JP2010077885A - 膨張機 - Google Patents
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Abstract
【課題】膨張室において流体を膨張させる膨張機において、機械損失を低減させて、高速運転時における運転効率を向上させる。
【解決手段】シャフト(30)の偏心部(30b,30c)が嵌め込まれて偏心回転運動する可動部材(75,85)と、可動部材(75,85)と共に膨張室(72,82)を形成する固定部材(51,52,53,71,81)とを有する膨張機構(50)を備えた膨張機(20)において、偏心部(30b,30c)の外周面と可動部材(75,85)との間に、浮動ブッシュ(91,92)を設ける。又は、シャフト(30)の主軸部(30a)の外周面と軸受部材(51,52)の軸受面との間に、浮動ブッシュ(93,94)を設ける。
【選択図】図2
【解決手段】シャフト(30)の偏心部(30b,30c)が嵌め込まれて偏心回転運動する可動部材(75,85)と、可動部材(75,85)と共に膨張室(72,82)を形成する固定部材(51,52,53,71,81)とを有する膨張機構(50)を備えた膨張機(20)において、偏心部(30b,30c)の外周面と可動部材(75,85)との間に、浮動ブッシュ(91,92)を設ける。又は、シャフト(30)の主軸部(30a)の外周面と軸受部材(51,52)の軸受面との間に、浮動ブッシュ(93,94)を設ける。
【選択図】図2
Description
本発明は、容積型の膨張機に関するものである。
従来より、膨張室において流体を膨張させる容積型の膨張機が知られている。例えば、特許文献1には、膨張室において流体を膨張させる膨張機構と、圧縮室において流体を圧縮する圧縮機構とを備えた膨張機が記載されている。膨張機構及び圧縮機構は、1本のシャフトで連結されている。膨張機構及び圧縮機構は、共にロータリ式の流体機械により構成されている。
また、従来より、浮動ブッシュが適用された圧縮機が知られている。例えば、特許文献2には、シリンダとローラの間に浮動ブッシュが設けられたロータリ圧縮機が記載されている。
特開2006−46257号公報
特開平8−247059号公報
ここで、膨張機と圧縮機とについて、シャフトの一回転中の処理流量が同じであると仮定して、両者を比較すると、膨張機は、圧縮機に比べて高圧の流体を吸入するので、圧縮機に比べて吸入容積が小さい。ところが、膨張機は、処理流量が同じ圧縮機の圧縮室に比べて膨張室の高さが低くなっている場合が多く、膨張室の周囲の長さが圧縮室の周囲の長さとそれほど変わらない場合が多い。つまり、膨張機は、高圧側から低圧側へ流体が漏れる隙間の長さが、処理流量が同じ圧縮機とそれほど変わらない。従って、膨張機は、圧縮機に比べて吸入する流体の体積が少ないのに処理する過程で漏れる流体の体積がそれほど変わらない。このため、膨張機は、圧縮機に比べて、高圧側から低圧側へ漏れる流体の流量が多く、流体漏れによる運転効率の低下の度合いが大きい。
他方、膨張機は、シャフトの回転速度が速いほど、つまり高速で運転を行うほど、処理流量に対する漏れ流量の比率が小さくなる。従って、高速で運転を行うほど、流体漏れが運転効率に与える影響が小さくなる。しかし、従来の膨張機では、高速で運転を行っても、冷媒漏れの影響が小さくなるのに、膨張機構やシャフトにおける摩擦損失(機械損失)が増大するので、運転効率が向上しない場合があった。
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、膨張室において流体を膨張させる膨張機において、機械損失を低減させて、高速運転時における運転効率を向上させることにある。
第1の発明は、主軸部(30a)と、該主軸部(30a)に対して偏心した偏心部(30b,30c)とを有するシャフト(30)と、上記シャフト(30)の偏心部(30b,30c)が嵌め込まれて偏心回転運動する可動部材(75,85)と、該可動部材(75,85)と共に膨張室(72,82)を形成する固定部材(51,52,53,71,81)とを有する膨張機構(50)とを備えた膨張機(20)を対象とする。そして、この膨張機(20)は、上記偏心部(30b,30c)の外周面と上記可動部材(75,85)との間に、浮動ブッシュ(91,92)が設けられている。
第1の発明では、偏心部(30b,30c)の外周面と可動部材(75,85)との間に、浮動ブッシュ(91,92)を設けている。膨張機(20)の運転中は、偏心部(30b,30c)の外周面が浮動ブッシュ(91,92)の内周面と摺接し、浮動ブッシュ(91,92)の外周面が可動部材(75,85)と摺接する。偏心部(30b,30c)と可動部材(75,85)とに摺動自在の浮動ブッシュ(91,92)は、その回転速度がシャフト(30)の回転速度よりも遅くなる。
ここで、浮動ブッシュ(91,92)の回転速度が、例えばシャフト(30)の回転速度の1/2であれば、浮動ブッシュ(91,92)の内面の摩擦損失及び外面の摩擦損失は、それぞれ浮動ブッシュ(91,92)がない場合の1/4になる。従って、浮動ブッシュ(91,92)の内面の摩擦損失及び外面の摩擦損失の合計は、浮動ブッシュ(91,92)がない場合の1/2になる。浮動ブッシュ(91,92)を設けると、ブッシュの内面の摩擦損失及び外面の摩擦損失のそれぞれが、シャフト(30)の回転速度に対する浮動ブッシュ(91,92)の回転速度の比率の2乗に比例して小さくなり、内面及び外面の摩擦損失の合計が、浮動ブッシュ(91,92)がない場合に比べて小さくなる。第1の発明では、偏心部(30b,30c)の外周面と可動部材(75,85)との間に浮動ブッシュ(91,92)を設けることによって、可動部材(75,85)及び偏心部(30b,30c)の外周面における摩擦損失が小さくなるようにしている。
第2の発明は、上記第1の発明において、上記可動部材(75,85)は、上記偏心部(30b,30c)が嵌り込む筒状部を備え、上記固定部材(51,52,53,71,81)は、上記膨張室(72,82)の壁面を有するシリンダ(71,81)と、該シリンダ(71,81)をシャフト(30)の軸方向の両側から挟み込むように設けられて上記浮動ブッシュ(91,92)の両端及び上記筒状部の両端に対面する一対の区画部材(51,52,53)を備える一方、上記浮動ブッシュ(91,92)と上記筒状部とでは、浮動ブッシュ(91,92)の方が高さが高くなっている。
第2の発明では、浮動ブッシュ(91,92)の高さが、可動部材(75,85)の筒状部の高さよりも高くなっている。つまり、一対の区画部材(51,52,53)との間に形成される浮動ブッシュ(91,92)の両端の合計クリアランスが、一対の区画部材(51,52,53)との間に形成される可動部材(75,85)の筒状部の両端の合計クリアランスよりも小さくなっている。
第3の発明は、上記第1の発明において、上記シャフト(30)を支持するための軸受部材(51,52)を備え、上記主軸部(30a)の外周面と上記軸受部材(51,52)の軸受面との間にも、浮動ブッシュ(93,94)が設けられている。
第4の発明は、主軸部(30a)と、該主軸部(30a)に対して偏心した偏心部(30b,30c)とを有するシャフト(30)と、上記シャフト(30)の偏心部(30b,30c)が嵌め込まれて偏心回転運動する可動部材(75,85)と、該可動部材(75,85)と共に膨張室(72,82)を形成する固定部材(51,52,53,71,81)とを有する膨張機構(50)と、上記シャフト(30)を支持するための軸受部材(51,52)とを備えた膨張機(20)を対象とする。そして、この膨張機(20)は、上記主軸部(30a)の外周面と上記軸受部材(51,52)の軸受面との間に、浮動ブッシュ(93,94)が設けられている。
第3、第4の各発明では、主軸部(30a)の外周面と軸受部材(51,52)の軸受面との間に、浮動ブッシュ(93,94)を設けている。膨張機(20)の運転中は、主軸部(30a)の外周面が浮動ブッシュ(93,94)の内周面と摺接し、浮動ブッシュ(93,94)の外周面が軸受部材(51,52)の軸受面と摺接する。主軸部(30a)の外周面と軸受部材(51,52)の軸受面とに摺動自在の浮動ブッシュ(93,94)は、その回転速度がシャフト(30)の回転速度よりも遅くなる。従って、軸受部材(51,52)の軸受面及び主軸部(30a)の外周面における摩擦損失が小さくなる。
第5の発明は、上記第1乃至第4の何れか1つの発明において、上記シャフト(30)のうち上記膨張機構(50)に係合する偏心部(30b,30c)とは別の圧縮側偏心部(30d,30e)が嵌め込まれて偏心回転運動する圧縮側可動部材(47,48)と、該圧縮側可動部材(47,48)と共に圧縮室(31,32)を形成する圧縮側固定部材(41,42)とを有する圧縮機構(40)を備え、上記圧縮側偏心部(30d,30e)の外周面と上記圧縮側可動部材(47,48)との間にも、浮動ブッシュ(95,96)が設けられている。
第5の発明では、圧縮側偏心部(30d,30e)の外周面と圧縮側可動部材(47,48)との間に、浮動ブッシュ(95,96)を設けている。運転中は、圧縮側偏心部(30d,30e)の外周面が浮動ブッシュ(95,96)の内周面と摺接し、浮動ブッシュ(95,96)の外周面が圧縮側可動部材(47,48)と摺接する。圧縮側可動部材(47,48)と圧縮側偏心部(30d,30e)とに摺動自在の浮動ブッシュ(95,96)は、その回転速度がシャフト(30)の回転速度よりも遅くなる。従って、圧縮側可動部材(47,48)及び圧縮側偏心部(30d,30e)の外周面における摩擦損失が小さくなる。
第6の発明は、上記第1乃至第5の何れか1つの発明において、二酸化炭素が充填された冷媒回路(11)に接続されて、上記膨張機構(50)において二酸化炭素を膨張させる。
第6の発明では、膨張機(20)が、二酸化炭素が充填された冷媒回路(11)に接続されている。ここで、冷媒が二酸化炭素の場合の冷凍サイクルでは、冷凍サイクルの高低差圧が比較的大きくなるので、膨張室(72,82)から冷媒が漏れやすい。また、二酸化炭素は、単位流量当たりの冷凍能力が比較的大きい。このため、二酸化炭素用の膨張機(20)は、吸入容積が比較的小さく、処理流量に対する漏れ流量の比率が比較的高くなる。この第6の発明では、処理流量に対する漏れ流量の比率が比較的高く冷媒漏れの影響が大きい二酸化炭素用の膨張機(20)において、浮動ブッシュ(91−94)を設けている。
第1乃至第3の各発明では、偏心部(30b,30c)の外周面と可動部材(75,85)との間に、シャフト(30)よりも遅い速度で回転する浮動ブッシュ(91,92)を設けることによって、可動部材(75,85)及び偏心部(30b,30c)の外周面における摩擦損失が小さくなるようにしている。従って、運転中の機械損失が低減し、運転効率を向上させることができる。機械損失は、特に高速運転時に大きく低減する。このため、従来の膨張機(20)では冷媒漏れの影響の低下分が機械損失の増大分によって相殺されていた高速運転時に運転効率を向上させることができる。
また、上記第2の発明では、一対の区画部材(51,52,53)との間に形成される浮動ブッシュ(91,92)の両端の合計クリアランスが、一対の区画部材(51,52,53)との間に形成される可動部材(75,85)の筒状部の両端の合計クリアランスよりも小さくなっている。
ここで、この種の膨張機では、例えばシャフトの周囲に高温の潤滑油が存在している場合であれば、その潤滑油が膨張室へ漏れると、膨張後の流体が加熱されて熱損失が生じる。また、例えばシャフトの周囲が低圧であれば、膨張前の流体が膨張室から漏れるおそれがある。このため、従来の膨張機では、可動部材の筒状部の両端の合計クリアランスがなるべく小さくしていた。つまり、可動部材の筒状部によって膨張室の内側をシールしていた。しかし、筒状部の両端の合計クリアランスを狭くなるように可動部材を加工することは、可動部材の形状や材質から限界があり、十分なシール性能を確保することは困難であった。特に、可動部材を鋳物により構成する場合は、可動部材を精度よく加工することがなおさら困難である。
これに対して、この第2の発明では、浮動ブッシュ(91,92)の両端の合計クリアランスが筒状部の両端の合計クリアランスよりも小さくなっている。つまり、膨張室(72,82)の内側が浮動ブッシュ(91,92)によってシールされている。浮動ブッシュ(91,92)は円筒形であり形状が単純である。このため、浮動ブッシュ(91,92)の高さを調節することは、筒状部の高さを調節することに比べて、容易である。特に、浮動ブッシュ(91,92)を、高精度の加工が可能な切削加工により構成する場合は、なおさら容易である。従って、浮動ブッシュ(91,92)を所望の高さに精度よく加工することができるので、浮動ブッシュ(91,92)の両端の合計クリアランスを狭くすることができ、十分なシール性能を確保することができる。
また、上記第3、第4の各発明では、主軸部(30a)の外周面と軸受部材(51,52)の軸受面との間に、シャフト(30)よりも遅い速度で回転する浮動ブッシュ(93,94)を設けることで、軸受部材(51,52)の軸受面及び主軸部(30a)の外周面における摩擦損失が小さくなるようにしている。従って、運転中の機械損失が低減し、運転効率を向上させることができる。機械損失は、特に高速運転時に大きく低減する。このため、従来の膨張機(20)では冷媒漏れの影響の低下分が機械損失の増大分によって相殺されていた高速運転時に運転効率を向上させることができる。
また、上記第5の発明では、圧縮側偏心部(30d,30e)の外周面と圧縮側可動部材(47,48)との間に、シャフト(30)よりも遅い速度で回転する浮動ブッシュ(95,96)を設けることで、圧縮側可動部材(47,48)及び圧縮側偏心部(30d,30e)の外周面における摩擦損失が小さくなるようにしている。従って、圧縮機構(40)を備える膨張機(20)において、高速運転時における運転効率をさらに向上させることができる。
また、上記第6の発明では、冷媒漏れの影響が大きい二酸化炭素用の膨張機(20)において、浮動ブッシュ(91−94)を設けている。ここで、従来の膨張機(20)では、例えば冷媒としてR410を膨張させる場合は、冷媒漏れの影響はあっても機械損失が小さい低速運転時に運転効率のピークがあった。ところが、冷媒として二酸化炭素を膨張させる場合は、冷媒漏れの影響が大きいために、低速運転時の運転効率がそれほど高い値にならず、その結果、運転効率のピーク値が小さくなっていた。これに対して、この第6の発明によれば、浮動ブッシュ(91−94)を設けることで、冷媒漏れの影響が小さくなる高速運転時における運転効率が大きく向上する。従って、二酸化炭素用の膨張機(20)において、高速運転時の運転効率を低速運転時の運転効率よりも高くすることができ、運転効率のピーク値を従来よりも高くすることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態は、本発明に係る膨張機(20)を備えた空調機(10)である。本実施形態では、膨張機(20)が、図2に示すように、膨張機構(50)に加えて、その膨張機構(50)にシャフト(30)で連結された圧縮機構(40)をさらに備え、膨張機構(50)で回収した動力を圧縮機構(40)の駆動に利用するように構成されている。膨張機(20)では、膨張機構(50)と圧縮機構(40)と電動機(26)とがケーシング(21)内に収納されている。
〈空調機の全体構成〉
本実施形態の空調機(10)は、冷凍サイクルを行う冷媒回路(11)を備えている。冷媒回路(11)には、上述の膨張機(20)と室外熱交換器(14)と室内熱交換器(15)と第1四路切換弁(12)と第2四路切換弁(13)とが接続されている。冷媒回路(11)には、冷媒として二酸化炭素(CO2)が充填されている。
本実施形態の空調機(10)は、冷凍サイクルを行う冷媒回路(11)を備えている。冷媒回路(11)には、上述の膨張機(20)と室外熱交換器(14)と室内熱交換器(15)と第1四路切換弁(12)と第2四路切換弁(13)とが接続されている。冷媒回路(11)には、冷媒として二酸化炭素(CO2)が充填されている。
膨張機(20)の圧縮機構(40)は、その吐出側が第1四路切換弁(12)の第1のポートに、その吸入側が第1四路切換弁(12)の第4のポートにそれぞれ接続されている。一方、膨張機(20)の膨張機構(50)は、その流出側が第2四路切換弁(13)の第1のポートに、その流入側が第2四路切換弁(13)の第4のポートにそれぞれ接続されている。
また、室外熱交換器(14)は、その一端が第2四路切換弁(13)の第2のポートに、その他端が第1四路切換弁(12)の第3のポートにそれぞれ接続されている。一方、室内熱交換器(15)は、その一端が第1四路切換弁(12)の第2のポートに、その他端が第2四路切換弁(13)の第3のポートにそれぞれ接続されている。
第1四路切換弁(12)と第2四路切換弁(13)は、それぞれ、第1のポートと第2のポートとが連通し且つ第3のポートと第4のポートとが連通する状態(図1に実線で示す状態)と、第1のポートと第3のポートとが連通し且つ第2のポートと第4のポートとが連通する状態(図1に破線で示す状態)とに切り換わるように構成されている。
〈膨張機の構成〉
膨張機(20)は、図2に示すように、縦長で円筒形の密閉容器であるケーシング(21)を備えている。このケーシング(21)の内部には、上から下へ向かって順に、膨張機構(50)と電動機(26)と圧縮機構(40)とが配置されている。
膨張機(20)は、図2に示すように、縦長で円筒形の密閉容器であるケーシング(21)を備えている。このケーシング(21)の内部には、上から下へ向かって順に、膨張機構(50)と電動機(26)と圧縮機構(40)とが配置されている。
膨張機(20)は、1本のシャフト(30)を備えている。シャフト(30)は、主軸部(30a)と第1膨張側偏心部(30b)と第2膨張側偏心部(30c)と第1圧縮側偏心部(30d)と第2圧縮側偏心部(30e)とを備えている。第1膨張側偏心部(30b)と第2膨張側偏心部(30c)と第1圧縮側偏心部(30d)と第2圧縮側偏心部(30e)の各偏心部の軸心は、主軸部(30a)の軸心に対して偏心している。
膨張機構(50)は、ロータリ式の流体機械により構成されている。膨張機構(50)は、第1シリンダ(71)と第2シリンダ(81)とフロントヘッド(51)とミドルプレート(53)とリアヘッド(52)とを備えている。第1シリンダ(71)と第2シリンダ(81)とフロントヘッド(51)とミドルプレート(53)とリアヘッド(52)は、固定部材を構成している。
各シリンダ(71,81)は、略リング板状に形成されている。各シリンダ(71,81)は、例えば鋳物により構成されている。第1シリンダ(71)は、下側端面がミドルプレート(53)により、上側端面がリアヘッド(52)によりそれぞれ閉塞されている。一方、第2シリンダ(81)は、下側端面がフロントヘッド(51)により、上側端面がミドルプレート(53)によりそれぞれ閉塞されている。
第1シリンダ(71)内には第1ピストン(75)が配置されている。第2シリンダ(81)内には第2ピストン(85)が配置されている。第1ピストン(75)と第2ピストン(85)は、共に可動部材を構成している。
各ピストン(75,85)は、何れも円筒状に形成されている。各ピストン(75,85)は、例えば鋳物により構成されている。各ピストン(75,85)では、後述するブレード(76,86)を除く部分が筒状部を構成している。第1ピストン(75)は、上端がリアヘッド(52)に対面し、下端がミドルプレート(53)に対面している。第1ピストン(75)の内側には、第1膨張側偏心部(30b)が嵌め込まれている。一方、第2ピストン(85)は、上端がミドルプレート(53)に対面し、下端がフロントヘッド(51)に対面している。第2ピストン(85)の内側には、第2膨張側偏心部(30c)が嵌め込まれている。
第1シリンダ(71)では、第1シリンダ(71)の内周面と第1ピストン(75)の外周面との間に、第1膨張室(72)が形成されている。第1膨張室(72)は、シャフト(30)の軸方向の両側からミドルプレート(53)とリアヘッド(52)により区画されている。第1膨張室(72)に対しては、ミドルプレート(53)とリアヘッド(52)が一対の区画部材を構成している。
一方、第2シリンダ(81)では、第2シリンダ(81)の内周面と第2ピストン(85)の外周面との間に、第2膨張室(82)が形成されている。第2膨張室(82)の容積は第1膨張室(72)の容積よりも大きくなっている。第2膨張室(82)は、シャフト(30)の軸方向の両側からフロントヘッド(51)とミドルプレート(53)により区画されている。第2膨張室(82)に対しては、フロントヘッド(51)とミドルプレート(53)が一対の区画部材を構成している。
また、図3に示すように、第1膨張側偏心部(30b)の外周面と第1ピストン(75)の内周面との間には、第1の浮動ブッシュ(91)が設けられている。また、第2膨張側偏心部(30c)の外周面と第2ピストン(85)の内周面との間には、第2の浮動ブッシュ(92)が設けられている。各浮動ブッシュ(91,92)は、膨張側偏心部(30b,30c)とピストン(75,85)の両方に対して摺動自在に設けられた円筒状の部材である。単純な円筒状のため円筒の内面、外面および端面の研削加工が容易で寸法公差や幾何公差を非常に小さく出来る。各浮動ブッシュ(91,92)は、軸受材料(例えばホワイトメタル、銅合金、アルミ合金、鉄焼結材など)により構成されている。この点は、後述する他の浮動ブッシュ(93−99)についても同様である。
第1の浮動ブッシュ(91)は、内径が第1膨張側偏心部(30b)の外径よりも大きく、外径が第1ピストン(75)の内径よりも小さくなっている。第1の浮動ブッシュ(91)は、上端がリアヘッド(52)に対面し、下端がミドルプレート(53)に対面している。本実施形態では、第1ピストン(75)の内周面と第1膨張側偏心部(30b)の外周面との間に、シャフト(30)よりも遅い速度で回転する第1の浮動ブッシュ(91)を設けているので、第1ピストン(75)の内周面及び第1膨張側偏心部(30b)の外周面における摩擦損失が小さくなる。
一方、第2の浮動ブッシュ(92)は、内径が第2膨張側偏心部(30c)の外径よりも大きく、外径が第2ピストン(85)の内径よりも小さくなっている。第2の浮動ブッシュ(92)は、上端がミドルプレート(53)に対面し、下端がフロントヘッド(51)に対面している。本実施形態では、第2ピストン(85)の内周面と第2膨張側偏心部(30c)の外周面との間に、シャフト(30)よりも遅い速度で回転する第2の浮動ブッシュ(92)を設けているので、第2ピストン(85)の内周面及び第2膨張側偏心部(30c)の外周面における摩擦損失が小さくなる。
また、本実施形態では、第1の浮動ブッシュ(91)の高さが第1ピストン(75)の高さよりも高く、第2の浮動ブッシュ(92)の高さが第2ピストン(85)の高さよりも高くなっている。つまり、浮動ブッシュ(91,92)の両端の合計クリアランスがピストン(75,85)の両端の合計クリアランスよりも小さくなっている。本実施形態では、膨張室(72,82)の内側が浮動ブッシュ(91,92)によってシールされている。
また、各ピストン(75,85)には、図4に示すように、ブレード(76,86)が一体に設けられている。各ブレード(76,86)は、ピストン(75,85)の径方向へ延びる板状に形成されており、ピストン(75,85)の外周面から外側へ突出している。各ブレード(76,86)は、膨張室(81,82)を高圧室(73,83)と低圧室(74,84)とに区画している。
また、各シリンダ(71,81)には、一対の揺動ブッシュ(77,87)が一組ずつ設けられている。各揺動ブッシュ(77,87)は、内側面が平面となって外側面が円弧面となる略半月状に形成されている。各揺動ブッシュ(77,87)は、内側面がブレード(76,86)と、外側面がシリンダ(71,81)とそれぞれ摺接する。一対の揺動ブッシュ(77,87)は、ブレード(76,86)を挟み込んだ状態で装着されている。一対の揺動ブッシュ(77,87)は、各ブレード(76,86)を、シリンダ(71,81)に対して揺動自在で且つ進退自在に支持している。
膨張機構(50)には、ケーシング(21)の頂部を貫通する導入管(24)と、ケーシング(21)の胴部を貫通する導出管(25)とが接続されている。導入管(24)は、第1シリンダ(71)の高圧室(73)に開口している。導出管(25)は、第2シリンダ(81)の低圧室(84)に開口している。第1シリンダ(71)の低圧室(74)と第2シリンダ(81)の高圧室(83)とは、ミドルプレート(53)に形成された連通路(54)を通じて連通可能になっている。
フロントヘッド(51)は、肉厚の円盤状に形成されると共に、その中央部が下方へ突出した形状となっている。フロントヘッド(51)の中央部には、貫通孔が形成され、その貫通孔の内周面が軸受面になっている。フロントヘッド(51)は、シャフト(30)の主軸部(30a)を回転自在に支持する滑り軸受けとなる。フロントヘッド(51)は軸受部材を構成している。
本実施形態では、フロントヘッド(51)の軸受面とシャフト(30)の主軸部(30a)の外周面との間に、第3の浮動ブッシュ(93)が設けられている。第3の浮動ブッシュ(93)は、主軸部(30a)の外周面とフロントヘッド(51)の軸受面の両方に対して摺動自在に設けられた円筒状の部材である。第3の浮動ブッシュ(93)は、内径が主軸部(30a)の外径よりも大きく、外径がフロントヘッド(51)の貫通孔の孔径よりも小さくなっている。本実施形態では、フロントヘッド(51)の軸受面と主軸部(30a)の外周面との間に、シャフト(30)よりも遅い速度で回転する第3の浮動ブッシュ(93)を設けているので、フロントヘッド(51)の軸受面及び主軸部(30a)の外周面における摩擦損失が小さくなる。
リアヘッド(52)は、肉厚のリング板状に形成されている。リアヘッド(52)の中央部には、貫通孔が形成され、その貫通孔の内周面が軸受面になっている。リアヘッド(52)は、フロントヘッド(51)と同様に、シャフト(30)の主軸部(30a)を回転自在に支持する滑り軸受けとなる。リアヘッド(52)は軸受部材を構成している。なお、リアヘッド(52)には、貫通孔を閉塞する閉塞プレート(56)が積層されている。
本実施形態では、リアヘッド(52)の軸受面とシャフト(30)の主軸部(30a)の外周面との間に、第4の浮動ブッシュ(94)が設けられている。第4の浮動ブッシュ(94)は、主軸部(30a)の外周面とリアヘッド(52)の軸受面の両方に対して摺動自在に設けられた円筒状の部材である。第4の浮動ブッシュ(94)は、内径が主軸部(30a)の外径よりも大きく、外径がリアヘッド(52)の貫通孔の孔径よりも小さくなっている。本実施形態では、リアヘッド(52)の軸受面と主軸部(30a)の外周面との間に、シャフト(30)よりも遅い速度で回転する第4の浮動ブッシュ(94)を設けているので、リアヘッド(52)の軸受面及び主軸部(30a)の外周面における摩擦損失が小さくなる。
圧縮機構(40)は、ロータリ式の流体機械により構成されている。圧縮機構(40)は、第1圧縮側シリンダ(41)と第2圧縮側シリンダ(42)とフロントヘッド(44)とミドルプレート(46)とリアヘッド(45)とを、圧縮側固定部材として備えている。
各圧縮側シリンダ(41,42)は、略リング板状に形成されている。第1圧縮側シリンダ(41)は、下側端面がリアヘッド(45)により、上側端面がミドルプレート(46)によりそれぞれ閉塞されている。第1圧縮側シリンダ(41)内には第1圧縮側ピストン(47)が配置されている。一方、第2圧縮側シリンダ(42)は、下側端面がミドルプレート(46)により、上側端面がフロントヘッド(44)によりそれぞれ閉塞されている。第2圧縮側シリンダ(42)内には第2圧縮側ピストン(48)が配置されている。
各圧縮側ピストン(47,48)は、圧縮側可動部材を構成し、何れも円筒状に形成されている。第1圧縮側ピストン(47)は、上端がミドルプレート(46)に対面し、下端がリアヘッド(45)に対面している。第1圧縮側ピストン(47)の内側には、第1圧縮側偏心部(30d)が嵌め込まれている。一方、第2圧縮側ピストン(48)は、上端がフロントヘッド(44)に対面し、下端がミドルプレート(46)に対面している。第2圧縮側ピストン(48)の内側には、第2圧縮側偏心部(30e)が嵌め込まれている。
第1圧縮側シリンダ(41)では、第1圧縮側シリンダ(41)の内周面と第1圧縮側ピストン(47)の外周面との間に、第1圧縮室(31)が形成されている。第1圧縮室(31)は、シャフト(30)の軸方向の両側からミドルプレート(46)とリアヘッド(45)により区画されている。一方、第2圧縮側シリンダ(42)では、第2圧縮側シリンダ(42)の内周面と第2圧縮側ピストン(48)の外周面との間に、第2圧縮室(32)が形成されている。第2圧縮室(32)は、シャフト(30)の軸方向の両側からフロントヘッド(44)とミドルプレート(46)により区画されている。
また、図2に示すように、第1圧縮側偏心部(30d)の外周面と第1圧縮側ピストン(47)の内周面との間には、第5の浮動ブッシュ(95)が設けられている。また、第2圧縮側偏心部(30e)の外周面と第2圧縮側ピストン(48)の内周面との間には、第6の浮動ブッシュ(96)が設けられている。各浮動ブッシュ(95,96)は、圧縮側偏心部(30d,30e)と圧縮側ピストン(47,48)の両方に対して摺動自在に設けられた円筒状の部材である。各浮動ブッシュ(95,96)は、内径が圧縮側偏心部(30d,30e)の外径よりも大きく、外径が圧縮側ピストン(47,48)の内径よりも小さくなっている。本実施形態では、圧縮側ピストン(47,48)の内周面と圧縮側偏心部(30d,30e)の外周面との間に、シャフト(30)よりも遅い速度で回転する第5及び第6の浮動ブッシュ(95,96)を設けているので、圧縮側ピストン(47,48)の内周面及び圧縮側偏心部(30d,30e)の外周面における摩擦損失が小さくなる。
また、図示しないが、圧縮機構(40)においても、圧縮室(31,32)を高圧室と低圧室とに区画するブレードが、各圧縮側ピストン(47,48)に一体に設けられている。また、各圧縮側シリンダ(41,42)には、上記ブレードを圧縮側シリンダ(41,42)に対して回動自在で且つ進退自在に支持する一対の揺動ブッシュが設けられている。
圧縮機構(40)では、第1圧縮室(31)及び第2圧縮室(32)に吸入管(22)がそれぞれ接続されている。また、リアヘッド(45)には、第1圧縮室(31)で圧縮した冷媒を吐出するための吐出ポート(16)が形成されている。また、フロントヘッド(44)には、第2圧縮室(32)で圧縮した冷媒を吐出するための吐出ポート(17)が形成されている。各吐出ポート(16,17)にはリード弁が設けられている(図示省略)。各圧縮室(31,32)から吐出ポート(16,17)を通じて吐出された冷媒は、ケーシング(21)の胴部を貫通する吐出管(23)から吐出される。
フロントヘッド(44)は、肉厚の円盤状に形成されると共に、その中央部が上方へ突出した形状となっている。フロントヘッド(44)の中央部には、貫通孔が形成され、その貫通孔の内周面が軸受面になっている。フロントヘッド(44)は、シャフト(30)の主軸部(30a)を回転自在に支持する滑り軸受けになる。
本実施形態では、フロントヘッド(44)の軸受面とシャフト(30)の主軸部(30a)の外周面との間に、第7の浮動ブッシュ(97)及び第8の浮動ブッシュ(98)が設けられている。各浮動ブッシュ(97,98)は、主軸部(30a)の外周面とフロントヘッド(44)の軸受面の両方に対して摺動自在に設けられた円筒状の部材である。各浮動ブッシュ(97,98)は、内径が主軸部(30a)の外径よりも大きく、外径がフロントヘッド(44)の貫通孔の孔径よりも小さくなっている。本実施形態では、フロントヘッド(44)の軸受面と主軸部(30a)の外周面との間に、シャフト(30)よりも遅い速度で回転する第7及び第8の浮動ブッシュ(97,98)を設けているので、フロントヘッド(44)の軸受面及び主軸部(30a)の外周面における摩擦損失が小さくなる。
リアヘッド(45)は、肉厚の円盤状に形成されると共に、その中央部が下方へ突出した形状となっている。リアヘッド(45)の中央部には、貫通孔が形成され、その貫通孔の内周面が軸受面になっている。リアヘッド(45)は、フロントヘッド(44)と同様に、シャフト(30)の主軸部(30a)を回転自在に支持する滑り軸受けになる。
本実施形態では、リアヘッド(45)の軸受面とシャフト(30)の主軸部(30a)の外周面との間に、第9の浮動ブッシュ(99)が設けられている。第9の浮動ブッシュ(99)は、主軸部(30a)の外周面とリアヘッド(45)の軸受面の両方に対して摺動自在に設けられた円筒状の部材である。第9の浮動ブッシュ(99)は、内径が主軸部(30a)の外径よりも大きく、外径がリアヘッド(45)の貫通孔の孔径よりも小さくなっている。本実施形態では、リアヘッド(45)の軸受面と主軸部(30a)の外周面との間に、シャフト(30)よりも遅い速度で回転する第9の浮動ブッシュ(99)を設けているので、リアヘッド(45)の軸受面及び主軸部(30a)の外周面における摩擦損失が小さくなる。
電動機(26)は、ケーシング(21)の長手方向の中央部に配置されている。電動機(26)は、ステータ(27)とロータ(28)とにより構成されている。ステータ(27)は、ケーシング(21)に固定されている。ステータ(27)の外周面には、複数のコアカットが形成されている(図示省略)。ロータ(28)は、ステータ(27)の内側に配置されており、シャフト(30)の主軸部(30a)が連結されている。
また、ケーシング(21)内の底部には、潤滑油が貯留されている油溜りが形成されている。シャフト(30)の下端部には、油溜りに浸漬された遠心式の油ポンプ(18)が設けられている。油ポンプ(18)は、油ポンプ(18)は、圧縮機構(40)やシャフト(30)の外周面へ潤滑油を供給するための給油機構(18)を構成している。油ポンプ(18)は、シャフト(30)の回転により油溜りの潤滑油を、シャフト(30)内を上下方向に延びる給油通路へ送り込む。
−運転動作−
空調機(10)の動作について説明する。以下では、まず空調機(10)の冷房運転時及び暖房運転時の動作について説明し、続いて膨張機(20)の動作について説明する。
空調機(10)の動作について説明する。以下では、まず空調機(10)の冷房運転時及び暖房運転時の動作について説明し、続いて膨張機(20)の動作について説明する。
〈冷房運転〉
冷房運転時には、第1四路切換弁(12)及び第2四路切換弁(13)が図1に破線で示す状態に切り換えられる。この状態で電動機(26)に通電すると、冷媒回路(11)では冷媒が循環して蒸気圧縮冷凍サイクルが行われる。この冷凍サイクルでは、高圧圧力が二酸化炭素の臨界圧力よりも高くなる。この点は、暖房運転においても同じである。
冷房運転時には、第1四路切換弁(12)及び第2四路切換弁(13)が図1に破線で示す状態に切り換えられる。この状態で電動機(26)に通電すると、冷媒回路(11)では冷媒が循環して蒸気圧縮冷凍サイクルが行われる。この冷凍サイクルでは、高圧圧力が二酸化炭素の臨界圧力よりも高くなる。この点は、暖房運転においても同じである。
具体的に、圧縮機構(40)で圧縮された冷媒は、室外熱交換器(14)へ送られて室外空気へ放熱する。室外熱交換器(14)で放熱した高圧冷媒は、膨張機構(50)へ流入する。膨張機構(50)では、高圧冷媒が膨張し、この高圧冷媒から動力が回収される。膨張後の低圧冷媒は、室内熱交換器(15)へ送られる。室内熱交換器(15)では、冷媒が室内空気から吸熱して蒸発し、室内空気が冷却される。室内熱交換器(15)から流出した低圧ガス冷媒は、圧縮機構(40)へ吸入されて再び圧縮される。
〈暖房運転〉
暖房運転時には、第1四路切換弁(12)及び第2四路切換弁(13)が図1に実線で示す状態に切り換えられる。この状態で電動機(26)に通電すると、冷媒回路(11)では冷媒が循環して蒸気圧縮冷凍サイクルが行われる。
暖房運転時には、第1四路切換弁(12)及び第2四路切換弁(13)が図1に実線で示す状態に切り換えられる。この状態で電動機(26)に通電すると、冷媒回路(11)では冷媒が循環して蒸気圧縮冷凍サイクルが行われる。
圧縮機構(40)で圧縮された冷媒は、室内熱交換器(15)へ送られる。室内熱交換器(15)では、冷媒が室内空気へ放熱し、室内空気が加熱される。室内熱交換器(15)で放熱した冷媒は、膨張機構(50)へ流入する。膨張機構(50)では、高圧冷媒が膨張し、この高圧冷媒から動力が回収される。膨張後の低圧冷媒は、室外熱交換器(14)へ送られ、室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器(14)から流出した低圧ガス冷媒は、圧縮機構(40)へ吸入されて再び圧縮される。
−膨張機の動作−
膨張機構(50)で冷媒が膨張する過程について説明する。
膨張機構(50)で冷媒が膨張する過程について説明する。
膨張機構(50)では、導入管(24)から導入される冷媒が、第1シリンダ(71)の高圧室(73)に流入する。そして、第1シリンダ(71)の高圧室(73)に冷媒が流入し始めてからシャフト(30)が一回転すると、第1シリンダ(71)の高圧室(73)における冷媒の流入行程が終了する。そして、そこからシャフト(30)が僅かに回転すると、第1シリンダ(71)の低圧室(74)と第2シリンダ(81)の高圧室(83)とが連通路(54)を通じて互いに連通し、第1シリンダ(71)の低圧室(74)から第2シリンダ(81)の高圧室(83)へ冷媒が流入し始める。
その後、シャフト(30)が回転するにつれて、第1シリンダ(71)の低圧室(74)の容積が次第に減少すると同時に第2シリンダ(81)の高圧室(83)の容積が次第に増加し、結果として第1シリンダ(71)の低圧室(74)と第2シリンダ(81)の高圧室(83)との合計容積が次第に増加してゆく。膨張機構(50)では、第1シリンダ(71)の低圧室(74)と第2シリンダ(81)の高圧室(83)との合計容積が増加する過程で冷媒が膨張する。
そして、第1シリンダ(71)の低圧室(74)から第2シリンダ(81)の高圧室(83)へ冷媒が流入し終わると、第2シリンダ(81)の低圧室(84)が導出管(25)に連通する。そして、シャフト(30)の回転に伴って、第2シリンダ(81)の低圧室(84)から膨張後の低圧冷媒が流出してゆく。
続いて、圧縮機構(40)で冷媒が圧縮する過程について説明する。
圧縮機構(40)は、シャフト(30)の回転に伴って、吸入管(22)からの冷媒を第1圧縮側シリンダ(41)の第1圧縮室(31)に吸入する。第1圧縮室(31)における冷媒の吸入行程は、第1圧縮室(31)における冷媒の吸入開始からシャフト(30)が一回転すると終了する。そして、ここからシャフト(30)が回転すると、第1圧縮室(31)の冷媒の圧力が増大してゆき、第1圧縮室(31)の冷媒の圧力が吐出ポート(16)の外側の高圧空間の圧力を上回ると、リード弁が開いて第1圧縮室(31)の冷媒が吐出ポート(16)を通じて吐出される。なお、第2圧縮室(32)における冷媒の圧縮も、第1圧縮室(31)と同様であるため、説明は省略する。
第1圧縮室(31)及び第2圧縮室(32)から吐出された冷媒は、ステータ(27)のコアカット等を通じて、膨張機構(50)と電動機(26)との間の空間に流入し、吐出管(23)から吐出される。
−実施形態1の効果−
上記実施形態では、膨張機構(50)において、ピストン(75,85)の内周面と膨張側偏心部(30b,30c)の外周面との間に、第1及び第2の浮動ブッシュ(91,92)を設けているので、ピストン(75,85)の内周面及び膨張側偏心部(30b,30c)の外周面における摩擦損失が小さくなる。また、フロントヘッド(51)の軸受面とシャフト(30)の外周面との間に第3の浮動ブッシュ(93)を設け、リアヘッド(52)の軸受面とシャフト(30)の外周面との間に第4の浮動ブッシュ(94)を設けているので、フロントヘッド(51)の軸受面及びシャフト(30)の外周面における摩擦損失、及びリアヘッド(52)の軸受面及びシャフト(30)の外周面における摩擦損失が小さくなる。従って、運転中の機械損失が低減し、運転効率を向上させることができる。機械損失は、特に高速運転時に大きく低減する。このため、従来の膨張機(20)では冷媒漏れの影響の低下分が機械損失の増大分によって相殺されていた高速運転時に運転効率を向上させることができる。
上記実施形態では、膨張機構(50)において、ピストン(75,85)の内周面と膨張側偏心部(30b,30c)の外周面との間に、第1及び第2の浮動ブッシュ(91,92)を設けているので、ピストン(75,85)の内周面及び膨張側偏心部(30b,30c)の外周面における摩擦損失が小さくなる。また、フロントヘッド(51)の軸受面とシャフト(30)の外周面との間に第3の浮動ブッシュ(93)を設け、リアヘッド(52)の軸受面とシャフト(30)の外周面との間に第4の浮動ブッシュ(94)を設けているので、フロントヘッド(51)の軸受面及びシャフト(30)の外周面における摩擦損失、及びリアヘッド(52)の軸受面及びシャフト(30)の外周面における摩擦損失が小さくなる。従って、運転中の機械損失が低減し、運転効率を向上させることができる。機械損失は、特に高速運転時に大きく低減する。このため、従来の膨張機(20)では冷媒漏れの影響の低下分が機械損失の増大分によって相殺されていた高速運転時に運転効率を向上させることができる。
また、上記実施形態によれば、高速運転時に運転効率を向上させることができるので、運転の高速化を図ることで、電動機(26)の効率を向上させることができる。さらに、運転の高速化を図ることで、膨張機構(50)の吸入容積を小さくすることができるので、膨張機(20)のコンパクト化を図ることができる。
また、上記実施形態では、浮動ブッシュ(91,92)の両端の合計クリアランスがピストン(75,85)の筒状部の両端の合計クリアランスよりも小さくなっている。つまり、膨張室(72,82)の内側が浮動ブッシュ(91,92)によってシールされている。上述したように、浮動ブッシュ(91,92)は円筒形であり形状が単純である。このため、浮動ブッシュ(91,92)の高さを調節することは、ブレード(76,86)が突出するピストン(75,85)の筒状部の高さを調節することに比べて、容易である。特に、浮動ブッシュ(91,92)を切削加工により構成する場合は、なおさら容易である。従って、浮動ブッシュ(91,92)を所望の高さに精度よく加工することができるので、浮動ブッシュ(91,92)の両端の合計クリアランスを狭くすることができ、十分なシール性能を確保することができる。そして、膨張室(72,82)に漏れる潤滑油の流量を減らすことができるので、潤滑油による熱損失を低減させることができる。
なお、運転時に浮動ブッシュ(91,92)が上下の区画部材に接触しても、浮動ブッシュ(91,92)が削られるので、摺動上の問題は生じない。また、予め浮動ブッシュ(91,92)の高さが区画部材の間の距離よりも僅かに大きくなるように浮動ブッシュ(91,92)を加工することで、最終的に、浮動ブッシュ(91,92)の高さを区画部材の間の距離とほぼ等しくすることが可能であり、浮動ブッシュ(91,92)の両端の合計クリアランスを極めて狭い幅にすることが可能である。
また、上記実施形態では、圧縮側ピストン(47,48)の内周面と圧縮側偏心部(30d,30e)の外周面との間にも浮動ブッシュ(95,96)を設けることで、圧縮側ピストン(47,48)及び圧縮側偏心部(30d,30e)における摩擦損失が小さくなるようにしている。従って、圧縮機構(40)においても運転中の機械損失が低減し、圧縮機構(40)を備える膨張機(20)において、高速運転時における運転効率をさらに向上させることができる。
また、上記実施形態によれば、浮動ブッシュ(91−94)を設けることで、冷媒漏れの影響が小さくなる高速運転時における運転効率が大きく向上するので、冷媒漏れの影響が大きい二酸化炭素用の膨張機(20)において、高速運転時の運転効率を低速運転時の運転効率よりも高くすることができる。その結果、運転効率のピーク値を従来よりも高くすることができる。
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
上記実施形態について、ピストン(75,85)と膨張側偏心部(30b,30c)との間にだけ、浮動ブッシュ(91,92)を設けてもよい。また、膨張機構(50)の軸受部材(51,52)の軸受面と主軸部(30a)との間にだけ、浮動ブッシュ(93,94)を設けてもよい。
また、上記実施形態について、膨張機(20)が、圧縮機構(40)を備えていなくてもよい。この場合、上記実施形態の電動機(26)が、膨張機構(50)で回収された動力によって発電を行う発電機となる。
また、上記実施形態では、膨張機構(50)がシリンダ(71,81)とピストン(75,85)を2組備えているが、1組であってもよい。
また、上記実施形態について、膨張機構(50)が、例えばスクロール式の流体機械により構成されていてもよい。この場合、可動スクロールが可動部材を構成し、固定スクロールが固定部材を構成する。
また、上記実施形態について、膨張機構(50)が、環状のシリンダ室を有するシリンダと、シリンダに対して偏心してシリンダ室に収納され、シリンダ室を外側流体室と内側流体室とに区画する環状のピストンと、シリンダ室に配置され、各流体室をそれぞれ第1室と第2室とに区画するブレードとを有し、シリンダとピストンとの一方が可動部材になって他方が固定部材になることによって、シリンダとピストンとが相対的に偏心回転運動する流体機械により構成されていてもよい。この場合、外側流体室と内側流体室が共に膨張室になる。
また、上記実施形態について、膨張機(20)が、二酸化炭素以外の冷媒(例えばR410A)用に構成されていてもよい。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
以上説明したように、容積型の膨張機について有用である。
20 膨張機
30 シャフト
30a 主軸部
30b,30c 膨張側偏心部(偏心部)
50 膨張機構
71,81 シリンダ(固定部材)
72,82 膨張室
75,85 ピストン(可動部材)
91−99 浮動ブッシュ
30 シャフト
30a 主軸部
30b,30c 膨張側偏心部(偏心部)
50 膨張機構
71,81 シリンダ(固定部材)
72,82 膨張室
75,85 ピストン(可動部材)
91−99 浮動ブッシュ
Claims (6)
- 主軸部(30a)と、該主軸部(30a)に対して偏心した偏心部(30b,30c)とを有するシャフト(30)と、
上記シャフト(30)の偏心部(30b,30c)が嵌め込まれて偏心回転運動する可動部材(75,85)と、該可動部材(75,85)と共に膨張室(72,82)を形成する固定部材(51,52,53,71,81)とを有する膨張機構(50)とを備えた膨張機であって、
上記偏心部(30b,30c)の外周面と上記可動部材(75,85)との間に、浮動ブッシュ(91,92)が設けられていることを特徴とする膨張機。 - 請求項1において、
上記可動部材(75,85)は、上記偏心部(30b,30c)が嵌り込む筒状部を備え、
上記固定部材(51,52,53,71,81)は、上記膨張室(72,82)の壁面を有するシリンダ(71,81)と、該シリンダ(71,81)をシャフト(30)の軸方向の両側から挟み込むように設けられて上記浮動ブッシュ(91,92)の両端及び上記筒状部の両端に対面する一対の区画部材(51,52,53)を備える一方、
上記浮動ブッシュ(91,92)と上記筒状部とでは、浮動ブッシュ(91,92)の方が高さが高くなっていることを特徴とする膨張機。 - 請求項1において、
上記シャフト(30)を支持するための軸受部材(51,52)を備え、
上記主軸部(30a)の外周面と上記軸受部材(51,52)の軸受面との間にも、浮動ブッシュ(93,94)が設けられていることを特徴とする膨張機。 - 主軸部(30a)と、該主軸部(30a)に対して偏心した偏心部(30b,30c)とを有するシャフト(30)と、
上記シャフト(30)の偏心部(30b,30c)が嵌め込まれて偏心回転運動する可動部材(75,85)と、該可動部材(75,85)と共に膨張室(72,82)を形成する固定部材(51,52,53,71,81)とを有する膨張機構(50)と、
上記シャフト(30)を支持するための軸受部材(51,52)とを備えた膨張機であって、
上記主軸部(30a)の外周面と上記軸受部材(51,52)の軸受面との間に、浮動ブッシュ(93,94)が設けられていることを特徴とする膨張機。 - 請求項1乃至4の何れか1つにおいて、
上記シャフト(30)のうち上記膨張機構(50)に係合する偏心部(30b,30c)とは別の圧縮側偏心部(30d,30e)が嵌め込まれて偏心回転運動する圧縮側可動部材(47,48)と、該圧縮側可動部材(47,48)と共に圧縮室(31,32)を形成する圧縮側固定部材(41,42)とを有する圧縮機構(40)を備え、
上記圧縮側偏心部(30d,30e)の外周面と上記圧縮側可動部材(47,48)との間にも、浮動ブッシュ(95,96)が設けられていることを特徴とする膨張機。 - 請求項1乃至5の何れか1つにおいて、
二酸化炭素が充填された冷媒回路(11)に接続されて、上記膨張機構(50)において二酸化炭素を膨張させることを特徴とする膨張機。
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JP2008246612A JP2010077885A (ja) | 2008-09-25 | 2008-09-25 | 膨張機 |
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2008
- 2008-09-25 JP JP2008246612A patent/JP2010077885A/ja active Pending
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WO2014092065A1 (ja) * | 2012-12-14 | 2014-06-19 | サンデン株式会社 | スクロール型流体機械 |
JP2014118865A (ja) * | 2012-12-14 | 2014-06-30 | Sanden Corp | スクロール型流体機械 |
CN104854308A (zh) * | 2012-12-14 | 2015-08-19 | 三电控股株式会社 | 涡旋型流体设备 |
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