JP2010084000A - 新規架橋助剤、架橋性フッ素ゴム組成物および架橋ゴム物品 - Google Patents

新規架橋助剤、架橋性フッ素ゴム組成物および架橋ゴム物品 Download PDF

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Abstract

【課題】フッ素ゴムの架橋を円滑に進行させる架橋助剤、架橋速度が速く、架橋ゴム物品の生産性に優れる架橋性フッ素ゴム組成物、及び強度、硬度、モジュラス、圧縮永久歪み性に優れる架橋ゴム物品を提供する。
【解決手段】1,3,5−トリス(アクリロイルオキシ)アダマンタンなどの2個以上の不飽和結合を有する特定のアダマンタン誘導体からなる架橋助剤、及び該架橋助剤を含む架橋性フッ素ゴム組成物、それを架橋してなる架橋ゴム物品(例えば、シール材)。
【選択図】なし

Description

本発明は、新規架橋助剤、それを含有する架橋性フッ素ゴム組成物およびそれから得られる架橋ゴム物品に関する。
従来、フッ素ゴムをパーオキシド架橋する場合には、過酸化物に加えて、多官能性化合物を架橋助剤として配合し、フッ素ゴムの架橋性、及び、得られる架橋ゴム物品の特性の向上が図られている。該多官能性化合物としてはトリアリルイソシアヌレート(以下、TAICと略す)が好ましく用いられる(例えば、非特許文献1を参照。)。TAICを用いると、フッ素ゴムの架橋速度が向上できる上、フッ素ゴムの架橋点間に、耐熱性に優れるトリアジン環骨格が導入されることから、得られた架橋ゴム物品が、耐熱性及び機械的性質に優れるなど、大きな利点を有する。
しかし、TAICの性状は、液状である為に、フッ素ゴムに多量に配合することが容易でない。また、TAICの配合量を増加すると、ロールに対してフッ素ゴムの巻きつき性が悪くなり、加工性が低下する。成形時の金型汚染が生じ、架橋ゴムからのブリードアウトが発生じるなどの問題があり、フッ素ゴムへの配合量を多量に配合できなかった。そのため、単にTAICの配合量を増加することで、種々の要求特性を満足させることは、困難であった。
従来より、フッ素ゴムは、耐プラズマ性、耐熱性、耐薬品性に優れるという特長を活かして、シール材、ホース材、防振材、チューブ材、ベルト材等の用途に用いられている。最近、これらの用途において、架橋特性および耐圧縮永久歪み特性が一層向上した架橋ゴム物品が求められている。また、フッ素ゴムの成形加工において、架橋速度が速く、成形時間が短く、生産性に優れるフッ素ゴム組成物の開発が要請されている。
機能性ポリマーなどを得る上で有用な重合性化合物として、不飽和結合を有する特定のアダマンタン誘導体が、提案されている(特許文献1参照。)。しかし、特許文献1には、該アダマンタン誘導体がフッ素ゴムの架橋助剤として使用できることは記載されていなかった。
特開平11−35522号公報 里川編、ふっ素樹脂ハンドブック、616〜622頁、577〜578頁(日刊工業新聞、1990年発行)
本発明は、上記のような従来技術の有する問題点を解決し、架橋速度が速く、成形性に優れ、得られた架橋ゴム物品の強度が高く、圧縮永久歪みが低いなどの架橋特性に優れる、フッ素ゴム組成物、その架橋性フッ素ゴム組成物に用いることができる新規架橋助剤、それを含有する架橋性フッ素ゴム組成物から得られたその架橋ゴム物品を提供することを目的とする。
本発明は、下記の構成を有する新規架橋助剤、それを含有する架橋性フッ素ゴム組成物およびそれから得られるその架橋ゴム物品を提供する。
[1]2個以上の不飽和結合を有するアダマンタン誘導体からなる架橋助剤。
[2]前記アダマンタン誘導体が、下記一般式(1)で表される化合物である、上記[1]に記載の架橋助剤。
一般式(1):
Figure 2010084000
(式中、R、R、RおよびRは、水素原子、ハロゲン原子、アルケニル基およびアルキル基からなる群から選ばれる1種以上の置換基であり、同一でも異なっていてもよく、R、R、RおよびRのうち少なくとも2つがアルケニル基である。Xは、−OC(=O)−、−OCOO−、−O−、−COO−、-CONH−または−NHCO−である。nは0又は1であり、R、R、RまたはRが水素原子またはハロゲン原子であるとき、それに隣接する(X)nのnは0である。)
[3]フッ素ゴム、上記[1]又は[2]に記載の架橋助剤を含むことを特徴とする架橋性フッ素ゴム組成物。
[4]前記フッ素ゴムが、テトラフルオロエチレン/プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体からなる群から選ばれる1種以上である上記[3]に記載の架橋性フッ素ゴム組成物。
[5]さらに、有機過酸化物を含有する上記[3]又は[4]に記載の架橋性フッ素ゴム組成物。
[6]上記[3]〜[5]のいずれかに記載の架橋性フッ素ゴム組成物を、加熱し、架橋してなる架橋ゴム物品。
[7]前記架橋ゴム物品がシール材である上記[6]に記載の架橋ゴム物品。
本発明の架橋助剤は、フッ素ゴムの架橋を円滑に進行させる効果を有する。また、本発明の架橋性フッ素ゴム組成物は、パーオキシド架橋性、放射線架橋性などの架橋性に優れ、架橋速度が速く、架橋ゴム物品の生産性に優れる。また、本発明の架橋ゴム物品は、強度、硬度、モジュラス、圧縮永久歪み性に優れる。したがって、本発明の架橋ゴム物品は、これらの特性を活かして、シール材に適する。
本発明の架橋助剤は、2個以上の不飽和結合を有するアダマンタン誘導体からなり、好ましくは、下記一般式(1)で表される化合物である。以下、一般式(1)で表される化合物を化合物(1)ともいう。
一般式(1):
Figure 2010084000
(式中、R、R、RおよびRは、水素原子、ハロゲン原子、アルケニル基およびアルキル基からなる群から選ばれる1種以上の置換基であり、同一でも異なっていてもよく、R、R、RおよびRのうち少なくとも2つがアルケニル基である。Xは、−OC(=O)−、−OCOO−、−O−、−COO−、-CONH−または−NHCO−である。nは0又は1であり、R、R、RまたはRが水素原子またはハロゲン原子であるとき、それに隣接する(X)nのnは0である。)
化合物(1)において、R、R、RおよびRは、アルケニル基および水素原子がより好ましく、アルケニル基が最も好ましい。アルケニル基の具体例として、ビニル基、アリル基、メタアリル基、ブテニル基、ペンテニル基等が挙げられる。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、メタアリル基がより好ましい。アルキル基の具体例として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基がより好ましい。ハロゲン原子の具体例として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子がより好ましい。
Xは、−OC(=O)−、−OCOO−、−O−、−COO−、-CONH−または−NHCO−であり、−OC(=O)−、−OCOO−または−O−がより好ましく、−OC(=O)−が最も好ましい。すなわち、アダマンタン骨格を有するアルコールのエステルであることが最も好ましい。
化合物(1)のより好ましい具体例としては、下記化合物(2)〜(13)の化合物等が挙げられる。より好ましくは、化合物(4)、(5)、(9)及び(13)であり、最も好ましくは、化合物(4)の1,3,5−トリス(アクリロイルオキシ)アダマンタン及び化合物(5)の1,3,5−トリス(メタクリロイルオキシ)アダマンタン、及び化合物(13)の1,3,5,7−テトラキス(アクリロイルオキシ)アダマンタンである。
本発明の架橋助剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
Figure 2010084000
本発明の架橋性フッ素ゴム組成物は、フッ素ゴム、上記架橋助剤を含有する。
フッ素ゴムとしては、ビニリデンフルオライド/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオロライド/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド/クロロトリフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン/プロピレン共重合体、ヘキサフルオロプロピレン/エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、ビニリデンフルオライド/テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体等が挙げられる。
好ましいフッ素ゴムとしては、テトラフルオロエチレン/プロピレン系共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル系共重合体が挙げられる。
フッ素ゴムは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
フッ素ゴム中のフッ素含有量は、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、55質量%以上が最も好ましい。この範囲にあるとフッ素ゴムは、耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性、耐スチーム性に優れる。
該フッ素ゴムとして、上市されている好ましい例としては、「AFLAS150P」(旭硝子社製、テトラフルオロエチレン/プロピレン共重合体)等が挙げられる。
本発明の架橋性フッ素ゴム組成物には、有機過酸化物を含有させることができる。有機過酸化物としては、加熱下、酸化還元系の存在下で容易にラジカルを発生するものであれば使用できるが、好ましくは、半減期が、1分となる温度が130〜220℃であるものがより好ましい。その具体例としては、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロへキサン、2,5−ジメチルへキサン−2,5−ジヒドロパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−へキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−へキシン−3、ジベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)へキサン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート等が挙げられ、好ましくはα,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼンが挙げられる。
有機過酸化物は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の架橋性フッ素ゴム組成物において、上記架橋助剤の含有量は、フッ素ゴムの100質量部に対して、好ましくは0.1〜30質量部であり、より好ましくは1〜20質量部であり、最も好ましくは3.5〜15質量部である。含有量が少なすぎると、架橋速度が遅く、架橋度も低い。多すぎると、架橋ゴムの伸びが低い場合がある。この範囲にあると、架橋速度が速く、得られる架橋ゴムの架橋度が高く、架橋ゴムは特性に優れる。
有機過酸化物の含有量は、フッ素ゴム100質量部に対して、好ましくは0.1〜5質量部であり、より好ましくは0.2〜4質量部であり、最も好ましくは0.5〜3質量部である。この範囲にあると、パーオキシドの架橋効率が高く、無効分解の生成量も抑制できる。
本発明の架橋性フッ素ゴム組成物は、カーボンブラック、その他添加剤を含有することも好ましい。
カーボンブラックとしては、特に制限はなく、ゴムの配合用に用いられているものであれば使用できる。その具体例としては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイト等が挙げられる。中でも、ファーネスブラックがより好ましく、その具体例としては、HAF−LS、HAF、HAF−HS、FEF、GPF、APF、SRF−LM、SRF−HM、MT等のグレードが好ましく、MTが最も好ましい。
カーボンブラックは、架橋ゴムを補強する効果を有する。カーボンブラックの含有量は、フッ素ゴム100質量部に対して、好ましくは5〜100質量部、より好ましくは10〜50質量部である。カーボンブラックの含有量が少なすぎると架橋により得られる架橋物の強度が低い場合があり、多すぎると架橋ゴムの伸びが低い場合がある。カーボンブラックの含有量がこの範囲にあると、強度と伸びとのバランスが良好である。
その他の添加剤としては、カーボンブラック以外の補強剤、加工助剤、滑剤、潤滑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤、充填剤等が挙げられる。
カーボンブラック以外の補強剤としては、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体等のフッ素樹脂、ガラス繊維、炭素繊維、ホワイトカーボン等が挙げられる。該補強剤の含有量は、フッ素ゴム100質量部に対して、好ましくは5〜200質量部、より好ましくは10〜100質量部である。
加工助剤としては、高級脂肪酸のアルカリ金属塩等が挙げられ、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩が好ましい。加工助剤の含有量は、フッ素ゴム100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部であり、より好ましくは0.2〜10質量部であり、最も好ましくは1〜5質量部である。加工助剤が多すぎると、架橋ゴム物品表面へのブルームが生じたり、架橋ゴム物品の硬度が高くなりすぎたり、耐薬品性や耐スチーム性が低い場合がある。加工助剤が少なすぎると、架橋ゴム物品の引張強度が著しく低下したり、耐熱老化後の伸びや引張強度の変化が大きくなる場合がある。
本発明の架橋性フッ素ゴム組成物には、本発明の架橋助剤と共に他の架橋助剤を併用することができる。他の架橋助剤としては、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートプレポリマー、トリメタリルイソシアヌレート、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン、トリアリルトリメリテート、m−フェニレンジアミンビスマレイミド、p−キノンジオキシム、p,p′−ジベンゾイルキノンジオキシム、ジプロパルギルテレフタレート、ジアリルフタレート、N,N′,N′′,N′′′−テトラアリルテレフタールアミド、ポリメチルビニルシロキサン、ポリメチルフェニルビニルシロキサン等のビニル基含有シロキサンオリゴマー等が挙げられる。架橋助剤としては、多アリル化合物が好ましく、特に、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレートがより好ましく、トリアリルイソシアヌレートがさらに好ましい。他の架橋助剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
他の架橋助剤の含有量は、含フッ素エラストマー100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましく、0.5〜7質量部がより好ましい。
本発明の架橋助剤と他の架橋助剤を併用する際には、他の架橋助剤の使用割合は、本発明の架橋助剤100質量部に対し、好ましくは0.1〜20質量部であり、より好ましくは0.2〜10質量部である。本発明の架橋助剤とTAICを併用することにより、架橋ゴムからのブリードアウトを抑えることができる。
本発明の架橋性フッ素ゴム組成物を調製する方法としては、フッ素ゴム、上記架橋助剤、及び、必要に応じて有機過酸化物、カーボンブラック、その他添加剤を、2本ロール、バンバリーミキサー、ニーダー等の混練機を用いて混練する方法が好ましい。また、溶剤に溶解、分散した状態でする方法も採用できる。
本発明の架橋性フッ素ゴム組成物の調製方法において、各成分の混合の順序は特に制限されないが、まず、発熱によって、反応や分解しにくい成分をフッ素ゴムと十分に混錬した後、反応しやすい成分あるいは分解しやすい成分である有機過酸化物等を、配合し混練することが好ましい。混練時には、混練機を水冷して、架橋反応が生起しない温度である80〜120℃の範囲を維持することが好ましい。
本発明の架橋ゴム物品は、上記架橋性フッ素ゴム組成物を、押出成形、射出成形、トランスファー成形、プレス成形などの成形法により、成形し架橋することが好ましい。熱プレス成形では、加熱した金型を用い、架橋ゴム物品1個分のまたは数個分の形状を有する金型のキャビティに架橋性フッ素ゴム組成物を充填して、加熱して架橋ゴム物品を得ることが好ましい。加熱温度としては、好ましくは130〜220℃、より好ましくは140〜200℃、最も好ましくは150〜180℃である。
本発明の架橋ゴム物品は、上記熱プレス架橋(一次架橋ともいう。)で得られた架橋ゴム物品を、必要により、電気、熱風、蒸気などを熱源とするオーブンなどでさらに加熱して、架橋を進行させる(二次架橋ともいう。)ことも好ましい。二次架橋時の温度としては、好ましくは150〜280℃、より好ましくは180℃〜260℃、最も好ましくは200〜250℃である。二次架橋時間は、好ましくは1〜48時間、より好ましくは、4〜24時間である。十分に二次架橋することにより、架橋ゴム物品に含有される過酸化物の残渣が分解、揮散して、低減される点で好ましい。
本発明の架橋性フッ素ゴム組成物は、電離性放射線照射による架橋も可能である。電離性放射線としては、電子線、γ線などが挙げられる。電離性放射線照射架橋の好適な具体例としては、本発明の架橋性フッ素ゴム組成物を適当な溶媒中に溶解分散した懸濁溶液を塗布などにより成形し、乾燥させた後に、電離性放射線照射するものや、本発明の架橋性フッ素ゴム組成物を押出し成形し、電離性放射線照射するものなどが挙げられる。電子線照射における照射量は、適宜選定すればよいが、1〜300kGyが好ましく、10〜200kGyが好ましい。
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例により限定されない。なお、架橋特性、硬度、引張り強度、伸び、圧縮永久歪み、100%引張応力等の特性の測定は、以下に記載の方法により行った。
[架橋特性]架橋特性測定機(RPA、アルファーテクノロジーズ社製)を用いて177℃、12分間、振幅3度の条件にて、パーオキシド架橋性フッ素ゴム組成物の架橋特性を測定した。架橋特性においては、MHはトルクの最大値を示し、MLはトルクの最小値を示す。M−Mが架橋度を示し、t10はスコーチタイムの近似値を示し、t90は最適架橋時間の近似値を示す。
[硬度]JIS K6253に準拠し、23℃でデュロメータータイプA硬度試験にて測定した。硬度が60〜90であると、シール材として適することを示す。
[引張り強度]JIS K6251に準拠して23℃にて測定した。10MPa以上であると、シール材として適することを示す。
[伸び]JIS K6251に準拠して23℃にて測定した。160%以上であると、シール材として適することを示す。
[圧縮永久歪み]JIS K6262に準拠し、200℃×70時間、圧縮率25%の条件で、Φ29×12.5ディスクを使用して、圧縮永久歪みを測定した。25%以下であると、シール材として適することを示す。
[100%引張応力(モジュラス)]JIS 6251に準拠して23℃にて測定した。3〜17MPaであると、シール材として適することを示す。
以下の実施例、比較例で使用した配合成分は、以下の通りである。
(1)フッ素ゴム
(a)AFLAS 150P:旭硝子社製、テトラフルオロエチレン/プロピレン2元共重合体。過酸化物架橋タイプ、フッ素含有量は57質量%。以下、ポリマー1という。
(b)Daiel G−902:ダイキン工業社製、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン3元共重合体、過酸化物架橋タイプ、フッ素含有量は71質量%。以下、ポリマー2という。
(c)AFLAS PFE1000:旭硝子社製、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル系3元共重合体、過酸化物架橋タイプ、フッ素含有量は72質量%。以下、ポリマー3という。
(2)架橋助剤
(a)1,3,5−トリス(アクリロイルオキシ)アダマンタン:三菱瓦斯化学社製。以下、アダマンタン誘導体1という。
(b)TAIC:日本化成社製、トリアリルイソシアヌレート。以下、TAICという。
(3)有機過酸化物
(a)パーブチルD:日油社製、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン。以下、パーブチルPという。
(b)パーヘキサ25B:日油社製、3,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシへキサン。以下、パーヘキサ25Bという。
(4)充填剤
MTカーボン:CANCARB社製。以下、MTカーボンという。
(5)加工助剤
ノンサール SN−1:日油社製、ステアリン酸ナトリウム。以下、ノンサール SN−1という。
(6)架橋遅延剤
o−フェニルフェノール:和光純薬工業社製、o−フェニルフェノール。以下、o−フェニルフェノールという。
(実施例1)
ポリマー1の100質量部、パーブチルPの1質量部、アダマンタン誘導体1の3.5質量部、MT−カーボンの30質量部、ノンサール SN−1の1質量部を二軸ロールによって混錬し、パーオキシド架橋性フッ素ゴム組成物を得た。該組成物を165℃の熱プレスで100mm×100mm×2mmのシート状に成形した(一次架橋)。このシートを更に、250℃のギアオーブンに4時間入れ、二次架橋した。
得られた架橋ゴムシートより、第3号ダンベルで試料を4枚打ち抜き、架橋ゴムの特性を測定した。結果を表1に示す。硬度は、65であり、引張り強度は、10.9MPaであり、伸びは、465%であり、圧縮永久歪みは、46%であり、100%引張応力は、3.4MPaであった。
(実施例2〜7、比較例1)
パーオキシド架橋性フッ素ゴム組成物の配合組成を表1に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして架橋ゴムシートを作成し、上記と同様に架橋ゴムの特性を測定した。
なお、実施例6では、ポリマー2の100質量部、過酸化物架橋剤は、パーヘキサ25Bの1.5質量部を使用した。また、実施例7では、ポリマー3の100質量部、パーヘキサ25Bの1質量部、o−フェニルフェノールの0.3質量部を使用した。比較例1では、TAICの1質量部を使用した。
Figure 2010084000
表1に示すように、実施例1〜5では、アダマンタン誘導体1の添加量が増加するほど最大トルクMが高くなり、しかもt90も短くなる(すなわち、架橋速度が速い)結果となった。また、アダマンタン誘導体1の物理的形状は固体であり、加工性低下の問題や金型汚染の問題はなかった。すなわち、アダマンタン誘導体1を含有するパーオキシド架橋性フッ素ゴム組成物は、架橋速度が速く、良好な成形性を有することが確認できた。また、架橋後の架橋ゴムシートについても、十分な強度および低い耐圧縮永久歪み性を有すること、アダマンタン誘導体1のブリードアウトはなかった。
一方、TAICを含有するフッ素ゴム組成物である比較例1では、最大トルクMが低く、t90も長い(すなわち、架橋速度が遅い)ことから成形性および成形サイクル性(生産性)が低い。また、架橋後の架橋ゴムシートについても、上記実施例と比較した結果、強度や耐圧縮永久歪み性に劣る。さらに、TAICの物理的形状が液体のために、加工性が充分でなく、金型汚染、ブリードアウトなどの問題が見受けられた。
実施例6〜7は、フッ素ゴムが実施例1〜5と異なる場合にも、アダマンタン誘導体1を含有するパーオキシド架橋性フッ素ゴム組成物が、熱プレスにより一次架橋でき、さらにギアオーブンにて二次架橋できることが確認できた。
本発明の架橋性フッ素ゴム組成物から得られた架橋ゴム物品は、引張強さ、伸び、硬さなど基本特性を維持しつつ、高い強度および優れた耐圧縮永久歪み性を有する。そのため、本発明の架橋ゴム物品は、自動車等の輸送機械、一般機器、電気機器等の幅広い分野において、Oリング、シート、ガスケット、オイルシール、ベアリングシール等のシール材、ダイヤフラム、緩衝材、防振材;電線被覆材;工業ベルト類;チューブ・ホース類;シート類などの各部材として広い範囲で好適に使用できる。


Claims (7)

  1. 2個以上の不飽和結合を有するアダマンタン誘導体からなる架橋助剤。
  2. 前記アダマンタン誘導体が、下記一般式(1)で表される化合物である、請求項1に記載の架橋助剤。
    一般式(1):
    Figure 2010084000
    (式中、R、R、RおよびRは、水素原子、ハロゲン原子、アルケニル基およびアルキル基からなる群から選ばれる1種以上の置換基であり、同一でも異なっていてもよく、R、R、RおよびRのうち少なくとも2つがアルケニル基である。Xは、−OC(=O)−、−OCOO−、−O−、−COO−、-CONH−または−NHCO−である。nは0又は1であり、R、R、RまたはRが水素原子またはハロゲン原子であるとき、それに隣接する(X)nのnは0である。)
  3. フッ素ゴム、及び請求項1又は2に記載の架橋助剤を含有することを特徴とする架橋性フッ素ゴム組成物。
  4. 前記フッ素ゴムが、テトラフルオロエチレン/プロピレン系共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル系共重合体からなる群から選ばれる1種以上である請求項3に記載の架橋性フッ素ゴム組成物。
  5. さらに、有機過酸化物を含有する請求項3又は4に記載の架橋性フッ素ゴム組成物。
  6. 請求項3〜5のいずれかに記載の架橋性フッ素ゴム組成物を架橋してなることを特徴とする架橋ゴム物品。
  7. 前記架橋ゴム物品がシール材である請求項6に記載の架橋ゴム物品。
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