従来の半自動版交換装置では、上述したように、刷版のくわえ部を版胴のギャップ部に係止させ、版押えローラにより刷版を版胴に押し付けながら版胴を正回転することで、刷版の装着または取り外しを行っている。この場合、版押えローラは、作動の迅速性やコンパクト化などから、版胴の近傍に配置されている。そのため、オペレータに対する安全性を考えると、版押えローラにカバーを設けることが望ましい。この場合、安全性を高めるためには、安全カバーにより版押えローラを被覆するだけでなく、カバーをできるだけ版胴の近傍まで延出する必要がある。
ところが、カバーを版胴に近づけると、刷版のくわえ部を版胴のギャップ部に係止させた状態で版胴を回転すると、刷版の剛性により刷版が撓んでカバーに接触し、版面が傷ついてしまうおそれがある。一方で、カバーを可動式にすると、エアシリンダやレールなどが必要となり、製造コストが増加してしまう。
本発明は上述した課題を解決するものであり、安全性の向上を図ると共に刷版の損傷を防止可能とする版交換装置及びその方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するための請求項1の発明の版交換装置は、刷版の版胴への着脱操作を行う版交換装置において、前記刷版の一端部が前記版胴のギャップ部に係止した状態で前記版胴を回転するときに前記刷版を前記版胴に押し付け可能な版押えローラと、端部が前記版胴に装着された前記刷版に近接した位置で前記版押えローラを外部から被覆する安全カバーと、前記刷版の一端部が前記版胴のギャップ部に係止された状態で前記版胴を回転するときに前記刷版と前記安全カバーとの接触を防止する刷版損傷防止手段と、を備えることを特徴とするものである。
請求項2の発明の版交換装置では、前記安全カバーは、印刷機のフレームに固定支持されることを特徴としている。
請求項3の発明の版交換装置では、前記刷版損傷防止手段は、前記安全カバーに近接した位置であって、該安全カバーの外側に配置されることを特徴としている。
請求項4の発明の版交換装置では、前記刷版の一端部が前記版胴のギャップ部に係止した状態で前記版胴に巻き付けられた前記刷版の他端部を前記ギャップ部に押し込む版押込ローラと、該版押込ローラを前記刷版の他端部を押し込む押込位置と刷版から離れる離間位置とに移動する版押込ローラ移動手段とを設け、前記刷版損傷防止手段として、前記版押込ローラ及び前記版押込ローラ移動手段を適用することを特徴としている。
請求項5の発明の版交換装置では、前記版押込ローラ移動手段は、前記版押込ローラを押込位置と離間位置との間で前記刷版と前記安全カバーとの接触を防止する版損傷防止位置とに移動停止可能であることを特徴としている。
請求項6の発明の版交換装置では、前記版押込ローラの離間位置は、前記版押込ローラの離間位置より前記版胴から遠距離に位置することを特徴としている。
請求項7の発明の版交換装置では、前記刷版の一端部が前記版胴のギャップ部に係止した状態で前記版胴に巻き付けられた前記刷版の他端部を前記ギャップ部に押し込む版押込ローラと、該版押込ローラを前記刷版の他端部を押し込む押込位置と刷版から離れる離間位置とに移動する版押込ローラ移動手段とを設け、前記安全カバーは、前記版押えローラと前記版押込ローラを外部から被覆することを特徴としている。
請求項8の発明の版交換方法は、刷版の一端部側を印刷機における版胴のギャップ部に係止する刷版係止ステップと、前記刷版の一端部を前記ギャップ部に係止した状態で、前記版胴を印刷時の回転と同方向に回転させて版押えローラにより前記刷版を前記版胴に巻き付ける版巻き付けステップと、前記版胴を正回転させて前記刷版を巻き付けるときに、前記版押えローラを外部から被覆する安全カバーと前記刷版との接触を防止しながら前記刷版を前記版胴に装着する版損傷防止ステップと、を有することを特徴とするものである。
請求項9の発明の版交換方法は、刷版の一端部側が印刷機における版胴のギャップ部に係止された状態で、前記版胴を印刷時の回転と逆方向に回転させて前記刷版を取り外す刷版取り外しステップと、前記版胴を逆回転させて前記刷版を取り外すときに、前記版押えローラを外部から被覆する安全カバーと前記刷版との接触を防止しながら前記刷版を前記版胴から取り外す版損傷防止ステップと、前記刷版の一端部側を前記ギャップ部から離脱させる刷版離脱ステップと、を有することを特徴とするものである。
請求項1の発明の版交換装置によれば、刷版の一端部が版胴のギャップ部に係止した状態で版胴を回転するときに刷版を版胴に押し付け可能な版押えローラと、端部が版胴に装着された刷版に近接した位置で版押えローラを外部から被覆する安全カバーと、刷版の一端部が版胴のギャップ部に係止された状態で版胴を回転するときに刷版と安全カバーとの接触を防止する刷版損傷防止手段とを設けている。従って、版押えローラが安全カバーにより被覆されていることから、オペレータが版胴と版押えローラとの間に手などが挟まれるおそれがなく、安全性の向上を図ることができると共に、刷版の一端部が版胴のギャップ部に係止された状態で版胴を回転するときには、刷版損傷防止手段により刷版と安全カバーとの接触が防止されることから、刷版の損傷を防止することができる。
請求項2の発明の版交換装置によれば、安全カバーを印刷機のフレームに固定支持したので、簡単な構成で刷版の損傷を防止することができる。
請求項3の発明の版交換装置によれば、刷版損傷防止手段を安全カバーに近接した位置でこの安全カバーの外側に配置するので、この刷版損傷防止手段により刷版と安全カバーとの接触を適正に防止することができる。
請求項4の発明の版交換装置によれば、刷版の一端部が版胴のギャップ部に係止した状態で版胴に巻き付けられた刷版の他端部をギャップ部に押し込む版押込ローラと、版押込ローラを刷版の他端部を押し込む押込位置と刷版から離れる離間位置とに移動する版押込ローラ移動手段とを設け、刷版損傷防止手段として版押込ローラ及び版押込ローラ移動手段を適用するので、既存の装置により刷版と安全カバーとの接触を防止して刷版の損傷を防止することができ、装置の大型化、高コスト化を可能とすることができる。
請求項5の発明の版交換装置によれば、版押込ローラ移動手段により版押込ローラを押込位置と離間位置との間で刷版と安全カバーとの接触を防止する版損傷防止位置とに移動停止可能とするので、刷版の一端部が版胴のギャップ部に係止された状態で版胴を回転するときに、版押込ローラ移動手段により版押込ローラを版損傷防止位置に移動することから、この版押込ローラにより刷版が支持され、安全カバーとの接触を適正に防止することができる。
請求項6の発明の版交換装置によれば、版押込ローラの離間位置が版押込ローラの離間位置より版胴から遠距離に位置するので、不使用時に、版押込ローラと版胴とが十分に離間していることから、オペレータが版胴と版押込ローラとの間に手などが挟まれるおそれがなく、安全性の向上を図ることができる。
請求項7の発明の版交換装置によれば、刷版の一端部が版胴のギャップ部に係止した状態で版胴に巻き付けられた刷版の他端部をギャップ部に押し込む版押込ローラと、版押込ローラを刷版の他端部を押し込む押込位置と刷版から離れる離間位置とに移動する版押込ローラ移動手段とを設け、安全カバーが版押えローラと版押込ローラを外部から被覆するので、版押えローラと版押込ローラが安全カバーにより被覆されていることから、オペレータが版胴と版押えローラとの間に手などが挟まれるおそれがなく、安全性の向上を図ることができる。
請求項8の発明の版交換方法によれば、刷版の一端部側を印刷機における版胴のギャップ部に係止する刷版係止ステップと、刷版の一端部をギャップ部に係止した状態で版胴を正回転させて版押えローラにより刷版を版胴に巻き付ける版巻き付けステップと、版胴を正回転させて前記刷版を巻き付けるときに版押えローラを外部から被覆する安全カバーと刷版との接触を防止しながら刷版を前記版胴に装着する版損傷防止ステップとを有している。従って、版押えローラが安全カバーにより被覆されていることから、オペレータが版胴と版押えローラとの間に手などが挟まれるおそれがなく、安全性の向上を図ることができると共に、刷版の一端部が版胴のギャップ部に係止された状態で版胴を回転するときには、刷版と安全カバーとの接触が防止されることから、刷版の損傷を防止することができる。
請求項9の発明の版交換方法によれば、刷版の一端部側が印刷機における版胴のギャップ部に係止された状態で版胴を逆回転させて刷版を取り外す刷版取り外しステップと、版胴を逆回転させて刷版を取り外すときに版押えローラを外部から被覆する安全カバーと刷版との接触を防止しながら刷版を前記版胴から取り外す版損傷防止ステップと、刷版の一端部側をギャップ部から離脱させる刷版離脱ステップとを有している。従って、版押えローラが安全カバーにより被覆されていることから、刷版の一端部が版胴のギャップ部に係止された状態で版胴を回転するときには、刷版と安全カバーとの接触が防止されることから、刷版の損傷を防止することができる。
図1は、本発明の一実施例に係る版交換装置を表す概略図、図2は、本実施例の版交換装置を適用する新聞用オフセット輪転印刷機を表す概略図、図3は、本実施例の新聞用オフセット輪転印刷機における印刷ユニットの概略構成図、図4乃至図13は、本実施例の版交換装置により版装着方法を表す概略図、図14至図20は、本実施例の版交換装置により版取外し方法を表す概略図である。
本実施例において、図2に示すように、オフセット輪転印刷機として適用された新聞用オフセット輪転印刷機は、給紙装置11と、印刷装置12と、ターンバー装置13と、折機14とから構成されている。そして、給紙装置11には、それぞれウェブ(用紙)Wがロール状に巻かれた3つの巻取紙Rを保持する複数の保持アーム15が設けられ、この各保持アーム15を回動することで、巻取紙Rを給紙位置に回動することができる。また、この給紙装置11には、図示しない紙継装置が設けられており、給紙位置で繰り出されている巻取紙Rが残り少なくなると、この紙継装置により給紙位置にある巻取紙Rに対して、待機位置にある巻取紙Rを紙継することができる。
また、印刷装置12には、両面4色印刷を行う多色刷印刷ユニット16と、両面2色印刷を行う2色刷印刷ユニット17が設けられている。この多色刷印刷ユニット16及び2色刷印刷ユニット17は、給紙装置11から供給されたウェブWに対して所定の印刷を行うことができる。なお、本実施例では、印刷装置12を、多色刷印刷ユニット16と2色刷印刷ユニット17により構成したが、この構成に限定されるものではない。例えば、両面単色印刷を行う両面単色刷ユニット、一面4色または2色印刷を行う多色刷印刷ユニットなど印刷物に応じて適宜各種ユニットを組み合わせて使用すればよい。
また、ターンバー装置13には、図示しない複数のターンバーが設けられており、各印刷ユニット16,17から送り出された各ウェブWの走行ルートを変更し、所定の順番に重ね合わせることができる。折機14は、ターンバー装置13から搬送されたウェブWを縦折りし、所定の長さで横裁断し、更に横折りして所望の折帖を形成した後に排紙するものである。
従って、まず、給紙装置11から印刷装置12を構成する多色刷印刷ユニット16や2色刷印刷ユニット17にウェブWが供給されると、各印刷ユニット16,17では、各ウェブWに対して4色刷や2色刷が行われる。次に、各印刷ユニット16,17で印刷が施された複数のウェブWは、ターンバー装置13にて、走行ルートが変更されると共に、所定の順番に重ね合わせられる。そして、複数重ね合わされたウェブWは、折機14に搬送され、ここで縦折りされた後、横裁断され、更に横折りされて所望の折帖が形成され、羽根車により排紙コンベア上に排紙される。
この新聞用オフセット輪転印刷機における印刷装置12にて、印刷ユニット16は4色印刷が可能であるように、図3に示すように、H型のタワーユニットとなっている。この印刷ユニット16は、墨(Black)、藍(Cyan)、紅(Magenta)、黄(yellow)ごとの4つのスタックA,B,C,Dが上下に配置されて構成されており、各ユニットA,B,C,Dは、それぞれ左右に対向して版胴21,22,31,32,41,42,51,52が対接し、各版胴21,22,31,32,41,42,51,52にブランケット胴23,24,33,34,43,44,53,54が対接し、各版胴21,22,31,32,41,42,51,52に図示しないインキ装置が設けられている。
この場合、スタックA,Cは、版胴21,22,41,42及びブランケット胴23,24,43,44がハの字形状に配列され、スタックB,Dは、版胴31,32,51,52及びブランケット胴33,34,53,54が逆ハの字形状に配列されている。以下に説明する本実施例の版交換装置は、スタックBの版胴32に対して版交換を行うものである。
本実施例の版交換装置は、図1に示すように、刷版61を版胴32に取付けるときに、オペレータが刷版61の一端部、つまり、くわえ部61aを版胴32のギャップ部32aに手動で係止させた後、刷版61を版胴32に自動で巻き付け、刷版61の他端部、つまり、くわえ尻部61bを版胴32のギャップ部32aに係止させるものである。
即ち、本実施例の版交換装置は、刷版61のくわえ部61aが版胴32のギャップ部32aに係止した状態で版胴32を回転するときにこの刷版61を版胴32に押し付け可能な版押えローラ62と、この版押えローラ62を刷版61の押付位置と刷版32から離れる離間位置とに移動する第1エアシリンダ(版押えローラ移動手段)63とを有している。また、本実施例の版交換装置は、刷版32のくわえ部61aが版胴32のギャップ部32aに係止した状態で版胴32に巻き付けられた刷版61のくわえ尻部61bをギャップ部32aに押し込む版押込ローラ64と、この版押込ローラ64を刷版32のくわえ尻部61bを押し込む押込位置と刷版から離れる離間位置とに移動する第2エアシリンダ(版押込ローラ移動手段)65とを有している。
即ち、印刷機のフレーム71には、版胴32の軸方向に沿って横梁72が延出するように固定されており、この横梁72には、L字形状をなす取付ブラケット73が固定されている。そして、この取付ブラケット73には、上述した第1、第2エアシリンダ63,65が固定されており、この第1、第2エアシリンダ63,65の各駆動ロッド63a,65aの先端部に版押えローラ62、版押込ローラ64がそれぞれ回転自在に装着されている。この場合、取付ブラケット73にて、上側、つまり、横梁72側に第1エアシリンダ63及び版押えローラ62が位置し、下側に第2エアシリンダ65及び版押込ローラ64が配置されている。
そして、横梁72は、版胴32から離れるのに伴って下方に傾斜していることから、第1エアシリンダ63の全長(ストローク)が第2エアシリンダ65の全長(ストローク)より短く設定されている。また、版押込ローラ64は、版押えローラ62よりも大きな進退移動量が必要であることから、第2エアシリンダ65が第1エアシリンダ63よりも下方に配置されている。そのため、版押えローラ62が離間位置にあるとき、刷版61の表面に近い位置にあり、版押込ローラ64が離間位置にあるとき、刷版61の表面から遠い位置にある。つまり、版押込ローラ64の離間位置は、版押えローラ62の離間位置より版胴32から遠距離に位置することとなる。
また、第1エアシリンダ63及び第2エアシリンダ65は、制御装置74により駆動制御可能となっている。具体的には、制御装置74は、第1エアシリンダ63及び第2エアシリンダ65に対するエアの給排を制御することで、第1エアシリンダ63は、版押えローラ62を押付位置と離間位置とに移動可能であり、第2エアシリンダ65は、版押込ローラ64を押込位置と離間位置とに移動可能となっている。また、制御装置74は、版胴32を駆動回転可能な版胴用モータ75を駆動制御可能となっている。
なお、版胴32には、刷版61のくわえ部61a及びくわえ尻部61bを挿入するギャップ32aが形成されており、このギャップ部32aには、くわえ部61aを係止する第1係止溝32bが形成されると共に、くわえ尻部61bを係止する第2係止溝32cが形成されている。また、このギャップ部32aには、第2係止溝32cに挿入されたくわえ尻部61bを押さえる版押え爪32dが配置されている。
そして、本実施例では、取付ブラケット73に、版押えローラ62と版押込ローラ64との間に位置して、版胴32に装着された刷版61に近接した位置で版押えローラ62を外部から被覆する安全カバー77が固定されている。また、刷版61のくわえ部61aが版胴32のギャップ部32aに係止された状態で版胴32を回転するときに刷版61と安全カバー77との接触を防止する刷版損傷防止手段が設けられている。
即ち、安全カバー77は、基端部が取付ブラケット73に取付けられる一方で、先端部が版胴32(刷版61)に接近する位置まで延出され、版押えローラ62と版押込ローラ64の間で、版胴32の軸方向に沿って設けられている。この場合、版押込ローラ64の上方には横梁72があり、オペレータの作業空間は、版押えローラ62より下方の空間となっている。安全カバー77は、このオペレータの作業空間から版押えローラ62が見えないように覆っている。本実施例にて、刷版損傷防止手段は、安全カバー77に接近してこの安全カバーの外側に配置される版押込64ローラ及び第2エアシリンダ65が適用される。そして、この第2エアシリンダ65は、版押込ローラ64を押込位置と離間位置との間で刷版61と安全カバー77との接触を防止する版損傷防止位置とに移動停止可能となっている。この場合、第2エアシリンダ65に給排する配管に開閉弁を設け、この開閉弁を開閉制御することで、内部のピストンを中間位置で停止し、版押込ローラ64を版損傷防止位置に停止可能としている。
なお、版押えローラ62の離間位置は、図1に実線で表す位置であり、押付位置を版押えローラ62aとして表している。また、版押込ローラ64の離間位置は、図1に実線で表す位置であり、押込位置を版押込ローラ64aとして表し、版損傷防止位置を版押込ローラ64bとして表している。
ここで、本実施例の版交換装置による刷版61の取り付け方法及び取り外し方法について説明する。
制御装置74は、刷版61の版胴32への取り付けにあたっては、各エアシリンダ63,65を駆動制御する。まず、図4に示すように、版胴用モータ75を駆動制御することで、版胴32を版掛け位置で停止させる。この版胴32の版掛け位置とは、版胴32のギャップ部32aが版押えローラ62及び版押込ローラ64よりも若干下方に若干下向きに位置する状態である。なお、78は、後述する版逃がし装置であり、制御装置74により駆動制御される。また、79は、くわえ尻排出検出センサであり、検出信号が制御装置74に入力されるようになっている。
次に、図5に示すように、この状態で、オペレータは版掛けを実施する。この版掛けでは、版胴32のギャップ部32a(第1係止溝32b)に、刷版61のくわえ部61aを引っ掛けて係止させる。なお、この状態では、版押えローラ62及び版押込ローラ64は、いずれも離間位置に退避している。
そして、図6に示すように、この状態から、第2エアシリンダ65を駆動して版押込ローラ64を前進し、中間位置、つまり、版損傷防止位置で停止させる。続いて、図7に示すように、版胴32を所定角度だけ正転させる。なお、正転とは、版胴32に刷版61が巻き付く方向、つまり、図6に矢印で表す反時計回り方向である。また、所定角度とは、版胴32のギャップ部32a、つまり、刷版61のくわえ部61aが安全カバー77を越えた回転位置である。
ここで、図8に示すように、第1エアシリンダ63を駆動して版押えローラ62を前進し、この版押えローラ62が刷版61を版胴32の外周面に押し付ける押付位置で停止させる。一般に、刷版61は、版胴32に巻回する向きとは逆向きの版胴32から離隔する方向に湾曲している。
そして、この状態で、版胴32を正転させると、図9に示すように、刷版61が版押えローラ62に押え付けられたままで版胴32の外周面に巻き付けられていく。このとき、版押込ローラ64の上方には横梁72(図1参照)があり、オペレータの作業空間は、版押込ローラ64の下方空間となっており、この作業空間から見て版押えローラ62が安全カバー77により被覆されていることから、オペレータの安全が確保される。また、刷版61は、版胴32の外周面と安全カバー77の端部との間を通ることとなるが、外周面が版損傷防止位置にある版押込ローラ64により支持可能となっている。そのため、刷版61は、多少の暴れがあっても、表面が版押込ローラ64に支持されながら、版胴32の外周面と安全カバー77の端部との間を通り、版押えローラ62に押え付けられながら版胴32の外周面に巻き付けられる。従って、刷版61の表面が安全カバー77に接触することはなく、損傷が防止される。この場合、刷版61は、版押込ローラ64により安全カバー77の端部と接触が防止されるものであるが、刷版61の形状により版押込ローラ64は常時刷版61を支持するものではない。
なお、版胴32が回転して外周面に刷版61が巻き付けられるとき、版逃がし装置78により刷版61のくわえ尻部61bを支持することで、周囲の他の装置に対するくわえ尻部61bの接触が阻止され、このくわえ尻部61bの損傷が防止される。
その後、図10に示すように、版胴32が回転して外周面に刷版61のほとんどの部分が巻き付けられると、版逃がし装置78を退避させる。そして、図11に示すように、くわえ尻排出検出センサ79が刷版61のくわえ尻部61bを検出すると、版胴32の正転を停止させる。これにより、刷版61のくわえ尻部61bが版胴32のギャップ部32aに接近する。
ここで、図12に示すように、図示しないオートクランプ装置(版押え爪32d)を解除し、第2エアシリンダ65を駆動して版押込ローラ64を前進し、押込位置に停止させる。すると、刷版61は、くわえ尻部61bが版押込ローラ64によりギャップ部32a(第2係止溝32c)内に押し込まれる。そして、オートクランプ装置(版押え爪32d)を作動することで、刷版61のくわえ尻部61bが版押え爪32dに係止され、くわえ尻部61bが版胴32のギャップ部32aに固定される。
その後、図13に示すように、第1エアシリンダ63を駆動して版押えローラ62を後退し、版胴32(刷版61)から離れた離間位置に停止させると共に、第2エアシリンダ65を駆動して版押込ローラ64を後退し、版胴32(刷版61)から離れた離間位置に停止させる。ここで、刷版61の版胴32への取り付けが完了する。
一方、制御装置74は、刷版61の版胴32への取り外しにあたっては、各エアシリンダ63,65を駆動制御する。まず、図14に示すように、版胴用モータ75を駆動制御することで、版胴32を版取り外し位置で停止させる。この版胴32の版取り外し位置とは、版胴32のギャップ部32aが版押えローラ62及び版押込ローラ64よりも若干下方に若干下向きに位置する版掛け位置に近い状態である。
次に、図15に示すように、第1エアシリンダ63を駆動して版押えローラ62を前進し、この版押えローラ62が刷版61を版胴32の外周面に押し付ける押付位置で停止させる。また、第2エアシリンダ65を駆動して版押込ローラ64を前進し、中間位置、つまり、版損傷防止位置で停止させる。
この状態から、図16に示すように、図示しないオートクランプ装置(版押え爪32d)を解除し、版押え爪32dによる刷版61のくわえ尻部61bの係止を解除する。そして、この状態で、版胴32を逆転させる。すると、図17に示すように、版胴32から刷版61が巻き出されていき、このとき、くわえ尻排出検出センサ79が刷版61のくわえ尻部61bを検出すると、版胴32の逆転を継続する一方、くわえ尻排出検出センサ79が刷版61のくわえ尻部61bを検出できないときは、版胴32の逆転を停止させる。
このとき、版押えローラ62が安全カバー77により被覆されていることから、オペレータの安全が確保される。また、刷版61は、版胴32の外周面と安全カバー77の端部との間を通って排出されることとなるが、外周面が版損傷防止位置にある版押込ローラ64により支持可能となっている。そのため、刷版61は、多少の暴れがあっても、表面が版押込ローラ64に支持されながら、版胴32の外周面と安全カバー77の端部との間を通り、版押えローラ62に押え付けられながら版胴32の外周面に巻き付けられる。従って、刷版61の表面が安全カバー77に接触することはなく、損傷が防止される。
なお、版胴32が回転して外周面から刷版61が巻き出されるとき、版逃がし装置78により刷版61のくわえ尻部61bを支持することで、版胴32に対するくわえ尻部61bの接触が防止される。
その後、図19に示すように、版胴32が回転して外周面から刷版61のほとんどの部分が巻き出されると、版逃がし装置78を退避させる。そして、この状態では、刷版61は、くわえ部61aのみが版胴32のギャップ部32aに係止され、全体が自重で垂れ下がった形になる。ここで、第1エアシリンダ63を駆動して版押えローラ62を後退し、版胴32(刷版61)から離れた離間位置に停止させると共に、第2エアシリンダ65を駆動して版押込ローラ64を後退し、版胴32(刷版61)から離れた離間位置に停止させる。
そして、図20に示すように、オペレータは、版胴32のギャップ部32aから刷版61のくわえ部61aを取外すことで、刷版61の版胴32からの取り外しが完了する。
このように本実施例の版交換装置にあっては、刷版61のくわえ部61aが版胴32のギャップ部32aに係止した状態で版胴32を回転するときに刷版61を版胴31に押し付け可能な版押えローラ62を設け、第1エアシリンダ63によりこの版押えローラ62を刷版61の押付位置と刷版61から離れる離間位置とに移動可能とし、版押えローラ62を外部から被覆する安全カバー77を設けると共に、刷版61のくわえ部61aが版胴32のギャップ部32aに係止された状態で版胴32を回転するときに刷版61と安全カバー77との接触を防止する刷版損傷防止手段を設けている。
従って、版押えローラ62が安全カバー77により被覆されていることから、印刷時などに、オペレータが版胴32と版押えローラ62との間に手などが挟まれるおそれがなく、安全性の向上を図ることができると共に、版交換時に、刷版61のくわえ部61aが版胴32のギャップ部32aに係止された状態で版胴32を回転するとき、刷版損傷防止手段により刷版61と安全カバー77との接触が防止されることから、刷版61の損傷を防止することができる。
また、本実施例の版交換装置では、刷版61のくわえ部61aが版胴32のギャップ部32aに係止した状態で版胴32に巻き付けられた刷版61のくわえ部尻61bをギャップ部32aに押し込む版押込ローラ64を設け、第2エアシリンダ65によりこの版押込ローラ64を刷版61のくわえ部尻61bを押し込む押込位置と刷版61から離れる離間位置とに移動可能とし、刷版損傷防止手段としてこの版押込ローラ64を適用している。従って、既存の装置により刷版61と安全カバー77との接触を防止して刷版61の損傷を防止することができ、装置の大型化、高コスト化を抑制することができる。
そして、この場合、版押込ローラ64及び第2エアシリンダ65を安全カバー77に接近して、且つ、安全カバー77の外側に配置しており、この版押込ローラ64により刷版61と安全カバー77との接触を適正に防止することができる。
また、本実施例の版交換装置では、第2エアシリンダ65により版押込ローラ64を押込位置と離間位置との間で刷版61と安全カバー77との接触を防止する版損傷防止位置に移動停止可能としている。従って、刷版61のくわえ部61aが版胴32のギャップ部32aに係止された状態で版胴32を回転するときに、第2エアシリンダ65により版押込ローラ64を版損傷防止位置に移動することから、この版押込ローラ64により刷版61が支持され、安全カバー77との接触を適正に防止することができる。
また、本実施例の版交換装置では、版押込ローラ64の離間位置を版押えローラ62の離間位置より版胴32から遠距離に位置させている。従って、不使用時には、版押込ローラ64と版胴32とが十分に離間していることから、オペレータが版胴32と版押込ローラとの間に手などが挟まれるおそれがなく、安全性の向上を図ることができる。
そして、本実施例の版交換方法によれば、上述した版交換装置を用いて刷版61の取り付けや取り外しを行うことで、安全性を向上することができると共に、作業の信頼性を向上することができ、また、刷版61の損傷が防止されることで、印刷品質を向上することができる。
なお、上述の実施例では、刷版61の版胴32への取り付け時に、版胴32のギャップ部32aに刷版61のくわえ部61aを係止させた後、まず、第2エアシリンダ65により版押込ローラ64を版損傷防止位置に移動してから、次に、第1エアシリンダ63により版押えローラ62を押付位置に移動しており、版押えローラ62により刷版61を押える前に版押込ローラ64を版損傷防止位置に移動することで、刷版61と安全カバー77との接触が確実に防止される。但し、この手順に限定されるものではない。例えば、第1エアシリンダ63により版押えローラ62を押付位置に移動してから、次に、第2エアシリンダ65により版押込ローラ64を版損傷防止位置に移動してもよく、また、同時に移動するようにしてもよい。
また、上述の実施例では、刷版61の版胴32への取り外し時に、第1エアシリンダ63により版押えローラ62を押付位置に移動する同時に、第2エアシリンダ65により版押込ローラ64を版損傷防止位置に移動したが、版押えローラ62を押付位置に移動してから、版押込ローラ64を押付位置に移動したり、版押込ローラ64を押付位置に移動してから、版押えローラ62を押付位置に移動してもよい。
また、上述の実施例では、版押えローラ62と版押込ローラ64を設け、版押込ローラ64を本発明の刷版損傷防止手段に適用したが、別途、刷版61と安全カバー77との接触を防止する刷版損傷防止機構を設けてもよい。また、この安全カバー77により版押えローラ62だけを被覆したが、版押えローラ62と版押込ローラ64の両方を安全カバーにより外部から被覆し、この安全カバーの外側に刷版支持機構を設けてもよい。更に、版押えローラ62と版押込ローラ64を1本のローラで兼用して、この兼用ローラを安全カバーにより外部から被覆し、この安全カバーの外側に刷版損傷防止機構を設けてもよい。
図21は、本発明の変形例に係る版交換装置を表す概略図である。この変形例の版交換装置において、図21に示すように、横梁72の取付ブラケット73には、版押えローラ62と版押込ローラ64が装着されると共に、その下方のオペレータ作業空間からこの版押えローラ62及び版押込ローラ64を外部から被覆する安全カバー81が固定されている。また、刷版61が版胴32のギャップ部32aに係止された状態で版胴32を回転するときに刷版61と安全カバー81との接触を防止する刷版損傷防止手段としての刷版損傷防止ローラ82が、安全カバー81の下方に所定距離をもってフレームに回転自在に設けられている。
従って、版押えローラ62及び版押込ローラ64が安全カバー81により被覆されていることから、印刷時などに、オペレータが版胴32と各ローラ62,64との間に手などが挟まれるおそれがなく、安全性の向上を図ることができると共に、版交換時に、刷版61のが版胴32のギャップ部32aに係止された状態で版胴32を回転するとき、刷版損傷防止ローラ82により刷版61と安全カバー81との接触が防止されることから、刷版61の損傷を防止することができる。
また、上述の実施例では、刷版損傷防止手段をエアシリンダとローラにより構成したが、この構成に限定されるものではなく、例えば、エアシリンダに代えて、油圧シリンダ、エアモータ、電動モータなどを適用してもよく、また、高圧エアなどを用いて刷版61と安全カバー77との接触を防止するようにしてもよい。
また、上述の実施例では、本発明の版交換装置を印刷装置12の印刷ユニット16におけるスタックBの版胴32に対して適用したが、スタックBの版胴31やスタックA,C,Dの版胴21,22,41,42,51,52に対しても適用することができる。この場合、各版胴21,22,31,32,41,42,51,52に対するアクセス位置が相違することから、版押えローラ62や版押込ローラ64の移動方向にそれに応じて設定すればよいものである。
また、上述した実施例では、本発明の版交換装置及びその方法を新聞用オフセット輪転印刷機に適用して説明したが、商業用オフセット輪転印刷機、または、枚葉印刷機など他の印刷機に適用することもできる。