JP2010069242A - マイクロニードルシート及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 皮膚にすんなりと突き刺すことができ、穿刺後には抜け難いとマイクロニードルシート及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 微小針17は、底面の一辺又は直径が0.1〜1000μmの範囲であり、高さが0.3〜3000μmの範囲の角錐状又は円錐状であり、角錐状又は円錐状の先端部17Aにおいて、角錐状又は円錐状の中心線上にある変曲点から先端に結んだ直線が、中心線から1〜90°の範囲の傾斜角をもつ。
【選択図】 図5
【解決手段】 微小針17は、底面の一辺又は直径が0.1〜1000μmの範囲であり、高さが0.3〜3000μmの範囲の角錐状又は円錐状であり、角錐状又は円錐状の先端部17Aにおいて、角錐状又は円錐状の中心線上にある変曲点から先端に結んだ直線が、中心線から1〜90°の範囲の傾斜角をもつ。
【選択図】 図5
Description
本発明は、マイクロニードルシート及びその製造方法に係り、特に、皮膚表層又は皮膚角質層において、簡便に、安全にかつ効率的に薬品等を注入することが可能なマイクロニードルシート及びその製造方法に関するものである。
従来、生体表面、即ち皮膚や粘膜等より、薬品等を投与する方法としては、主に液状物質又は、粉状物質を付着させる方法が殆どであった。しかしながら、これらの物質の付着領域は、皮膚の表面に限られていたため、発汗や異物の接触等によって、付着している薬品等が除去される場合があり、適量を投与することは困難であった。また、薬品を皮膚の奥深くに浸透させるためには、このような薬品の拡散による浸透を利用した方法では、浸透深さを確実に制御することは困難であるため、十分な薬効を得ることは困難であった。
そこで、ポリマーを材質とした高アスペクト比構造をアレイ状に形成して、その先端を皮膚内に挿入することにより薬品を注入するマイクロニードルシートが提案されている。特許文献1や特許文献2には、ニードル構造の鋳型を作製して、その中に素材を注入し射出成形することにより、マイクロニードルシートを形成することが開示されている。そして、特許文献3には、針状の材料の先を基板上の流動状態の素材に付着・延伸させることで、ニードル構造を形成することが開示されている。
また、形成した微細なニードル形状を皮膚に穿刺する際に先端部が微細であれば相対的に単位面積当たりの応力が増加し、皮膚へ刺さりやすくなることが知られている。
そこで、マイクロニードルの穿刺性を改善するための提案は今まで幾つか提案されており、例えば、特許文献4には、半導体プロセスを用いて高いヤング率を持ったシリコンを加工して針を形成する方法が提案されており、特許文献5には、専用の治具を用いて穿刺しやすくする方法が提案されている。
特開2003−238347号公報
特開2006−51361号公報
特開2006−345983号公報
特表2002−517300号公報
特表2007−529247号公報
しかしながら、特許文献1や2に開示されている方法では、アレイ状の凹金型に対して微細形状の先端まで素材を注入成形できないため、生産性に劣るという問題がある。また、特許文献3の延伸などの方法を用いると均一・高精度な成形が難しく、量産化に適した方法でないという欠点がある。
また、特許文献4の方法では、シリコンは破断しやすく実用が難しく、特許文献5の方法では、穿刺時の応力の分散を防止するために専用の治具が必要になると投与法が複雑になってしまうという問題があり、実際に皮膚に穿刺するための根本的な解決にはなっていない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、皮膚にすんなりと突き刺すことができ、低い製造コスト、高い歩留まりで製造できる微小針のアレイを有するマイクロニードルシート及びその製造方法を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、シート上に多数の微小針がアレイ状に形成されているマイクロニードルシートであって、前記微小針は、底面の一辺又は直径が0.1〜1000μmの範囲であり、高さが0.3〜3000μmの範囲の角錐状又は円錐状であり、該角錐状又は円錐状の先端部において、該角錐状又は円錐状の中心線上にある変曲点から先端に結んだ直線が、前記中心線から1〜90°の範囲の傾斜角をもつことを特徴とするマイクロニードルシートを提供する。
微小針を皮膚に穿刺するときには、針の強度、先端形状などに依存した穿刺力が必要となる。穿刺力が大きすぎると、専用の治具が必要となったり、針が折れてしまうなどの問題が発生してしまう。
本発明によれば、微小針の先端部を1〜90°の範囲の傾斜角をもつように曲げた形状にすることで、垂直方向の応力で皮膚を引き伸ばし刺し易くし、その後に直角方向へ針を進ませることで特別な治具など必要なく、簡易に利用できる穿刺性の優れた(皮膚にすんなりと突き刺すことができる)微細針として利用することができる。また、本発明によれば、穿刺後には抜け難いという効果も得ることができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記先端の曲率半径が100μm以下であることを特徴とする。
請求項2によれば、微小針の先端の曲率半径が100μm以下であることで、より皮膚にすんなりと突き刺すことができるマイクロニードルシートを提供することができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2において、前記変曲点の位置は、前記角錐状又は円錐状の高さhに対して先端からの距離h1がh1/h≦2/3の位置にあることを特徴とする。
請求項3によれば、角錐状又は円錐状の先端部の変曲点の位置が、角錐状又は円錐状の高さhに対して先端からの距離h1がh1/h≦2/3の位置にあることで、垂直に方向の応力で皮膚を引き伸ばし刺し易くし、その後に直角方向へ針を進ませることで皮膚にすんなりと突き刺すことができる微細針を提供することができる。
請求項4に記載の発明は、角錐状又は円錐状の微小針が形成された微小針アレイを形成するスタンパーに、ポリマー樹脂を溶媒に溶解したポリマー溶液を塗布する塗布工程と、剥離工程で曲がりを生じさせるために適度な弾性を持たせるため、前記角錐状又は円錐状の先端部が5〜100%の含水率を持つように乾燥する乾燥工程と、前記乾燥で微小針の形状が形成されたシート状のポリマー樹脂を前記スタンパーから剥離する剥離工程と、を備えたことを特徴とするマイクロニードルシートの製造方法を提供する。
請求項4によれば、マイクロニードルシートの製造方法において、微小針アレイを形成するためのスタンパーに、ポリマー樹脂を溶媒に溶解したポリマー溶液を塗布するポリマー溶液塗布工程と、剥離工程で曲がりを生じさせるために適度な弾性を持たせるため、前記角錐状又は円錐状の先端部が5〜100%の含水率を持つように乾燥する乾燥工程と、先端部が生乾きのシート状のポリマー樹脂をスタンパーから剥離する剥離工程と、によってマイクロニードルシートを製造することで、先端部を1〜90°の範囲の傾斜角をもつように曲げた形状にすることで、垂直方向の応力で皮膚を引き伸ばし刺し易くし、その後に直角方向へ針を進ませることができるので、皮膚にすんなりと突き刺すことのできるマイクロニードルシートを製造することができる。また、このようにマイクロニードルシートを製造することで、低い製造コストおよび高い歩留まりでマイクロニードルシートを提供することができる。
請求項5に記載の発明は、請求項4において、前記剥離工程では、シート状のポリマー樹脂の微小針の先端部が一方向に曲がるように、前記シート状のポリマー樹脂を端部から一方向へ応力をかけて剥離することを特徴とする。
請求項5によれば、剥離工程において、シート状のポリマー樹脂の微小針の先端部が一方向に曲がるように、シート状のポリマー樹脂を端部から一方向へ応力をかけて剥離することで、容易に微小針の先端部を1〜90°の範囲の傾斜角をもつように曲げた形状にすることができる。
請求項6に記載の発明は、請求項5において、前記剥離工程では、粘着ローラで前記シート状のポリマー樹脂を密着させ剥離することを特徴とする。
請求項6によれば、剥離工程において、粘着ローラによってシート状のポリマー樹脂を密着させ剥離することで、シート状のポリマー樹脂を端部から一方向へ応力をかけて剥離することができるので、容易に微小針の先端部を1〜90°の範囲の傾斜角をもつように曲げた形状にすることができる。
請求項7に記載の発明は、請求項4において、前記剥離工程後に、剥離後のポリマー樹脂の前記先端部が自重により曲がりを発生する先端部曲げ工程を有することを特徴とする。
請求項7によれば、剥離工程後に、剥離後のポリマー樹脂の先端部が自重により曲がりを発生する先端部曲げ工程を有することで、容易に微小針の先端部を1〜90°の範囲の傾斜角をもつように曲げた形状にすることができる。
請求項8に記載の発明は、請求項4〜7の何れか1において、乾燥工程での乾燥時間は、前記先端部がゲル状態となっている時間であることを特徴とする。
請求項8によれば、ゲル化するポリマー樹脂の場合には微小針の先端部がゲル状態であるときにスタンパーから剥離することが好ましい。ゲル状態で剥離することで、容易に微小針の先端部を1〜90°の範囲の傾斜角をもつように曲げた形状にすることができる。
以上説明したように、本発明によれば、垂直に方向の応力で皮膚を引き伸ばし刺し易くし、その後に直角方向へ針を進ませることで特別な治具など必要なく、皮膚にすんなりと突き刺すことができ、穿刺後には抜け難いとマイクロニードルシートを提供することができる。また、低い製造コストで、高い歩留まりで微小針のアレイを有するマイクロニードルシート及びその製造方法を提供することができる。
以下本発明の実施の形態におけるマイクロニードルシート及びその製造方法について説明する。図1は、本実施の形態のフローチャートである。
最初に図1に示すステップ102(S102)の原版作製工程を行う。具体的には、図2(a)に示すように、マイクロニードルシートの製造のためのスタンパーを作製するための原版を作製するものである。
この原版11の作製方法は2種類あり、1番目の方法は、Si基板上にフォトレジストを塗布した後、露光、現像を行い、RIE(リアクティブイオンエッチング)等によるエッチングを行うことにより、原版11の表面に円錐の形状部12のアレイを作製する。尚、RIE等のエッチングを行う際には、Si基板を回転させながら斜め方向からのエッチングを行うことにより、円錐の形状を形成することが可能である。
2番目の方法は、Ni等の金属基板に、ダイヤモンドバイト等の切削工具を用いた加工により、原版11の表面に四角錐等の形状部12のアレイを形成する方法がある。
次に、図1に示すステップ104(S104)のスタンパー作製工程を行う。具体的には、図2(b)に示すように、原版11よりスタンパー13を作製する。通常のスタンパー13の作製には、Ni電鋳等による方法が用いられるが、原版11は、先端が鋭角な円錐形又は角錐形の形状を有しているため、スタンパー13に形状が正確に転写され剥離することができるように、本実施の形態では、安価に製造することが可能な3つの方法による方法が考えられる。
1番目の方法は、原版11にPDMS(ポリジメチルシロキサン、例えば、ダウコーニング社製のシルガード184)に硬化剤を添加したシリコーン樹脂を流し込み、100℃で加熱処理し硬化した後に、原版11より剥離する方法である。2番目の方法は、紫外線を照射することにより硬化するUV硬化樹脂を原版11に流し込み、窒素雰囲気中で紫外線を照射した後に、原版11より剥離する方法である。3番目の方法は、ポリスチレンやPMMA(ポリメチルメタクリレート)等のプラスチック樹脂を有機溶剤に溶解させたものを剥離剤の塗布された原版11に流し込み、乾燥させることにより有機溶剤を揮発させて硬化させた後に、原版11より剥離する方法である。
このようにして作製されたスタンパー13を図3(c)に示す。尚、上記3つのいずれの方法においてもスタンパー13は、何度でも容易に複製することが可能である。
次に、図1に示すステップ106(S106)のポリマー溶液塗布工程を行う。具体的には、上記のスタンパー作製工程において作製したスタンパー13の微小針に対応した凹凸パターンの形成された面にポリマー樹脂を溶解した溶液を塗布する。この中には、投薬する薬品を適量混入させることができる。
このようなポリマー樹脂を溶解した溶液の塗布を行うための具体的な方法は、スピンコーターを用いた塗布方法が挙げられる。尚、スタンパー13に形成されている微小針を形成するため凹部には、空気の存在によりポリマー樹脂を溶解した溶液が奥まで入り込まない場合が考えられ、この工程は減圧状態において行うことが望ましい。ステップ106におけるポリマー溶液塗布工程は、図2に示すマイクロニードルシートの製造装置30の溶液塗布部32において行われる。
ところで、マイクロニードルシートに形成される微小針(微細な凸部)の形状は、薬品の浸透性を高めるため微小針を皮膚表面に数100μmの深さで刺すために、(1)先端が充分に尖っていて、皮膚内に入る針の径も充分に細い(長さ/径のアスペクト比が高い)こと、(2)充分な強度がある(針が折れ曲がったりしない)こと、が必要である。
そのため、(1)の用件を満たすためには、細くて尖った形状が必要であるが、これは(2)に相反し、細すぎると先端や根元で折れ曲がってしまい、太すぎると刺さらないため、微小針は、微小針内側に湾曲した形状とすることが好ましい。このような形状とすることにより、先端を充分に尖らせる一方で、根元を広げることにより、折れにくくすることができる。
微小針の形状は底面の一辺が0.1μm以上1000μm以下の範囲であり、高さが0.3μm以上3000μm以下であることが好ましい。より好ましくは、一辺が10μm以上400μm以下の範囲であり、高さが30μm以上1200μm以下である。
また、微小針の穿刺の際の刺さり易さである穿刺力を決定する微小針先端の曲率半径Rが100μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以下である。
なお、円錐状の場合においては、底面の直径が0.1μm以上1000μm以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは50μm以上300μm以下の範囲である。
上記のように、マイクロニードルアレイは微小な凸部アレイであり、皮膚表面に刺さりやすくするため、凸部先端を充分に尖らせ、凸部先端の曲率半径Rを100μm以下とすることが好ましい。
塗布に用いられるポリマー樹脂は、水溶性であることが好ましく、特に、ゼラチン、アガロース、マルトース、ペクチン、ジェランガム、カラギナン、キサンタンガム、アルギン酸、デンプン等の粉体を温水で溶解したポリマー樹脂であることが好ましい。濃度は材料によっても異なるが、20〔%〕程度が好ましい。尚、溶解に用いる溶媒は、温水以外であっても揮発性を有するものであればよく、例えば、アルコール等を用いることも可能である。ポリマー樹脂は溶解後に薬品を添加してもよい。溶解液は、例えば30〜60〔℃〕とし、耐熱性のない薬品の添加もできる。
また、塗布に用いられるポリマー樹脂は、例えば、アクリルやポリスチレンなど医療用途で使用されているポリマー樹脂をMEKなどの溶媒で溶解してもよい。
ポリマー溶解液を、スタンパーの表面へ塗布するには、滴下装置で滴下し、溶液自体の流動性により塗布することが好ましい。また、スピン塗布のように、スタンパーを回転させ均一に塗布することも好ましく、バーコーターなどを用いて均一に塗布することも好ましい。なお、孔の径が数ミクロン〜数100μm、アスペクト比が1以上の微細形状であると素材が塗布だけでは充填されない。そこで、周囲の圧力条件を変化させ、強制的に注入することが必要となる。例えば、周囲の枠と一体型で作成したシリコーンゴムの樹脂スタンパーをプレス機などで加圧し溶液を加圧・加熱することでポリマー溶液を注入したり、ポリマー溶液を塗布後に加熱・減圧下に置くことで内部に残った気泡を除去したり、溶融した粘度の高い素材(例えばマルトース)などをシリコーンゴムのスタンパーに直接プレスすることで孔内に残存した空気をスタンパーより気泡を除去してポリマー溶液を注入することが考えられる。
図1に示すステップ108(S108)のポリマー溶液乾燥工程を行う。具体的には、塗布されたポリマー樹脂を溶解した溶液に温風を吹付けることにより、予めポリマー溶液が乾燥して硬化する乾燥時間Tを求めておき、微小針の先端部が生乾きになるように乾燥時間Tよりも短い時間乾燥させる。
一つの方法は、最初に10〜15〔℃〕の冷風を吹きつけ、表面をゲル化させた後、10〜20〔m/s〕の温風を吹付ける。この温風は、除湿した温風が好ましく、例えば、40〜60〔℃〕、相対湿度15〔%〕以下、より好ましくは10〔%〕以下であることが好ましい。
また、低湿度の冷風を流すことにより塗布されたポリマー樹脂を溶解した溶液をゲル化させることができる。この場合、完全にゲル化させるために10〜15〔℃〕の冷風を上記の場合よりも長時間吹付け、この後、上記と同様に温風を吹付ける。又、この場合において、この後の乾燥させるために高温の温風を流す際には、温風の温度が高すぎると、ポリマー樹脂を溶解した溶液におけるゲル化が戻ってしまったり、薬品によっては加熱により分解等により効能が変化したりするため、吹付ける温風の温度には注意を要する。このように、塗布されたポリマー樹脂を溶解した溶液を微小針の先端部が生乾きにさせて、図3(a)に示すポリマー樹脂14を得る。生乾きにするには、例えば、予め塗布されたポリマー溶液が乾燥して硬化する乾燥時間を求めておき、それよりも短い時間まで乾燥するようにする。
次に、図1に示すステップ110(S110)の剥離工程を行う。具体的には、例えば図3(b)に示すように、先のポリマー溶液乾燥工程において、スタンパー13上で先端部が生乾きであるよう乾燥したポリマー樹脂14の上に、粘着性の粘着層が形成されているシート状の基材であるPET(ポリエチレンテレフタレート)シート15を付着させた後、剥離を行う。このようにして、図3(c)に示すように、シート状のポリマー樹脂14が剥離される。
剥離されたシート状のポリマー樹脂14は、図4(a)に示すように、微小針17の先端部17Aが生乾きである。具体的には、ポリマー樹脂がゲル化する場合には、微小針の先端部がゲルである状態であり、ポリマー樹脂がゲル化しない樹脂の場合には、材料(ポリマー樹脂)内の含水率が5〜100%の状態である。
このように生乾きである先端部17Aは、自重と、場合に依っては乾燥風の力と、によって図4(b)に示すように曲がりが生じる。そして、この曲がりを維持した状態で乾燥させることで図4(c)に示すような本発明のマイクロニードルシートを得ることができる。即ち、微小針17の先端部17Aが、該角錐状又は円錐状の中心線上にある変曲点から先端に結んだ直線が、その中心線から1〜90°の範囲の傾斜角をもつマイクロニードルシートを得ることができる。
なお、変曲点の位置は、角錐状又は円錐状の高さhに対して先端からの距離h1がh1/h≦2/3の位置にあることが好ましい。なお、ここで、hは垂直に立ったときの中心線上の頂点と底部との距離であり、h1は垂直に立ったときの中心線上の頂点と変曲点との距離である(後述する図5参照)。
角錐状又は円錐状の先端部の変曲点の位置が、角錐状又は円錐状の高さhに対して先端からの距離h1がh1/h≦2/3の位置にあることで、垂直方向の応力で皮膚を引き伸ばし刺し易くし、その後に直角方向へ針を進ませることで皮膚にすんなりと突き刺すことができる。
図5は、本発明のマイクロニードルシートを説明するための図である。なお、図5では、角錐状の微小針17を示しているが、円錐状の微小針についても同様に成り立つ。図5(a)に示すように、角錐の中心線上にある変曲点から先端部17Aの頂点に結んだ直線と中心線とで成す角度θが1〜90°の範囲になるように本発明のマイクロニードルシートの微小針17は形成される。図5(b)は、従来のマイクロニードルシートの微小針17であり、角錐の頂点は中心線から角度を持っていない。
このように形成された本発明のマイクロニードルシートの効果は、微細針を皮膚に穿刺するときの穿刺力の低減がある。
針を皮膚に穿刺するときには針の強度、先端形状などに依存した穿刺力が必要となる。
穿刺力が大きすぎると、専用の治具が必要となったり、針が折れてしまうなどの問題が発生してしまう。本発明では、先端部を曲げた形状にしたことで垂直に方向の応力で皮膚を引き伸ばし刺し易くし、その後に直角方向へ針を進ませることで特別な治具など必要なく、簡易に利用できる穿刺性の優れた微細針として利用することができる。また、穿刺後に抜けづらい構造にすることも可能である。
穿刺力が大きすぎると、専用の治具が必要となったり、針が折れてしまうなどの問題が発生してしまう。本発明では、先端部を曲げた形状にしたことで垂直に方向の応力で皮膚を引き伸ばし刺し易くし、その後に直角方向へ針を進ませることで特別な治具など必要なく、簡易に利用できる穿刺性の優れた微細針として利用することができる。また、穿刺後に抜けづらい構造にすることも可能である。
また、先端部に曲がりを持った形状をモールド作成しインプリント、射出などで形成しようとすると先端部が型からはがれず、シート状に形成できないという課題がある。そこで今回はキャストインプリントで成形した材料を硬化工程で先端部分の含水率を制御し水分を残した状態で剥離することで先端部の材料強度を低く保ち、剥離後自重で曲げる先端部曲げ工程によって一定の角度で均一な方向性をもった先端部を安定的に形成することができる。
図6は、従来のマイクロニードルシートと本発明のマイクロニードルシートとを皮膚に刺すときの様子を示した図である。
従来のマイクロニードルシートで単純に皮膚に垂直方向で穿刺した場合は、皮膚全体に張力が分散してしまい結果として穿刺力が多く必要になる。一方本発明のマイクロニードルシートの場合は、応力分散が起こらず、必要な部分だけに集中し穿刺力が低減できる。
通常、本実施の形態のように、アスペクト比の高い微小針の構造のものをスタンパー13から剥離する場合では、接触面積が大きいことから、強い応力がかかり、微小針が破壊されスタンパー13から剥離されることなくスタンパー13内に残存し、作製されるマイクロニードルシート16は致命的な欠陥を有するものとなってしまう。この点を踏まえ、スタンパー13を構成する材料は、剥離が非常にしやすい材料により構成することが好ましい。また、スタンパー13を構成する材料を弾性が高く柔らかい材料とすることにより、剥離する際における微小針にかかる応力を緩和することができる。以上の観点より、スタンパー13を構成する材料としては、シリコーン樹脂等の弾性変形しやすい材料が好ましい。
なお、剥離後のポリマー樹脂の先端部を自重により曲がりを発生する先端部曲げ工程を行う代わりに、剥離工程で、図7(a)に示すように、シート状のポリマー樹脂の微小針の先端部が一方向に曲がるように、シート状のポリマー樹脂を端部から一方向へ応力をかけて剥離することでも、容易に微小針の先端部を1〜90°の範囲の傾斜角をもつように曲げた形状にすることができる。
また、図7(b)に示すように、粘着ローラ20でシート状のポリマー樹脂を密着させ剥離することでも、シート状のポリマー樹脂を端部から一方向へ応力をかけて剥離することができるので、容易に微小針の先端部を1〜90°の範囲の傾斜角をもつように曲げた形状にすることができる。
尚、ポリマー樹脂14の表面の微小針17に残存している水分を蒸発させるために、剥離後に、再度乾燥した風を吹付ける場合もある。具体的には、梱包する直前において、ポリマー樹脂内の水分量を10〔%〕以下、望ましくは5〔%〕以下とした後に梱包することが好ましい。
また、スタンパー13は複数回利用することが可能であることから、ステップ110の剥離工程後のスタンパー13を用いて、ステップ106のポリマー溶液塗布工程、ステップ108のポリマー溶液乾燥工程、ステップ110の剥離工程を繰り返すことにより、複数のマイクロニードルシート16を短時間に低コストで複数作製することができる。尚、スタンパー13は永久的に使用することができるものではないため、使用することができなくなった場合には、ステップ104のスタンパー作製工程を行うことにより作製可能である。
このように、シート表面に多数の角錐状又は円錐状の微小針が形成された微小針アレイを有するマイクロニードルシートの製造方法において、微小針アレイを形成するためのスタンパーに、ポリマー樹脂を溶媒に溶解したポリマー溶液を塗布するポリマー溶液塗布工程と、剥離工程で曲がりを生じさせるために適度な弾性を持たせるため、前記角錐状又は円錐状の先端部が5〜100%の含水率を持つように乾燥する乾燥工程と、シート状のポリマー樹脂をスタンパーから剥離する剥離工程と、によってマイクロニードルシートを製造することができ、先端部を1〜90°の範囲の傾斜角をもつように曲げた形状にすることで、垂直に方向の応力で皮膚を引き伸ばし刺し易くし、その後に直角方向へ針を進ませることができるので、皮膚にすんなりと突き刺すことのできるマイクロニードルシートを製造することができる。また、このようにマイクロニードルシートを製造することで、低い製造コストおよび高い歩留まりでマイクロニードルシートを提供することができる。
なお、実際のマイクロニードルシート16の製造には、スタンパー13を複数用意しておき、同時に製造を行うことにより、高い生産性で製造を行うことができる。
〔実験1〕
実験1では、Niからなる金属板に、ダイヤモンドバイトによる切削加工を行い、角錐の形状部12の底辺が200〔μm〕、高さが400〔μm〕、ピッチが1000〔μm〕である四角錐アレイの形成された原版11を作製した。
実験1では、Niからなる金属板に、ダイヤモンドバイトによる切削加工を行い、角錐の形状部12の底辺が200〔μm〕、高さが400〔μm〕、ピッチが1000〔μm〕である四角錐アレイの形成された原版11を作製した。
この原版11にシリコーン樹脂(PDMS)を流し込み硬化させ、図2(c)に示す原版11とは反転形状のスタンパー13を作製する。
ゼラチンを水に溶かし、攪拌し膨潤させた後、50〔℃〕に加熱・溶解させてゼラチン濃度20〔%〕のポリマー樹脂を溶解した溶液を作製する。この溶液をスピンコーターによりスタンパー13の凹凸の形成されている面に塗布する。この溶液には投与される薬品が適量混入されている。この際、減圧チャンバー等において、減圧状態において行う。スタンパーの枠をプレス機でプレスし(0.5Mpa,60℃,2min)、溶解した樹脂溶液を加圧することで孔内に残存した空気をスタンパー材の高い空気透過性により気泡を除去した。
ゼラチンを水で溶かしたポリマー樹脂を溶解した溶液を塗布したものを、下記表1に記載の乾燥時間で、50〔℃〕、相対湿度50〔%〕、低風量〔0.5m/s〕で乾燥させ、剥離した。なお、粘着層の形成されている厚さ120〔μm〕のPETシートをスタンパー13上の固化したポリマー樹脂14に付着させ粘着させた後、図7(b)に示した粘着ローラ20により端部より、固化したポリマー樹脂14をめくるように剥離した。この後、室内で放置乾燥した。
表1に示したように、乾燥時間を変化させることで、先端部の曲がりの形状制御が可能であることが確認できた。
〔実験2〕
皮膚への穿刺試験として、擬似皮膚を用いた穿刺力の測定、及び、引き抜き力の測定を行った。
皮膚への穿刺試験として、擬似皮膚を用いた穿刺力の測定、及び、引き抜き力の測定を行った。
ここで、擬似皮膚は、一般に注射練習用に用いられているものを購入し設置した。また、穿刺力測定には、引張・圧縮試験機にマイクロニードルシートを固定する治具を取り付け、針が上下したときに穿刺力・引き抜き力を定量化し測定できる装置を作成し、データ測定を行った。この測定の際のサンプルは、上記実験1のサンプルNo.1〜5のマイクロニードルシートを用いた。
表2から分かるように、1〜90°の範囲の傾斜角をもつ微小針では、皮膚への穿刺力が低減されていることが確認できた。
また、表3から分かるように、1〜90°の範囲の傾斜角をもつ微小針では、皮膚からの引き抜き力が増加されていることが確認できた。
以上、本発明に係るマイクロニードルシート及びその製造方法について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行うことが可能である。
11…原版、12…円錐又は角錐の形状部、13…スタンパー、14…ポリマー樹脂、15…PETシート、16…マイクロニードルシート、17…微小針、17A…微小針の先端部、20…粘着ローラ
Claims (8)
- シート上に多数の微小針がアレイ状に形成されているマイクロニードルシートであって、
前記微小針は、底面の一辺又は直径が0.1〜1000μmの範囲であり、高さが0.3〜3000μmの範囲の角錐状又は円錐状であり、
該角錐状又は円錐状の先端部において、該角錐状又は円錐状の中心線上にある変曲点から先端に結んだ直線が、前記中心線から1〜90°の範囲の傾斜角をもつことを特徴とするマイクロニードルシート。 - 前記先端の曲率半径が100μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロニードルシート。
- 前記変曲点の位置は、前記角錐状又は円錐状の高さhに対して先端からの距離h1がh1/h≦2/3の位置にあることを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロニードルシート。
- 角錐状又は円錐状の凹部が形成された微小針アレイを形成するスタンパーに、ポリマー樹脂を溶媒に溶解したポリマー溶液を塗布する塗布工程と、
剥離工程で曲がりを生じさせるために適度な弾性を持たせるため、前記角錐状又は円錐状の先端部が5〜100%の含水率を持つように乾燥する乾燥工程と、
前記乾燥で微小針の形状が形成されたシート状のポリマー樹脂を前記スタンパーから剥離する剥離工程と、を備えたことを特徴とするマイクロニードルシートの製造方法。 - 前記剥離工程では、シート状のポリマー樹脂の微小針の先端部が一方向に曲がるように、前記シート状のポリマー樹脂を端部から剥離することを特徴とする請求項4に記載のマイクロニードルシートの製造方法。
- 前記剥離工程では、粘着ローラで前記シート状のポリマー樹脂を密着させ剥離することを特徴とする請求項5に記載のマイクロニードルシートの製造方法。
- 前記剥離工程後に、剥離後のポリマー樹脂の前記先端部が自重により曲がりを発生する先端部曲げ工程を有することを特徴とする請求項4に記載のマイクロニードルシートの製造方法。
- 前記乾燥工程での乾燥時間は、前記先端部がゲル状態となっている時間であることを特徴とする請求項4〜7の何れか1に記載のマイクロニードルシートの製造方法。
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-
2008
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