上述のように、上記ロータリ式膨張機では、高圧流体が間欠的に膨張室へ導入されることになる。また、膨張室へ向かう高圧流体の流れは、膨張室の容積が増大する工程の途中で遮断されることになる。つまり、高圧流体の流速が比較的高い状態で、膨張室へ向かう高圧流体の流れが遮断されてしまう。このため、ロータリ式膨張機に接続された管路内で流体の脈動が生じ、振動や騒音の原因となるという問題があった。特に、超臨界状態で液状の高圧流体をロータリ式膨張機へ導入する場合には、その高圧流体が非圧縮性であることから水撃現象が生じ、振動や騒音が過大となったり、場合によっては配管等の破損を招くという問題があった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高圧流体の膨張によって動力を得るロータリ式膨張機、及びロータリ式膨張機を備える流体機械において、流体の脈動による振動等を低減して信頼性を向上させることにある。
第1の発明は、両端が閉塞されたシリンダ(71,81)、上記各シリンダ(71,81)内に流体室(72,82)を形成するためのピストン(75,85)、及び上記流体室(72,82)を高圧側の高圧室(73,83)と低圧側の低圧室(74,84)に仕切るためのブレード(76,86)がそれぞれに設けられた複数のロータリ機構部(70,80)と、上記ピストン(75,85)に係合する偏心部(41,42)が上記ロータリ機構部(70,80)と同数形成された1本の回転軸(40)とを備えるロータリ式膨張機を対象としている。そして、上記複数のロータリ機構部(70,80)は、それぞれの押しのけ容積が互いに相違していて押しのけ容積の小さいものから順に直列接続され、上記複数のロータリ機構部(70,80)のうち互いに接続された2つでは、前段側のロータリ機構部(70)の低圧室(74)から後段側のロータリ機構部(80)の高圧室(83)へ流体が流入するものである。
第2の発明は、両端が閉塞されたシリンダ(71,81)、上記各シリンダ(71,81)内に流体室(72,82)を形成するためのピストン(75,85)、及び上記流体室(72,82)を高圧側の高圧室(73,83)と低圧側の低圧室(74,84)に仕切るためのブレード(76,86)がそれぞれに設けられた複数のロータリ機構部(70,80)と、上記ピストン(75,85)に係合する偏心部(41,42)が上記ロータリ機構部(70,80)と同数形成された1本の回転軸(40)とを備えるロータリ式膨張機を対象としている。そして、上記複数のロータリ機構部(70,80)は、それぞれの押しのけ容積が互いに相違していて押しのけ容積の小さいものから順に直列接続され、上記複数のロータリ機構部(70,80)のうち互いに接続された2つでは、前段側のロータリ機構部(70)の低圧室(74)と後段側のロータリ機構部(80)の高圧室(83)とが互いに連通して1つの膨張室(66)を形成するものである。
第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、複数のロータリ機構部(70,80)は、それぞれのブレード(76,86)がシリンダ(71,81)の外周側へ最も退いた状態となる時期が互いに同期しているものである。
第4の発明は、上記第1,第2又は第3の発明において、回転軸(40)の各偏心部(41,42)は、それぞれの偏心方向が互いに相違するように形成されるものである。
第5の発明は、上記第1の発明において、回転軸(40)の各偏心部(41,42)は、それぞれの偏心方向が互いに等角度間隔となるように形成されるものである。
第6の発明は、上記第1又は第2の発明において、各ロータリ機構部(70,80)のシリンダ(71,81)は、それぞれの間に中間プレート(63)が挟まれた状態で積層され、上記各中間プレート(63)には、隣り合った2つのロータリ機構部(70,80)のうち前段側のロータリ機構部(70)の低圧室(74)と後段側のロータリ機構部(80)の高圧室(83)とを連通させるための連通路(64)が該中間プレート(63)を厚み方向へ貫通するように形成される一方、上記各シリンダ(71,81)は、上記連通路(64)の長さが最短となる姿勢で配置されるものである。
第7の発明は、上記第1,第2又は第3の発明において、各ロータリ機構部(70,80)のシリンダ(71,81)は、それぞれの間に中間プレート(63)が挟まれた状態で積層され、上記各中間プレート(63)には、隣り合った2つのロータリ機構部(70,80)のうち前段側のロータリ機構部(70)の低圧室(74)と後段側のロータリ機構部(80)の高圧室(83)とを連通させるための連通路(64)が該中間プレート(63)を厚み方向へ貫通するように形成される一方、上記連通路(64)の長さが最短となるように、回転軸(40)における各偏心部(41,42)の偏心方向が互いに所定角度だけ相違しているものである。
第8の発明は、上記第1,第2又は第3の発明において、上記複数のロータリ機構部(70,80)のうち互いに接続された2つでは、前段側のロータリ機構部(70)の低圧室(74)と後段側のロータリ機構部(80)の高圧室(83)とが連通路(64)を介して接続され、上記連通路(64)の途中には、該連通路(64)での圧力変動を緩和するための所定容積の中間室(65)が設けられるものである。
第9の発明は、上記第1乃至第8の何れか1つの発明において、ブレード(76,86)は、ピストン(75,85)と別体に形成されると共に、その先端が該ピストン(75,85)に押圧された状態でシリンダ(71,81)に進退自在に支持されるものである。
第10の発明は、上記第1乃至第8の何れか1つの発明において、ブレード(76,86)は、ピストン(75,85)の側面から突出するように該ピストン(75,85)と一体に形成されると共に、シリンダ(71,81)に進退自在で且つ回動自在に支持されるものである。
第11の発明は、上記第1乃至第10の何れか1つの発明において、 押しのけ容積が最小のロータリ機構部(70)の高圧室(73)へ導入される流体は、臨界圧力以上の二酸化炭素であるものである。
第12の発明は、上記第1,第2又は第3の発明のロータリ式膨張機(60)と、該ロータリ式膨張機(60)の回転軸(40)に係合された圧縮機(50)と、上記ロータリ式膨張機(60)及び圧縮機(50)が収納されるケーシング(31)とを備え、上記圧縮機(50)で圧縮された流体が上記ケーシング(31)内に吐出される流体機械を対象としている。そして、上記ロータリ式膨張機(60)が備える複数のロータリ機構部(70,80)は、押しのけ容積が大きいものほど上記圧縮機(50)から離れた位置に配置されるものである。
第13の発明は、上記第12の発明の流体機械において、ロータリ式膨張機(60)には、ケーシング(31)内の流体から該ロータリ式膨張機(60)を通過する流体への伝熱を阻害する断熱部材(100)が設けられるものである。
−作用−
上記第1及び第2の発明では、押しのけ容積が互いに相違する複数のロータリ機構部(70,80)がロータリ式膨張機(60)に設けられる。これら複数のロータリ機構部(70,80)は、押しのけ容積の小さいものから大きいものへ順に直列接続される。つまり、押しのけ容積の小さい前段側のロータリ機構部(70)の流出側は、押しのけ容積の大きい後段側のロータリ機構部(80)の流入側に接続される。
この発明のロータリ式膨張機(60)において、高圧流体は、最初に押しのけ容積が最小のロータリ機構部(70)へ導入される。具体的には、このロータリ機構部(70)における流体室(72)の高圧側、即ち高圧室(73)へ高圧流体が導入される。高圧流体は、この流体室(72)の容積が最大となるまで流入し続ける。つまり、ブレード(77)がシリンダ(71)の外周側へ最も退いた状態から回転軸(40)がほぼ1回転する間に亘って高圧流体が高圧室(73)へ流入し続ける。
ここで、ブレード(77)がシリンダ(71)の外周側へ最も退いた状態における回転軸(40)の回転角を0°とすると、この回転角が0°から180°に至るまでは高圧室(73)の容積の増大割合が次第に大きくなり、この回転角が180°から360°に至るまでは高圧室(73)の容積の増大割合が次第に小さくなる。そして、高圧室(73)へ流入する流体の流速は、回転軸(40)の回転角が0°から180°に至るまでは次第に速くなってゆき、この回転角が180°から360°に至るまでは次第に遅くなってゆく。従って、高圧室(73)へ向かう流体の流れが遮断される時点では、その流体の流速が殆どゼロになっている。
続いて、高圧流体で満たされた流体室(72)は、低圧側の低圧室(74)となって押しのけ容積の大きな後段側のロータリ機構部(80)の高圧室(83)と連通する。この低圧室(74)内の流体は、後段側のロータリ機構部(80)の高圧室(83)へ流入しながら膨張してゆく。つまり、上記第2の発明では、前段側のロータリ機構部(70)の低圧室(74)と後段側のロータリ機構部(80)の高圧室(83)とで構成された膨張室(66)の内部で流体が膨張する。流体は、このような膨張を順次繰り返し、最終的に押しのけ容積が最大のロータリ機構部(80)から送り出される。そして、このような流体の膨張によって、ロータリ式膨張機(60)の回転軸(40)が駆動される。つまり、ロータリ式膨張機(60)へ導入された高圧流体の内部エネルギが、回転軸(40)の回転動力に変換される。
上記第3の発明では、ロータリ機構部(70,80)においてブレード(76,86)が最も退く時期が互いに同期している。前段側のロータリ機構部(70)において低圧室(74)の容積が最大となる時点では、後段側のロータリ機構部(80)において高圧室(83)の容積が最小となる。前段側のロータリ機構部(70)において低圧室(74)の容積が減少し始めると、それにつれて後段側のロータリ機構部(80)において高圧室(83)の容積が増大し始める。そして、前段側のロータリ機構部(70)において低圧室(74)の容積が最小となる時点では、後段側のロータリ機構部(80)において高圧室(83)の容積が最大となる。
上記第4及び第5の発明では、回転軸(40)の各偏心部(41,42)が互いに異なる方向へ偏心するように形成される。このため、各ロータリ機構部(70,80)の高圧室(73,83)内の流体からピストン(75,85)を介して回転軸(40)が受ける力は、それぞれの作用する方向が互いに相違する。
更に、上記第5の発明では、回転軸(40)における各偏心部(41,42)の偏心方向が一定の角度間隔でずれている。例えば、回転軸(40)に形成される偏心部(41,42)が2つの場合には、それぞれの偏心方向が180°間隔となり、3つの場合には、それぞれの偏心方向が120°間隔となる。そして、各ロータリ機構部(70,80)の高圧室(73,83)内の流体から回転軸(40)が受ける力は、それぞれの作用方向の角度間隔が概ね一定となる。
上記第6又は第7の発明では、中間プレート(63)に連通路(64)が形成され、この連通路(64)は、前段側のロータリ機構部(70)の低圧室(74)と後段側のロータリ機構部(80)の高圧室(83)とを接続する。ここで、前段側のロータリ機構部(70)ではブレード(77)の右側に低圧室(74)が形成されると仮定すると、後段側のロータリ機構部(80)ではブレード(87)の左側に高圧室(83)が形成されることになる。そして、連通路(64)の低圧室(74)側の開口位置と高圧室(83)側の開口位置とが概ね重なるように各シリンダ(71,81)の配置角度をずらせば、連通路(64)の伸長方向と中間プレート(63)の厚み方向のなす角度が最小となり、連通路(64)の長さが最短となる。
上記第8の発明では、連通路(64)の途中に中間室(65)が設けられる。中間室(65)は、連通路(64)での圧力変動を低減できる程度の容積となるように形成される。そして、前段側のロータリ機構部(70)の低圧室(74)から流出した流体は、連通路(64)及び中間室(65)を通過して後段側のロータリ機構部(80)の高圧室(83)へ流入する。
上記第9の発明では、各ロータリ機構部(70,80)において、ブレード(76,86)がピストン(75,85)とは別体に形成される。このブレード(76,86)は、その先端がピストン(75,85)に押し付けられ、ピストン(75,85)の偏心運動に伴って進退する。つまり、この発明において、各ロータリ機構部(70,80)は、いわゆるローリングピストン型に構成される。
上記第10の発明では、各ロータリ機構部(70,80)において、ブレード(76,86)がピストン(75,85)と一体に形成される。このブレード(76,86)は、シリンダ(71,81)に支持された状態で、シリンダ(71,81)に対して進退自在で且つ回動自在となっている。このブレード(76,86)と一体のピストン(75,85)は、回転軸(40)の偏心部(41,42)に係合しつつシリンダ(71,81)内で揺動運動を行う。つまり、この発明において、各ロータリ機構部(70,80)は、いわゆる揺動ピストン型に構成される。
上記第11の発明において、複数のロータリ機構部(70,80)のうち押しのけ容積が最小のものでは、その高圧室(73)へ二酸化炭素(CO2)が送り込まれる。この高圧室(73)へ導入される二酸化炭素の圧力は、二酸化炭素の臨界圧力以上となっている。そして、この高圧室(73)へ流入した二酸化炭素は、直列接続された複数のロータリ機構部(70,80)を順次通過しながら膨張する。
上記第12の発明では、上記第1,第2又は第3の発明のロータリ式膨張機(60)と圧縮機(50)とがケーシング(31)内に収納される。圧縮機(50)は、ロータリ式膨張機(60)の回転軸(40)に係合している。この圧縮機(50)は、ロータリ式膨張機(60)で得られた動力によって駆動され、流体を吸入して圧縮する。圧縮機(50)で圧縮された流体は、ケーシング(31)内の空間へ吐出され、この空間を通過後にケーシング(31)の外部へ送り出される。尚、この圧縮機(50)は、ロータリ式膨張機(60)だけによって駆動されるものである必要はなく、例えば電動機と上記ロータリ式膨張機(60)の両方によって駆動されるものであってもよい。
この発明のロータリ式膨張機(60)において、複数のロータリ機構部(70,80)は、押しのけ容積が大きいものほど上記圧縮機(50)から離れた位置に配置される。ここで、ロータリ式膨張機(60)を通過する流体は、膨張して圧力が低下するにつれて、その温度も低下してゆく。一方、ロータリ式膨張機(60)へ流入した流体は、押しのけ容積の小さいロータリ機構部(70)から押しのけ容積の大きいロータリ機構部(80)へと順次通過してゆく。このため、このロータリ式膨張機(60)では、押しのけ容積の大きいロータリ機構部(80)ほど、そこを通過する流体の温度が低くなる。そして、この発明では、通過する流体の温度が低いロータリ機構部(80)ほど、高温高圧の流体を吐出する圧縮機(50)から離れた位置に設置される。
上記第13の発明では、ロータリ式膨張機(60)に断熱部材(100)が設けられる。一般に、ロータリ式膨張機(60)を通過する流体は、圧縮機(50)で圧縮されてケーシング(31)内へ吐出された流体に比べて低温であり、圧縮機(50)の吐出流体からの熱移動によってある程度加熱されてしまう。上記断熱部材(100)は、圧縮機(50)の吐出流体からロータリ式膨張機(60)を通過する流体への伝熱を阻害し、ロータリ式膨張機(60)を通過する流体に対する加熱量を削減する。
本発明のロータリ式膨張機(60)において、供給された高圧流体は、最初に押しのけ容積が最小のロータリ機構部(70)の高圧室(73)へ導入される。そして、この高圧室(73)へ向かう流体の流速は、高圧室(73)の容積変化割合に対応して緩やかに増減する。
ここで、従来のロータリ式膨張機(60)では、導入される流体の流れが流速の比較的高い状態で遮断されることとなり、それに伴って急峻な圧力変動が生じていた。これに対し、本発明のロータリ式膨張機(60)では、高圧室(73)へ向かう流体の流速変化が緩やかとなるため、導入される流体の急峻な圧力変動を防止できる。従って、本発明によれば、ロータリ式膨張機(60)へ導入される流体の脈動を大幅に緩和でき、それに伴う振動や騒音を大幅に低減してロータリ式膨張機(60)の信頼性を向上させることができる。
上記第3の発明では、前段側のロータリ機構部(70)において低圧室(74)の容積が最大値から減少し始める時期と、後段側のロータリ機構部(80)において高圧室(83)の容積が最小値から増大し始める時期とが同期している。このため、ロータリ式膨張機(60)へ供給された高圧流体の膨張がスムーズに行われ、高圧流体からの動力回収を効率よく行うことができる。
上記第4及び第5の発明では、回転軸(40)の各偏心部(41,42)が互いに異なる方向へ偏心している。このため、各ロータリ機構部(70,80)の高圧室(73,83)内の流体から回転軸(40)が受ける力は、それぞれの作用方向が互いに相違することとなり、互いにある程度打ち消し合う。従って、これらの各発明によれば、各偏心部(41,42)の偏心方向が同じで回転軸(40)が高圧室(73,83)内の流体から同じ向きの力を受ける場合に比べ、回転軸(40)に作用する径方向の荷重を削減でき、回転軸(40)と軸受けの間における摩擦損失を低減してロータリ式膨張機(60)の効率を向上させることができる。
特に、上記第5の発明では、回転軸(40)における各偏心部(41,42)の偏心方向が等角度間隔となっている。このため、各ロータリ機構部(70,80)の高圧室(73,83)内の流体から回転軸(40)が受ける力は、それぞれの作用方向が等角度間隔となり、互いにほぼ完全に打ち消し合う。従って、この発明によれば、回転軸(40)と軸受けの間における摩擦損失を大幅に低減でき、ロータリ式膨張機(60)の効率を大幅に向上させることができる。
上記第6及び第7の発明では、各シリンダ(71,81)の配置角度をずらして連通路(64)の長さを出来るだけ短縮している。このため、前段側のロータリ機構部(70)の低圧室(74)から後段側のロータリ機構部(80)の高圧室(83)へ至るまでの流体の圧力損失を削減でき、ロータリ式膨張機(60)において回収される動力を増大させることができる。
上記第8の発明では、比較的容積の大きな中間室(65)を連通路(64)に設けている。このため、前段側のロータリ機構部(70)の低圧室(74)から後段側のロータリ機構部(80)の高圧室(83)へ向けて連通路(64)を流れる流体の圧力変動を緩和することができる。
上記第11の発明では、超臨界状態の二酸化炭素がロータリ式膨張機(60)へ導入される。つまり、導入される流体が実質的に非圧縮性であって流体の脈動による弊害の大きかったロータリ式膨張機に対し、本発明の構成を適用している。従って、この発明によれば、従来は流体の導入時の脈動による弊害が大きかったロータリ式膨張機において、そのような脈動の発生を確実に抑制し、その信頼性を確実に向上させることができる。
上記第12の発明では、1つのケーシング(31)に圧縮機(50)と共に収納されたロータリ式膨張機(60)において、押しのけ容積の大きいロータリ機構部(80)ほど圧縮機(50)から離れた位置に配置している。つまり、通過する流体の温度が低いロータリ機構部(80)ほど圧縮機(50)から遠くに配置し、圧縮機(50)寄りには出来るだけ通過する流体の温度が高いロータリ機構部(70)を配置している。従って、この発明によれば、押しのけ容積の大きいロータリ機構部(80)を圧縮機(50)に近い方へ配置する場合に比べ、圧縮機(50)の吐出流体からロータリ式膨張機(60)の流体へ移動する熱量を削減できる。
上記第13の発明では、ロータリ式膨張機(60)に断熱部材(100)を設け、圧縮機(50)の吐出流体からロータリ式膨張機(60)の流体への伝熱を断熱部材(100)で阻害している。従って、この発明によれば、圧縮機(50)の吐出流体からロータリ式膨張機(60)の流体へ移動する熱量を一層削減することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1について説明する。本実施形態の空調機(10)は、本発明に係るロータリ式膨張機を備えている。
〈空調機の全体構成〉
図1に示すように、上記空調機(10)は、いわゆるセパレート型のものであって、室外機(11)と室内機(13)とを備えている。室外機(11)には、室外ファン(12)、室外熱交換器(23)、第1四路切換弁(21)、第2四路切換弁(22)、及び圧縮・膨張ユニット(30)が収納されている。室内機(13)には、室内ファン(14)及び室内熱交換器(24)が収納されている。室外機(11)は屋外に設置され、室内機(13)は屋内に設置されている。また、室外機(11)と室内機(13)とは、一対の連絡配管(15,16)で接続されている。尚、圧縮・膨張ユニット(30)の詳細は後述する。
上記空調機(10)には、冷媒回路(20)が設けられている。この冷媒回路(20)は、圧縮・膨張ユニット(30)や室内熱交換器(24)などが接続された閉回路である。また、この冷媒回路(20)には、冷媒として二酸化炭素(CO2)が充填されている。
上記室外熱交換器(23)と室内熱交換器(24)とは、何れもクロスフィン型のフィン・アンド・チューブ熱交換器で構成されている。室外熱交換器(23)では、冷媒回路(20)を循環する冷媒が室外空気と熱交換する。室内熱交換器(24)では、冷媒回路(20)を循環する冷媒が室内空気と熱交換する。
上記第1四路切換弁(21)は、4つのポートを備えている。この第1四路切換弁(21)は、その第1のポートが圧縮・膨張ユニット(30)の吐出ポート(33)に、第2のポートが連絡配管(15)を介して室内熱交換器(24)の一端に、第3のポートが室外熱交換器(23)の一端に、第4のポートが圧縮・膨張ユニット(30)の吸入ポート(32)にそれぞれ接続されている。そして、第1四路切換弁(21)は、第1のポートと第2のポートとが連通し且つ第3のポートと第4のポートとが連通する状態(図1に実線で示す状態)と、第1のポートと第3のポートとが連通し且つ第2のポートと第4のポートとが連通する状態(図1に破線で示す状態)とに切り換わる。
上記第2四路切換弁(22)は、4つのポートを備えている。この第2四路切換弁(22)は、その第1のポートが圧縮・膨張ユニット(30)の流出ポート(35)に、第2のポートが室外熱交換器(23)の他端に、第3のポートが連絡配管(16)を介して室内熱交換器(24)の他端に、第4のポートが圧縮・膨張ユニット(30)の流入ポート(34)にそれぞれ接続されている。そして、第2四路切換弁(22)は、第1のポートと第2のポートとが連通し且つ第3のポートと第4のポートとが連通する状態(図1に実線で示す状態)と、第1のポートと第3のポートとが連通し且つ第2のポートと第4のポートとが連通する状態(図1に破線で示す状態)とに切り換わる。
〈圧縮・膨張ユニットの構成〉
図2に示すように、圧縮・膨張ユニット(30)は、横長で円筒形の密閉容器であるケーシング(31)を備えている。このケーシング(31)の内部には、図2における左から右に向かって順に、圧縮機構部(50)と、電動機(45)と、膨張機構部(60)とが配置されている。尚、以下の説明で用いる「右」「左」は、何れも参照する図面におけるものを意味する。
上記電動機(45)は、ケーシング(31)の長手方向の中央部に配置されている。この電動機(45)は、ステータ(46)とロータ(47)とにより構成されている。ステータ(46)は、上記ケーシング(31)に固定されている。ロータ(47)は、ステータ(46)の内側に配置されている。また、ロータ(47)には、該ロータ(47)と同軸にシャフト(40)の主軸部(44)が貫通している。
上記シャフト(40)は、回転軸を構成している。このシャフト(40)では、その左端側に1つの小径偏心部(43)が形成され、その右端側に2つの大径偏心部(41,42)が形成されている。
小径偏心部(43)は、主軸部(44)よりも小径に形成され、主軸部(44)の軸心から所定量だけ偏心している。一方、各大径偏心部(41,42)は、主軸部(44)よりも大径に形成されている。左右に並んだ2つの大径偏心部(41,42)のうち、右側のものが第1大径偏心部(41)を構成し、左側のものが第2大径偏心部(42)を構成している。第1大径偏心部(41)と第2大径偏心部(42)とは、何れも同じ方向へ偏心している。第2大径偏心部(42)の外径は、第1大径偏心部(41)の外径よりも大きくなっている。また、主軸部(44)の軸心に対する偏心量は、第2大径偏心部(42)の方が第1大径偏心部(41)よりも大きくなっている。
上記圧縮機構部(50)は、いわゆるスクロール圧縮機を構成している。この圧縮機構部(50)は、固定スクロール(51)と、可動スクロール(54)と、フレーム(57)とを備えている。また、圧縮機構部(50)には、吸入ポート(32)と吐出ポート(33)とが設けられている。
上記固定スクロール(51)では、鏡板(52)に渦巻き壁状の固定側ラップ(53)が突設されている。この固定スクロール(51)の鏡板(52)は、ケーシング(31)に固定されている。一方、上記可動スクロール(54)では、板状の鏡板(55)に渦巻き壁状の可動側ラップ(56)が突設されている。固定スクロール(51)と可動スクロール(54)とは、互いに対向する姿勢で配置されている。そして、固定側ラップ(53)と可動側ラップ(56)が噛み合うことにより、圧縮室(59)が区画される。
上記吸入ポート(32)は、その一端が固定側ラップ(53)及び可動側ラップ(56)の外周側に接続されている。一方、上記吐出ポート(33)は、固定スクロール(51)の鏡板(52)の中央部に接続され、その一端が圧縮室(59)に開口している。
上記可動スクロール(54)の鏡板(55)は、その右側面の中央部に突出部分が形成されており、この突出部分にシャフト(40)の小径偏心部(43)が挿入されている。また、上記可動スクロール(54)は、オルダムリング(58)を介してフレーム(57)に支持されている。このオルダムリング(58)は、可動スクロール(54)の自転を規制するためのものである。そして、可動スクロール(54)は、自転することなく、所定の旋回半径で公転する。
上記膨張機構部(60)は、いわゆる揺動ピストン型の流体機械であって、本発明のロータリ式膨張機を構成している。この膨張機構部(60)には、対になったシリンダ(81,82)及びピストン(75,85)が二組設けられている。また、膨張機構部(60)には、フロントヘッド(61)と、中間プレート(63)と、リアヘッド(62)とが設けられている。
上記膨張機構部(60)では、図2における左から右へ向かって順に、フロントヘッド(61)、第2シリンダ(81)、中間プレート(63)、第1シリンダ(71)、リアヘッド(62)が積層された状態となっている。この状態において、第2シリンダ(81)は、その左側端面がフロントヘッド(61)により閉塞され、その右側端面が中間プレート(63)により閉塞されている。一方、第1シリンダ(71)は、その左側端面が中間プレート(63)により閉塞され、その右側端面がリアヘッド(62)により閉塞されている。また、第2シリンダ(81)の内径は、第1シリンダ(71)の内径よりも大きくなっている。
上記シャフト(40)は、積層された状態のフロントヘッド(61)、第2シリンダ(81)、中間プレート(63)、第1シリンダ(71)、及びリアヘッド(62)を貫通している。また、シャフト(40)は、その第1大径偏心部(41)が第1シリンダ(71)内に位置し、その第2大径偏心部(42)が第2シリンダ(81)内に位置している。
図3及び図4に示すように、第1シリンダ(71)内には第1ピストン(75)が、第2シリンダ(81)内には第2ピストン(85)がそれぞれ設けられている。第1及び第2ピストン(75,85)は、何れも円環状あるいは円筒状に形成されている。第1ピストン(75)の外径と第2ピストン(85)の外径とは、互いに等しくなっている。第1ピストン(75)の内径は第1大径偏心部(41)の外径と、第2ピストン(85)の内径は第2大径偏心部(42)の外径とそれぞれ概ね等しくなっている。そして、第1ピストン(75)には第1大径偏心部(41)が、第2ピストン(85)には第2大径偏心部(42)がそれぞれ貫通している。
上記第1ピストン(75)は、その外周面が第1シリンダ(71)の内周面に、一方の端面がリアヘッド(62)に、他方の端面が中間プレート(63)にそれぞれ摺接している。第1シリンダ(71)内には、その内周面と第1ピストン(75)の外周面との間に第1流体室(72)が形成される。一方、上記第2ピストン(85)は、その外周面が第2シリンダ(81)の内周面に、一方の端面がフロントヘッド(61)に、他方の端面が中間プレート(63)にそれぞれ摺接している。第2シリンダ(81)内には、その内周面と第2ピストン(85)の外周面との間に第2流体室(82)が形成される。
上記第1及び第2ピストン(75,85)のそれぞれには、ブレード(76,86)が1つずつ一体に設けられている。ブレード(76,86)は、ピストン(75,85)の半径方向へ延びる板状に形成されており、ピストン(75,85)の外周面から外側へ突出している。
上記各シリンダ(71,81)には、一対のブッシュ(77,87)が一組ずつ設けられている。各ブッシュ(77,87)は、内側面が平面となって外側面が円弧面となるように形成された小片である。一対のブッシュ(77,87)は、ブレード(76,86)を挟み込んだ状態で設置されている。各ブッシュ(77,87)は、その内側面がブレード(76,86)と、その外側面がシリンダ(81,82)と摺動する。そして、ピストン(75,85)と一体のブレード(76,86)は、ブッシュ(77,87)を介してシリンダ(71,81)に支持され、シリンダ(71,81)に対して回動自在で且つ進退自在となっている。
第1シリンダ(71)内の第1流体室(72)は、第1ピストン(75)と一体の第1ブレード(76)によって仕切られており、図4における第1ブレード(76)の左側が高圧側の第1高圧室(73)となり、その右側が低圧側の第1低圧室(74)となっている。第2シリンダ(81)内の第2流体室(82)は、第2ピストン(85)と一体の第2ブレード(86)によって仕切られており、図4における第2ブレード(86)の左側が高圧側の第2高圧室(83)となり、その右側が低圧側の第2低圧室(84)となっている。
上記第1シリンダ(71)と第2シリンダ(81)とは、それぞれの周方向におけるブッシュ(77,87)の位置が一致する姿勢で配置されている。言い換えると、第2シリンダ(81)の第1シリンダ(71)に対する配置角度が0°となっている。上述のように、第1大径偏心部(41)と第2大径偏心部(42)とは、主軸部(44)の軸心に対して同じ方向へ偏心している。従って、第1ブレード(76)が第1シリンダ(71)の外側へ最も退いた状態になるのと同時に、第2ブレード(86)が第2シリンダ(81)の外側へ最も退いた状態になる。
上記第1シリンダ(71)には、流入ポート(34)が形成されている。流入ポート(34)は、第1シリンダ(71)の内周面のうち、図3及び図4におけるブッシュ(77)のやや左側の箇所に開口している。流入ポート(34)は、第1高圧室(73)(即ち第1流体室(72)の高圧側)と連通可能となっている。一方、上記第2シリンダ(81)には、流出ポート(35)が形成されている。流出ポート(35)は、第2シリンダ(81)の内周面のうち、図3及び図4におけるブッシュ(87)のやや右側の箇所に開口している。流出ポート(35)は、第2低圧室(84)(即ち第2流体室(82)の低圧側)と連通可能となっている。
上記中間プレート(63)には、連通路(64)が設けられている。この連通路(64)は、中間プレート(63)を貫通するように形成されている。中間プレート(63)における第1シリンダ(71)側の面では、第1ブレード(76)の右側の箇所に連通路(64)の一端が開口している。中間プレート(63)における第2シリンダ(81)側の面では、第2ブレード(86)の左側の箇所に連通路(64)の他端が開口している。そして、図3に示すように、連通路(64)は、中間プレート(63)の厚み方向に対して斜めに延びており、第1低圧室(74)(即ち第1流体室(72)の低圧側)と第2高圧室(83)(即ち第2流体室(82)の高圧側)の両方に連通可能となっている。
以上のように構成された本実施形態の膨張機構部(60)では、第1シリンダ(71)と、そこに設けられたブッシュ(77)と、第1ピストン(75)と、第1ブレード(76)とが第1ロータリ機構部(70)を構成している。また、第2シリンダ(81)と、そこに設けられたブッシュ(87)と、第2ピストン(85)と、第2ブレード(86)とが第2ロータリ機構部(80)を構成している。
上述のように、上記膨張機構部(60)では、第1ブレード(76)が第1シリンダ(71)の外側へ最も退くタイミングと、第2ブレード(86)が第2シリンダ(81)の外側へ最も退くタイミングとが同期している。つまり、第1ロータリ機構部(70)において第1低圧室(74)の容積が減少してゆく過程と、第2ロータリ機構部(80)において第2高圧室(83)の容積が増加してゆく過程とが同期している(図4参照)。また、上述のように、第1ロータリ機構部(70)の第1低圧室(74)と、第2ロータリ機構部(80)の第2高圧室(83)とは、連通路(64)を介して互いに連通している。そして、第1低圧室(74)と連通路(64)と第2高圧室(83)とによって1つの閉空間が形成され、この閉空間が膨張室(66)を構成する。この点について、図5を参照しながら説明する。
この図5では、第1ブレード(76)が第1シリンダ(71)の外周側へ最も退いた状態におけるシャフト(40)の回転角を0°としている。また、ここでは、第1流体室(72)の最大容積が3ml(ミリリットル)であり、第2流体室(82)の最大容積が10mlであると仮定して説明する。
図5に示すように、シャフト(40)の回転角が0°の時点では、第1低圧室(74)の容積が最大値である3mlとなり、第2高圧室(83)の容積が最小値である0mlとなっている。第1低圧室(74)の容積は、同図に一点鎖線で示すように、シャフト(40)が回転するにつれて次第に減少し、その回転角が360°に達した時点で最小値の0mlとなる。一方、第2低圧室(84)の容積は、同図に二点鎖線で示すように、シャフト(40)が回転するにつれて次第に増加し、その回転角が360°に達した時点で最大値の10mlとなる。そして、連通路(64)の容積を無視すると、ある回転角における膨張室(66)の容積は、その回転角における第1低圧室(74)の容積と第2高圧室(83)の容積とを足し合わせた値となる。つまり、膨張室(66)の容積は、同図に実線で示すように、シャフト(40)の回転角が0°の時点で最小値の3mlとなり、シャフト(40)が回転するにつれて次第に増加し、その回転角が360°に達した時点で最大値の10mlとなる。
−運転動作−
上記空調機(10)の動作について説明する。ここでは、空調機(10)の冷房運転時及び暖房運転時の動作について説明し、続いて膨張機構部(60)の動作について説明する。
〈冷房運転〉
冷房運転時には、第1四路切換弁(21)及び第2四路切換弁(22)が図1に破線で示す状態に切り換えられる。この状態で圧縮・膨張ユニット(30)の電動機(45)に通電すると、冷媒回路(20)で冷媒が循環して蒸気圧縮式の冷凍サイクルが行われる。
圧縮機構部(50)で圧縮された冷媒は、吐出ポート(33)を通って圧縮・膨張ユニット(30)から吐出される。この状態で、冷媒の圧力は、その臨界圧力よりも高くなっている。この吐出冷媒は、第1四路切換弁(21)を通って室外熱交換器(23)へ送られる。室外熱交換器(23)では、流入した冷媒が室外空気へ放熱する。
室外熱交換器(23)で放熱した冷媒は、第2四路切換弁(22)を通過し、流入ポート(34)を通って圧縮・膨張ユニット(30)の膨張機構部(60)へ流入する。膨張機構部(60)では、高圧冷媒が膨張し、その内部エネルギがシャフト(40)の回転動力に変換される。膨張後の低圧冷媒は、流出ポート(35)を通って圧縮・膨張ユニット(30)から流出し、第2四路切換弁(22)を通過して室内熱交換器(24)へ送られる。
室内熱交換器(24)では、流入した冷媒が室内空気から吸熱して蒸発し、室内空気が冷却される。室内熱交換器(24)から出た低圧ガス冷媒は、第1四路切換弁(21)を通過し、吸入ポート(32)を通って圧縮・膨張ユニット(30)の圧縮機構部(50)へ吸入される。圧縮機構部(50)は、吸入した冷媒を圧縮して吐出する。
〈暖房運転〉
暖房運転時には、第1四路切換弁(21)及び第2四路切換弁(22)が図1に実線で示す状態に切り換えられる。この状態で圧縮・膨張ユニット(30)の電動機(45)に通電すると、冷媒回路(20)で冷媒が循環して蒸気圧縮式の冷凍サイクルが行われる。
圧縮機構部(50)で圧縮された冷媒は、吐出ポート(33)を通って圧縮・膨張ユニット(30)から吐出される。この状態で、冷媒の圧力は、その臨界圧力よりも高くなっている。この吐出冷媒は、第1四路切換弁(21)を通過して室内熱交換器(24)へ送られる。室内熱交換器(24)では、流入した冷媒が室内空気へ放熱し、室内空気が加熱される。
室内熱交換器(24)で放熱した冷媒は、第2四路切換弁(22)を通過し、流入ポート(34)を通って圧縮・膨張ユニット(30)の膨張機構部(60)へ流入する。膨張機構部(60)では、高圧冷媒が膨張し、その内部エネルギがシャフト(40)の回転動力に変換される。膨張後の低圧冷媒は、流出ポート(35)を通って圧縮・膨張ユニット(30)から流出し、第2四路切換弁(22)を通過して室外熱交換器(23)へ送られる。
室外熱交換器(23)では、流入した冷媒が室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器(23)から出た低圧ガス冷媒は、第1四路切換弁(21)を通過し、吸入ポート(32)を通って圧縮・膨張ユニット(30)の圧縮機構部(50)へ吸入される。圧縮機構部(50)は、吸入した冷媒を圧縮して吐出する。
〈膨張機構部の動作〉
膨張機構部(60)の動作について説明する。
先ず、第1ロータリ機構部(70)の第1高圧室(73)へ超臨界状態の高圧冷媒が流入する過程について、図4及び図6を参照しながら説明する。回転角が0°の状態からシャフト(40)が僅かに回転すると、第1ピストン(75)と第1シリンダ(71)の接触位置が流入ポート(34)の開口部を通過し、流入ポート(34)から第1高圧室(73)へ高圧冷媒が流入し始める。その後、シャフト(40)の回転角が90°,180°,270°と次第に大きくなるにつれて、第1高圧室(73)へ高圧冷媒が流入してゆく。この第1高圧室(73)への高圧冷媒の流入は、シャフト(40)の回転角が360°に達するまで続く。
その際、第1高圧室(73)へ流入する高圧冷媒の流速は、図6(A)に示すように、シャフト(40)の回転角が0°から180°に至るまでは次第に増大してゆき、その回転角が180°から360°に至るまでは次第に減少してゆく。そして、シャフト(40)の回転角が360°となって高圧冷媒の流速変化割合がゼロになった時点で、第1高圧室(73)への高圧冷媒の流入が終了する。
次に、膨張機構部(60)において冷媒が膨張する過程について、図4及び図5を参照しながら説明する。回転角が0°の状態からシャフト(40)が僅かに回転すると、第1低圧室(74)と第2高圧室(83)の両方が連通路(64)と連通状態になり、第1低圧室(74)から第2高圧室(83)へと冷媒が流入し始める。その後、シャフト(40)の回転角が90°,180°,270°と次第に大きくなるにつれ、第1低圧室(74)の容積が次第に減少すると同時に第2高圧室(83)の容積が次第に増加し、結果として膨張室(66)の容積が次第に増加してゆく。この膨張室(66)の容積増加は、シャフト(40)の回転角が360°に達する直前まで続く。そして、膨張室(66)の容積が増加する過程で膨張室(66)内の冷媒が膨張し、この冷媒の膨張によってシャフト(40)が回転駆動される。このように、第1低圧室(74)内の冷媒は、連通路(64)を通って第2高圧室(83)へ膨張しながら流入してゆく。
冷媒が膨張する過程において、膨張室(66)内における冷媒圧力は、図5に破線で示すように、シャフト(40)の回転角が大きくなるにつれて次第に低下してゆく。具体的に、第1低圧室(74)を満たす超臨界状態の冷媒は、シャフト(40)の回転角が約55°に達するまでの間に急激に圧力低下し、飽和液の状態となる。その後、膨張室(66)内の冷媒は、その一部が蒸発しながら緩やかに圧力低下してゆく。
続いて、第2ロータリ機構部(80)の第2低圧室(84)から冷媒が流出してゆく過程について、図4を参照しながら説明する。第2低圧室(84)は、シャフト(40)の回転角が0°の時点から流出ポート(35)に連通し始める。つまり、第2低圧室(84)から流出ポート(35)へと冷媒が流出し始める。その後、シャフト(40)の回転角が90°,180°,270°と次第に大きくなってゆき、その回転角が360°に達するまでの間に亘って、第2低圧室(84)から膨張後の低圧冷媒が流出してゆく。
−実施形態1の効果−
ここで、従来のロータリ式膨張機では、1つのシリンダ内で流体室の容積が増大する過程の途中まで高圧冷媒を流入させ、高圧冷媒の流れを遮断した後に流体室内で冷媒を膨張させていた。これに伴い、高圧室へ流入する高圧冷媒の流速は、図6(B)に示すように、シャフトが回転するにつれて次第に増大してゆくが、シャフトの回転角が所定の値になった時点で急激にゼロまで低下していた。このため、ロータリ式膨張機の流入側で急峻な圧力変動が生じ、それに起因して生じる騒音や振動が過大となっていた。なお、同図は2つのシリンダが設けられる場合を示しており、実線で示した第1のシリンダへの冷媒導入と、破線で示した第2のシリンダへの冷媒導入とが交互に行われる。
これに対し、本実施形態の膨張機構部(60)では、流入ポート(34)から第1高圧室(73)へ流入する冷媒の流速がシャフト(40)の回転に伴って緩やかに変化する(図6(A)参照)。そして、膨張機構部(60)の流入ポート(34)に接続された配管においても、その内部における冷媒の流速が緩やかに変化する。このため、膨張機構部(60)の動作に伴って冷媒の急峻な圧力変動が生じるのを防止できる。従って、本実施形態によれば、膨張機構部(60)へ導入される冷媒の脈動を大幅に緩和でき、それに伴う振動や騒音を大幅に低減して膨張機構部(60)の信頼性を向上させることができる。
−実施形態1の変形例1−
本実施形態では、膨張機構部(60)を次のように構成してもよい。
つまり、図7に示すように、中間プレート(63)の両側面における連通路(64)の開口部が互いに重なり合うように、第2シリンダ(81)を第1シリンダ(71)に対して所定の角度だけずらせて設置してもよい。本変形例のシャフト(40)では、第1大径偏心部(41)の偏心方向と第2大径偏心部(42)の偏心方向とが互いに相違している。具体的に、第1大径偏心部(41)の偏心方向と第2大径偏心部(42)の偏心方向とがなす角度は、第2シリンダ(81)の第1シリンダ(71)に対する配置角度と同じ角度と等しくなっている。従って、本変形例においても、第1ブレード(76)が第1シリンダ(71)の外側へ最も退くタイミングと、第2ブレード(86)が第2シリンダ(81)の外側へ最も退くタイミングとが同期している。
本変形例において、中間プレート(63)の第1シリンダ(71)側と第2シリンダ(81)側の各面における連通路(64)の開口位置は、シリンダ(71,81)の周方向において概ね一致している。このため、本変形例の連通路(64)は、概ね中間プレート(63)の厚み方向へ延びるように形成されることとなり、連通路(64)の長さが最短となる。従って、本変形例によれば、第1ロータリ機構部(70)の第1低圧室(74)から第2ロータリ機構部(80)の第2高圧室(83)へ至るまでの冷媒の圧力損失を削減でき、膨張機構部(60)で回収可能な動力を増大させることができる。
−実施形態1の変形例2−
本実施形態の膨張機構部(60)では、図8に示すように、連通路(64)の途中に中間室(65)を設けてもよい。この中間室(65)は、比較的大きな容積となるように形成されている。例えば、中間室(65)の容積は、連通路(64)自体の容積よりも大きくなっている。このような中間室(65)を設けると、第1低圧室(74)から連通路(64)へ冷媒が流入し始める際などにおいても、連通路(64)での冷媒圧力の変動が低減される。そして、連通路(64)を通って第1低圧室(74)から第2高圧室(83)へ向かう冷媒の脈動が抑制される。
《発明の実施形態2》
本発明の実施形態2について説明する。本実施形態は、上記実施形態1において、膨張機構部(60)の構成を変更したものである。ここでは、本実施形態の膨張機構部(60)について、上記実施形態1と異なる点を説明する。
図9に示すように、本実施形態の膨張機構部(60)では、第2シリンダ(81)が第1シリンダ(71)とは逆向きの姿勢で配置されている。つまり、第2シリンダ(81)の第1シリンダ(71)に対する配置角度が180°となっている。また、本実施形態のシャフト(40)では、第1大径偏心部(41)の偏心方向と第2大径偏心部(42)の偏心方向とが180°相違している。つまり、このシャフト(40)では、第1大径偏心部(41)の偏心方向と第2大径偏心部(42)の偏心方向とが等角度間隔となっている。
従って、本実施形態においても、第1ブレード(76)が第1シリンダ(71)の外側へ最も退くタイミングと、第2ブレード(86)が第2シリンダ(81)の外側へ最も退くタイミングとが同期している。尚、本実施形態においても、第1ロータリ機構部(70)の第1低圧室(74)と第2ロータリ機構部(80)の第2高圧室(83)とは、連通路(64)を介して連通可能となっている。
ここで、各ロータリ機構部(70,80)では、高圧室(73,83)の内圧が低圧室(74,84)の内圧よりも高くなっており、この圧力差に起因する力がシャフト(40)の各大径偏心部(41,42)に作用する。そして、本実施形態において、第1高圧室(73)と第1低圧室(74)の内圧差に起因して第1大径偏心部(41)に作用する力と、第2高圧室(83)と第2低圧室(84)の内圧差に起因して第2大径偏心部(42)に作用する力とは、それぞれの作用する方向が互いに逆向きとなっている。このため、シャフト(40)に作用するこれら2つの力が互いに打ち消し合うこととなり、シャフト(40)に作用する径方向の荷重が大幅に低減される。従って、本実施形態によれば、シャフト(40)とその軸受けとの間における摩擦損失を低減でき、膨張機構部(60)の効率を向上させることができる。
《発明の実施形態3》
本発明の実施形態3について説明する。本実施形態は、上記実施形態1において膨張機構部(60)の構成を変更したものである。具体的には、上記実施形態1の膨張機構部(60)が揺動ピストン型の流体機械で構成されているのに対し、本実施形態の膨張機構部(60)は、ローリングピストン型の流体機械で構成されている。ここでは、本実施形態の膨張機構部(60)について、上記実施形態1と異なる点を説明する。
図10に示すように、本実施形態の各ロータリ機構部(70,80)では、ブレード(76,86)がピストン(75,85)と別体に形成されている。つまり、本実施形態の各ピストン(75,85)は、単純な円環状あるいは円筒状に形成されている。また、本実施形態の各シリンダ(71,81)には、ブレード溝(78,88)が1つずつ形成されている。
各ロータリ機構部(70,80)において、ブレード(76,86)は、シリンダ(71,81)のブレード溝(78,88)に、進退自在な状態で設けられている。また、ブレード(76,86)は、図外のバネによって付勢され、その先端(図10における下端)がピストン(75,85)の外周面に押し付けられている。図10に順次示すように、シリンダ(71,81)内でピストン(75,85)が移動しても、このブレード(76,86)は、ブレード溝(78,88)に沿って同図の上下に移動し、その先端がピストン(75,85)と接した状態に保たれる。そして、ブレード(76,86)の先端をピストン(75,85)の周側面に押し付けることで、各流体室(72,82)がそれぞれ高圧側の高圧室(73,83)と低圧側の低圧室(74,84)に仕切られる。
《発明の実施形態4》
本発明の実施形態4について説明する。本実施形態は、上記実施形態1において膨張機構部(60)の構成を変更したものである。ここでは、本実施形態の膨張機構部(60)について、上記実施形態1と異なる点を説明する。
図11に示すように、本実施形態の膨張機構部(60)では、電動機(45)に近い方に第1ロータリ機構部(70)が配置され、電動機(45)から遠い方に第2ロータリ機構部(80)が配置されている。
具体的に、この膨張機構部(60)では、図11における左から右へ向かって順に、フロントヘッド(61)、第1シリンダ(71)、中間プレート(63)、第2シリンダ(81)、リアヘッド(62)が積層された状態となっている。この状態において、第1シリンダ(71)は、その左側端面がフロントヘッド(61)により閉塞され、その右側端面が中間プレート(63)により閉塞されている。一方、第2シリンダ(81)は、その左側端面が中間プレート(63)により閉塞され、その右側端面がリアヘッド(62)により閉塞されている。
また、本実施形態のシャフト(40)では左右に並んだ2つの大径偏心部(41,42)のうち、左側のものが第1大径偏心部(41)を構成し、右側のものが第2大径偏心部(42)を構成している。そして、第1シリンダ(71)内に位置する第1大径偏心部(41)には第1ピストン(75)が係合し、第2シリンダ(81)内に位置する第2大径偏心部(42)には第2ピストン(85)が係合する。
《発明の実施形態5》
本発明の実施形態5について説明する。ここでは、本実施形態の圧縮・膨張ユニット(30)について、上記実施形態4と異なる点を説明する。
図12に示すように、流体機械である上記圧縮・膨張ユニット(30)は、縦型に構成されている。具体的に、この圧縮・膨張ユニット(30)では、ケーシング(31)が縦長で円筒形の密閉容器となっている。このケーシング(31)内には、下から上に向かって順に、圧縮機構部(50)と、電動機(45)と、膨張機構部(60)とが配置されている。また、シャフト(40)は、ケーシング(31)の長手方向に沿って上下に延びる姿勢で設置されている。
圧縮機構部(50)は、揺動ピストン型のロータリ圧縮機を構成している。この圧縮機構部(50)は、シリンダ(91,92)とピストン(97)を2つずつ備えている。圧縮機構部(50)では、下から上へ向かって順に、リアヘッド(95)と、第1シリンダ(91)と、中間プレート(96)と、第2シリンダ(92)と、フロントヘッド(94)とが積層された状態となっている。
第1及び第2シリンダ(91,92)の内部には、円筒状のピストン(97)が1つずつ配置されている。そして、ピストン(57,57)の外周面とシリンダ(51,52)の内周面との間に圧縮室(93)が形成される。また、図示しないが、ピストン(97)の側面には平板状のブレードが突設されており、このブレードは揺動ブッシュを介してシリンダ(91,92)に支持されている。
第1及び第2シリンダ(91,92)には、それぞれ吸入ポート(33)が1つずつ形成されている。各吸入ポート(33)は、シリンダ(51,52)を半径方向に貫通し、その終端がシリンダ(51,52)の内周面に開口している。
フロントヘッド(94)及びリアヘッド(95)には、それぞれ吐出ポートが1つずつ形成されている。フロントヘッド(94)の吐出ポートは、第2シリンダ(92)内の圧縮室(93)をケーシング(31)の内部空間と連通させる。リアヘッド(95)の吐出ポートは、第1シリンダ(91)内の圧縮室(93)をケーシング(31)の内部空間と連通させる。また、各吐出ポートは、その終端にリード弁からなる吐出弁が設けられており、この吐出弁によって開閉される。尚、図12において、吐出ポート及び吐出弁の図示は省略する。
シャフト(40)の下部には、2つの下側偏心部(98,99)が形成されている。これら2つの下側偏心部(98,99)は、主軸部(44)よりも大径に形成されており、下側のものが第1下側偏心部(98)を、上側のものが第2下側偏心部(99)をそれぞれ構成している。第1下側偏心部(98)は第1シリンダ(91)内に位置してピストン(97)と係合し、第2下側偏心部(99)は第2シリンダ(92)内に位置してピストン(97)と係合する。また、第1下側偏心部(98)と第2下側偏心部(99)とでは、主軸部(44)の軸心に対する偏心方向が逆になっている。
ケーシング(31)には、吐出管(36)が取り付けられている。この吐出管(36)は、電動機(45)と膨張機構部(60)の間に配置され、ケーシング(31)の内部空間に連通している。圧縮機構部(50)からケーシング(31)の内部空間へ吐出されたガス冷媒は、吐出管(36)を通って圧縮・膨張ユニット(30)から送り出される。
膨張機構部(60)の構成は、上記実施形態4のものと同様である。ただし、圧縮・膨張ユニット(30)が縦型となったことに伴い、膨張機構部(60)では、下から上に向かって順に、フロントヘッド(61)、第1シリンダ(71)、中間プレート(63)、第2シリンダ(81)、リアヘッド(62)が積層された状態となっている。つまり、膨張機構部(60)では、押しのけ容積の小さな第1ロータリ機構部(70)が圧縮機構部(50)に近い下側に配置され、押しのけ容積の大きな第2ロータリ機構部(80)が圧縮機構部(50)から遠い上側に配置されている。
−実施形態5の効果−
本実施形態の圧縮・膨張ユニット(30)において、圧縮機構部(50)で圧縮された高温高圧のガス冷媒は、ケーシング(31)の内部空間を通って吐出管(36)へ流れ込む。このため、膨張機構部(60)を通過する冷媒は、圧縮機構部(50)から吐出された冷媒によってある程度加熱されてしまう。膨張機構部(60)を通過する冷媒が加熱されると、膨張機構部(60)から送出される低圧冷媒のエンタルピが増大し、その分だけ低圧冷媒の吸熱量が減少する。また、圧縮機構部(50)で圧縮された冷媒から熱が奪われると、吐出管(36)から送出される高圧冷媒のエンタルピが低下し、その分だけ高圧冷媒の放熱量が減少する。そして、本実施形態の空調機(10)では、低圧冷媒の吸熱量が減少することによる冷房能力の低下や、高圧冷媒の放熱量が減少することによる暖房能力の低下を招くことになる。
これに対し、本実施形態の膨張機構部(60)では、より低温の冷媒が流れる第2ロータリ機構部(80)を圧縮機構部(50)から遠い上側に配置している。このため、第2ロータリ機構部(80)を圧縮機構部(50)から近い下側に配置する場合に比べ、膨張機構部(60)を通過する冷媒と圧縮機構部(50)から吐出された冷媒の間での熱交換量を削減することができる。
この点について、図13を参照しながら説明する。同図に示すように、圧縮機構部(50)へ5℃の低圧冷媒が吸入され、圧縮機構部(50)で圧縮された90℃の高圧冷媒が吐出管(36)から吐出され、膨張機構部(60)の第1ロータリ機構部(70)へ30℃の高圧冷媒が導入され、膨張機構部(60)の第2ロータリ機構部(80)から0℃の低圧冷媒が送出される運転状態を例に説明する。
図13(A)に示すように、第2ロータリ機構部(80)を圧縮機構部(50)から近い下側に配置すると、圧縮された90℃の高圧冷媒が第2ロータリ機構部(80)から送出される0℃の低圧冷媒と熱交換することとなり、互いに熱交換する冷媒の温度差が90℃程度に達する。一方、図13(B)に示すように、第1ロータリ機構部(70)を圧縮機構部(50)から近い下側に配置すると、圧縮された90℃の高圧冷媒が第1ロータリ機構部(70)へ導入される30℃の高圧冷媒と熱交換することとなり、互いに熱交換する冷媒の温度差が60℃程度に抑えられる。
従って、本実施形態のように、押しのけ容積の大きな第2ロータリ機構部(80)を圧縮機構部(50)から遠い位置に配置すれば、圧縮機構部(50)の吐出冷媒から膨張機構部(60)の冷媒への入熱量を低減することができる。そして、本実施形態によれば、圧縮機構部(50)の吐出冷媒から膨張機構部(60)の冷媒への伝熱に起因する冷房能力や暖房能力の低下を抑えることができる。
−実施形態5の変形例−
図14に示すように、本実施形態の圧縮・膨張ユニット(30)では、膨張機構部(60)に断熱部材(100)を設けてもよい。この断熱部材(100)は、概ね円板状に形成されており、膨張機構部(60)におけるフロントヘッド(61)の下面と接するように設けられている。また、断熱部材(100)は、FRP等の比較的熱伝導率の低い材料で構成されている。断熱部材(100)を設けることにより、圧縮機構部(50)の吐出冷媒から膨張機構部(60)の冷媒への入熱量を一層削減することができる。
《その他の実施形態》
上記の各実施形態では、膨張機構部(60)を次のように構成してもよい。
先ず、上記の各実施形態では、膨張機構部(60)にロータリ機構部(70,80)を2つ設けているが、ロータリ機構部の数は2つに限らず3つ以上であってもよい。この場合、各ロータリ機構部は、それぞれの押しのけ容積が互いに相違するように構成され、押しのけ容積の小さい順に接続される。
また、上記の各実施形態では、各シリンダ(71,81)の内径と各大径偏心部(41,42)の偏心量を相違させることによって各ロータリ機構部(70,80)の押しのけ容積を相違させているが、これに代えて、各シリンダ(71,81)及び各ピストン(75,85)の高さを相違させることによって各ロータリ機構部(70,80)の押しのけ容積を相違させてもよい。更には、各シリンダ(71,81)の内径と、各大径偏心部(41,42)の偏心量と、各シリンダ(71,81)及び各ピストン(75,85)の高さとを全て相違させることによって各ロータリ機構部(70,80)の押しのけ容積を相違させてもよい。
また、上記の各実施形態において、第1ピストン(75)と第2ピストン(85)とは、それぞれの外径が互いに等しくなるように形成されているが、両者の外径が相違していても差し支えない。つまり、第2ロータリ機構部(80)の押しのけ容積が第1ロータリ機構部(70)の押しのけ容積よりも大きくなっていさえすれば、第1ピストン(75)と第2ピストン(85)の外径が互いに等しくなる必要はなく、一方の外径が他方の外径より大きくなっていても構わない。