JP2010067345A - 光ディスク装置及び試し書き方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】PRML回路からエラーパルスを発生させ、従来装置との再生互換を持たせる。
【解決手段】ヘッドから出力された再生信号50はアナログ等化器11により等化処理され, A/Dコンバータ12によりクロックごとにサンプルされ、FIRフィルター13でデジタル等化処理された後,PRMLデコーダ14により2値化される。一方、エラーパルスについては,A/Dコンバータ12の出力信号からエッジレベル検出器21でエッジ点のレベルを検出し、エラーパルス発生器22で,エッジ点のレベルとエラーパルス検出しきい値を比較してエラーパルス52を発生する。
【効果】従来のエラーパルスを用いた試し書き機能を搭載する光ディスク装置で,高速化のためにPRML再生方式を搭載した場合にもエラーパルスによる試し書きがそのまま継続的に実施できる。
【選択図】図1
【解決手段】ヘッドから出力された再生信号50はアナログ等化器11により等化処理され, A/Dコンバータ12によりクロックごとにサンプルされ、FIRフィルター13でデジタル等化処理された後,PRMLデコーダ14により2値化される。一方、エラーパルスについては,A/Dコンバータ12の出力信号からエッジレベル検出器21でエッジ点のレベルを検出し、エラーパルス発生器22で,エッジ点のレベルとエラーパルス検出しきい値を比較してエラーパルス52を発生する。
【効果】従来のエラーパルスを用いた試し書き機能を搭載する光ディスク装置で,高速化のためにPRML再生方式を搭載した場合にもエラーパルスによる試し書きがそのまま継続的に実施できる。
【選択図】図1
Description
本発明は,記録媒体上に物理的性質が他の部分とは異なる記録マークを形成し,情報を記録する光ディスク装置に関する。
書き換え型の相変化光記録材料を用いたDVD-RAM,DVD-RW等光ディスク媒体は広く一般に普及している。これらの高密度光ディスクに情報を記録する場合には,一般に「試し書き」と呼ばれる記録レーザ光のパワー及びパルス条件の適正化が重要である。
一般に,光ディスクに記録された信号の品質評価にはデータエッジとクロックエッジのずれの標準偏差であるジッターを用いている。ジッター値を測定するには,専用のジッターアナライザー等の測定器が必要である。光ディスク装置に高価なジッターアナライザーを内蔵することは不可能であるので,これに替わる信号評価指標が必要であった。
従来の試し書き技術の例として,特開平10−320777公報ではジッター値を直接測定するのではなく,データエッジとクロックエッジの位相差が所定の値以上になった場合にエラーパルスと呼ばれる論理パルスを発生し,エラーパルスの数をカウントすることで,等価的にジッター値を評価し,これを用いて,記録パワーの適正化をする技術が開示されている。
また,国際公開番号WO01/011614公報では,前後のスペース長とマーク長に応じたテーブル参照型の適応的な記録ストラテジを用いた4.7GB DVD-RAM用の試し書き技術が開示されている。この中で,エラーパルスを記録ストラテジのテーブルに対応させて仕分け処理を施し,テーブル各項のエラーパルス値が最小になるように,記録レーザ光のパルス条件を適正化している。実際の仕分け処理は4x4のテーブルが2つ必要であるが,信号評価にエラーパルスという論理パルスを用いているので,論理LSIによって,簡便に仕分け処理が実現できることが特長である。
前述のように,DVDの普及が進んだ現在においては,記録/再生速度の高速化が最重要な技術開発課題になってきている。高速に信号を再生するとノイズの影響が大きくなるため,再生信号の2値化方式として,従来のダイレクトスライスの替わり,実効的にS/N比を向上するRML(Partial Response Maximum Likelihood)再生方式が必須になってきている。PRML方式では,A/Dコンバータを使って再生信号をクロックごとにデジタル化する処理が必要であり,必然的にPLL回路も従来のアナログ方式からデジタル方式になる。デジタル方式のPLLでは,データエッジとクロックエッジの位相差を直接比較するのではなく,エッジ点での再生信号のレベルがゼロに近づくようにVCO(Voltage Controlled Oscillator)回路を動作させる。従来のエラーパルス発生回路は,アナログ方式のPLLの位相誤差検出回路を応用したものであるため,デジタル方式のPLLに対応することができなかった。
このように PRML方式とデジタルPLLを採用すると,従来のエラーパルスの生成回路が機能しなくなる。エラーパルスに変わる新たな信号評価指標を導入すると,従来開発してきた論理LSIの構成及び,制御プログラムの資産を有効に活用できなくなるという問題が生じる。
また,PRML方式では,再生信号のエッジの位置だけでなく,信号全体を目標信号と比較して最も確からしいデータ列を逐次選択するように2値化を実施する。この場合に,目標信号を生成するために,PRクラスと呼ばれる2個から5個程度の数値列を用いる。PRクラスは,再生信号のインパルスレスポンスを数値列に近似したものである。DVD用のPRクラスとしては,PR(3,4,4,3)ML方式がよく知られている。ところが,PRクラスはあくまで,インパルスレスポンスの近似であるため,例えばPR(3,4,4,3)MLデコーダを使ってビットエラー率や, SAM(Sequenced Amplitude Margin)やMLSE(Msximum Likelihood Sequensed Error)などのPRML方式特有の信号評価指標を用いて,これらを最良にするように記録パルスやパワーを決定すると,DVD規格で定められた波形等化条件と異なるため
,従来装置で再生した場合にジッター値が大きくなって,光ディスク装置間の再生互換性能が損なわれる問題が生じる。
,従来装置で再生した場合にジッター値が大きくなって,光ディスク装置間の再生互換性能が損なわれる問題が生じる。
また,記録型DVD媒体としては,DVD-RAM/DVD-R/DVD-RW/DVD+R/DVD+RWがあり,1つのドライブ装置で各ディスクに対応して記録再生を可能にすることが望まれる。これらの規格に定義されるリファレンスドライブ用のヘッドの開口数はDVD-RAM/DVD-R/DVD-RWが0.60, DVD+R/DVD+RWが0.65と異なっている。ドライブ装置に搭載される1台の光ヘッドで,これらの全てのディスクに対応するためには,開口数をどちらかに選択する必要がある。一般的に,大きい方の開口数0.65を採用して,小さなスポットサイズで記録再生することが,信号品質や高速記録時の記録パワーの効率等から考えて,自然である。この場合,DVD-RAMの試し書きを実施する場合には,NA0.60の光ディスク装置で再生してジッタ値が良好になるように,NA0.65の光ヘッドを使って記録パルスの条件を適正化する必要が生じるようになる。
本発明の目的は,DVDの高速化に対応してPRML方式を導入した光ディスク装置であって,高精度な試し書き機能をもった光ディスク装置を提供することにある。このために本発明が解決しようとする課題は,以下の2点である。
(課題1)PRML回路からエラーパルスを発生させ,従来の論理LSI資産と制御ソフトウェア資産を有効活用できるようにする。
(課題2)PRMLクラスやヘッドの開口数に依存した試し書きを実施して,従来装置で再生した場合のジッター値が悪化し,再生互換性能が損なわれることがないようにする。
(課題1)PRML回路からエラーパルスを発生させ,従来の論理LSI資産と制御ソフトウェア資産を有効活用できるようにする。
(課題2)PRMLクラスやヘッドの開口数に依存した試し書きを実施して,従来装置で再生した場合のジッター値が悪化し,再生互換性能が損なわれることがないようにする。
初めに(課題1)を解決する手段について説明する。
図2はエラーパルスの検出原理を模式的に示したものである。2値化のための検出窓幅Twはクロックパルスの周期と同じある。エラーパルス検出窓幅はTwよりも狭くする。これにより,エッジシフト分布(=ジッター分布)の中で,エラーパルス検出窓よりも外に出ているエッジがエラーパルスに変換される。したがって,エラーパルス(論理パルス)を最小にするようにすれば,エッジシフトが最小な記録パルス条件を得ることができる。
図3はPRML方式に対応して,再生信号をクロックごとにサンプルしてデジタル変換したデータ列に対して,エラーパルスの生成条件を示したものである。図ではエッジレベルをゼロとしている。再生信号がクロックごとにサンプルされているため,エッジシフトが大きくなると,エッジ点でのサンプルレベルの絶対値が大きくなる。したがって,エラーパルスを生成するには,エッジ点でのサンプルレベルの絶対値をしきい値と比較すればよい。PRMLではクラス数の選択によって,再生信号のエッジ位置をサンプルする場合(図中のケース1)と半クロック分だけずれてサンプルする場合(図中のケース2)がある。それぞれの場合について,エッジの検出条件とエラーパルスの生成条件を以下にまとめる。ここで,“i”番目にサンプルされた再生信号をy[i],エッジレベルをゼロ,エラーパルスの生成するためのレベルのしきい値をVthとする。
(ケース1)エッジ点がサンプル点の場合エッジ検出条件:y[i-1] x y[i+1] < 0エラーパルス生成条件:|y[i]|>Vth
(ケース2)エッジ点が2つのサンプル点の間にある場合エッジ検出条件:y[i-1] x y[i] < 0エラーパルス生成条件:|(y[i-1]+y[i])/2|>Vthケース2においては,エッジレベルを直接サンプルしていないので,エッジレベルは2つのサンプル点のレベルの平均値として扱っている。こうした手法によって,基本的にエッジシフトがしきい値よりも大きい場合にそのエッジに対応したエラーパルスを1つ発生するという目的が実現できる。
(ケース2)エッジ点が2つのサンプル点の間にある場合エッジ検出条件:y[i-1] x y[i] < 0エラーパルス生成条件:|(y[i-1]+y[i])/2|>Vthケース2においては,エッジレベルを直接サンプルしていないので,エッジレベルは2つのサンプル点のレベルの平均値として扱っている。こうした手法によって,基本的にエッジシフトがしきい値よりも大きい場合にそのエッジに対応したエラーパルスを1つ発生するという目的が実現できる。
図4はサンプルされた再生信号データ列と2値化信号(以下NRZ信号と呼ぶ)とエラーパルスについて,発明の理解を深めるためにより詳細に示した模式図である。再生信号はA/D変換される前にAGC(Automatic Gain Control)回路によって,±1に規格化されているものとする。図では8T-3T-3T-3T-4T-3Tパターンにおいて,4Tマークの後エッジのシフトが大きい場合について示している。上の説明では,サンプルレベルの絶対値としきい値Vthを比較する例を示したが,ここではしきい値を±Vthとして,エッジ点でのサンプルレベルがこの範囲外になった場合に1Tw幅のエラーパルスを発生すると表現している。NRZ信号については,慣例に従ってマークを“1”,スペースを“0”としており,再生信号は反射率が小さい方がマークである。これらは,DVD-RAMに用いられる相変化光ディスクの一般的な特性に合わせて図示してある。4Tマークの後エッジにおいて,サンプル点がVthよりも大きくなっており,ここで1Tw幅のエラーパルスが生成される。エラーパルスの幅については,DVDの最小ランレングスが3Twなので2Twとしてもよい。
図5にエラーパルスの発生回路の構成を示す。再生信号50はDVDの標準のアナログ等化器11により等化処理されたのち,A/Dコンバータ12によりクロックごとにサンプルされる。エッジレベル検出器21は上に示したエッジ条件を満たすエッジ点のレベルを検出し,エラーパルス発生器22は,検出されたエッジ点のレベルとエラーパルス検出しきい値54を比較してエラーパルス52を発生する。
次に,しきい値Vthについて説明する。Vthの値としては,データエッジのシフトを反映したものでなくてはならない。
図6はDVD-RAMの再生信号のアイ・パターンを示している。これはスカラー回折シミュレータを用いて算出したものである。図6(a)は光ヘッドから出力される再生信号である。マーク長さによって,エッジ位置が異なるため,全体としてシフトが大きく良好に2値化することができない。図6(b)はDVD-RAMの標準等化条件である3-TapFIRフィルター(タップ係数=[-0.3, 0, 1.6, 0, -0.3])と6次ベッセルフィルターにより,等化処理した再生信号である。エッジシフトが大幅に改善されていることがわかる。
このように,適正な波形等化によりエッジシフトを改善した信号では,マーク長さによらずエッジ位置が一致する。このとき,エッジ点の付近では,再生信号の傾きも揃っていることに注目すると,エラーパルスのしきい値Vthの設定方法を簡便に求めることができる。
図7は等化処理した再生信号に最小ランレングスである3T繰り返し信号を正弦波近似したものを重ねたものである。適正な等化処理が施されているので,エッジ点付近での再生信号の傾きが揃っており,マーク長さによらずエッジ点付近での再生信号を正弦波近似することができる。エッジ点付近での再生信号を正弦波近似すると,エラーパルス検出窓幅(時間方向)とエラーパルス検出しきい値Vth(レベル方向)の関係を一意に定めることができる。
図8は,エラーパルス検出窓幅とエラーパルス検出しきい値の関係を示す図である。検出しきい値Vthは再生信号の片側振幅をSopで規格化してある。前述のようにAGC回路によって信号振幅が±1に規格化されている場合には,Sop=1である。また,最密信号(3Tw)と最疎信号(14Tw)の信号振幅の比率を分解能と定義して,分解能が10%から100%の場合については関係を図示してある。DVDの場合には,分解能が30%から60%の範囲にあり,特開平10−320777公報を参考にすると,検出窓幅は40%から60%の範囲が適正であると言える。したがって,図中でハッチングした領域が標準的な検出しきい値Vth/Sopは0.08から0.18の範囲で設定すればよい。
以上,エラーパルスの発生方法の原理と回路構成及び検出しきい値の設定範囲について説明した。これにより(課題1)を解決することができた。
次に(課題2)を解決する手段について説明する。ここでは,対物レンズの開口数が0. 65の光ヘッドを用いて,DVD-RAMディスクの適正な記録条件を算出する方法を例にして,解決手段を述べる。
図9は対物レンズの開口数0.60と0.65の装置でDVD-RAMの再生信号を比較したものである。ここでは,市販の2倍速DVD-RAMディスクを用い,記録条件は開口数0.60の装置でジッター値が最小になるように調整した。図の再生信号は,グルーブに初回記録した信号をDVD-RAMの標準等化条件で等化処理した結果のアイ・パターンである。開口数0.60の装置の再生信号はジッター値5.2%,分解能37%であった。同じセクターを開口数0.65の装置で再生すると,ジッター値6.0%,分解能61%となった。再生信号の違いは開口数の違いにより光スポットの形状が異なることに起因している。どちらもジッター値が良好なため,ECCエラー(PIエラー)はどちらもゼロで,信号の再生については問題がない。図中には,前後エッジの4x4パターンに対するエッジシフトの測定値を表にして示してある。開口数0.60の装置の場合,これで記録条件調整をしたため,各エッジシフトが5%/Tw以下である。
一方,開口数0.65の装置で再生するとエッジシフトの最大値が8%に増加する。図中のハッチングは,両者のエッジシフトの差が5%/Tw以上になったエッジを示している。ここで,問題は開口数0.65の装置で記録条件調整をする場合である。同様に,各パターンのエッジシフトが最小になるように記録条件を調整すると,標準の開口数0.60の装置で再生した場合のシフトが大きくなり,再生信号の品質が低下してしまう。
この問題を解決する手段を示す前に,エッジシフトの差の許容値について示す必要がある。
図10はエッジシフトの許容値を求めた結果を示している。図9において,開口数の違いによるエッジシフト量の差は3Tマークと3Tスペースを含むパターンで大きくなっており,光スポットの大きさの違いを反映したものになっている。だたし,3Tマーク-3Tスペースパターンでは,エッジシフトの差が小さい。これは,3T-3T繰り返し信号は正弦波状であるため,振幅は変化するが,スポットサイズが変わってもエッジ位置が変わらないことに依存している。そこで,図10(a)に示すように,前後エッジのパターンで,ハッチングした箇所のみのエッジをシフトさせて実験と計算を比較した。図中の”+”,”−“はシフトの方向を示しており,光スポットの大きさが小さくなって分解能が変化した場合のエッジシフトの方向を示している。記録するデータパターンはDVD-RAM規格に沿った8-16変調の信号であり,シフトさせるエッジの頻度はそれぞれ21%(R+,R-),シフト量をそれぞれΔ+,Δ-(今回はΔσ+=Δσ-),各エッジの平均的な揺らぎのジッタ値をσ0とすると,マルチガウス分布の合成ジッタσtotは
σtot = Sqrt(σ0 2 + Δ+ 2 R+ + Δ- 2 R-)
(式1)と表すことができる。
σtot = Sqrt(σ0 2 + Δ+ 2 R+ + Δ- 2 R-)
(式1)と表すことができる。
図10(b)は上の条件に従って,記録パルス条件を変えてエッジシフトを発生させビットエラー率との関係を調べた実験結果である。ここでは,DVD-RAMの通常の動作条件を想定して,連続する5トラックにそれぞれオーバライトを10回実施して中央のトラックの信号を評価した。最小ジッター値は8.4%であった。図に見られるように,エッジシフトが10%以上になると,ビットエラー率が増加することがわかる。
図10(c)は,同じ実験において,エッジシフトとジッターを測定した結果である。図には,式1により算出したジッター値の計算値を付記してある。実測結果と計算結果の間には比較的良好な一致が見られる。ジッター値を規格値の9%以下に保つためのエッジシフトの許容値は5%/Twであることがわかった。以後5%/Twを,試し書きにおけるエッジシフトの許容値とする。
図11は,等化処理におけるブースト量とジッターの関係を開口数0.60と0.65の装置で比較した結果である。再生したトラックは前述の初回記録のトラックである。開口数0.60の装置では,DVD-RAMの規格ブースト値5.5dBにてジッター値が最小になる。一方,開口数0.65の装置では,ブースト量が4.0dBにて,ジッター値が最小になる。これから,両者のスポットサイズの違いが,ブースト量に換算して約1.5dBであることがわかる。
ジッター値が最小になる条件では,エッジシフトも小さくなるので,開口数0.65の装置でブースト量4.0dBの条件で,各パターンのエッジシフトを測定した。結果を図12に示す。開口数0.65の装置でも,ジッター値が改善され5.1%となり,エッジシフトの量は5%/Tw以下になった。したがって,この再生条件で試し書きを実施して,エッジシフト量が最小になるように記録条件を設定しても,標準の開口数0.60の装置で再生した場合のジッター値の増加は許容範囲にすることができる。
ここでは,開口数0.65の装置での試し書きのための再生条件について説明した。以下の実施例では,PRMLクラスに最適な等化条件を使った場合,記録再生速度を16倍速まで高速化した場合,等について,互換性を保証する試し書きのために再生条件について,実験結果を踏まえた説明をする。
以上により,本発明の(課題2)を解決することができた。ここで示した方法は,標準装置で記録調整したトラックのジッター値が最小になるように,開口数が異なる装置でブースト量を定め,この条件で試し書きを実施するものであった。以下の実施例に示すように,PRMLデコーダを使った場合や記録速度が異なる場合においてもそれぞれ別の解決方法を提示する。しかしながら,本発明の趣旨は一貫しており,標準装置の再生系と互換性のある再生条件にて,試し書きを実施するというものである。
本発明が提供する光ディスク装置を用いることによって, DVDの高速化に対応してPRML方式を導入した光ディスク装置であって,高精度な試し書き機能をもった光ディスク装置を提供することができた。このために本発明の効果としては,以下の2点である。
(効果1)PRML回路からエラーパルスを発生させ,従来の論理LSI資産と制御ソフトウェア資産を有効活用できるようになった。
(効果2)開口数等が異なる光ディスク装置でも,標準的な装置との再生互換を保証する試し書きを実施することができるようになった。
(効果1)PRML回路からエラーパルスを発生させ,従来の論理LSI資産と制御ソフトウェア資産を有効活用できるようになった。
(効果2)開口数等が異なる光ディスク装置でも,標準的な装置との再生互換を保証する試し書きを実施することができるようになった。
以下本発明の詳細を,実施例を用いて説明する。
試し書き用回路
図1は本発明の光ディスク装置に好適な試し書き回路の構成を示す実施例である。全体は再生信号処理回路40と論理信号処理回路60から構成される。再生信号処理回路40は,PRML方式のデータ再生回路10,エラーパルス生成回路20,PLL回路30から構成される。ヘッドから出力された再生信号50はアナログ等化器11により等化処理されたのち,A/Dコンバータ12によりクロックごとにサンプルされる。これはFIRフィルター13でデジタル等化処理された後,PRMLデコーダ14により2値化され,2値化信号51が出力される。エラーパルスの発生に関しては,A/Dコンバータ12によりサンプルされた信号を入力とし,エッジレベル検出器21でエッジ点のレベルを検出する。エラーパルス発生器22は,エッジ点のレベルとエラーパルス検出しきい値を比較してエラーパルス52を発生する。PLL30は再生信号からクロックを生成し,各回路に供給する。
図1は本発明の光ディスク装置に好適な試し書き回路の構成を示す実施例である。全体は再生信号処理回路40と論理信号処理回路60から構成される。再生信号処理回路40は,PRML方式のデータ再生回路10,エラーパルス生成回路20,PLL回路30から構成される。ヘッドから出力された再生信号50はアナログ等化器11により等化処理されたのち,A/Dコンバータ12によりクロックごとにサンプルされる。これはFIRフィルター13でデジタル等化処理された後,PRMLデコーダ14により2値化され,2値化信号51が出力される。エラーパルスの発生に関しては,A/Dコンバータ12によりサンプルされた信号を入力とし,エッジレベル検出器21でエッジ点のレベルを検出する。エラーパルス発生器22は,エッジ点のレベルとエラーパルス検出しきい値を比較してエラーパルス52を発生する。PLL30は再生信号からクロックを生成し,各回路に供給する。
論理信号処理回路60は2値化信号51,エラーパルス52,クロック53を入力信号とする。パターンアナライザ61は,これらの信号を用いて,記録ストラテジと同じように前エッジと後エッジそれぞれに4x4テーブルにパターン仕分けをする。タイミング制御器62はこれらのパルスを指定された領域,DVD-RAMの場合,通常は1セクタ内で積算するためのタイミング制御を行う。全エラーパルスカウンタ63は,特開平10−320777公報に記載されているように,複数の領域に分割して全てのエラーパルスを積算するカウンタである。マーク・スペースカウンタ64は,マークとスペースをそれぞれの長さごとに加算するカウンタである。パターンカウンタ65及びエラーパルスカウンタ66は,前述の4x4テーブルに対応したカウンタであり,前者はエッジパターン数をカウントし,後者はエッジパターンごとエラーパルス数をカウントする。試し書きにおいては,測定したエラーパルスカウンタ66の値をパターンカウンタ65の値で割ったエラーパルスの発生頻度として,これが最小になるように,記録パルス条件を選択すればよい。
このとき,マーク・スペースカウンタ64の値とパターンカウンタ65の値をモニターし,記録した試し書きパターンに含まれるそれぞれのエッジ数と比較することによって,これらの差が大きい場合には,欠陥,PLLクロックのロック状態の異常等を監視する。また,記録パルスを大きく変化させた場合に,例えば3Tマークを記録するつもりがパルス幅が広すぎて4Tマークが記録されてしまう異常ケースを検出する意味でも非常に重要である。エラーパルスのカウント数を最小化して,記録パルスを適正化するためには,これらの異常状態が検出されない範囲においてのみ実施されなければならない。こうした保護機構を搭載しなければ,ドライブ装置で5%/Tw以下のエッジシフトを実現することはできない。これらの各カウンタの値は,インターフェース67を介してCPU140に取り込まれ,適宜処理されることにより,試し書きが実施される。なお,全エラーパルスカウンタ63の値は,特開平10−320777公報に記載されているように,記録パワーを決定する場合の試し書きに用いる。
この回路を用いて記録条件を定めるには,パワー及びパルス条件を変化させながら特定パターンをディスクに記録し,それを再生して異常ケースが検出されない状態において,各エラーパルス数が最小になる条件を見出せばよい。
以下,本発明の再生信号処理回路の別の実施例を図13から図16に説明する。ここでは,再生信号処理のみを示し,論理信号処理回路については図1と共通の物を用いる。
図13は本発明の再生信号処理回路の別の構成を示す実施例である。図1の実施例との構成上の違いは,(1)FIRフィルター13でデジタル等化処理した信号からエラーパルスを生成すること,及び(2)2値化結果としてPRMLデコーダ14の結果を用いることである。こうした構成の目的は,それぞれ(1)記録/再生速度の高速化及び対物レンズの開口数の違いをFIRフィルターで補償すること,及び(2)高速化に対応してS/N比が悪化した信号からエッジを検出するために,より性能の高いPRMLデコータ14の2値化結果を利用すること,である。構成及び目的(2)に対応して,エッジ検出器23はデジタル信号のエッジを検出するものとし,PRMLデコータ14の2値化にはパスメモリの分だけの遅延が生ずるので,これを調整するために遅延調整器24により再生信号を遅延させることが必要になる。本実施例の構成は,上記2つの目的を実現するものであるが,そのうち1つだけを実現することも容易である。
図14も本発明の再生信号処理回路の別の構成を示す実施例である。本構成の特徴は,デジタルPLL回路30の詳細を示したことにある。デジタルPLL回路30はローパスフィルター31,ゲイン制御器32,VCO(Voltage Controlled Oscillator)33からなる。エッジレベル検出器21は前述の動作をする。本構成では,エッジレベル検出器21がエラーパルス生成用とPLL回路動作用とで,共通利用できるので,回路規模を簡略化することができる。
図15も本発明の再生信号処理回路の別の構成を示す実施例である。本構成の特徴は,図14に基づいて,PRMLデコータ14の前段に適応型のFIRフィルター15を配置した点にある。一般に,PRMLデコータ14は,再生信号全体を基準信号と比較して,最も近しい基準信号を生成するデジタルビット列にデコードするものである。このため,PRMLデコーダにとって最適な信号は,信号のエッジだけに注目するエラーパルスやPLLとは異なるものになる。一般的に,この特性の違いを補償するために,適応型のFIRフィルター15によって,再生信号をPRMLデコーダに適した特性になるように等化することが,光ディスク装置の再生性能を向上する上でとても有効である。適応型のFIRフィルター15の各タップ係数は,よく知られたLSE(Least Square Error,LMSやMSEとも表記されることがある)法によって,逐次更新するのがよい。
図16も本発明の再生信号処理回路の別の構成を示す実施例である。本構成の特徴は,図14に基づいて,PLL用に専用のFIRフィルター34とエッジレベル検出器35を付加したことにある。高密度記録をする場合や高速記録をする場合,特に最小ランレングスの信号の分解能やS/N比が低下する。こうした,デジタル再生信号処理回路の場合,どんなにPRMLデコーダの性能がよくても,PLL回路がロックしており,安定にクロックが供給される条件下でしか正常動作することができない。したがって,PLL回路の安定性は,再生信号処理回路を動作させる上で,最も重要なことである。上に示したような場合において,PLLの安定性を第1に優先すると,例えば,最小ランレングスの信号振幅をより増幅することが好まし場合が多い。一方,記録/再生互換に不具合を発生させないように,エラーパルス発生回路には,±5%以下のエッジシフトの信号を供給する必要がある。両者を1つのFIRフィルター等化器と共通に利用できない場合には,本構成で対応するのがよい。
再生補償
以上に述べた,試し書き用回路を用いて,実際にDVD-RAMに記録/再生した実験結果を次に説明する。
以上に述べた,試し書き用回路を用いて,実際にDVD-RAMに記録/再生した実験結果を次に説明する。
図17は開口数0.65の装置と開口数0.60の装置で各パターンのエッジシフトを測定した別の結果である。先の例では,ブースト量を適当に選択して,開口数の違いに対応することを説明したが,ここでは,図13に示した回路を用い,FIRフィルター13に開口数の変換機能を持たせるようにした場合の結果である。FIRフィルター13のタップ数は15とし,PRMLデコータの適応等化技術を応用して,タップ係数を定めた。前述のように,PRMLデコータは,再生信号全体を基準信号と比較して,最も近しい基準信号を生成するデジタルビット列にデコードするものであり,LSE法による適応等化は再生信号全体と基準信号全体の2乗誤差が最小になるように,最小2乗法の概念に基づいて,各タップ係数を逐次更新するものである。これは,エッジシフトに着目するエラーパルスとは異なった特性であるため,LSE法そのものを使って,FIRフィルター13のタップ係数を定めてはいけない。ここでは,従来のLSE法を改良して,エッジのレベルだけに着目して,タップ係数の更新をする手法を用いた。方法自体は,図18に示すように,LSE法の学習ループにエッジ検出機能をもたせた簡素な構成であり,容易に理解できるはずであるから,ここでは動作の詳細について説明はしない。
さて,ここで,問題となるのが目標とするPRクラスである。PRMLデコーダは,再生信号のインパルスレスポンスの近似であるPRクラスの重ねあわせによって,基準信号を生成する。した通常は,十分に小さいエラー率で再生が可能なPRクラスを用いることが望ましい。例えば,DVD-RAMの場合には,クラスビット数4のPR(3,4,4,3)が使われる場合が多い。クラスビット数を増加させると再生信号との誤差は小さくなるが,回路規模がクラスビット数の2乗に,略比例して増大するので好ましくない。一方,ここでは,再生互換を保証することが目的であるので,より高精度な近似が必要になる。いくつかの手法を試した結果,実際に基準となる開口数0.60の装置で,基準の等化条件(DVD-RAMではブースト量5.5dB)で等化した再生信号から,インパルスレスポンスを直接近似する方法がよいことが判った。これ以外に,例えば,スカラー回折計算に基づいて,実施することも可能である。
実際にはクラスビット数6のPR(1.0,2.8,3.8,3.8,2.8,1.0)を用いた。これにより,開口数0.60の装置の再生信号を近時することができる。開口数0.65の装置用のタップ係数を決定する上では,アナログ等化器としてDVD-RAMの標準等化器を使い,上のクラスと図18のLSE法を用いた。結果として,図17に見られるように,開口数0.65の装置で再生した4x4の各パターンのエッジシフトは,図12の結果よりも,ゼロに近づいており,改善していることがわかる。
図19は,LSE法により求めたFIRフィルターの周波数特性を示している。図19(a)はDVD-RAM2倍速の標準の等化特性を示したものであり,3タップのFIRフィルターと6次のベッセルフィルターから構成させる。図19(b)は開口数0.65の装置での学習結果を示している。3T信号の繰り返しパターンの周波数約10MHzにあり,FIRフィルターは15MHz以下の信号のゲインを下げるローパスフィルターの特性を示している。これは,開口数の違いによる分解能の増加を補償するように作用していることがわかる。約20MHzにみられるゲインピークは,再生信号の特性には特に寄与していない。
以上,市販のDVD-RAM媒体を2倍速で記録/再生した結果を示した。この条件での改良分は小さなものであるが,これを2-16倍速に拡張したケースにおいては,この技術なくして記録/再生互換が成立不可能であることを示している。詳細は後述する。
図20はDVD-RAMの標準等化条件とPR(3,4,4,3)MLに最適化した等化条件との再生信号及びエッジシフトの違いをまとめたものである。開口数0.60の装置の再生信号を使い,PRML用の等化は通常のLSE法を用いて,タップ数15のFIRフィルターの各タップ係数を求めた。図に示すように,アイ・パターンの分解能はDVD-RAMの標準等化で37%であるのに対して, PR(3,4,4,3)MLの方が59%と大きく異なる。これを反映して,PR(3,4,4,3)ML用の信号の4x4の各パターンのエッジシフトは,最大10%になっており,特に3Tマーク及びスペースに関与する部分で大きくなっている。したがって,PR(3,4,4,3)ML用に等化した信号のエッジシフトが最小になるように,エラーパルスを用いて記録パルスの条件調整をすると,他の装置で再生する場合に問題が生じる。これを解決する手法を以下に2つ示す。
(1)試し書きの時には,FIRフィルターで信号の周波数特性を変更しないようにする。具体的には,図13の構成において,FIRフィルターの各タップ係数として,センタータップのみを“1”とし,それ以外を“0”にしておけばよい。通常の記録/再生時には,PR(3,4,4,3)MLに適した値を設定するようにする。
(2)PRMLデコーダ専用の等化器を設ける。具体的には,図15に示した構成として,適応型のFIRフィルターに,標準等化条件から,PR(3,4,4,3)MLに適した等化条件への変換機能をもたせる。いずれの場合にも共通する本発明の骨子は,試し書きを実施するときの等化条件として,再生互換の基準となる等化条件を用いて,エラーパルスを最小にするように記録パルスの条件調整をすることである。
(2)PRMLデコーダ専用の等化器を設ける。具体的には,図15に示した構成として,適応型のFIRフィルターに,標準等化条件から,PR(3,4,4,3)MLに適した等化条件への変換機能をもたせる。いずれの場合にも共通する本発明の骨子は,試し書きを実施するときの等化条件として,再生互換の基準となる等化条件を用いて,エラーパルスを最小にするように記録パルスの条件調整をすることである。
以下DVD16倍速用の実験結果について述べる。
図21は,開口数0.60の装置において,2倍速で記録したトラックを2-16倍速の範囲で再生して,ジッタ値を測定した結果である。光ディスク装置及び媒体の高性能化に伴い,記録/再生速度が高速化するが,繰り返し述べたように,試し書きにおいては,再生互換を保証することが重要である。一方,同じトラックを高速に再生すると,(1)アンプノイズ及びレーザノイズの影響の増大に伴って,S/N比が低下,(2)I-Vアンプの帯域特性に応じた群遅延の相対的な増加,等に伴ってジッター値が増大する。このうち,(1)については,PRML技術を導入して,低下したS/N比の分を補正して,2値化することで対応できるが,(2)については記録/再生互換の観点で問題が残る。図にはDVD-RAMの標準等化条件で再生した場合と,FIRフィルターによって再生補償した場合の2つの結果を示した。ここで,DVD-RAMの標準等化条件は,2倍速で規定されているので,ここでは,等化条件を速度に比例して逐次変更して測定を行った。標準等化条件の場合には,2倍速で約5%だったジッター値が,16倍速で再生すると12%を超える。
一方,FIRフィルターによって再生補償した場合は,16倍速で再生してもジッター値は6%以下にすることができる。ここで用いたFIRフィルターによる再生補償は,上で開口数0. 65の装置で再生した信号を開口数0.60の装置再生信号を目標として,エッジに注目して,適応的に等化学習した場合と同じ技術を使っている。具体的には,標準となる2倍速の再生信号からPRクラスを生成して基準信号とし,各再生速度において再生信号と基準信号の誤差が最小になるようにFIRフィルターの各タップ係数を求めた。
ここで,I-Vアンプの周波数特性とノイズについて定性的な説明を加える。I-Vアンプの帯域はゲインが3dB低下する条件で定義される。例えばDVD-RAMの場合,16倍速で再生すると,最小ランレングス(3T)の繰り返し信号の周波数が約80MHzになる。この信号を良好に再生するためには,少なくとも80MHzの2倍の帯域を持ったI-Vアンプが必要になる。I-Vアンプの性能は光検出器と変換抵抗値とICプロセスによって変わる。一般的には,トランジスタやオペアンプの性能指標と同様に,帯域とゲイン(ノイズの逆数と考えてよい)の積がほぼ一定になるという制限条件が課せられる。
したがって,広帯域なI−Vアンプを使用すると,アンプのノイズが増加するという関係にある。光ディスク装置に用いるヘッド用のI-Vアンプは,こうした制限条件の下で,装置性能が最大になるような設計と選択が行われる。こうしたケースにおいて,上の例に述べた,160MHzの再生帯域を確保すると,ノイズが増加するので,帯域を120MHz程度に制限したものを用いることが良好な装置性能を得るために必要になる。ここで,実験に用いた装置の帯域は110MHzである。通常のデータ再生の場合にこうした特性が問題にならないように考慮されるが,試し書き用に記録/再生互換を保証する性能のI-Vアンプを使うことは
,結果としてノイズを増やすので,好ましくない。そこで,I-Vアンプの再生帯域が十分に広くない系において,ここに示した,再生補償によって,記録/再生互換の確保を実現する手法が必要になる。
,結果としてノイズを増やすので,好ましくない。そこで,I-Vアンプの再生帯域が十分に広くない系において,ここに示した,再生補償によって,記録/再生互換の確保を実現する手法が必要になる。
図22は,16倍速における再生補償用のFIRフィルターのタップ数とジッター値の関係を計測した実験結果である。各タップ係数の求め方は,前述のとおりである。図に見られるように,タップ数が5以上になると,ジッター値が顕著に減少し始め,タップ数が9以上で,ほぼ飽和する特性となることが判った。ここでは,十分に余裕をとって,タップ数を15としたが,光ディスク装置に実装する場合には,回路規模を小さくするために,タップ数はできるだけ少ない方がよい。これは,上に述べたようにI-Vアンプの設計と合わせて,ドライブ装置ごとに慎重に考慮する必要がある。
図23は,再生補償用のFIRフィルターの周波数特性を示したものである。ここでは,一例として,2,4,8,16倍速におけるFIRフィルターの周波数特性を示した。FIRフィルターはチャネルクロックに同期して動作するので,横軸の周波数はチャネルクロックで規格化してある。最小ランレングス(3T)の繰り返し信号の周波数は,0.167である。
2倍速は記録/再生の基準となるため,FIRフィルターは再生信号をそのまま通す特性である。このとき具体的には,センタータップの係数のみを“1”にして,その他の係数を “0”にすればよいことは既に述べた。各速度によってFIRフィルターの周波数特性は異なっている。周波数0.167以下における特性の違いは,主に群遅延を補償するためであり,周波数0.25付近に見られるゲインの極小値は,ローパスフィルターの効果を持ち,S/N比を向上する効果がある。
図24は,再生補償用のFIRフィルターによる群遅延の抑圧効果を示した実験結果である。図24(a)は標準等化条件における結果である。縦軸のエッジシフトは前述の4x4の各パターンにおけるエッジシフトの測定結果を,3T,4T,5T,6Tの各マーク長さで平均化したものである。2倍速を基準にすると,16倍速では,3Tが約-10%,6Tが約+7%,それぞれシフトすることがわかる。これは,前に示した記録/再生互換のための条件5%以下を満足しない。一方,FIRフィルターによって,再生補償をした場合は,図24(b)に見られるように,2-16倍速の範囲でエッジシフト量がほぼ一定で,記録/再生互換のための条件5%以下を満たしている。
このように、FIRフィルターの各タップ係数は,光ディスク媒体に記録された信号を基準速度と異なる速度で再生した場合に,前記FIRフィルターで等化処理して得られた再生信号のエッジ位置を当該速度におけるクロックで規格化した規格化シフト量が,略一定になる値に設定する。
図25は再生補償を施した場合と施さない場合での各速度でのアイ・パターンとジッター値をまとめたものである。特に16倍速において,信号品質の改善効果が顕著であることが判る。
図26は各速度において再生補償用のFIRフィルターのタップ係数をまとめたものである。ここでは,DCゲインを1にするように規格化して示した。
以上,DVD装置の高速化に対応して,ヘッドに搭載するI-Vアンプが理想的にフラットな周波数特性でない場合,試し書きを実施して記録/再生互換を保証するために,FIRフィルターを用いて再生補償を行えばよいことを示した。本発明を用いないで,記録/再生互換を保証しようとすると,例えば,16倍速で試し書きデータを記録して,再生はそのつど2倍速で実施する等の手法をとる必要がある。こうした場合,加減速に伴う時間が,そのままディスクのローディング時間の増加に反映され,利用するユーザにとって好ましくない状況になってしまう。本発明は,ローディング時間の短縮の意味でも,高速光ディスク装置に対して,効果的な技術である。
試し書き結果
以上により,従来のエラーパルスの処理回路とソフトウェア資産を有効活用し,記録/再生互換を保証する試し書き方法と回路について述べた。ここでは,こうした手法を用いて,試し書きを実施した例について説明する。
以上により,従来のエラーパルスの処理回路とソフトウェア資産を有効活用し,記録/再生互換を保証する試し書き方法と回路について述べた。ここでは,こうした手法を用いて,試し書きを実施した例について説明する。
図27は,記録パルスの条件を適正化する試し書きの概念について示した模式図である。図27(a)は初期状態で,特定のエッジがシフトしている場合のジッターの分布を示しており,エラーパルス検出窓幅から外側のハッチングした領域のエッジがエラーパルスとしてカウントされる。図27(b)は試し書きが終了した状態で,エラーパルスの数が最小になる条件に記録パルスを調整した場合を示す。ジッターの分布は,エラーパルスの検出窓幅の中に入り,エッジシフトが補正された状態である。
図28は,記録パルスの条件を適正化する試し書きの流れを示すも模式図である。DVD-RAMでは記録パルスパラメータが前後エッジそれぞれに4x4のテーブルに定義される。エラーパルスカウンタは,これと同じ4x4テーブルのエッジパターンに対して,エラーパルスを仕分けしたものである。簡単なシーケンスは,先ず,記録パルスの条件を変更して,光ディスク媒体に記録行い,当前記セクターを再生して,対応するエラーパルスのカウント値を評価し,これを最小にするように,記録パルスのパラメータを決定することである。この例からも明らかなように,記録パルスパラメータとその評価値であるエラーパルスが1対1に対応していることから,一度に複数の記録パルスパラメータを変更して記録/再生を行なうことで,同時に複数の記録パルスパラメータを並列に適正化することによって,試し書き時間の短縮を図ることができるという特徴がある。具体的には,記録パルスパラメータを端から順番に決定すると,2倍速のドライブ装置で処理時間が30秒から1分程度かかるのに対して,本発明によって,並列処理を実施すると,1秒程度で試し書きを終了することができる。
図29は市販の2倍速DVD-RAM媒体の記録パルスを決定する試し書きの一例である。ここでは,前後に6Tスペースがあるパターン6つについて,記録パルスのエッジ位置とエラーパルスのカウント数の結果をまとめたものである。図中,横軸のゼロ点は,決定した条件を示している。このように,エラーパルスのカウント数を最小にするように,記録パルスの条件を選択して試し書き処理を実施することができる。
図30は試し書きをする前後での記録パワーマージンの違いを示す。上の試し書き処理によって,記録パルスパラメータの4x4テーブルを全て決定した後,記録パワーとジッター値の関係を測定した。図に見られるように,本発明の試し書きによって,ジッター値を改善し,良好な記録パワーマージンを得ることができた。
図31は,開発中の6-16倍速対応DVD-RAM媒体の試し書き結果をまとめたものである。6倍速と16倍速において,上に示したエラーパルス数を用いた試し書きを実施して記録パルス条件を決定し,1回記録とオーバライト10回後のトラックを作成し,それぞれ2,6,16倍速で再生して,ジッター値とPR(3,4,4,3)MLデコーダを用いて測定したビットエラー率をまとめた。図に示すように,6倍速記録,16倍速記録のいずれの場合にも,2倍速で再生すると初回記録のジッター値が5%以下で良好に記録制御できていることが判る。また,光ディスク媒体が未だ開発途中のため,オーバライトによるジッターの上昇が大きいが,16倍速で記録/再生した場合にジッター値が9%であるので,規格値(9%以下)を満足する見通しが得られた。ビットエラー率に関しては,どちらの速度でオーバライトした場合にも,どの速度で再生した場合にも,ビットエラー率が10−6以下と良好な値を得ることができる。この実験データにおいては,上に示した再生補償を施していることは言うまでもない。
光ディスク装置
図32は本発明の光ディスク装置の構成を示す実施例である。光ディスク媒体100はモータ160により回転される。再生時にはCPU140によって指令された光強度になるようにレーザパワー/パルス制御器120は光ヘッド110内の半導体レーザ112に流す電流を制御してレーザ光114を発生させ,レーザ光114は対物レンズ111によって集光され光スポット101を光ディスク媒体100上に形成する。この光スポット101からの反射光115は対物レンズ111を介して,光検出器113で検出される。光検出器は複数に分割された光検出素子から構成されている。再生信号処理回路130は,光ヘッド110で検出された信号を用いて,光ディスク媒体100上に記録された情報を再生する。記録時には,レーザパワー/パルス制御器120は,所定の記録データを所定の記録パルス電流に変換して,パルス光が半導体レーザ112から出射されるように制御する。図1に示した前述の試し書き用の信号処理回路40及び50は
,再生信号処理回路130に内蔵される。
図32は本発明の光ディスク装置の構成を示す実施例である。光ディスク媒体100はモータ160により回転される。再生時にはCPU140によって指令された光強度になるようにレーザパワー/パルス制御器120は光ヘッド110内の半導体レーザ112に流す電流を制御してレーザ光114を発生させ,レーザ光114は対物レンズ111によって集光され光スポット101を光ディスク媒体100上に形成する。この光スポット101からの反射光115は対物レンズ111を介して,光検出器113で検出される。光検出器は複数に分割された光検出素子から構成されている。再生信号処理回路130は,光ヘッド110で検出された信号を用いて,光ディスク媒体100上に記録された情報を再生する。記録時には,レーザパワー/パルス制御器120は,所定の記録データを所定の記録パルス電流に変換して,パルス光が半導体レーザ112から出射されるように制御する。図1に示した前述の試し書き用の信号処理回路40及び50は
,再生信号処理回路130に内蔵される。
試し書き時にはCPU140の指示により,所定のデータパターンを記録/再生して,エラーパルスを指標にして,記録パワーと記録パルスの各条件を適正化する。
本発明の光ディスク装置を用いれば, PRML方式の再生回路を搭載し,高速化に伴って主にI-Vアンプの周波数特性に伴う再生信号の特性の変化を補償し,記録/再生互換を保証した試し書きを実施できる。同時に,各種の規格に対応して,例えば開口数0.65の光ヘッドを用いても,開口数0.60の標準装置との互換性を取ることが可能である。このとき,従来のエラーパルスに対応した論理回路,及びソフトウェア資産を有効活用できるのはいうまでもない。
また,以上の実施例では,DVD-RAM媒体を対象に説明をしてきたが,同様にDVD-R/DVD-RW/DVD+R/DVD+RW等の記録可能なDVD媒体についても適応は容易である。具体的には,各規格に沿って標準等化条件を変更すればよい。例えば,DVD-RW媒体の場合には標準ブースト量は3.2dBである。同時に,青色レーザを用いたBlu-ray Disc等にも応用は可能である。Blu-ray Disc等では,変調符号としてRLL(1,7)符号を用いるため,最小ランレングスが2Tとなって分解能が小さくなる。2T信号の振幅があれば,本発明を応用して試し書きを実施することができる。2T信号の振幅がゼロになる条件,Blu-ray Discでは,役30GB容量以上については,本発明では対応できない。この場合は,PRMLをベースにした新たな技術が必要である。
本発明は,特に大容量光ディスク装置に用いられる。
10:データ再生回路、11:アナログ等化器、12:A/D変換器、13:FIRフィルター、14:PRMLデコーダ、20:エラーパルス生成回路、21:エッジレベル検出器、22:エラーパルス発生器、23:エッジ検出器、24:遅延調整器、30:PLL回路、31:ローパスフィルター、32:VCO、33:ゲイン制御器、34:FIRフィルター、35:エッジレベル検出器、40:再生信号処理回路、50:再生信号、51:2値化信号、52:エラーパルス、53:クロック、54:エラーパルス検出しきい値、60:論理信号処理回路、61:パターンアナライザ、62:タイミング制御器、63:全エラーパルスカウンタ、64:マーク・スペースカウンタ、65:パターンカウンタ、66:エラーパルスカウンタ、67:インターフェース、100:光ディスク、101:光スポット、110:光ヘッド、111:対物レンズ、112:半導体レーザ、113:光検出器、120:記録データ制御器、130:再生信号処理器、140:CPU、150:サーボ制御器、160:スピンドルモータ、170:インターフェース、180:ホストコンピュータ。
Claims (7)
- 光ディスク媒体にレーザパルスを照射して、試し書きを行うことによって、前記レーザパルスの照射条件を適正化し、前記適正化された照射条件で、情報の記録を行う光ディスク装置であって,前記試し書きを行う際と、前記記録された情報を再生する際とでは、波形等化条件が異なることを特徴とする光ディスク装置。
- 第1の開口数の対物レンズを有する光ディスク装置を用いて、光ディスク媒体にレーザパルスを照射して、試し書きを行う試し書き方法であって、前記第1の開口数よりも大きな第2の開口数の対物レンズを有する別の光ディスク装置における、ジッタ値が最小となるような波形等化のブースト量で波形等化を実施した再生信号を用いて、試し書きを行うことを特徴とする試し書き方法。
- 前記第1の開口数は0.60であり、前記第2の開口数は0.65であり、前記ジッタ値が最小となるような波形等化のブースト量は、約4.0dbであることを特徴とする請求項2記載の試し書き方法。
- 第1の開口数の対物レンズを有する光ディスク装置を用いて、光ディスク媒体にレーザパルスを照射して、試し書きを行う試し書き方法であって、FIRフィルタの目標とするPRクラス及びタップ係数として、前記第1の開口数よりも大きな第2の開口数の対物レンズを有する別の光ディスク装置の再生信号に近似するように調整された値を用いて、前記試し書きを行うことを特徴とする試し書き方法。
- 前記第1の開口数は0.60であり、前記第2の開口数は0.65であり、前記PRクラスのクラスビット数は6であることを特徴とする請求項4記載の試し書き方法。
- 前記タップ係数は、LSE法を用いて決定されることを特徴とする請求項4または5記載の試し書き方法。
- 前記タップ係数は、試し書き時には、センタータップを“1”とし、前記センタータップ以外を“0”とすることを特徴とする請求項4乃至6何れかに記載の試し書き方法。
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JP2011197605A (ja) * | 2010-03-24 | 2011-10-06 | Stanley Electric Co Ltd | 2次元光スキャナ |
-
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