照して、発信端末10と着信端末50との呼接続を妨げる情報が無いかが確認される。そして、交換機20の情報と着信端末50のIMUIとを含むローミング番号要求(ProvideRoutingNumber)がHLR30から交換機20に対して送信され、交換機20の加入者情報処理部25によってこのローミング番号要求が受信される(S27、加入者情報処理ステップ)。
これに対して、交換機20の加入者情報処理部25は、交換機20の情報と、交換機20において保持される着信端末50の情報とを用いて、着信端末50に対して接続するためのローミング番号を生成し、当該ローミング番号がローミング番号応答(ProvideRoutingNumber.ack)としてHLR30に対して送信される(S28、加入者情報処理ステップ)。
HLR30において、交換機20の加入者情報処理部25から送信される着信端末50に対して接続するためのローミング番号を含むローミング番号応答が受信されると、着信端末50のIMUIとローミング番号とを、加入者情報問い合わせ要求を行った交換機(本実施形態では、交換機20)に対して、加入者情報問い合わせ応答(SendRoutingInfo.ack)として送信され、交換機20の加入者情報処理部25によってこの加入者情報問い合わせ応答が受信される(S29、加入者情報処理ステップ)。なお、必要に応じて、着信端末50との通信で用いる付加サービス情報も上記の情報と併せて送信される。
加入者情報処理部25において、着信端末50のユーザ情報が含まれ、HLR30から送信される加入者情報問い合わせ応答が受信されると、この加入者情報問い合わせ応答は呼接続処理部26に対して送られる。
呼接続処理部26では、ページング処理部24から送られる着信端末50のページング応答及び加入者情報処理部25から送られる着信端末50のユーザの情報(ローミング番号及びIMUI)に基づいて、着信端末50に対して以降の呼接続に係る処理を行ってよいかが判定される(S30、呼接続処理ステップ)。具体的には、以下の2点を満たすかどうかにより判定が行われる。第1点目は、着信端末50からページング応答が送信され、認証・秘匿処理が行われたことを、ページング処理部24において保持される情報において、着信端末50に係る呼び出し状態が図3(C)で示すように“OK”となっていることである。そして第2点目は、加入者情報処理部25から着信端末50のユーザの情報(ローミング番号及びIMUI)を取得することである。
ここで、第1点目が確認できない場合(すなわち、着信端末50からの応答が無い場合)は、呼接続処理部26はページング処理部24に対して再度ページングを行うことを指示する。また、第2点目が確認できない場合(すなわち、HLR30から着信端末50に対して接続できない旨が通知された場合)は、呼接続処理部26は以降の呼接続に係る処理を中止し、発信端末10に対して呼接続を確立する旨ができないことを通知する。上記の2点を満足する場合には、着信端末50のユーザの情報(ローミング番号及びIMUI)を用いて、発信端末10からの接続要求がある旨をユーザに対して通知する着信要求(SETUP)を着信端末50に対して送信する(S31、呼接続処理ステップ)。併せて、ページング処理部24において保持される着信端末50に係る呼び出し状態を示す情報を消去する指示が、呼接続処理部26からページング処理部24に対して送られることによって、当該情報が消去される。
呼接続処理部26から送信される着信要求に基づいて、着信端末50が例えば鳴動し、それに対してユーザが応答した場合には、着信要求応答(CallConfirmed)が着信端末50から交換機20に対して送信される(S32、呼接続処理ステップ)。交換機20の呼接続処理部26は、着信要求応答を受信すると、発信端末10と着信端末50との間で音声通信を行うための処理が行われる(S33、呼接続処理ステップ)。これにより、呼接続に係る一連の処理が完了し、発信端末10と着信端末50との間で呼接続が確立され、音声通信を行うことができる。
上記の一連の処理のうち、在圏情報判定部23による在圏判定(S22)から認証・秘匿処理が完了する(S25)までの所要時間は、概ね数秒程度である。特にページング(S23)を送信してから着信端末50からのページング応答を受信するまで(S24)は、着信端末50の応答時間に依存する。したがって、在圏判定(S22)から認証・秘匿処理が完了する(S25)までの所要時間の大半が上記の処理(S23〜S24)に用いられる。一方、加入者情報処理部25におけるHLR30との通信による一連の処理(S26〜S29)に係る所要時間は、概ね1秒以下である。したがって、交換機20において、発信端末10から接続要求を受信し(S21)、着信端末50に対して着信要求を送信する(S31)までの所要時間は、ページング応答を受信する(S24)までの時間によって大きく変動する。したがって、ページング処理部24がページングを開始するタイミング(S23)が速いほど、発信端末10から接続要求を受信し(S21)、着信端末50に対して着信要求を送信する(S31)までの所要時間を短縮することができる。
なお、上記の一連の処理では、発信端末10及び着信端末50が交換機20の配下に在圏している場合について説明したが、着信端末50が交換機20の配下に在圏しない場合に交換機20で行われる処理をここで説明する。まず在圏情報判定部23における在圏判定(S22)の結果、着信端末50が配下に在圏しないことが確認されるため、着信端末50との間の処理(S23〜S25)は行われない。また、加入者情報処理部25はHLR30に対して加入者情報問い合わせ要求を行うが、着信端末50が交換機20の配下に在圏しない場合は、HLR30で保持される着信端末50の情報により特定される交換機は交換機20とは異なる交換機である。したがって、HLR30により行われるローミング番号取得に係る処理(S27,S28)は、交換機20では発生しない。そして、HLR30から、着信端末50のIMUIと、着信端末50が在圏する交換機20とは異なる交換機により生成されたローミング番号と、が加入者情報問い合わせ応答として送信される(S29)ので、このローミング番号及びIMUIを用いて、当該交換機に接続することにより、着信端末50との呼接続に係る処理が行われる。
本実施形態に係る通信制御方法による作用・効果について説明する。本実施形態に係る通信制御方法では、ページング(S23)を行うタイミングが、従来の通信制御方法と比較して速くなった。従来の交換機20による通信制御方法では、着信端末50が交換機20の配下にある場合であっても、HLR30からのローミング番号要求の受信(S27)または加入者情報問い合わせ応答の受信(S29)を契機として、着信端末50に対するページングが開始されていた。一方、本実施形態の通信制御システム1の交換機20では、在圏情報格納部21に格納される在圏情報を用いて、着信端末50の在圏判定が行われ(S22)、この結果に基づいてページングが行われる(S23)。したがって、本実施形態の通信制御方法によれば、交換機20とHLR30との通信を待たずに、ページングを開始することができるため、従来の通信制御方法と比較して発信端末10が接続要求を送信した時点(S21)から、着信端末50に対して着信要求を送信する時点(S31)までの所要時間を短縮することができる。この結果、着信要求によって着信端末50の鳴動等を開始するまでの所要時間も従来の通信制御方法よりも短縮され、着信端末50の鳴動等に対してユーザが応答するまでの所要時間を短縮するできるため、発信端末10から接続要求が送信されてから、着信端末50との間で通話を開始するまでの所要時間を短縮することができる。
また、加入者情報処理部25においてHLR30との間で通信を行って、着信端末50のユーザに関する情報を取得し、この情報と、ページングに対する応答とに基づいて、呼接続に係る処理を行うことにより、HLR30において格納されるユーザに関する情報に基づいてより適切な呼接続処理を行うことができる。具体的には、例えばHLR30において保持される付加サービス情報において、着信端末50により発信端末10が着信拒否されている場合には、当該情報がHLR30から交換機20に対して通知されるので、交換機20が着信端末50に対して着信要求を送信することを防止することができる。
また、本実施形態の通信制御方法では、ページング処理部24において、ページング中の通信端末に係る情報が保持され、この情報に保持されている通信端末に対しては、新たにページングを行うことが禁止される。これにより、例えば、ページングの応答待ち状態である着信端末50に対して、従来の通信制御方法と同様にHLR30からのローミング番号要求の受信(S27)または加入者情報問い合わせ応答の受信(S29)を契機として、ページングを行うことが防止され、二重にページングを行う等の不要な処理を減らすことができる。
以上、本発明の好適な実施形態について述べてきたが、本発明に係る交換機及び通信制御方法は、上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の態様を取ることが可能である。
例えば、上記実施形態では、移動体通信網Nに接続して通信を行う場合について説明したが、移動体通信網とは異なる通信網に対しても適用することができる。例えば、本発明は、構内通信網に対しても適用することができる。構内通信網に接続して行う通信では、移動体通信網N等の公衆通信網と比較して、同一の交換機20の配下に在圏する通信端末と通信を行う割合が高いため、本発明による発信端末が接続要求を送信した時点から、着信端末に対して着信要求を送信する時点までの所要時間を短縮する効果をより大きく得ることができる。
また、在圏情報格納部21において格納される情報の例として図2を用いて説明したが、在圏情報格納部21では接続可否に係る情報や付加サービスに係る情報を格納される必要は無い。すなわち、在圏情報格納部21において交換機20の配下に在圏する通信端末の情報が格納されていれば、在圏情報判定部23は当該情報を用いて在圏判定を行うことができ、通信端末に対してページングを迅速に行うことができる。
また、上記の通信制御方法では、より適切な呼接続処理を行うためにHLR30との通信を行い、その通信で得られた着信端末50のユーザの情報に基づいて呼接続可否判定を行ったが、HLR30との通信を行わない場合であっても、ページングを迅速に行うことができるという効果を得ることができる。