JP2010060641A - Ipsモード液晶表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】IPSモードの液晶表示装置において、黒表示においても斜め方向からの光漏れを十分に低減でき、且つ、生産性、品質、耐久性にも優れた液晶表示装置を提供すること。
【解決手段】第一の偏光板(A−1)と、
前記第一の偏光板(A−1)の吸収軸に対して略直交する吸収軸を有する第二の偏光板(A−2)と、
前記第一の偏光板(A−1)と前記第二の偏光板(A−2)との間に位置する、第一の位相差フィルム(B−1)及び/又は第二の位相差フィルム(B−2)と、
前記第一の偏光板(A−1)の吸収軸に対して略平行又は略垂直に配向される液晶分子を含む液晶層であって、前記液晶層に対して横方向に電界を印加することにより前記液晶分子が前記液晶層の面内方向で回転する液晶層(C)と、
前記第一の偏光板(A−1)の前記第二の偏光板(A−2)とは反対側に位置し、前記第一の偏光板(A−1)に向けて光を照射する背面照明ユニット(D)と、
を備える液晶表示装置であって、
前記第一の位相差フィルム(B−1)及び/又は第二の位相差フィルム(B−2)のNZ係数が−0.7以下であり、前記液晶層(C)の面内リタデーションが130nm以上300nm以下である、液晶表示装置。
【選択図】なし
【解決手段】第一の偏光板(A−1)と、
前記第一の偏光板(A−1)の吸収軸に対して略直交する吸収軸を有する第二の偏光板(A−2)と、
前記第一の偏光板(A−1)と前記第二の偏光板(A−2)との間に位置する、第一の位相差フィルム(B−1)及び/又は第二の位相差フィルム(B−2)と、
前記第一の偏光板(A−1)の吸収軸に対して略平行又は略垂直に配向される液晶分子を含む液晶層であって、前記液晶層に対して横方向に電界を印加することにより前記液晶分子が前記液晶層の面内方向で回転する液晶層(C)と、
前記第一の偏光板(A−1)の前記第二の偏光板(A−2)とは反対側に位置し、前記第一の偏光板(A−1)に向けて光を照射する背面照明ユニット(D)と、
を備える液晶表示装置であって、
前記第一の位相差フィルム(B−1)及び/又は第二の位相差フィルム(B−2)のNZ係数が−0.7以下であり、前記液晶層(C)の面内リタデーションが130nm以上300nm以下である、液晶表示装置。
【選択図】なし
Description
本発明は液晶表示装置に関し、より詳しくは、特定の光学特性を有する位相差フィルム及び液晶層を備えた液晶表示装置に関する。
最近の液晶テレビに代表される薄型ディスプレイ市場の拡大に伴い、より鮮明な画像をより低価格で得たいという要求が高まっている。この目的のために、現在実用化され、今後も大いに期待されているのがIPSモードの液晶表示装置である(特許文献1等参照)。
IPSモードは他のモードと異なり、電界の印加が基板にほぼ平行(偏光板に対して水平)に行われることからIPS(In−Plane Switching)モードと呼ばれる。IPSモードの液晶表示装置は、非駆動状態において液晶分子が偏光層や基板面に対して略平行なホモジニアス配向を有するため、光はその偏光面をほとんど変化させること無く液晶層を通過する。その結果、基板の上下に偏光板を配置することにより、非駆動状態でほぼ完全な黒表示が可能となる。
しかし、IPSモードを利用した液晶表示装置であっても、特定の斜め方向から見た場合に、階調反転、着色、光漏れ(コントラストの低下)が生じ、その方向では視野角が小さくなることがある。そのため、他の液晶表示方式と同様に、位相差フィルムを用いて光学補償を行い、視野角を拡大することが必要である。
これまでに、IPSモード液晶表示装置の光学補償のために、NZ係数が負の位相差フィルムを用いた光学補償が提案されている(非特許文献1)。
IPSモードは他のモードと異なり、電界の印加が基板にほぼ平行(偏光板に対して水平)に行われることからIPS(In−Plane Switching)モードと呼ばれる。IPSモードの液晶表示装置は、非駆動状態において液晶分子が偏光層や基板面に対して略平行なホモジニアス配向を有するため、光はその偏光面をほとんど変化させること無く液晶層を通過する。その結果、基板の上下に偏光板を配置することにより、非駆動状態でほぼ完全な黒表示が可能となる。
しかし、IPSモードを利用した液晶表示装置であっても、特定の斜め方向から見た場合に、階調反転、着色、光漏れ(コントラストの低下)が生じ、その方向では視野角が小さくなることがある。そのため、他の液晶表示方式と同様に、位相差フィルムを用いて光学補償を行い、視野角を拡大することが必要である。
これまでに、IPSモード液晶表示装置の光学補償のために、NZ係数が負の位相差フィルムを用いた光学補償が提案されている(非特許文献1)。
しかしながら、本発明者らが上記非特許文献1に関連した延伸による位相差フィルムの検討を行ったところ、NZ係数が負の位相差フィルムを用いた場合には、強度や生産性に劣る場合があること分かった。つまり、位相差フィルムが出来るまでの製造工程・取り扱い時に破損し易い、液晶表示装置に組み込んで使用した時に貼合した他のフィルム・部材との収縮差により応力が生じて割れ易い等の不具合があり、歩留まり(生産性)、製品としての品質、耐久性に問題があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、IPSモードの液晶表示装置において、黒表示においても斜め方向からの光漏れを十分に低減でき、且つ、生産性、品質、耐久性に優れた液晶表示装置を提供することを目的とする。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、IPSモードの液晶表示装置において、黒表示においても斜め方向からの光漏れを十分に低減でき、且つ、生産性、品質、耐久性に優れた液晶表示装置を提供することを目的とする。
IPSモードでは、液晶分子の配向方向といずれかの偏光板の吸収軸の方向とが一致している場合には、液晶表示装置を正面から見ると十分光を吸収することができる。ところが、偏光板の吸収軸に対して斜め方向から液晶表示装置を見ると、2枚の偏光板において吸収軸の関係が90°からずれることに起因して、光の吸収が不十分となり光漏れの程度が大きくなる。光学的に補償されていない場合、偏光板の吸収軸から45°ずれた方位で光漏れが最大となる。従って、このような光漏れを低減することが重要となる。
本発明者らは、背面照射ユニットから光を入射する側の第一の偏光板、及び光を出射する側の第二の偏光板において、それぞれの吸収軸を互いに対して略垂直(小さい方の角度を88から90°)に配置し、特定のNZ係数を有する位相差フィルムと特定のリタデーションを有する液晶層をそれらの偏光板の間に挿入することで、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下のとおりである。
[1]
第一の偏光板(A−1)と、
前記第一の偏光板(A−1)の吸収軸に対して略直交する吸収軸を有する第二の偏光板(A−2)と、
前記第一の偏光板(A−1)と前記第二の偏光板(A−2)との間に位置する、第一の位相差フィルム(B−1)及び/又は第二の位相差フィルム(B−2)と、
前記第一の偏光板(A−1)の吸収軸に対して略平行又は略垂直に配向される液晶分子を含む液晶層であって、前記液晶層に対して横方向に電界を印加することにより前記液晶分子が前記液晶層の面内方向で回転する液晶層(C)と、
前記第一の偏光板(A−1)の前記第二の偏光板(A−2)とは反対側に位置し、前記第一の偏光板(A−1)に向けて光を照射する背面照明ユニット(D)と、
を備える液晶表示装置であって、
前記第一の位相差フィルム(B−1)及び/又は第二の位相差フィルム(B−2)のNZ係数が−0.7以下であり、前記液晶層(C)の面内リタデーションが130nm以上300nm以下である、液晶表示装置。
[2]
背面照明ユニット(D)側から、偏光板(A−1)、位相差フィルム(B−1)、液晶層(C)、偏光板(A−2)の順で構成される、上記[1]記載の液晶表示装置。
[3]
背面照明ユニット(D)側から、偏光板(A−1)、液晶層(C)、位相差フィルム(B−2)、偏光板(A−2)の順で構成される、上記[1]記載の液晶表示装置。
[4]
背面照明ユニット(D)側から、偏光板(A−1)、位相差フィルム(B−1)、液晶層(C)、位相差フィルム(B−2)、偏光板(A−2)の順で構成される、上記[1]記載の液晶表示装置。
[5]
前記位相差フィルム(B−1)及び/又は(B−2)はスチレン系樹脂である、上記[1]〜[4]のいずれか記載の液晶表示装置。
[6]
前記位相差フィルム(B−1)及び/又は(B−2)はアクリル系樹脂及びスチレン系樹脂を含む樹脂組成物である、上記[1]〜[4]のいずれか記載の液晶表示装置。
[7]
前記アクリル系樹脂はメタクリル酸メチル−アクリル酸メチル共重合体である、上記[6]記載の液晶表示装置。
[8]
前記スチレン系樹脂は、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である、上記[5]〜[7]のいずれか記載の液晶表示装置。
[1]
第一の偏光板(A−1)と、
前記第一の偏光板(A−1)の吸収軸に対して略直交する吸収軸を有する第二の偏光板(A−2)と、
前記第一の偏光板(A−1)と前記第二の偏光板(A−2)との間に位置する、第一の位相差フィルム(B−1)及び/又は第二の位相差フィルム(B−2)と、
前記第一の偏光板(A−1)の吸収軸に対して略平行又は略垂直に配向される液晶分子を含む液晶層であって、前記液晶層に対して横方向に電界を印加することにより前記液晶分子が前記液晶層の面内方向で回転する液晶層(C)と、
前記第一の偏光板(A−1)の前記第二の偏光板(A−2)とは反対側に位置し、前記第一の偏光板(A−1)に向けて光を照射する背面照明ユニット(D)と、
を備える液晶表示装置であって、
前記第一の位相差フィルム(B−1)及び/又は第二の位相差フィルム(B−2)のNZ係数が−0.7以下であり、前記液晶層(C)の面内リタデーションが130nm以上300nm以下である、液晶表示装置。
[2]
背面照明ユニット(D)側から、偏光板(A−1)、位相差フィルム(B−1)、液晶層(C)、偏光板(A−2)の順で構成される、上記[1]記載の液晶表示装置。
[3]
背面照明ユニット(D)側から、偏光板(A−1)、液晶層(C)、位相差フィルム(B−2)、偏光板(A−2)の順で構成される、上記[1]記載の液晶表示装置。
[4]
背面照明ユニット(D)側から、偏光板(A−1)、位相差フィルム(B−1)、液晶層(C)、位相差フィルム(B−2)、偏光板(A−2)の順で構成される、上記[1]記載の液晶表示装置。
[5]
前記位相差フィルム(B−1)及び/又は(B−2)はスチレン系樹脂である、上記[1]〜[4]のいずれか記載の液晶表示装置。
[6]
前記位相差フィルム(B−1)及び/又は(B−2)はアクリル系樹脂及びスチレン系樹脂を含む樹脂組成物である、上記[1]〜[4]のいずれか記載の液晶表示装置。
[7]
前記アクリル系樹脂はメタクリル酸メチル−アクリル酸メチル共重合体である、上記[6]記載の液晶表示装置。
[8]
前記スチレン系樹脂は、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である、上記[5]〜[7]のいずれか記載の液晶表示装置。
本発明により、IPSモードの液晶表示装置において、黒表示においても斜め方向からの光漏れを十分に低減でき、且つ、生産性、品質、耐久性に優れた液晶表示装置を提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、本実施の形態)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施の形態の液晶表示装置は、
第一の偏光板(A−1)と、
前記第一の偏光板(A−1)の吸収軸に対して略直交する吸収軸を有する第二の偏光板(A−2)と、
前記第一の偏光板(A−1)と前記第二の偏光板(A−2)との間に位置する、第一の位相差フィルム(B−1)及び/又は第二の位相差フィルム(B−2)と、
前記第一の偏光板(A−1)の吸収軸に対して略平行又は略垂直に配向される液晶分子を含む液晶層であって、前記液晶層に対して横方向に電界を印加することにより前記液晶分子が前記液晶層の面内方向で回転する液晶層(C)と、
前記第一の偏光板(A−1)の前記第二の偏光板(A−2)とは反対側に位置し、前記第一の偏光板(A−1)に向けて光を照射する背面照明ユニット(D)と、
を備える液晶表示装置であって、
前記第一の位相差フィルム(B−1)及び/又は第二の位相差フィルム(B−2)のNZ係数が−0.7以下であり、前記液晶層(C)の面内リタデーションが130nm以上300nm以下である。
第一の偏光板(A−1)と、
前記第一の偏光板(A−1)の吸収軸に対して略直交する吸収軸を有する第二の偏光板(A−2)と、
前記第一の偏光板(A−1)と前記第二の偏光板(A−2)との間に位置する、第一の位相差フィルム(B−1)及び/又は第二の位相差フィルム(B−2)と、
前記第一の偏光板(A−1)の吸収軸に対して略平行又は略垂直に配向される液晶分子を含む液晶層であって、前記液晶層に対して横方向に電界を印加することにより前記液晶分子が前記液晶層の面内方向で回転する液晶層(C)と、
前記第一の偏光板(A−1)の前記第二の偏光板(A−2)とは反対側に位置し、前記第一の偏光板(A−1)に向けて光を照射する背面照明ユニット(D)と、
を備える液晶表示装置であって、
前記第一の位相差フィルム(B−1)及び/又は第二の位相差フィルム(B−2)のNZ係数が−0.7以下であり、前記液晶層(C)の面内リタデーションが130nm以上300nm以下である。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本実施の形態を説明する。なお、本明細書において「略平行」、「略垂直」等の「略」を付した用語は、当業者の技術常識の範囲内でその「略」を除いた用語の意味を示すものであり、「略」を除いた意味自体をも含むものとする。
通常、液晶表示装置においては、自発光ではなく、背面照明ユニット(D)より得られた光を効果的に利用するには、黒表示時にいかに光を遮断するかが重要となる。本実施の形態の液晶表示装置は、斜め方向から液晶パネルを見た場合に不要な光漏れを低減させた装置に関するものである。
以下に、液晶表示装置を黒表示時に斜め方向から見た場合に光漏れが発生する理由を説明する。図1及び2は、この理由を説明するための模式図であり、互いに略平行に配置した第一の偏光板10と第二の偏光板20とを第二の偏光板20の斜め上方から眺めた状態を示している。第一の偏光板10は、光が入射する側の偏光板であり、第二の偏光板20は、光が出射する側の偏光板である。図1及び2では、第一の偏光板10と第二の偏光板20とが、互いに略平行になるように重ねられており、第一の偏光板10の吸収軸11と第二の偏光板の吸収軸21とが略直交するよう、それらの偏光板10、20が配置されている。図1では、第二の偏光板の吸収軸21に沿ってこれらの偏光板10、20を斜め上方から眺めた状態を示す。この角度から眺めた場合、第一の偏光板10の吸収軸11と第二の偏光板20の吸収軸21とは、互いに略直交している。一方、図2では、第二の偏光板20の吸収軸21からずれた方位の斜め上方から眺めた状態を示す。この場合、第一の偏光板10の吸収軸11に対して、第二の偏光板20の吸収軸21は直交していない。この結果、偏光軸のクロスニコルが崩れるため、光漏れが発生する。
これらの偏光状態は、ポアンカレ球による表示を利用すると理解しやすい。ポアンカレ球による表示は、例えば応用物理光学懇談会編「結晶光学」森北出版株式会社出版、第5章p102〜p163に開示されている。図2の状態をポアンカレ球による表示で示したものが図3である。図3は、ポアンカレ球の赤道上の断面図を示し、S1、S2はそれぞれストークスパラメータを示す軸である。第一の偏光板10を通過した光の偏光状態はポアンカレ球上で符号40で示す点に対応する。この点40は、第一の偏光板10の透過軸に相当する。このとき、第一の偏光板10に吸収される光の偏光状態は点41の点に対応する。この点41は、第一の偏光板10の吸収軸に相当する。同様に、第二の偏光板20の透過軸に相当するのが点42で、吸収軸に相当するのが点43である。第一の偏光板10の透過軸40と第二の偏光板20の吸収軸43のずれが光漏れに相当する。したがって、第一の偏光板10の透過軸40を第二の偏光板20の吸収軸43に変換することで、光漏れを抑えることが可能になる。このような偏光状態の変換は位相差フィルムを用いることで可能となる。
次に、位相差フィルムのNZ係数について説明する。本実施の形態において、NZ係数とは、その層を波長550nmの光で測定した面内の遅相軸方向の屈折率をNx、面内の遅相軸と面内で直交する方向の屈折率をNy、厚さ方向の屈折率をNzとした時に、NZ係数=(Nx−Nz)/(Nx−Ny)で定義される。
本実施の形態の第一の位相差フィルム(B−1)及び/又は第二の位相差フィルム(B−2)としては、上述した効果を得るために、特定のNZ係数、即ち、NZ係数が−0.7以下のフィルムが用いられる。位相差フィルムとしては、(1)樹脂製フィルムを延伸したタイプ、(2)基材フィルムもしくはその他の構成部材に液晶性物質層を重ねたタイプが代表的であるが、前者の場合、NZ係数が−0.7以下であると、フィルム強度及び生産性に優れることが分かった。更に、位相差フィルムのNZ係数が−0.7以下である場合に、液晶層の面内リタデーションを後述する特定の範囲に調整して組み合わせることにより、光漏れが顕著に低減することが判明し本発明に至った。本実施の形態において、位相差フィルム(B−1)及び/又は(B−2)のNZ係数のより好ましい値は−1以下であり、更に好ましくは−2以下、特に好ましくは−20以下である。NZ係数の下限値としては特に限定されず、Nx=Nyの時には理論上、NZ係数は−∞となるが、この場合でも本発明の効果は期待される。本実施の形態において上述したような効果が得られる理由の1つとしては、位相差フィルムのNZ係数が小さいと分子配向がより等方性になるためと推測される。
次に、液晶層のリタデーションについて説明する。本実施の形態においては、特定のリタデーションを有する液晶層が用いられるが、その定義は以下のとおりである。面内リタデーション(Re)は、その層を波長550nmの光で測定した面内の遅相軸方向の屈折率をNx、面内の遅相軸と面内で直交する方向の屈折率をNy、厚さ方向の屈折率をNzとした時に、Re=(Nx−Ny)×dで定義される。(厚み方向リタデーション(Rth)は、Rth={(Nx−Ny)/2−Nz}×dで定義される。)
本実施の形態においては、液晶層(C)の面内リタデーションが、130nm以上300nm以下であり、より好ましくは135nm以上290nm以下、更に好ましくは130nm以上250nm以下、特に好ましくは140nm以上230nm以下である。位相差フィルムのNZ係数が−0.7以下の時に、液晶層の面内リタデーションの値を変えて黒表示時の光漏れに対する効果を検討したところ、液晶層の面内リタデーションが上記範囲にある場合に、光漏れが顕著に低減することが判明した。また、面内リタデーションが130nm以上であると、液晶層が薄くなり過ぎないため作製がより容易となり、場所による表示ムラも少なくなるので歩留まりが良好となり、生産性が向上する傾向にある。
本実施の形態の位相差フィルム(B−1)及び/又は(B−2)の面内リタデーションとしては、特に制限されないが、好ましくは10nm以下であり、より好ましくは6nm以下である。液晶層(C)の面内リタデーションと、位相差フィルム(B−1)及び/又は(B−2)の面内及び厚み方向のリタデーション数値を変えて黒表示時の光漏れに対する最適化を行った結果、位相差フィルムの面内のリタデーションが上記範囲にある場合に、より光漏れが小さくなる傾向にあった。
本実施の形態の液晶表示装置おける第一の偏光板(A−1)、第二の偏光板(A−2)、位相差フィルム(B−1)及び/又は(B−2)、液晶層(C)、背面照明ユニット(D)の配置は、以下の3通りが考えられ、本発明の効果を損なわない限り、どの配置でもよい。
(1)背面照明ユニット(D)側から、偏光板(A−1)、位相差フィルム(B−1)、液晶層(C)、偏光板(A−2)の順での構成。
(2)背面照明ユニット(D)側から、偏光板(A−1)、液晶層(C)、位相差フィルム(B−2)、偏光板(A−2)の順での構成。
(3)背面照明ユニット(D)側から、偏光板(A−1)、位相差フィルム(B−1)、液晶層(C)、位相差フィルム(B−2)、偏光板(A−2)の順での構成。
(1)背面照明ユニット(D)側から、偏光板(A−1)、位相差フィルム(B−1)、液晶層(C)、偏光板(A−2)の順での構成。
(2)背面照明ユニット(D)側から、偏光板(A−1)、液晶層(C)、位相差フィルム(B−2)、偏光板(A−2)の順での構成。
(3)背面照明ユニット(D)側から、偏光板(A−1)、位相差フィルム(B−1)、液晶層(C)、位相差フィルム(B−2)、偏光板(A−2)の順での構成。
位相差フィルム(B−1)、液晶層(C)、位相差フィルム(B−2)の面内における遅相軸の向きは、偏光板(A−1)の吸収軸の向きを0°とした時に、それぞれ、略平行、略直交、略直交、もしくは、略平行、略平行、略直交の時に、光学補償効果が高くなるので好ましい。位相差フィルム(B−1)又は(B−2)が無い構成のときでも、上述の関係の時には光学補償効果が高くなる。位相差フィルム(B−1)及び(B−2)のReが10以下のような小さい値の時には、面内の遅相軸の効果が小さくなるため、上述した向き以外であっても好ましい効果が得られる。
また、偏光板(A−1)もしくは(A−2)と、位相差フィルム(B−1)及び/又は(B−2)の間には、本発明の効果を損なわない範囲で、TAC(トリアセチルセルロース)、Rthが20nm以下の低リタデーションタイプのTAC、COP(シクロオレフィンポリマー)、PC(ポリカーボネート)等からなる低リタデーション層が挿入されていてもよい。
本実施の形態の位相差フィルム(B−1)及び/又は(B−2)は、上述した特定のNZ係数を満足する透明な熱可塑性樹脂又はそれを含む樹脂組成物からなるものであれば特に限定されないが、樹脂として、スチレン系樹脂(E)、もしくは、スチレン系樹脂(E)とアクリル系樹脂(F)を含む樹脂組成物であることが好ましく、これらの樹脂を主成分として含む熱可塑性樹脂組成物からなることがより好ましく、これらの樹脂のみを含む熱可塑性樹脂組成物からなることが更に好ましい。これらの樹脂は高い透明性を有し、且つ、固有複屈折が負となる樹脂である。
固有複屈折とは、応力が付加された時に屈折率が変化する性質を示す。負の固有複屈折を有する材料とは、応力の方向に対して垂直な方向の屈折率が大きくなる材料である。上述した樹脂は、そのような負の固有複屈折を有しているため、通常の延伸処理によりNZ係数が負の位相差フィルムを作製することができる。
ここで、スチレン系樹脂(E)とは、スチレン系単量体の共重合割合が50質量%以上である樹脂をいい、スチレン系単量体のみから得られる重合体であってもよい。ここで、「スチレン系単量体」とは、その構造中にスチレン骨格を有する単量体、即ち、スチレン及びスチレン分子中の水素原子が、他の原子又は1価の基に置換されたものをいう。
スチレン系単量体の具体例としては、スチレンの他、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレンに代表される核アルキル置換スチレン;α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレンに代表されるα−アルキル置換スチレン等のビニル芳香族化合物単量体が挙げられる。上記の中でも、スチレンが好ましい。
また、スチレン系樹脂(E)には、スチレン系単量体に他の単量体を共重合したものも含まれる。スチレン系単量体と共重合可能な他の単量体としては、メチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、メチルフェニルメタクリレート、イソプロピルメタクリレートに代表されるアルキルメタクリレート、及びメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレートに代表されるアルキルアクリレート等の不飽和カルボン酸アルキルエステル;メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、桂皮酸等の不飽和カルボン酸;無水マレイン酸、イタコン酸、エチルマレイン酸、メチルイタコン酸、クロルマレイン酸等の無水物である不飽和ジカルボン酸無水物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル;1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等の共役ジエン等が挙げられる。上記単量体は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本実施の形態において特に好適に用いることができるスチレン系樹脂(E)は、耐熱性が高くなる傾向にあるため、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、及び、スチレン−無水マレイン酸共重合体からなる群より選ばれる1種以上の樹脂である。
また、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体は、アクリル系樹脂との相溶性が高いため、これらをアクリル系樹脂と併用したフィルムは透明性が高く、使用中に相分離を起こして透明性が低下するリスクが低減することからも好ましい。上述した観点から、アクリル系樹脂(F)としてメタクリル酸メチルを単量体成分として含む重合体を用いる場合には、スチレン系樹脂(E)として上述の共重合体を併用することが好ましい。
スチレン系樹脂(E)としてスチレン−アクリロニトリル共重合体を用いる場合、共重合体中のアクリロニトリルの共重合体割合は、1〜40質量%であることが好ましく、1〜30質量%であることがより好ましく、1〜25質量%であることが更に好ましい。共重合体中のアクリロニトリルの共重合体割合が1〜40質量%であると、透明性に優れる傾向にあるため好ましい。
スチレン系樹脂(E)としてスチレン−メタクリル酸共重合体を用いる場合、共重合体中のメタクリル酸の共重合体割合は、0.1〜50質量%であることが好ましく、0.1〜40質量%であることがより好ましく、0.1〜30質量%であることが更に好ましい。共重合体中のメタクリル酸の共重合体割合が0.1質量%以上であると耐熱性に優れる傾向にあり、50質量%以下であると透明性に優れる傾向にあるため好ましい。
スチレン系樹脂(E)としてスチレン−無水マレイン酸共重合体を用いる場合、共重合体中の無水マレイン酸の共重合体割合は、0.1〜50質量%であることが好ましく、0.1〜40質量%であることがより好ましく、0.1〜30質量%であることが更に好ましい。共重合体中の無水マレイン酸の共重合割合が0.1質量%以上であると耐熱性に優れる傾向にあり、50質量%以下であると透明性に優れる傾向にあるため好ましい。
これらの中でも、耐熱性の観点から、スチレン−メタクリル酸共重合体及び/又はスチレン−無水マレイン酸共重合体が特に好ましい。
上述したスチレン系樹脂(E)は、公知のスチレン系樹脂と同様の方法により製造することができる。
また、アクリル系樹脂(F)とは、アクリル系単量体の共重合割合が50質量%以上である樹脂をいい、アクリル系単量体のみから得られる重合体であってもよい。ここで、「アクリル系単量体」とは、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの誘導体をいう。
アクリル系樹脂(F)の具体例としては、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸メチルに代表されるメタクリル酸アルキルエステル、及び、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸2−エチルヘキシルに代表されるアクリル酸アルキルエステルからなる群より選ばれる1種以上の単量体を重合したもの等が挙げられ、これらの単独重合体であっても他の単量体との共重合体であってもよい。上記の中でも、メタクリル酸メチルの単独重合体、又は、メタクリル酸メチルと他の単量体との共重合体が好ましい。
メタクリル酸メチルと共重合可能な他の単量体としては、メタクリル酸メチル以外のメタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステル;スチレン及びo−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレンに代表される核アルキル置換スチレン;α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレンに代表されるα−アルキル置換スチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド;無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸無水物;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸に代表される不飽和酸等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらのメタクリル酸メチルと共重合可能な他の単量体の中でも、耐熱分解性に優れ、これを共重合させて得られるアクリル系樹脂(F)の成形加工時の流動性が良好となる傾向にあるため、アクリル酸アルキルエステルが好ましい。
メタクリル酸メチルにアクリル酸アルキルエステルを共重合させる場合のアクリル酸アルキルエステルの共重合割合は、耐熱分解性の観点から0.1質量%以上であることが好ましく、耐熱性の観点から15質量%以下であることが好ましい。アクリル酸アルキルエステルの共重合割合は0.2〜14質量%であることがより好ましく、1〜12質量%であることが更に好ましい。
アクリル酸アルキルエステルの中でも、アクリル酸メチル及びアクリル酸エチルは、共重合割合が0.1〜1質量%といった低い範囲でメタクリル酸メチルと共重合させた場合でも、成形加工時の流動性の改良効果が著しく高くなる傾向にあるため好ましい。
本実施の形態においては、アクリル系樹脂(F)として、耐熱アクリル系樹脂を用いることができる。耐熱アクリル系樹脂の具体例としては、メタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステルと、α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレンに代表されるα−アルキル置換スチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド;無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸無水物;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等の不飽和酸との共重合体等が挙げられる。
好ましい耐熱アクリル系樹脂としては、メタクリル酸メチル−無水マレイン酸−スチレン共重合体が挙げられ、特に、共重合体中のメタクリル酸メチルの共重合割合が40〜90質量%、無水マレイン酸の共重合割合が3〜20質量%、スチレンの共重合割合が7〜40質量%であって、且つ、無水マレイン酸の共重合割合に対するスチレンの共重合割合の比(スチレン単位/無水マレイン酸単位)が1〜3であることが、耐熱性、光弾性係数の観点から好ましい。より好ましくは、共重合体中のメタクリル酸メチルの共重合割合が40〜90質量%、無水マレイン酸の共重合割合が5〜19質量%、スチレンの共重合割合が10〜40質量%であり、更に好ましくは、共重合体中のメタクリル酸メチルの共重合割合が45〜88質量%、無水マレイン酸の共重合割合が6〜15質量%、スチレンの共重合割合が16〜40質量%である。
このような耐熱アクリル系樹脂の製造には、例えば、特公昭63−1964号公報等に記載されているような公知の方法を用いることができる。
本実施の形態で好適に用いられるアクリル系樹脂(F)は、メタクリル酸メチル−アクリル酸メチル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エチル共重合体、メタクリル酸メチル−無水マレイン酸−スチレン共重合体である。上記の中でも、成形加工時の流動性及び耐熱性の両方をバランスよく兼ね備えているため、メタクリル酸メチル−アクリル酸メチル共重合体が好ましい。
アクリル系樹脂(F)は、分子量、組成等が異なる2種以上のものを同時に用いてもよい。
アクリル系樹脂(F)の重量平均分子量は5万〜20万であることが好ましい。アクリル系樹脂(F)の重量平均分子量は、成形品の強度の観点から好ましくは5万以上であり、成形加工性、流動性の観点から好ましくは20万以下であり、より好ましくは7万〜15万である。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定される値を言い、ポリスチレンを標準物質とする検量線から導出される。
また、本実施の形態においては、アイソタクチックポリメタクリル酸エステルと、シンジオタクチックポリメタクリル酸エステルとを同時に用いることもできる。
アクリル系樹脂(F)を製造する方法としては、例えば、キャスト重合、塊状重合、懸濁重合、溶液重合、乳化重合、アニオン重合等の一般的に行われている重合方法を用いることができる。ただし、光学用途としては、アクリル系樹脂(F)中への微小な異物の混入はできるだけ避けるのが好ましく、この観点からは、懸濁剤や乳化剤を用いない塊状重合や溶液重合が好ましい。
溶液重合によりアクリル系樹脂(F)を製造する場合には、上述したような単量体の混合物を、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素の溶媒に溶解して調製した単量体溶液を用いることができる。塊状重合によりアクリル系樹脂(F)を製造する場合には、通常の塊状重合と同様に、加熱により生じる遊離ラジカルや電離性放射線照射により重合を開始させることができる。
上述の重合反応においては、ラジカル重合において用いられる任意の開始剤を用いることができ、これを単量体溶液に含有させてもよい。そのような開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチルニトリル等のアゾ化合物、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物等が挙げられる。
特に、90℃以上の高温下で単量体を重合してアクリル系樹脂(F)を得る場合には、溶液重合が一般的に採用される。そのため、開始剤として、10時間半減期温度が80℃以上で、且つ、用いる有機溶媒に可溶である過酸化物及びアゾビス開始剤等が好適に用いられる。具体的には、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、シクロヘキサンパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、1,1−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル等が挙げられる。
これらの開始剤は、単量体の全量100質量部に対して、好ましくは0.005〜5質量部の範囲で用いられる。
上述の重合反応においては、必要に応じて分子量調節剤を用いてもよく、これを単量体溶液に含有させてもよい。そのような分子量調節剤としては、通常のラジカル重合において用いられる任意のものを用いることができる。具体的には、例えば、ブチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸2−エチルヘキシル等のメルカプタン化合物が挙げられる。これらの分子量調節剤は、アクリル系樹脂(F)の重合度が好ましい範囲内に制御されるような濃度範囲で単量体溶液に添加される。
本実施の形態においては、位相差フィルム(B−1)及び/又は(B−2)に用いる材質はスチレン系樹脂(E)、もしくは、アクリル系樹脂(F)及びスチレン系樹脂(E)を含む樹脂組成物が好ましく用いられるが、特にアクリル系樹脂(F)及びスチレン系樹脂(E)を含む樹脂組成物を用いると光弾性係数が小さくなる傾向にあるため好ましい。光弾性係数を小さくする観点から、樹脂組成物中のアクリル系樹脂(F)の含有割合は、アクリル系樹脂(F)及びスチレン系樹脂(E)の合計量に対して、好ましくは20〜80質量%であり、より好ましくは30〜70質量%である。このような樹脂組成物の製造方法は、特に制限されるものではなく公知の方法が利用できる。例えば、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ブラベンダー、各種ニーダー等の溶融混練機を用いて、樹脂成分、必要に応じて耐加水分解抑制剤や上述したその他の成分を添加して溶融混練することにより製造することができる。
なお、本実施の形態における光弾性係数とは、外力による複屈折の変化の生じやすさを表す係数で、下式により定義される。
CR[Pa-1]=|Δn/σR|
ここで、σRは伸張応力[Pa]、Δnは応力付加時の複屈折であり、Δnは下式により定義される。
Δn=n1−n2
ここで、n1は伸張方向と平行な方向の屈折率、n2は伸張方向と垂直な方向の屈折率である。
CR[Pa-1]=|Δn/σR|
ここで、σRは伸張応力[Pa]、Δnは応力付加時の複屈折であり、Δnは下式により定義される。
Δn=n1−n2
ここで、n1は伸張方向と平行な方向の屈折率、n2は伸張方向と垂直な方向の屈折率である。
光弾性係数の値がゼロに近いほど、外力による複屈折の変化が小さいことを示しており、各用途に応じて設計された複屈折が外力によって変化しにくいことを意味する。つまり、光弾性係数が小さいと、環境変化等により積層フィルム間の収縮率差で生じた応力による位相差変化が少なくなるので、安定した画像が期待される。
本実施の形態の位相差フィルムの材料となる樹脂には、その効果を損なわない範囲で、アクリル系樹脂(F)及びスチレン系樹脂(E)以外の他の樹脂成分を加えることができる。そのような他の樹脂成分としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエステル、脂肪族ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアセタール等の熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。これらの樹脂成分は、1種を単独で、もしくは2種以上を併用して用いることができる。
その他の樹脂成分の割合は、アクリル系樹脂(F)及びスチレン系樹脂(E)の合計量100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましい。
また、本実施の形態の位相差フィルムの材料となる樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、各種目的に応じて任意の添加剤を配合することができる。添加剤の種類は、樹脂やゴム状重合体の配合に一般的に用いられるものであれば特に制限はなく、例えば、二酸化珪素等の無機充填剤;酸化鉄等の顔料;ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、エチレンビスステアロアミド等の滑剤;離型剤;パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、パラフィン、有機ポリシロキサン、ミネラルオイル等の軟化剤・可塑剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤、りん系熱安定剤等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系光安定剤;難燃剤;帯電防止剤;有機繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属ウィスカ等の補強剤;着色剤;紫外線吸収剤、その他添加剤、あるいはこれらの混合物等が挙げられる。
これら添加剤は、樹脂の合計量100質量部に対して0.01質量部以上50質量部以下で添加することが好ましい。
添加剤の20℃における蒸気圧(P)は、成形加工性に優れる傾向にあるため、1.0×10-4Pa以下であることが好ましい。蒸気圧(P)のより好ましい範囲は1.0×10-6Pa以下であり、更に好ましい範囲は1.0×10-8Pa以下である。ここで、成形加工性に優れるとは、例えば、フィルム成形時に添加剤のロールへの付着が少ないこと等を示す。添加剤がロールへ付着すると、例えば、成形体表面へ添加剤が付着して、外観及び光学特性を悪化させて光学用材料として好ましくないものとなるおそれがある。
添加剤の融点(Tm)としては、成形加工性に優れる傾向にあるため、80℃以上であることが好ましい。融点(Tm)のより好ましい範囲は130℃以上であり、更に好ましい範囲は160℃以上である。
添加剤を23℃から260℃まで、20℃/分の速度で昇温した場合の添加剤の質量減少率としては、成形加工性に優れる傾向にあるため、50%以下であることが好ましい。質量減少率のより好ましい範囲は15%以下であり、更に好ましい範囲は2%以下である。
上述した添加剤の中でも、紫外線吸収剤は、液晶層及び偏光板の保護の観点から特に有用である。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾエート系化合物、ベンゾフェノン系化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、フェノール系化合物、オキサゾール系化合物、マロン酸エステル系化合物、シアノアクリレート系化合物、ラクトン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンズオキサジノン系化合物等が挙げられる。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物が好ましい。これらの紫外線吸収剤は、単独で用いても2種以上を併用して用いてもよい。
本実施の形態の位相差フィルム(B−1)及び/又は(B−2)の成形方法は、特に制限されるものではなく、射出成形、シート成形、ブロー成形、インジェクションブロー成形、インフレーション成形、押出成形、発泡成形、キャスト成形等の公知の方法でフィルムに成形することが可能であり、圧空成形、真空成形等の二次加工成形法も用いることができる。中でも、押出成形、キャスト成形が好ましく用いられる。このとき、例えば、Tダイ、円形ダイ等が装着された押出機等を用いて、未延伸フィルムを押出成形することができる。押出成形により成形品を得る場合には、事前に各種樹脂成分、添加剤等を溶融混練した材料を用いることもできれば、押出成形時に溶融混練を経て成形することもできる。また、各種樹脂成分に共通な溶媒、例えば、クロロホルム、二塩化メチレン等の溶媒を用いて、各種樹脂成分を溶解後、キャスト乾燥固化することにより未延伸フィルムをキャスト成形することもできる。
更に、必要に応じて未延伸フィルムを機械的流れ方向に一軸延伸、機械的流れ方向に直行する方向に一軸延伸することができ、また、ロール延伸もしくはフローティング縦1軸延伸(非拘束縦1軸延伸)とテンター延伸による逐次2軸延伸法、テンター延伸による同時2軸延伸法、チューブラー延伸による2軸延伸法等によって延伸することにより2軸延伸フィルムを製造することもできる。
このように、上述した樹脂から特殊な手法を用いることなく、比較的容易に位相差フィルム(B−1)及び/又は(B−2)を製造することが可能である。好ましい方法の1つとしては、例えば、下記の方法が挙げられる。即ち、まず、Tダイを装着した押出機を用いて、上記樹脂を押出成形することにより未延伸フィルムを得る。続いて、未延伸フィルムをフローティング縦1軸延伸(非拘束縦1軸延伸)及び/又はテンター延伸により、1軸延伸又は2軸延伸して位相差フィルム(B−1)及び/又は(B−2)を得ることができる。このときの延伸条件は、フィルム化できる温度、延伸倍率であれば特に限定されない。
本実施の形態の第一の偏光板(A−1)及び第二の偏光板(A−2)としては、特に限定されず、公知の偏光板を用いることができる。偏光板(A−1)及び(A−2)は偏光子と保護フィルムから構成される。偏光板(A−1)及び(A−2)の偏光子は、ヨウ素又は染料に浸漬して延伸されたポリビニルアルコール(PVA)フィルムであることが好ましい。この偏光子を保護するために、偏光板の片側もしくは両側を保護フィルムで被覆することが好ましい。このときの保護フィルムとしては、トリアセチルセルロース(TAC)、Rthが20nm以下の低リタデーションタイプのTAC及びCOP(シクロオレフィンポリマー)、PC(ポリカーボネート)等からなる低リタデーションフィルムが挙げられる。保護フィルムのレタデーションによる画像への影響を避ける目的で、液晶層(C)側の保護フィルムを、Rthが20nm以下の低リタデーションタイプのTAC、あるいはCOP(シクロオレフィンポリマー)、PC(ポリカーボネート)等からなる低リタデーションフィルムで構成したり、液晶層(C)のセルに偏光子を直接貼り付けたりしてもよい。偏光子を直接貼り付ける場合でも、液晶層(C)の反対側には偏光子の保護フィルムを用いることが好ましい。
本実施の形態の液晶層(C)は、通常のIPS液晶モードで採用されるネマティック液晶を含む液晶層であればよく、液晶物質に加えてスペーサーや配向膜等、通常の液晶層が備える部材を含んでいてもよい。代表的な液晶物質としては、例えば、4−(trans−4’−ブチルシクロヘキサンカルボン酸)−エトキシフェニルエステルに代表されるシクロヘキサンエステル化合物、4−n−ペンチル−4’−シアノビフェニルに代表されるシアノビフェニル化合物、アゾ化合物、アゾキシ化合物、ヒドラジン誘導体、及びこれらのうちの2種以上の混合物等が挙げられる。また、フッ素化されたフェニレン基を有する化合物も液晶の粘度特性、電気光学特性の観点から好ましい。液晶層(C)は、これらの液晶物質が電極、カラーフィルター付きのガラス基板等で挟まれた構造を有する。
本実施の形態の背面照明ユニット(D)は、公知の液晶表示装置に備えられ光源として機能するものであれば特に限定されず、公知のIPSモードの液晶表示装置で用いられているものと同様のものを用いることができる。
以上説明したように、本実施の形態により、IPSモードの液晶表示装置において十分な光学補償を確保した上で、黒表示においても斜め方向からの光漏れを十分に低減でき、且つ、生産性、品質、耐久性に優れた液晶表示装置を得ることが出来る。
以上、本実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されない。本実施の形態の液晶表示装置は、例えば、アクティブマトリックス型液晶表示装置に適用されてもよい。この場合、液晶パネルは、液晶層を挟むようにして更に2枚の基板を備えていてもよい。一方の基板は、液晶層に接する側の表面に、薄膜トランジスタ、ゲートバスライン、ドレインバスライン、共通バスライン等を備えるアクティブマトリックス基板であってもよく、他方の基板は、液晶層に接する側の表面にRGBの各色層と、ブラックマトリックスとが形成されたカラーフィルター基板であってもよい。
以下、実施例によって本実施の形態を更に詳細に説明するが、本実施の形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
フィルムの各種特性の測定と評価方法は以下の通りである。
(1)リタデーション、NZ係数、フィルム厚み
面内方向のリタデーションRe、厚み方向のリタデーションRth、NZ係数は王子計測社製の位相差測定装置(商品名「KOBRA−WR」)により測定した。また、フィルムの厚みはミツトヨ社製ハイトゲージにより測定した。
フィルムの各種特性の測定と評価方法は以下の通りである。
(1)リタデーション、NZ係数、フィルム厚み
面内方向のリタデーションRe、厚み方向のリタデーションRth、NZ係数は王子計測社製の位相差測定装置(商品名「KOBRA−WR」)により測定した。また、フィルムの厚みはミツトヨ社製ハイトゲージにより測定した。
(2)強度
強度の指標として耐折疲労試験であるMIT試験を用いた。東洋精機製作所製のMIT耐折疲労試験機(形式DA)を用い、JIS P8115に準じて測定した。条件は、荷重250g、屈曲角度135°、屈曲速度175回/分、屈曲点治具のRを0.38mmとした。試験するフィルムを15mm×110mmとし、長辺がフィルムのMD方向及びTD方向になる2通りで切り出し、屈曲させた。フィルムが破損するまで屈曲を繰り返し、破損した時の回数を観測した。上記のMD方向とTD方向の2通りで測定し、低い方の回数を強度とした。数字が大きいほど破損するまでの回数が多いので、強度に優れるフィルムと判断される。この回数が10回以下といった低い回数であると、生産時、使用時に破損の問題が生じやすくなるため好ましくない。
強度の指標として耐折疲労試験であるMIT試験を用いた。東洋精機製作所製のMIT耐折疲労試験機(形式DA)を用い、JIS P8115に準じて測定した。条件は、荷重250g、屈曲角度135°、屈曲速度175回/分、屈曲点治具のRを0.38mmとした。試験するフィルムを15mm×110mmとし、長辺がフィルムのMD方向及びTD方向になる2通りで切り出し、屈曲させた。フィルムが破損するまで屈曲を繰り返し、破損した時の回数を観測した。上記のMD方向とTD方向の2通りで測定し、低い方の回数を強度とした。数字が大きいほど破損するまでの回数が多いので、強度に優れるフィルムと判断される。この回数が10回以下といった低い回数であると、生産時、使用時に破損の問題が生じやすくなるため好ましくない。
(3)光弾性係数の測定
Macromolecules 2004,37,1062−1066に詳細に記載される複屈折測定装置を用いた。レーザー光の経路にフィルムの引っ張り装置を配置し、幅7mmの樹脂組成物の試験片に23℃で伸張応力をかけながら、その複屈折を測定した。伸張時の歪速度は20%/分(チャック間:30mm、チャック移動速度:6mm/分)とした。このようにして測定した値について、複屈折(Δn)をy軸、伸張応力(σR)をx軸としてプロットし、その関係から、最小二乗近似により初期線形領域の直線の傾きを求め、光弾性係数(CR)を算出した。傾きの絶対値が小さいほど光弾性係数が0に近いことを示し、好ましい光学特性であることを示す。
Macromolecules 2004,37,1062−1066に詳細に記載される複屈折測定装置を用いた。レーザー光の経路にフィルムの引っ張り装置を配置し、幅7mmの樹脂組成物の試験片に23℃で伸張応力をかけながら、その複屈折を測定した。伸張時の歪速度は20%/分(チャック間:30mm、チャック移動速度:6mm/分)とした。このようにして測定した値について、複屈折(Δn)をy軸、伸張応力(σR)をx軸としてプロットし、その関係から、最小二乗近似により初期線形領域の直線の傾きを求め、光弾性係数(CR)を算出した。傾きの絶対値が小さいほど光弾性係数が0に近いことを示し、好ましい光学特性であることを示す。
(4)最大光漏れの測定
最大光漏れは以下のように測定した。まず、背面照明ユニット(D)における冷陰極管(CCFL)からの光を拡散板に通して調整し、第一の偏光板(A−1)、第二の偏光板(A−2)、位相差フィルム(B−1)及び/又は(B−2)、液晶層(C)を含む積層体(液晶パネル)の第一の偏光板(A−1)側に入射させた。積層体は入射光に対して垂直方向に回転させることのできるステージに設置された。このステージの回転により方位角を設定した。また、ゴニオステージに輝度計を設置し、極角を設定した。所定の方位角、極角の方向から輝度を測定することで、積層体を設置しない場合の輝度を基準(即ち、100%として)、どの程度の光が漏れるかを%表示で評価した。そして、方位角0°〜360°、極角0°〜89°の範囲で光漏れを測定し、最大の値を最大光漏れとした。本測定では、液晶セル電極に電圧をかけずに測定したので黒表示時の状態になる。つまり、この最大光漏れの値が小さいほど黒表示時の光漏れが少ないので画像が優れることになる。なお、輝度計としてトプコン社製の商品名「BM−7A」を用いた。
ここで、方位角、極角について図4を参照しながら説明する。図4は液晶表示装置における表示面の座標の定義を示す。表示面30の面内方向(即ち、第二の偏光板(A−2)の面内方向)の互いに直交する軸をそれぞれX軸、Y軸、垂直方向の軸をZ軸とし、観測方向を符号31に示すとおりに設定する。なお、本実施例では、X軸を第一の偏光板(A−1)の吸収軸と平行になるように設定した。符号32は極角Φ、符号33は方位角θをそれぞれ示す。表示面30の面内方向に垂直な方向で光を照射するよう配置された光源34から発せられた光が観測される。
最大光漏れは以下のように測定した。まず、背面照明ユニット(D)における冷陰極管(CCFL)からの光を拡散板に通して調整し、第一の偏光板(A−1)、第二の偏光板(A−2)、位相差フィルム(B−1)及び/又は(B−2)、液晶層(C)を含む積層体(液晶パネル)の第一の偏光板(A−1)側に入射させた。積層体は入射光に対して垂直方向に回転させることのできるステージに設置された。このステージの回転により方位角を設定した。また、ゴニオステージに輝度計を設置し、極角を設定した。所定の方位角、極角の方向から輝度を測定することで、積層体を設置しない場合の輝度を基準(即ち、100%として)、どの程度の光が漏れるかを%表示で評価した。そして、方位角0°〜360°、極角0°〜89°の範囲で光漏れを測定し、最大の値を最大光漏れとした。本測定では、液晶セル電極に電圧をかけずに測定したので黒表示時の状態になる。つまり、この最大光漏れの値が小さいほど黒表示時の光漏れが少ないので画像が優れることになる。なお、輝度計としてトプコン社製の商品名「BM−7A」を用いた。
ここで、方位角、極角について図4を参照しながら説明する。図4は液晶表示装置における表示面の座標の定義を示す。表示面30の面内方向(即ち、第二の偏光板(A−2)の面内方向)の互いに直交する軸をそれぞれX軸、Y軸、垂直方向の軸をZ軸とし、観測方向を符号31に示すとおりに設定する。なお、本実施例では、X軸を第一の偏光板(A−1)の吸収軸と平行になるように設定した。符号32は極角Φ、符号33は方位角θをそれぞれ示す。表示面30の面内方向に垂直な方向で光を照射するよう配置された光源34から発せられた光が観測される。
[偏光板(A−1)及び(A−2)]
第一の偏光板(A−1)、第二の偏光板(A−2)としては、日立製作所製の液晶テレビジョン(商品名「Wooo」、37型)を分解して、光源側の偏光板を取り出し、その液晶セル側の保護フィルム(TACフィルム)を剥離したものを用いた。即ち、片側の保護フィルム(TAC)の無い2層構造(TAC/PVA)の偏光板を用いた。そして、両偏光板を互いに吸収軸が略直交し、TACフィルムが液晶層(C)に対して外側になるようにして配置した。
第一の偏光板(A−1)、第二の偏光板(A−2)としては、日立製作所製の液晶テレビジョン(商品名「Wooo」、37型)を分解して、光源側の偏光板を取り出し、その液晶セル側の保護フィルム(TACフィルム)を剥離したものを用いた。即ち、片側の保護フィルム(TAC)の無い2層構造(TAC/PVA)の偏光板を用いた。そして、両偏光板を互いに吸収軸が略直交し、TACフィルムが液晶層(C)に対して外側になるようにして配置した。
[液晶層(C)の作製]
IPSモード液晶表示装置の液晶層(C)を下記の手順で作製した。
まず、ITO膜が形成されたガラス基板をKOH水溶液及び純水で十分に洗浄した。次いで、そのガラス基板のITO膜にエッチングを施して、くし型のITO電極を形成した。その後、ITO電極の表面及び該電極が形成された側のガラス基板の表面に配向膜を塗布し、熱焼結させた。一方、対となるITO膜が形成されていないガラス基板を準備し、同様に配向膜を塗布し熱焼結させた。
次に、上述の両ガラス基板に形成した配向膜をそれぞれラビング処理した後、それらの配向膜が互いに対向するようにして、スペーサーを混合させた接着剤で両ガラス基板を貼り合わせた。スペーサーによって形成された空間に誘電率が負であるネマティック液晶を加熱しながら注入後、徐冷して封入した。このときのスペーサーの大きさを変えてセルギャップを1〜5μm程度で調節し、表4に示す所望のReを持つ液晶層(C)を得た。ここで、上記ラビング処理では、それぞれのラビングの方向が互いに略平行且つ逆方向になるようラビングした。配向膜としてポリイミド系の膜、スペーサーとして平均粒径1〜5μmのシリコン粒子、ネマティック液晶としてメルク社製のMLC2038(商品名)をそれぞれ用いた。
IPSモード液晶表示装置の液晶層(C)を下記の手順で作製した。
まず、ITO膜が形成されたガラス基板をKOH水溶液及び純水で十分に洗浄した。次いで、そのガラス基板のITO膜にエッチングを施して、くし型のITO電極を形成した。その後、ITO電極の表面及び該電極が形成された側のガラス基板の表面に配向膜を塗布し、熱焼結させた。一方、対となるITO膜が形成されていないガラス基板を準備し、同様に配向膜を塗布し熱焼結させた。
次に、上述の両ガラス基板に形成した配向膜をそれぞれラビング処理した後、それらの配向膜が互いに対向するようにして、スペーサーを混合させた接着剤で両ガラス基板を貼り合わせた。スペーサーによって形成された空間に誘電率が負であるネマティック液晶を加熱しながら注入後、徐冷して封入した。このときのスペーサーの大きさを変えてセルギャップを1〜5μm程度で調節し、表4に示す所望のReを持つ液晶層(C)を得た。ここで、上記ラビング処理では、それぞれのラビングの方向が互いに略平行且つ逆方向になるようラビングした。配向膜としてポリイミド系の膜、スペーサーとして平均粒径1〜5μmのシリコン粒子、ネマティック液晶としてメルク社製のMLC2038(商品名)をそれぞれ用いた。
[位相差フィルム(B−1)及び(B−2)の作製]
(1)スチレン−無水マレイン酸共重合体(P−1)
装置の全てがステンレス鋼製である重合装置を用いて、連続溶液重合によりスチレン−無水マレイン酸共重合体を合成した。まず、スチレン91.7質量部、無水マレイン酸8.3質量部(合計100質量部)を、混合しないようにそれぞれ準備した。次いで、メチルアルコール5質量部、重合開始剤として1,1−tert−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.03質量部をスチレンに混合し、第1調合液を得た。この第1調合液を0.95kg/時間の速度で連続して内容積4Lのジャケット付き完全混合重合機に供給した。
一方、第2調合液として70℃に加熱した無水マレイン酸を、0.10kg/時間の速度で上記完全混合重合機へ供給し、111℃で重合した。重合転化率が54%となったところで、重合液を重合機から連続して取り出した。取り出した重合液を、まず230℃に予熱後、そのまま230℃に保温し、20torrに減圧された脱揮器に供給した。次いで、その脱揮器内に重合液を平均滞留時間で0.3時間保持した後、脱揮器の低部のギヤポンプより連続して重合液を排出した。排出した重合液を押出機に連続的に溶融状態で移送し、押出機にて押出成形してスチレン−無水マレイン酸共重合体(P−1)のペレットを得た。
得られたスチレン−無水マレイン酸共重合体(P−1)のペレットは無色透明であり、この重合体の中和滴定による組成分析の結果、スチレンの共重合割合は85質量%、無水マレイン酸単位の共重合割合は15質量%であった。ASTM−D1238に準拠して測定した230℃、2.16kg荷重のメルトフローレート値は2.0g/10分であった。
(1)スチレン−無水マレイン酸共重合体(P−1)
装置の全てがステンレス鋼製である重合装置を用いて、連続溶液重合によりスチレン−無水マレイン酸共重合体を合成した。まず、スチレン91.7質量部、無水マレイン酸8.3質量部(合計100質量部)を、混合しないようにそれぞれ準備した。次いで、メチルアルコール5質量部、重合開始剤として1,1−tert−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.03質量部をスチレンに混合し、第1調合液を得た。この第1調合液を0.95kg/時間の速度で連続して内容積4Lのジャケット付き完全混合重合機に供給した。
一方、第2調合液として70℃に加熱した無水マレイン酸を、0.10kg/時間の速度で上記完全混合重合機へ供給し、111℃で重合した。重合転化率が54%となったところで、重合液を重合機から連続して取り出した。取り出した重合液を、まず230℃に予熱後、そのまま230℃に保温し、20torrに減圧された脱揮器に供給した。次いで、その脱揮器内に重合液を平均滞留時間で0.3時間保持した後、脱揮器の低部のギヤポンプより連続して重合液を排出した。排出した重合液を押出機に連続的に溶融状態で移送し、押出機にて押出成形してスチレン−無水マレイン酸共重合体(P−1)のペレットを得た。
得られたスチレン−無水マレイン酸共重合体(P−1)のペレットは無色透明であり、この重合体の中和滴定による組成分析の結果、スチレンの共重合割合は85質量%、無水マレイン酸単位の共重合割合は15質量%であった。ASTM−D1238に準拠して測定した230℃、2.16kg荷重のメルトフローレート値は2.0g/10分であった。
(2)スチレン−メタクリル酸共重合体(P−2)
装置の全てがステンレス鋼製である重合装置を用いて、連続溶液重合によりスチレン−メタクリル酸共重合体を合成した。まず、スチレン75.2質量%、メタクリル酸4.8質量%、エチルベンゼン20質量%を調合して、そこに重合開始剤として1,1−tert−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンを添加して調合液(単量体溶液)を得た。この調合液を1L/時間の速度で連続して内容積2Lの攪拌機付き完全混合重合機に供給し、136℃で重合した。固形分49%を含有する重合液を連続して取り出した。取り出した重合液を、まず230℃に予熱後、そのまま230℃に保温し、20Torrに減圧された脱揮器に供給した。次いで、その脱揮器内に重合液を平均滞留時間で0.3時間保持した後、脱揮器の低部のギヤポンプより連続して重合液を排出した。排出した重合液を押出機に連続的に溶融状態で移送し、押出機にて押出成形してスチレン−メタクリル酸共重合体(P−2)のペレットを得た。
得られたスチレン−メタクリル酸共重合体(P−2)のペレットは無色透明であり、この重合体の中和滴定による組成分析の結果、スチレンの共重合割合は92質量%、メタクリル酸の共重合割合は8.1質量%であった。ASTM−D1238に準拠して測定した230℃、3.8kg荷重のメルトフローレート値は5.1g/10分であった。
装置の全てがステンレス鋼製である重合装置を用いて、連続溶液重合によりスチレン−メタクリル酸共重合体を合成した。まず、スチレン75.2質量%、メタクリル酸4.8質量%、エチルベンゼン20質量%を調合して、そこに重合開始剤として1,1−tert−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンを添加して調合液(単量体溶液)を得た。この調合液を1L/時間の速度で連続して内容積2Lの攪拌機付き完全混合重合機に供給し、136℃で重合した。固形分49%を含有する重合液を連続して取り出した。取り出した重合液を、まず230℃に予熱後、そのまま230℃に保温し、20Torrに減圧された脱揮器に供給した。次いで、その脱揮器内に重合液を平均滞留時間で0.3時間保持した後、脱揮器の低部のギヤポンプより連続して重合液を排出した。排出した重合液を押出機に連続的に溶融状態で移送し、押出機にて押出成形してスチレン−メタクリル酸共重合体(P−2)のペレットを得た。
得られたスチレン−メタクリル酸共重合体(P−2)のペレットは無色透明であり、この重合体の中和滴定による組成分析の結果、スチレンの共重合割合は92質量%、メタクリル酸の共重合割合は8.1質量%であった。ASTM−D1238に準拠して測定した230℃、3.8kg荷重のメルトフローレート値は5.1g/10分であった。
(3)スチレン−アクリロニトリル共重合体(P−3)
連続溶液重合によりスチレン−メタクリル酸共重合体を合成した。内容積3Lの攪拌機付き完全混合重合機に、スチレン72質量%、アクリロニトリル13質量%、エチルベンゼン15質量%からなる調合液(単量体溶液)を連続して供給し、150℃、滞留時間2時間で重合した。得られた重合液を押出機に連続的に溶融状態で移送し、押出機にて押出成形すると同時に未反応単量体及び溶媒を回収し、スチレン−アクリロニトリル共重合体(P−3)のペレットを得た。
得られたスチレン−アクリロニトリル共重合体(P−3)のペレットは無色透明であり、この重合体の中和滴定による組成分析の結果、スチレンの共重合割合は80質量%、アクリロニトリルの共重合割合は20質量%であった。ASTM−D1238に準拠して測定した220℃、10kg荷重のメルトフローレート値は13g/10分であった。
連続溶液重合によりスチレン−メタクリル酸共重合体を合成した。内容積3Lの攪拌機付き完全混合重合機に、スチレン72質量%、アクリロニトリル13質量%、エチルベンゼン15質量%からなる調合液(単量体溶液)を連続して供給し、150℃、滞留時間2時間で重合した。得られた重合液を押出機に連続的に溶融状態で移送し、押出機にて押出成形すると同時に未反応単量体及び溶媒を回収し、スチレン−アクリロニトリル共重合体(P−3)のペレットを得た。
得られたスチレン−アクリロニトリル共重合体(P−3)のペレットは無色透明であり、この重合体の中和滴定による組成分析の結果、スチレンの共重合割合は80質量%、アクリロニトリルの共重合割合は20質量%であった。ASTM−D1238に準拠して測定した220℃、10kg荷重のメルトフローレート値は13g/10分であった。
(4)メタクリル酸メチル−アクリル酸メチル共重合体(P−4)
メタクリル酸メチル89.2質量部、アクリル酸メチル5.8質量部、キシレン5質量部からなる混合物に、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.0294質量部、及びn−オクチルメルカプタン0.115質量部を添加し、均一に混合して調合液(単量体溶液)を得た。
この調合液を内容積10Lの密閉式耐圧反応器に連続的に供給し、攪拌下で平均温度130℃、平均滞留時間2時間で重合した。その後、反応器に接続された貯槽に連続的に重合液を送り出し、一定条件下で揮発分を除去した。揮発分を除去した後の共重合体を押出機に連続的に溶融状態で移送し、押出機にて押出成形してメタクリル酸メチル−アクリル酸メチル共重合体(P−4)のペレットを得た。
得られたメタクリル酸メチル−アクリル酸メチル共重合体(P−4)の中和滴定による組成分析の結果、アクリル酸メチルの共重合割合は6.0質量%、メタクリル酸メチルの共重合割合は92.0質量%、ASTM−D1238に準拠して測定した230℃、3.8kg荷重のメルトフローレート値は1.0g/10分であった。
メタクリル酸メチル89.2質量部、アクリル酸メチル5.8質量部、キシレン5質量部からなる混合物に、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.0294質量部、及びn−オクチルメルカプタン0.115質量部を添加し、均一に混合して調合液(単量体溶液)を得た。
この調合液を内容積10Lの密閉式耐圧反応器に連続的に供給し、攪拌下で平均温度130℃、平均滞留時間2時間で重合した。その後、反応器に接続された貯槽に連続的に重合液を送り出し、一定条件下で揮発分を除去した。揮発分を除去した後の共重合体を押出機に連続的に溶融状態で移送し、押出機にて押出成形してメタクリル酸メチル−アクリル酸メチル共重合体(P−4)のペレットを得た。
得られたメタクリル酸メチル−アクリル酸メチル共重合体(P−4)の中和滴定による組成分析の結果、アクリル酸メチルの共重合割合は6.0質量%、メタクリル酸メチルの共重合割合は92.0質量%、ASTM−D1238に準拠して測定した230℃、3.8kg荷重のメルトフローレート値は1.0g/10分であった。
(5)位相差フィルムの作製
上述のようにして得られた各共重合体を単独で、もしくは表1に記載の組成の樹脂組成物(P−5からP−7)を用いて、プラスチック工学研究所製Tダイ装着押し出し機(BT−30−C−36−L型/幅400mmTダイ装着/リップ厚0.8mm)により、押出機シリンダー内樹脂温度を235℃、押出機Tダイ温度を240℃とし、スクリュー回転数を調節して押出成形をすることにより未延伸フィルムを得た。
上述のようにして得られた各共重合体を単独で、もしくは表1に記載の組成の樹脂組成物(P−5からP−7)を用いて、プラスチック工学研究所製Tダイ装着押し出し機(BT−30−C−36−L型/幅400mmTダイ装着/リップ厚0.8mm)により、押出機シリンダー内樹脂温度を235℃、押出機Tダイ温度を240℃とし、スクリュー回転数を調節して押出成形をすることにより未延伸フィルムを得た。
未延伸フィルムに対するフィルムの流れ(押出方向)(MD方向)一軸延伸は、市金工業社製テンター延伸機を用い、延伸機入口にフィルムの繰り出し側ロール、出口に巻き取り側ロールを用意し、チャックを用いずに縦一軸延伸(MD方向の延伸)を行った。つまり、目標の設定延伸倍率にするために、二つのロール(繰り出し側ロール/巻き取り側ロール)の回転速度を変えてロール間で連続的に延伸を行った。引き続き得られた縦一軸延伸フィルムのMD方向に垂直な方向延伸(TD方向の延伸)は、上記と同様に、市金工業社製テンター延伸機を用いて連続的に行った。目標とする設定延伸倍率にするために、テンターチャック間の距離を変えて延伸を行った。
[実施例1〜10、比較例1〜3]
実施例1、実施例2、実施例5〜9、比較例2、比較例3は、(P−5)の樹脂組成物を用いて位相差フィルム(B−1)及び/又は(B−2)を作製した。実施例3は、(P−7)の樹脂組成物を用いて位相差フィルム(B−1)及び(B−2)を作製した。実施例4は、(P−6)の樹脂組成物を用いて位相差フィルム(B−1)及び(B−2)を作製した。実施例10は、(P−1)の樹脂を用いて位相差フィルム(B−1)及び(B−2)を作製した。比較例1では、位相差フィルムを用いなかった。
縦延伸(MD方向の延伸)、横延伸(TD方向の延伸)ともに、テンター延伸機内の延伸する領域の温度は135〜145℃の範囲で適宜調整を行い、表2及び表3の倍率条件で延伸し、所望のReとNZ係数を持つ位相差フィルムを得た。得られたフィルムの厚みは、40〜60μmの範囲であった。また、表2及び表3には、得られたフィルムの強度、光弾性係数を示した。
次に、上記液晶層(C)の両ガラス基板の更に外側に、位相差フィルム(B−1)及び/又は(B−2)、第一の偏光板(A−1)、第二の偏光板(A−2)を貼り合わせて積層体(液晶パネル)を得た。つまり、第一の偏光板(A−1)、位相差フィルム(B−1)(無い場合もある)、液晶層(C)、位相差フィルム(B−2)(無い場合もある)、偏光板(A−2)の順で構成される積層体(液晶パネル)を作製した。各実施例での位相差フィルム(B−1)及び/又は(B−2)、液晶層(C)の光学特性(NZ係数、Re)を表4に示す。各部材の軸合わせを行った後、粘着材を用いて各部材を貼り合わせた。
実施例1〜6、実施例10、比較例2及び比較例3では、(B−1)、(C)、(B−2)の遅相軸の向きは、(A−1)の吸収軸の向きを0°とした時に、それぞれ略平行、略直交、略直交で配置した。実施例7では、(C)、(B−2)の遅相軸の向きは、(A−1)の吸収軸の向きを0°とした時に、それぞれ略直交、略直交で配置した。実施例8では、(B−1)、(C)の遅相軸の向きは、(A−1)の吸収軸の向きを0°とした時に、それぞれ略平行、略平行で配置した。実施例9では、(B−1)、(C)、(B−2)の遅相軸の向きは、(A−1)の吸収軸の向きを0°とした時に、それぞれ略平行、略平行、略直交で配置した。実施例3〜10で用いた位相差フィルム(B−1)、(B−2)は、何れもReが小さいので配置を略平行から略直交、もしくは、略直交から略平行、あるいはその他の角度に変えても表4における最大光漏れの結果はほぼ同等であった。
位相差フィルム(B−1)及び/又は(B−2)を用いていない場合は、表2、表3及び表4中で当該欄に「無」と記載した。
実施例1、実施例2、実施例5〜9、比較例2、比較例3は、(P−5)の樹脂組成物を用いて位相差フィルム(B−1)及び/又は(B−2)を作製した。実施例3は、(P−7)の樹脂組成物を用いて位相差フィルム(B−1)及び(B−2)を作製した。実施例4は、(P−6)の樹脂組成物を用いて位相差フィルム(B−1)及び(B−2)を作製した。実施例10は、(P−1)の樹脂を用いて位相差フィルム(B−1)及び(B−2)を作製した。比較例1では、位相差フィルムを用いなかった。
縦延伸(MD方向の延伸)、横延伸(TD方向の延伸)ともに、テンター延伸機内の延伸する領域の温度は135〜145℃の範囲で適宜調整を行い、表2及び表3の倍率条件で延伸し、所望のReとNZ係数を持つ位相差フィルムを得た。得られたフィルムの厚みは、40〜60μmの範囲であった。また、表2及び表3には、得られたフィルムの強度、光弾性係数を示した。
次に、上記液晶層(C)の両ガラス基板の更に外側に、位相差フィルム(B−1)及び/又は(B−2)、第一の偏光板(A−1)、第二の偏光板(A−2)を貼り合わせて積層体(液晶パネル)を得た。つまり、第一の偏光板(A−1)、位相差フィルム(B−1)(無い場合もある)、液晶層(C)、位相差フィルム(B−2)(無い場合もある)、偏光板(A−2)の順で構成される積層体(液晶パネル)を作製した。各実施例での位相差フィルム(B−1)及び/又は(B−2)、液晶層(C)の光学特性(NZ係数、Re)を表4に示す。各部材の軸合わせを行った後、粘着材を用いて各部材を貼り合わせた。
実施例1〜6、実施例10、比較例2及び比較例3では、(B−1)、(C)、(B−2)の遅相軸の向きは、(A−1)の吸収軸の向きを0°とした時に、それぞれ略平行、略直交、略直交で配置した。実施例7では、(C)、(B−2)の遅相軸の向きは、(A−1)の吸収軸の向きを0°とした時に、それぞれ略直交、略直交で配置した。実施例8では、(B−1)、(C)の遅相軸の向きは、(A−1)の吸収軸の向きを0°とした時に、それぞれ略平行、略平行で配置した。実施例9では、(B−1)、(C)、(B−2)の遅相軸の向きは、(A−1)の吸収軸の向きを0°とした時に、それぞれ略平行、略平行、略直交で配置した。実施例3〜10で用いた位相差フィルム(B−1)、(B−2)は、何れもReが小さいので配置を略平行から略直交、もしくは、略直交から略平行、あるいはその他の角度に変えても表4における最大光漏れの結果はほぼ同等であった。
位相差フィルム(B−1)及び/又は(B−2)を用いていない場合は、表2、表3及び表4中で当該欄に「無」と記載した。
表2及び表3から分かるように、実施例1〜10では、位相差フィルム(B−1)及び/又は(B−2)の屈曲性試験の破壊に至るまでの回数が多く、フィルムの強度に優れることが分かる。これに対し、比較例2においては強度が著しく低いことが分かる。これは非特許文献1で用いられているポリスチレンを材料に用いてもほぼ同等の結果であった。この理由としては、MD方向とTD方向のうち片方の延伸倍率が小さいために強度が低くなったと推測される。これらの結果から、本実施の形態の液晶表示装置は、製造時及び使用時にフィルムの破損が少なくなることが期待でき、歩留まりが良好(生産性良好)となり、製品としても有用であることが分かる。また、延伸する際の倍率が200%以上といった大きな値にならないので、より小型の延伸装置で作製可能であり生産性に優れる。つまり、本実施の形態の液晶表示装置は強度と生産性のバランスに優れることが分かる。
また、表2及び表3から分かるように、実施例1〜10では、位相差フィルム(B−1)及び/又は(B−2)の光弾性係数が小さいので環境変化による画像の変化が小さいことが期待される。これは、別途測定したPC(ポリカーボネート)フィルムの光弾性係数が、80×10-12・Pa-1と大きい値であり、これとの比較からも分かる。このため、光弾性係数がより小さいとの理由で、アクリル系樹脂及びスチレン系樹脂を含む樹脂組成物を用いた実施例1〜9が特に優れた結果であることが分かる。
なお、実施例1〜10では、耐熱性の指標となるガラス転移温度(DSC法を用い、パーキンエルマー社製、示差走査熱量計「Pyris1」で測定)が、120℃以上であったので、非特許文献1で用いられているポリスチレンの約100℃と比較して優れているとの利点もあった。これにより、本実施の形態の液晶表示装置は、より高い温度環境でも活用できることが分かる。
また、表2及び表3から分かるように、実施例1〜10では、位相差フィルム(B−1)及び/又は(B−2)の光弾性係数が小さいので環境変化による画像の変化が小さいことが期待される。これは、別途測定したPC(ポリカーボネート)フィルムの光弾性係数が、80×10-12・Pa-1と大きい値であり、これとの比較からも分かる。このため、光弾性係数がより小さいとの理由で、アクリル系樹脂及びスチレン系樹脂を含む樹脂組成物を用いた実施例1〜9が特に優れた結果であることが分かる。
なお、実施例1〜10では、耐熱性の指標となるガラス転移温度(DSC法を用い、パーキンエルマー社製、示差走査熱量計「Pyris1」で測定)が、120℃以上であったので、非特許文献1で用いられているポリスチレンの約100℃と比較して優れているとの利点もあった。これにより、本実施の形態の液晶表示装置は、より高い温度環境でも活用できることが分かる。
表4には、表2及び表3の位相差フィルムを用いた各種構成における最大光漏れの測定結果を示した。液晶層(C)は、Reを100nm付近から400nm付近まで用意し、それぞれの位相差フィルムとの組み合わせで測定し、光漏れが最適となった(C)を用いたときの値で結果を載せた。例えば、比較例1及び比較例2では、(C)を300nm以下といったReの小さい値にすると、光漏れはより悪い結果となった。
表4から分かるように、本実施の形態の液晶表示装置(実施例1〜10)は、暗状態(黒表示状態)での光漏れが少なく、表示に優れることが分かる。
なお、液晶層(C)を100nm以下となるような実験も試みたが、場所による表示ムラが大きく不適であった。また、液晶の注入等のセル作製操作における取り扱いがより困難となり、生産性にも劣っていた。
表4から分かるように、本実施の形態の液晶表示装置(実施例1〜10)は、暗状態(黒表示状態)での光漏れが少なく、表示に優れることが分かる。
なお、液晶層(C)を100nm以下となるような実験も試みたが、場所による表示ムラが大きく不適であった。また、液晶の注入等のセル作製操作における取り扱いがより困難となり、生産性にも劣っていた。
本発明の液晶表示装置は、黒表示においても斜め方向からの光漏れを十分に低減でき、且つ、生産性、品質、耐久性にも優れる。本発明によれば、液晶テレビに代表される薄型ディスプレイ市場に有用な液晶表示装置を提供できる。
10…第一の偏光板、11…第一の偏光板の吸収軸、20…第二の偏光板、21…第二の偏光板の吸収軸、30…液晶パネル、31…観測方向、32…極角、33…方位角、34…光源、40…第一の偏光板の透過軸、41…第一の偏光板の吸収軸、42…第二の偏光板の透過軸、43…第二の偏光板の吸収軸。
Claims (8)
- 第一の偏光板(A−1)と、
前記第一の偏光板(A−1)の吸収軸に対して略直交する吸収軸を有する第二の偏光板(A−2)と、
前記第一の偏光板(A−1)と前記第二の偏光板(A−2)との間に位置する、第一の位相差フィルム(B−1)及び/又は第二の位相差フィルム(B−2)と、
前記第一の偏光板(A−1)の吸収軸に対して略平行又は略垂直に配向される液晶分子を含む液晶層であって、前記液晶層に対して横方向に電界を印加することにより前記液晶分子が前記液晶層の面内方向で回転する液晶層(C)と、
前記第一の偏光板(A−1)の前記第二の偏光板(A−2)とは反対側に位置し、前記第一の偏光板(A−1)に向けて光を照射する背面照明ユニット(D)と、
を備える液晶表示装置であって、
前記第一の位相差フィルム(B−1)及び/又は第二の位相差フィルム(B−2)のNZ係数が−0.7以下であり、前記液晶層(C)の面内リタデーションが130nm以上300nm以下である、液晶表示装置。 - 背面照明ユニット(D)側から、偏光板(A−1)、位相差フィルム(B−1)、液晶層(C)、偏光板(A−2)の順で構成される、請求項1記載の液晶表示装置。
- 背面照明ユニット(D)側から、偏光板(A−1)、液晶層(C)、位相差フィルム(B−2)、偏光板(A−2)の順で構成される、請求項1記載の液晶表示装置。
- 背面照明ユニット(D)側から、偏光板(A−1)、位相差フィルム(B−1)、液晶層(C)、位相差フィルム(B−2)、偏光板(A−2)の順で構成される、請求項1記載の液晶表示装置。
- 前記位相差フィルム(B−1)及び/又は(B−2)はスチレン系樹脂である、請求項1〜4のいずれか1項記載の液晶表示装置。
- 前記位相差フィルム(B−1)及び/又は(B−2)はアクリル系樹脂及びスチレン系樹脂を含む樹脂組成物である、請求項1〜4のいずれか1項記載の液晶表示装置。
- 前記アクリル系樹脂はメタクリル酸メチル−アクリル酸メチル共重合体である、請求項6記載の液晶表示装置。
- 前記スチレン系樹脂は、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項5〜7のいずれか1項記載の液晶表示装置。
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