JP2010095124A - スタビライザ装置とステアリングギヤ比変更装置とを備えた車両 - Google Patents

スタビライザ装置とステアリングギヤ比変更装置とを備えた車両 Download PDF

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Abstract

【課題】アクティブスタビライザ装置とステアリングギヤ比変更装置とを備えた車両の実用性を向上させる。
【解決手段】(A)ある依拠パラメータを基準としたステアリングギヤ比rが標準ギヤ比rB(v)となるように、ステアリングギヤ比変更装置を制御する標準制御(S3)と、(B)スタビライザ装置が有するアクチュエータが駆動されない時に、ステアリングギヤ比rが標準ギヤ比rB(v)とは異なるように規定されたスタビライザ非作動時ギヤ比K・rB(v)となるように、ステアリングギヤ比変更装置を制御するスタビライザ非作動時制御(S4,5)とを選択的に実行可能に構成する。スタビライザ装置が非作動となった場合のロール剛性の低下に起因して、車両のロール剛性配分が変化した場合であっても、スタビライザ非作動時制御によって、操舵に対するヨーレートの変化を抑えることが可能である。
【選択図】図10

Description

本発明は、アクチュエータの作動によって自身が発生させるロール抑制力を変更するスタビライザ装置と、操舵量に対する転舵量の比であるステアリングギヤ比を変更するステアリングギヤ比変更装置とを備えた車両に関し、特に、そのスタビライザ装置を制御できない場合等に対処するためのステアリングギヤ比変更装置の制御に関する。
スタビライザ装置は、スタビライザバーの捩り反力を利用して、車体のロールを抑制する装置である。近年では、例えば、下記特許文献に記載されているように、アクチュエータを有し、そのアクチュエータによってロール抑制力をアクティブに変更可能、つまり、ロール剛性を変更可能な装置、いわゆるアクティブスタビライザ装置が検討され、既に実用化され始めている。また、車両が備えるステアリングシステムとして、例えば、ステアリングホイール等のステアリング操作部材(以下、単に「操作部材」と略す場合がある)の操舵量に対する車輪の転舵量の比であるステアリングギヤ比が、車両走行速度等のパラメータに基づいて変更するステアリングギヤ比変更装置を備えたシステム、いわゆるVGRS(Variable Gear Ratio Steering)システムが検討され、既に実用化され始めている。
特開2005−271827号公報 特開2008−44405号公報 特開2007−45226号公報
上述したアクティブスタビライザ装置のアクチュエータが駆動されない場合、例えば、アクチュエータの失陥や電源から電力の供給を受けることができないような場合には、ロール剛性が大きく低下することになる。そして、そのロール剛性は、ステアリングシステムの操縦・安定性等に密接に関連する。例えば、スタビライザ装置の異常によるロール剛性の低下に起因して、ステアリングホイール等のステアリング操作部材(以下、単に「操作部材」と略す場合がある)等に生じる共振振動を増大させる場合がある。下記特許文献3に記載された車両は、そのスタビライザ装置の異常によるロール剛性の低下に起因する操作部材等の共振振動を減衰すべく、パワーステアリング装置が発生させる力を制御するように構成される。
上述したように、スタビライザ装置のアクチュエータが駆動されないような事態となり、そのことによるロール剛性の低下に対処することにより、スタビライザ装置を備えた車両の実用性が向上すると考えられる。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、先に述べたステアリングギヤ比変更装置を制御することによって、スタビライザ装置が制御されない場合のロール剛性の低下に対処するものであり、スタビライザ装置とステアリングギヤ比変更装置とを備えた車両の実用性を向上させることを課題とする。
課題を解決するための手段および発明の効果
上記課題を解決するために、請求項1に記載の車両は、
自身の捩り反力に依拠するロール抑制力を発生させるスタビライザバーと、そのスタビライザバーが発生させるロール抑制力を変更可能なアクチュエータとを有するスタビライザ装置と、
運転者によって操作されるステアリング操作部材の操舵量に対する車輪の転舵量の比であるステアリングギヤ比を変更するステアリングギヤ比変更装置と、
ある依拠パラメータに基づいて前記ステアリングギヤ比変更装置を制御することで前記ステアリングギヤ比を制御する制御装置であって、(A)前記ステアリングギヤ比が標準ギヤ比となるように、前記ステアリングギヤ比変更装置を制御する標準制御と、(B)前記スタビライザ装置が有する前記アクチュエータが駆動されない時に、前記ステアリングギヤ比が前記標準ギヤ比とは異なるように規定されたアクチュエータ非駆動時ギヤ比となるように、前記ステアリングギヤ比変更装置を制御するアクチュエータ非駆動時制御とを選択的に実行する制御装置と
を含んで構成される。
スタビライザ装置のアクチュエータが駆動されない事態(以下、「スタビライザ非作動時」という場合がある)となり、ロール剛性が低下した場合には、例えば、前後輪のロール剛性配分が変わってしまうことがある。そのロール剛性配分が変化すると、ステアリングのステア特性(アンダステア/オーバステア特性)も変化することになる。詳しく言えば、運転者の操舵に対して車両が向きを変える時間、つまり、操舵に対するヨーレート(ヨー角速度)が変わってしまうのである。具体的には、運転者の操舵フィーリングの急変、ヨーレートが低下した場合の緊急回避性能の低下など、種々の問題が生じることになる。
本発明の車両によれば、スタビライザ非作動時においてロール剛性が低下した場合、ステアリングギヤ比変更装置の制御であるスタビライザ非作動時制御によって、ステアリングギヤ比を標準制御における標準ギヤ比から変更することで、上述したヨーレートの変化を抑えることが可能である。したがって、上述した操舵フィーリングの変化を抑えること、緊急回避性能の低下の抑制あるいは防止が可能となる。そのような利点を有することで、本発明の車両は実用性の高いものとなる。
また、スタビライザ装置は前輪側と後輪側の各々に設けられることが、一般的である。
例えば、後輪側のスタビライザ装置のアクチュエータが駆動されず、前輪側のロール剛性のみが低下する場合を考える。この場合、前輪の荷重移動が小さくなり、前輪のコーナリングパワーが大きくなるため、アンダステアが弱まる、あるいは、オーバステアとなる。つまり、操舵に対するヨーレートが高くなり、車両の走行の安定性(直進性)の低下等が生じることになる。本発明の車両によれば、ステアリングギヤ比を標準ギヤ比より低くなるように制御することで、ヨーレートの上昇を抑えることが可能である。逆に、前輪側のスタビライザ装置のアクチュエータが駆動されず、後輪側のロール剛性のみが低下する場合を考える。この場合、後輪の荷重移動が小さくなり、後輪のコーナリングパワーが大きくなるため、アンダステアが強くなる。つまり、操舵に対するヨーレートが低くなり、車両の緊急回避性能の低下等が生じることになる。本発明の車両によれば、ステアリングギヤ比を標準ギヤ比より高くなるように制御することで、ヨーレートの低下を抑えることが可能である。
また、請求項2に記載の車両は、
前輪および後輪に対応して設けられ、それぞれが、前記スタビライザ装置である1対のスタビライザ装置を備え、
前記スタビライザ非作動時制御が、
前記1対のスタビライザ装置の各々が有する前記アクチュエータがともに駆動されない時に、前記ステアリングギヤ比が、前記標準ギヤ比より高くなるように規定された前記スタビライザ非作動時ギヤ比となるように、前記ステアリングギヤ比変更装置を制御するように構成される。
前輪および後輪に対応して1対のスタビライザ装置が設けられるような場合、直進時の安定性を考慮したロール剛性配分から、旋回時の回頭性を向上させるロール剛性配分に変更するように制御されるのが一般的である。つまり、通常の直進時のアンダステアの状態から、旋回時に、そのアンダステアを弱める、あるいは、オーバステアとなるように、後輪側のロール剛性を上昇させる量が、前輪側のロール剛性を上昇させる量に比較して大きくなるように制御される場合がある。そのような場合に、1対のスタビライザ装置の各々のアクチュエータがともに駆動されない状況、例えば、バッテリの充電量(残存電気エネルギ量)の低下等に起因にして、電源からの電力の供給が受けられないような状況下においては、前輪側,後輪側の両者のロール剛性が低下することになる。その際、後輪側のロール剛性の低下量が、前輪側のロール剛性の低下量より大きいため、アンダステアが強くなる。したがって、請求項2に記載の車両によれば、ステアリングギヤ比が、標準ギヤ比より高くなるように規定されたスタビライザ非作動時ギヤ比となるように制御され、操舵に対するヨーレートの低下が抑えられることになる。
以下、本発明を実施するための最良の形態として、本発明の一実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
<車両の全体構成>
i)スタビライザシステムの構成
図1に、請求可能発明の実施例である車両を模式的に示す。本車両には、スタビライザシステム10が搭載され、そのスタビライザシステム10は、前後左右の車輪12FL,12FR,12RL,12RRの前輪側と後輪側との各々に配設された1対のスタビライザ装置20とを備えている。それら1対のスタビライザ装置20の各々は、スタビライザバー22と、アクチュエータ24とを有している。なお、1対のスタビライザ装置20の各々は、略同様の構成であるため、説明の簡略化に配慮して、以下、前輪側のスタビライザ装置20を代表して詳しく説明する。
図2は、前輪側に配設されたスタビライザ装置20を車両上方から眺めた図である。スタビライザバー22は、1対のスタビライザバー部材30を有し、それら1対のスタビライザバー部材30がアクチュエータ24を介して接続された構成のものとされている。それら1対のスタビライザバー部材30の各々は、概して車幅方向に延びるトーションバー部32と、そのトーションバー部32の車幅方向外側の端部からそれと交差して概ね車両の前方に向かって延びるアーム部34とに区分することができる。各スタビライザバー部材30のトーションバー部32は、アーム部34に近い箇所において、車体に固定的に設けられた保持具36によって回転可能に保持され、互いに同軸的に配設されている。各トーションバー部32の車幅方向内側の端部は、後に詳しく説明するようにアクチュエータ24に接続されている。一方、アーム部34の車両前方側の端部は、ロアアーム38に連結されている。
スタビライザ装置20が有するアクチュエータ24は、図3に示すように、電磁モータ60(以下、単に「モータ60」という場合がある)と、そのモータ60の回転を減速して伝達する減速機62とを含んで構成されている。これらモータ60と減速機62とは、アクチュエータ24のハウジング64内に設けられている。そのハウジング64の一端部には、1対のスタビライザバー部材30の一方(図における左側のもの)のトーションバー部32の端部が固定的に接続されており、一方、1対のスタビライザバー部材30の他方(図における右側のもの)は、ハウジング64の他端部からそれの内部に延び入り、そのハウジング64に回転可能に保持された中空状のモータ軸68を貫通する状態で配設されるとともに、後に詳しく説明するように、減速機62と接続されている。さらに、1対のスタビライザバー部材30の他方は、それの軸方向の中間部において、ブシュ型軸受70を介してハウジング64に回転可能に保持されている。なお、ハウジング64内に、モータ60の回転角度を検出するためのモータ回転角センサ78が設けられており、アクチュエータ24の制御、つまり、スタビライザ装置20の制御に利用される。
減速機62は、波動発生器(ウェーブジェネレータ)80,フレキシブルギヤ(フレクスプライン)82およびリングギヤ(サーキュラスプライン)84を備え、ハーモニックギヤ機構(「ハーモニックドライブ(登録商標)機構」,「ストレインウェーブギヤリング機構」等と呼ばれることもある)として構成されている。波動発生器80は、楕円状カムと、それの外周に嵌められたボールベアリングとを含んで構成されるものであり、モータ軸68の一端部に固定されている。フレキシブルギヤ82は、周壁部が弾性変形可能なカップ形状をなすものとされており、周壁部の開口側の外周に複数の歯(本減速機62では、400歯)が形成されている。このフレキシブルギヤ82は、先に説明した1対のスタビライザバー部材30の他方(図において右側のもの)のトーションバー部32の端部に接続され、それによって支持されている。詳しく言えば、そのスタビライザバー部材30のトーションバー部32は、モータ軸68を貫通しており、それから延び出す部分の外周面において、当該減速機62の出力部としてのフレキシブルギヤ82の底部を貫通する状態でその底部とスプライン嵌合によって相対回転不能に接続されている。リングギヤ84は、概してリング状をなして内周に複数の歯(本減速機62においては、402歯)が形成されたものであり、ハウジング64に固定されている。フレキシブルギヤ82は、その周壁部が波動発生器80に外嵌して楕円状に弾性変形させられ、楕円の長軸方向に位置する2箇所においてリングギヤ84と噛合し、他の箇所では噛合しない状態とされている。このような構造により、波動発生器80が1回転(360度)すると、つまり、電磁モータ60のモータ軸68が1回転すると、フレキシブルギヤ82とリングギヤ84とが、2歯分だけ相対回転させられる。つまり、減速機62の減速比は、1/200とされている。
上述のような構成から、車両の旋回等によって、ロールモーメントが作用する場合、左右のスタビライザバー部材30を相対回転させる力、つまり、アクチュエータ24に対する外力が作用する。その場合、モータ60が発生させる力であるモータ力(モータ60が回転モータであることから、回転トルクと考えることができるため、回転トルクと呼ぶ場合がある)によって、アクチュエータ24がその外力に対抗する力を発生させているときには、それら2つのスタビライザバー部材30によって構成された1つのスタビライザバー22が捩じられることになる。この捩りにより生じる捩り反力は、ロールモーメントに対抗する力となる。つまり、スタビライザ装置20が、スタビライザバー22の捩り反力によってロール抑制力を発生させているのである。そして、モータ力によってアクチュエータ24の回転量、つまり、モータ60の回転角を変化させて、左右のスタビライザバー部材30の相対回転量を変化させることで、上記ロール抑制力が変化し、車体のロールをアクティブに抑制することが可能となる。
本スタビライザシステム10は、図1に示すように、スタビライザ電子制御ユニット90(以下、「スタビライザECU90」という場合がある)によって、アクチュエータ24の制御、詳しくは、アクチュエータ24のモータ60の作動の制御が行われる。スタビライザECU90は、CPU,ROM,RAM等を備えたコンピュータを主体として構成されたコントローラ92と、各アクチュエータ24が有するモータ60に対応する駆動回路としてのインバータ94とを有している。そのインバータ94は、コンバータ96を介してバッテリ98に接続されており、各アクチュエータ24のモータ60には、そのコンバータ96とバッテリ98とを含んで構成される電源から電力が供給される。なお、モータ60は定電圧駆動されることから、モータ60への供給電力は、供給電流を変更することによって変更され、モータ60の力は、その供給電流に応じた力となる。また、インバータ94は、起電力によって発電された電力をバッテリ98に回生可能な構造とされており、モータ60は、供給電力に依存したモータ力だけでなく、起電力に依存したモータ力を発生させる場合がある。つまり、インバータ94は、電源からの供給電流であるか、起電力によって生じる発電電流であるかに拘わらず、モータ60を流れる電流、つまり、モータ60の通電電流を調整して、モータ力を制御する構造とされている。
ちなみに、バッテリ98は、車両に搭載される他の電気装置等へ影響を与えることなく、1対のスタビライザ装置20への安定した電力供給,回生電力による充電が行われるように、メインバッテリ100とは別に設けられたサブバッテリである(以下の説明においては、「サブバッテリ98」という場合がある)。なお、そのサブバッテリ98の電力が低下した場合に鑑みて、メインバッテリ100からサブバッテリ98への充電が可能に構成されている。
図4に示すように、各アクチュエータ24のモータ60は、コイルがデルタ結線された三相ブラシレスDCモータであり、上述したようにインバータ94によって制御駆動される。そのインバータ94は、図に示すような一般的なものであり、high側(高電位側),low側(低電位側)のそれぞれに対応し、かつ、モータ60の3つの相であるU相,V相,W相のそれぞれに対応する6つのスイッチング素子HUS,HVS,HWS,LUS,LVS,LWSを備えている。インバータ94は、いわゆる120°通電矩形波駆動によってモータ60を駆動するのであり、インバータ94が有するスイッチング素子切換回路102によって、モータ60に設けられた3つのホール素子Hの検出信号により電気角が判断され、その電気角に基づいて6つのスイッチング素子の開閉が制御される。そして、そのスイッチング素子の制御は、PWM(Pulse Width Modulation)制御によるパルスオン時間とパルスオフ時間との比(デューティ比)を変更することによって行われるのであり、そのディーティ比の変更によりモータ60の通電電流が変更されるようになっている。
また、モータ60の3つの相の通電端子間、詳しくは、U相とV相との通電端子間,V相とW相との通電端子間の各々には、それぞれが、電流の供給を受けている場合にはOFF状態(開状態)とされ、例えば、電源から電流の供給を受けられないような場合にON状態(閉状態)とされることでそれらの通電端子間を短絡させることが可能な短絡リレー104,106が設けられている。
ii)ステアリングシステムの構成
本車両には、図1に示すように、ステアリングシステム110も搭載される。そのステアリングシステム110は、操作装置120と、転舵装置122と、ステアリングギヤ比変更装置としてのVGRSアクチュエータ124とを備えており、いわゆるVGRSシステムとされている。
操作装置120は、ステアリング操作部材としてのステアリングホイール130と、ステアリングコラム132(以下、単に「コラム132」と略する場合がある)とを含んで構成されている。コラム132は、一端部にステアリングホイール130が接続されたステアリングシャフト134と、ステアリングシャフト134を回転可能に保持するシャフトハウジングとしてのステアリングチューブ136(以下、単に「チューブ136」と略す場合がある)とを含んで構成されている。チューブ136がインストゥルメンツパネルのリインフォースメントに固定されることで、コラム132が車体に固定して設けられている。
転舵装置122は、ラックアンドピニオン式のものであり、操作装置10側からの回転が入力されるピニオン軸140の回転によって、転舵ロッド142が軸方向に移動するようにされている。その転舵ロッド142は、それの両端部が、ボールジョイント,タイロッド等を介して、左右の前輪12FR,FLの各々を保持するステアリングナックル144に連結されている。また、転舵装置122は、前輪12FR,FLの転舵に要する転舵力を助勢する助勢機構146を備えており、その助勢機構146が発生させるアシスト力によって、転舵ロッド142の軸方向の移動が助勢される構造とされている。なお、図示は省略するが、ピニオン軸140は、トーションバーを含んで構成されており、そのトーションバーの捻り量に基づいて操舵トルクが推定可能とされ、その推定された操舵トルクに基づいて、アシスト力が制御される。
VGRSアクチュエータ124は、ステアリングホイール130の回転に応じて回転するステアリングシャフト134の回転を、転舵装置122に伝達する機能を果たす装置である。図1に示すように、VGRSアクチュエータ124は、自身のハウジング160と入力軸162とが一体的に設けられており、入力軸162の回転に伴ってハウジング160も回転する構造のものとされている。その入力軸162は、ステアリングシャフト134に連結されている。また、VGRSアクチュエータ124は出力軸166を備えており、出力軸166のハウジング160から延び出す一端部は、インタミディエイトシャフト168を介して、転舵装置122の入力軸であるピニオン軸140に連結されている。
図5に、VGRSアクチュエータ124を車両左側から眺めた側面断面図を示す。VGRSアクチュエータ124は、先に述べたハウジング160,ハウジング160に対して回転不能に設けられた入力軸162,ハウジング160に対して回転可能に設けられた出力軸166と、入力軸162の回転を回転比が変更可能な状態で出力軸166に伝達するハーモニックギヤ機構180と、そのハーモニックギヤ機構180の駆動源としてのVGRSモータ182とを含んで構成されている。ハウジング160は、概して段付の筒状に形成されたものであり、車両後方側に突出する部分に入力軸162が嵌入されることで、ハウジング160と入力軸162とは相対回転不能とされている。ハウジング160の車両前方側には、出力軸166がブシュ186を介して回転可能に保持されており、その出力軸166の車両後方側がフランジ部188とされている。また、出力軸166は、車両前方側のハウジング160から延出する部分の外周にセレーションが形成されており、このセレーションが形成された部分において、インタミディエイトシャフト168に連結され、転舵装置122に回転が出力される。
図6に、ハーモニックギヤ機構180の分解図を示し、この図をも参照しつつ、ハーモニックギヤ機構180の構成および機能を説明する。ハーモニックギヤ機構180は、第1リングギヤとしてのステータギヤ200と、第2リングギヤとしてのドリブンギヤ202と、それらに噛合するフレキシブルギヤ204と、フレキシブルギヤ204を周回可能に支持するウェーブジェネレータ206とを含んで構成されている。ステータギヤ200は、内歯が形成されたリングギヤであり、ハウジング160の内周面の車両前方側に固定されて設けられ、ハウジング160と相対回転不能とされている。ドリブンギヤ202は、内歯(ステータギヤの歯数よりやや少ない歯数、例えば2つ少ない歯数)が形成されたリングギヤであり、出力軸166のフランジ部188の外周部に固定されて設けられ、出力軸166と相対回転不能とされている。フレキシブルギヤ204は、外歯(ドリブンギヤ202と同じ歯数)が形成された弾性変形可能な環状のものである。ウェーブジェネレータ206は、楕円カム板208と、楕円カム板208の外周に嵌められたベアリング210とを含んで構成される。楕円カム板208は、自身の中心に軸穴が設けられており、その軸穴にVGRSモータ182のモータ軸220の車両前方部を嵌入させた状態で、モータ軸550と相対回転不能とされている。ベアリング210の外周には、フレキシブルギヤ204が装着されている。そのフレキシブルギヤ204は、ウェーブジェネレータ206によって楕円状に変形させられており、楕円の長軸部分における2箇所で、ステータギヤ200,ドリブンギヤ202と噛合し、他の部分では噛合しない状態とされている。
モータ軸220のステータギヤ200に対する回転を禁止した状態で、ステータギヤ200を回転させた場合、ステータギヤ200とともにウェーブジェネレータ206も回転し、それらの間に位置するフレキシブルギヤ204もそれらと一体的に回転する。それにより、フレキシブルギヤ204と噛合するドリブンギヤ202も、ステータギヤ200と同方向に回転するのであり、ドリブンギヤ202は、ステータギヤ200の回転に対して1:1の比で回転するのである。なお、この比は、ステータギヤ200の回転量に対するドリブンギヤ202の回転量の比である回転比であって、ウェーブジェネレータ206をステータギヤ200に対して固定した状態における固定的な比である固定回転比(=1)である。
また、モータ軸220を回転させてウェーブジェネレータ206を回転させる場合を考える。まず、説明を単純化するために、ステータギヤ200を固定させて考えれば、ウェーブジェネレータ206を回転させた場合、フレキシブルギヤ204は弾性変形し、噛合位置を移動させつつ回転する。ステータギヤ200とドリブンギヤ202との歯数が異なるため、ステータギヤ200とドリブンギヤ202との間には、ウェーブジェネレータ206の1回転あたり2歯分の回転位相差が生じることになる。ステータギヤ200の回転方向とウェーブジェネレータ206との回転方向が同じであれば、ドリブンギヤ202は、上記固定回転比以下に減速される。逆に、ステータギヤ200の回転方向とウェーブジェネレータ206との回転方向が反対であれば、ドリブンギヤ202は、上記固定回転比以上に増速される。なお、増速,減速の程度は、ウェーブジェネレータ206の回転速度に依存するため、VGRSモータ182の回転速度を変更することによって、ステータギヤ200の回転量に対するドリブンギヤ202の回転量の比である回転比を任意に変更することが可能である。このようにして、ハーモニックギヤ機構180は、入力軸162の回転を、回転比を変更可能に出力軸166に伝達するのである。上記回転比は、ステアリングホイール130の操作角δに対する車輪の転舵角φの比であるステアリングギヤ比φ/δでもあることから、VGRSアクチュエータ124は、上記回転比を変更することで、ステアリングギヤ比φ/δを変更するものとされている。
本ステアリングシステム110は、図1に示すように、ステアリング電子制御ユニット250(以下、「ステアリングECU250」という場合がある)によって、転舵装置122が有する助勢機構146の制御、および、VGRSアクチュエータ124の制御、詳しくは、VGRSモータ182の作動の制御が行われる。ステアリングECU186は、CPU,ROM,RAM等を備えたコンピュータを主体として構成されたコントローラ252と、VGRSモータ182を駆動するインバータ254とを有している。そのインバータ254は、図4に示したアクチュエータ24のインバータ94と同じ構成のものである。なお、インバータ264は、先に述べたメインバッテリ100にコンバータ256を介して接続されており、そのメインバッテリ100からVGRSモータ182に電力(電流)が供給される。ちなみに、ステアリングECU250は、前述したスタビライザECU90と接続されており、相互に通信可能となっている。
iii)車両に搭載されるセンサ
車両には、イグニッションスイッチ[I/G]280,車両走行速度(以下、「車速」と略す場合がある)を検出するための車速センサ[v]282,ステアリングホイール190の中立位置を基準とした操作角を検出するための操作角センサ[δ]284,ステアリングホイール20が中立状態にある場合のVGRSモータ182のモータ軸220の位置である中立位置からの回転角を検出可能なモータ回転角センサ[θV]286等が設けられており、それらはステアリングECU250のコンピュータに接続されている。スタビライザECU100は、それらのスイッチ,センサからの信号に基づいて、VGRSアクチュエータ124の制御を行うものとされている。ちなみに、[ ]内の文字は、上記スイッチ,センサ等を図面において表わす場合に用いる符号である。また、ステアリングECU250のコントローラ252が備えるROMには、後に説明するところのVGRSアクチュエータ124の制御に関するプログラム,各種のデータ等が記憶されている。
<車両における制御>
i)スタビライザシステムの制御
スタビライザシステム10では、1対のスタビライザ装置20の各々を独立して制御することが可能となっており、それらスタビライザ装置20の各々が、車両の旋回に起因する車体のロールを効果的に抑制するためのロール抑制制御が実行されることによって制御される。詳しい説明は省略するが、ロール抑制制御は、車体のロールを効果的に抑制すべく、車体が受けるロールモーメントに応じた大きさのロール抑制力を発生させる制御である。先にも述べたように、ロール抑制力は、モータ60のモータ回転角を変更することによって変化させることが可能であるため、モータ60の実際のモータ回転角である実モータ回転角が、目標モータ回転角となるようにすることで、目標となるロール抑制力を発生させる。なお、車両旋回時の回頭性を向上させるために、後輪側のロール剛性が上昇させられる量が、前輪側のロール剛性が上昇させられる量に比較して大きくされている。
例えば、スタビライザシステム10において、制御に用いられるセンサ,スタビライザECU90内の故障や異常、アクチュエータ24の故障等、何らかの失陥が生じた場合には、1対のスタビライザ装置20のうちの少なくとも一方のアクチュエータ24を駆動できない事態や、あるいは、1対のスタビライザ装置20を適切に制御できない事態となる。そのような場合には、1対のスタビライザ装置20の制御が禁止、つまり、アクチュエータ24が駆動されないようになっている。具体的には、コンバータ96によって、サブバッテリ98とインバータ94とが電気的に切断された状態が実現されるとともに、先に述べた短絡リレー104,106がON状態とされ、モータ60の通電端子間が短絡させられるのである。そのような場合には、従来の単一のスタビライザバーで構成されるスタビライザ装置と、ほぼ同等の機能となる。ちなみに、1対のスタビライザ装置20の制御が禁止されている間に、メインバッテリ100からサブバッテリ98の充電が行われるようになっている。
また、例えば、スタビライザシステム10は、比較的大きな電力を必要とするため、サブバッテリ98の電圧が降下して、安定した電流供給ができない事態が生じる虞がある。そこで、スタビライザシステム10では、サブバッテリ98の端子電圧に基づいて、サブバッテリ98の充電量(残存電気エネルギ量)が閾量より低くなったことが推定される場合にも、1対のスタビライザ装置20のアクチュエータ24が駆動されないようになっている。
ii)ステアリングシステムの制御
ステアリングECU250は、ステアリングホイール130の操作角に応じた転舵角となるように、VGRSアクチュエータ124のVGRSモータ182を制御するとともに、ピニオン軸140の有するトーションバーの捻り量に基づいて推定された操舵トルクに応じたアシスト力を発揮するように、助勢機構146を制御する。VGRSアクチュエータ124の制御について詳しく言えば、ステアリングホイール130の操作角に基づいて目標となる車輪12の転舵角が決定され、実際の転舵角が目標転舵角となるようにVGRSアクチュエータ124を制御する。
(a)標準制御
この制御は、上述したように、操作角センサ28の検出信号に基づいて取得されたステアリングホイール130の操作角δに基づいて目標転舵角φ*が決定され、その目標転舵角φ*となるように車輪12を転舵させるものである。その上記目標転舵角φ*は、車速vに応じて変更される。つまり、通常は、車速vに応じたステータギヤ120に対するドリブンギヤ122の回転比、つまり、ステアリングホイール130の操作角δに対する車輪の転舵角φの比であるステアリングギヤ比r(以下、単に「ギヤ比r」という場合がある)が、図7の実線に示す標準ギヤ比rB(v)となるように、VGRSアクチュエータ124を制御する標準制御が実行される。ちなみに、図に示す破線は、ウェーブジェネレータ206のステータギヤ200に対する回転を禁止した状態におけるギヤ比である固定ギヤ比r0(=1)である。この図7の関係より、車速センサ282の検出信号に基づいて取得された車速vに対して目標となるギヤ比rが決定され、そのギヤ比に基づいて目標転舵角φ*が決定される。つまり、目標転舵角φ*は、操作角δと標準ギヤ比rB(v)とに基づいて決定されるのであり、次式によって求めることができる。
φ*=δ・r(v)
また、車輪12の転舵角は、先に述べたハーモニックギヤ機構80の構成から解るように、ステアリングホイール130と連結されたステータギヤ200の回転量と、VGRSモータ182のモータ軸220に連結されるウェーブジェネレータ206の回転量とによって決まるドリブンギヤ202の回転量に対応している。つまり、車輪12の転舵角は、ステアリングホイール130の操作角とVGRSモータ182の回転角とによって決まるのであり、本ステアリングシステムでは、入力されたステアリングホイール130の操作角δに対して、VGRSモータ182の回転角を制御することで、車輪12の転舵角を制御するようにされている。つまり、この制御では、まず、目標転舵角φ*に対応した目標モータ回転角θV *が決定されるのである。その目標モータ回転角θV *は、目標転舵角φ*のうちモータ軸220,ウェーブジェネレータ206を固定した状態でステアリングホイール130から車輪12に伝達される分を差し引いた角度に対応するのであり、標準ギヤ比rB(v)に応じたドリブンギヤ202の回転角から、固定ギヤ比r0(=1)に応じたドリブンギヤ202の回転角を差し引いた角度となる。つまり、目標モータ回転角θ*は、次式によって演算される。
θV *=δ・{rB(v)−r0
次いで、モータ回転角センサ286の検出信号に基づいて実際のモータ回転角θVが取得され、目標モータ回転角θ*に対する実モータ回転角θVの偏差であるモータ回転角偏差ΔθV(=θV *−θV)が認定され、そのモータ回転角偏差ΔθVが0となるように、VGRSモータ182への目標供給電流I*が決定されるのである。
VGRSモータ182への目標供給電流I*は、ECU250において、上記モータ転舵角偏差Δθに基づき、次式のPD制御則に従って決定される。
*=KP・ΔθV+KD・ΔθV
ここで、第1項,第2項は、それぞれ、目標供給電流I*における比例項成分,微分項成分を、KP,KDは、それぞれ、比例ゲイン,微分ゲインを意味する。
ちなみに、上記目標供給電流I*は、それの符号によりVGRSモータ182のモータ力発生方向を表すものとなっており、VGRSモータ182の駆動制御にあたっては、目標供給電流I*に基づいて、VGRSモータ182を駆動するためのデューティ比およびモータ力発生方向が決定される。そして、それらデューティ比およびモータ力発生方向についての指令がインバータ254に発令され、インバータ254によって、その指令に基づいたVGRSモータ182の駆動制御がなされる。
なお、上記目標転舵角は、図7から解るように、車両の走行速度が高くなるにつれてギヤ比が小さくなるように設定されている。つまり、車両の走行速度が高速である場合には、ステアリングホイール130の操作角に対する車輪12の転舵角が小さくされ、車両が速く走行している場合において、車両操作の安定性を向上させることができる。逆に、車両の走行速度が比較的低速である場合は、ステアリングホイール130の操作角に対する車輪12の転舵角が大きくされ、ステアリング操作の容易性を向上させることが可能となる。
(b)スタビライザ非作動時制御
先に述べたように、スタビライザシステム10が制御されない場合、つまり、1対のスタビライザ装置20が作動していない場合には、それらが作動している場合に比較して、車両のロール剛性が大きく低下する。つまり、運転者の操舵フィーリングが急変してしまうことになる。また、先に述べたように、本スタビライザシステム10においては、1対のスタビライザ装置20によって、後輪側のロール剛性の上昇量が前輪側のロール剛性の上昇分より大きくなるようにされているため、それら1対のスタビライザ装置20がともに作動していない場合、アンダステアが強くなる。つまり、運転者の操舵に対して車両が向きを変える時間、つまり、操舵に対するヨーレート(ヨー角速度)が低下してしまうのである。図8に、車速がある車速v0である場合における操作角δとヨーレートωとの関係を示す。1対のスタビライザ装置20およびVGRSアクチュエータ124がともに正常に作動している場合のものを、実線で示し、1対のスタビライザ装置20がともに作動していない場合のものを、一点鎖線で示しており、この図からも、ヨーレートが低下していることが分かる。ちなみに、正常に作動している場合のものが、途中で屈折しているのは、スタビライザ装置20のアクチュエータ24の出力、つまり、モータ60の出力が、制限されることに起因するものである。
本ステアリングシステム110では、その1対のスタビライザ装置20がともに作動していない場合のヨーレートの低下を補償すべく、前述の標準制御に代えて、VGRSアクチュエータ124を制御するスタビライザ非作動時制御が実行されるようになっている。そのスタビライザ非作動時制御は、ステアリングギヤ比が、標準制御における標準ギヤ比より高くなるように規定されたスタビライザ非作動時ギヤ比となるように、つまり、操作角に対する転舵角が標準制御より大きくなるように、VGRSアクチュエータ124のVGRSモータ182を制御するものである。詳しく言えば、標準ギヤ比rB(v)にギヤ比上昇係数Kを乗じたスタビライザ非作動時ギヤ比rE(v)に基づいて、目標モータ回転角θV *が決定されるのである。
例えば、1対のスタビライザ装置20がともに作動せず、VGRSアクチュエータ124によってステアリングギヤ比が標準ギヤ比rB(v)に対して10%,20%,30%高めたギヤ比となるように制御した場合の各々の操作角δに対するヨーレートを、図8に点線で示す。スタビライザ非作動時制御は、1対のスタビライザ装置20およびVGRSアクチュエータ124がともに正常に作動している場合におけるヨーレート(図8における実線)となるように、ステアリングギヤ比rを変更する。具体的には、例えば、車速がv0である場合のものを図9に示すように、操作角δに対してギヤ比上昇係数Kが定められている。つまり、操作角δおよび車速vに基づいて、ギヤ比上昇係数Kが認定され、そのギヤ比上昇係数Kと操作角δに基づいて、目標モータ回転角θV *が、次式に従って決定されるのである。
θV *=δ・{rE(v)−r0
=δ・{K・rB(v)−r0
そのように、目標モータ回転角θV *が決定された後、その目標モータ回転角θV *に基づいて、標準制御と同様に目標供給電流I*が決定され、インバータ254に指令が送られる。
<ステアリングシステムの制御プログラム>
上述したVGRSアクチュエータ124の制御は、図10にフローチャートを示すVGRS制御プログラムが、イグニッションスイッチ280がON状態とされている間、短い時間間隔(例えば、数msec〜数十msec)をおいてステアリングECU250により繰り返し実行されることによって行われる。以下に、その制御のフローを、図に示すフローチャートを参照しつつ、簡単に説明する。
VGRS制御プログラムにおいては、まず、ステップ1(以下、「S1」と略す、他のステップも同様である)において、車速vとステアリングホイール130の操作角δとが取得される。次いで、S2において、スタビライザECU90から1対のスタビライザ装置20が作動していない旨の情報を受信したか否かが判定される。スタビライザ作動時は、S3以下の処理が行われることで前述の標準制御が実行され、スタビライザ非作動時は、S4以下の処理が行われることで前述のスタビライザ非作動時制御が実行される。
S3以下の標準制御においては、目標モータ回転角θV *は、操作角δと、車速vに応じた標準ギヤ比rB(v)とに基づいて、式θV *=δ・{rB(v)−r0}に従って決定される。なお、コントローラ252には、車速vをパラメータとする標準ギヤ比rB(v)に関するマップデータ(図7)が格納されており、そのマップデータを参照することで、目標となるステアリングギヤ比が認定される。
一方、スタビライザ非作動時制御においては、まず、S4において、ギヤ比上昇係数Kが認定される。具体的には、コントローラ252には、車速vと操作角δとをパラメータとするギヤ比上昇係数Kに関するマップデータ(例えば、図9)が格納されており、そのマップデータを参照することで、ギヤ比上昇係数Kが認定される。次いで、S5において、目標モータ回転角θV *が、操作角δと、車速vに応じた標準ギヤ比rB(v)と、ギヤ比上昇係数Kとに基づいて、式θV *=δ・{K・rB(v)−r0}に従って決定される。
続いて、S6において、VGRSモータ182のモータ回転角センサ286により、実モータ回転角θVが取得され、S7において、VGRSモータ182のモータ回転角偏差ΔθV(=θV *−θV)が認定される。そして、S8において、そのモータ回転角偏差ΔθVに基づき、前述のPD制御則に従う式に従って、VGRSモータ182の目標供給電流I*が決定される。次いで、S9において、その目標供給電流I*に基づいて、VGRSモータ182の制御を行うためのデューティ比が決定され、そのデューティ比に基づいた指令がインバータ254に送信される。この処理により、VGRSアクチュエータ124のVGRSモータ182の作動が制御されることで、ステアリングギヤ比が制御されることになる。
請求可能発明の実施例である車両の全体構成を示す模式図である。 図1に示すスタビライザ装置を車両上方からの視点において示す模式図である。 図2のスタビライザ装置が有するアクチュエータの断面図である。 図3の電磁モータを駆動するインバータの回路図である。 図1に示すステアリングギヤ比変更装置としてのVGRSアクチュエータの断面図である。 図2に示すハーモニックギヤ機構の分解図である。 車両の走行速度と標準制御におけるステアリングギヤ比である標準ギヤ比との関係を示す図である。 ステアリング操作部材の操舵量とヨーレートとの関係を示す図である。 ステアリング操作部材の操舵量とスタビライザ非作動時制御に用いられるギヤ比上昇係数との関係を示す図である。 図1に示すステアリング電子制御ユニットによって実行されるVGRS制御プログラムを表すフローチャートである。
符号の説明
10:スタビライザシステム 12:車輪 20:スタビライザ装置 22:スタビライザバー 24:アクチュエータ 60:電磁モータ 62:減速機 90:スタビライザ電子制御ユニット[スタビライザECU] 98:サブバッテリ 100:メインバッテリ 104,106:短絡リレー 110:ステアリングシステム 120:操作装置 122:転舵装置 124:VGRSアクチュエータ(ステアリングギヤ比変更装置) 130:ステアリングホイール(操作部材) 138:操作角センサ[δ] 146:助勢機構 160:ハウジング 180:ハーモニックギヤ機構 182:VGRSモータ 250:ステアリング電子制御ユニット(制御装置)[ステアリングECU] 282:車速センサ[v] 284:操作角センサ[δ] 286:モータ回転角センサ[θV
δ:操作角(操舵量) φ:転舵角(転舵量) φ*:目標転舵角 r:ステアリングギヤ比(=φ/δ) rB(v):標準ギヤ比 r0:固定ギヤ比 θV *:目標モータ回転角 θV:実モータ回転角 ΔθV:モータ回転角偏差 I*:目標供給電流 rE(v):スタビライザ非作動時ギヤ比 K:ギヤ比上昇係数

Claims (2)

  1. 自身の捩り反力に依拠するロール抑制力を発生させるスタビライザバーと、そのスタビライザバーが発生させるロール抑制力を変更可能なアクチュエータとを有するスタビライザ装置と、
    運転者によって操作されるステアリング操作部材の操舵量に対する車輪の転舵量の比であるステアリングギヤ比を変更するステアリングギヤ比変更装置と、
    ある依拠パラメータに基づいて前記ステアリングギヤ比変更装置を制御することで前記ステアリングギヤ比を制御する制御装置であって、(A)前記ステアリングギヤ比が標準ギヤ比となるように、前記ステアリングギヤ比変更装置を制御する標準制御と、(B)前記スタビライザ装置が有する前記アクチュエータが駆動されない時に、前記ステアリングギヤ比が前記標準ギヤ比とは異なるように規定されたスタビライザ非作動時ギヤ比となるように、前記ステアリングギヤ比変更装置を制御するスタビライザ非作動時制御とを選択的に実行する制御装置と
    を備えた車両。
  2. 当該車両が、
    前輪および後輪に対応して設けられ、それぞれが、前記スタビライザ装置である1対のスタビライザ装置を備え、
    前記スタビライザ非作動時制御が、
    前記1対のスタビライザ装置の各々が有する前記アクチュエータがともに駆動されない時に、前記ステアリングギヤ比が、前記標準ギヤ比より高くなるように規定された前記スタビライザ非作動時ギヤ比となるように、前記ステアリングギヤ比変更装置を制御するように構成された請求項1に記載の車両。
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