JP2010077516A - マグネシウム合金 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐熱性および鋳造性に優れる新規のマグネシウム合金を提供する。
【解決手段】本発明のマグネシウム合金は、全体を100質量%としたとき、Alを6〜10質量%、Caを2.2〜8.0質量%、Siを0.1〜1.0質量%、Snを0.1〜1.0質量%、Mnを0.05〜1.0質量%含み、残部がMgおよび不可避不純物からなる。また、Alの含有量をa、Caの含有量をb、Siの含有量をc、Snの含有量をd(単位は質量%)としたときに、0.35≦b/(a+c+d)≦0.75かつ0.2≦(c+d)≦1.4である。Al−Ca−Mg系化合物がMg結晶粒界に網目状に晶出することで、高温での粒界すべりや粒界での転位の移動が抑制され、耐熱性が向上する。また、微細なCa−Si−Sn−Mg系化合物が分散して生成するため、耐熱性が向上するとともに、延性の増加により鋳造割れが低減される。
【選択図】図4

Description

本発明は、耐熱性、鋳造性に優れるマグネシウム合金に関するものである。
自動車産業などの産業界では、軽量化を目的としてマグネシウム合金が適用されている。今後もさらにマグネシウム合金の適用範囲は拡大されることが期待されており、特に、軽量化に効果があるエンジン周辺部品などへの適用が考えられている。エンジン周辺部品には高い耐熱性が要求されることから、耐熱性に優れたマグネシウム合金の開発が求められている。たとえば、従来のマグネシウム−アルミニウム合金に対し、耐熱性の向上を意図してマグネシウム−アルミニウム−シリコン合金、マグネシウム−アルミニウム−希土類元素合金などが開発されてきた。しかしながら、これらのマグネシウム合金は、耐食性、鋳造性、コストの面で必ずしも充分ではなかった。これらのマグネシウム合金に対し、耐熱性に優れ、耐食性、鋳造性にも優れたマグネシウム−アルミニウム−カルシウム合金が開発されている。
たとえば、特許文献1には、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)およびマンガン(Mn)を含有するマグネシウム合金(Mg−Al−Ca−Mn合金)が開示されている。Alは、マグネシウム合金において、鋳造性、耐食性および室温での機械的性質、特にダイカスト鋳造性を向上させる。しかし同時に、熱的に不安定な化合物相(Mg17Al12相)が晶出するため、マグネシウム合金の耐熱性は大きく低下する。Mg17Al12相の晶出は、Alと化合物を形成するCaを添加することで抑制され、マグネシウム合金の耐熱性が向上する。一方、Caの含有量が多すぎると、鋳造性を低下させる粗大なMgCa(Al)相が初晶として晶出しやすくなる。そこで、含有するアルミニウムとカルシウムとの質量比を規定することで、耐熱性と鋳造性とがともに優れたマグネシウム合金が得られる。
また、特許文献1には、Mg−Al−Ca−Mn合金に珪素(Si)および/またはスズ(Sn)を添加してもよいことが記載されている。しかしながら、特許文献1では、SiとSnとは必須の合金元素ではなく、また、SiとSnとの合計の含有量についても明らかにされていない。
特開2007−197796号公報
Mg−Al合金へSiまたはSnを添加すると、Mg−Si系化合物またはMg−Sn系化合物が生成され、耐熱性が向上する。そのため、Mg−Al合金へのCaとSiあるいはCaとSnの同時添加は、化合物量の増加による耐熱性の向上が期待できる。しかしながら、Mg−Al合金にCaとSiあるいはCaとSnを同時添加すると、粗大なCa−Si−Mg系化合物あるいは粗大なCa−Sn−Mg系化合物が形成され、耐熱性は向上しないことがわかった。また、粗大な化合物が形成されることで延性が低下し、鋳造割れが発生しやすくなることもわかった。
本発明者等は、Mg−Al−Ca−Mn合金にSiとSnとを同時に所定の量添加することで、マグネシウム合金の耐熱性と鋳造性とをさらに向上できることに想到した。すなわち、本発明は、耐熱性および鋳造性に優れる新規のマグネシウム合金を提供することを目的とする。
本発明のマグネシウム合金は、全体を100質量%としたとき、アルミニウム(Al)を6質量%以上10質量%以下、カルシウム(Ca)を2.2質量%以上8.0質量%以下、珪素(Si)を0.1質量%以上1.0質量%以下、スズ(Sn)を0.1質量%以上1.0質量%以下、マンガン(Mn)を0.05質量%以上1.0質量%以下含み、残部がマグネシウム(Mg)および不可避不純物からなり、Alの含有量をa質量%、Caの含有量をb質量%、Siの含有量をc質量%、Snの含有量をd質量%としたときに、0.35≦b/(a+c+d)≦0.75かつ0.2≦(c+d)≦1.4であることを特徴とする。
マグネシウム合金の耐熱性を向上させるためには、熱的に安定な高融点をもつ化合物をできるだけ多くマグネシウム合金の結晶粒界および/または結晶粒内に分散させることが重要である。Mg−Al合金へCaを添加すると、Al−Ca−Mg系化合物が結晶粒界に網目状に晶出するため、高温での粒界すべりや粒界での転位の移動が抑制され、耐熱性が向上する。
また、前述のように、Mg−Al合金にCaとSiあるいはCaとSnを同時添加しても、粗大な化合物が形成されて、耐熱性、鋳造性ともに向上はみられない。ところが、Ca、SiおよびSnを同時添加すると、微細なCa−Si−Sn−Mg系化合物が分散して生成するため、化合物量の増加により耐熱性が向上するとともに、延性の増加により鋳造割れが低減される。
また、SiとSnとを同時添加することにより、粗大な化合物の晶出を抑制できるため、マグネシウム合金の延性が向上し、鋳造時、特にダイカスト鋳造時の凝固割れを抑制することができる。
なお、Al−Ca−Mg系化合物とは、たとえば、MgAlCa、(Mg,Al)Caである。また、Ca−Si−Sn−Mg系化合物は、準安定相である。
以下に、本発明のマグネシウム合金を実施するための最良の形態を説明する。
本発明のマグネシウム合金は、全体を100質量%としたとき、Alを6質量%以上10質量%以下、Caを2.2質量%以上8.0質量%以下、Siを0.1質量%以上1.0質量%以下、Snを0.1質量%以上1.0質量%以下、Mnを0.05質量%以上1.0質量%以下含み、残部がMgおよび不可避不純物からなる。
Alは、鋳造性、特に湯流れ性の向上に寄与するとともに、合金の強化に寄与し、機械的性質を向上させる。Alの含有量は、6質量%以上10質量%以下である。6質量%未満では、耐熱性の向上に有効なAl−Ca−Mg系化合物の絶対量が不足し、十分な耐熱性が得られない。また、Al量が少ないと、融点が上昇して湯流れ性が低下したり鋳造割れが増加したりするため、鋳造性が低下する。Al量の下限は、望ましくは7.0質量%以上である。一方、Alの含有量が10質量%を超えると、Al−Ca−Mg系化合物の絶対量が過多となり延性が低下するため、SiおよびSnを添加しても鋳造割れの抑制が困難となる。また、Al量が多いと、粗大な初晶Al−Ca−Mg系化合物や粗大な初晶Al−Mn系化合物が生成するようになり、溶湯中に化合物の沈降が生じて、スラッジの生成量が増大する。これらの粗大な化合物は、耐熱性向上に効果がないうえに鋳造性を大きく低下させる。Al量の上限は、望ましくは9.5質量%以下さらに望ましくは9.0質量%以下である。
Caは、耐熱性の向上に有効な化合物をAlとともに形成し、さらに、耐熱性を低下させるMg17Al12相の晶出を抑制するため、マグネシウム合金の耐熱性が向上する。Caの含有量は、2.2質量%以上8.0質量%以下である。Caの含有量が2.2質量%未満では、耐熱性向上に有効なAl−Ca−Mg系化合物の絶対量が不足してMg17Al12相が出現しやすい。Ca量の下限は、望ましくは2.5質量%以上、さらに望ましくは3.0質量%以上である。Ca量が8.0質量%を超えると、鋳造性を低下させる粗大なMgCa(Al)相が晶出しやすくなる。Ca量の上限は、望ましくは7.5質量%以下さらに望ましくは7.0質量%以下、6.0質量%以下である。
また、上述のように、高い耐熱性および鋳造性をもつマグネシウム合金を得るためには、Mg17Al12相の晶出を抑える必要があり、さらには、微細なCa−Si−Sn−Mg系化合物を形成させる必要があるため、Caの含有量を、Ca量≧0.35×(Al量+Si量+Sn量)とする。また、Caの難燃効果により、マグネシウム合金の鋳造作業を容易にする。その一方、過剰のCaは、割れに敏感なMg−Ca系化合物の生成をもたらし、鋳造割れが多発する。そのため、Caの含有量を、Ca量≦0.75×(Al量+Si量+Sn量)とする。すなわち、Alの含有量をa質量%、Caの含有量をb質量%、Siの含有量をc質量%、Snの含有量をd質量%としたときに、0.35≦b/(a+c+d)≦0.75とする。b/(a+c+d)の下限は、望ましくは0.40以上である。また、b/(a+c+d)の上限は、望ましくは0.7以下である。
SiとSnは、同時に添加することで、微細なCa−Si−Sn−Mg系化合物が分散して生成するため、耐熱性向上と鋳造割れの低減が可能となる。SiおよびSnの含有量は、それぞれ、0.1質量%以上1.0質量%以下、かつ、(Si量+Sn量)≦1.4[質量%]である。Si量およびSn量の少なくとも一方が1.0質量%を超え、両者の含有量の合計が1.4質量%を超えると、粗大な初晶Ca−Si−Mg系化合物あるいは粗大な初晶Ca−Sn−Mg系化合物、さらには粗大な初晶Ca−Si−Sn−Mg系化合物が生成されやすくなり、鋳造割れが増すと同時に、スラッジの生成量を多くする。Si量の上限は、望ましくは0.8質量%以下さらに望ましくは0.5質量%以下である。
Si量またはSn量が0.1質量%未満では、粗大な初晶Ca−Si−Mg系化合物または粗大な初晶Ca−Sn−Mg系化合物が生成されやすくなる。また、Si量、Sn量ともに0.1質量%以上であっても両者の合計が0.2質量%未満では、微細なCa−Si−Sn−Mg系化合物が十分に生成されないため、耐熱性および鋳造性が低下することがある。Sn量の下限は、望ましくは0.2質量%以上さらに望ましくは0.5質量%以上である。
すなわち、Siの含有量をc質量%、Snの含有量をd質量%としたときに、0.2≦(c+d)≦1.4とする。(c+d)の下限は、望ましくは0.5以上さらに望ましくは1.0以上である。また、(c+d)の上限は、望ましくは1.2以下である。
Mnは、耐食性の向上に寄与するが、過少であると耐食性が低下し、耐食性に対して充分な効果が得られない。Mnの含有量は、0.05質量%以上1.0質量%以下である。0.05質量%未満では、マグネシウム合金の耐食性が著しく低下する。Mn量の下限は、望ましくは0.15質量%以上、さらに望ましくは0.25質量%以上である。一方、1.0質量%を超えると、溶湯中のMnがAlなどと粗大な化合物を形成して沈降するため、スラッジの生成が増大するとともに、得られるマグネシウム合金中のAl量を低下させ耐熱性が低下する。Mn量の上限は、望ましくは0.8質量%以下、さらに望ましくは0.5質量%以下である。
本発明のマグネシウム合金は、さらに、ストロンチウム(Sr)および希土類元素(RE)からなる群から選ばれる一種以上を含んでもよい。ただし、本発明のマグネシウム合金において、SrおよびREは、特に必要がなければ含有せずともよい。
Srは、耐熱性の向上に有利である。しかし、Srの含有量が過剰であると、Mg−Al−Sr系化合物あるいはAlSrの生成量が増加し、延性が低下することがある。Sr量の上限は、望ましくは1.0質量%以下、さらに望ましくは0.7質量%以下である。また、Sr量の下限をあえて規定するならば、望ましくは0.1質量%以上、さらに望ましくは0.3質量%以上である。
希土類元素(RE)は、初晶α−マグネシウム母相(Mg結晶粒)に固溶し、固溶強化により耐熱性の向上に寄与する。また、REは、結晶粒界に化合物相を形成し、粒界すべりを抑え、耐熱性の向上に寄与する。しかし、REが過剰であると、延性および強度、湯流れ性、耐食性が低下する傾向がある。そのため、REは、REから選ばれる一種以上の元素を合計で1.0質量%以下含むのが望ましく、さらに望ましくは0.8質量%以下である。また、RE量の下限をあえて規定するならば、REの一種または二種以上の合計で、0.2質量%以上含むのが望ましく、さらに望ましくは0.3質量%以上である。
以上説明した組成をもつ本発明のマグネシウム合金は、Mg結晶粒と、Mg結晶粒の結晶粒界に網目状に晶出したAl−Ca−Mg系化合物と、Mg結晶粒内および/または結晶粒界に分散するCa−Si−Sn−Mg系化合物と、からなる金属組織を有する。Al−Ca−Mg系化合物は、板状の化合物であり、結晶粒界に晶出してネットワークを構成する。そのため、高温での粒界すべりや粒界における転位の移動が抑制され、耐熱性が大きく向上する。さらに、結晶粒界や結晶粒内に微細に分散したCa−Si−Sn−Mg系化合物は、粒状の化合物であり、転位すべりを抑制してさらなる耐熱性の向上に有効である。
粒状のCa−Si−Sn−Mg系化合物は、その最大粒径が10μm以下さらには5μm以下であるのが好ましい。上記組成をもつ本発明のマグネシウム合金では、通常の製造方法であれば製法に関わらず、Ca−Si−Sn−Mg系化合物の大きさを小さく抑えられる。なお、本明細書では、光学顕微鏡にて得られた組織写真より、写真上のCa−Si−Sn−Mg系化合物の面積を画像解析ソフト(ImagePro等)により求め、面積より円相当径を算出し、これを化合物の粒径として採用する。
本発明のマグネシウム合金の製造方法の一例を簡単に示すと、次のようである。すなわち、本合金は、各元素を純金属、合金または塩化物やフッ化物の形態(REとしてはミッシュメタル、ジジム等)で溶融Mgに添加し、ダイカストなどの一般的な方法により鋳造することにより、マグネシウム合金鋳物が得られる。鋳放しの状態のマグネシウム合金鋳物は、主に、Mg結晶粒、Al−Ca−Mg系化合物およびCa−Si−Sn−Mg系化合物、からなる上記の金属組織を有する。
本発明に係るマグネシウム合金は、鋳造性が良好であり、鋳造方法としては、ダイカスト鋳造、金型重力鋳造、砂型鋳造、チクソモールディング、高圧鋳造、低圧鋳造などが適する。ダイカスト鋳造は、コールドチャンバー方式でもよいし、ホットチャンバー方式でもよい。
本発明のマグネシウム合金からなる鋳物は、宇宙、航空の分野をはじめとし、自動車、電気機器などの各種分野において、軽量化および耐熱性の双方が要請される部品に適用することができる。たとえば、車両のシリンダヘッドカバー、シリンダブロック、ピストン、トランスミッションケース、オイルパン、インテークマニホールド、チェーンカバー、クランクケース、等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
以上、本発明のマグネシウム合金の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
以下に、本発明のマグネシウム合金の実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。
[Mg−Al−Ca−Si−Sn−Mn系合金鋳物の作製]
表1に示す組成をもつように、Al、Ca、SiおよびSnの含有量(順にa、b、cおよびdとする)を変化させ、かつ、b/(a+c+d)および(c+d)の値を変化させるように原料を配合し、以下の手順でMg−Al−Ca−Si−Sn−Mn系合金鋳物(#01〜#10:実施例、#C01〜C10:比較例に相当)を作製した。また、必要に応じて、Srまたはミッシュメタル(Mm:セリウム、ランタン、プラセオジムおよびネオジウムを含む)を添加した。なお、表1に示す組成は目標値である。
鋳物は、軸力保持率を測定するための試験片を作製する形状Aの鋳物、鋳造性を評価するための形状Bの鋳物、の2種類を作製した。以下にそれぞれの作製手順を示す。
[形状Aをもつ鋳物の作製]
上記原料を、ステンレス(SUS430)製溶解るつぼを用いて溶解した。溶解は、防燃ガスとして微量のSFガスを吹き付けた状態で電気炉を用いて行った。溶湯温度を720℃とした後、30分間炉中にて沈静保持した。るつぼを炉から取り出し、竪型ダイカスト機を用いて、20mm×20mm×48mmのダイカスト鋳物を作製した。鋳造条件は、射出速度0.3m/s、射出圧力:28MPa、加圧時間:5秒、金型温度:室温、射出溶湯温度:液相線温度+30℃、とした。得られたダイカスト鋳物を図1に示す。
なお、後に説明する軸力保持率の測定には、図1に示すダイカスト鋳物(左図)の中央部から切り出したリング状の試験片(右図)を用いた。リング状の試験片は、外径φ20mm、内径φ9mm、高さ10mmとした。
[形状Bをもつ鋳物の作製]
上記原料を、ステンレス(SUS430)製溶解るつぼを用いて溶解した。溶解は、防燃ガスとして微量のSFガスを吹き付けた状態で電気炉を用いて行った。溶湯温度を720℃とした後、30分間炉中にて沈静保持した。るつぼを炉から取り出し、竪型ダイカスト機を用いて、両端に肉厚部、中央部に肉薄部(厚さ3mm)をもつダイカスト鋳物を作製した。鋳造条件は、射出速度1m/秒、射出圧力:64MPa、加圧時間:1秒、金型温度:80℃、射出溶湯温度:液相線温度+50℃、とした。得られたダイカスト鋳物の正面図および側面図を図2に示す。
[評価]
#01〜#10および#C01〜#C10について、軸力保持率の測定および鋳造割れの観察を行い、耐熱性および鋳造性を評価した。結果を表1に示す。
[軸力保持率の測定]
軸力保持率の測定方法を、図3を用いて説明する。軸力保持率の測定には、上記リング状の試験片10、ボルト20およびアルミニウムブロック30が用いられる。
ボルト20としては、鋼製のM8×25(強度区分10.9)の六角ボルトを用いた。アルミニウムブロック30は、ADC12(JIS規格)のアルミダイカスト合金部材とした。アルミニウムブロック30には、ボルト20の軸部21の外周面に形成された雄ねじと螺合する雌ねじをもつねじ孔31を形成した。
測定の際には、ワッシャ15(外径φ18mm、厚さ3mm、A6061−T6)を介して、ボルト20の軸部21を試験片10の挿通孔に挿通するとともに、アルミニウムブロック30のねじ孔31に、初期軸力8kNで締結した。このとき、ボルト20には、軸力を測定するためのひずみゲージ40が固着されており、ボルト20の初期軸力は、このひずみゲージ40により測定した。
ボルト20およびアルミニウムブロック30により締結された試験片10を高温恒温槽に装入し、180℃で300時間高温保持した後、室温まで冷却した。その後、ボルト20の軸力(残留軸力)を測定した。そして、前記した初期軸力に対する残留軸力の割合を算出して、軸力保持率を求めた。なお、軸力保持率は、複数個の平均値として求めた。
表1に示す軸力保持率の値は、汎用アルミニウム合金であるADC12合金の軸力保持率を100としたときの各合金の軸力保持率の割合(ADC12比)である。軸力保持率の割合が80%以上を○、80%未満を×として評価した。
[鋳造割れの観察]
図2に示す形状のダイカスト鋳物を作製し、上部と下部での金型からの拘束により発生する鋳物中央の肉薄部周辺での鋳造割れを観察した。鋳造割れの観察は、型開き直後、型から鋳物を取り出す前に行い、鋳物に発生する割れの有無を目視で確認した。
Al、Ca、Si、SnおよびMnの含有量が所定の値とした#01〜#10は、優れた耐熱性および鋳造性をもつマグネシウム合金であった。なお、Mn含有量が0.25質量%〜0.5質量%の範囲内であれば、#01〜#10と同等の特性を示す。
Al含有量が4.5質量%である#C01は、軸力保持率が非常に低く、耐熱性が低かった。これは、Al−Ca−Mg系化合物の晶出が不足したためである。Al含有量が増加するほど耐熱性は向上する傾向にあり、Alを7.0質量%以上含むことで、軸力保持率が85%以上となるものもあった(#05、#06および#10)。しかし、12質量%のAlを含む#C10は、Al−Ca−Mg系化合物の晶出量が多すぎて延性が低下したため、鋳造割れを起こした。
Al含有量が望ましい範囲にあっても、Al、Ca、SiおよびSnの含有量の関係、b/(a+c+d)の値が0.33の#C02は、耐熱性に影響するAl−Ca−Mg系化合物の生成が不足し、耐熱性が低かった。b/(a+c+d)の値が大きいほど耐熱性は向上する傾向にあり、0.40以上では軸力保持率が80%を超え、0.55以上では85%以上であった。しかし、0.79である#C07には鋳造割れが見られた。また、軸力保持率もそれほど大きくなかった。
また、SiおよびSnの含有量の合計(c+d)の値が1.5である#C06および#C08は、鋳造性が低かった。(c+d)を1.4以下とすれば、鋳造割れは低減されたが、Siおよび/またはSnを含有しない#C03〜05は、鋳造性が低かった。
[組織観察]
#04、#C03〜#C05について、金属組織を観察した。観察結果を図4〜図7に示す。なお、組織観察は、それぞれのダイカスト鋳物の断面に対し、光学顕微鏡を用いて行った。
本発明のマグネシウム合金である#04では、Mg結晶粒(図4において最も明るい部分)と、結晶粒界に晶出したAl−Ca−Mg系化合物と、全体に微細に分散したCa−Si−Sn−Mg系化合物(図4において最も黒い部分)が観察された。これら粒状のCa−Si−Sn−Mg系化合物は、粒径が10μmを超えることがなく、平均粒径は約3.2μmであった。
つまり、Mg−Al−Ca合金にSiとSnとを所定の範囲で同時に添加することで、微細なCa−Si−Sn−Mg系化合物が分散して晶出した#04は、優れた耐熱性と鋳造性を有するマグネシウム合金であった。なお、図示しないが、#01〜#03および#05〜#10においても、すべての組織観察において、10μmを超えるような粒径のCa−Si−Sn−Mg系化合物は見られなかった。
Mg−Al−Ca合金である#C03では、Mg結晶粒と、結晶粒界に晶出したAl−Ca−Mg系化合物と、が観察されたのみであった(図5)。一方、Mg−Al−Ca合金にSiのみを添加した#C04では、粗大なCa−Si−Mg系化合物が観察された(図6)。また、Mg−Al−Ca合金にSnのみを添加した#C05では、粗大なCa−Sn−Mg系化合物が観察された(図7)。粗大な化合物の生成は、鋳造性の低下だけでなく、耐熱性の低下を引き起こした。
すなわち、Mg−Al−Ca−Mn合金にSiとSnとを同時に所定の量添加したマグネシウム合金は、優れた耐熱性および鋳造性をもつマグネシウム合金であることがわかった。
軸力保持率の測定に用いる試験片の切り出し形態を示す説明図である。 耐熱性を評価する試験片の形状を示す正面図(左図)および側面図(右図)である。 軸力保持率の測定方法をしめす説明図であって、各部材の軸方向断面図である。 #04のマグネシウム合金の金属組織を示す図面代用写真である。 #C03のマグネシウム合金の金属組織を示す図面代用写真である。 #C04のマグネシウム合金の金属組織を示す図面代用写真である。 #C05のマグネシウム合金の金属組織を示す図面代用写真である。
符号の説明
10:試験片(マグネシウム合金)
20:ボルト
30:アルミニウムブロック
40:ひずみゲージ

Claims (8)

  1. 全体を100質量%としたとき、アルミニウム(Al)を6質量%以上10質量%以下、カルシウム(Ca)を2.2質量%以上8.0質量%以下、珪素(Si)を0.1質量%以上1.0質量%以下、スズ(Sn)を0.1質量%以上1.0質量%以下、マンガン(Mn)を0.05質量%以上1.0質量%以下含み、残部がマグネシウム(Mg)および不可避不純物からなり、Alの含有量をa質量%、Caの含有量をb質量%、Siの含有量をc質量%、Snの含有量をd質量%としたときに、0.35≦b/(a+c+d)≦0.75かつ0.2≦(c+d)≦1.4であることを特徴とするマグネシウム合金。
  2. SiおよびSnの含有量が、1.0≦(c+d)≦1.4である請求項1記載のマグネシウム合金。
  3. Al、Ca、SiおよびSnの含有量が、0.40≦b/(a+c+d)≦0.75である請求項1記載のマグネシウム合金。
  4. Mg結晶粒と、該Mg結晶粒の結晶粒界に網目状に晶出したAl−Ca−Mg系化合物と、該Mg結晶粒内および/または該結晶粒界に粒状に分散するCa−Si−Sn−Mg系化合物と、からなる金属組織を有する請求項1〜3のいずれかに記載のマグネシウム合金。
  5. 前記Ca−Si−Sn−Mg系化合物は、最大粒径が10μm以下である請求項4記載のマグネシウム合金。
  6. さらに、ストロンチウム(Sr)を1.0質量%以下含む請求項1〜5のいずれかに記載のマグネシウム合金。
  7. さらに、希土類元素(RE)から選ばれる一種以上の元素を合計で1.0質量%以下含む請求項1〜5のいずれかに記載のマグネシウム合金。
  8. 請求項1〜7のうちのいずれかに記載のマグネシウム合金からなることを特徴とするマグネシウム合金鋳物。
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