JP2010060245A - 超電導機器の電流リード - Google Patents

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Abstract

【課題】電流リードから超電導機器への熱侵入を十分に抑制することのできる、パルス管冷凍機を用いた超電導機器の電流リードを提供する。
【解決手段】電流を通電するためのリード導体と、この導体を冷却するためのパルス管冷凍機を備えた超電導機器の電流リードにおいて、前記リード導体をパルス管冷凍機のパルス管の中にその高温端と低温端を貫通させて配置し、このパルス管の外側にこのパルス管と連通させかつ同心的に前記パルス管冷凍機の蓄冷管を配置し、さらに、前記パルス管と蓄冷管との間に真空層を設けるとともに、この真空層内に輻射熱遮断体を配置することで、前記パルス管と蓄冷管とを熱的に絶縁する。
【選択図】図1

Description

この発明は、超電導電磁石や超電導電力貯蔵装置等の超電導機器と外部機器との間で電流の供給を行う電流リードに関する。
超電導機器は、常電導機器に比べると小形軽量で高効率にすることができるが、超電導状態を維持するために、液体窒素温度(77K)や液体へリウム温度(4K)などの低温状態に保持する必要がある。
超電導機器を低温に保持するためには、冷却装置を設けてこれにより冷却する必要がある。この冷却装置の冷却能力は、理論的には、冷却装置への入力エネルギーの1〜10%程度となってしまう。換言すると、1Wの冷凍能力を発揮するために、10〜100W程度の入力エネルギーが必要になる。冷却に要するエネルギーは超電導機器の効率に直結するので、このエネルギーの抑制、すなわち低温部分への熱侵入量低減が重要な技術となる。
低温下の超電導機器と室温におかれた電源などの外部機器とを接続して電流を供給するのに電流リードが使用される。電流リードの導体に使用される銅等の高導電性金属材は、一般的に熱伝導率も高いので、電流リードを介して室温の外部から低温の超電導機器内部へ高温の熱がより多く伝わり、超電導機器の冷却装置の熱負荷の増大を招く。
このため、熱伝導率の高い銅等の高導電性金属導体により構成された電流リードの場合は、この電流リードの導体を冷却したり、電流リードの導体を熱伝導率の低い超電導材により構成したりすることにより、電流リードから超電導機器への熱侵入を抑制することが従来から行われている。
図2は、特許文献1等により従来から知られているパルス管冷凍機を冷却手段とした超電導機器の電流リードの構成を示すものである。
図2において、10(10A、10B)は、電力貯蔵設備の超電導材により構成された電力蓄積体20の両端に接続されたパルス管冷凍機であり、電力蓄積体20への通電を行うための電流リード1を構成するものである。パルス管冷凍機10の高温側を除く略全体および電力蓄積体20が真空容器で構成されたチャンバー30内に収められ、通常はコイル状とされた電力蓄積体20とパルス管冷凍機10との接続部28およびは電力蓄積体20全体がパルス管冷凍機10によって冷却されるように構成されている。
パルス管冷凍機10は、それ自身を電流リードとして使用するため、パルス管13と蓄冷管14とを同心的に2重に配置し、パルス管13内に上端の高温端と下端の低温端を貫通して銅等の高電導性材で形成したリード導体12を配設して構成される。蓄冷管14の上部に設けたフランジ15の作動ガスの流入出口15Aに圧力振動発生手段40が接続され、ここから管13,14間の隙間にヘリウムガス等の作動ガスが流入出される。パルス管13と蓄冷管14との間の隙間には、上方から順に蓄冷管上部フローストレーナ16、金網を円筒状に形成してなるメッシュパイプ17、蓄冷管下部フローストレーナ18が配置され、蓄冷管14の下端は、下部フランジ19で塞がれ、さらに下部フランジ19のリード導体12の貫通部分がシールキャップ21で塞がれている。フローストレーナ、およびメッシュパイプは、作動ガスの流れを整流する機能および熱伝導する機能を有するものである。
蓄冷管下部フローストレーナ18の下端部とパルス管13の低温端となる下端部との間に蓄冷器として機能する熱交換器22が配置され、その上端側にはパルス管下部フローストレーナ23が配置され、管13と14の間の隙間を流れる作動ガスが、蓄冷管下部フローストレーナ18から熱交換器22およびパルス管下部フローストレーナ23を通してパルス管13内へ流入出できるように構成されている。一方、パルス管13の高温端となる上端側には、パルス管上部フローストレーナ24が配置され、また、このパルス管上部フローストレーナ24を覆うように上部フランジ25が設けられている。この上部フランジ25には連通孔25Aが設けられており、これを介してパルス管13を図示しないバッファタンクまたは、圧力振動発生手段40に接続する。また、上部フランジ25には放熱フィン26が取り付けられており、パルス管13の高温端をも貫通するリード導体12の熱をパルス管上部フローストレーナ24から上部フランジ25に伝達し、放熱フィン26から外気に放熱している。従って、パルス管上部フローストレーナ24は、本来の整流機能の他、リード導体12から熱を奪う熱交換器としても機能する。さらに、リード導体12の高温端が貫通する部分も、作動ガスが漏れないようにシールキャップ27で塞がれている。
このようなパルス管冷凍機10を構成する各部材は、磁気特性や機械強度などを考慮してステンレスにより形成されるが、リード導体12を、導電性を考慮して高導電性の銅で形成して、パルス管冷凍機10に通電された電流は、その殆どがパルス管13や蓄冷管14ではなく、リード導体12を通して流れるようにしている。
このようなパルス管冷凍機10で構成された電流リード1によれば、リード導体12と電力蓄積体20との接続部28がパルス管冷凍機により直接的に冷却されるから、リード導体12を介して侵入する熱を効果的に抑えることができるため、電力蓄積体20等の超電導機器の熱効率を高めることができる。また、パルス管冷凍機10を貫通したリード導体12が銅により形成され電流の通電を一手に負担することから、パルス管冷凍機10を形成する部材は、導電性等は考慮せず冷凍機として要求される耐久性など優先してステンレス等の材料で形成できるため、良好な通電性能を確保しつつ、冷凍機としての信頼性も確実に得ることができる。
前記したように従来のパルス管冷凍機を用いた電流リードは、多くの利点を有するが、パルス管冷凍機のパルス管と蓄冷管を同心的に2重に配置した構成では、両方の管の間の熱絶縁が十分でないため、パルス管冷凍機の運転を定常的に安定に維持することが困難な場合が生じる問題がある。
すなわち、中心にリード導体を配置し、その外側にパルス管を配置し、さらにその外側に蓄冷管を配置した多重構成のパルス管冷凍機を運転した場合、それぞれの管における管の長さ方向の温度勾配が大きく異なるためである。蓄冷管の温度勾配は、高温端側から低温端側へほぼ直線的な変化となるが、パルス管の内部においては、作動ガスのガスピストンの構成によって温度勾配が急激に変化する部分が生じる。これによりパルス管と蓄冷管の共有する管壁の内側と外側での作動ガスの温度差が大きくなり、パルス管側から蓄冷管側へ、またはその逆の方向への熱侵入が発生し大きな熱損失を招くだけでなく、この急激な温度差がパルス管冷凍機内部の振動流に大きな影響を及ぼすことになる。つまり、パルス管冷凍機の内部では、作動ガスの温度・圧力が2Hz程度の速度で変動しているが、この変動の周期を乱して安定した冷却サイクルを維持できず、不安定な運転状態に陥る可能性が生じるのである。この結果、パルス管冷凍機の所期の冷却性能が得られず、電流リードから超電導機器への熱侵入を十分に抑制することができないという問題が生じる。
この問題を解決するためになされた改良が、非特許文献1に示されている。図3は、この非特許文献1に示された電流リードの構成を示す縦断面図である。この図3において、図2に示す従来装置と機能の同じ要素は、同一の符号を付して示す。
図3に示すように、この文献におけるパルス管冷凍機10は、図2と同じく、パルス管13の外側に蓄冷管14を同心的に多重に配置して構成されている。非特許文献1の電流リードにおいては、さらに、パルス管13と蓄冷管14の間に真空層50を形成するために、パルス管13の外周に第1の断熱管51と第2の断熱管52を配置している。これにより、パルス管13と蓄冷管14は共有する管壁が無くなり、真空層50を介して並列することになる。この結果、パルス管13と蓄冷管14は熱的に断熱されたことになり、これら相互の熱の作用がなくなり、各管の温度分布が独立して形成され、パルス管冷凍機としての運転が良好になる。
特許第4000364号公報 Advances in Cryogenic Engineering, Vol.51B, P1711-1718, 2006
前記の特許文献1の電流リードを改良した非特許文献1の電流リードは、パルス管と蓄冷管とを熱的に絶縁する目的でなされたものである。この熱的に絶縁するために真空断熱効果を利用しているが、真空により断熱できるのは、真空断熱層内の対流による伝熱に対してのみであり、室温からの輻射による伝熱については有効ではない。図3に示すように、蓄冷管とパルス管の長さが異なるため、長さ方向の温度分布も異なり、蓄冷管の高温側の位置が、パルス管では低温側近傍に位置しており、この部分で蓄冷管からパルス管へ輻射による伝熱があることになる。この輻射による伝熱により、パルス管壁の温度が上昇し、所定の温度分布が得られなくなる可能性が生じる。結果として蓄冷管とパルス管の熱絶縁が不完全なものとなり、所期の冷却性能を発揮できなくなる。
この発明は、前記の問題を解決して、電流リードから超電導機器への熱侵入を十分に抑制することのできる、パルス管冷凍機を用いた超電導機器の電流リードを提供することを課題とするものである。
この発明は、前記の課題を解決するため、電流を通電するためのリード導体と、この導体を冷却するためのパルス管冷凍機を備えた超電導機器の電流リードにおいて、前記リード導体をパルス管冷凍機のパルス管の中にその高温端と低温端を貫通させて配置し、このパルス管の外側にこのパルス管と連通させかつ同心的に前記パルス管冷凍機の蓄冷管を配置し、さらに、前記パルス管と蓄冷管との間に真空層を設けるとともに、この真空層内に輻射熱遮断体を配置することにより、前記パルス管と蓄冷管とを熱的に絶縁したことを特徴とするものである。
また、この発明においては、前記輻射熱遮断体を前記真空層内の前記蓄冷管の上端付近に限定して配置することができる。
この発明によれば、リード導体の貫通された2重管構成のパルス管冷凍機におけるパルス管と蓄冷管との間に、内部に輻射熱遮断体を配置した真空層を設けることにより、パルス管と蓄冷管とを熱的に絶縁したので、対流による伝熱だけでなく、輻射による伝熱を阻止できるため、パルス管および蓄冷管内の温度勾配が相違していても、両管相互間における熱侵入が阻止され、パルス管冷凍機の運転を安定に維持することができる。このためリード導体およびこのリード導体に接続された超電導機器を良好に冷却することができ、リード導体を介する熱侵入を抑制することができる。
この発明の実施の形態を図に示す実施例について説明する。
図1は、この発明の実施例の電流リードの構成を示す縦断面図である。この図1において、図2および図3に示す従来装置と機能の同じ要素は、同一の符号を付して示す。
図1に示すように、この発明の実施例におけるパルス管冷凍機10は、従来装置と同じく、パルス管13の外側に蓄冷管14を同心的に多重に配置して構成されている。パルス管13の高温端となる上端は放熱器となる上部フランジ25で閉塞され、蓄熱管14の低温端となる下端は下部フランジ19で閉塞される、上部フランジ25、パルス管13および下部フランジ19を貫通させて電流を通電するための銅等の高電導性材で形成されたリード導体12を配置する。下部フランジ19および上部フランジ25のリード導体12の貫通部は、それぞれシール体21および27によってシールされる。
蓄冷管14の上端に結合された蓄冷管フランジ15およびパルス管13に結合されたパルス管フランジ25には、ヘリウムガス等の作動ガスを流入出させるためにそれぞれの管内に連通された作動ガス流入出口15Aおよび25Aが設けられ、これらの作動ガス流入出口に作動ガス圧縮機40から作動ガスが供給される。
蓄冷管14内には、上からガス流の整流機能を有する上部フローストレーナ16、蓄冷機能を有する金網で構成したメッシュパイプ17、および下部フローストレーナ18が収められている。蓄冷管14の下端部とパルス管13の下端部との間に、蓄冷器となる熱交換器22が設けられる。熱交換器22は作動ガスの流通が可能なように構成されているため、蓄冷管14とパルス管13とはこの熱交換器22を介して連通されている。パルス管13内の下端部および上端部にはそれぞれ作動ガス流を整流するためのフローストレーナ23および24が設けられている。
パルス管13と蓄冷管14との間に真空層50を形成するためにパルス管13の外周に第1の断熱管51と第2の断熱管52を配設している。第1の断熱管51はパルス管13と蓄冷管14とが重なる部分に設けられており、上端部が蓄冷管フランジ15のパルス管13の貫通する貫通孔15Bの外周壁に気密的に結合され下端部が封止体53を介してパルス管13の下端部に気密的に結合される。
また第2の断熱管52は、パルス管14の蓄冷管14と重ならない部分の外周に配設されている。この第2の断熱管52の下部のフランジ54を蓄冷管14のフランジ15に結合ボルト56によりOリング等のパッキン材を介して締め付けることにより、気密的に結合される。そして上部のフランジ55が締付ボルト37および38により中間フランジ58を介してパルス管13の上部フランジ25にOリング等のパッキン材を介して気密的に締付結合される。断熱管51と52の内部は互いに連通されている。
これにより、パルス管13の外周に断熱管51および52により囲まれて形成される2つの空所は1つに連通した気密的な空所50となる。この空所50の中の空気を真空に引き抜くことにより、蓄冷管14とパルス管13との間に真空層50が形成される。この真空層50により蓄冷管14とパルス管13との間の対流が防止され、両管相互間の対流による熱の侵入を阻止することができる。
パルス管冷凍機10のここまでの構成は、図3に示した従来のパルス管冷凍機の構成とほぼ同じである。
本発明では、蓄冷管14とパルス管13との間の真空層50内に、輻射熱遮断体60を配置する。この輻射熱遮断体60は、表面にアルミニウムを蒸着して輻射熱反射面を有するプラスチックフィルムを円筒状に多層に重ねて構成することができる。この輻射熱遮断体60は、プラスチックフィルムによる輻射熱の反射作用により輻射熱の遮断を行うものであるので、その断熱効果は一般的に重ねたフィルムの枚数に比例するため、輻射熱遮断体60は、より多くの枚数のプラスチックフィルムを積層して構成するのがよい。
また、この輻射熱遮断体60は、必ずしも真空層50の全長にわたって配置する必要はなく、図1に示すように、断熱管51と52の結合部付近に配置すればよい。これにより、蓄冷管14からパルス管13への輻射による伝熱が最も大きくなる蓄冷管14の上端付近での輻射による伝熱が遮断されることになるので、輻射熱の侵入を効果的に阻止できる。
このように構成された電流リード1は、従来の電流リードと同様に、パルス管冷凍機10を、図示しない超電導機器の収められたチャンバー30に電気的な絶縁材で構成された絶縁フランジ35を介して気密的に取付け、リード導体12の先端を超電導機器の接続端子(図示せず)に接続して使用する。
パルス管冷凍機10は、圧縮機40から供給される作動ガスが蓄冷管14およびパルス管13内において振動変位することにより、パルス管13の下端の低温端において冷熱が発生し、パルス管13の上端の高温端において温熱を発生する。
パルス管13の下端に設けた熱交換器22は冷熱を蓄積して蓄冷管14の下部フランジ19に伝達する。これにより、熱交換器22およびフランジ19に貫通結合されているリード導体12がこの冷熱により冷却される。
また、パルス管13の上端部に発生する温熱は、パルス管13、フランジ55、58等を介して放熱器を兼ねたパルス管フランジ25に伝達され、ここからフランジ25に形成された放熱フィン25Bを介して外気へ放熱し、パルス管13およびリード導体12を冷却する。
このようにパルス管冷凍機10とともに超電導機器を収容するチャンバー30の外部から内部へ引き込まれたリード導体12は、外部の室温の温熱をチャンバー30内へ伝達するが、低温端の熱交換器22およびフランジ19の冷熱により冷却されるので、チャンバー30内へ温熱が侵入するのを阻止することができ、超電導機器への電流リードを介する熱侵入が抑制される。
そして、パルス管冷凍機10におけるパルス管13と蓄冷管14との間に真空層50を設け、かつ、その中に輻射熱遮断体60を配置することにより、両方の管の間における対流および輻射による伝熱が遮断され、パルス管13と蓄冷管14とが熱的に絶縁されて切り離される。このため、パルス管13と蓄冷管14との相互間の熱の侵入を抑制することができるようになることにより、パルス管13と蓄冷管14とが多重構成されていても、両管は熱的に独立し、相手方の作動ガスの温度分布の変動に影響されなくなるので、パルス管冷凍機としての冷却サイクルを常に安定に維持することができ、所期の冷却性能を維持することができる。
したがって、この発明の電流リードによれば、超電導機器への外部からの熱侵入を抑制することができ、超電導機器の熱効率を向上することができる。
この発明の実施例による電流リードの構成を示す縦断面図である。 電流リードの第1の従来例の構成を示す縦断面図である。 電流リードの第2の従来例の構成を示す縦断面図である。
符号の説明
1 :電流リード
10:パルス管冷凍機
12:リード導体
13:パルス管
14:蓄冷管
50:真空層
60:輻射熱遮断体

Claims (2)

  1. 電流を通電するためのリード導体と、この導体を冷却するためのパルス管冷凍機を備えた超電導機器の電流リードにおいて、前記リード導体をパルス管冷凍機のパルス管の中にその高温端と低温端を貫通させて配置し、このパルス管の外側にこのパルス管と連通させかつ同心的に前記パルス管冷凍機の蓄冷管を配置し、さらに、前記パルス管と蓄冷管との間に真空層を設けるとともに、この真空層内に輻射熱遮断体を配置することにより、前記パルス管と蓄冷管とを熱的に絶縁したことを特徴とする超電導機器の電流リード。
  2. 請求項1に記載の超電導機器の電流リードにおいて、前記輻射熱遮断体を前記真空層内の前記蓄冷管の上端付近に限定して配置したことを特徴とする超電導機器の電流リード。
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