JP2010089770A - 車両用ダッシュボード - Google Patents

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Abstract

【課題】ダッシュボード上のあらゆる位置でフロントガラスへの映り込みを防止することができるので、明るい色味や絵柄等をダッシュボード全体に配置することでき、意匠上優れた車両用ダッシュボードの提供。
【解決手段】少なくとも偏光吸収子を含有する偏光層をダッシュボード本体の表面に有してなり、該偏光層の偏光吸収軸が屈曲乃至湾曲している車両用ダッシュボードである。該偏光吸収軸がフロントガラス方向に凸となる形状で屈曲乃至湾曲している態様が好ましい。
【選択図】図16

Description

本発明は、車両内の運転者が見たフロントガラスへのダッシュボードの映り込みを、運転者正面のみならず、助手席側も含めたダッシュボード全面において、低減しうる車両用ダッシュボードに関する。
自動車用のダッシュボードはフロントガラスに映り込むことによって、運転者の視認性を低下させることがあるため、従来、ダッシュボードの色調を黒色からグレー色のように暗い色味に設定したり、エンボス加工などの表面性状の工夫によって、フロントガラスへの映りこみを低減させる努力がなされてきた。しかし、上記のような従来の方法では、映りこみ像を充分に低減させるには至っておらず、また、ダッシュボードの色味が暗い色に限定されてしまうため、意匠性が低いという問題点がある。
このような問題を解決するため、例えば特許文献1では、ダッシュボードの表面層に、フロントガラス面に対してS偏光となる偏光成分の反射光を、吸収又は散乱によって低減させる層を付与することが提案されている。この提案では、入射光のうち、S偏光成分の方が、P偏光成分よりも反射率が高いという特性を利用したものであり、ダッシュボード上で、フロントガラス面に対してS偏光となるような偏光成分を減衰させてしまうことによって、ダッシュボードから出た光のフロントガラスによる反射、つまり、映り込みを低減させることを狙ったものである。
ここで、反射光のS偏光の向きは、JIS R3212付属書に記載の車両の三次元直交座標系を用いると、運転者から見て前方正面のダッシュボード及びフロントガラスにおいては、Y軸方向である。しかし、特許文献2に記載されているように、助手席側も含めたダッシュボード上の各点において、フロントガラス面に対してS偏光となる方向は、必ずしも前記Y軸方向ではない。したがって、前記特許文献2に記載の方法で、運転者の正面の反射光を効果的に消せるような向きに偏光板をダッシュボードに配置すると、助手席側のダッシュボードの映りこみは、充分に消すことができないという問題が生じる。ここで、ダッシュボードがフロントガラスへ映り込むのを最も低減できる偏光吸収軸の向きをダッシュボード上に描くと、なだらかな曲線となることから、偏光吸収軸がある一方向に直線状になるように作られている従来の偏光板では、ダッシュボード上のどの点においても映り込みを最も低減できる最適な方向に偏光吸収軸を設定することは不可能であるのが現状であった。
特開2006−56413号公報 特開2004−130916号公報
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、偏光吸収軸が屈曲乃至湾曲した偏光層を用いることによって、ダッシュボード上のあらゆる位置でフロントガラスへの映り込みを防止することができるので、明るい色味や絵柄等をダッシュボード全体に配置することでき、意匠上優れた車両用ダッシュボードを提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> 少なくとも偏光吸収子を含有する偏光層をダッシュボード本体の表面に有してなり、該偏光層の偏光吸収軸が屈曲乃至湾曲していることを特徴とする車両用ダッシュボードである。
<2> 偏光吸収軸がフロントガラス方向に凸となる形状で屈曲乃至湾曲している前記<1>に記載の車両用ダッシュボードである。
<3> 偏光層が、少なくとも配向性液晶化合物及び二色性偏光吸収子を含有する前記<1>から<2>のいずれかに記載の車両用ダッシュボードである。
<4> 偏光層が、少なくともバインダー及び二色性偏光吸収子を含有する前記<1>から<2>のいずれかに記載の車両用ダッシュボードである。
<5> バインダーのボーイング現象に伴い二色性偏光吸収子が配向することを利用して、略弓形に配向している偏光吸収軸を発現している前記<4>に記載の車両用ダッシュボードである。
<6> 複数の偏光膜を、それぞれの偏光吸収軸の向きを調整して組み合わせることにより、全体として偏光吸収軸が屈曲した偏光層を形成してなる前記<1>から<4>のいずれかに記載の車両用ダッシュボードである。
<7> 二色性偏光吸収子が、異方性金属ナノ粒子及びカーボンナノチューブのいずれかからなる前記<4>から<6>のいずれかに記載の車両用ダッシュボードである。
<8> 異方性金属ナノ粒子が、金、銀、銅、白金、パラジウム及びアルミニウムから選択される少なくとも1種を含有する前記<7>に記載の車両用ダッシュボードである。
本発明によると、従来における問題を解決することができ、偏光吸収軸が屈曲乃至湾曲した偏光層を用いることによって、ダッシュボード上のあらゆる位置でフロントガラスへの映り込みを防止することができるので、明るい色味や絵柄等をダッシュボード全体に配置することでき、意匠上優れた車両用ダッシュボードを提供することができる。特に、後述する屈曲乃至円弧状ラビング処理によって液晶配向させた偏光膜、又は高分子バインダーのボーイング現象を利用して略弓状配向させた偏光膜は、貼り合せの必要がなく、継ぎ目がなく、更に意匠上優れた車両用ダッシュボードを提供できる。
本発明の車両用ダッシュボードは、少なくとも偏光吸収子を含有する偏光層をダッシュボード本体の表面に有してなる。
前記偏光層における偏光吸収軸は、屈曲乃至湾曲していることを特徴とし、ダッシュボードを車両に搭載した際に、前記偏光吸収軸がフロントガラス方向に凸となる形状で屈曲乃至湾曲していることが好ましい。
前記偏光吸収軸とは、試料面に対し鉛直方向から入射した直線偏光の吸光度が、最大となるときの、入射直線偏光の電場振動方向を示す。これは、偏光吸収子(二色性物質)の配向方向を示すが、必ずしもすべての二色性物質が完全に同一方向に配向している必要はなく、試験領域中に含まれる二色性物質が、ある平均的な向きを有していれば、その向きに平行な電場振動方向を有する直線偏光の吸光度が最大となるので、その平均的な配向方向を偏光吸収軸と定義する。前記偏光吸収軸は、ダッシュボードから偏光層を剥離可能な場合には、該剥離した偏光層の偏光吸収スペクトルを、一般的な分光装置を用いて、入射偏光の偏光軸の角度をさまざまに変えて測定することによって、求めることが可能であるし、略式的には、偏光吸収軸の明らかな観察用偏光板を通してダッシュボード表面を観察して、色味の明暗の変化を調べることにより求めることができる。
ここで、観察用偏光板で偏光吸収軸を求めるには、偏光吸収軸の明らかな観察用偏光板を、該ダッシュボードのある地点の上で回転させて、色味が最も暗くなるとき、観察用偏光板の偏光吸収軸と直交する方向が該ダッシュボード表面の偏光吸収軸であることを利用する。該ダッシュボードのある地点の地点とは、ダッシュボード表面を観察したときに、色味の明暗によって、該ダッシュボード表面の偏光吸収軸の向きを判断しうるだけの大きさの面積を有し、かつ、該面積内において偏光吸収軸の向きが屈曲又は湾曲していることが視認できないだけの小さな領域であることを意味し、0.5cm角から1cm角程度の領域が好ましい。
ここで、図1に示すように、ダッシュボード2が運転者正面のフロントガラス1から反射して、運転者のアイポイント3に入射する光のS偏光軸は運転者前方方向と直交する方向である。
これに対して、図2に示すように、ダッシュボード2が助手席側のフロントガラス1から反射して、運転者のアイポイント3に入射する光のS偏光軸は、運転者のアイポイント3と、フロントガラス1の反射点、ダッシュボード2上の出射点を結ぶ三角形によって張られる平面に垂直な方向である。したがって、このS偏光を最も効率よくダッシュボード上で吸収してしまうためには、該S偏光方向のダッシュボード平面への射影成分で示される方向に偏光吸収軸を設定する必要がある。その方向は、おおよそ、なだらかな弧を描いているので、通常の偏光吸収軸が一直線上である偏光板では、S偏光を吸収できる領域と、そうでない領域が出てしまう。
本発明においては、この最適なS偏光吸収方向に沿って、偏光吸収軸が屈曲乃至湾曲している特殊な偏光層を用いることによって、ダッシュボードの全ての領域で、映り込みを効果的に低減することができる。
具体的には、図3は、フロントガラスからの反射光がS偏光となる向きを示すダッシュボード2の概略図である。図4に示すように偏光吸収軸6を屈曲させた偏光層を有するダッシュボード2、図5に示すように偏光吸収軸6を湾曲させた偏光層を有するダッシュボード2を用いることにより、ダッシュボード上のあらゆる位置でフロントガラスへの映り込みを防止することができ、しかも貼り合わせの必要性がないので、継ぎ目のない、意匠上優れたダッシュボードを提供できる。また、ダッシュボードがフロントガラスへ映り込むのを大幅に低減できるため、明るい色味や絵柄等をダッシュボード全体に配置することが可能となる。
−偏光吸収軸が屈曲乃至湾曲していることの確認方法−
例えば、図6に示すようにダッシュボード2表面を15個以上のグリッド点100を配置できるように均等に分割し、各グリッド点100における偏光吸収軸の向きをプロットすることによって、ダッシュボード表面における偏光吸収軸の形状を同定することが可能である。このプロットによって、図7に示す各グリッド点100における偏光吸収軸6aが一直線状である偏光層を有するダッシュボードと、図8に示す各グリッド点100における偏光吸収軸6aが傾いている屈曲した偏光層を有するダッシュボード、及び図9に示す各グリッド点100における偏光吸収軸6aが傾いている湾曲した偏光層を有するダッシュボードとの区別が可能となり、偏光層の偏光吸収軸が屈曲乃至湾曲していることを判定できる。また同様にして、偏光層の偏光吸収軸の屈曲乃至湾曲した形状がフロントガラス側に凸となっていることも判定が可能となる。
前記偏光吸収軸が屈曲している場合には、屈曲点(偏光吸収軸の向き、角度が変わる点)は1つ以上が好ましく、2つ以上であっても構わない。
また、偏光吸収軸が屈曲乃至湾曲していることは、図10を用いて定義することができる。この図10はダッシュボード表面に地点A〜地点Eを設定した状態を示す。地点A〜地点Eは、ダッシュボードの横幅方向(Y軸方向)の中心線と、縦幅方向(X軸方向)の中心線の交点を地点Cとし、地点Cを通るダッシュボードの横幅をLとすると、地点Bは地点Cから、−Y方向へL/6だけずれた点とし、地点Aは地点Cから、−Y方向へL/3だけずれた点とする。更に、地点Dは地点Cから、+Y方向へL/6だけずれた点とし、地点Eは地点Cから、+Y方向へL/3だけずれた点とする。
前記偏光吸収軸が屈曲乃至湾曲している場合には、偏光吸収軸の屈曲乃至湾曲した形状がフロントガラス側に凸となっており、かつ、なす角α(図11参照;地点Aにおける偏光吸収軸6aと平行で、地点Aを始点とし、地点E方向へ向かうベクトルをaとし、さらに、地点Eにおける偏光吸収軸6aと平行で、地点Eを始点とし、地点A方向へ向かうベクトルをeとしたとき、ベクトルa、eのなす角をαとする。ただし、0度≦α≦180度とする。)が、80度<α<170度が好ましく、120度≦α≦150度がより好ましい。前記なす角αが170度以上である場合には、偏光吸収軸が屈曲乃至湾曲していない、ごく一般的な偏光板を用いた時の効果と同等程度の効果しか得られないことがあり、80度以下である場合には、偏光層を付与していない通常のダッシュボードと比べても、反射が強くなってしまう領域ができてしまうことがある。
なお、ダッシュボードの運転者正面領域において、偏光吸収軸は、車両の三次元直交座標のY軸(JIS R3212付属書)となす角βが10度以内であることが好ましい。ここで、ダッシュボードの運転者正面領域とは、図12に示すように、運転者のアイポイントを通り、X−Z平面に平行な面が、ダッシュボード2表面と交わってできる線分から距離5cm以内にある領域101を示す。
なお、ダッシュボードの三次元的な曲面の扱いについては、通常、ダッシュボードの形状が三次元的に湾曲しているのは、メーターパネルのひさし部分が主であって、その部分における、最適な偏光吸収軸の向きは車両のY軸方向であり、三次元的な湾曲の影響を受けない領域であるため、特別な考慮をしなくてもよい。
以下の(1)〜(4)に示す偏光層の製造方法によって、偏光吸収軸が屈曲乃至湾曲した偏光層を作製することができ、結果として、偏光吸収軸の向きを変化させた偏光層を有する車両用ダッシュボードが得られる。
(1)ラビング方向を領域ごとに変えて作製した基材上に、配向性液晶化合物を用いて、二色性偏光吸収子を配向させた、屈曲した偏光吸収軸を有する偏光層をダッシュボードに設置する。
(2)円形に弧を描いてラビングした基材上に、配向性液晶化合物を用いて、二色性偏光吸収子を配向させた、湾曲した偏光吸収軸を有する偏光層をダッシュボードに設置する。
(3)偏光吸収子と、熱可塑性樹脂とを含有するフィルムを、搬送方向と垂直な方向に一軸延伸して、ボーイングを意図的に生じさせることによって作製した、円弧状に湾曲した偏光吸収軸を有する偏光層をダッシュボードに設置する。
(4)直線型配向偏光膜を、複数枚組み合わせることによって得られる屈曲した偏光吸収軸を有する偏光層をダッシュボードに設置する。
<(1)及び(2)の偏光層の製造方法>
前記(1)及び(2)の偏光層の製造方法は、塗布層形成工程と、硬化工程とを含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
〔塗布層形成工程〕
前記塗布層形成工程は、屈曲乃至円弧状ラビング処理した配向膜を表面に有する基材上に、少なくとも配向性液晶化合物、光重合開始剤、及び偏光吸収子を含有する偏光膜塗布液を塗布し、乾燥させて塗布層を形成する工程である。
−基材−
前記基材としては、その形状、構造、大きさ、材料等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば平板状、シート状などが挙げられ、前記構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば単層構造であってもいし、積層構造であってもよく適宜選択することができる。
前記基材の材料としては、特に制限はなく、無機材料及び有機材料のいずれであっても好適に用いることができる。
前記無機材料としては、例えば、ガラス、石英、シリコンなどが挙げられる。
前記有機材料としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)等のアセテート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリノルボルネン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記基材は、適宜合成したものであってもよいし、市販品を使用してもよい。
前記基材の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、10μm〜2,000μmが好ましく、50μm〜500μmがより好ましい。
−配向膜−
前記配向膜としては、屈曲又は円弧状ラビング処理による配向膜が好適に挙げられる。
前記屈曲ラビング処理は、ラビング方向を領域ごとに変えて作製した基材上に、配向性液晶化合物を用いて偏光吸収子を配向させた、屈曲した偏光吸収軸を有する偏光膜を形成することができる。
具体的には、基材表面に、配向膜溶液を塗布し、乾燥させて、配向膜を作製した。この作製した配向膜面の内、半分の領域Aを覆うように、厚さ30μmのPVA膜をテープで貼り付けて、マスキングをし、マスク部分以外の配向膜面(領域B)をラビング装置でラビングをする。次に、領域Aのマスクをはがし、領域Bを同様にしてマスキングし、領域Bのラビング方向に対して20度の角度となる方向に、領域Aを同条件でラビングをする。最後に、領域Bのマスクをはがすことによって、屈曲ラビング処理された配向膜を作製することができる。
前記円弧状ラビング処理は、円形に弧を描いてラビングした基材上に、硬化性液晶を用いて、偏光吸収子を配向させた、湾曲した偏光吸収軸を有する偏光膜を形成することができる
具体的には、図13上図に示すような金属板にラビング布を両面テープで貼り付け、ラビング布を貼り付けていない側の面の中心には、突起を付けて、長さ3mの紐をくくりつける。さらに、紐のもう一方の端を、床面に固定したポールにくくりつけることで、円弧状ラビング用の治具を作製する。
次に、基材表面に配向膜溶液を塗布し、乾燥させて、配向膜を作製し、この配向膜を、前記円弧状ラビング用治具の固定用ポールから1.2m離れた場所に固定し、該治具の紐の長さを2mにして、配向膜表面にラビング布を押し付けながら、円弧状に25往復擦る。さらに、紐の長さを、1.9m、1.8mと10cmずつ短くしながら1.2mの長さまでそれぞれ25往復ずつ円弧状のラビング(図13下図参照)を行い、円弧状ラビング処理された配向膜を作製することができる。
−配向性液晶化合物−
前記配向性液晶化合物としては、重合性基を有し、紫外線の照射によって硬化するものであれば特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えばサーモトロピック液晶化合物、リオトロピック液晶化合物などが挙げられる。これらの中でも、配向性の高さの点からサーモトロピック液晶化合物が特に好ましい。
前記紫外線硬化性液晶化合物としては、例えば下記構造式で表される化合物などが挙げられる。ただし、これらに制限されるものではない。
前記液晶化合物としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。該市販品としては、例えば、BASF社製の商品名PALIOCOLOR LC242;Merck社製の商品名E7;Wacker−Chem社製の商品名LC−Sllicon−CC3767;高砂香料株式会社製の商品名L35、L42、L55、L59、L63、L79、L83などが挙げられる。
前記液晶化合物の含有量は、前記偏光膜塗布液の全固形分質量に対し10質量%〜99質量%が好ましく、20質量%〜95質量%がより好ましい。
−光重合開始剤−
前記偏光膜塗布液は、光重合開始剤を含有する。前記光重合開始剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、p−メトキシフェニル−2,4−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル1,3,4−オキサジアゾール、9−フェニルアクリジン、9,10−ジメチルベンズフェナジン、ベンゾフェノンとミヒラーズケトン、ヘキサアリールビイミダゾールとメルカプトベンズイミダゾール、ベンジルジメチルケタール、チオキサントンとアミン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記光重合開始剤としては、市販品を用いることができ、該市販品としては、例えば、チバスペシャルティケミカルズ社製の商品名イルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア784、イルガキュア814;BASF社製の商品名ルシリンTPO、などが挙げられる。
前記光重合開始剤の添加量は、前記偏光膜塗布液の全固形分質量に対し0.1〜20質量%が好ましく、0.2〜5質量%がより好ましい。
前記偏光吸収子としては、例えば、金属錯体、二色性色素、などが挙げられる。これらの中でも、二色性色素が特に好ましい。
前記偏光吸収子の含有量は、前記偏光膜塗布液の全固形分質量に対し0.1質量%〜50.0質量%が好ましく、1.0質量%〜30.0質量%がより好ましい。
−高分子界面活性剤−
前記偏光膜塗布液は、高分子界面活性剤を含有することが好ましい。該高分子界面活性剤は、その添加量を調整することによって、前記偏光吸収子の長軸の前記基材面に対する傾斜角度を適宜調整することができる。
このような高分子界面活性剤としては、ノニオン系が好ましく、用いる液晶性化合物との相互作用が強いものを市販の高分子界面活性剤の中から選定することができ、例えば、大日本インキ化学工業株式会社製の商品名メガファックF780F、商品名B1176などが挙げられる。
前記高分子界面活性剤の含有量は、前記偏光膜塗布液の全固形分質量に対し0〜15質量%が好ましく、0〜5質量%がより好ましい。
前記偏光膜塗布液は、例えば、硬化性液晶化合物、偏光吸収子、光重合開始剤、好ましくは高分子界面活性剤、必要に応じてその他の成分を溶媒に溶解乃至分散することによって調製できる。
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、塩化メチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;フェノール、p−クロロフェノール、o−クロロフェノール、m−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾールなどのフェノール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール等のアルコール系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;二硫化炭素、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記偏光膜塗布液を、表面に配向膜を有する基材上に塗布し、乾燥させて塗布層を形成する。
前記塗布方法としては、例えば、スピンコート法、キャスト法、ロールコート法、フローコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法などが挙げられる。
〔硬化工程〕
前記硬化工程は、前記塗布層形成工程で得られた塗布層を液晶相が発現する温度にまで加熱した状態で紫外線照射し硬化させる工程である。
塗布層を形成した後、偏光吸収子の配向状態を固定するため、塗布層を液晶相が発現する温度にまで加熱した状態で紫外線照射する。
前記加熱条件は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50〜120℃が好ましい。
前記紫外線照射の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、照射する紫外線は、160〜380nmが好ましく、250〜380nmがより好ましい。照射時間は、例えば、0.1〜600秒間が好ましく、0.3〜300秒間がより好ましい。
前記紫外線の光源としては、例えば、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)及びショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)などを挙げることができる。
<(3)の偏光層の製造方法>
前記(3)の偏光層の製造方法は、少なくとも偏光吸収子を含有する塗布膜を形成する塗層膜形成工程と、該塗布膜を幅方向に延伸する延伸工程とを含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
−塗布膜形成工程−
前記塗布膜形成工程は、少なくとも偏光吸収子を含有する塗布膜を形成する工程である。
−偏光吸収子−
前記偏光吸収子としては、例えば異方性金属ナノ粒子、カーボンナノチューブ、金属錯体、二色性色素、ヨウ素、などが挙げられる。これらの中でも、異方性金属ナノ粒子、カーボンナノチューブが特に好ましい。
異方性金属ナノ粒子及びカーボンナノチューブのいずれかを用いると、車載用途に耐えうる耐久性を有した湾曲型偏光層が得られる。
前記異方性金属ナノ粒子としては、金、銀、銅、白金、パラジウム、及びアルミニウムから選択される少なくとも1種からなることが好ましい。
ヨウ素や二色性有機色素を用いた従来の偏光板では、太陽光の直射を長期に渡って受け、更に、夏季の高温にもさらされる車載用途には、耐光性及び耐熱性の面から適さない。
−バインダー樹脂−
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えばポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルホルマール、ポリカーボネート、セルロースブチレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエチレンアジパミド、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、又はこれらの共重合体(例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体)、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記塗布膜は、支持体上に塗布膜形成用組成物を塗布する方法、などにより形成することが好ましい。
前記塗布方法では、まず、前記偏光吸収子及び前記バインダー樹脂を溶媒に溶解乃至分散させてなる塗布膜形成用組成物を調製する。
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水;クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、塩化メチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;フェノール、p−クロロフェノール、o−クロロフェノール、m−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾールなどのフェノール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール等のアルコール系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;二硫化炭素、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記塗布方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スピンコート法、キャスト法、ロールコート法、フローコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法、などが挙げられる。
−延伸−
前記延伸工程は、該塗布膜を幅方向に延伸する工程である。
前記塗布膜の延伸は、応力下で延伸することが好ましい。前記延伸は、加熱延伸法、調湿延伸法、調湿下での加熱延伸法などが挙げられる。これらの中でも、加熱延伸法が特に好ましい。
前記加熱延伸法における加熱温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、偏光層のガラス転移温度(Tg)以上の温度に加熱することが好ましい。
延伸倍率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1.5倍〜20倍が好ましく、3倍〜10倍がより好ましい。
このような偏光膜の偏光吸収軸を円弧状に湾曲した略弓形状とする方法としては、例えば前記延伸工程における幅方向延伸(横延伸)における中心部と辺縁部における不均一延伸を利用することが好ましい。これは、一般にボーイング現象と呼ばれるが、不均一に延伸する手法としてはボーイング現象に限らず、横延伸後に長手方向に引き取るパスローラーとして幅方向に多分割されたニップローラーを用いて中央から端部に行くほど速い速度で引き取ることによっても実現できる。
従来はフィルムを延伸時のボーイング現象を抑制することを主眼として検討がされていた(例えば特開2005−92187号公報参照)。これに対し、本発明の(3)の方法は、ボーイング現象を積極的に生じさせることにより、偏光膜の偏光吸収軸を円弧状に湾曲した略弓形状に形成するものである。
前記偏光膜の偏光吸収軸の円弧状に湾曲した略弓形状の調整は、例えば延伸速度、延伸前余熱温度、延伸ゾーン温度、延伸後の緩和ゾーン温度などを調整することにより適宜変更することができる。
具体的には、図14Aに示すように、左右対称型のテンター4,4により幅方向延伸する。その結果、図14Bに示すように、ボーイング現象により延伸フィルム5の送り方向に対し弓形状に湾曲するように偏光吸収軸6を配向させることができる。これにより、略弓形状に湾曲した偏光吸収軸が形成できる。
<(4)の偏光層の製造方法>
前記(4)の偏光層の製造方法は、直線配向型偏光膜形成工程と、直線配向型偏光膜の裁断及び貼り合わせ工程とを含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
〔直線配向型偏光膜形成工程〕
直線配向型の偏光膜は、配向膜を屈曲又は円弧状ラビング処理をする代わりに、ごく一般的に行われる、一方向へのラビング処理を行うこと以外は、前記(1)及び(2)の製造方法と同様にして作製することができる。また、搬送方向と平行な方向に延伸すること以外は、前記(3)の偏光層の製造方法と同様にしても作製することができる。
〔直線配向型偏光膜の裁断及び貼り合わせ工程〕
前記直線配向型偏光膜は、貼り合わせに用いる形状及び配向軸の向きに合わせて、裁断する。前記裁断した偏光板を、最適な配置に並べた後に、新たな支持体上に貼り付けるか、もしくは支持体間にラミネートすることにより、一枚張りで、偏光軸が屈曲した偏光板が得られる。貼り付け及びラミネート用の支持体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えばポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルホルマール、ポリカーボネート、セルロースブチレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエチレンアジパミド、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、又はこれらの共重合体(例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の車両用ダッシュボードに該当するか否かは、ダッシュボード本体の表面に偏光層があり、該偏光層が車両の構造上、隔てられていることが要求される箇所(エアバッグ収納口など)以外には、境界のない一枚張りの偏光層であり、かつ偏光吸収軸が一方向に限定されていないことを、偏光吸収軸の向きが明らかな偏光板を通してダッシュボードを観察して確かめることによって、判断することができる。
本発明の車両用ダッシュボードは、車両内の運転者が見たフロントガラスへのダッシュボードの映り込みを、運転者正面のみならず、助手席側も含めたダッシュボード全面において、低減しうるので、例えば自動車、電車、新幹線、飛行機、旅客機、船等の各種乗り物用のダッシュボードに適用することができる。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
<屈曲ラビングによる液晶及び二色性偏光子の屈曲配向>
−配向膜の作製−
清浄な厚み100μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(富士フイルム株式会社製)表面に、ポリビニルアルコール(PVA)配向膜溶液(メタノール溶液)をバーコート塗布し、100℃で3分間乾燥させて、厚み1.0μmのPVA膜を作製した。この作製したPVA膜面の内、半分の領域Aを覆うように、厚さ30μmのPVA膜をテープで貼り付けて、マスキングをし、マスク部分以外のPVA表面(領域B)をラビング装置(常陽工学株式会社製、回転数=1,000rpm、押し込み量=0.35mm)で2度ラビングをした。次に、領域Aのマスクをはがし、領域Bを同様にしてマスキングし、領域Bのラビング方向に対して20度の角度となる方向に、領域Aを同条件で2度ラビングをした。最後に、領域Bのマスクをはがすことによって、PVA配向膜を作製した。
−偏光膜塗布液の調製−
光重合性基を有する液晶化合物(BASF社製、商品名PALIOCOLOR LC242)9.12gをメチルエチルケトン(MEK)15.21gに溶解した液晶溶液に、開始剤溶液(イルガキュア907(チバスペシャルティケミカルズ社製)2.70g、及びカヤキュアDETX(日本化薬株式会社製)0.90gをMEK26.4gに溶解した溶液)3.33gを添加し、5分間攪拌することにより、完全に溶解させた。
次に、得られた溶液に、二色性色素(株式会社林原生物化学研究所製、G207)79.5mgとトルエン3.9gを添加し、10分間攪拌することにより、偏光膜塗布液を調製した。
−二色性色素の配向及び硬化−
得られた偏光膜塗布液を、上記PVA配向膜上にバーコート塗布し、90℃で1分間加熱した後、加熱した状態で紫外線照射(高圧水銀灯、1kW、330mJ/mm)することにより、偏光膜(屈曲配向偏光膜)を形成した。
(実施例2)
<円弧状ラビングによる液晶及び二色性偏光子の円弧状配向>
下記に示す方法で、PVA配向膜を作製した以外は、実施例1と同様にして、偏光膜(円弧状配向偏光膜)を形成した。
−円弧状ラビング用の治具−
長さ20cm、幅3cmの金属板(重さ500g)にラビング布を両面テープで貼り付け、ラビング布を貼り付けていない側の面の中心には、突起を付けて、長さ3mの紐をくくりつけた。更に、紐のもう一方の端を、床面に固定したポールにくくりつけることで、円弧状ラビング用の治具を作製した(図13上図参照)。
−配向膜の作製−
清浄な厚み100μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(富士フイルム株式会社製)表面に、ポリビニルアルコール(PVA)配向膜溶液(メタノール溶液)をバーコート塗布し、100℃で3分間乾燥させて、厚み1.0μmのPVA膜を作製した。このPVA膜を、前記円弧状ラビング用治具の固定用ポールから1.2m離れた場所に固定し、該治具の紐の長さを2mにして、PVA膜表面にラビング布を押し付けながら、円弧状に25往復擦った(図13下図参照)。更に、紐の長さを、1.9m、1.8mと10cmずつ短くしながら1.2mの長さまでそれぞれ25往復ずつ円弧状に、PVA表面を擦ることにより、PVA配向膜を作製した。
(実施例3)
<直線配向型偏光膜の貼り合わせによる屈曲配向>
下記に示す方法で、PVA配向膜を作製した以外は、実施例1及び2と同様にして、偏光膜(直線配向型偏光膜)を形成した。それに引き続き、地点A〜地点Eにおける偏光吸収軸とY軸のなす角が、それぞれ、地点A、30度;地点B、20度;地点C、10度;地点D、0度;地点E、−10度となるように、上記作製した直線配向型偏光膜を、偏光吸収軸の向きを変えて組み合わせ、図28に示す全体として偏光吸収軸が屈曲した偏光膜を形成した。
−配向膜の作製−
清浄な厚み100μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(富士フイルム株式会社製)表面に、ポリビニルアルコール(PVA)配向膜溶液(メタノール溶液)をバーコート塗布し、100℃で3分間乾燥させて、厚み1.0μmのPVA膜を作製した。この作製したPVA膜面をラビング装置(常陽工学株式会社製、回転数=1,000rpm、押し込み量=0.35mm)で2度、ラビングすることによって、PVA配向膜を作製した。
<屈曲配向偏光膜及び湾曲配向偏光膜の偏光吸収軸の目視評価>
実施例1〜3で作製した偏光膜を、偏光吸収軸の向きが明らかな参照用偏光板(サンリッツ社製、ヨウ素PVA偏光板)を通して観察した。観察時に、該参照用偏光板を回転させ、最も暗くなるときの、参照用偏光板の偏光吸収軸と直交方向を実施例1〜3で作製した偏光膜の各地点で記録していき、実施例1〜3で作製した偏光膜の偏光吸収軸をそれぞれ調べた。その結果、実施例1で作製した屈曲配向偏光膜は、偏光軸の向きが、ある境で、車両のY軸(JIS R3212付属書に記載の車両の三次元直交座標系)となす角が20度変化していた(図15参照)。実施例2で作製した湾曲配向偏光膜は、偏光吸収軸が、曲率半径1.1m〜2.1mの範囲で湾曲していた(図16参照)。
実施例3で作製した屈曲偏光膜は、図29に示すように、5つの異なる偏光吸収軸を有する領域からなり、4つの境で偏光吸収軸が屈曲していた。
<屈曲配向偏光膜及び湾曲配向偏光膜の配向度評価>
紫外可視分光光度計(日本分光社製、紫外可視近赤外分光光度計V670)を用いて、実施例1及び2で作製した偏光膜の配向度評価を行った。入射光側に偏光板を設置し、更に、試料セルの入射光側に3mmのピンホールの開いた遮光板を設置することによって、試験領域を小さくして、偏光吸収スペクトルを測定した(円弧状の配向軸は曲率半径が大きいことと、試験領域が小さいことによって、ほとんど直線配向とみなすことができる)。その結果、実施例1及び2で作製した偏光膜の配向度は共に0.85であった。ここで配向度Sは下記式で表される。
ただし、A//は、試料の偏光吸収スペクトルを偏光軸の角度を少しずつ変えながら測定したときに、最大の吸光度となるときの吸光度の値であり、Aは、A//を与える偏光軸の角度と直交する方向の入射偏光に対する吸光度を示す。
<屈曲配向偏光膜及び湾曲配向偏光膜の映り込み低減効果の評価>
実施例1〜3で作製した偏光膜を、トヨタ自動車株式会社製クラウン(1995年式)のダッシュボード上に次のように設置した。即ち、実施例1で作製した偏光膜は、運転者正面で偏光吸収軸がY軸と平行になり、かつ偏光吸収軸の向きが変化する境が車両の横幅(Y軸方向)の中心に位置するようにした(図15参照)。
実施例2で作製した偏光膜は、運転者正面で偏光吸収軸がY軸と平行になり、かつ運転者正面における、ダッシュボードのX軸方向幅の中点での偏光吸収軸の曲率半径が1.5mとなるようにした(図16参照)。
実施例3で作製した偏光膜は、運転者正面で偏光吸収軸がY軸と平行になり、かつ地点A、B、C、D、Eのそれぞれにおける偏光吸収軸の向きがすべて互いに異なるようにした(図29参照)。
ここで、「運転者正面」とは、運転席に着座した観察者の両目の中心位置からX軸方向を示す。そして、地点A〜地点Eの位置で、白い円形の印を付けた紙(図17参照)をダッシュボードと偏光膜の間に挿入し、各地点におけるフロントガラス面に映り込んだ白色円形印の見えにくさを、運転席に着座した観察者が目視によって下記基準で評価し、各地点における偏光吸収軸がY軸となす角を求めた。結果を表1に示す。また、地点Aと地点Eとにおける、偏光吸収軸上のベクトルがなす角αを測定した。結果を表1に示す。
〔評価基準〕
○:ほとんど印が認識できない(図18参照)
△:わずかに印が認識できる(図19参照)
×:はっきりと印が認識できる(図20参照)
ここで、地点A〜地点Eは、次のように定義する。ダッシュボードの横幅方向(Y軸方向)の中心線と、縦幅方向(X軸方向)の中心線の交点を地点Cとし、地点Cを通るダッシュボードの横幅をLとすると、地点Bは地点Cから、−Y方向へL/6だけずれた点とし、地点Aは地点Cから、−Y方向へL/3だけずれた点とする。更に、地点Dは地点Cから、+Y方向へL/6だけずれた点とし、地点Eは地点Cから、+Y方向へL/3だけずれた点とする(図10参照)。
(比較例1〜5)
<直線型偏光板によるダッシュボードのフロントガラスへの映り込み低減効果評価>
トヨタ自動車株式会社製クラウン(1995年式)のダッシュボード上に、偏光吸収軸の向きが一方向に定まった、偏光膜(サンリッツ社製、ヨウ素PVA偏光板)を次のように設置した。
即ち、偏光膜の偏光吸収軸が、車両のY軸(JIS R3212付属書に記載の車両の三次元直交座標系)となす角を、比較例1では−10°(図21参照)、比較例2では0°(図22参照)、比較例3では10°(図23参照)、比較例4では20°(図24参照)、比較例5では30°(図25参照)にそれぞれ設定した。
次に、実施例1〜3と同様にして、地点A〜地点Eの位置における、フロントガラス面に映り込んだ印の見えにくさを、運転席に着座した観察者が目視によって評価し、各地点における偏光吸収軸がY軸となす角を求めた。結果を表1に示す。
(実施例4)
<金属ナノロッドを用いた偏光膜>
−金ナノ粒子(種晶)の合成工程−
100mMのCTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロミド、和光純薬株式会社製)水溶液100mlに、10mMの塩化金酸水溶液(関東化学株式会社製)5mlを添加し、更に直前に溶解した10mMの水素化ホウ素ナトリウム水溶液10mlを添加し、強攪拌することにより、金ナノ粒子(種晶)を形成した。
−金ナノロッド(コアナノロッド)の合成工程−
100mMのCTAB水溶液1000mlに、10mMの硝酸銀水溶液100ml、10mMの塩化金酸水溶液200ml、及び100mMのアスコルビン酸水溶液50mlを添加し、攪拌することにより、無色透明の液を得た。更に前記金ナノ粒子(種晶)水溶液100mlを添加し、2時間攪拌することにより、金ナノロッド水溶液を得た。
<評価>
得られた金ナノロッドの吸収スペクトルを紫外可視赤外分光計(日本分光株式会社製、V−670)で測定したところ、金ナノロッドの短軸の吸収に帰属する510nmと、長軸に帰属する800nmのピークを示した。
得られた金ナノロッドについて、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により、短径、長径、アスペクト比、及び球相当半径を測定したところ、短径が6nm、長径が21nm、アスペクト比が3.5、球相当半径が5.7nmのロッド状粒子であることが分かった。
−銀シェル形成工程−
1質量%のPVP(ポリビニルピロリドンK30、和光純薬株式会社製)水溶液8kgに、前記金ナノロッド分散液を2kg、10mMの硝酸銀水溶液100ml、及び100mMのアスコルビン酸水溶液100mlを添加し、攪拌した。更に0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液280mlを5分間かけて添加し、溶液のpHを7〜8に調整することにより、銀を金ナノロッド表面に析出させて、金コア銀シェルナノロッドを合成した。
得られた金コア銀シェルナノロッド分散液を限外濾過膜(旭化成ケミカルズ株式会社製、ACP0013)を用いて限外濾過処理することにより、10倍に濃縮し、更に分散液の電気伝導度が70mS/m以下になるまで精製を行い、金コア銀シェルナノロッド分散液を得た。
<評価>
得られた金コア銀シェルナノロッドの吸収スペクトルを紫外可視赤外分光計(日本分光株式会社製、V−670)で測定したところ、短軸の吸収に帰属する410nmと、長軸に帰属する650nmのピークを示した。
得られた金コア銀シェルナノロッドについて、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により、短径、長径、アスペクト比、及び球相当半径を測定したところ、図26のTEM写真に示すように、短径が12nm、長径が24nm、アスペクト比が2.0、球相当半径9.4nmのロッド状粒子であることが確認できた。
−金コア銀シェルナノロッド含有PVAフィルムの作製−
次に、10質量%のPVA124水溶液(株式会社クラレ製)10.0g、純水10.0g、及び得られた前記金コア銀シェルナノロッド分散液1.0gを混合し、清浄なPETベース(東洋紡績株式会社製、200μm厚み)に1mm厚みのアプリケーターを設置し、塗布バー(#0)を用いてバーコート塗布し、12時間室温で乾燥させた後、PETベースよりPVAフィルムを剥離し、厚み40μmの金コア銀シェルナノロッド含有PVAフィルムを作製した。
<分光スペクトルの測定>
得られたPVAフィルムの吸収スペクトルを紫外可視近赤外分光計(日本分光株式会社製、V−670)測定したところ、含有する金銀複合ナノロッドに由来する吸収を示した。
−偏光フィルムの作製−
得られた厚み40μmのPVAフィルムを、90℃で加熱しながら、4倍まで自動二軸延伸機で一軸延伸し、偏光性を示すフィルム(偏光板)を作製した。
<配向度>
得られた偏光板の偏光性を評価した。分光スペクトルは、分光器(日本分光株式会社製、紫外可視近赤外分光計V−670)の試料側の光路に偏光子を1枚設置し、偏光子と偏光板試料の延伸軸のなす角度を0°、90°に変えて、偏光スペクトルを測定した。結果を図27に示す。そして、0°と90°のスペクトルから金銀複合ナノロッドの長軸由来の極大吸収波長の吸光度の比率を配向度Sとした。この配向度Sは上記同様に測定したところ、実施例4の偏光板の配向度は0.94であった。
<映り込み防止効果の評価>
得られた偏光板に、図17に示す白色円形印を描いた紙を貼り、車両のダッシュボード上に置いて、フロントガラスへの映り込みの程度を、サンリッツ社製のヨウ素偏光板と比較した。その結果、得られた異方性金属ナノ粒子を用いて作製した偏光板でも、ヨウ素偏光板と同等の映り込み防止効果が得られた。
以上の結果のように、ダッシュボードがフロントガラスへ映り込むのを低減するには、偏光層を、ダッシュボード上の各地点における、それぞれの最適な偏光吸収軸の向きとなるように設定しなければならず、比較例1〜5で見たように、偏光吸収軸の向きが一直線上である偏光層を用いた場合には、必ず映り込みを低減できない領域が生まれてしまう。それに対し、実施例1〜4で示したように、本発明の偏光吸収軸が屈曲乃至湾曲した偏光層を用いたダッシュボードは、どの地点においても最適である角度に偏光吸収軸を設定することができているために、効果的にダッシュボード全面において、運転席から見た映り込みを低減することができた。
本発明の車両用ダッシュボードは、車両内の運転者が見たフロントガラスへのダッシュボードの映り込みを、運転者正面のみならず、助手席側も含めたダッシュボード全面において、低減しうるので、自動車、電車、新幹線、飛行機、旅客機、船等の各種乗り物用のダッシュボードとして幅広く用いることができる。
図1は、運転者正面のフロントガラスから反射する光のS偏光軸を説明するための概略図である。 図2は、助手席側のフロントガラスから反射する光のS偏光軸を説明するための概略図である。 図3は、フロントガラスからの反射光がS偏光となる向きを示す概略図である。 図4は、本発明のダッシュボードにおける偏光吸収軸の向きの一例を示す概略図である。 図5は、本発明のダッシュボードにおける偏光吸収軸の向きの他の一例を示す概略図である。 図6は、ダッシュボード表面にグリッド点を設けた状態を示す図である。 図7は、各グリッド点における偏光吸収軸が一直線状であるダッシュボードを示す図である。 図8は、各グリッド点における偏光吸収軸の向きが傾いている屈曲した偏光層を有するダッシュボードを示す図である。 図9は、各グリッド点における偏光吸収軸の向きが傾いている湾曲した偏光層を有するダッシュボードを示す図である。 図10は、ダッシュボードにおける地点A〜地点Eを示す概略図である。 図11は、図10の地点Aと地点Eとにおける偏光吸収軸上のベクトルがなす角αを示す図である。 図12は、ダッシュボードの運転者正面領域を示す図である。 図13の上図は、円弧状ラビング用治具を示す図であり、図13の下図は、円弧状ラビング用治具を用いた円弧状ラビング処理を示す図である。 図14Aは、偏光層の製造方法の一例を示す説明図である。 図14Bは、図14Aにより得られた延伸フィルムを示す図である。 図15は、実施例1のダッシュボード上の偏光吸収軸を示す概略図である。 図16は、実施例2のダッシュボード上の偏光吸収軸を示す概略図である。 図17は、実施例における映り込み低減効果を評価する際に用いた白色円形印である。 図18は、映り込み防止効果におけるほとんど印が認識できない状態(○)を示す写真である。 図19は、映り込み防止効果におけるわずかに印が認識できる状態(△)を示す写真である。 図20は、映り込み防止効果におけるはっきりと印が認識できる状態(×)を示す写真である。 図21は、比較例1のダッシュボード上の偏光吸収軸を示す概略図である。 図22は、比較例2のダッシュボード上の偏光吸収軸を示す概略図である。 図23は、比較例3のダッシュボード上の偏光吸収軸を示す概略図である。 図24は、比較例4のダッシュボード上の偏光吸収軸を示す概略図である。 図25は、比較例5のダッシュボード上の偏光吸収軸を示す概略図である。 図26は、実施例4で合成した複合金属ナノロッドの透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。 図27は、実施例4の偏光板の偏光性を示すグラフである。 図28は、実施例3で作製した屈曲偏光膜の偏光吸収軸の屈曲状態を示す概略図である。 図29は、実施例3のダッシュボード上の偏光吸収軸を示す概略図である。
符号の説明
1 フロントガラス
2 ダッシュボード
3 運転者アイポイント
4 テンター
5 延伸フィルム
6、6a 偏光吸収軸
100 グリッド点
101 運転者正面領域

Claims (8)

  1. 少なくとも偏光吸収子を含有する偏光層をダッシュボード本体の表面に有してなり、該偏光層の偏光吸収軸が屈曲乃至湾曲していることを特徴とする車両用ダッシュボード。
  2. 偏光吸収軸がフロントガラス方向に凸となる形状で屈曲乃至湾曲している請求項1に記載の車両用ダッシュボード。
  3. 偏光層が、少なくとも配向性液晶化合物及び二色性偏光吸収子を含有する請求項1から2のいずれかに記載の車両用ダッシュボード。
  4. 偏光層が、少なくともバインダー及び二色性偏光吸収子を含有する請求項1から2のいずれかに記載の車両用ダッシュボード。
  5. バインダーのボーイング現象に伴い二色性偏光吸収子が配向することを利用して、略弓形に配向している偏光吸収軸を発現している請求項4に記載の車両用ダッシュボード。
  6. 複数の偏光膜を、それぞれの偏光吸収軸の向きを調整して組み合わせることにより、全体として偏光吸収軸が屈曲した偏光層を形成してなる請求項1から4のいずれかに記載の車両用ダッシュボード。
  7. 二色性偏光吸収子が、異方性金属ナノ粒子及びカーボンナノチューブのいずれかからなる請求項4から6のいずれかに記載の車両用ダッシュボード。
  8. 異方性金属ナノ粒子が、金、銀、銅、白金、パラジウム及びアルミニウムから選択される少なくとも1種を含有する請求項7に記載の車両用ダッシュボード。
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