以下、本発明の実施形態と参考技術を図面に基づいて詳細に説明する。
《参考技術1》
参考技術1について説明する。本参考技術は、膨張機である圧縮膨張ユニット(30)を備えた空調機(10)である。
〈空調機の全体構成〉
図1に示すように、上記空調機(10)は、いわゆるセパレート型のものであって、室外機(11)と室内機(13)とを備えている。室外機(11)には、室外ファン(12)、室外熱交換器(23)、第1四路切換弁(21)、第2四路切換弁(22)、及び圧縮膨張ユニット(30)が収納されている。室内機(13)には、室内ファン(14)及び室内熱交換器(24)が収納されている。室外機(11)は屋外に設置され、室内機(13)は屋内に設置されている。また、室外機(11)と室内機(13)とは、一対の連絡配管(15,16)で接続されている。なお、圧縮膨張ユニット(30)の詳細は後述する。
空調機(10)には、冷媒回路(20)が設けられている。この冷媒回路(20)は、圧縮膨張ユニット(30)や室内熱交換器(24)などが接続された閉回路である。また、この冷媒回路(20)には、冷媒として二酸化炭素(CO2)が充填されている。
室外熱交換器(23)と室内熱交換器(24)とは、何れも冷媒を空気と熱交換させるためのフィン・アンド・チューブ熱交換器である。室外熱交換器(23)では、冷媒回路(20)を循環する冷媒が室外空気と熱交換する。室内熱交換器(24)では、冷媒回路(20)を循環する冷媒が室内空気と熱交換する。
第1四路切換弁(21)は、4つのポートを備えている。この第1四路切換弁(21)は、その第1のポートが圧縮膨張ユニット(30)の吐出管(36)に、第2のポートが連絡配管(15)を介して室内熱交換器(24)の一端に、第3のポートが室外熱交換器(23)の一端に、第4のポートが圧縮膨張ユニット(30)の吸入ポート(32)にそれぞれ接続されている。そして、第1四路切換弁(21)は、第1のポートと第2のポートとが連通し且つ第3のポートと第4のポートとが連通する状態(図1に実線で示す状態)と、第1のポートと第3のポートとが連通し且つ第2のポートと第4のポートとが連通する状態(図1に破線で示す状態)とに切り換わる。
第2四路切換弁(22)は、4つのポートを備えている。この第2四路切換弁(22)は、その第1のポートが圧縮膨張ユニット(30)の流出ポート(35)に、第2のポートが室外熱交換器(23)の他端に、第3のポートが連絡配管(16)を介して室内熱交換器(24)の他端に、第4のポートが圧縮膨張ユニット(30)の流入ポート(34)にそれぞれ接続されている。そして、第2四路切換弁(22)は、第1のポートと第2のポートとが連通し且つ第3のポートと第4のポートとが連通する状態(図1に実線で示す状態)と、第1のポートと第3のポートとが連通し且つ第2のポートと第4のポートとが連通する状態(図1に破線で示す状態)とに切り換わる。
〈圧縮膨張ユニットの構成〉
図2に示すように、圧縮膨張ユニット(30)は、縦長で円筒形の密閉容器であるケーシング(31)を備えている。このケーシング(31)の内部には、下から上に向かって順に、圧縮機構(50)と、電動機(45)と、膨張機構(60)とが配置されている。
ケーシング(31)には、吐出管(36)が取り付けられている。この吐出管(36)は、電動機(45)と膨張機構(60)の間に配置され、ケーシング(31)の内部空間に連通している。
電動機(45)は、ケーシング(31)の長手方向の中央部に配置されている。この電動機(45)は、ステータ(46)とロータ(47)とにより構成されている。ステータ(46)は、上記ケーシング(31)に固定されている。ロータ(47)は、ステータ(46)の内側に配置されている。また、ロータ(47)には、該ロータ(47)と同軸にシャフト(40)の主軸部(44)が貫通している。
シャフト(40)は、回転軸を構成している。このシャフト(40)では、その下端側に2つの下側偏心部(58,59)が形成され、その上端側に2つの大径偏心部(41,42)が形成されている。
2つの下側偏心部(58,59)は、主軸部(44)よりも大径に形成されており、下側のものが第1下側偏心部(58)を、上側のものが第2下側偏心部(59)をそれぞれ構成している。第1下側偏心部(58)と第2下側偏心部(59)とでは、主軸部(44)の軸心に対する偏心方向が逆になっている。
2つの大径偏心部(41,42)は、主軸部(44)よりも大径に形成されており、下側のものが第1大径偏心部(41)を構成し、上側のものが第2大径偏心部(42)を構成している。第1大径偏心部(41)と第2大径偏心部(42)とは、何れも同じ方向へ偏心している。第2大径偏心部(42)の外径は、第1大径偏心部(41)の外径よりも大きくなっている。また、主軸部(44)の軸心に対する偏心量は、第2大径偏心部(42)の方が第1大径偏心部(41)よりも大きくなっている。
圧縮機構(50)は、揺動ピストン型のロータリ圧縮機を構成している。この圧縮機構(50)は、シリンダ(51,52)とピストン(57)を2つずつ備えている。圧縮機構(50)では、下から上へ向かって順に、リアヘッド(55)と、第1シリンダ(51)と、中間プレート(56)と、第2シリンダ(52)と、フロントヘッド(54)とが積層された状態となっている。
第1及び第2シリンダ(51,52)の内部には、円筒状のピストン(57)が1つずつ配置されている。図示しないが、ピストン(57)の側面には平板状のブレードが突設されており、このブレードは揺動ブッシュを介してシリンダ(51,52)に支持されている。第1シリンダ(51)内のピストン(57)は、シャフト(40)の第1下側偏心部(58)と係合する。一方、第2シリンダ(52)内のピストン(57)は、シャフト(40)の第2下側偏心部(59)と係合する。各ピストン(57,57)は、その内周面が下側偏心部(58,59)の外周面と摺接し、その外周面がシリンダ(51,52)の内周面と摺接する。そして、ピストン(57,57)の外周面とシリンダ(51,52)の内周面との間に圧縮室(53)が形成される。
第1及び第2シリンダ(51,52)には、それぞれ吸入ポート(33)が1つずつ形成されている。各吸入ポート(33)は、シリンダ(51,52)を半径方向に貫通し、その終端がシリンダ(51,52)の内周面に開口している。また、各吸入ポート(33)は、配管によってケーシング(31)の外部へ延長されている。
フロントヘッド(54)及びリアヘッド(55)には、それぞれ吐出ポートが1つずつ形成されている。フロントヘッド(54)の吐出ポートは、第2シリンダ(52)内の圧縮室(53)をケーシング(31)の内部空間と連通させる。リアヘッド(55)の吐出ポートは、第1シリンダ(51)内の圧縮室(53)をケーシング(31)の内部空間と連通させる。また、各吐出ポートは、その終端にリード弁からなる吐出弁が設けられており、この吐出弁によって開閉される。尚、図2において、吐出ポート及び吐出弁の図示は省略する。そして、圧縮機構(50)からケーシング(31)の内部空間へ吐出されたガス冷媒は、吐出管(36)を通って圧縮膨張ユニット(30)から送り出される。
ケーシング(31)の内部空間には、冷凍機油が貯留されている。この冷凍機油は、ケーシング(31)の内部空間の底部に溜まっている。上述したように、ケーシング(31)の内部空間には、圧縮機構(50)において圧縮された高圧ガス冷媒が吐出される。このため、ケーシング(31)内に貯留された冷凍機油の圧力は、圧縮機構(50)から吐出された高圧ガス冷媒の圧力と等しくなる。ケーシング(31)内に貯留された高圧の冷凍機油は、シャフト(40)内に形成された給油通路を通って圧縮機構(50)と膨張機構(60)へ供給される。
膨張機構(60)は、いわゆる揺動ピストン型の流体機械で構成されている。この膨張機構(60)には、対になったシリンダ(71,81)及びピストン(75,85)が二組設けられている。また、膨張機構(60)には、フロントヘッド(61)と、中間プレート(63)と、リアヘッド(62)とが設けられている。
膨張機構(60)では、下から上へ向かって順に、フロントヘッド(61)、第1シリンダ(71)、中間プレート(63)、第2シリンダ(81)、リアヘッド(62)が積層された状態となっている。この状態において、第1シリンダ(71)は、その下側端面がフロントヘッド(61)により閉塞され、その上側端面が中間プレート(63)により閉塞されている。一方、第2シリンダ(81)は、その下側端面が中間プレート(63)により閉塞され、その上側端面がリアヘッド(62)により閉塞されている。また、第2シリンダ(81)の内径は、第1シリンダ(71)の内径よりも大きくなっている。上記シャフト(40)は、積層された状態のフロントヘッド(61)、第1シリンダ(71)、中間プレート(63)、第2シリンダ(81)、及びリアヘッド(62)を貫通している。
図3,図4に示すように、第1シリンダ(71)内には第1ピストン(75)が、第2シリンダ(81)内には第2ピストン(85)がそれぞれ設けられている。第1及び第2ピストン(75,85)は、何れも円環状あるいは円筒状に形成されている。第1ピストン(75)の外径と第2ピストン(85)の外径とは、互いに等しくなっている。そして、第1ピストン(75)には第1大径偏心部(41)が、第2ピストン(85)には第2大径偏心部(42)がそれぞれ貫通している。第1シリンダ(71)内には、その内周面と第1ピストン(75)の外周面との間に第1流体室(72)が形成される。第2シリンダ(81)内には、その内周面と第2ピストン(85)の外周面との間に第2流体室(82)が形成される。
上記第1及び第2ピストン(75,85)のそれぞれには、ブレード(76,86)が1つずつ一体に設けられている。ブレード(76,86)は、ピストン(75,85)の半径方向へ延びる板状に形成されており、ピストン(75,85)の外周面から外側へ突出している。
上記各シリンダ(71,81)には、一対のブッシュ(77,87)が一組ずつ設けられている。各ブッシュ(77,87)は、内側面が平面となって外側面が円弧面となるように形成された小片である。一対のブッシュ(77,87)は、ブレード(76,86)を挟み込んだ状態で設置されている。各ブッシュ(77,87)は、その内側面がブレード(76,86)と、その外側面がシリンダ(71,81)と摺動する。そして、ピストン(75,85)と一体のブレード(76,86)は、ブッシュ(77,87)を介してシリンダ(71,81)に支持され、シリンダ(71,81)に対して回動自在で且つ進退自在となっている。尚、上記第1シリンダ(71)と第2シリンダ(81)とは、それぞれの周方向におけるブッシュ(77,87)の位置が一致する姿勢で配置されている。
第1シリンダ(71)内の第1流体室(72)は、第1ピストン(75)と一体の第1ブレード(76)によって仕切られており、図3,図4における第1ブレード(76)の左側が高圧側の第1高圧室(73)となり、その右側が低圧側の第1低圧室(74)となっている。第2シリンダ(81)内の第2流体室(82)は、第2ピストン(85)と一体の第2ブレード(86)によって仕切られており、図3,図4における第2ブレード(86)の左側が高圧側の第2高圧室(83)となり、その右側が低圧側の第2低圧室(84)となっている。
第1シリンダ(71)には、流入ポート(34)が形成されている。流入ポート(34)は、第1シリンダ(71)の内周面のうち、図3,図4におけるブッシュ(77)のやや左側の箇所に開口している。流入ポート(34)は、第1高圧室(73)と連通可能となっている。一方、上記第2シリンダ(81)には、流出ポート(35)が形成されている。流出ポート(35)は、第2シリンダ(81)の内周面のうち、図3,図4におけるブッシュ(87)のやや右側の箇所に開口している。流出ポート(35)は、第2低圧室(84)と連通可能となっている。
中間プレート(63)には、連通路(64)が形成されている。この連通路(64)は、中間プレート(63)を厚み方向へ貫通している。中間プレート(63)における第1シリンダ(71)側の面では、第1ブレード(76)の右側の箇所に連通路(64)の一端が開口している。中間プレート(63)における第2シリンダ(81)側の面では、第2ブレード(86)の左側の箇所に連通路(64)の他端が開口している。この連通路(64)は、中間プレート(63)の厚み方向に対して斜めに延びており、第1低圧室(74)と第2高圧室(83)とを互いに連通させている。
以上のように構成された上記膨張機構(60)では、第1シリンダ(71)と、そこに設けられたブッシュ(77)と、第1ピストン(75)と、第1ブレード(76)とが第1ロータリ機構部(70)を構成している。また、第2シリンダ(81)と、そこに設けられたブッシュ(87)と、第2ピストン(85)と、第2ブレード(86)とが第2ロータリ機構部(80)を構成している。また、この膨張機構(60)では、第1ロータリ機構部(70)の押しのけ容積(即ち第1流体室(72)の最大容積)に比べて、第2ロータリ機構部(80)の押しのけ容積(即ち第2流体室(82)の最大容積)の方が大きくなっている。
上述のように、上記膨張機構(60)では、第1ブレード(76)が第1シリンダ(71)の外側へ最も退くタイミングと、第2ブレード(86)が第2シリンダ(81)の外側へ最も退くタイミングとが同期している。つまり、第1ロータリ機構部(70)において第1低圧室(74)の容積が減少してゆく過程と、第2ロータリ機構部(80)において第2高圧室(83)の容積が増加してゆく過程とが同期している(図4を参照)。また、上述のように、第1ロータリ機構部(70)の第1低圧室(74)と、第2ロータリ機構部(80)の第2高圧室(83)とは、連通路(64)を介して互いに連通している。そして、第1低圧室(74)と連通路(64)と第2高圧室(83)とによって1つの閉空間が形成され、この閉空間が膨張室(66)を構成する。
図2に示すように、膨張機構(60)では、そのフロントヘッド(61)にシリンダ空間(90)が形成されている。このシリンダ空間(90)は、フロントヘッド(61)の外周面からその中心へ向かって延びる有底の穴によって形成されている。このシリンダ空間(90)を形成する有底の穴は、その断面形状が円形となっており、フロントヘッド(61)の外周面における開口端がケーシング(31)によって塞がれている。
シリンダ空間(90)には、ピストン部材(93)が収容されている。このピストン部材(93)は、やや厚肉の円板状に形成されており、シリンダ空間(90)の軸方向へ移動自在となっている。シリンダ空間(90)は、ピストン部材(93)によって二つの空間に区画されている。ピストン部材(93)によって区画された二つの空間は、シリンダ空間(90)を形成する穴の底面側(図2におけるピストン部材(93)の左側)の空間が補助用空間(91)を構成し、残りの空間が駆動用空間(92)を構成している。
フロントヘッド(61)には、補助用空間(91)を第1ロータリ機構部(70)の第1流体室(72)に連通させるための接続通路(95)が形成されている。この接続通路(95)は、その一端がシリンダ空間(90)を形成する穴の底面付近に開口し、その他端がフロントヘッド(61)の前面(図2における上面)に開口している。図3に示すように、フロントヘッド(61)の前面では、接続通路(95)が、第1シリンダ(71)の内周面に沿った位置に開口している。また、フロントヘッド(61)の前面において、接続通路(95)は、第1ブレード(76)の位置から図3における反時計方向へ約270°進んだ位置に開口している。なお、フロントヘッド(61)の前面における接続通路(95)の開口位置は、第1ブレード(76)の位置から図3における反時計方向へ約180°進んだ位置から、図3における連通路(64)の開口部の右側近傍の位置までの間に設定されるのが望ましい。
補助用空間(91)には、弾性部材であるコイルばね(94)が収容されている。このコイルばね(94)は、その伸縮方向がシリンダ空間(90)の軸方向に沿う姿勢で補助用空間(91)内に設置されており、その一端がピストン部材(93)に、その他端がケーシング(31)の内周面にそれぞれ当接している。また、コイルばね(94)は、ピストン部材(93)が補助用空間(91)側(図2における左側)へ最も押し込まれた位置にある場合でも、自由長から若干縮められた状態となる。つまり、コイルばね(94)は、ピストン部材(93)に対して、常に補助用空間(91)方向へ押す力を作用させる。
図2に示すように、圧縮膨張ユニット(30)には、冷媒流通配管(100)と、流入側通路を構成する冷媒流入管(101)と、流出側通路を構成する冷媒流出管(102)とが設けられている。
冷媒流通配管(100)は、その一端がケーシング(31)を貫通して駆動用空間(92)に開口している。冷媒流通配管(100)の他端には、冷媒流入管(101)の一端と冷媒流出管(102)の一端とが接続されている。
冷媒流入管(101)の他端は、膨張機構(60)の流入ポート(34)に接続する配管(即ち、膨張機構(60)へ流入する膨張前の高圧冷媒が流れる配管)に接続されている。冷媒流入管(101)には、キャピラリチューブ(105)が設けられている。このキャピラリチューブ(105)は、冷媒流入管(101)を流れる冷媒を膨脹させるための流入側絞り機構を構成している。
冷媒流出管(102)の他端は、膨張機構(60)の流出ポート(35)に接続する配管(即ち、膨張機構(60)から流出した膨張後の低圧冷媒が流れる配管)に接続されている。冷媒流出管(102)には、流出側調節弁(104)が設けられている。この流出側調節弁(104)は、開度可変の電動膨張弁であって、冷媒流出管(102)を流れる冷媒を膨脹させるための流出側絞り機構を構成している。
本参考技術の圧縮膨張ユニット(30)では、ピストン部材(93)と、駆動用空間(92)と、コイルばね(94)と、冷媒流通配管(100)と、冷媒流入管(101)と、キャピラリチューブ(105)と、冷媒流出管(102)と、流出側調節弁(104)とが、補助用空間(91)の容積を変更するための容積変更機構(115)を構成している。そして、駆動用空間(92)には、キャピラリチューブ(105)を通過する際に膨脹して気液二相状態となった冷媒(即ち、ガス成分を含む圧縮性流体)が、冷媒流入管(101)と冷媒流通配管(100)を通じて導入される。
−運転動作−
上記空調機(10)の動作について説明する。ここでは、空調機(10)の冷房運転時及び暖房運転時の動作について説明し、続いて膨張機構(60)の動作について説明する。
〈冷房運転〉
冷房運転時には、第1四路切換弁(21)及び第2四路切換弁(22)が図1に破線で示す状態に切り換えられる。この状態で圧縮膨張ユニット(30)の電動機(45)に通電すると、冷媒回路(20)で冷媒が循環して蒸気圧縮式の冷凍サイクルが行われる。
圧縮機構(50)で圧縮された冷媒は、吐出管(36)を通って圧縮膨張ユニット(30)から吐出される。この状態で、冷媒の圧力は、その臨界圧力よりも高くなっている。この吐出冷媒は、第1四路切換弁(21)を通って室外熱交換器(23)へ送られる。室外熱交換器(23)では、流入した冷媒が室外空気へ放熱する。
室外熱交換器(23)で放熱した冷媒は、第2四路切換弁(22)を通過し、流入ポート(34)を通って圧縮膨張ユニット(30)の膨張機構(60)へ流入する。膨張機構(60)では、高圧冷媒が膨張してシャフト(40)が駆動される。膨張後の低圧冷媒は、流出ポート(35)を通って圧縮膨張ユニット(30)から流出し、第2四路切換弁(22)を通過して室内熱交換器(24)へ送られる。
室内熱交換器(24)では、流入した冷媒が室内空気から吸熱して蒸発し、室内空気が冷却される。室内熱交換器(24)から出た低圧ガス冷媒は、第1四路切換弁(21)を通過し、吸入ポート(32)を通って圧縮膨張ユニット(30)の圧縮機構(50)へ吸入される。圧縮機構(50)は、吸入した冷媒を圧縮して吐出する。
〈暖房運転〉
暖房運転時には、第1四路切換弁(21)及び第2四路切換弁(22)が図1に実線で示す状態に切り換えられる。この状態で圧縮膨張ユニット(30)の電動機(45)に通電すると、冷媒回路(20)で冷媒が循環して蒸気圧縮式の冷凍サイクルが行われる。
圧縮機構(50)で圧縮された冷媒は、吐出管(36)を通って圧縮膨張ユニット(30)から吐出される。この状態で、冷媒の圧力は、その臨界圧力よりも高くなっている。この吐出冷媒は、第1四路切換弁(21)を通過して室内熱交換器(24)へ送られる。室内熱交換器(24)では、流入した冷媒が室内空気へ放熱し、室内空気が加熱される。
室内熱交換器(24)で放熱した冷媒は、第2四路切換弁(22)を通過し、流入ポート(34)を通って圧縮膨張ユニット(30)の膨張機構(60)へ流入する。膨張機構(60)では、高圧冷媒が膨張してシャフト(40)が駆動される。膨張後の低圧冷媒は、流出ポート(35)を通って圧縮膨張ユニット(30)から流出し、第2四路切換弁(22)を通過して室外熱交換器(23)へ送られる。
室外熱交換器(23)では、流入した冷媒が室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器(23)から出た低圧ガス冷媒は、第1四路切換弁(21)を通過し、吸入ポート(32)を通って圧縮膨張ユニット(30)の圧縮機構(50)へ吸入される。圧縮機構(50)は、吸入した冷媒を圧縮して吐出する。
〈膨張機構の動作〉
膨張機構(60)の動作について、図4を参照しながら説明する。
先ず、第1ロータリ機構部(70)の第1高圧室(73)へ超臨界状態の高圧冷媒が流入する過程について説明する。
回転角が0°の状態からシャフト(40)が僅かに回転すると、第1ピストン(75)と第1シリンダ(71)の接触位置が流入ポート(34)の開口部を通過し、流入ポート(34)から第1高圧室(73)へ高圧冷媒が流入し始める。その後、シャフト(40)の回転角が90°,180°,270°と次第に大きくなるにつれて、第1高圧室(73)へ高圧冷媒が流入してゆく。この第1高圧室(73)への高圧冷媒の流入は、シャフト(40)の回転角が360°に達するまで続く。
また、シャフト(40)の回転角が270°から360°に達するまでの間は、接続通路(95)を介して補助用空間(91)が第1高圧室(73)に連通する。従って、この間は、補助用空間(91)へも高圧冷媒が流入する。補助用空間(91)へ高圧冷媒が流入する過程では、ピストン部材(93)が駆動用空間(92)側へ押し戻されてゆき、補助用空間(91)の容積が次第に拡大すると同時に、駆動用空間(92)内の冷媒が圧縮されて駆動用空間(92)の内圧が上昇してゆく。駆動用空間(92)側へのピストン部材(93)の移動は、ピストン部材(93)が駆動用空間(92)内の冷媒とコイルばね(94)から受ける力(図2における左向きの力)と、ピストン部材(93)が補助用空間(91)内の高圧冷媒から受ける力(図2における右向きの力)とが均衡するまで続く。そして、流入行程中にピストン部材(93)が最も駆動用空間(92)側へ退いた時点における補助用空間(91)の容積が、流入時容積となる。
次に、膨張機構(60)において冷媒が膨張する過程について説明する。
回転角が0°の状態からシャフト(40)が僅かに回転すると、第1低圧室(74)と第2高圧室(83)が連通路(64)を介して互いに連通し、第1低圧室(74)から第2高圧室(83)へと冷媒が流入し始める。その後、シャフト(40)の回転角が90°,180°,270°と次第に大きくなるにつれ、第1低圧室(74)の容積が次第に減少すると同時に第2高圧室(83)の容積が次第に増加し、結果として膨張室(66)の容積が次第に増加してゆく。この膨張室(66)の容積増加は、シャフト(40)の回転角が360°に達する直前まで続く。
膨張室(66)内の冷媒は、膨張室(66)の容積が増加する過程で圧力降下しながら膨張する。そして、第1高圧室(73)と第1低圧室(74)の内圧差によって第1ピストン(75)が駆動される一方、第2高圧室(83)と第2低圧室(84)の内圧差によって第2ピストン(85)が駆動され、その結果、シャフト(40)が回転駆動される。このように、第1低圧室(74)内の冷媒は、連通路(64)を通って第2高圧室(83)へ膨張しながら流入してゆく。
また、シャフト(40)の回転角が0°から270°に至るまでの間は、補助用空間(91)が膨張室(66)を構成する第1低圧室(74)に連通している。膨張行程中に第1低圧室(74)内の冷媒圧力が低下する過程では、第1低圧室(74)に連通する補助用空間(91)内の冷媒圧力も低下してゆく。このため、膨張行程中には、ピストン部材(93)が駆動用空間(92)内の冷媒とコイルばね(94)から受ける力(図2における左向きの力)が、ピストン部材(93)が補助用空間(91)内の冷媒から受ける力(図2における右向きの力)を上回り、ピストン部材(93)が補助用空間(91)側へ押し込まれてゆく。つまり、膨張行程中には、ピストン部材(93)が補助用空間(91)側へ移動してゆく。その結果、流入行程中に補助用空間(91)へ流入した冷媒は、膨張行程中に移動するピストン部材(93)によって第1低圧室(74)へ押し出されてゆき、第1低圧室(74)内で膨脹する。シャフト(40)の回転角が270°に達した時点では、ピストン部材(93)が補助用空間(91)へ最も押し込まれた状態となり、補助用空間(91)の容積が実質的にゼロになる。
最後に、第2ロータリ機構部(80)の第2低圧室(84)から冷媒が流出してゆく過程について説明する。
第2低圧室(84)は、シャフト(40)の回転角が0°の時点から流出ポート(35)に連通し始める。つまり、第2低圧室(84)から流出ポート(35)へと冷媒が流出し始める。その後、シャフト(40)の回転角が90°,180°,270°と次第に大きくなってゆき、その回転角が360°に達するまでの間に亘って、第2低圧室(84)から膨張後の低圧冷媒が流出してゆく。
ここで、上述したように、流入行程中には、ピストン部材(93)が駆動用空間(92)側へ移動して駆動用空間(92)の容積が減少するため、駆動用空間(92)内の冷媒の一部は冷媒流通配管(100)へ流出してゆく。また、膨張行程中には、ピストン部材(93)が補助用空間(91)側へ移動して駆動用空間(92)の容積が増大するため、冷媒流通配管(100)から駆動用空間(92)へ冷媒が流入してくる。しかしながら、圧縮膨張ユニット(30)のシャフト(40)は比較的高速(例えば、毎秒20〜100回転)で回転しているため、一回の流入行程や膨張行程に要する時間は極めて短い。このため、ピストン部材(93)の移動に伴って駆動用空間(92)へ出入りする冷媒の量は、極めて僅かである。従って、駆動用空間(92)に冷媒流通配管(100)が連通していても、流入行程中に駆動用空間(92)の容積が減少すれば駆動用空間(92)内の冷媒圧力が上昇し、膨張行程中に駆動用空間(92)の容積が増加すれば駆動用空間(92)内の冷媒圧力が低下する。
〈圧縮膨張ユニットの容積調節動作〉
圧縮膨張ユニット(30)では、流入行程中の補助用空間(91)の容積である流入時容積を変更するために流出側調節弁(104)を操作する動作が行われる。
本参考技術の圧縮膨張ユニット(30)において、冷媒流入管(101)へ流入した膨張前の高圧冷媒は、キャピラリチューブ(105)を通過する際に膨脹してその圧力が低下し、その後に冷媒流出管(102)へ流入して流出側調節弁(104)を通過する際に膨脹してその圧力が膨張機構(60)の流出側の冷媒圧力にまで低下する。つまり、この圧縮膨張ユニット(30)において、“冷媒がキャピラリチューブ(105)を通過する際の圧力損失”と“冷媒が流出側調節弁(104)を通過する際の圧力損失”の合計値は、膨張機構(60)の流入側と流出側の圧力差と実質的に等しくなる。
このため、流出側調節弁(104)の開度が縮小されて流出側調節弁(104)における冷媒の圧力損失が増大すれば、それに伴ってキャピラリチューブ(105)における冷媒の圧力損失が減少し、駆動用空間(92)内の冷媒圧力が上昇する。また、流出側調節弁(104)の開度が拡大されて流出側調節弁(104)における冷媒の圧力損失が減少すれば、それに伴ってキャピラリチューブ(105)における冷媒の圧力損失が増加し、駆動用空間(92)内の冷媒圧力が低下する。
そこで、補助用空間(91)の流入時容積を減少させる場合には、流出側調節弁(104)の開度が縮小される。上述したように、流出側調節弁(104)の開度が小さくなると、駆動用空間(92)内の冷媒圧力が上昇する。流入行程中において、駆動用空間(92)内の冷媒圧力が上昇すると、ピストン部材(93)が駆動用空間(92)内の冷媒とコイルばね(94)から受ける力(図2における左向きの力)と、ピストン部材(93)が補助用空間(91)内の高圧冷媒から受ける力(図2における右向きの力)とが均衡するまでのピストン部材(93)の移動距離が短くなる。その結果、流入行程中にピストン部材(93)が最も駆動用空間(92)側へ退いた時点における補助用空間(91)の容積(即ち、流入時容積)が小さくなる。
また、流出側調節弁(104)を全閉した状態において、駆動用空間(92)内の冷媒圧力は、膨張前の高圧冷媒の圧力と実質的に等しくなる。従って、この状態において、ピストン部材(93)は、コイルばね(94)から受ける力によって補助用空間(91)側へ最も押し込まれた位置に保持され、補助用空間(91)の容積が実質的にゼロとなる。つまり、流出側調節弁(104)を全閉状態に設定すれば、流入行程中における補助用空間(91)の容積(即ち、流入時容積)が実質的にゼロとなる。
一方、補助用空間(91)の流入時容積を増加させる場合には、流出側調節弁(104)の開度が拡大される。上述したように、流出側調節弁(104)の開度が大きくなると、駆動用空間(92)内の冷媒圧力が低下する。流入行程中において、駆動用空間(92)内の冷媒圧力が低下すると、ピストン部材(93)が駆動用空間(92)内の冷媒とコイルばね(94)から受ける力(図2における左向きの力)と、ピストン部材(93)が補助用空間(91)内の高圧冷媒から受ける力(図2における右向きの力)とが均衡するまでのピストン部材(93)の移動距離が長くなる。その結果、流入行程中にピストン部材(93)が最も駆動用空間(92)側へ退いた時点における補助用空間(91)の容積(即ち、流入時容積)が大きくなる。
上述したように、流出側調節弁(104)を全閉した状態では、駆動用空間(92)の内圧が、膨張機構(60)へ流入する膨張前の高圧冷媒の圧力と実質的に同じ値となる。このため、駆動用空間(92)の内圧の調節範囲の上限値は、冷凍サイクルの高圧と実質的に同じ値となる。一方、流出側調節弁(104)を全開した状態でも、冷媒が流出側調節弁(104)を通過する際には若干の圧力損失が生じる。従って、流出側調節弁(104)を全開した状態では、駆動用空間(92)の内圧が、膨張機構(60)から流出した膨張後の低圧冷媒の圧力よりも若干高くなる。このため、駆動用空間(92)の内圧の調節範囲の下限値は、冷凍サイクルの低圧よりも僅かに高い値となる。
補助用空間(91)の容積を変更すると、シャフト(40)が一回転する間に膨張機構(60)へ流入する高圧冷媒の体積が変化する。つまり、本参考技術の膨張機構(60)ではシャフト(40)が一回転する毎に一回の流入行程が行われるため、補助用空間(91)の容積を変更すると、一回の流入行程において膨張機構(60)へ流入する高圧冷媒の体積が変化する。
補助用空間(91)の容積を変更する必要性について、簡単に説明する。
膨張機構(60)から出力される動力が最大となるのは、膨張室(66)の容積が最大となった時点における膨張室(66)内の冷媒圧力が、膨張機構(60)の流出ポート(35)に接続する配管内の冷媒圧力(実質的には冷凍サイクルの低圧)と等しくなっている場合である。ところが、冷媒回路(20)において行われる冷凍サイクルの高圧や低圧の値は、空調機(10)の運転条件(例えば、室外や室内の気温)によって変化する。このため、空調機(10)の運転中において、膨張室(66)の容積が最大となった時点における膨張室(66)内の冷媒圧力は、膨張機構(60)の流出ポート(35)に接続する配管内の冷媒圧力に対して高くなり過ぎたり低くなり過ぎることがある。
膨張機構(60)の運転状態が膨張不足になっている場合は、膨張室(66)の容積が最大となった時点における膨張室(66)内の冷媒圧力が、膨張機構(60)の流出ポート(35)に接続する配管内の冷媒圧力よりも高くなる。この場合は、膨張室(66)内で冷媒の圧力が充分に下がりきっていないのに膨張機構(60)から冷媒が流出してゆくこととなり、膨張機構(60)において発生する動力が少なくなる。そこで、このような場合は、補助用空間(91)の流入時容積を減少させ、一回の流入行程において膨張機構(60)へ流入する高圧冷媒の体積を減少させる。
一方、膨張機構(60)の運転状態が過膨張になっている場合は、膨張室(66)の容積が最大となった時点における膨張室(66)内の冷媒圧力が、膨張機構(60)の流出ポート(35)に接続する配管内の冷媒圧力よりも低くなる。この場合は、膨張室(66)内の冷媒圧力を流出ポート(35)の冷媒圧力よりも低い値にまで引き下げなければならず、膨張室(66)内の冷媒圧力を引き下げるために動力が消費されるため、膨張機構(60)から出力される動力が少なくなる。そこで、このような場合は、補助用空間(91)の流入時容積を増加させ、一回の流入行程において膨張機構(60)へ流入する高圧冷媒の体積を増加させる。
−参考技術1の効果−
本参考技術の圧縮膨張ユニット(30)では、容積変更機構(115)が、膨張行程中に補助用空間(91)の容積を流入時容積よりも小さくする。従って、膨張行程中の膨張機構(60)では、膨張室(66)を形成する第1低圧室(74)内の冷媒圧力の低下に伴って補助用空間(91)内の冷媒が第1低圧室(74)へ流出してゆくだけでなく、補助用空間(91)の容積が減少することによっても補助用空間(91)内の冷媒が第1低圧室(74)へ流出してゆく。
このため、本参考技術の圧縮膨張ユニット(30)によれば、流入行程と膨張行程の両方で補助用空間(91)の容積が一定に保持される従来の膨張機に比べ、膨張行程中に補助用空間(91)から膨張室(66)へ流出する冷媒の量を増大させることができる。その結果、流入行程において補助用空間(91)の内圧を上昇させるのに要するエネルギのうち膨張行程中に回収できる分を増やすことができ、いわゆるポンピングロスを低減することができる。
また、本参考技術の圧縮膨張ユニット(30)によれば、流入行程と膨張行程の両方で補助用空間(91)の容積が一定に保持される従来の膨張機に比べ、膨張行程中に補助用空間(91)から膨張室(66)へ流出する冷媒の量を増大させることができるため、流入行程中に補助用空間(91)へ流入する高圧冷媒の体積と流入時容積の差を縮小できる。その結果、一回の流入行程中に膨張機構(60)へ流入する冷媒の体積の調節範囲の最大値を、流入時容積の調節範囲の最大値に近付けることができ、一回の流入行程中に膨張機構(60)へ流入する冷媒の体積の調節幅を拡大することができる。
また、本参考技術の圧縮膨張ユニット(30)において、ピストン部材(93)は、補助用空間(91)向きの力をコイルばね(94)から受ける。つまり、膨張行程中において、ピストン部材(93)は、駆動用空間(92)内の冷媒とコイルばね(94)の両方から力を受けて補助用空間(91)側へ移動する。従って、本参考技術によれば、膨張行程中にピストン部材(93)を補助用空間(91)側へ確実に移動させることができ、膨張行程中における補助用空間(91)の容積を流入時容積よりも確実に小さくすることができる。
また、本参考技術の圧縮膨張ユニット(30)では、膨張機構(60)へ流入しようとする膨張前の高圧冷媒の一部が、冷媒流入管(101)を通って駆動用空間(92)へ流入する。膨張機構(60)へ向かって流れる膨張前の高圧冷媒は、冷媒回路(20)内に存在する高圧冷媒のうちで最も低温である。従って、本参考技術によれば、駆動用空間(92)内の冷媒と補助用空間(91)内の冷媒との温度差をできる限り縮小することができ、駆動用空間(92)内の冷媒から補助用空間(91)内の冷媒へ侵入する熱量を低く抑えることができる。
《実施形態》
本発明の実施形態について説明する。図5に示すように、本実施形態の圧縮膨張ユニット(30)は、ガス化用加熱部であるガス化用熱交換器(110)を参考技術1の圧縮膨張ユニット(30)に追加したものである。
ガス化用熱交換器(110)は、第1流路(111)と第2流路(112)とを備え、第1流路(111)を流れる流体と第2流路(112)を流れる流体とを熱交換させるように構成されている。ガス化用熱交換器(110)の第1流路(111)は、膨張機構(60)の流入ポート(34)に接続して膨張前の高圧冷媒が流れる配管に配置されている。ガス化用熱交換器(110)の第2流路(112)は、冷媒流入管(101)におけるキャピラリチューブ(105)の下流側に配置されている。
本実施形態の圧縮膨張ユニット(30)において、冷媒流入管(101)へ流入した高圧冷媒は、キャピラリチューブ(105)を通過する際に膨脹して気液二相状態となり、その後にガス化用熱交換器(110)の第2流路(112)へ流入する。ガス化用熱交換器(110)において、第1流路(111)を流れる高圧冷媒は、第2流路(112)を流れる冷媒よりも高温となっている。このため、ガス化用熱交換器(110)では、第2流路(112)を流れる冷媒が第1流路(111)を流れる高圧冷媒によって加熱され、第2流路(112)を流れる冷媒中の液成分が蒸発する。そして、駆動用空間(92)へは、ガス化用熱交換器(110)の第2流路(112)を通過する間にガス成分が増加し、あるいは完全にガス単相状態となった冷媒が供給される。
このように、本実施形態の圧縮膨張ユニット(30)では、駆動用空間(92)内の冷媒に含まれるガス成分を増やすことができ、あるいは駆動用空間(92)内の冷媒をガス単相状態にすることができる。従って、本実施形態によれば、駆動用空間(92)内の冷媒の圧縮性を充分に確保することができ、補助用空間(91)内の冷媒圧力の変化に応じてピストン部材(93)をスムーズに移動させることが可能となる。
《参考技術2》
参考技術2について説明する。本参考技術は、上記参考技術1の空調機(10)において、圧縮膨張ユニット(30)の構成を変更したものである。
図6に示すように、本参考技術の圧縮膨張ユニット(30)では、冷媒流入管(101)の接続位置が上記参考技術1と異なっている。本参考技術の圧縮膨張ユニット(30)のその他の構成は、上記参考技術1と同様である。
具体的に、本参考技術の圧縮膨張ユニット(30)において、冷媒流入管(101)の一端は、圧縮膨張ユニット(30)の吐出管(36)に接続して圧縮機構(50)から吐出された高圧冷媒が流通する配管に接続されている。なお、冷媒流入管(101)の他端が冷媒流通配管(100)に接続される点は、上記参考技術1と同様である。
本参考技術の圧縮膨張ユニット(30)において、冷媒流入管(101)へは、圧縮膨張ユニット(30)から吐出管(36)を通って流出した高圧冷媒の一部が流入する。冷媒流入管(101)へ流入した高圧冷媒は、キャピラリチューブ(105)を通過する際に膨脹して過熱状態のガス冷媒となり、その後に駆動用空間(92)へ流入する。つまり、本参考技術の圧縮膨張ユニット(30)では、駆動用空間(92)内がガス単相状態の冷媒によって満たされる。従って、本参考技術によれば、駆動用空間(92)内の冷媒の圧縮性を充分に確保することができ、補助用空間(91)内の冷媒圧力の変化に応じてピストン部材(93)をスムーズに移動させることが可能となる。
−参考技術2の変形例−
本参考技術の圧縮膨張ユニット(30)では、冷媒流出管(102)の接続位置を変更してもよい。
図7に示すように、本変形例の圧縮膨張ユニット(30)において、冷媒流出管(102)の一端は、圧縮膨張ユニット(30)の吸入ポート(32)に接続して圧縮機構(50)へ吸入される低圧ガス冷媒が流通する配管に接続されている。なお、冷媒流出管(102)の他端が冷媒流通配管(100)に接続される点は、図6に示すものと同様である。そして、本変形例の圧縮膨張ユニット(30)では、冷媒流出管(102)を流れる冷媒が低圧ガス冷媒の流れる配管へ送り出される。
《その他の実施形態》
−第1変形例−
上記の実施形態及び各参考技術の圧縮膨張ユニット(30)では、図8に示すように、キャピラリチューブ(105)に代えて流入側調節弁(103)を冷媒流出管(102)に設け、流出側調節弁(104)に代えてキャピラリチューブ(106)を冷媒流出管(102)に設けてもよい。なお、図8に示す圧縮膨張ユニット(30)は、上記参考技術1の圧縮膨張ユニット(30)に本変形例を適用したものである。
本変形例の圧縮膨張ユニット(30)では、流入側調節弁(103)が流入側絞り機構を構成し、キャピラリチューブ(106)が流出側絞り機構を構成する。流入側調節弁(103)は、開度可変の電動膨張弁である。
図8に示す圧縮膨張ユニット(30)において、補助用空間(91)の流入時容積を減少させる場合には、流入側調節弁(103)の開度が拡大される。流入側調節弁(103)の開度が大きくなると、駆動用空間(92)内の冷媒圧力が上昇する。そして、上記参考技術1について説明した通り、流入行程中に駆動用空間(92)内の冷媒圧力が上昇すると、流入行程中にピストン部材(93)が最も駆動用空間(92)側へ退いた時点における補助用空間(91)の容積(即ち、流入時容積)が小さくなる。
一方、補助用空間(91)の流入時容積を増加させる場合には、流入側調節弁(103)の開度が縮小される。流入側調節弁(103)の開度が小さくなると、駆動用空間(92)内の冷媒圧力が低下する。そして、上記参考技術1について説明した通り、流入行程中に駆動用空間(92)内の冷媒圧力が低下すると、流入行程中にピストン部材(93)が最も駆動用空間(92)側へ退いた時点における補助用空間(91)の容積(即ち、流入時容積)が大きくなる。
また、流入側調節弁(103)を全閉した状態において、駆動用空間(92)内の冷媒圧力は、膨張後の低圧冷媒の圧力と実質的に等しくなる。つまり、この状態において、駆動用空間(92)内の冷媒圧力は、冷凍サイクルの低圧と実質的に等しくなる。
上述したように、流入側調節弁(103)を全閉した状態では、駆動用空間(92)の内圧が、膨張機構(60)から流出した膨張後の低圧冷媒の圧力と実質的に同じ値となる。このため、駆動用空間(92)の内圧の調節範囲の下限値は、冷凍サイクルの低圧と実質的に同じ値となる。一方、流入側調節弁(103)を全開した状態でも、冷媒が流入側調節弁(103)を通過する際には若干の圧力損失が生じる。従って、流入側調節弁(103)を全開した状態では、駆動用空間(92)の内圧が、膨張機構(60)へ流入する膨張前の高圧冷媒の圧力よりも若干低くなる。このため、駆動用空間(92)の内圧の調節範囲の上限値は、冷凍サイクルの高圧よりも僅かに低い値となる。
−第2変形例−
上記の実施形態及び各参考技術の圧縮膨張ユニット(30)では、図9に示すように、キャピラリチューブ(105)に代えて流入側調節弁(103)を冷媒流出管(102)に設けてもよい。なお、図9に示す圧縮膨張ユニット(30)は、上記参考技術1の圧縮膨張ユニット(30)に本変形例を適用したものである。
本変形例の圧縮膨張ユニット(30)では、流入側調節弁(103)が流入側絞り機構を構成し、流出側調節弁(104)が流出側絞り機構を構成する。流入側調節弁(103)は、開度可変の電動膨張弁である。つまり、本変形例では、流入側絞り機構と流出側絞り機構の両方が開度可変の膨張弁によって構成される。
図9に示す圧縮膨張ユニット(30)において、補助用空間(91)の流入時容積を減少させる場合には、流入側調節弁(103)の開度が拡大され、あるいは流出側調節弁(104)の開度が縮小され、その結果、駆動用空間(92)内の冷媒圧力が上昇する。そして、上記参考技術1について説明した通り、流入行程中に駆動用空間(92)内の冷媒圧力が上昇すると、流入行程中にピストン部材(93)が最も駆動用空間(92)側へ退いた時点における補助用空間(91)の容積(即ち、流入時容積)が小さくなる。
また、流出側調節弁(104)を全閉した状態において、駆動用空間(92)内の冷媒圧力は、膨張前の高圧冷媒の圧力と実質的に等しくなる。従って、この状態において、ピストン部材(93)は、コイルばね(94)から受ける力によって補助用空間(91)側へ最も押し込まれた位置に保持され、補助用空間(91)の容積が実質的にゼロとなる。つまり、流出側調節弁(104)を全閉状態に設定すれば、流入行程中における補助用空間(91)の容積(即ち、流入時容積)が実質的にゼロとなる。
一方、補助用空間(91)の流入時容積を増加させる場合には、流入側調節弁(103)の開度が縮小され、あるいは流出側調節弁(104)の開度が拡大され、その結果、駆動用空間(92)内の冷媒圧力が低下する。そして、上記参考技術1について説明した通り、流入行程中に駆動用空間(92)内の冷媒圧力が低下すると、流入行程中にピストン部材(93)が最も駆動用空間(92)側へ退いた時点における補助用空間(91)の容積(即ち、流入時容積)が大きくなる。
また、流入側調節弁(103)を全閉した状態において、駆動用空間(92)内の冷媒圧力は、膨張後の低圧冷媒の圧力と実質的に等しくなる。つまり、この状態において、駆動用空間(92)内の冷媒圧力は、冷凍サイクルの低圧と実質的に等しくなる。
上述したように、流出側調節弁(104)を全閉した状態では、駆動用空間(92)の内圧が、膨張機構(60)へ流入する膨張前の高圧冷媒の圧力と実質的に等しくなる。このため、駆動用空間(92)の内圧の調節範囲の上限値は、冷凍サイクルの高圧と実質的に同じ値となる。また、流入側調節弁(103)を全閉した状態では、駆動用空間(92)の内圧が、膨張機構(60)から流出した膨張後の低圧冷媒の圧力と実質的に等しくなる。このため、駆動用空間(92)の内圧の調節範囲の下限値は、冷凍サイクルの低圧と実質的に同じ値となる。
−第3変形例−
上記の実施形態及び各参考技術では、圧縮膨張ユニット(30)の膨張機構(60)がスクロール型流体機械によって構成されていてもよい。
図10に示すように、本変形例の膨張機構(60)には、固定スクロール(120)と可動スクロール(122)とが設けられる。固定スクロール(120)には、固定側ラップ(121)が形成されている。可動スクロール(122)には、可動側ラップ(123)が形成されている。固定側ラップ(121)と可動側ラップ(123)は、共に渦巻き壁状に形成されており、互いに噛み合わされて複数の膨張室(66a,66b)を形成している。具体的に、膨張機構(60)では、固定側ラップ(121)の内側面と可動側ラップ(123)の外側面とに挟まれた空間が、流体室としてのA室(66a)を構成し、固定側ラップ(121)の外側面と可動側ラップ(123)の内側面とに挟まれた空間が、流体室としてのB室(66b)を構成している。
本変形例の膨張機構(60)において、流入ポート(34)と流出ポート(35)は、何れも固定スクロール(120)に形成されている。流入ポート(34)は、固定側ラップ(121)の内周側の端部(巻き始め側の端部)付近に開口しており、最内周側に形成されたA室(66a)及びB室(66b)と連通可能になっている。流出ポート(35)は、固定側ラップ(121)の外周側の端部(巻き終わり側の端部)付近に開口しており、最外周側に形成されたA室(66a)及びB室(66b)と連通可能になっている。
本変形例の膨張機構(60)では、例えば固定スクロール(120)にシリンダ空間(90)が形成される。上記の実施形態及び各参考技術と同様に、シリンダ空間(90)は、ピストン部材(93)によって補助用空間(91)と駆動用空間(92)に仕切られている。補助用空間(91)は、第1接続通路(96)を介して最内周側のA室(66a)と連通し、第2接続通路(97)を介して最内周側のB室(66b)と連通している。
上記の実施形態及び各参考技術と同様に、本変形例の膨張機構(60)では、駆動用空間(92)にコイルばね(94)が収容されており、このコイルばね(94)がピストン部材(93)に対して補助用空間(91)向きの力を作用させる。また、駆動用空間(92)には、冷媒流通配管(100)が接続されている。
本変形例の膨張機構(60)では、上記の実施形態及び各参考技術と同様に、駆動用空間(92)が圧縮性流体であるガス単相状態または気液二相状態の冷媒で満たされている。駆動用空間(92)内の冷媒圧力を調節すると、流入行程中におけるピストン部材(93)の位置が変化し、それに伴って補助用空間(91)の容積が増減する。そして、補助用空間(91)の容積が変化すると、一回の流入行程において膨張機構(60)の流入ポート(34)へ流入する高圧冷媒の体積が変化する。
−第4変形例−
上記の実施形態及び各参考技術では、膨張機構(60)と圧縮機構(50)が一つのケーシング(31)内に収容されているが、膨張機構(60)と圧縮機構(50)は、それぞれ別々のケーシング内に収容されていてもよい。本変形例において、膨張機構(60)は、膨張機構(60)によって駆動される発電機と共に第1のケーシングに収容される。また、圧縮機構(50)は、圧縮機構(50)を駆動する電動機と共に第2のケーシングに収容される。そして、本変形例では、 膨張機構(60)と発電機を第1のケーシングに収容したものが、膨張機を構成する。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。