JP2010059626A - 角形鋼管部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】ボルトナットの締結作業用空間を確保しつつ、応力集中の影響を緩和でき、溶接による組み立て作業が容易であり、加工度の低い角形鋼管部材を提供すること。
【解決手段】角形鋼管5と、筒状のジョイント本体の軸方向一端側に設けられた断面角形状の溶接接合部11が、角形鋼管5の両端に突き合わされて溶接された鋼製中空ジョイント4とを備え、鋼製中空ジョイント4は、ジョイント本体10の軸方向他端側に設けられ、その他端側端面に対してボルト孔33が複数形成されたエンドプレート31が溶接されたプレート接合部13を有するとともに、プレート接合部13が、少なくともボルト孔33の位置に応じた部位において、溶接接合部11よりもその内側に狭まって形成されていることを特徴とする
【選択図】図3

Description

本発明は、建築構造物における構造部材として用いられる角形鋼管部材に関するものである。
従来より、梁や柱等からなる鉄骨構造の建築構造物においては、柱や梁等を構成する構造部材として角形鋼管が広く用いられている。そして、従来から、この角形鋼管の端部に他の部材を取り付けたり、様々な加工を施すことにより、角形鋼管の端部を他の構造部材に接合可能に構成された様々な角形鋼管部材が提案されている。
図17(a)は、従来から提案されている角形鋼管部材110を梁部材103に接合した接合構造100の構成を示す斜視図であり、図17(b)は、その分解斜視図であり、図17(c)は、その平面断面図である。この角形鋼管部材110は、角形鋼管101の両端に対して、角形鋼管101を構成する角形鋼管の断面形状に対応した形状からなる正方形状の接合プレート105と、L字状の一対のアングル部材107と、複数のボルト孔109aが形成されたエンドプレート109とが溶接により順に固着されて構成されている。この角形鋼管部材110は、エンドプレート109を柱部材103に対してボルト接合することにより、梁部材103に対して接合されている。
ここで、一対のアングル部材107は、平面視において十字形とされるように配置されている。これによって、接合プレート105とエンドプレート109との間には、ソケットレンチやインパクトレンチのソケットのような締結工具の一部を配置可能な締結作業用空間111が形成されることになる。これにより、角形鋼管101や梁部材103の大きさに対してエンドプレート105の大きさを大きくできない場合でも、ボルトナットの締結作業を行う締結作業用空間111の確保が容易となっている。
また、この他にも、例えば、特許文献1に開示のように、角形鋼管からなる柱の端部を、スウェージング加工により小径に絞り込み、これを断面円形とすることにより、柱の端部の外側にボルトナットの締結作業を行う締結作業用空間を形成させた角形鋼管部材が提案されている。
また、特許文献2においては、角形鋼管からなる柱の端部を、断面略十字形状等の所定形状となるようにプレス加工により圧潰し、柱の端部の外側にボルトナットの締結作業用空間を形成させた角形鋼管部材が提案されている。
実開平3−115717号公報 特開平10−292556号公報
しかしながら、図17に示される角形鋼管部材110は、角形鋼管101と一対のアングル部材107との間で断面が不連続になるため、接合プレート105を介してはいても応力集中が発生し、角形鋼管101の性能を十分に発揮できない。また、一対のアングル部材107の全周を溶接するには入り組んだ部位に溶接をする必要があるので手間がかかるとともに、接合プレート105に溶接によりひずみが発生する可能性もあり、仕上がり精度の確保が困難になる。
また、特許文献1、2に開示の技術を用いた場合、角形鋼管部材の断面を変化させながら軸方向の長さを調整する必要があり、しかもその端面をエンドプレートに溶接するには平面を出す必要があるため、現実的には端面の仕上げ加工が必要となり、加工に手間がかかる。
即ち、従来においては、ボルトナットの締結作業用空間を確保しつつ、応力集中の影響を緩和でき、溶接による組み立て作業が容易であり、加工度の低い角形鋼管部材は提案されていなかった。
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、他の構造部材に対して接合される角形鋼管部材であって、ボルトナットの締結作業用空間を確保しつつ、応力集中の影響を緩和でき、溶接による組み立て作業が容易であり、加工度の低い角形鋼管部材を提供することにある。
本発明者は、上述した課題を解決するために、鋭意検討の末、下記の発明を案出した。
請求項1に係る角形鋼管部材は、角形鋼管と、筒状のジョイント本体の軸方向一端側に設けられた断面角形状の溶接接合部が、上記角形鋼管の両端に突き合わされて溶接された鋼製中空ジョイントとを備え、上記鋼製中空ジョイントは、上記ジョイント本体の軸方向他端側に設けられ、その他端側端面に対してボルト孔が複数形成されたエンドプレートが溶接されたプレート接合部を有するとともに、上記プレート接合部が、少なくとも上記ボルト孔の位置に応じた部位において、上記溶接接合部よりもその内側に狭まって形成されていることを特徴とする。
請求項2に係る角形鋼管部材は、請求項1に係る発明において、上記鋼製中空ジョイントのジョイント本体は、一体的に成形されてなることを特徴とする。
請求項3に係る角形鋼管部材は、請求項1又は2に係る発明において、上記角形鋼管と上記鋼製中空ジョイントの溶接接合部とは、その間に介在されたプレートに溶接されていることを特徴とする。
請求項4に係る角形鋼管部材は、請求項1〜3の何れか1項に係る発明において、上記鋼製中空ジョイントのプレート接合部は、上記溶接接合部がなす角形断面の四隅の角部に対応した部位において、当該装入部よりもその内側に狭まって形成されていることを特徴とする。
請求項5に係る角形鋼管部材は、請求項1、2又は4に係る発明において、上記鋼製中空ジョイントは、そのジョイント本体の一端側端部において、上記溶接接合部よりも内側に狭まって形成され、上記角形鋼管内に差し込んで嵌合される挿入部を裏当てとして、上記角形鋼管に溶接されていることを特徴とする。
請求項6に係る角形鋼管部材は、請求項1〜5の何れか1項に係る発明において、上記角形鋼管は、梁又は斜材として用いられることを特徴とする。
請求項1に係る角形鋼管部材によれば、ボルトナットの締結作業用空間を得つつも、軸心の外側に広く断面を確保可能な形状とされている。また、角形鋼管の端部にこれとは別部材の鋼製中空ジョイントを取り付ける構成としていることから鋼製中空ジョイントのみを高強度薄肉化させることができ、これにより、ボルトナットの締結作業用空間を得つつも軽量化可能な構成とされていることになる。また、請求項1に係る角形鋼管部材は、エンドプレート以外に外側に突出した部分が少ないので、仕上げ材等を取り付ける際の障害とならず、設計の自由度が向上している。また、角形鋼管と鋼製中空ジョイントは同様な中空の角形断面であるため、溶接線の増加や応力集中の影響を抑えることが可能となる。
請求項2に係る発明によれば、溶接を用いない一体成形により得られているため、仕上げ寸法精度、溶接歪みによる強度への悪影響がなく、また、外観に切断線等がないことから意匠性の観点からも優れている。
請求項3に係る発明によれば、鋼製中空ジョイントと角形鋼管の間にプレートが介在されているので、角形鋼管及び鋼製中空ジョイントのそれぞれの寸法精度を緩和できる。
請求項4に係る発明によれば、プレート接合部の断面二次モーメントを比較的大きく確保しつつも、締結作業用空間を四箇所確保することが可能となる。
請求項5に係る発明によれば、挿入部が位置決め手段と裏当てとを兼ねており、施工性に優れたものとなっている。
以下、本発明を実施するための最良の形態として、建築構造物における構造部材として用いられる角形鋼管部材について、図面を参照しながら詳細に説明する。
まず、本発明を適用した角形鋼管部材の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明を適用した角形鋼管部材1の端部1aを、H形鋼からなる柱部材3に対して接合した接合構造2を示す斜視図である。本実施の形態においては、鉛直方向に延長されてなる柱部材3が左右に間隔を空けて設けられており、これらに水平方向に延長されてなる角形鋼管部材1の両側の端部1aを接合する場合を例にとって説明する。
本発明における角形鋼管部材1を用いた接合構造2は、異なる二方向に延長されてなる構造部材である、一方の構造材としての角形鋼管部材1の端部1aと、他方の柱部材3とが交差する交差部9において用いられるものである。この角形鋼管部材1は、本実施の形態のように、建築構造物における梁部材として用いられる場合の他に、例えば、後述のような斜材として用いられるものである。
この角形鋼管部材1に対して接合される他方の柱部材3は、角形鋼管部材1の端部1aに設けられるエンドプレート31を当接させてこれらをボルト接合可能なものから構成されていればよい。この柱部材3としては、例えば、H形鋼、L形鋼、C形鋼、ボックス形鋼等の各種断面形状からなる形鋼部材や、鋼板等の板状部材が挙げられる。
図2は、この角形鋼管部材1の斜視図である。また、図3は、図2の角形鋼管部材1の端部1aの拡大斜視図であり、図4は、その分解斜視図である。
角形鋼管部材1は、梁として用いられる角形鋼管5と、角形鋼管5の両側の端部5aに溶接される鋼製中空ジョイント4とを備えている。この角形鋼管5は、断面角形状に形成されているものであり、その断面形状は、図2等に示すように、断面正方形状に形成されていてもよいし、この他にも断面長方形状に形成されていてもよい。
図5は、角形鋼管部材1の一部を構成する鋼製中空ジョイント4の構成を示しており、(a)はその斜視図であり、(b)はその平面図であり、(c)は(a)のA−A線断面図である。また、図6(a)は、図3における平面図を示すものであり、(b)は(a)からエンドプレート31を固着していない状態の角形鋼管部材1の平面図である。
鋼製中空ジョイント4は、図5に示すように、全体として筒状に形成されたジョイント本体10からなるものであり、ジョイント本体10の軸方向の一端側10aに設けられた溶接接合部11と、ジョイント本体10の軸方向の他端側10bに設けられたプレート接合部13と、溶接接合部11とプレート接合部13との間に設けられた縮径部17とを備えている。鋼製中空ジョイント4は、後述のハイドロフォーム成形、プレス成形等によって成形されるものである。
この鋼製中空ジョイント4は、図5(a)に示すような、ジョイント本体10の一端側10a端部から他端側10bにかけての範囲R1の部位の断面形状と、ジョイント本体10の他端側10b端部から一端側10aにかけての範囲R3の部位の断面形状とがほぼ一様とされている。この範囲R1の部位と範囲R3の部位との間に位置する範囲R2の部位の形状は、ジョイント本体10の一端側10a端部から他端側10b端部に向かうにつれて、範囲R1の部位の断面形状から範囲R3の部位の断面形状に近づくように、徐々に軸心Gに向けて狭まって形成されている。図5の例では、この範囲R2の部位において、範囲R1の角形断面の角部12aから範囲R3の角形断面の側面部14bに近づくように、傾斜面16が形成され、範囲R3の角形断面の角部14aから範囲R1の角形断面の側面部12bにかけては略同一平面上に位置するように形成されている。本明細書においては、この範囲R1の部位を溶接接合部11とし、範囲R2の部位を縮径部17とし、範囲R3の部位をプレート接合部13として扱う。
プレート接合部13には、図3、図4に示すように、ジョイント本体10の他端側10bの端面13aに対して、複数のボルト孔33が形成された平板状のエンドプレート31の一面側が突き合わされ、これらが溶接によって固着されて用いられる。
溶接接合部11は、図3、図4に示すように、ジョイント本体10の一端側10aに位置するその端面11aに対して、角形鋼管5の一端の端面5bが突き合わされたうえで、これらが溶接によって固着されて用いられる。なお、図3に示すように、鋼製中空ジョイント4の溶接接合部11と角形鋼管5の端部5aとが固着された後には、この溶接接合部11と角形鋼管5の端部5aとの間に溶接ビード35が形成されることになる。
溶接接合部11は、図3、図6(b)に示すように、角形鋼管5の形状に応じた形状とされており、角形鋼管5がなす角形断面と略同一の断面形状となるよう調整されている。これにより、角形鋼管部材1は、図2に示すような、角形鋼管5の中間部5cからエンドプレート31までの間にかけて、角形鋼管5の外周よりも外側に突出する部分を小さく抑えることができる(溶接余盛りを削れば突出部分を無しにもできる)ので、角形鋼管部材1に仕上げ材等を取り付ける際の障害とならず、設計の自由度が向上している。また、角形鋼管部材1は、溶接接合部11と角形鋼管5の端部5aとの間に部材を挟まずに、溶接接合部11を直接角形鋼管5の端部5aに溶接により固着する構成としているので、部品点数の増加を抑えることができるとともに、溶接箇所や全重量が低減されている。
プレート接合部13は、図5(b)、図5(c)に示すように、溶接接合部11の角形断面がなす角部12aから、ジョイント本体10の軸心Gを中心として略45度回転させた位置に角部14aを有する断面角形状に形成されている。なお、本実施形態では、溶接接合部11とプレート接合部13との何れの断面形状も略正方形状に形成されている。
プレート接合部13は、図5(a)〜(c)に示すように、所定部位において、溶接接合部11よりもその内側に狭まって形成されている。これは、図5(c)に示すように、ジョイント本体10の軸方向から見た場合におけるプレート接合部13の断面外形が、溶接接合部11の断面外形よりも小さくなるように、その溶接接合部11の断面外形よりもジョイント本体10の軸心Gに狭まって形成されていることを意味している。
このプレート接合部13の狭まって形成されている部位は、図6(a)に示すように、エンドプレート31に形成されているボルト孔33に対応した部位とされている。本実施形態では、略正方形状のエンドプレート31の四隅の角部近傍にボルト孔33が形成されており、このボルト孔33近傍にスペースが設けられるように、プレート接合部13が溶接接合部11よりも内側に狭まって形成されている。
これにより、図3、図6(a)に示すように、エンドプレート31と縮径部17の傾斜面16との間において、エンドプレート31のボルト孔33へ挿通されるボルトや、これに螺合されるナットの締結作業を容易とする締結作業用空間18が形成されることになる。この締結作業用空間18では、ボルトナットの締結作業時において、作業員がボルトナットを手動で配置するのに利用したり、ソケットレンチやインパクトレンチのソケットのような締結工具の一部を配置したりすることができる。
このプレート接合部13の形状が狭まる度合いは、狭まることにより設けられるスペースで、エンドプレート31のボルト孔33で用いられるボルトナットの締結作業が可能となる程度に調整されていればよい。
次に、このような構成からなる角形鋼管部材1の端部1aを、柱部材3に対して接合する場合の作業手順について説明する。
まず、工場にて、鋼製中空ジョイント4のプレート接合部13の端面13aに予めエンドプレート31を溶接し、更に、角形鋼管5の両端の端面5bに対して、鋼製中空ジョイント4の溶接接合部11の端面11aを突き合わせて、これらを溶接しておき、角形鋼管部材1を用意する。この後、施工現場にて、角形鋼管部材1のエンドプレート31を、図1に示すように、H形鋼からなる柱部材3のフランジ3aに当接させて、締結作業用空間18を利用してエンドプレート31と柱部材3のフランジ3aとをボルト接合することにより、角形鋼管部材1の端部1aと柱部材3とが接合される。
このような構成からなる角形鋼管部材1の作用効果について説明する。
本発明における角形鋼管部材1の一部を構成する鋼製中空ジョイント4は、筒状に形成されているジョイント本体10のプレート接合部13が、エンドプレート31のボルト孔33の位置に対応した部位において、溶接接合部11よりもその内側に狭まって形成されており、これによって、エンドプレート31と縮径部17の傾斜面16との間においてボルトナットの締結作業用空間18が形成された構成とされている。このように構成された鋼製中空ジョイント4を有する角形鋼管部材1は、ボルトナットの締結作業用空間18を得つつも、軸心Gの外側に広く断面を確保可能な形状とされている。また、角形鋼管5の端部5aにこれとは別部材の鋼製中空ジョイント4を取り付ける構成とされていることから鋼製中空ジョイント4のみを高強度薄肉化させることができる。このため、本発明における角形鋼管部材1によれば、ボルトナットの締結作業用空間18を得つつも、軽量化可能な構成とされていることになる。
また、本発明における角形鋼管部材1は、鋼製中空ジョイント4の溶接接合部11とこれが溶接される角形鋼管5とほぼ同様の中空の角形断面であるため、溶接線の増加や応力集中の影響を抑えることが可能となる。
また、本発明における角形鋼管部材1は、図17に示される角形鋼管部材110よりも部材数が少ないうえ、少ない溶接回数で組立作業が完了し、入り組んだ部位に溶接する必要がないため、作業に要する期間、費用の点から優れたものとなっている。
次に、本発明における角形鋼管部材の第2実施形態について説明する。なお、上述した構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付すことにより以下での説明を省略する。
図7は、第2実施形態の角形鋼管部材1Aの構成を示す斜視図であり、図8は、図7の角形鋼管部材1Aの端部1aの拡大斜視図であり、図9は、その分解斜視図である。
この角形鋼管部材1Aは、図2に示される角形鋼管部材1と比較して、図9に示すように、角形鋼管5の端部5aと鋼製中空ジョイント4の溶接接合部11との間に接合プレート37が介在されている点において相違している。
接合プレート37は、鋼板等の板状部材からなるものである。接合プレート37は、図8、図9に示すように、その一面側37aが鋼製中空ジョイント4の溶接接合部11の端面11aに対して突き合わされて溶接により固着され、その他面側37bが角形鋼管5の端面5bに対して突き合わされて溶接により固着される。
このように、鋼製中空ジョイント4と角形鋼管5とが、その間に介在された接合プレート37に溶接される構成とした場合、角形鋼管5と鋼製中空ジョイント4の端面における相対的な寸法管理が不要となるため、それぞれの断面形状の寸法精度を緩和できると共に、製造時期、製造メーカー毎の断面形状のばらつきの影響を緩和することもでき、部材の調達を安定化できるというメリットがある。
次に、本発明における角形鋼管部材の第3実施形態について説明する。
図10は、第3実施形態の角形鋼管部材1Bの斜視図を示すものである。この角形鋼管部材1Bは、図7に示される角形鋼管部材1Aと比較して、鋼製中空ジョイントの形状が相違している。
図11は、第3実施形態としての角形鋼管部材1Bで用いられている鋼製中空ジョイント4Aの構成を示すものであり、(a)はその斜視図、(b)はその平面図、(c)は(a)のB−B線断面図を示している。
鋼製中空ジョイント4Aは、図5で示される鋼製中空ジョイント4と比較して、プレート接合部13の断面形状が断面円形状に形成されている点において相違している。本実施形態での鋼製中空ジョイント4Aにおけるプレート接合部13は、図11に示すように、その円形断面がなす円の直径が、溶接接合部11の正方形状の角形断面がなす側辺の長さより若干短くなるようにされている。
これらの鋼製中空ジョイント4、4Aのように、プレート接合部13は、溶接接合部11がなす角形断面の四隅の角部12aに対応した部位において、その溶接接合部11よりも内側に狭まって形成されていることが好ましい。これにより、プレート接合部13の断面二次モーメントを比較的大きく確保しつつも、締結作業用空間18を四箇所確保することが可能となる。
また、本発明に係る鋼製中空ジョイント4、4Aは、プレート接合部13の形状が、少なくともエンドプレート31のボルト孔33の位置に対応した部位において、溶接接合部11よりも内側に狭まって形成されていればよく、ボルト孔33と対応していない部位においても、溶接接合部11よりも内側に狭まって形成されていてもよい。このため、プレート接合部13の断面形状については、上述の形状に特に限定するものではなく、断面三角形状、断面多角形状、断面不定形状等の如何なるものであってもよい。
図12は、本発明に係る角形鋼管部材1を斜材として用いた状態を示す斜視図である。この図12に示すように、本発明に係る角形鋼管部材1は、柱部材3や梁部材6に対して傾斜して配置される斜材として用いてもよい。
この場合、柱部材3と梁部材6とが交差する角部41の近傍に、一端側が柱部材3に溶接等により固着され、他端側が梁部材6に溶接等により固着された鋼板等からなる傾斜プレート7を設けておき、角形鋼管部材1の両端のエンドプレート31をこの傾斜プレート7に当接させてこれらをボルト接合することによって、角形鋼管部材1が斜材として取り付けられることになる。
因みに、傾斜プレート7と柱部材3と梁部材6とによって囲まれた部位には、図12に示すように、略三角形状の鋼板等からなる補強リブ8が、これら傾斜プレート7等に対して溶接によって固着されている。
なお、角形鋼管部材1を斜材として取り付けるにあたって、角形鋼管部材1の両端を構造部材に取り付けるための構造は、これに限定されないのは勿論である。
なお、本発明に係る角形鋼管部材1等の寸法の例について説明すると、図2に示される角形鋼管部材1の高さは1900mmとされる。角形鋼管5は、一辺60mmの略正方形状の断面とされ、その板厚が3.2mmとされる。また、図5に示される鋼製中空ジョイント4は、溶接接合部11が一辺60mmの略正方形状の断面とされ、プレート接合部13が一辺45mmの略正方形状の断面とされ、ジョイント本体10の高さが60mmとされる。また、図3等に示されるエンドプレート31は、一辺100mmの略正方形状とされ、その板厚が9mmとされる。また、図1に示されるH形鋼からなる柱部材3は、フランジ3aの幅が100mm、ウェブ3bの高さが100mmとされる。また、図7に示される接合プレート37は、一辺63mmの略正方形状とされ、その板厚が9mmとされる。また、図7に示される鋼製中空ジョイント4Aは、溶接接合部11が一辺58mmの略正方形状の断面とされる以外は、図5に示される鋼製中空ジョイント4Aとほぼ同じである。また、図11に示される鋼製中空ジョイント4Aは、プレート接合部が直径50mmの略円形状である以外は、図5に示される鋼製中空ジョイント4とほぼ同じである。これら寸法は、あくまでその一例として示したものであり、本発明は、これら寸法に限定されないのは勿論である。
次に、上述の角形鋼管部材1に用いられる鋼製中空ジョイント4、4Aの製造方法について説明する。
本発明に係る鋼製中空ジョイント4、4Aは、例えば、ハイドロフォーム成形、プレス成形等により製造されるが、ハイドロフォーム成形のような一体成形により製造することが好ましい。以下においては、ハイドロフォーム成形により図11に示される鋼製中空ジョイント4Aを製造する方法の一例について説明する。
図13(a)は、本発明における鋼製中空ジョイント4Aの製造方法を実現可能とするハイドロフォーム成形装置50の構成を模式的に示した側面断面図である。
ハイドロフォーム成形装置50は、一組のハイドロフォーム用分割金型51、52と、分割金型51及び分割金型52間に配置される素材管57を両端から軸押し可能とする軸押しパンチ55とを備えている。なお、本明細書においては、上側に配置される分割金型51を上金型51とし、下側に配置される分割金型52を下金型52として説明する。また、ここでいう素材管57とは、ハイドロフォーム成形後に得られる成形品の素材となる鋼管のことをいう。
上金型51及び下金型52は、ハイドロフォーム成形により素材管57を所定形状にするためのキャビティ53が設けられている。本例においては、このキャビティ53によって素材管57が、図11に示される鋼製中空ジョイント4Aを二つ直列に配置し、その軸方向の一端側10a端部を突き合わせた形状に成形可能となるように、キャビティ53の形状が調整されている。なお、図14においては、この上金型51及び下金型52を用いて成形されたハイドロフォーム成形品61の形状の側面断面図を示している。得られるハイドロフォーム成形品61は、その軸方向中心の両側が対称となるような形状とされている。
キャビティ53は、素材管57の両端側に対応する位置に設けられる半円形凹部53aと、素材管57の中央部に対応する位置に設けられる方形凹部53bと、半円形凹部53aと方形凹部53bとの間に設けられ、半円形凹部53aから方形凹部53bに向かうにつれて形状が半円形から方形に近づくように滑らかに拡開される拡開凹部53cとを備えて構成されている。
このハイドロフォーム成形装置50によって鋼製中空ジョイント4Aを製造する場合、まず、素材管57を下金型52のキャビティ53内に素材管57を配置して、上金型51を下降させて蓋を閉める。次に、図13(b)に示すように、図示しない圧力媒体充填手段により、例えば水のような圧力媒体59を素材管57内に充填して、その圧力媒体59により素材管57の内側から外側に向けて液圧を負荷するととともに、素材管57の両端から軸押しパンチ55によって素材管57を軸押しして圧縮荷重を負荷して、軸押し及び液圧の付与によるハイドロフォーム成形を施す。
図13(c)は、図13(b)のC−C線断面図、E−E線断面図を示し、図13(d)は、図13(b)のF−F線断面図を示している。この図に示すように、ハイドロフォーム成形により、素材管57の両端側は、上金型51及び下金型52のキャビティ53の半円形凹部53aにより断面円形状に形成され、素材管57の中央部は、キャビティ53の方形凹部53bにより断面角形状に形成されることになる。
次に、図14に示すように、得られたハイドロフォーム成形品61をその軸方向の中央で二分割されるように、一点鎖線で示した切断線L1に沿って切断する。これによって、鋼製中空ジョイント4Aが二つ得られることになる。
上述のように、ハイドロフォーム成形により本発明に係る鋼製中空ジョイント4、4Aを製造する場合、他の成形方法により製造した場合と比べて、本発明に係る鋼製中空ジョイント4のような複雑形状のものであっても容易に製造することができる。また、本発明に係る鋼製中空ジョイント4、4Aは、溶接を用いない一体成形により得られているため、溶接歪みによる強度への悪影響がなく、また、外観に切断線等がないことから意匠性の観点からも優れている。
また、軸方向中心の両側で対称となるような形状のハイドロフォーム成形品61を、その軸方向の中央で二分割されるように切断して二つの鋼製中空ジョイント4、4Aを得る場合、一組の上金型51及び下金型52のキャビティ53から同一形状の二つの鋼製中空ジョイント4、4Aを得ることができ、量産性に優れたものとなっている。また、この場合、ハイドロフォーム成形の特性上、素材管57の中央部よりも両端側の方が板厚を厚くすることができることから、鋼製中空ジョイント4の溶接接合部11よりもプレート接合部13の板厚の方を厚くすることが可能となるため、エンドプレート31への溶接によるひずみを抑えることができる。
因みに、軸方向中心の両側で対称となるような形状のハイドロフォーム成形品61を、軸方向中心以外の部位でその軸方向に二分割されるように切断して、異なる高さの二つの鋼製中空ジョイント4を得ることとしてもよい。この場合、鋼製中空ジョイント4の溶接接合部11に相当する部位において、得られたハイドロフォーム成形品61を切断することになる。
なお、上述のハイドロフォーム成形装置50やハイドロフォーム成形工程は、鋼製中空ジョイント4、4Aを製造する方法の一例として説明したものであり、上述の構成、工程順に限定されるものではない。このため、例えば、一組の上金型51、下金型52によって、鋼製中空ジョイント4、4Aが一つのみ成形されるようにしてもよい、三つ以上成形されるようにしてもよい。なお、図13、図14に示されるように、軸方向中心の両側で対称となるような形状のハイドロフォーム成形品61から二つの鋼製中空ジョイント4、4Aを得る場合、素材管57の両側からの軸押しパンチ55による軸押しの圧縮荷重を均等にすることができ、安定してハイドロフォーム成形品61を得ることができるメリットがある。
一組の上金型51、下金型52によって、鋼製中空ジョイント4を三つ以上成形されるようにする場合、上金型51、下金型52のキャビティ53は、例えば、鋼製中空ジョイント4を複数直列に配置し、互いに隣り合う鋼製中空ジョイント4が何れか一方の端部を突き合わせた形状となるように調整されていてもよい。この場合、図12に示される鋼製中空ジョイント4Aを複数成形する場合を例にとると、キャビティ53は、半円形凹部53a、拡開凹部53c、方形凹部53b並びに拡開凹部53cを一単位とした形状が、軸方向に連続して設けられることになる。
また、本発明におけるハイドロフォーム成形装置、ハイドロフォーム成形方法においては、公知のハイドロフォーム成形装置で用いられている如何なる機構が採用されていてもよいし、公知のハイドロフォーム成形方法で用いられている如何なる手段が採用されていてもよい。
次に、プレス成形を用いた場合の本発明に係る鋼製中空ジョイント4、4Aの製造方法について説明する。以下においては、プレス成形により図5に示される鋼製中空ジョイント4を製造する方法の一例について説明する。
まず、予め打ち抜き加工により所定形状に打ち抜かれた板材に対して、プレス成形を施すことにより図15(a)に示すようなプレス成形品63を二つ得る。このプレス成形品63は、図15(b)に示すように、鋼製中空ジョイント4をその軸方向から見た場合における断面形状が軸心Gの両側で対称となるように、その軸方向に沿って分断された形状からなる。
このようにして得られた二つのプレス成形品63は、図15(b)、図15(c)に示すように、その幅方向の両側の側端面63aを突き合わせたうえで、二部材の境界部65に沿ってレーザー溶接、アーク溶接等の溶接を施して、これらを互いに固定し、これによって鋼製中空ジョイント4が得られる。なお、図15(b)、図15(c)に示すように、溶接後において、二つのプレス成形品63の間には溶接ビード74が形成されることになる。
このようにプレス成形によっても本発明に係る鋼製中空ジョイント4が製造可能である。
なお、図2に示す角形鋼管部材1のように、角形鋼管5の端部5aを鋼製中空ジョイント4の溶接接合部11に溶接させる場合、図16(a)に示すように、ジョイント本体10の一端側10aの端面11aに突き合わされる角形鋼管5の端面5bに対して開先加工を施し、得られた開先23を利用して開先溶接を行なってもよい。
また、図16(b)に示すように、鋼製中空ジョイント4の一端側10a端部において、ジョイント本体10の溶接接合部11よりもその内側に狭まって形成され、角形鋼管5内に嵌合可能な断面角形状の挿入部20を設けることとしてもよい。鋼製中空ジョイント4の溶接接合部11と挿入部20との間には、湾曲形状の段差22が形成されることになる。
このような挿入部20が設けられた鋼製中空ジョイント4を用いて角形鋼管5の端部5aを鋼製中空ジョイント4の溶接接合部11に溶接させる場合、この挿入部20を角形鋼管5内に差し込んで嵌合させたうえで、段差22を角形鋼管5の端面5bの上側に離れた位置で静止させて、更にこの挿入部20を裏当てとして、角形鋼管5の端面5bと段差22との間を溶接することによって実現される。このような挿入部20が設けられた鋼製中空ジョイント4は、挿入部20が位置決め手段と裏当てとを兼ねており、施工性に優れたものとなっている。
角形鋼管部材の端部を梁部材に対して接合した接合構造を示す斜視図である。 角形鋼管部材の構成を示す斜視図である。 図2に示される角形鋼管部材の端部の拡大斜視図である。 図3に示される角形鋼管部材の分解斜視図である。 角形鋼管部材の一部を構成する鋼製中空ジョイントの構成を示すものであり、(a)はその斜視図、(b)はその平面図、(c)は(a)のA−A線断面図である。 (a)は図3における平面図であり、(b)はエンドプレートを固着していない状態の角形鋼管部材の平面図である。 鋼製中空ジョイントと角形鋼管との間に接合プレートが介在された角形鋼管部材の構成を示す斜視図である。 図7に示される角形鋼管部材の端部の拡大斜視図である。 図8に示される角形鋼管部材の分解斜視図である。 他の実施形態の鋼製中空ジョイントを取り付けた角形鋼管部材の斜視図である。 図10に示される角形鋼管部材の一部を構成する鋼製中空ジョイントの構成を示すものであり、(a)はその斜視図、(b)はその平面図、(c)は(a)のB−B線断面図である。 角形鋼管部材を斜材として用いた場合の構成を示す斜視図である。 (a)は鋼製中空ジョイントの製造に用いられるハイドロフォーム成形装置の構成を模式的に示した側面断面図であり、(b)は鋼製中空ジョイントの製造工程の途中の状態を示す側面断面図であり、(c)は(b)のC−C線断面図及びE−E線断面図であり、(d)は(b)のD−D線断面図である。 ハイドロフォーム成形装置によって得られたハイドロフォーム成形品から二つの鋼製中空ジョイントを得る方法について説明するための図である。 プレス成形により鋼製中空ジョイントを製造する方法の一例について説明するための図である。 (a)は開先を設けた角形鋼管の端部に鋼製中空ジョイントを固着させた構成を示す側面断面図であり、(b)は挿入部を設けた鋼製中空ジョイントを角形鋼管に固着させた構成を示す側面断面図である。 従来技術について説明するための図である。
符号の説明
1、1A、1B 角形鋼管部材
1a 端部
2 接合構造
3 柱部材
3a フランジ
3b ウェブ
4 鋼製中空ジョイント
5 角形鋼管
5a 端部
5b 端面
5c 中間部
6 梁部材
7 傾斜プレート
8 補強リブ
9 交差部
10 ジョイント本体
10a 一端側
10b 他端側
11 溶接接合部
11a 端面
13 プレート接合部
13a 端面
18 締結作業用空間
20 挿入部
22 段差
23 開先
31 エンドプレート
33 ボルト孔
35 溶接ビード
37 接合プレート
41 角部
50 ハイドロフォーム成形装置
51 上金型
52 下金型
53 キャビティ
53a 半円形凹部
53b 方形凹部
53c 拡開凹部
55 軸押しパンチ
57 素材管
59 圧力媒体
61 ハイドロフォーム成形品
63 プレス成形品
63a 側端面
100 接合構造
101 角形鋼管
103 梁部材
105 接合プレート
107 アングル部材
109 エンドプレート
109a ボルト孔
110 角形鋼管部材
111 締結作業用空間

Claims (6)

  1. 角形鋼管と、
    筒状のジョイント本体の軸方向一端側に設けられた断面角形状の溶接接合部が、上記角形鋼管の両端に突き合わされて溶接された鋼製中空ジョイントとを備え、
    上記鋼製中空ジョイントは、上記ジョイント本体の軸方向他端側に設けられ、その他端側端面に対してボルト孔が複数形成されたエンドプレートが溶接されたプレート接合部を有するとともに、上記プレート接合部が、少なくとも上記ボルト孔の位置に応じた部位において、上記溶接接合部よりもその内側に狭まって形成されていること
    を特徴とする角形鋼管部材。
  2. 上記鋼製中空ジョイントのジョイント本体は、一体的に成形されてなること
    を特徴とする請求項1に記載の角形鋼管部材。
  3. 上記角形鋼管と上記鋼製中空ジョイントの溶接接合部とは、その間に介在されたプレートに溶接されていること
    を特徴とする請求項1又は2に記載の角形鋼管部材。
  4. 上記鋼製中空ジョイントのプレート接合部は、上記溶接接合部がなす角形断面の四隅の角部に対応した部位において、当該溶接接合部よりもその内側に狭まって形成されていること
    を特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の角形鋼管部材。
  5. 上記鋼製中空ジョイントは、そのジョイント本体の一端側端部において、上記溶接接合部よりも内側に狭まって形成され、上記角形鋼管内に差し込んで嵌合される挿入部を裏当てとして、上記角形鋼管に溶接されていること
    を特徴とする請求項1、2又は4に記載の角形鋼管部材。
  6. 上記角形鋼管は、梁又は斜材として用いられること
    を特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の角形鋼管部材。
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