JP2010082697A - 溶接部品質に優れた電縫鋼管の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】少なくとも、陰極点が生成される部位であるカソード先端部21aが炭素からなるカソード21が備えられ、該カソード21とアノード23との間にカスケード22が配設されてなるカスケード型のプラズマトーチ20を用い、少なくともCO2ガス及びCH4ガスを含む混合ガスからなり、これらの合計流量が、プラズマトーチ20のアノード23の内径Dにおける単位面積あたりで、0.2(lpm/mm2)超0.8(lpm/mm2)とされた条件のプラズマ作動ガスを用いて、鋼板の突合せ端面に向けてプラズマジェットを噴射しながら、前記突合せ端面を電縫溶接する。
【選択図】図2
Description
しかしながら、特許文献3に記載の技術のように、プラズマトーチに備えられるカソード(電極)の材質がタングステンだと、プラズマ作動ガスとして上述のような炭素を含有するガスを用いた場合に、カソードの表面に炭素が堆積する部位が生じ、溶接操作のためのプラズマ放電を長期間に亘って安定させるのが困難になるという問題がある。また、タングステンからなるカソードを用いた場合、導電率が低く高抵抗のために電流値が高くなり、劣化が生じ易く、電極寿命が短くなるという問題があった。
また、プラズマトーチにおいて、カソードとアノードの間に中間部材を配置することにより、カソードとアノードとの間隔を大きく離間させることが提案されている(例えば、特許文献5、6を参照)。
また、突合せ端面をプラズマ溶接して小径鋼管を製造するに際し、Arガスを含有するプラズマ作動ガスに、さらにH2ガスを加えることが提案されている(例えば、特許文献7を参照)。
即ち、本発明は以下に関する。
[2] 前記カソードをなす炭素がグラファイトであることを特徴とする上記[1]に記載の溶接部品質に優れた電縫鋼管の製造方法。
[3] 前記プラズマ作動ガス中におけるCH4ガスの混合比が、20体積%超40体積%未満の範囲であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の溶接部品質に優れた電縫鋼管の製造方法。
[4] 前記プラズマトーチは、前記カソードとアノードとの間に配設される前記カスケードの段数が6〜8段の範囲とされていることを特徴とする上記[1]〜[3]の何れか1項に記載の溶接部品質に優れた電縫鋼管の製造方法。
[5] 前記プラズマ作動ガスが、さらに、1体積%以上20体積%未満のH2ガスを含むことを特徴とする上記[1]〜[4]の何れか1項に記載の溶接部品質に優れた電縫鋼管の製造方法。
以下に、本発明に係る電縫鋼管の製造方法の第1の実施形態について説明する。
本実施形態の電縫鋼管の製造方法は、鋼板1を管状に成形加工し、その突合せ端面4を電縫溶接する方法であり、炭素(C)からなるカソード21と、カスケード22とを具備したプラズマトーチ20を用いて、鋼板1の突合せ端面4を電縫溶接する方法である。
図1(a)、(b)に示すように、本実施形態の電縫鋼管の製造方法においては、まず、例えば厚さが1〜22mm程度の鋼板1を方向10に向けて連続的に搬送しながら、多数のロール群(図示せず)によって管状に成形する。
次いで、鋼板1の突合せ端面4を高周波コイル2によって誘電加熱して溶融するとともに、スクイズロール3によってアップセットを加え、突合せ端面4に溶接シーム7を形成することにより、電縫鋼管Kを製造する。
本実施形態で用いられるプラズマトーチの一例を図2に示す。図2に示すプラズマトーチ20は、カソード21、カスケード22及びアノード23から概略構成されており、これら各々の間が絶縁され、また、個別に水冷する構成とされている。本発明に係る製造方法は、上記構成とされたプラズマトーチ20に備えられるカソード21のカソード先端部21aの材料に炭素を用いるとともに、カソード21とアノード23との間にカスケード22が配設されていることを特徴としている。そして、カソード21とアノード23との間に配設されるカスケード22を通過するカソードガス24、及びアノードガス25を供給し、カソード21とアノード23との間に電圧を印加してプラズマを発生させる。
また、カソードガス24とアノードガス25からなるプラズマ作動ガスには、水素を含有させることが、高温(擬似)層流プラズマ5に還元性を付与することができる点から好ましい。
また、必要に応じて、アノード23の先端部23aから、高温(擬似)層流プラズマ5を囲むようにサイドシールドガス11を噴射する構成とすれば、この高温(擬似)層流プラズマ5への酸素の拡散・混入を有利に阻止することができる点から好ましい。更に、必要に応じて、アノード23の先端部23aから、高温(擬似)層流プラズマ5にホウ化物の微粉末を供給する構成とすれば、水素より高い還元性を得ることができる点から好ましい。
また、CH4等の炭素を含むプラズマ作動ガスを用い、カソード21表面に炭素が堆積する条件である場合でも、カソード21が炭素材料から構成されるため、プラズマの放電状態が不安定になるようなことが無く、長期間に亘って安定したものとなる。これにより、CH4等の炭素を含むガスをプラズマ作動ガスに使用し易いというメリットが得られる。
ここで、タングステン製のカソードを用いた場合であっても、炭素を含むプラズマ作動ガスを使用することは可能であるが、この場合には、炭素がタングステン製のカソード表面に堆積するため、安定したプラズマ放電を長期間に亘って行なうことが困難となる。これに対し、本発明では、少なくとも、陰極点が生成される部位であるカソード先端部21aが炭素からなるカソード21を用いる方法としているため、カソード21表面に炭素が堆積した場合でも、長期間に亘って安定したプラズマ放電が得られる。またさらに、カソード先端部21が炭素からなるカソード21の表面に堆積した炭素により、むしろ電極としての寿命が向上するという効果が得られる。
本発明に係る電縫鋼管の製造方法においては、上記構成とされたプラズマトーチ20を用い、プラズマ作動ガスとして、少なくともCO2ガス及びCH4ガスを含む混合ガスからなるとともに、残部が不可避的不純物ガスからなり、且つ、前記CO2ガス及びCH4ガスの合計流量が、前記プラズマトーチのアノード内径における単位面積あたりで、0.2(lpm/mm2)超0.8(lpm/mm2)未満の範囲とされたガスを用いることが好ましい。
また、CH4ガスを含む混合ガスを用いることにより、プラズマトーチ20のエンタルピー及び熱伝導度が大きくなるので、電縫溶接時の加熱効率が高められるという効果が得られる。
また、CH4ガスを含む混合ガスを用いることで、プラズマ放電時の電気的効率を高めることが可能となる。ここで、上記混合ガスに含まれる炭化水素ガスとしては、特にCH4ガスで無くとも電気的効率向上の効果は得られるが、CH4ガスは比較的安価に入手可能な点や、爆発等が生じるリスクが低い点から好ましい。
また、CH4ガスを含むプラズマ作動ガスを用いた場合、プラズマ放電時にプラズマ作動ガスが水素を放出するため、詳細を後述するような、溶接品質向上(還元)効果が得られる。
さらに、炭素が鋼板の溶接面に付着すると、その部位の電気抵抗が高くなり、ジュール発熱を助長するので、溶接面の加熱効率が向上するという効果も奏する。
加えて、電縫溶接部の脱炭を抑制できるため、溶接部の軟化を緩和できるという効果がある。
また、CO2ガスを含むプラズマ作動ガスを用いることで、例えば、Ar含有ガスの場合と比べ、プラズマの長さを長くすることが可能となる。
また、CO2ガスを含むガスを用いた場合、プラズマ放電時にプラズマ作動ガスが酸素を放出することにより、カソード21表面に炭素が過度に体積するのを抑制することが可能となる。
また、炭化水素ガスと同様、プラズマトーチ20のエンタルピー及び熱伝導度が大きくなるので、電縫溶接時の加熱効率が高められるという効果が得られる。
またさらに、CO2ガスを含むガスを用いることで熱効率が向上するため、電縫溶接時の加熱効率が高められるという効果が得られる。
また、上記製造方法によって得られる電縫鋼管は、格段に優れた溶接部品質を有するものとなる。
以下に、本発明に係る電縫鋼管の製造方法の第2の実施形態について説明する。
なお、以下の説明において、第1の実施形態の電縫鋼管の製造方法と共通する構成については同じ符号を付与し、その詳しい説明を省略するとともに同じ図面を用いて説明する。
なお、本発明において説明する「溶接欠陥率」とは、溶接面積に対するペネトレーター(酸化物に起因する溶接欠陥)の面積率である。また、「擬似層流」とは、プラズマジェットのプラズマコア部は層流で、プラズマ外側の数mmの範囲が乱流である状態をいい、鋼管内面よりも遠方(鋼管の突合せ端面4よりも管内側)のプラズマジェットが乱流であるか、(擬似)層流であるかは問わない。
従って、長期に亘って優れた品質で溶接を行なうことができ、溶接部品質に優れる電縫鋼管を、コストアップを招くことなく高い生産性で製造することが可能となる。
この際の電縫溶接条件は、下記表2に示すような範囲の条件とした。
以上の結果を、総合評価として下記表2に併せて示す。なお、下記表2中においては、合格を「○」印、不合格を「×」印で示した。
実験例2においては、実験例1と同様、カソード先端部に炭素が用いられているため、プラズマトーチ寿命及びプラズマ安定性については問題なかったものの、CH4の含有量が少ないためにシールド効果が低くなり、溶接欠陥率が0.7%と、欠陥率の高い結果となった。
実験例3においては、プラズマ作動ガス中に示すCH4ガスの割合が本発明の規定範囲から逸脱しており、プラズマが不安定であるために、溶接欠陥率が0.3%と、欠陥率の高い結果となった。
実験例5においては、溶接欠陥率については問題なかったものの、カソード先端部にタングステン(W)を用いた従来の構成のプラズマトーチを用いているため、カソード(電極)の損傷が著しく、プラズマトーチの寿命が短いことが明らかとなった。
実験例6においては、溶接欠陥率については問題なかったものの、プラズマ作動ガスに含まれるArガスが過多のため、カソードの損傷が著しく、プラズマトーチの寿命が短いことが明らかとなった。
実験例7においては、プラズマ作動ガスに含まれる水素ガスが過多のため、プラズマが不安定であるとともに、カソードの損傷が著しく、プラズマトーチの寿命が短いことが明らかとなった。
Claims (5)
- 鋼板を管状に成形加工し、その突合せ端面を電縫溶接する電縫鋼管の製造方法において、
少なくとも陰極点が生成される部位が炭素からなるカソードを具備するとともに、該カソードとアノードとの間にカスケードが配設され、前記カソードとアノードとの間に電圧を印加することでプラズマジェットを形成するカスケード型のプラズマトーチを用い、
プラズマ作動ガスとして、少なくともCO2ガス及びCH4ガスを含む混合ガスからなるとともに、残部が不可避的不純物ガスからなり、且つ、前記CO2ガス及びCH4ガスの合計流量が、前記プラズマトーチのアノード内径における単位面積あたりで、0.2(lpm/mm2)超0.8(lpm/mm2)未満の範囲とされたガスを用いて、前記鋼板の突合せ端面に向けてプラズマジェットを噴射しながら、前記突合せ端面を電縫溶接することを特徴とする溶接部品質に優れた電縫鋼管の製造方法。 - 前記カソードをなす炭素がグラファイトであることを特徴とする請求項1に記載の溶接部品質に優れた電縫鋼管の製造方法。
- 前記プラズマ作動ガス中におけるCH4ガスの混合比が、20体積%超40体積%未満の範囲であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の溶接部品質に優れた電縫鋼管の製造方法。
- 前記プラズマトーチは、前記カソードとアノードとの間に配設される前記カスケードの段数が6〜8段の範囲とされていることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の溶接部品質に優れた電縫鋼管の製造方法。
- 前記プラズマ作動ガスが、さらに、1体積%以上20体積%未満のH2ガスを含むことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の溶接部品質に優れた電縫鋼管の製造方法。
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