JP2010065001A - 発酵もろみからエタノールと水を分離、回収する方法および装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】発酵もろみを減圧前処理塔に供給して不純物を分離し、エタノール含有成分を塔底より取り出し、これを減圧もろみ塔に導入し、減圧もろみ塔の塔頂からエタノール成分を回収し、減圧もろみ塔の底部から水分を回収する第1工程、減圧もろみ塔からエタノール成分を蒸発器に送り、蒸発器より発生した蒸気を脱水装置で脱水して精製エタノールとして回収し、脱水装置で発生したエタノール・水の混合物を第1工程に戻す(供給する)第2工程、第1工程で回収した水分から固形物を分離し、水を回収する第3工程よりなり、かつこれらの工程のうち、第1工程と第3工程の運転温度を90℃以下、好ましくは80℃以下の温度で行うものであることを特徴とする発酵もろみからエタノールと水を分離、回収する方法および装置。
【選択図】図2
Description
一方、発酵もろみから燃料用アルコールを精製する技術についての最近の研究は、PSA吸着法(圧力スイング吸着法)や膜モジュール(蒸気透過法)の開発において顕著であった。特許文献1によれば、濃縮塔で80〜96容量%まで濃縮したエタノールを加圧蒸気として膜モジュールに供給すれば、水分はモジュールを透過し、99.5容量%以上のエタノールを得ることができ、それまでの共沸蒸留法、ゼオライト吸着法に比べて省エネルギーが達成できるとしている。また、昨今の欧米においては、脱水装置としてPSA吸着法が採用されている場合が多いが、前記膜モジュールに比べて操作が複雑で省エネルギーとは言えない。
本発明の第2は、発酵もろみを減圧前処理塔に供給して不純物を分離し、エタノール含有成分を取り出し、これを減圧もろみ塔に導入し、減圧もろみ塔からエタノール成分を回収することおよびこれら全ての工程を、90℃以下で実施することを特徴とする発酵もろみからエタノールを回収する方法に関する。
本発明の第3は、発酵もろみを減圧もろみ塔に導入し、減圧もろみ塔からエタノール成分を回収し、減圧もろみ塔の底部から水分を回収する第1工程、前記回収したエタノール成分を蒸発器に送り、蒸発器から発生したエタノール・水の混合蒸気を脱水装置を介して脱水した精製エタノールと含水エタノールに分離し、含水エタノールを第1工程のもろみ塔に戻す第2工程、第1工程で回収した水分を減圧蒸発装置を用いて水と固形物とを分離し、水を回収する第3工程、よりなり、かつ第1工程と第3工程を90℃以下で操作することができる減圧下で実施するものであることを特徴とする発酵もろみからエタノールと水を分離、回収する方法に関する。
本発明の第4は、発酵もろみを減圧前処理塔に供給して不純物を分離し、エタノール含有成分を取り出し、これを減圧もろみ塔に導入し、減圧もろみ塔からエタノール成分を回収し、減圧もろみ塔の底部から水分を回収する第1工程、前記回収したエタノール成分を蒸発器に送り、蒸発器から発生したエタノール・水の混合蒸気を脱水装置を介して脱水した精製エタノールと含水エタノールに分離し、含水エタノールを第1工程のもろみ塔に戻す第2工程、第1工程で回収した水分を減圧蒸発装置を用いて水と固形物とを分離し、水を回収する第3工程、よりなり、かつ第1工程と第3工程を90℃以下で操作することができる減圧下で実施するものであることを特徴とする発酵もろみからエタノールと水を分離、回収する方法に関する。
本発明の第5は、請求項3または4の第2工程における蒸発器に熱を供給し、これにより発生したエタノール・水の混合蒸気から水を脱水後、エタノール蒸気を前記第1工程および/または第3工程の熱源とするとともに請求項3または4の第3工程における減圧蒸発装置に熱を供給し、これにより発生した蒸気をエゼクターで吸引・昇圧・昇温して前記第1工程の熱源とするものである請求項3または4記載の発酵もろみからエタノールと水を分離、回収する方法に関する。
本発明の第6は、(A)減圧もろみ塔よりなる発酵もろみからのエタノール分離手段、(B)蒸発器と脱水装置よりなるエタノール脱水手段、(C)ろ過装置と減圧蒸発装置よりなる水を回収する手段、および(D)前記(A)と(C)の手段を90℃以下で操作することができる減圧手段、から構成されていることを特徴とする発酵もろみからのエタノールと水の分離回収装置に関する。
本発明の第7は、(A)減圧前処理塔および減圧もろみ塔よりなる発酵もろみからのエタノール分離手段、(B)蒸発器と脱水装置よりなるエタノール脱水手段、(C)ろ過装置と減圧蒸発装置よりなる水を回収する手段、および(D)前記(A)と(C)の手段を90℃以下で操作することができる減圧手段、から構成されていることを特徴とする発酵もろみからのエタノールと水の分離回収装置に関する。
本発明の第8は、発酵もろみに含まれるガス成分、低沸点不純物および中沸点不純物を分離するサイドカットノズルを具備し、減圧操作で塔全体の最高沸点を90℃以下で操作して発酵もろみに含まれる蛋白質などの泥状固形物が装置の内壁に付着、焦げ付き(スケーリング)を防止し、発酵もろみ中のエタノールを50〜95容量%に濃縮するエタノール分離手段(A)をもつ請求項6記載の発酵もろみからのエタノールと水の分離回収装置に関する。なお、サイドカットノズルとは、蒸留塔の中間棚から抜き出すノズルである。中間棚に液相を形成し、ここに溜まった液を塔壁面に取付けたノズル(管)から抜き出すことがサイドカットである。
本発明の第9は、発酵もろみに含まれるガス成分、低沸点不純物および中沸点不純物を除去する減圧前処理塔、中沸点不純物を分離するサイドカットノズルを具備し、減圧操作で塔全体の最高沸点を90℃以下で操作して発酵もろみに含まれる蛋白質などの泥状固形物が装置の内壁に付着、焦げ付き(スケーリング)を防止し、発酵もろみ中のエタノールを50〜95容量%に濃縮するエタノール分離手段(A)をもつ請求項7記載の発酵もろみからのエタノールと水の分離回収装置に関する。
前記検出部とは、測定個所における実際の温度を測定する部署であり、具体的には温度計である。
前記調節部とは、検出部で測定した温度が所定の温度からはずれた場合、所定の温度に是正するためのコントロールシステムである。
前記操作部とは、現場の配管に取り付けられた弁で、調節部の指示に従い、弁の開度を変えて検出部おける温度を所定の温度に修正するように機能する。例えば、温度が高すぎるときは、開度を絞って加える熱量を少なくする。
図1の(B)で示すエタノール脱水手段ではエタノール濃度50〜95容量%のエタノール水溶液を再蒸発し、脱水装置で99.5容量%以上のエタノールと少量のエタノールを含む希薄エタノール水溶液(例えば、30容量%濃度のもの)に分離する。
図1の(C)で示す水の回収工程では、液中に含まれている固形物または液に溶解している高沸点物を除去し、水を回収する。
減圧もろみ塔は、従来常圧で操業されていたが、本発明では、系が90℃以下、好ましくは80℃以下、とくに好ましくは70℃以下の温度とする減圧下で操業することが重要である。これにより、系中に含まれている蛋白質が熱変性を受けて塔内壁や内部構造物に凝固、固化、焼き付けをおこすことを防止することができる。
本発明の減圧前処理塔、減圧もろみ塔は、前記した系中に含まれる蛋白質が熱変性を受け、塔内壁または内部構造物に凝固、固化、焼け付きが発生し、運転を停止する事態を予測し、これらの現象が発生(常圧塔の場合必ず発生する)した場合に掃除などメンテナンスが行ない易い構造を選定することが重要である。非特許文献3から選定すれば、充分な効果を期待するような機構は無いが、その中で、付着に強く、掃除が行ない易く手間が掛かり難いを選定基準とする泡鐘トレーが適している。棚間隔を大きくし、掃除口を介して掃除ができる構造とすることが好ましい。
とくに蒸気浸透膜を用いると従来の共沸蒸留塔による脱水方法に比べて大幅な省エネルギーを達成することができる。蒸気浸透膜の材質は、有機膜製でも無機膜製でもよい。分子篩により水を除去してエタノールを99.5容量%以上とすることができる。分子篩を無機膜のゼオライト膜で説明すると、エタノールの分子の大きさは0.5ナノメートル、水のそれは0.3ナノメートルであるから、0.4ナノメートルの空孔を持つゼオライト膜を使用すれば水の分子は空孔を通過し、エタノールの分子は通過できないので水と分離することができる。膜の内外の圧力差が大きいほど透過量が多くなるので加圧・真空操作となる。
加圧・真空操作とは、脱水効率を上げるため、ゼオライト膜の一方を加圧とし、他方を真空にして圧力差をつける操作である。本発明の場合、一方は0.3MPaに加圧した50〜95容量%のエタノール蒸気であり、他方は50mmHgの真空とすることにより脱水する。この膜を通過する蒸気は例えば30容量%のエタノール蒸気であり、通過しないエタノールは99.5容量%まで脱水される。
この(B)工程から得られたエタノールは通常99.5容量%以上の濃度を有する。(B)工程では減圧もろみ塔2により留出した50〜95容量%のエタノール水溶液には蛋白質などスケーリング要因物質が蒸留による精製のため混入していない。そのため系の温度を90℃以下とする必要性がない。それよりも効率(加圧による)を求める方にメリットがある。
多重効用式蒸発装置を用いる場合、蒸気の効用化を最大限行なうことが必要である。4重効用式蒸発装置とした場合、第1蒸発缶から蒸発する蒸気の約50%を供給スチームでスチームエゼクターを使用して圧縮昇圧し、第1蒸発缶の加熱源として使用する。更に最終缶(第4蒸発缶)から蒸発する蒸気を供給スチームで多段(例えば2段)のスチームエゼクターを使用して圧縮昇圧して(A)の減圧塔(減圧前処理塔・減圧もろみ塔)の加熱に使用して省エネルギー化を計ることが好ましい。
図2における(A)で示す領域は、発酵もろみから不純物を分離し、85容量%エタノールを回収できるエタノール分離手段をもつ工程であり、減圧前処理塔1と減圧もろみ塔2より構成されている。
図2における(B)で示す領域は、エタノール脱水工程であり、85容量%エタノールを脱水し、99.5容量%以上の濃度のエタノール(実質的に無水エタノールである)を回収するための工程であり、蒸発器3と蒸気浸透膜式脱水装置4から構成されている。
図2における(C)で示す領域は、水の回収手段をもつ工程であり、減圧もろみ塔2の塔底から排出された液状物を処理するためのろ過装置5と多重効用式蒸発装置6より構成されている。
このフローシートでは、熱源を有効利用するため図示していない熱交換器を具備していることは当然である。
第4蒸発缶から抜き出した濃縮液は、約60リットル/時(約14.2倍濃縮に相当)まで濃縮された。また減圧前処理塔1に供給された原液1000リットル/時のうち、水660リットル/時は多重効用式蒸発装置6で蒸発し、水として回収され、再利用される。
第1蒸発缶でエゼクターを介して使用するスチーム量は140kg/時であり、660÷140=4.7の効用化を実現した。なお、多重効用式蒸発装置として4段を採用しているのは、第1蒸発缶の上限温度が90℃以下(たとえば85℃)であり、第4蒸発缶の蒸発蒸気を凝縮する冷却水の温度が35℃(夏場の再冷却水温度)の場合の経済的に最適な段数とした。
通常、蒸発缶で廃液を濃縮する場合、内部の汚れ状態により温水による洗浄(CIP)を行なう。焼酎の廃液濃縮では通常1日当り1回で行う必要があったが、前記精密ろ過器の使用により、1週間に1回の洗浄でもろ過能力がダウンせず、安定した操業を可能とした。
図3は、減圧前処理塔1と減圧もろみ塔2から構成されているが、減圧前処理塔1を省くこともできる。減圧前処理塔1を省く場合は図4に示すように、原料の発酵もろみは減圧もろみ塔2の中段に供給し、ガス分、低沸点不純物の全ては塔頂へ移動し、塔頂に集積するのでコンデンサー10で凝縮し系外に抜き出す。またフーゼル油に相当する中沸点物不純物は棚から直接抜き出して、外部のデカンター11で分離することができる。エタノールは50〜95容量%まで濃縮し、塔頂より数段下方の棚上より沸点の温度で液状の状態で抜き出される。水(常圧で100℃)あるいは水とエタノールの混合物の沸点(常圧で78℃)より高い物質または不揮発性の固形物分は、減圧もろみ塔2の底部から排出される。
このような場合は一本の塔でガス分(塔頂)、低沸点不純物(塔頂)、エタノール(塔中段上方)、中沸点不純物(塔中段)、水と水より沸点の高い高沸点物または不揮発性の固形物分(塔底)の5つの種類に分離する必要があり、とくに中沸点不純物を塔中段に集積することが難しいので、前処理塔を持つことが望ましい。
減圧前処理塔1を設ける場合は、図3において、原料の発酵もろみは減圧前処理塔1の中段に供給し、ガス分・低沸点不純物の全て・中沸点不純物の大部分を塔上方に移行させ、コンデンサー12で凝縮した一部を低沸点物不純物として系外へ分離し、チムニートレイで抜き出したフーゼル油相当品はデカンター11で分離する。塔底部に流下する中沸点不純物の微量部分を含んだエタノール水溶液を、後段の減圧もろみ塔2の中段に供給し、エタノールを上方に移行させ、凝縮する。塔中段に集積するフーゼル油相成分はデカンター11にサイドカットする。(B)工程の蒸気浸透膜式脱水装置4で発生する透過エタノールはこの塔の中間部に供給する。
塔の内部構造は、前記したように泡鐘式棚段塔が望ましい。リボイラー・コンデンサーの型式は、多管円筒型熱交換器、プレート式熱交換器など一般に用いられている熱交換器を使用している。リボイラーの熱交換方式は、循環式、流下薄膜式など伝熱効率の高いことが望ましい。リボイラー(1)および(2)は(C)工程の第4蒸発缶から蒸発する蒸気をスチームエゼクターで吸引昇圧した蒸気で塔底液を加熱蒸発する。リボイラー(3)は(B)工程の脱水されたエタノール蒸気で加熱する。減圧前処理塔1のチムニートレイは棚上に静止液相を形成し、フーゼル油(高級アルコールと脂肪酸エステルの混合物)などエタノール・水に溶解せず棚の上で2液層を形成する。フーゼル油は上層に浮くので回収が容易にできる。デカンター11は棚の組成(温度により組成が変る)を推定し、サイドカットとして液を抜き、冷却後デカンター11で2液層に分離し、上層は系外へ、下層は塔に戻す。
本図は、蒸発器3および蒸気浸透膜式脱水装置4の主機器により構成されているが、脱水装置としての機能を持っていれば他の脱水装置を使用することが出来る。本図を基に説明する。
(A)エタノール分離工程の減圧もろみ塔2で85容量%まで濃縮されたエタノール水溶液は蒸発器3に供給され、リボイラーで加熱・蒸発する。蒸発器3は0.3Mpaに加圧されているので蒸気の温度は130℃である。この蒸気を蒸気浸透膜式脱水装置4に供給する。供給した85容量%のエタノール水溶液は、膜を透過する水の含有率が高いエタノール水溶液(減圧にて透過速度を上げている)と膜を透過しない99.5容量%のエタノールに分離する。透過した水の含有率が高いエタノール水溶液は凝集し、(A)工程の減圧もろみ塔2に戻す。透過しない脱水されたエタノール蒸気は、(A)工程または/および(C)工程の加熱源として効用化を計る。
蒸発器3は供給されたエタノール水溶液をその組成のまま飛沫同伴を少なくして蒸発することができれば良く、通常一般に用いられている円筒縦型圧力容器が好ましい。リボイラー(4)は、スチームを供給し、その熱量を伝熱面を介して液と熱交換することによって蒸発器3の液を加熱蒸発する機能をもち、前項で説明したリボイラー(1)(2)(3)と同じ構造で良い。蒸気浸透膜式脱水装置4として用いた有機膜は特殊有機高分子膜(芳香族ポリイミド膜)は水蒸気は透過しやすく、エタノールなどの有機化合物蒸気は透過しにくい性質がある。これを管状に成型した中空糸膜(ストロー状の膜を束ねて、それをケースに入れ、ストローの中の含水エタノール蒸気を水蒸気とエタノールに分離し、水蒸気はストローを形成している膜を通って外にのがれ、エタノールのみがストロー中を流れることにより、エタノールと水を分離することができる)を多管式熱交換器の如くモジュール化した構造である。モジュール管の内側に0.3Mpaの圧力で含水エタノール蒸気を供給し、外側は真空ポンプ2で減圧にして透過量を上げることができる。本脱水手段として有機膜の1例であるが、無機膜でも差し支えない。
(A)工程の減圧もろみ塔2底部より排出される廃液には、固形分を約4.6容量%含んでいる。このままの状態で水を蒸発濃縮させると付着など装置の安定な運転を阻害する。故に、蒸発濃縮前に機械的な分離を行なう必要がある。排液はまず粗固形物ろ過器13に供給し、粗い固形物を遠心力を利用して分離する。粗固形物ろ過器13は一般に市販されている遠心力を利用して液体と固体を分離するろ過器であれば良い。構造は連続処理が可能な横型スクリュー式デカンターが適しているが、縦型デカンターやバケット式の遠心分離器でも可能である。粗固形物ろ過器13は遠心力のみで固形物を分離する機構であるので細かくて比重が軽い固形物の分離はできない。粗固形物ろ過器13の後方に設置する精密ろ過器14は、この固形物を分離ろ過することを目的としている。この精密ろ過器14は0.1μmに達する菌類・サブミクロンの微粒子などが分離できる精密ろ過器が好ましく、例えば、生ビールなどの食品ろ過に用いられているフィルターカートリッジを組み込みユニット化したろ過器、0.1μmの細孔を有するモジュール化されたセラミックフィルターなどがある。本発明ではフィルターカートリッジのユニットを使用しているが機能が満たされれば他の精密ろ過器も使用できる。
(C)工程前段の精密ろ過器14で固形物を分離された液は多重効用式蒸発装置6の第1蒸発缶に供給される。この蒸発装置で約93容量%の水を蒸発し、蒸発した水は、前工程の発酵仕込水など再利用される。濃縮液には濃縮前には溶解していた水以外の物質が約50容量%混入している。このまま捨てれば有害ではないが、ごみ問題を引き起こす。ボイラーを持っていれば補助燃料として処分できる。通常、濃縮液は濃縮し、濃縮廃物として焼却処分する。多重効用式蒸発装置6の詳細な説明は化学工学関連の学術誌に単位操作として詳細に説明されている。本発明では、蒸発温度を低くするため、4つの蒸発缶を連結した4重効用蒸発装置とした。蒸発する液と加熱するスチームの伝熱方法として図では蒸発缶内に伝熱管を配したカランドリヤ式で示しているが、蒸発缶外設置のリボイラーでも構わない。蒸発缶外設置の場合、プレート式熱交換器、多管円筒型熱交換器などがあり、蒸発する液は自然循環型、強制循環型などがある。又多管円筒型熱交換器を細長くして、縦置き設置する薄膜流下式加熱器としても良い。効用化を優先するため、供給するスチームは、第1蒸発缶の蒸発蒸気を吸引するため第1スチームエゼクター8に供給する。このエゼクターにより必要とするスチーム量はエゼクターを使用しない場合の43%で賄う事ができる。第1蒸発缶を蒸発した蒸気は第1スチームエゼクター8の供給と第2蒸発缶の加熱スチームに2分される。第2蒸発缶を蒸発した蒸気は第3蒸発缶の加熱蒸気に、第3蒸発缶を蒸発した蒸気を第4蒸発缶の加熱蒸気として利用する。第4蒸発缶を蒸発した蒸気は、通常は凝縮されるが、本発明では、2段圧縮スチームエゼクター9を使用して蒸気を吸引して、51℃の蒸気を80℃まで昇圧・昇温し(A)工程で必要とするスチームとして使用する。この2段圧縮スチームエゼクター9の使用により、(A)工程の減圧もろみ塔2の加熱スチームを約30%削減することができる。図7では、第2蒸発缶に加熱用のリボイラーを設け、(B)工程からでる精製エタノールの蒸気を熱源としている。このリボイラーの設置は第2蒸発缶に限られたものではない。第1蒸発缶が最善であるが第1蒸発缶の加熱伝熱面積が第2、第3、第4蒸発缶の伝熱面積に比較して大きくなるため装置上のバランスを考慮した。
(2)請求項2、4の発明の効果:減圧もろみ塔の前に減圧前処理塔を設けたことにより、請求項1の効果に加えて、エタノールを分離する前に低沸点不純物(炭酸ガスを含む)、中沸点不純物、を除去することができるのでエタノールの分離が安定して行なうことができる。
(3)請求項3の発明の効果:発酵もろみ中に含まれる蛋白質などによる付着・焦付き(スケーリング)の発生する工程は第1工程、第3工程である。この第1、第3工程を減圧操作で行なうことでスケーリングを防止することができる。第3工程では低温域で機械的な固形物分離を行なうことで第1工程よりスケーリング発生が懸念される濃縮装置のスケーリングを防止した。第2工程の濃縮エタノールは(A)工程の減圧もろみ塔で固形分の分離が行なわれているのでスケーリング物質は含んでいない。故に脱水装置として高効率を引き出すため、加圧操作を行なうことができた。
(4)請求項4の発明の効果:第1工程において、減圧もろみ塔の前段に減圧前処理塔を設けることにより、ガス分(塔頂)、低沸点不純物(塔頂)、エタノール(塔中段上方)、中沸点不純物(塔中段)、水とそれより沸点の高い成分および不揮発性の固形分(塔底)の5成分を効率よく分離することができる。とくに中沸点不純物を1つの塔で完全に分離することは困難であるため、減圧前処理塔の設置は中沸点不純物の完全除去に極めて有効である。
(5)請求項5の発明の効果:第2工程の蒸発器に供給した熱をエタノール蒸気を介して第1工程および/または第3工程の熱源として再利用する。また、第3工程の最終蒸気を昇圧・昇温し第1工程の熱源として再利用する。このように1つの熱を装置の温度差を利用して効用化(再利用)を図り、省エネルギーを達成した。
(6)請求項6、7の発明の効果:(A)、(B)、(C)、(D)の独立した工程(それぞれの工程は独立して運転可能体制を構築する)を有機的につなぎ、熱の有効利用、安定した運転ができる。
(7)請求項8、9の発明の効果:エタノール分離手段である塔からのガス成分・低沸点不純物・中沸点不純物の分離を減圧操作で行なうことができた結果、スケーリングを防止することが可能となった。
2 減圧もろみ塔
3 蒸発器
4 蒸気浸透膜式脱水装置
5 ろ過装置
6 多重効用式蒸発装置
7 真空ポンプ
8 第1スチームエゼクター
9 2段圧縮スチームエゼクター
10 コンデンサー
11 デカンタ
12 コンデンサー
13 粗固形物ろ過器
14 精密ろ過器
Claims (9)
- 発酵もろみを減圧もろみ塔に導入し、運転温度を90℃以下に保って減圧もろみ塔の頂部からエタノール成分を回収することを特徴とする発酵もろみからエタノールを回収する方法。
- 発酵もろみを減圧前処理塔に供給して不純物を分離し、エタノール含有成分を取り出し、これを減圧もろみ塔に導入し、減圧もろみ塔からエタノール成分を回収することおよびこれら全ての工程を、90℃以下で実施することを特徴とする発酵もろみからエタノールを回収する方法。
- 発酵もろみを減圧もろみ塔に導入し、減圧もろみ塔からエタノール成分を回収し、減圧もろみ塔の底部から水分を回収する第1工程、前記回収したエタノール成分を蒸発器に送り、蒸発器から発生したエタノール・水の混合蒸気を脱水装置を介して脱水した精製エタノールと含水エタノールに分離し、含水エタノールを第1工程のもろみ塔に戻す第2工程、第1工程で回収した水分を減圧蒸発装置を用いて水と固形物とを分離し、水を回収する第3工程、よりなり、かつ第1工程と第3工程を90℃以下で操作することができる減圧下で実施するものであることを特徴とする発酵もろみからエタノールと水を分離、回収する方法。
- 発酵もろみを減圧前処理塔に供給して不純物を分離し、エタノール含有成分を取り出し、これを減圧もろみ塔に導入し、減圧もろみ塔からエタノール成分を回収し、減圧もろみ塔の底部から水分を回収する第1工程、前記回収したエタノール成分を蒸発器に送り、蒸発器から発生したエタノール・水の混合蒸気を脱水装置を介して脱水した精製エタノールと含水エタノールに分離し、含水エタノールを第1工程のもろみ塔に戻す第2工程、第1工程で回収した水分を減圧蒸発装置を用いて水と固形物とを分離し、水を回収する第3工程、よりなり、かつ第1工程と第3工程を90℃以下で操作することができる減圧下で実施するものであることを特徴とする発酵もろみからエタノールと水を分離、回収する方法。
- 請求項3または4の第2工程における蒸発器に熱を供給し、これにより発生したエタノール・水の混合蒸気から水を脱水後、エタノール蒸気を前記第1工程および/または第3工程の熱源とするとともに請求項3または4の第3工程における減圧蒸発装置に熱を供給し、これにより発生した蒸気をエゼクターで吸引・昇圧・昇温して前記第1工程の熱源とするものである請求項3または4記載の発酵もろみからエタノールと水を分離、回収する方法。
- (A)減圧もろみ塔よりなる発酵もろみからのエタノール分離手段、(B)蒸発器と脱水装置よりなるエタノール脱水手段、(C)ろ過装置と減圧蒸発装置よりなる水を回収する手段、および(D)前記(A)と(C)の手段を90℃以下で操作することができる減圧手段、から構成されていることを特徴とする発酵もろみからのエタノールと水の分離回収装置。
- (A)減圧前処理塔および減圧もろみ塔よりなる発酵もろみからのエタノール分離手段、(B)蒸発器と脱水装置よりなるエタノール脱水手段、(C)ろ過装置と減圧蒸発装置よりなる水を回収する手段、および(D)前記(A)と(C)の手段を90℃以下で操作することができる減圧手段、から構成されていることを特徴とする発酵もろみからのエタノールと水の分離回収装置。
- 発酵もろみに含まれるガス成分、低沸点不純物および中沸点不純物を分離するサイドカットノズルを具備し、減圧操作で塔全体の最高沸点を90℃以下で操作して発酵もろみに含まれる蛋白質などの泥状固形物が装置の内壁に付着、焦げ付き(スケーリング)を防止し、発酵もろみ中のエタノールを50〜95容量%に濃縮するエタノール分離手段(A)をもつ請求項6記載の発酵もろみからのエタノールと水の分離回収装置。
- 発酵もろみに含まれるガス成分、低沸点不純物および中沸点不純物を除去する減圧前処理塔、中沸点不純物を分離するサイドカットノズルを具備し、減圧操作で塔全体の最高沸点を90℃以下で操作して発酵もろみに含まれる蛋白質などの泥状固形物が装置の内壁に付着、焦げ付き(スケーリング)を防止し、発酵もろみ中のエタノールを50〜95容量%に濃縮するエタノール分離手段(A)をもつ請求項7記載の発酵もろみからのエタノールと水の分離回収装置。
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