JP2010064099A - 円筒形状物体のろう付けあるいは拡散接合による接合方法 - Google Patents

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俊仁 齋藤
Masao Takekoshi
正雄 竹腰
Fumie Ono
文衛 小野
Shuichi Ueda
修一 植田
Satoshi Yamashita
敏 山下
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Abstract

【課題】本発明の課題は、HIP法のような大掛かりな設備を必要としないで同心円状に重なる関係にある金属製の内筒と外筒とを一体化するための新規な加熱接合方法を提示すること、また、剛性の高い素材同士の接合を可能とする手法を提示することにある。
【解決手段】本発明の内筒部材と外筒部材の接合方法は、接合させる内筒部材の外面を設計形状に加工するステップと、内筒部材の外面にろう材を載せるステップと、接合させる外筒部材内に内筒部材を嵌合させるステップと、C/C材からなるホルダーを外筒部材に被せるステップと、入れ子状になった内筒部材と外筒部材とホルダーをろう材の溶融温度以上に加熱し、内筒部材と外筒部材とホルダーの熱膨張率の差に起因する接触圧を印加させるステップと、冷却してホルダーから部材を取り出すステップとからなるものとした。
【選択図】図1

Description

本発明は物質の異なる熱膨張係数を利用したろう付けあるいは拡散接合による接合方法に関する。
推進力に燃焼を使うロケットのスラスト室(燃焼室及びノズル)は高温ガスが内部を流れるため、ロケット内壁を冷却するための構造が不可欠である。一般にはそれは、壁内部に溝をつくりその溝に燃料等を冷媒として循環し冷却する形態が採られている。スラスト室の構造は図5に示されるように燃焼室2と排気ノズル3がくびれ部4で結合されたものとなっている(特許文献1参照)。従来、このスラスト室の冷却路を加工する方法として、まず機械的な切削加工により溝51を製作した内壁材5に電気鋳造法にて外壁板6を被せる方法が採用されてきた。また、冷却ジャケットを要する配管製作技術としては特許文献2に見られるように突条間に溝が形成された内筒と外筒をろう付けあるいは拡散接合が提案されているが、接合時に両部材を密着させる方法に、熱間等方圧加圧法(以下HIPと略す。)が採用されている。HIPとは水やアルゴンなどのガスを圧力媒体とし、通常98MPa(1000kgf/cm)以上の高い等方圧力と1000℃以上の温度との相乗効果を利用して加圧処理する技術である。
ロケット燃焼器製造技術に関する従来技術では、内壁材に溝加工を施すために電気鋳造法が用いられていたため、製作のための時間が掛かるとともに、設備費等が嵩みコストが高くなるという問題がある。また冷却ジャケットを要する配管製作技術については、外筒の接合法としてHIP法を用いたろう付けあるいは拡散接合を採用し製作する方法が一般的であるが、この手法をロケットのスラスト室の製造に適用することが考えられるが、HIPによる施工も大がかりな設備が必要であり設備費等が嵩みコストが高くなるという問題がある。
機械的な切削等によって溝加工を施した内壁材に外壁板を被せて接合一体化してロケットのスラスト室を製作するという方法において、従来の電気鋳造法や、冷却ジャケットを要する配管製作技術として用いられているHIP法を用いたろう付けあるいは拡散接合ではなく、大掛かりな設備を必要としない簡便な内壁材と外壁板を接合する手法を開発することの必要性が認識されるに至った。
そのような方向に沿った技術として、HIP法を用いない金属部材の拡散接合方法が特許文献3に提示されている。この発明は、金属と金属との拡散接合時に使用される拡散接合用治具に関し、熱処理時における熱膨張を従来より大幅に低減することができ、また、熱容量の非常に小さい拡散接合用治具を提供することを目的としたもので、拡散接合すべき被拡散接合体(積層体)を挟持する一対の挟持部材と、前記挟持部材を連結する連結部材とからなり、少なくとも前記連結部材を、カーボンコンポジット材(炭素繊維積層材:以下C/C材と略称する。)により形成して構成する。また、前記挟持部材の前記被拡散接合体への接触部に、浸炭防止剤を塗布して構成する。さらに、前記連結部材を、半筒状の本体部の外周に切欠部を形成して構成するというものである。図4に示されたものはレーシングトラック状の金属触媒担体を拡散接合する例で、この金属触媒担体は、金属からなるレーシングトラック状の外筒内に嵌挿されている。被拡散接合体となる金属触媒担体は、金属薄鋼板からなる波板と平板とを交互に重ね、これ等を円形形状に多重に巻回した後、これをレーシングトラック状に押し潰すことにより形成されている。挟持部材および連結部材が被拡散接合体となる外筒に強固に固定された状態で、拡散接合用治具が装着された外筒および金属触媒担体が真空炉内に収容され、例えば、1150℃程度の温度で熱処理することにより、波板と平板とが拡散接合され、また、金属触媒担体の外周が外筒の内周に拡散接合される。この後、真空炉から金属触媒担体,拡散接合用治具が取り出され、金属触媒担体の温度が室温まで低下したところで外筒から拡散接合用治具が取り外され、波板と平板が拡散接合された金属触媒担体が得られる。すなわち、この発明は金属部品同士を拡散接合するに際して、熱膨張率が極めて小さいC/C材にて形成した拡散接合用治具を使用して、被接合部材と拡散接合用治具との熱膨張率の差により充分な接合圧力を確保する技術であるといえる。
特開2005−513322号公報 「動作中に高い熱負荷を受ける構成部品及びそのような構成部品を製造する方法」 平成17年5月12日公開 特開平8−216989号公報 「水中航走体の外殻」 平成8年8月27日公開 特開2005−95910号公報 「拡散接合方法」 平成17年4月14日公開
従来の電気鋳造法に代えて特許文献3に記載の拡散接合方法をロケットのスラスト室の製造に適用することに想到したのであるが、この特許文献3における被加工物は積層構造であって、拡散接合させる部材間の面が一方向のものであるため、その両側の面を挟持する部材を温度膨張係数の低いC/C材の連結部材で結合する構成が採られている。これに対し、本発明が対象とする被加工物であるロケットのスラスト室の内筒と外筒とは同心円状に重なった関係であってその接合面は360°の等放射方向の面となること、また、特許文献3における被加工物は波板と平板を幾重にも重ねたものであるため、弾性を備えた接合となるが、本発明のスラスト室の内筒と外筒はともに剛性の高い非圧縮性素材同士の接合であるため、高温時に適正な圧接力を印加することが容易でないという問題がある。
本発明の課題は、HIP法のような大掛かりな設備を必要としないで同心円状に重なる関係にある金属製の内筒と外筒とを一体化するための新規な加熱接合方法を提示すること、また、剛性の高い素材同士の接合を可能とする手法を提示することにある。
本発明の内筒部材と外筒部材の接合方法は、接合させる内筒部材の外面を設計形状に加工するステップと、内筒部材の外面にろう材を載せるステップと、接合させる外筒部材内に内筒部材を嵌合させるステップと、C/C材からなるホルダーを外筒部材に被せるステップと、入れ子状になった内筒部材と外筒部材とホルダーをろう材の溶融温度以上に加熱し、内筒部材と外筒部材とホルダーの熱膨張率の差に起因する接触圧を印加させるステップと、冷却してホルダーから部材を取り出すステップとからなるものとした。
また、本発明の内筒部材と外筒部材の他の接合方法は、接合させる内筒部材の外面を設計形状に加工するステップと、内筒部材の外面と接合させる外筒部材内面を表面処理するステップと、外筒部材内に接合させる内筒部材を嵌合させるステップと、C/C材からなるホルダーを外筒部材に被せるステップと、内筒部材と外筒部材をホルダーごと拡散温度以上に加熱し、内筒部材と外筒部材とホルダーの熱膨張率の差に起因する接触圧を印加させるステップと、冷却してホルダーから部材を取り出すステップとからなるものとした。
また、本発明の内筒部材と外筒部材の接合方法は、上記構成に加え、接合させる内筒部材と外筒部材はロケットのスラスト室の壁であって、内筒部材外面の設計形状加工は冷却溝を形成するものとし、外筒部材とホルダーは分割形態のものとした。
さらに、本発明の内筒部材と外筒部材の接合方法は、外筒部材の外径寸法とホルダーの内径寸法に基づく両者間のクリアランスは接合温度に達した際の接合部の接触圧が設定値となるようにホルダーの内径寸法を設計するものとした。
本発明のろう付けによる接合方法は、接合させる外筒部材内に内筒部材を嵌合させ、更にC/C材からなるホルダーを外筒部材に被せるという入れ子状の形態、すなわち同心円状に重なった関係をとることにより、その接合面は360°の放射角に対して均等条件とすることができる。また、入れ子状になった内筒部材と外筒部材とホルダーをろう材の溶融温度以上に加熱すると、比較的熱膨張率が高い素材の内筒部材や外筒部材と熱膨張率が低いカーボンコンポジット材のホルダーとの熱膨張率の差によって、径を広げようとする内筒と外筒を外部からの加圧力を印加することなくホルダーが外側から押さえつける結果となる。HIP法のように特別な加圧機構を備えることなく、単にろう材の溶融温度以上に加熱するというだけでろう材の溶融と接合面の圧接機能を果たすことができる。しかもホルダーは一回の接合だけでなく、同型の施工には繰り返し使用が可能である。従来技術に比較して画期的なコストダウンにつながる。
また、本発明の内筒部材と外筒部材の拡散接合による接合方法においても、接合させる外筒部材内に内筒部材を嵌合させ、更にC/C材からなるホルダーを外筒部材に被せるという入れ子状の形態、すなわち同心円状に重なった関係をとることにより、その接合面は360°の放射角に対して均等条件とすることができる点、また、入れ子状になった内筒部材と外筒部材とホルダーを拡散接合温度以上に加熱すると、比較的熱膨張率が高い素材の内筒部材や外筒部材と熱膨張率が低いC/C材のホルダーとの熱膨張率の差によって、径を広げようとする内筒と外筒をホルダーが外側から押さえつける結果となる。HIP法のように特別な加圧機構を備えることなく、単にろう材の溶融温度以上に加熱するというだけでろう材の溶融と接合面の圧接機能を果たすことができ、しかもホルダーは一回の接合だけでなく、同型の施工には繰り返し使用が可能であるというろう付けと同様の効果が認められ、従来技術に比較して画期的なコストダウンにつながる。
また、本発明の内筒部材と外筒部材の接合方法は、外筒部材とホルダーを2以上の分割形態のものとすることによって、半径が均一な円筒状物に限らず途中にくびれ部分を持つ部材を密接状態で入れ子状に組み込むことを可能とし、内筒部材外面に冷却溝を形成したものを外筒と接合加工することによって、冷却構造を必要とするロケットのスラスト室の壁をも対象とすることができるという効果を奏する。
さらに、本発明の内筒部材と外筒部材の接合方法は、外筒部材の外径寸法とホルダーの内径寸法に基づく両者間のクリアランスは接合温度に達した際の接合部の接触圧が設定値となるようにホルダーの内径寸法を設計することによって、被加工物が剛性の高い内筒部材と外筒部材であっても、接合温度に加熱した際に部材間に過度の負荷がかかる事態と、必要な圧接力が得られない事態とを避け、接合面に適切な圧接力を印加することができる。
本発明の内壁材に外壁板を被せて接合一体化する手法として、図5に示されたような冷却機能を備えたロケットのスラスト室の壁を実施形態例として説明する。燃焼室2と噴射ノズル3がくびれ部4を介して一体化されたスラスト室1の壁材は、まず、第1のステップとして図1のAに示されるように内筒5の外面を設計形状に削りだす。第2のステップは内筒5の外面に冷却溝を削りだす。この例の場合、冷却溝51を機械的な切削加工や化学的なエッチングによって形成することになる。この状態が図のBに示したものである。第3のステップとして、内筒5の外周面にろう材(図示せず)をのせ、別途製作した外筒6を外側から嵌める。ろう材はパラジウムろう、金ろうなど、目的に合わせて選定する。ろう材のタイプについても、箔、またはメッキなど、目的に合わせて選定する。外筒6は二分割またはそれ以上に分割し、内筒5にかぶせたあと、電子ビーム照射などの方法により割れ目を接合する。この状態が図のCに示されている。第4のステップは内筒5を抱え込んだ外筒6の外側から、更にホルダー7を被せる工程となる。ホルダー7はC/C材からなるもので、図のDに示されるように外筒6と同様に二分割またはそれ以上に分割された構成を採用する。被加工品が均一半径でない円筒状物を対象とするためである。分割形態のホルダーは図に示すようなフランジ部71を備え、その両方のフランジ部71の穴を通してボルト止めするか両フランジ部71を挟持部材で挟持するなりして固定する。このホルダー7を被せて内筒5,外筒6そしてホルダー7が入れ子形態となったものの断面図を図のEに示す。
ステップ5ではこの入れ子形態となった内筒5,外筒6そしてホルダー7を炉内に入れ、真空状態にしてから加熱する。真空状態とするのは金属素材からなる内筒5,外筒6が高温時に酸化するのを防止するためである。ろう材が要する温度よりやや高い温度まで加熱し、ろう材が熔けて内筒5と外筒6間に馴染む時間を見込んで高温状態を維持する。温度が上昇する変化に伴い、内筒5,外筒6そしてホルダー7はそれぞれ熱膨張するが、膨張の程度には差がある。すなわち、ホルダー7の素材はC/C材であるため、ほとんど熱膨張しないが、金属素材である内筒5,外筒6は顕著に熱膨張する。因みに、通常内筒は銅または銅合金が使用され、膨張率は大きい。その結果、膨張しようとする内筒5,外筒6をホルダー7が外側から押さえつける関係が生じ、接合しようとする内筒5と外筒6の接触面に圧接力が作用して両者をろう付け接合する。ステップ6で、炉の過熱を止め常温まで冷却してホルダーから内筒5,外筒6そしてホルダー7を炉から取り出す。常温に戻った時点では熱収縮がなされているので、外筒6とホルダー7との間は密着状態が解かれているので、ホルダー7のフランジ結合を外せば、中から内筒5と外筒6がろう付けされ一体となったコンポジット室を容易に取り出すことができる。最後のステップ7として、内筒5の内面を設計形状に削り出し、整形する。高熱処理の工程を経た後、内筒5の内面に若干の変形が生じたとしても、最後にこの整形加工を施すことで、設計形状を確保することができる。図2に示すように内筒5に溝51が加工され、隣接された溝51間の隔壁52の端面が外筒6の内周面にろう付けされ接合されてロケットのスラスト室壁として仕上がる。
本発明の接合方法においては、接合温度になった時点で接合部が適正な密着圧力となるように、外筒6の外径寸法とホルダー7の内径寸法間のクリアランスを適正な値とする設計が必要となる。接合する内筒5も外筒6も金属素材であり、高温時には熱膨張する。その外筒6は高温となってもあまり膨張することのないC/C材のホルダー7によって囲まれているため、自らの膨張のため、ホルダー7によって締め付けられる。内筒5,外筒6及びホルダー7はそれぞれ剛性が高い性質のものであり、内筒5や外筒6の膨張がホルダー7によって過度に拘束されると生じる応力が過大となって、内筒5や外筒6に内部歪みを生じてしまう。そこで、常温時には外筒6の外径とホルダー7の内径間にクリアランスが存在するように外径とホルダー7の内径寸法を設定する。しかし、このクリアランスが大きすぎれば、高温時おいて外筒6が熱膨張してもホルダー7の内周面に密接することがなかったり、接触しても締め付け力が不足であったりすることもある。
内筒5,外筒6及びホルダー7の熱膨張率α,α,αをそれぞれ既知値として事前に得ておく。α≒α≫α の関係を前提とし、常温温度をTを計測すると共に、ろう材が溶融する高温温度Tについても事前に確認して得ておく。また、常温時の内筒5,外筒6及びホルダー7の内径寸法と厚み寸法r,D,r,D,r,Dをそれぞれ既知値として把握しておく。高温時の適正な圧接力Fを得るための適正なクリアランスは後述する計算式にこれらの数値を当てはめて計算する。
上記の例は接合面をろう付けとするものであるが、拡散接合の場合について説明する。プロセスはろう付けの場合とほぼ同様であり、第1のステップにおいて内筒5の外面を設計形状に削りだす点、第2の内筒5の外面に冷却溝を削りだす点は同様である。第3のステップとして、拡散接合にはろう材は不要であるが必要な表面処理を実施することとなる。第4のステップで内筒5を抱え込んだ外筒6の外側から、更にホルダー7を被せ、内筒5,外筒6そしてホルダー7が入れ子形態とする点は同様である。ステップ5ではこの入れ子形態となった内筒5,外筒6そしてホルダー7を炉内に入れ、真空状態にしてから加熱する点は同じであって、拡散接合がなされる温度まで加熱し、内筒5と外筒6間に十分な拡散接合がなされる時間を見込んで高温状態を維持する。温度が上昇する変化に伴い、ホルダー7の素材はC/C材であるため、ほとんど熱膨張しないが、金属素材である内筒5,外筒6は顕著に熱膨張する。その結果、この場合も膨張しようとする内筒5,外筒6をホルダー7が外側から押さえつける関係となって内筒5と外筒6の接触面に圧接力が生じ、高温状態であることと相まって両者を拡散接合する。ステップ6で、炉の過熱を止め常温まで冷却してホルダーから内筒5,外筒6そしてホルダー7を炉から取り出す点、最後のステップ7として、内筒5の内面を設計形状に削り出し、整形する工程は先のろう付けの時と同様である。仕上り形態はこの場合も図2と同様であるが、隔壁52の端面と外筒6の内周面の接合はろう付けではなく、拡散接合となる。
この拡散接合の場合も、適正な接合温度になった時点で接合部が適正な密着圧力となるように、外筒6の外径寸法とホルダー7の内径寸法間のクリアランスを適正な値とする設計が必要となる。内筒5,外筒6及びホルダー7の熱膨張率α,α,αをそれぞれ既知値として事前に得ておく。α≒α≫α の関係を前提とし、常温温度をTを計測すると共に、ろう材が溶融する高温温度Tについても事前に確認して得ておく。また、常温時の内筒5,外筒6及びホルダー7の内径寸法と厚み寸法r,D,r,D,r,Dをそれぞれ既知値として把握しておく。高温時の適正な圧接力Fを得るための適正なクリアランスは後述する計算式にこれらの数値を当てはめて計算する。
次に、本発明が円筒形状物の熱溶着方法に関するものであることに鑑み、軸座標系の応力−歪み関係式から、密着応力の計算方法について説明する。軸座標系(r,θ,z)の応力−歪みの一般関係式から応力σは式1で示される。
Figure 2010064099
ここで、σは応力で添え字はその方向、Eはヤング率、Uは変位、νはポアソン比、τは温度分布、Gは横弾性係数であり、β=αE/(1−2ν)。また、eについては式2参照。
また、歪み成分εは式2で示される。
Figure 2010064099
このときの運動方程式は式3で表され、
Figure 2010064099
ここで、ρは密度である。この式3に式1を代入して、次式の熱弾性方程式を得ることができる。
Figure 2010064099
そして、λ=ν・E/(1+ν)(1−2ν)であり、R,Θ,Zはその他の外力を示す。
また、本式を得るときに、扇形微小要素を考え、微小要素の外向き応力を正と考えた。このため、例えば、円筒形内側では中心方向が正、一方円筒形外側では中心方向は負で表される。
形状条件の適用について以下に説明する。ここで、実際のろう付けの条件について検討する。本発明の技術では、軸対称形状のろう付けを行うことを目標としている。ろう付けを行うのは、内筒と外筒の間であり、それらをホルダーで固定することで内筒と外筒の間の密着力を得るという思想である。この密着力の大きさを算出することが本計算手法の目的である。
まず、内筒、外筒、ホルダーを要素として、それぞれについての一般式を求めることとする。実際には、内筒は中実、外筒およびホルダーは中空であるが、当初は全て中空の要素として扱う。ろう付けの際、全ての要素をくみ上げた状態で、均一な温度に加熱し、一定時間維持する。常温を基準とすると、全体を温度変化△Tで加熱し、定常状態とすることになり、歪み等の時間変化は無いものと考えられる。
Figure 2010064099
また、温度変化量は軸対称であることから、生じる歪みも軸対称で、円周方向の歪みも0と考えられる。
Figure 2010064099
となる。軸対称形状でも燃焼器ノズルのような複雑形状については、これを解く必要がある。ここでは、単純化のため円筒形状に限る。r方向の歪みはz方向で一定、またz方向の変位はr方向で一定となると考えられるので、
Figure 2010064099
Figure 2010064099
Figure 2010064099
Figure 2010064099
密着応力を求めるためには、本式に形状データ、物性値データ、温度変化を与えて解けばよい。同様にz軸を拘束する場合は、u=0と考えるので、式(14)とこの条件を式(7)に代入すると式(15)以降が以下のように代わる。
Figure 2010064099
Figure 2010064099
Figure 2010064099
発明者は、表計算ソフトexcel(登録商標)を用い、マトリックスセル内に形状データ、物性値データ、温度変化を入力すると、この逆行列から密着応力を求めるワークシートを作成し、計算を試行した。すなわちz軸フリーの場合には、
Figure 2010064099
z軸拘束の場合には、
Figure 2010064099
例題として、実際にデータを入れて計算したものを報告する。物性値は金属技研殿提供の銅、ステンレス、C/Cのデータ、但しC/Cのポアソン比が無かったので、ここでは0.3とした。形状は内筒外径100mm、外筒外径102mm(外筒厚さ1mm)、ホルダー外径120mm(ホルダー厚さ9mm)とし、それぞれは常温において接触状態(クリアランス誤差範囲)と仮定した。昇温を500Kと1000Kで計算した。
1)z軸フリーであって、昇温500Kのとき
σ21=σ12=−7.08×10Pa
Δr21=Δr12=0.297×10−3
σ22=σ13=−7.45×10Pa
Δr22=Δr13=0.303×10−3
Δr23=0.219×10−3
2)z軸フリーであって、昇温1000Kのとき
σ21=σ12=−14.2×10Pa
Δr21=Δr12=0.595×10−3
σ22=σ13=−14.9×10Pa
Δr22=Δr13=0.607×10−3
Δr23=0.438×10−3
3)z軸拘束であって、昇温500Kのとき
σ21=σ12=−16.8×10Pa
Δr21=Δr12=0.585×10−3
σ22=σ13=−15.3×10Pa
Δr22=Δr13=0.597×10−3
Δr23=0.418×10−3
4)z軸拘束であって、昇温1000Kのとき
σ21=σ12=−33.6×10Pa
Δr21=Δr12=1.17×10−3
σ22=σ13=−30×10Pa
Δr22=Δr13=1.19×10−3
Δr23=0.836×10−3
z軸フリー条件で1000Kの昇温を行った場合、ろう付け部の密着応力は14.2MPa、のびは0.6mm程度となる。この量はほぼ温度に比例し、z軸を拘束した場合はほぼ2倍になることがわかった。
本明細書では加工対象をロケットのスラスト室壁として説明してきたが、本発明はこれに限定されず、同心円状に接合される円筒状部材に対して広く実施できる接合方法である。
本発明の円筒形状物の接合方法を説明する図である。 本発明の接合方法によって接合されるロケットのスラスト室壁の部分断面図である。 熱膨張率の差を利用して積層体の被加工部材を拡散接合する従来技術を説明する図である。 熱膨張率の差を利用して積層体の被加工部材を拡散接合する他の従来技術を説明する図である。 本発明が対象とするロケットのスラスト室壁の構造を示す図である。
符号の説明
1 ロケットのスラスト室 2 燃焼室
3 噴射ノズル 4 くびれ部
5 内筒 51 溝
52 隔壁 6 外筒
7 ホルダー 71 フランジ

Claims (4)

  1. 接合させる内筒部材の外面を設計形状に加工するステップと、内筒部材の外面にろう材を載せるステップと、接合させる外筒部材内に内筒部材を嵌合させるステップと、カーボン/カーボンコンポジット材からなるホルダーを外筒部材に被せるステップと、入れ子状になった内筒部材と外筒部材とホルダーをろう材の溶融温度以上に加熱し、内筒部材と外筒部材とホルダーの熱膨張率の差に起因する接触圧を印加させるステップと、冷却してホルダーから部材を取り出すステップとからなる内筒部材と外筒部材の接合方法。
  2. 接合させる内筒部材の外面を設計形状に加工するステップと、内筒部材の外面と接合させる外筒部材内面を表面処理するステップと、外筒部材内に接合させる内筒部材を嵌合させるステップと、カーボン/カーボンコンポジット材からなるホルダーを外筒部材に被せるステップと、内筒部材と外筒部材をホルダーごと拡散温度以上に加熱し、内筒部材と外筒部材とホルダーの熱膨張率の差に起因する接触圧を印加させるステップと、冷却してホルダーから部材を取り出すステップとからなる内筒部材と外筒部材の接合方法。
  3. 接合させる内筒部材と外筒部材はロケットのスラスト室の壁であって、内筒部材外面の設計形状加工は冷却溝を形成するものとし、外筒部材とホルダーは分割形態のものとする請求項1または2に記載の内筒部材と外筒部材の接合方法。
  4. 外筒部材の外径寸法とホルダーの内径寸法に基づく両者間のクリアランスは接合温度に達した際の接合部の接触圧が設定値となるようにホルダーの内径寸法を設計するものとした請求項1乃至3のいずれかに記載の内筒部材と外筒部材の接合方法。
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