JP2010083999A - 精留塔のスタートアップ方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】フィッシャー・トロプシュ合成反応により生成されたFT合成炭化水素を分留する精留塔のスタートアップ方法であって、前記フィッシャー・トロプシュ合成反応を行うFT反応器内に気体として存在する軽質FT合成炭化水素を外部に取り出す工程S3と、取り出した前記軽質FT合成炭化水素を冷却して液化する工程S4、S5と、前記軽質FT合成炭化水素を前記精留塔に供給する工程S8と、前記軽質FT合成炭化水素を加熱するとともに前記精留塔に循環させる工程S9、S11と、を備えていることを特徴とする。
【選択図】図3
Description
また、このFT合成炭化水素は、例えば特許文献2に示す精留塔に供給されて沸点に応じて分留され、精留塔の上部、中央部、下部にそれぞれ設けられた抜出口より、分留された炭化水素が得られる。
本発明に係る精留塔のスタートアップ方法は、FT合成反応により生成されたFT合成炭化水素を分留する精留塔のスタートアップ方法であって、前記FT合成反応を行うFT反応器内に気体として存在する軽質FT合成炭化水素を外部に取り出す工程と、取り出した前記軽質FT合成炭化水素を冷却して液化する工程と、液化した前記軽質FT合成炭化水素を前記精留塔に供給する工程と、前記軽質FT合成炭化水素を加熱するとともに前記精留塔に循環させる工程と、を備えていることを特徴としている。
この場合、FT反応器から軽質合成炭化水素を取り出して精留塔の暖機運転をした後に、重質FT合成炭化水素が精留塔に供給されることになり、精留塔での分留を確実に、且つ、効率良く行うことができる。また、軽質FT合成炭化水素中に炭素数の多い重質FT合成炭化水素が混入することが抑制され、軽質FT合成炭化水素の流動性を確保することができる。
この場合、FT反応器内の液面レベルが通常運転時よりも低く設定されることで、重質FT合成炭化水素が生成されてもFT反応器の通常運転時の液面レベルに到達するまで、重質FT合成炭化水素の抜き出しが開始されないが、ガス成分である軽質FT合成炭化水素は、FT反応の初期段階からFT反応器の上部の放出口から取り出されることになり、前記FT反応器からの前記軽質FT合成炭化水素の取り出しと、重質FT合成炭化水素の抜き出しとの間に時間差を生じさせることができる。なお、スタートアップ時の液面レベルは、精留塔への軽質FT合成炭化水素の張り込み必要量を考慮して下げておくことが好ましく、例えば、通常運転時の液面レベルの60〜70%程度とすることが好ましい。
FT反応器内に気体として存在する前記軽質FT合成炭化水素の中には、FT反応器内で未反応の原料ガス(一酸化炭素及び水素の合成ガス)が混入している。この原料ガスをFT反応器に還流させることにより、FT合成による炭化水素の生産効率を向上させることができる。
FT反応器の内部では、副生成物として水(水蒸気)が生成されるため、FT反応器内に気体として存在する軽質FT合成炭化水素中には水分も含まれることになる。よって、水分を除去する工程を有することによって、精留塔内への水分の混入を防止することができる。
まず、図1を参照して、本発明の実施形態である精留塔のスタートアップ方法が用いられる液体燃料合成システム(炭化水素合成反応システム)の全体構成及び工程について説明する。
合成ガス生成ユニット3は、炭化水素原料である天然ガスを改質して一酸化炭素ガスと水素ガスを含む合成ガスを生成する。
FT合成ユニット5は、生成された合成ガスからFT合成反応により、液体炭化水素(FT合成炭化水素)を生成する。
製品精製ユニット7は、FT合成反応により生成された液体炭化水素(FT合成炭化水素)を水素化・精製して液体燃料製品(ナフサ、灯油、軽油、ワックス等)を製造する。以下、これら各ユニットの構成要素について説明する。
脱硫反応器10は、水添脱硫装置等で構成され、原料である天然ガスから硫黄成分を除去する。
改質器12は、脱硫反応器10から供給された天然ガスを改質して、一酸化炭素ガス(CO)と水素ガス(H2)とを主成分として含む合成ガスを生成する。
排熱ボイラー14は、改質器12にて生成した合成ガスの排熱を回収して高圧スチームを発生する。
気液分離器16は、排熱ボイラー14において合成ガスとの熱交換により加熱された水を気体(高圧スチーム)と液体とに分離する。
気液分離器18は、排熱ボイラー14にて冷却された合成ガスから凝縮分を除去し気体分を脱炭酸装置20に供給する。
脱炭酸装置20は、気液分離器18から供給された合成ガスから吸収液を用いて炭酸ガスを除去する吸収塔22と、当該炭酸ガスを含む吸収液から炭酸ガスを放散させて再生する再生塔24とを有する。
水素分離装置26は、脱炭酸装置20により炭酸ガスが分離された合成ガスから、当該合成ガスに含まれる水素ガスの一部を分離する。
ただし、上記脱炭酸装置20は場合によっては設ける必要がないこともある。
気泡塔型反応器30は、合成ガスを液体炭化水素(FT合成炭化水素)に合成する反応器の一例であり、FT合成反応により合成ガスから液体炭化水素(FT合成炭化水素)を合成するFT合成用反応器として機能する。この気泡塔型反応器30は、例えば、塔型の容器内部に、液体炭化水素(FT合成炭化水素)中に固体の触媒粒子を懸濁させたスラリーが収容された気泡塔型スラリー床式反応器で構成される。この気泡塔型反応器30は、上記合成ガス生成ユニットで生成された合成ガス(一酸化炭素ガスと水素ガス)とを反応させて液体炭化水素(FT合成炭化水素)を合成する。
気液分離器34は、気泡塔型反応器30内に配設された伝熱管32内を流通して加熱された水を、水蒸気(中圧スチーム)と液体とに分離する。
分離器36は、気泡塔型反応器30の内部に収容されたスラリー中の触媒粒子と液体炭化水素(FT合成炭化水素)とを分離処理する。
気液分離器38は、気泡塔型反応器30の上部に接続され、未反応合成ガス及びFT合成炭化水素のガス成分を冷却処理する。
第1精留塔40は、気泡塔型反応器30から分離器36、気液分離器38を介して供給された液体炭化水素(FT合成炭化水素)を蒸留し、沸点に応じて各製品留分に分留する。
WAX分水素化分解反応器50は、第1精留塔40の下部に接続されており、その下流側に気液分離器56が設けられている。このWAX分水素化分解反応器50では、反応を促進するための触媒が用いられている。
灯油・軽油留分水素化精製反応器52は、第1精留塔40の中央部に接続されており、その下流側に気液分離器58が設けられている。この灯油・軽油留分水素化精製反応器52では、反応を促進するための触媒が用いられている。
ナフサ留分水素化処理反応器54は、第1精留塔40の上部に接続されており、その下流側に気液分離器60が設けられている。このナフサ留分水素化処理反応器54では、反応を促進するための触媒が用いられている。
第2精留塔70は、気液分離器56,58から供給された液体炭化水素(FT合成炭化水素)を沸点に応じて分留する。ナフサスタビライザー72は、気液分離器60及び第2精留塔70から供給されたナフサ留分の液体炭化水素(FT合成炭化水素)を精留して、ブタンより軽い成分はフレアガス(排ガス)側へ排出し、炭素数が5以上の成分は製品のナフサとして分離・回収する。
この第1精留塔40の底部から取り出されるWAX分のFT合成炭化水素(主としてC21以上)は、WAX分水素化分解反応器50に移送され、第1精留塔40の中央部から取り出される灯油・軽油留分のFT合成炭化水素(主としてC11〜C20)は、灯油・軽油留分水素化精製反応器52に移送され、第1精留塔40の上部から取り出されるナフサ留分のFT合成炭化水素(主としてC5〜C10)は、ナフサ留分水素化処理反応器54に移送される。
第1精留塔40には、その内部に貯留された液体を循環する第1循環路813と、循環路813内の液体を移送する第1ポンプ814と、循環路813内を流れる液体を加熱するための熱交換器815と、が設けられている。
また、この第1循環路813には分岐路816が設けられており、この分岐路816は、第2精留塔70へと接続されている。第2精留塔70には、その内部に貯留された液体を循環する第2循環路823と、循環路823内の液体を移送する第2ポンプ824と、循環路823内を流れる液体を加熱するための熱交換器825と、が設けられている。
まず、FT合成を行う気泡塔型反応器30の内部に、液体炭化水素と触媒粒子とを混合したスラリーを導入する(S1)。このとき、通常の操業では、抜出路901を超える高さ(気泡塔型反応器30の全高の2/3程度)までスラリーが充填されることになるが、スタートアップ時には、気泡塔型反応器30の全高の4/9程度までとする。すなわち、スタートアップ時には、気泡塔型反応器30の内の液面レベル(スラリーレベル)を通常運転時よりも低く設定しているのである。
上記の温度条件で気泡塔型反応器30内に気体として存在する軽質FT合成炭化水素が、放出路801を通じて気泡塔型反応器30の外部に取り出される(S3)。このとき、気泡塔型反応器30内に液体として存在する重質FT合成炭化水素は、抜出路901よりも下方側に位置することから外部に取り出されることはない。
なお、本実施形態においては、軽質FT合成炭化水素はC5〜C20程度とされ、重質FT合成炭化水素はC15〜C100程度とされている。
1次タンク803内に貯留された軽質FT合成炭化水素のうち、上記温度条件で気体として存在するガス成分は、連絡路804に設けられた熱交換器805によって約45℃に冷却されて液化・冷却され、2次タンク806に貯留される(S5)。
2次タンク806内のガス成分には、気泡塔型反応器30内で未反応の原料ガス(一酸化炭素及び水素の合成ガス)が混入しているので、還流路807を通じて未反応の原料ガスが気泡塔型反応器30へと還流される(S6)。また、製品対象外である炭素数が少ない(C4以下)炭化水素ガスを主成分とする排ガス(フレアガス)は、外部の燃焼設備(図示せず。)に導入されて、燃焼された後に大気放出される。
そして、第1ポンプ814によって第1循環路813内を軽質FT合成炭化水素が循環されるとともに、熱交換器815によって軽質FT合成炭化水素が150〜200℃に加熱される(S9)。これにより、第1精留塔40の暖機運転がなされ、第1精留塔40の内部が所定の温度(約320℃)まで加熱される。
そして、第2ポンプ824によって第2循環路823内を軽質FT合成炭化水素が循環されるとともに、熱交換器825によって軽質FT合成炭化水素が150〜200℃に加熱される(S11)。これにより、第2精留塔70の暖機運転がなされ、第2精留塔70の内部が所定の温度(約310℃)まで加熱される。
また、FT合成によって得られる軽質FT合成炭化水素は、硫黄分をほとんど含まないため、第1精留塔40で分留されたFT合成炭化水素を精製するWAX分水素化分解反応器50、灯油・軽油留分水素化精製反応器52、ナフサ留分水素化処理反応器54に用いられている触媒を被毒するおそれがなく、ナフサ、軽油、灯油等の液体燃料を効率良く得ることができる。
さらに、この軽質FT合成炭化水素は、製品に混入しても全く問題のないものであるので、分離及び廃棄する必要がない。
また、気泡塔型反応器30のスタートアップ時には、外部から入手した液体炭化水素と触媒粒子とを混合させたスラリーを気泡塔型反応器30内部に充填することになるが、このスラリーを生成するために必要な液体炭化水素の使用量も低減することができる。
さらに、本実施形態では、軽質FT合成炭化水素中に含まれる水分を除去する分離槽810が設けられているので、気泡塔型反応器30内の副生成物である水(水蒸気)を軽質FT合成炭化水素から除去することができ、第1精留塔40及び第2精留塔70内への水分の混入を防止することができる。
例えば、第1精留塔40の第1循環路813に分岐路816を設けて、第2精留塔70に軽質FT合成炭化水素を供給する構成として説明したが、これに限定されることはなく、図4に示すように、分離槽810から直接、第2精留塔70に軽質FT合成炭化水素を供給する構成としてもよい。
また、第1精留塔40及び第2精留塔70の一方のみを軽質FT合成炭化水素で暖機運転する構成としてもよい。
さらに、分離槽810を設けたものとして説明したが、分離槽810を有していなくてもよい。但し、分離槽810を設けることで水分を除去でき、精留塔(第1精留塔40、第2精留塔70)の汚染を防止することが可能となるため、分離槽810を設けることが好ましい。
30 気泡塔型反応器(FT反応器)
40 第1精留塔(精留塔)
70 第2精留塔(精留塔)
Claims (5)
- フィッシャー・トロプシュ合成反応により生成されたFT合成炭化水素を分留する精留塔のスタートアップ方法であって、
前記フィッシャー・トロプシュ合成反応を行うFT反応器内に気体として存在する軽質FT合成炭化水素を外部に取り出す工程と、取り出した前記軽質FT合成炭化水素を冷却して液化する工程と、液化した前記軽質FT合成炭化水素を前記精留塔に供給する工程と、前記軽質FT合成炭化水素を加熱するとともに前記精留塔に循環させる工程と、
を備えていることを特徴とする精留塔のスタートアップ方法。 - 前記FT反応器から前記軽質FT合成炭化水素を取り出す工程が、前記FT反応器内に液体として存在する重質FT合成炭化水素の抜き出しよりも前に開始されることを特徴とする請求項1に記載の精留塔のスタートアップ方法。
- 前記FT反応器内の液面レベルを通常運転時よりも低く設定することを特徴とする請求項2に記載の精留塔のスタートアップ方法。
- 前記軽質FT合成炭化水素から前記FT反応器において未反応の原料ガスを除去し、この未反応の原料ガスを前記FT反応器へ還流させることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の精留塔のスタートアップ方法。
- 前記軽質FT合成炭化水素中に含まれる水分を除去する工程を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の精留塔のスタートアップ方法。
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