JP2010094776A - 中ぐり加工工具および中ぐり加工方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】工具本体30の回転軸線Ptのまわりに180度の位相差を有する2つの位置に刃具保持部50,52を設け、刃具保持部52を刃具保持部50より先端側の端28に近い位置に設けて、同じ構成の刃先位置調整装置108,128が保持する同じ形状,寸法のチップ88,90の刃先106より刃先122を端28に近い位置に位置させ、刃先122の回転軸線Ptからの距離を刃先106より小さく調整する。チップ88,90は回転軸線Ptに平行な方向における切削と加工代とを分担し、各切削抵抗の方向が逆であり、下穴18の周壁の全体としての変位,弾性変形等が抑制される。加工終了後、工具を刃先106から刃先122に向かう向きに移動させて刃先106,122を加工後の内周面から離間させ、内周面に接触させることなく抜け出させる。
【選択図】図5
Description
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、被加工物の構造を問わず、下穴の内周面を精度良く加工することが可能な中ぐり加工工具の提供を課題とする。
上記工作機械の工具保持部は、回転駆動される主軸であることが多いが、回転駆動されない工具保持部に保持させることも可能である。被加工物が回転させ易いものである場合には、被加工物を回転させてもよいのである。
その工具本体の前記第2端側の端部である先端部の、前記中心軸線のまわりに180度の位相差を有する2つの位置に設けられ、それぞれ切れ刃を有する第1刃具および第2刃具と
を含み、下穴を有する被加工物との前記中心軸線のまわりの相対回転により、前記下穴の内周面の切削加工を行う中ぐり加工工具であって、
前記第1刃具の切れ刃の前記中心軸線から最も遠い部分である第1刃先の、前記中心軸線からの距離である第1距離より、前記第2刃具の刃先である第2刃先の前記中心軸線からの距離である第2距離の方が小さくされ、かつ、前記中心軸線に平行な方向に関して、前記第2刃先の方が前記第1刃先より前記第2端に近くされた中ぐり加工工具。
(2)前記第1刃先と前記第2刃先との、前記中心軸線に平行な方向の位置の差である軸方向位置差が1mm以下である(1)項に記載の中ぐり加工工具。
中ぐり加工工具の使用時に、第1刃具と第2刃具との双方が確実に切削を行うようにすれば、本発明の効果が得られるが、両刃具が均等に切削を行うようにすれば、本発明の効果を一層良好に享受できる。そして、軸方向位置差を、中ぐり加工工具と被加工物との1相対回転当たりの送り量以上とすれば、第1刃具と第2刃具とが確実にそれぞれの分担分の切削を行うようにでき、両刃具に均等に切削を行わせることが容易になることは明らかである。しかし、第1刃具と第2刃具とが確実にそれぞれの分担分の切削を行うことが保証される範囲で、軸方向位置差をできる限り小さくすることが望ましい。切削加工は第1刃具と第2刃具とが共に被加工穴から抜け出るまで行われることが多いが、第2刃具が被加工穴を抜けた後は、第1刃具のみで切削が行われることとなり、切削抵抗の半径方向成分のアンバランスが生じるため、その状態での加工は可及的に少ないことが望ましいからである。そして、後に実施例の項において具体的に説明するように、軸方向位置差を1相対回転当たりの送り量より小さくしても、第1刃具と第2刃具とが確実にそれぞれの分担分の切削を行うことを保証し得る場合がある。ただし、この軸方向位置差を1相対回転当たりの送り量より小さくし得る範囲は、第1刃具および第2刃具の切れ刃の曲率半径と、第1刃具および第2刃具の切込みの大きさとによって変わり、一律には決まらない。
仕上げ切削加工に使用される中ぐり加工工具に限定すれば、仕上げ切削加工時の1相対回転当たりの送り量が1mm以上とされることはまずないため、軸方向位置差を1mm以下の範囲から選定し得、0.6mm以下、あるいは0.4mm以下の範囲から選定し得ることが多い。
(3)第1端から第2端に向かって延びる長手形状の部材であって、長手方向に平行な中心軸線を有し、前記第1端側に、工作機械の工具保持部により保持される被保持部を有する工具本体と、
その工具本体の前記第2端側の端部である先端部に設けられ、それぞれ切れ刃を有する第1刃具および第2刃具と
を含み、下穴を有する被加工物との前記中心軸線まわりの相対回転により、前記下穴の内周面の切削加工を行う中ぐり加工工具であって、
前記工具本体の前記先端部の、前記中心軸線のまわりに互いに180度の位相差を有する2つの部分にそれぞれ設けられた第1刃具保持部および第2刃具保持部と、
それぞれ前記第1刃具および前記第2刃具を保持して、それぞれ前記第1刃具保持部および前記第2刃具保持部に保持される第1刃先位置調整装置および第2刃先位置調整装置と
を含み、前記第1刃具の切れ刃の前記中心軸線から最も遠い部分である第1刃先よりも、前記第2刃具の切れ刃の前記中心軸線から最も遠い部分である第2刃先の方が前記第2端の近くに位置させられ、かつ、前記第1刃先位置調整装置および前記第2刃先位置調整装置が、前記第1刃先の前記中心軸線からの距離である第1距離より、前記第2刃先前記中心軸線からの距離である第2距離の方が小さい状態に調整可能とされた中ぐり加工工具。
前記(1)項に係る中ぐり加工工具は、刃具が工具本体に一体的に固着されたもののことであると狭義に解釈することもできるが、第1,第2刃先の位置調整が行われた状態の本項の中ぐり加工工具をも包含すると広義に解釈することもできる。
本項に記載の中ぐり加工工具によれば、(1)項に記載の中ぐり加工工具と同様の作用,効果が得られる上、第1,第2刃先はそれぞれ、刃先位置調整装置による位置の調整により、中心軸線からの距離が所定の大きさとなる位置に位置させられ得るため、刃先が摩耗しても、調整により再び所定の位置に位置させることができる。
(4)前記第1刃具と前記第2刃具、および前記第1刃先位置調整装置と前記第2刃先位置調整とが互いに同じものであり、前記第2工具保持部が前記第1工具保持部より前記第2端に近い位置に設けられることにより、前記第2刃先が前記第1刃先より前記第2端の近くに位置させられた(3)項に記載の中ぐり加工工具。
本項の中ぐり加工工具においては、第1刃具と前記第2刃具、および第1刃先位置調整装置と第2刃先位置調整装置とが互いに同じものとされるため、第1,第2刃具は、第1,第2刃先位置調整装置がそれぞれ保持される第1,第2刃具保持部の位置の違いにより、第2刃具が第1刃具より第2端の近くに位置させられる。第1刃先と第2刃先との中心軸線に平行な方向の位置を互いに異ならせつつ、同じ構成の刃具および刃先位置調整装置を用いることができ、中ぐり加工工具を安価に構成することができる。
(5)前記第1刃先と前記第2刃先との、前記中心軸線に平行な方向の位置の差である軸方向位置差が1mm以下である(3)項または(4)項に記載の中ぐり加工工具。
本項に記載の中ぐり加工工具は、(2)項に記載の中ぐり加工工具と同様に説明される。
(6)前記第1刃具および前記第2刃具が、それぞれ第1刃具保持部材および第2刃具保持部材のチップ取付座に着脱可能に取り付けられる第1切削チップおよび第2切削チップであり、それら第1刃具保持部材と第2刃具保持部材、第1チップ取付座と第2チップ取付座、第1切削チップと第2切削チップとが、互いに同一の形状および寸法を有する(3)項または(5)項に記載の中ぐり加工工具。
前記刃先位置調整装置は、刃具保持部材に設けられて刃先位置を調整し、刃具保持部材,チップ取付座が互いに同一の形状,寸法を有するものとされることにより、第1,第2刃先位置調整装置は互いに同じものされる。
(7)前記第1刃具保持部と前記第2刃具保持部とが、それぞれ前記工具本体に、前記中心軸線と直交する方向に延びる状態で設けられた第1保持穴および第2保持穴を含み、前記第1刃具を保持する第1刃具保持部材と前記第2刃具を保持する第2刃具保持部材とがそれぞれ前記第1保持穴および前記第2保持穴に相対回転不能かつ摺動可能に嵌合される第1軸部および第2軸部を含み、前記第1刃先位置調整装置および前記第2刃先位置調整装置が、それぞれ第1,第2軸部の前記第1,第2保持穴への嵌合深さを調節することにより前記第1,第2刃先の位置を調整するものである(3)項ないし(6)項のいずれかに記載の中ぐり加工工具。
(8)前記第1保持穴および前記第2保持穴が、それぞれ前記工具本体に取り付けられた第1スリーブおよび第2スリーブに形成された(7)項に記載の中ぐり工具。
(10)(3)項ないし(8)項のいずれかに記載の中ぐり加工工具を使用して、被加工物の下穴の内周面を切削加工する方法であって、
前記第1刃先の前記中心軸線からの距離を、前記下穴の半径よりΔr大きい距離に調整するとともに、前記第2刃先の前記中心軸線からの距離を、前記下穴の半径よりΔr/2大きい距離に調整する刃先位置調整工程と、
その刃先位置が調整された中ぐり加工工具の中心軸線と前記下穴の中心軸線とを一致させた状態で、中ぐり加工工具と前記被加工物とを中心軸線のまわりに相対回転させつつ、中ぐり加工工具を前記第2端側から前記下穴内に進入させ、その下穴の内周面を切削加工する切削工程と、
その切削工程の終了後に、前記中ぐり加工工具と前記下穴とを、前記第1刃先から前記第2刃先に向かう向きに、第1刃先も第2刃先も切削加工後の穴の内周面に接触しなくなるまで相対移動させる切込解除工程と、
その切込解除工程の後に、前記中ぐり加工工具と前記被加工物とを前記中心軸線に平行な方向に相対移動させて、中ぐり工具を切削加工後の穴から抜け出させる戻し工程と
を含むことを特徴とする中ぐり加工方法。
本項に記載の方法によれば、(3)項ないし(8)項にそれぞれ記載の中ぐり加工工具により得られる効果が得られる。特に、第1刃具と第2刃具との各加工代が同じ(Δr/2)であり、加工時に生じる切削抵抗が相殺されてバランスが良く、被加工部位の全体としての変位および弾性変形が特に減少し、加工が精度良く行われる。その上、第1,第2刃具は180度の位相差を有する2つの位置にそれぞれ設けられているが、各刃先の中心軸線からの距離が異ならされているため、その差分、中ぐり加工工具と下穴とを中心軸線と直交する方向に相対移動させて、第1,第2刃先のいずれも、加工後の穴の内周面に接触しないようにすることができる。刃具を刃先が穴の内周面に接触しない位置へ退避させるためのリトラクト機構が不要であり、容易にかつ安価に、穴の内周面を疵付けることなく、中ぐり加工工具を下穴から抜け出させることができる。
(11)前記下穴としてエンジンのシリンダボアの下穴を切削加工する(10)項に記載の中ぐり加工方法。
シリンダボアが形成されるシリンダブロックは、鋳鉄,鋳鋼等鉄を主体とする材料から成るものでもよいが、比較的剛性の低いアルミニウム合金製(シリンダボアの内周面は鋳鉄等別の材料で形成されてもよい)である場合に本発明が特に有効である。
シリンダボアは、形状精度となる真円度および円筒度等について特に高い加工精度が要求されるが、本発明によれば、その要求を満たすことが容易となる。
Claims (7)
- 第1端から第2端に向かって延びる長手形状の部材であって、長手方向に平行な中心軸線を有し、前記第1端側に、工作機械の工具保持部により保持される被保持部を有する工具本体と、
その工具本体の前記第2端側の端部である先端部の、前記中心軸線のまわりに180度の位相差を有する2つの位置に設けられ、それぞれ切れ刃を有する第1刃具および第2刃具と
を含み、下穴を有する被加工物との前記中心軸線のまわりの相対回転により、前記下穴の内周面の切削加工を行う中ぐり加工工具であって、
前記第1刃具の切れ刃の前記中心軸線から最も遠い部分である第1刃先の、前記中心軸線からの距離である第1距離より、前記第2刃具の刃先である第2刃先の前記中心軸線からの距離である第2距離の方が小さくされ、かつ、前記中心軸線に平行な方向に関して、前記第2刃先の方が前記第1刃先より前記第2端に近くされた中ぐり加工工具。 - 第1端から第2端に向かって延びる長手形状の部材であって、長手方向に平行な中心軸線を有し、前記第1端側に、工作機械の工具保持部により保持される被保持部を有する工具本体と、
その工具本体の前記第2端側の端部である先端部に設けられ、互いに同じ構成を有し、それぞれ切れ刃を有する第1刃具および第2刃具と
を含み、下穴を有する被加工物との前記中心軸線まわりの相対回転により、前記下穴の内周面の切削加工を行う中ぐり加工工具であって、
前記工具本体の前記先端部に設けられた第1刃具保持部と、
その第1刃具保持部との間に、前記中心軸線のまわりに180度の位相差を有し、かつ、前記第1刃具保持部より前記第2端に近い位置に設けられた第2刃具保持部と、
互いに同じ構成を有し、それぞれ前記第1刃具および前記第2刃具を保持して、それぞれ前記第1刃具保持部および前記第2刃具保持部に保持される第1刃先位置調整装置および第2刃先位置調整装置と
を含み、それら第1刃先位置調整装置および第2刃先位置調整装置が、前記第1刃具および前記第2刃具の位置を、第1刃具の切れ刃の前記中心軸線から最も遠い部分である第1刃先の、前記中心軸線からの距離である第1距離より、前記第2刃具の刃先である第2刃先の前記中心軸線からの距離である第2距離の方が小さい状態に調整可能とされた中ぐり加工工具。 - 前記第1刃先と前記第2刃先との、前記中心軸線に平行な方向の位置の差である軸方向位置差が1mm以下である請求項2に記載の中ぐり加工工具。
- 前記第1刃具および前記第2刃具が、それぞれ第1刃具保持部材および第2刃具保持部材のチップ取付座に着脱可能に取り付けられる第1切削チップおよび第2切削チップであり、それら第1刃具保持部材と第2刃具保持部材、第1チップ取付座と第2チップ取付座、第1切削チップと第2切削チップとが、互いに同一の形状および寸法を有する請求項2または3に記載の中ぐり加工工具。
- 前記第1刃具保持部と前記第2刃具保持部とが、それぞれ前記工具本体に、前記中心軸線と直交する方向に延びる状態で設けられた第1保持穴および第2保持穴を含み、前記第1刃具を保持する第1刃具保持部材と前記第2刃具を保持する第2刃具保持部材とがそれぞれ前記第1保持穴および前記第2保持穴に相対回転不能かつ摺動可能に嵌合される第1軸部および第2軸部を含み、前記第1刃先位置調整装置および前記第2刃先位置調整装置が、それぞれ第1,第2軸部の前記第1,第2保持穴への嵌合深さを調節することにより前記第1,第2刃先の位置を調整するものである請求項2ないし4のいずれかに記載の中ぐり加工工具。
- 請求項2ないし5のいずれかに記載の中ぐり加工工具を使用して、被加工物の下穴の内周面を切削加工する方法であって、
前記第1刃先の前記中心軸線からの距離を、前記下穴の半径よりΔr大きい距離に調整するとともに、前記第2刃先の前記中心軸線からの距離を、前記下穴の半径よりΔr/2大きい距離に調整する刃先位置調整工程と、
その刃先位置が調整された中ぐり加工工具の中心軸線と前記下穴の中心軸線とを一致させた状態で、中ぐり加工工具と前記被加工物とを中心軸線のまわりに相対回転させつつ、中ぐり加工工具を前記第2端側から前記下穴内に進入させ、その下穴の内周面を切削加工する切削工程と、
その切削工程の終了後に、前記中ぐり加工工具と前記下穴とを、前記第1刃先から前記第2刃先に向かう向きに、第1刃先も第2刃先も切削加工後の穴の内周面に接触しなくなるまで相対移動させる切込解除工程と、
その切込解除工程の後に、前記中ぐり加工工具と前記被加工物とを前記中心軸線に平行な方向に相対移動させて、中ぐり加工工具を切削加工後の穴から抜け出させる戻し工程と
を含むことを特徴とする中ぐり加工方法。 - 前記下穴としてエンジンのシリンダボアの下穴を切削加工する請求項6に記載の中ぐり加工方法。
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