JP2010088161A - 超音波モータおよび案内装置 - Google Patents

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裕也 中尾
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Abstract

【課題】 可動体を磨擦駆動させてもパーティクルの発生が少ない超音波モータおよび案内装置を提供する。
【解決手段】 振動体5と、振動体5の振動を相手部材に伝達する押圧部材6とを備えてなる超音波モータ1において、押圧部材6の少なくとも表面は、酸化アルミニウムが60質量%以上70質量%以下であり、かつ炭化チタンが30質量%以上40質量%以下の焼結体を有してなり、前記焼結体の切断面における少なくとも1本の10μm以上の直線上に存在する前記炭化チタンの結晶粒子の個数の比率は、前記直線上に存在する炭化チタンの結晶粒子の個数および酸化アルミニウムの結晶粒子の個数の合計に対して55%以上75%以下である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、超音波モータと、直線運動または回転運動する可動体を超音波モータにて駆動させる案内装置とに関する。また、案内装置は、特に、精密加工機械、精密測定装置および半導体製造装置等に使用可能なものに関する。
超音波モータは、振動体に超音波領域の固有振動を励振し、その振動によって生じる磨擦力を介して可動体(被駆動体)を駆動するモータである。このような超音波モータの最小振幅はナノメートルオーダーと小さいため、可動体を高精度に位置決めすることができる。しかも、超音波モータは、可動体を磨擦駆動させるため、その駆動力は大きく、これまでカメラのレンズズーム機構、および腕時計のバイブレーションアラームなど回転運動系への実用化が行われている。最近では、直線運動系への適用も試みられている。
図5に示すように、超音波モータ31は、圧電セラミック板32の一方の主面に4分割された電極膜33a,33b,33c,33dを有する。対角に位置する電極膜33aと電極膜33dを結線するとともに、対角に位置する電極膜33bと電極膜33cを結線している。さらに、他方の主面には、ほぼ全面に電極膜34を形成した振動体35と、圧電セラミック板32の端面に設けた押圧部材36とを有している。上記一方の主面に形成した電極膜33aと電極膜33bにそれぞれ位相を異ならせた電圧を印加するとともに、他方の主面に形成した電極膜34を接地することにより、圧電セラミック板32に縦振動と横振動を発生させ、これらの振動の合成によって押圧部材36を楕円運動させるようになっている。
図6に示すように、案内装置37は、ベース盤38上にクロスローラガイド等の一対のガイド部材39を備え、これらのガイド部材39によって可動体としてのステージ40が直線的に案内されるようになっている。
また、ステージ40の一方の側面には駆動力伝達部材41が、ステージ40の他方の側面にはリニアスケール42がそれぞれ設置され、リニアスケール42と対向する位置には測定ヘッド43を設けて位置検出手段44を構成する。また、駆動力伝達部材41には、その長手方向に対して垂直に超音波モータ31の押圧部材36を当接させている。ステージ40の移動に伴う位置検出手段44からの位置情報と、予め設定してあるステージ40の移動プロファイルに基づく基準位置情報との偏差に応じて変化するパラメータを基に制御部45にて、例えばPID演算処理を行ってドライバ46に超音波モータ31への指令信号を出力するフィードバック制御を行うことにより、超音波モータ31がその指令信号に応じて駆動し、その押圧部材36との磨擦駆動によりステージ40をガイド部材39に沿って移動させるようになっている。
なお、図中47は超音波モータ31を収容するケースである。超音波モータ31はケース47内において、4つのバネ48により挟持されており、超音波モータ31の後端とケース47との間に設けられたスプリング49によって超音波モータ31の押圧部材36を駆動力伝達部材41に押し付けるようになっている。
また、50は超音波モータ31の押し付け力を測定するためのロードセルである。
超音波モータ31の押圧部材36は、駆動力伝達部材41に押し付けられた状態で摺動することから、耐磨耗性に優れた材料により形成する必要があり、このような材料としてアルミナを主成分とし、副成分として炭化チタンを含有するアルミナ質焼結体により形成した押圧部材が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
特開2003−18870号公報
この超音波モータ31の押圧部材36は、ある程度磨耗や脱粒を抑えられる。しかし、精密測定装置,半導体製造装置等のパーティクルの抑制が厳しく要求される装置にこの超音波モータ31を用いた案内装置37を搭載すると、発生した磨耗粉や脱粒粉がパーティクルとなり、必ずしもこの要求を十分満たすものではなかった。
本発明は、上述のような課題を解決するためのものであって、可動体を磨擦駆動させてもパーティクルの発生が少ない超音波モータおよび案内装置を提供するものである。
本発明の超音波モータは、振動体と、該振動体の振動を相手部材に伝達する押圧部材とを備えてなる超音波モータにおいて、前記押圧部材の少なくとも表面は、酸化アルミニウムが60質量%以上70質量%以下であり、かつ炭化チタンが30質量%以上40質量%以下の焼結体により形成してなり、前記焼結体の切断面における少なくとも1本の10μm以上の直線上に存在する前記炭化チタンの結晶粒子の個数の比率は、前記直線上に存在する前記炭化チタンの結晶粒子の個数および前記酸化アルミニウムの結晶粒子の個数の合計に対して55%以上75%以下であることを特徴とする。
本発明の案内装置は、超音波モータを構成する前記押圧部材を可動体に当接させて配置し、前記超音波モータの振動を前記押圧部材を介して伝達することにより前記可動体を磨擦駆動させるようにしたことを特徴とする。
本発明の超音波モータによれば、酸化アルミニウムの結晶粒子より硬度が高い炭化チタンの結晶粒子は分散して酸化アルミニウムの結晶粒子に対してアンカー効果を及ぼす。その結果、本発明の超音波モータによって、可動体を磨擦駆動させても、結晶粒子は脱粒しにくくなって、パーティクルの発生を抑えることできる。さらに、押圧部材の製造工程において、スライシングマシーンやダイシングソーを用いて基板から押圧部材を切り出しても、結晶粒子はほとんど脱粒しなくなる。
また、本発明の案内装置によれば、パーティクルの発生が抑えられているため、信頼性が高い。
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、本実施形態)について図面を用いて説明する。
図1に示すように、本実施形態の超音波モータ1は、超音波領域の振動を発生させる圧電セラミック板2の一方の主面に格子状に配置された電極3a,3b,3c,3dを備えている。また、圧電セラミック板2の他方の主面には、ほぼ全面に電極4が形成された振動体5と、振動体5の端面に接続され、振動体5の振動を相手部材に伝達する押圧部材6とを備えている。
超音波モータ1は、例えば多重モード型である。圧電セラミック板2は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸バリウム、ニオブ酸リチウムチタン酸ジルコン酸鉛(PZT),チタン酸鉛(PT),チタン酸バリウム(BT),ビスマス(Bi)層状化合物,タングステンブロンズ化合物またはニオブ(Nb)酸アルカリ化合物等のペロブスカイト構造を示す化合物のいずれかで形成すればよい。
また、対角線上に配置された電極3a,3dが配線7aによって、また電極3b,3cが配線7bによって電気的に接続されている。
そして、一方の主面に配置された電極3aと電極3bとに位相を90°異ならせた電圧を印加するとともに、他方の主面に形成された電極4を接地することにより、圧電セラミック板2に縦振動と横振動を発生させ、これらの振動の合成によって押圧部材6をある方向に楕円運動させることができるようになっている。また、電極3aと電極3bにそれぞれ位相を反転させた電圧を印加することにより押圧部材6を前記方向に対して反対方向に楕円運動させることができるようになっている。
この結果、押圧部材6が押し当てられた可動体8は、図2(a),(b)に示すように、押圧部材6の回転方向に移動する。
なお、電圧を印加しない状態では、可動体8は、押し当てられた押圧部材6に保持されて、停止状態が維持される。
本実施形態の超音波モータ1を構成する押圧部材6の少なくとも表面は、酸化アルミニウムが60質量%以上70質量%以下であり、かつ炭化チタンが30質量%以上40質量%以下の焼結体を有している。また、焼結体の切断面における少なくとも1本の10μm以上の直線上に存在する炭化チタンの結晶粒子の個数の比率は、この直線上に存在する炭化チタンの結晶粒子の個数および酸化アルミニウムの結晶粒子の個数の合計に対して55%以上75%以下である。
押圧部材6は、酸化アルミニウムが有する機械的特性,耐磨耗性および耐熱性をできるだけ維持しながら、炭化チタンにより速やかに電荷を除去したり、破壊靱性を調整したりするように構成されている。押圧部材6における炭化チタンの含有量は、導電性および機械加工性に影響を及ぼす。すなわち、炭化チタンの含有量が少ない場合、体積固有抵抗が高くなることで導電性が低下して、押圧部材6および可動体8から脱粒した結晶粒子等のパーティクルが押圧部材6に付着しやすい。一方、炭化チタンの含有量が多いと、押圧部材6の靱性が高くなり機械加工性は低下する。
本実施形態で炭化チタンの含有率を30質量%以上40質量%以下としたのは、この範囲では高い導電性および高い機械加工性を維持することができるからである。
押圧部材6を構成する元素100質量%(但し、炭素(C)および酸素(O)を除く。)中における酸化アルミニウムおよび酸化チタンの比率は、蛍光X線分析法またはICP(Inductivity Coupled Plasma)発光分析法によりAlおよびTiの各比率を求め、Alについては酸化物に、Tiについては炭化物に換算すればよい。
押圧部材6の導電性については体積固有抵抗を求めて評価すればよく、体積固有抵抗は、4端子法に基づいて測定すればよい。体積固有抵抗は、押圧部材6に帯電した電荷を良好に除去できるという点から、2×10―1Ω・m以下であることが好ましく、特に2×10―3Ω・m以下であることが好適である。また、押圧部材6の機械加工性については、研磨加工における単位時間当たりの研磨量を測定することにより評価すればよい。
このような押圧部材6は、主成分および副成分がそれぞれAlおよびTiCである複合焼結体からなり、焼結助剤としてTiOが用いられる。このTiOは、焼成工程で焼成雰囲気中に含まれる微量の一酸化炭素(CO)により、式(1)に示すようにTiOに還元される。還元されたTiOは、式(2)に示すように、TiCに固溶して、新たにTiC(x+y<1、かつx>>y)を生成する。なお、x=0.85〜0.9,y=0.1〜0.15である。
TiO+CO→TiO+CO・・・(1)
TiO+TiC→TiC(x+y<1、かつx>>y)・・・(2)
生成したTiCは、TiOの固溶量yに応じて密度が異なり、固溶量yを0.15にすると、押圧部材6の密度が最も大きくなる。
焼結助剤として添加したTiOは、そのほとんどがTiCに変化する。特に、x=0.85〜0.9,y=0.1〜0.15の範囲では、TiCへのTiOの固溶により内部に発生する直径が300nm〜500nmの微小な気孔を低減でき、気孔の凝集も抑制することができる。その結果、焼結体における気孔の平均気孔径を200nm以下とし、焼結体における気孔の面積占有率を0.03%以下とすることができる。
この原子数xおよびyを求めるには、まず、蛍光X線分析法またはICP発光分光分析法により、AlおよびTiの含有量を測定し、CおよびOの含有量については、炭素分析装置および酸素分析装置を用いて測定する。次に、Alを酸化物に換算し、酸素分析装置を用いて測定したO量からAlの酸化物換算に必要なO量を差し引いたものがTiCのO量となる。これにより、Ti,C,Oの各元素の含有量が明らかとなり、これらの各元素の含有量をTi,Cについては原子量、Oについては分子量で除すことにより各元素のモル数が求められ、Tiのモル数を1としたときの各元素の比がxおよびyの原子数となる。
あるいは、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope(TEM))を用いて、エネルギー分散型X線分光法(Energy dispersive X-ray Spectroscopy(EDS))により、原子数xおよびyを求めてもよく、所望の精度に応じて測定精度の高い方法を用いればよい。
本実施形態では、押圧部材6を形成する焼結体の切断面において、少なくとも1本の10μm以上の直線上に存在する炭化チタンの結晶粒子の個数を、直線上に存在する炭化チタンの結晶粒子の個数および酸化アルミニウムの結晶粒子の個数の合計に対して55%以上75%以下にする。これにより、酸化アルミニウムの結晶粒子より硬度が高い炭化チタンの結晶粒子は、分散して酸化アルミニウムの結晶粒子に対してアンカー効果を及ぼす。その結果、磨擦駆動させているときに結晶粒子は脱粒しにくくなって、パーティクルの発生も抑えることできる。さらに、押圧部材の製造工程において、スライシングマシーンやダイシングソーを用いて基板から押圧部材を切り出しても、結晶粒子はほとんど脱粒しなくなる。
ここで、炭化チタンの結晶粒子の個数の比率を求めるのに焼結体の切断面における少なくとも1本の直線の長さを10μm以上としたのは、以下の理由による。本実施形態の超音波モータ1を構成する押圧部材6を形成する焼結体の平均結晶粒径が0.25μm以下であって、直線の長さが10μm以上であれば、焼結体全体の炭化チタンの結晶粒子の個数および酸化アルミニウムの結晶粒子の個数の合計に対する炭化チタンの結晶粒子の個数の比率を精度よく求めることができるからである。なお、測定の精度を十分に確保しつつ必要以上に手間をかけ過ぎないようにするには、直線の長さの上限は100μm以下とすることが好適である。
また、この直線上に存在する炭化チタンの結晶粒子の個数および酸化アルミニウムの結晶粒子の個数の合計に対する炭化チタンの結晶粒子の個数の比率については、以下のような手順で求めることができる。
まず、押圧部材6の任意の面をダイヤモンド砥粒を用いて研磨加工して鏡面とする。その後、この面を燐酸により数10秒程度エッチング処理する。次に、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope(SEM))を用いて、エッチング処理した面のうちで任意の場所を選び、倍率を10,000〜13,000倍程度で撮影して5μm×8μmの範囲の画像(以下、この画像をSEM画像という。)を得る。得られたSEM画像を例えばJtrimというフリーソフトを用いて画像処理する。具体的には、SEM画像をグレースケールに変換し、その後、フィルターによって細かいノイズを除去して、SEM画像よりもコントラストを強調した画像を求める。
次に、このコントラストが強調された画像にこの画像の輝度(明暗)を強調する処理を行なった後に、2値化処理をする。この処理によって得られた画像により、その画像における各結晶粒子が占める面積を画素数として表示させる。なお、2値化処理とは画像の濃度を白か黒の2つの値に変換する処理をいい、この2値化処理では、酸化アルミニウムの結晶粒子は黒色、炭化チタンの結晶粒子は白色として処理される。
そして、例えば「画像から面積」(製作者:赤尾鉄平)というフリーソフトを用いて、表示された画素数から炭化チタンの結晶粒子および酸化アルミニウムの結晶粒子がそれぞれ占有する面積に変換する。次に、これらの結晶粒子の占有する面積の合計を100μmとした場合の炭化チタンの結晶粒子および酸化アルミニウムの結晶粒子の面積をそれぞれ算出する。次に、算出したそれぞれの結晶粒子の面積が占める部分を正方形とみなして、その正方形の一辺の長さを求め、それぞれの平均結晶粒径で除すことで炭化チタンおよび酸化アルミニウムの各結晶粒子の個数を求めることができる。そして、得られた炭化チタンの結晶粒子の個数を炭化チタンおよび酸化アルミニウムの各結晶粒子の個数の合計で除することによって、任意の10μmの直線上に存在する炭化チタンの結晶粒子の個数および酸化アルミニウムの結晶粒子の個数の合計に対する炭化チタンの結晶粒子の個数の比率を算出することができる。なお、任意の10μm以上100μm以下の直線上にある炭化チタンの結晶粒子の比率を求める場合には、この炭化チタンの結晶粒子の個数の比率は基本的にはどの場所でも変わらないので、前述の結晶粒子の占有する面積の合計を100μm〜10000μmの範囲に設定すればよい。
また、炭化チタンの結晶粒子の平均結晶粒径の大きさによって、超音波モータ1を構成する押圧部材6の加工性が異なる。炭化チタンの結晶粒子の平均結晶粒径が小さいと、酸化アルミニウムの結晶粒子の異常な粒成長が抑制されやすくなる。このため、過大な酸化アルミニウムの結晶粒子が存在しないようになり、結晶粒子は脱粒しにくくなる。
特に、押圧部材6を形成する焼結体における炭化チタンの結晶粒子は、平均結晶粒径が0.25μm以下であることが好適である。平均結晶粒径が0.25μm以下の微粒な炭化チタンの結晶粒子により、酸化アルミニウムの結晶粒子の異常な粒成長がより抑制されやすくなるために、結晶粒子はさらに脱粒しにくくなるからである。
また、平均結晶粒径が0.25μm以下であると、個々の結晶粒子が小さいために結晶粒界は多くなり、押圧部材6を得るための板状の焼結体を短冊状、角柱状に順次切断するときに発生した応力は結晶粒界により吸収あるいは緩和が進む。このため、押圧部材6内における残留応力は低減する。
押圧部材6を形成する焼結体の炭化チタンの平均結晶粒径(DT)と酸化アルミニウムの平均結晶粒径(DA)との関係は、スライシングマシーンやダイシングソーで切断するときの加工性に影響を与える。炭化チタンの平均結晶粒径(DT)に対する酸化アルミニウムの平均結晶粒径(DA)の比(DA/DT)が大きくなると、軟質な酸化アルミニウムが表面に多く露出した状態になる。このため、表面を研磨した場合、研磨した面の表面粗さが大きくなる傾向が強くなる。一方、炭化チタンの平均結晶粒径(DT)に対する酸化アルミニウムの平均結晶粒径(DA)の比(DA/DT)が小さくなると、硬質な炭化チタンが表面に多く露出した状態になるので、加工効率が低下する傾向が強くなる。
したがって、押圧部材6を形成する焼結体の炭化チタンの平均結晶粒径(DT)に対する酸化アルミニウムの平均結晶粒径(DA)の比(DA/DT)を1以上2以下とすることが好ましい。焼結体中の任意の断面における酸化アルミニウムが占める面積は、炭化チタンが占める面積の1〜2倍程度になるため、短冊状または角柱状に切断するときの加工効率を低下させることなく、表面粗さの小さい表面を形成することができる。
また、焼結体における脱粒を抑制するという観点から、焼結体における結晶粒子は、平均結晶粒径が0.25μm以下(但し、0μmを除く。)、最大結晶粒径が1μm以下であることが好適である。
なお、上述した焼結体の平均結晶粒径,最大結晶粒径,炭化チタンの平均結晶粒径(DT)および酸化アルミニウムの平均結晶粒径(DA)は、以下のような手順で求めることができる。
まず、焼結体の任意の面をダイヤモンド砥粒を用いて研磨加工して鏡面とした後、この面を燐酸により数10秒程度エッチング処理する。次に、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、エッチング処理した面のうちで任意の場所を選び、倍率を10000〜13000倍程度で撮影した5μm×8μmの範囲の画像(以下、この画像をSEM画像と称す。)を得る。そして、SEM画像を例えば「Image-Pro Plus」という画像解析ソフト(日本ビジュアルサイエンス(株)製)を用いて解析することにより、焼結体の平均結晶粒径,最大結晶粒径,炭化チタンの平均結晶粒径(DT)および酸化アルミニウムの平均結晶粒径(DA)を求めることができ、その比(DA/DT)も算出することができる。
加えて、押圧部材6を形成する焼結体における酸化アルミニウムの結晶粒子は、平均結晶粒径が0.25μm以下であることがより好適である。酸化アルミニウムの結晶粒子の平均結晶粒径が0.25μm以下であることによって、酸化アルミニウムの結晶粒子と炭化チタンの結晶粒子とが共に微粒となるために、結晶粒子が脱粒するおそれをさらに低減することができるからである。
また、押圧部材6を形成する焼結体は、平均気孔径については200nm以下であることが好ましく、前記焼結体における気孔の面積占有率については0.03%以下であることが好ましい。
焼結体における気孔の平均気孔径が200nm以下であると、焼結体を切断しても、気孔の周囲に存在する粒子間結合が弱い粒子にクラックが伝播しにくくなる。また、焼結体における気孔の面積占有率が0.03%以下であると、気孔が占める面積が極めて小さいことから、焼結体を加工しているときに気孔同士が起点となって発生するルーズクラックを抑制することができ、脱粒のおそれをさらに低減することができる。
また、気孔は各結晶粒子の三重点や二面界粒界部ではなく、結晶粒子の内部に存在することがより好適である。気孔が結晶粒子の内部に存在することで、脱粒のおそれをさらに低減することができるからである。
さらに、気孔が結晶粒子の内部や界面で凝集せずに散在することがより好適である。気孔が凝集せずに散在することで、気孔同士が起点となって発生するルーズクラックを抑制することができ、脱粒のおそれをさらに低減することができるからである。
また、押圧部材6を形成する焼結体は、焼結助剤として、酸化マグネシウム,酸化ジルコニウム,酸化珪素,酸化イットリウム,酸化イッテルビウム等の酸化物を含むと、焼結が促進されるので、焼結体を容易に得ることができる。しかしながら、マグネシウム,ジルコニウム,シリコン,イットリウムおよびイッテルビウムはいずれも常磁性金属であるため、これら金属の酸化物が多くなり過ぎると、磁性を示すようになり、磁性を嫌う用途、例えば、電子ビーム露光装置等に搭載する案内装置としては用い難くなる。このような観点から、前記焼結体は、焼結助剤として常磁性の金属酸化物を0.6質量%以下含んでいることが好適である。一方、常磁性の金属酸化物が0.1質量%未満となると、焼結体を得ることが難しくなるので、常磁性の金属酸化物は0.1質量%以上含むことが好適である。
なお、酸化アルミニウム,炭化チタンおよび焼結助剤としての常磁性の金属酸化物に含まれている不可避不純物は微量混入していても何等差し支えない。
また、図3に示す案内装置9は、超音波モータ1を構成する押圧部材6を可動体8に当接させて配置し、超音波モータ1の振動を押圧部材6を介して伝達することにより可動体8を磨擦駆動させるようにしたものである。この案内装置9は、ベース盤10上にクロスローラガイド等の一対のガイド部材11を備え、ステージ12と、ステージ12を超音波モータ1の駆動力によって摩擦駆動させる駆動力伝達部材13とからなる可動体8をガイド部材11によって直線的に案内するようになっている。駆動力伝達部材13は、例えば、
酸化アルミニウムの含有量が99.5質量%以上であって、ビッカース硬度が16GPa以上の酸化アルミニウム質焼結体からなるものであり、押圧部材6に対向する面の表面粗さは、算術平均高さ(Ra)で0.04μm以下であることが好適である。
なお、押圧部材6に対向する面の算術平均高さ(Ra)はJIS B 0601:2001(ISO 4287:1997)に準拠して求めればよい。ここで、測定長さおよびカットオフ値をそれぞれ5mmおよび0.8mmとし、触針式の表面粗さ計を用いて測定する場合であれば、先端半径が2μmの触針を当て、触針の走査速度は0.5mm/秒とすればよい。
また、ステージ12の一方の側面には駆動力伝達部材13を、可動体8の他方の側面にはリニアスケール14をそれぞれ設置し、リニアスケール14と対向する位置には測定ヘッド15を設けて位置検出手段16を構成するとともに、駆動力伝達部材13には、その長手方向に対して垂直に超音波モータ1の押圧部材6を当接させてあり、可動体8の移動に伴う位置検出手段16からの位置情報と、予め設定してある可動体8の移動プロファイルに基づく基準位置情報との偏差に応じて変化するパラメータを基に制御部17にて例えばPID演算処理を行ってドライバ18に超音波モータ1への指令信号を出力するフィードバック制御を行うことにより、超音波モータ1をその指令信号に応じて楕円振動させ、超音波モータ1の押圧部材6と可動体8の駆動力伝達部材13との磨擦駆動により可動体8をガイド部材11に沿って移動させるようになっている。
なお、超音波モータ1は、ケース19に収容されており、超音波モータ1はこのケース19内で、バネ等の挟持部材20により挟持され、超音波モータ1の後端とケース19との間に設置されたスプリング等の弾性部材21により、超音波モータ1の押圧部材6を駆動力伝達部材13に押し付けられるようになっている。この押し付けられる力は、ロードセル22によって検出される。
なお、図3では可動体8が直線運動する案内装置を例にとって説明したが、可動体が回転運動する案内装置にも適用することができる。
次に、本実施形態の超音波モータを構成する押圧部材の製造方法の一例について説明する。
本実施形態の超音波モータ1を構成する押圧部材6を得るためには、酸化アルミニウムの粉末を60質量%以上70質量%以下、酸化チタンの粉末を0.2質量%以上10質量%以下および残部を炭化チタンの粉末とした原料をボールミル,ビーズミル,振動ミル,コロイドミル,アトライターあるいは高速ミキサー等に投入して、直径が2.88mm以下の粉砕用のビーズにより平均粒径が0.5μm以下(但し、0μmを除く。)になるまで均一に混合し、粉砕する。このビーズを用いて混合して粉砕することにより、焼結体の平均結晶粒径を0.25μm以下にすることができる。
粉砕した原料の平均粒径は、液相沈降法,遠心沈降光透過法,レーザー回折散乱法あるいはレーザードップラー法等により測定することができる。
なお、焼結を促進してより緻密にするためには、前記原料に対し焼結助剤として常磁性の金属酸化物、例えば酸化マグネシウム,酸化ジルコニウム,酸化珪素,酸化イットリウム,酸化イッテルビウムの少なくともいずれか1種を0.1質量%以上0.6質量%以下加えてもよい。
次に、粉砕した原料に結合剤,分散剤等の成形助剤を添加して均一に混合した後に、転動造粒機,噴霧乾燥機,圧縮造粒機等の各種造粒機を用いて、例えば平均粒径を100μm以下の顆粒にする。平均粒径を100μm以下の顆粒としたのは、粉砕された原料が凝集したり、原料を構成する組成が分離したりする現象を起こりにくくするためであり、特に平均粒径を10μm以下の顆粒とすることがより好適である。そして、得られた顆粒を乾式加圧成形,冷間等方静水圧成形等の成形手段で所望の形状に成形して成形体とした後に、加圧焼結装置内に配置する。
図4は、加圧焼結装置内におけるこの成形体の配置状態を示す断面図である。
板状の成形体23は、その両主面よりカーボン質の離型材24を介して黒鉛製スペーサ25で挟まれ、段積み状態で配置される。このようにカーボン質の離型材24を介することで、TiOが焼成工程で還元されて発生する二酸化炭素(CO)が容易に排出されるため、焼結体の密度のばらつきを制御することができるからである。このように成形体23を配置した後に、アルゴン,ヘリウム,ネオン,窒素あるいは真空等の雰囲気中で1400℃以上1700℃以下の範囲の温度で加圧焼結することで、板状の焼結体を得ることができる。この板状の焼結体は、例えば、直径が102mm以上153mm以下、厚みが4.2mm以上5mm以下の基板である。ここで、加圧焼結温度は1400℃以上1700℃以下としたのは、加圧焼結温度が1400℃未満では十分焼結させることができないからであり、加圧焼結温度が1700℃を超えると、炭化チタンの粉末が成長し結晶組織が不均一になりやすく、炭化チタンが本来備えている機能を十分に発揮することができなくなるからである。また、加圧焼結温度を1400℃以上1700℃以下の範囲の温度とすることで、炭化チタンの粉末を均一に分散することができる。
焼結方法について加圧焼結を選択したのは、焼結体の緻密化を促進し、押圧部材に求められる強度を得るためであり、加圧力は30MPa以上とすることが好適である。図4中の白抜き矢印はこの加圧力の方向を示している。
なお、加圧焼結後に、必要に応じて熱間等方加圧焼結(HIP)を行なってもよい。熱間等方加圧焼結(HIP)を行なうことで抗折強度を容易に800MPa以上にすることができる。
また、炭素質材料を含む遮蔽材25を成形体22の周囲に配置して加圧焼結することが好適である。このように成形体22の周囲に遮蔽材25を配置することで、炭化チタンの粒子から酸化チタンの粒子への変質を防ぎ、機械的特性の優れた焼結体とすることができるからである。
上述の方法で得られた焼結体をスライシングマシーンやダイシングソーを用いて短冊状、角柱状に順次切断することにより、押圧部材6を得ることができ、必要に応じて、側面をに研削加工を施し、円柱状にしてもよい。
さらに、研磨により、可動体8に当接する面(以下、可動体に当接する面を当接面という。)の表面粗さは、算術平均高さ(Ra)で0.3μm以下として、曲率半径が180mm以上の球面からなる凸状に形成しても好適である。当接面をこのようにすることにより、可動体8と偏当たりしたとしても、磨擦力の変動を大幅に低減することができ、安定した磨擦駆動が得られるからである。
なお、当接面の算術平均高さ(Ra)はJIS B 0601:2001(ISO 4287:1997)に準拠して求めればよい。ここで、測定長さおよびカットオフ値をそれぞれ5mmおよび0.8mmとし、触針式の表面粗さ計を用いて測定する場合であれば、先端半径が2μmの触針を当て、触針の走査速度は0.5mm/秒とすればよい。
また、当接面の曲率半径は、3次元形状測定機を用いて求めればよい。
上述した製造方法で得られた押圧部材6は、焼結体の切断面における少なくとも1本の10μm以上の直線上に存在する炭化チタンの結晶粒子の個数の比率が、直線上に存在する炭化チタンの結晶粒子の個数および酸化アルミニウムの結晶粒子の個数の合計に対して55%以上75%以下であるので、スライシングマシーンやダイシングソーを用いて短冊状、角柱状に順次切断しても、結晶粒子はほとんど脱粒しなくなる。
そして、このような製造方法で得られた押圧部材6を振動体4に取り付けることによって得られた超音波モータ1を案内装置9に搭載すれば、押圧部材6の磨耗を少なくできるだけではなく、相手部材である駆動力伝達部材13の磨耗も少なくすることができ、かつ傷等の発生も低減させることができるため、案内装置を長期間にわたり駆動させることができる。また、押圧部材6と駆動力伝達部材13との間にパーティクルの介在を減少させられるため、押圧部材6と駆動力伝達部材13との接触状態を安定させることができ、可動体8の位置決め精度に悪影響を与えることがない。さらに、駆動力伝達部材13との磨擦熱によって、押圧部材6の当接面に酸化アルミニウムや炭化チタンより磨擦係数の大きい酸化チタンを生成させることができるため、可動体8を高速移動させるために超音波モータ1の駆動力を高めても滑りにくくなるため、ステージ13を高速で移動させることができる。
以上、本実施形態では、多重モード型の超音波モータ1を例にとって説明したが、本発明の超音波モータは、単一振動モードの定在波型や進行波型、複数振動モードのモード変換型、複合振動型等の超音波モータにも適用できる。
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
まず、酸化アルミニウム,炭化チタン,酸化チタン,酸化イッテルビウムの各種粉末,成形用バインダーおよび分散剤を所定量ビーズミルに投入し、メディアとしてビーズの平均粒径が表1に示す値のものを用い、原料の粉砕粒径が表1に示す粉砕粒径となるようにして、14種類のスラリーを作製した。
なお、スラリー中の原料の粉砕粒径は、JIS Z 8823−2:2004で規定する光透過式遠心沈降法を用いて平均粒径を測定した。その値を表1に示す。作製した各スラリーを噴霧乾燥法を用いて顆粒とした。その後、この顆粒を成形型に充填し乾式加圧成形して14種類の成形体を得た。次に、この成形体を図4に示すように種類毎に14段配置し、真空雰囲気中、1600℃で加圧焼結した後、熱間等方加圧焼結(HIP)を行ない、直径が152.4mm、厚みが4.2mmの試料No.1〜14の焼結体を作製した。
そして、蛍光X線分析装置(理学電機工業(株)製、RigakuZSX100e)を用いてこの焼結体を形成する元素100質量%(但し、炭素(C)および酸素(O)を除く。)に対するAlおよびTiの各比率を測定した。Alについては酸化アルミニウムに、Tiについては炭化チタンに換算した。各試料における酸化アルミニウムおよび炭化チタンの比率を表1に示す。
なお、酸化イッテルビウムについては、いずれの試料においても1質量%未満の微量であったため、表1には記載していない。
各試料の導電性については、JIS C 2141−1992に準拠して体積固有抵抗を測定して、体積固有抵抗が4×10−1Ω・m以下である試料を合格とし、4×10−1Ω・mを超える試料は、この試料から押圧部材を形成した場合、押圧部材に帯電した電荷を速やかに除去することができないために、不合格とした。
また、各試料の密度については、JIS R 1634−1996に準拠して測定して、密度が4.26g/cm以上である試料を合格とした。4.26g/cm未満の試料では、この試料から押圧部材を形成すると、表面に気孔が発生しやすくなって、可動体を磨擦駆動させているときに押圧部材に存在する気孔の周辺から酸化アルミニウムの結晶粒子の脱粒のおそれが高くなるので不合格とした。
また、10μm以上の直線上に存在する炭化チタンの結晶粒子の個数および酸化アルミニウムの結晶粒子の個数の合計に対する炭化チタンの結晶粒子の個数の比率については、以下のような手順で求めた。
即ち、試料の表面をダイヤモンド砥粒を用いて研磨加工して鏡面とした。その後、この面を燐酸により数10秒程度エッチング処理した。次に、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、エッチング処理した面のうちで任意の場所を選び、倍率13,000倍で撮影してSEM画像を得た。得られたSEM画像から「Jtrim」というフリーソフトと「画像から面積」(製作者:赤尾鉄平)というフリーソフトとを用いてそれぞれの結晶粒子の面積を求めその面積を正方形とみなし、その一辺をそれぞれの平均結晶粒径を用いて除すことで10μmの直線上に炭化チタンの結晶粒子および酸化アルミニウムの結晶粒子それぞれの個数を求めた。この結果から、10μmの直線上に存在する炭化チタンの結晶粒子の個数および酸化アルミニウムの結晶粒子の個数の合計に対する炭化チタンの結晶粒子の個数の比率を求めた。その結果を表1に示す。
なお、炭化チタンの結晶粒子および酸化アルミニウムの結晶粒子の平均結晶粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用い、倍率を13000倍にして撮影した5μm×8μmの範囲の画像を、画像解析ソフト(Image-Pro Plus、日本ビジュアルサイエンス(株)製)で解析することで求めた。
また、各試料の機械加工性については、各試料の中心部から長さが70mm,幅が3mm,厚みが4.2mmの短冊状の試料10本をダイヤモンドブレードを備えたスライシングマシーンで切り出し、切断面に発生するチッピングの最大値を金属顕微鏡を用いて、倍率400倍で測定し評価した。
なお、このときのダイヤモンドブレードにはSD1200を用い、このダイヤモンドブレードの回転数を10000rpmとし、送り速度を100mm/分とし、1回の切り込み量を2mmとして切り出した。
また、チッピングの最大寸法が8μm以上ある場合には、可動体を磨擦駆動させているときにパーティクルの発生が多くなるために、問題ありとして不合格とし、また、チッピングの最大寸法が8μm未満のときは問題なしとして合格とした。
これら測定値は表1に示す通りである。
表1に示す通り、試料No.1〜11は、体積固有抵抗が4×10−1Ω・m以下、密度が4.26g/cm以上であることから体積固有抵抗および密度については合格であるが、本発明の範囲外である試料No.1〜3,5は、チッピングの大きさは8μm以上であることから不合格とした。これは、炭化チタンの結晶粒子の個数の比率が55%未満であるために、焼成のときに異常な粒成長をした酸化アルミニウムの結晶粒子が発生し、焼結体から短冊状に切り出したときに、この酸化アルミニウムの結晶粒子が脱粒したものと思われる。一方、本発明の試料No.4,6〜11は、チッピングの大きさは8μm未満であることから合格とした。これらは、炭化チタンが30質量%以上40質量%以下の本発明の範囲内であったため、導電性,機械加工性ともに高い。そして、各試料の切断面における10μm以上の直線上に存在する炭化チタンの結晶粒子の個数の比率が55%以上75%以下であるために、密度が高く緻密化されており、スライシングマシーンによる切り出しによって発生するチッピングも小さいことが分かる。また、本発明の範囲外である試料No.12〜14については、チッピングの大きさが8μm以上であることから不合格とした。試料No.12,13については、炭化チタンが25質量%と30質量%に比べ少ないために炭化チタンの結晶粒子の個数および酸化アルミニウムの結晶粒子の個数の合計に対して相対的に炭化チタンの結晶粒子の個数が少なくなる。このため、炭化チタンの結晶粒子の個数の比率が55%未満となって焼成のときに異常な粒成長をした酸化アルミニウムの結晶粒子が発生して、焼結体から短冊状に切り出したときに、この酸化アルミニウムの結晶粒子が脱粒したものと思われる。さらに、試料No.14については、炭化チタンの結晶粒子の個数の比率が75%より高いことから、焼結工程で酸化アルミニウムの焼結が阻害され、焼結体から短冊状に切り出したときに、試料に存在する気孔の周辺から酸化アルミニウムの結晶粒子の脱粒が発生したものと思われる。
<実施例2>
次に、炭化チタンの結晶粒子の平均結晶粒径と加工性との関係を確認するために、スライシングマシーンで切り出した切断面に発生するチッピングのうち径方向の寸法が最も大きいものの値を表2に示す。このときのダイヤモンドブレードには実施例1と同一規格のものを使用した。また、スライシングマシーンの条件としては、実施例1の条件に対して送り速度を140mm/分として、加工条件を厳しくした。
まず、実施例1で用いた試料No.8の原料を用いて、表2に示すように粉砕時間が異なるスラリーを作製した。作製した各スラリーを噴霧乾燥法で顆粒とした後に、この顆粒を成形型に充填し、乾式加圧成形して5種類の成形体を作製して、残りの工程および焼結体の大きさは実施例1と同一として、試料No.15〜19を作製した。
また、各試料の炭化チタンの結晶粒子の平均結晶粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用い、倍率を13000倍にして撮影した5μm×8μmの範囲の画像を画像解析ソフト(Image-Pro Plus、日本ビジュアルサイエンス(株)製)で解析して求めた。また、各試料の機械加工性については、各試料の中心部から長さが70mm,幅が3mm,厚みが4.2mmの短冊状の試料10本をダイヤモンドブレードを備えたスライシングマシーンで切り出し、切断面に発生するチッピングの最大値は金属顕微鏡を用いて倍率400倍で測定して、チッピングの最大値を測定した。
これら測定値は表2に示す通りである。
表2に示すように、炭化チタンの結晶粒子の平均結晶粒径が0.25μm以下である試料No.17〜19は、ダイヤモンドブレードの送り速度を140mm/分として加工条件を厳しくして加工しても、TiC結晶粒子の平均結晶粒径が0.25μm以下と微粉のためにチッピングの最大値は6μm以下と小さく、良好であることが分かる。
<実施例3>
本実施例では、押圧部材を形成する焼結体について、平均気孔径および気孔の面積占有率と機械加工性との関係を確認した。
押圧部材6は、基本的に実施例1と同様の条件で作製した。ただし、本実施例では、実施例1で用いた試料No.9(表1参照)の原料を用いて表3に示すように粉砕粒径を異ならせて7種類のスラリーを作製し、これらのスラリーから試料No.20〜26を作製した。
平均気孔径および気孔の面積占有率は、焼結体の断面を「クロスセクションポリッシャー」(日本電子(株)製)にて加工して鏡面とした後に、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて得られるSEM画像に基づいて測定した。SEM画像は、鏡面における任意の場所を15視野(12.6μm×8.8μm)選び、倍率を10000倍にして15視野分撮影した。
平均気孔径は、得られたSEM画像から全気孔の最大長径を測定し、その平均値を算出した。平均気孔径の測定結果は、表3に示す通りである。
気孔の面積占有率の測定においては、まず得られたSEM画像から「Jtrim」というフリーソフトと「画像から面積」(製作者:赤尾鉄平)を用いて気孔の面積を求め、15視野における気孔の総面積を算出した。さらに、15視野分のSEM画像の総面積(12.6μm×8.8μm×15)の比率を求め、気孔の面積占有率を算出した。気孔の面積占有率の測定結果を表3に示す。
押圧部材の機械加工性は、基本的に実施例1と同様にしてチッピングの最大値として評価した。ただし、ダイヤモンドブレードは実施例1と同一規格のものを使用したが、実施例2と同様に、ダイヤモンドブレードの送り速度を140mm/分として、実施例1よりも加工条件を厳しく設定した。チッピングの最大値については、切断面における短冊片の長手方向の寸法が最も大きいものを選択し、表3に示す通りである。
表3に示すように、平均気孔径が200nm以下である試料No.22〜26は、ダイヤモンドブレードの送り速度を140mm/分として加工条件を厳しくしても、チッピングの最大値は6μm以下と小さく機械加工性に優れるものであった。特に、平均気孔径が100nm以下である試料No.25,26では、チッピングの最大値は3μm以下と機械加工性が良好であることが分かる。
気孔の面積占有率が0.03%以下である試料No.22〜26は、チッピングの最大値は6μm以下と小さく機械加工性に優れるものであった。特に、気孔の面積占有率が0.02%以下である試料No.25,26では、チッピングの最大値は3μm以下と機械加工性が良好であることが分かる。
実施例1〜3の結果から、本発明の超音波モータを用いれば、可動体を磨擦駆動させても、結晶粒子は脱粒しにくくなって、パーティクルの発生を抑えることが確認できた。
また、このような優れた本発明の超音波モータを用いて本発明の案内装置を作製すれば、可動体を磨擦駆動させても、パーティクルの発生が抑えられるため、信頼性が高い装置とすることができる。
<実施例4>
本実施例では、押圧部材を形成する焼結体に焼結助剤として含まれる常磁性の金属酸化物と最大磁束密度との関係を確認した。
押圧部材6は、基本的に実施例1と同様の条件で作製した。ただし、本実施例では、実施例1で用いた試料No.9(表1参照)の原料を用いて表4に示すように焼結助剤の種類および含有量を異ならせて8種類のスラリーを作製し、これらのスラリーから試料No.27〜34を作製した。
そして、押圧部材6を形成する材料と同一の材料から、長さ3mm、幅3mm、厚み1.2mmの板状体を作製して、交番磁力計((株)東京インスツルメンツ製 2900−04C型)を用いて、板状体の最大磁束密度を測定した。
これらの結果を表4に示す。
表4に示す通り、試料No.29,30,32,33は、焼結助剤として常磁性の金属酸化物を0.6質量%以下含んでいることから、最大磁束密度が低いことが分かる。このため、磁性を嫌う用途、例えば、電子ビーム露光装置等の案内装置に好適に用いることができる。
本発明の一態様に係る超音波モータを説明する図であり、(a)は超音波モータの正面図、(b)は背面図である。 本発明の一態様に係る超音波モータの動作を示す正面図である。 本発明の一態様に係る案内装置を説明する図であり、超音波モータを可動体の駆動源とする案内装置の平面図である。 加圧焼結装置内における成形体の配置状態を示す断面図である。 従来の超音波モータの一例を説明する図であり、(a)は超音波モータの正面図、(b)は背面図である。 従来の超音波モータを可動体の駆動源とする案内装置の一例を示す平面図である。
符号の説明
1: 超音波モータ
2:圧電セラミック板
3:電極
4:電極
5:振動体
6:押圧部材
7:配線
8:可動体
9: 案内装置
10:ベース盤
11:ガイド部材
12:ステージ
13:駆動力伝達部材
14:リニアスケール
15:測定ヘッド
16:位置検出手段
17:制御部
18:ドライバ
19:ケース
20:挟持部材
21:弾性部材
22:ロードセル
23:成形体
24:離型材
25:黒鉛製スペーサ
26:遮蔽材

Claims (9)

  1. 振動体と、該振動体の振動を相手部材に伝達する押圧部材とを備えてなる超音波モータにおいて、前記押圧部材の少なくとも表面は、酸化アルミニウムが60質量%以上70質量%以下であり、かつ炭化チタンが30質量%以上40質量%以下の焼結体を有してなり、前記焼結体の切断面における少なくとも1本の10μm以上の直線上に存在する前記炭化チタンの結晶粒子の個数の比率は、前記直線上に存在する前記炭化チタンの結晶粒子の個数および前記酸化アルミニウムの結晶粒子の個数の合計に対して55%以上75%以下であることを特徴とする超音波モータ。
  2. 前記焼結体における前記炭化チタンの結晶粒子は、平均結晶粒径が0.25μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。
  3. 前記焼結体における炭化チタンの平均結晶粒径(DT)に対する酸化アルミニウムの平均結晶粒径(DA)の比(DA/DT)は、1以上2以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の超音波モータ。
  4. 前記焼結体における結晶粒子は、平均結晶粒径が0.25μm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の超音波モータ。
  5. 前記焼結体における結晶粒子は、最大結晶粒径が1μm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の超音波モータ。
  6. 前記焼結体における気孔の平均気孔径は、200nm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の超音波モータ。
  7. 前記焼結体における気孔の面積占有率は、0.03%以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の超音波モータ。
  8. 前記焼結体は、焼結助剤として常磁性の金属酸化物を0.6質量%以下含んでいることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の超音波モータ。
  9. 請求項1乃至8のいずれかに記載の超音波モータを構成する前記押圧部材を可動体に当接させて配置し、前記超音波モータの振動を前記押圧部材を介して伝達することにより前記可動体を磨擦駆動させるようにしたことを特徴とする案内装置。
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