JP2010053738A - 内燃機関の燃料供給装置および燃料噴射制御方法 - Google Patents

内燃機関の燃料供給装置および燃料噴射制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】吸気通路噴射用インジェクタのみの燃料噴射から筒内噴射用インジェクタ使用の燃料噴射への切替えの際に発生する、内燃機関の作動音の急激な増加による変音感を軽減する。
【解決手段】吸気通路噴射用インジェクタ120と筒内噴射用インジェクタ110とを備える内燃機関において、吸気通路噴射用インジェクタ120のみでの燃料噴射期間から筒内噴射用インジェクタ110を使用する燃料噴射期間への遷移時に、吸気通路噴射用インジェクタ120による燃料噴射を複数回に分割する分割噴射を行う。
【選択図】図1

Description

本発明は、内燃機関の燃料供給装置および燃料噴射制御方法に関し、より特定的には吸気通路内に燃料を噴射する燃料噴射手段と筒内に燃料を直接噴射する燃料噴射手段とを備える内燃機関の燃料噴射制御に関する。
内燃機関の吸気通路内に燃料を噴射するための吸気通路噴射用インジェクタと、燃焼室内に燃料を直接噴射するための筒内噴射用インジェクタとを備え、内燃機関の回転数や内燃機関の負荷に応じて筒内噴射用インジェクタと吸気通路噴射用インジェクタとで燃料を噴き分ける内燃機関が、たとえば特開2005−351152公報(特許文献1)に記載されている。この筒内噴射用インジェクタを含む高圧燃料系統においては、高圧燃料ポンプで燃料圧力が高められた燃料がデリバリーパイプを介して筒内噴射用インジェクタに供給され、筒内噴射用インジェクタは内燃機関の各気筒の燃焼室内に高圧燃料を噴射する。
特に特許文献1では、吸気通路噴射インジェクタのみでの燃料噴射から筒内噴射インジェクタ使用の燃料噴射への切替えの際、その切替え直前のタイミングで、吸気通路噴射インジェクタのみで燃料噴射する運転条件であっても、事前に高圧燃料系統の電磁スピル弁を動作させることにより作動音を発生させて、乗員に与える変音感を軽減させる構成が記載されている。
特開2005−351152公報 特開2008−81087公報 特開2004−11501公報 特開2006−183537公報
しかしながら、特許文献1に開示された装置では、高圧燃料系統の電磁スピル弁の作動音に着目し、吸気通路噴射インジェクタのみでの燃料噴射から筒内噴射インジェクタ使用の燃料噴射への切替えの際の変音感の軽減を図っている。このため、電磁スピル弁以外の部品による作動音の影響が大きい場合には、変音感を十分に軽減できない可能性がある。
本発明の目的は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、吸気通路噴射用インジェクタと筒内噴射用インジェクタとを備える内燃機関において、吸気通路噴射インジェクタのみでの燃料噴射期間から筒内噴射インジェクタ使用の燃料噴射期間への遷移時に、車両乗員に与える変音感を軽減することである。
本発明に係る内燃機関の燃料供給装置は、第1の燃料供給手段と第2の燃料供給手段とこれらの燃料供給手段を制御する燃料噴射制御手段とを備えており、第1の燃料供給手段は内燃機関の吸気通路内への燃料噴射を行い、第2の燃料供給手段は、第1の燃料供給手段よりも高い圧力で内燃機関の燃焼室の筒内に直接燃料噴射を行う。また、上記の燃料噴射制御手段は、内燃機関の運転状態に基づいて、第1の燃料供給手段のみによって燃料を噴射する運転条件から第2の燃料供給手段を使用して燃料を噴射する運転条件への切替判定を行う手段を含んでいる。さらに上記切替判定に従い、第1の燃料供給手段のみによって燃料を噴射する第1の運転期間から第2の燃料供給手段を使用して燃料を噴射する第2の運転期間への遷移期間に、内燃機関の1燃焼サイクル中の第1の燃料供給手段による燃料噴射回数を第1の運転期間よりも増加させるように、第1の燃料供給手段による燃料噴射を複数回に分割する分割噴射を行う手段を含んでいる。
また、本発明に係る内燃機関の燃料噴射制御方法は、内燃機関の吸気通路内に燃料を噴射する第1の燃料供給手段と、第1の燃料供給手段よりも高い圧力で内燃機関の燃焼室の筒内に直接燃料を噴射する第2の燃料供給手段とを備えた内燃機関において、内燃機関の運転状態に基づいて、第1の燃料供給手段のみによって燃料を噴射する運転条件から第2の燃料供給手段を使用して燃料を噴射する運転条件への切替判定を行うステップを含んでいる。さらに上記切替判定に従った、第1の燃料供給手段のみによって燃料を噴射する第1の運転期間から第2の燃料供給手段を使用して燃料を噴射する第2の運転期間への遷移期間に、内燃機関の1燃焼サイクル中の第1の燃料供給手段による燃料噴射回数を第1の運転期間よりも増加させるように、第1の燃料供給手段による燃料噴射を複数回に分割する分割噴射を行うステップとを含んでいる。
上記の内燃機関の燃料供給装置あるいは燃料噴射制御方法では、第1の燃料噴射期間(全燃料を吸気通路噴射用インジェクタから噴射)から第2の燃料噴射期間(少なくとも一部の燃料を筒内噴射用インジェクタから噴射)への移行時に、第1の燃料噴射期間よりも燃料噴射回数(すなわち、燃料噴射手段の開閉回数)を増加させる態様にて第1の燃料噴射手段のみによる燃料噴射(分割噴射)を行なう遷移期間を設けることができる。この結果、当該遷移期間では、第1および第2の燃料噴射期間のそれぞれでの作動音の中間レベルの作動音を生じるので、燃料噴射切替時に急激かつ大幅に作動音が増大することを回避して、車両乗員に与える変音感を軽減することができる。
好ましくは、上記の内燃機関の燃料供給装置あるいは燃料噴射制御方法は、第1の燃料供給手段のみによって燃料を供給する運転条件から、第2の燃料供給手段を使用して燃料を供給する運転条件への切替判定に用いる内燃機関の運転状態に、内燃機関の回転数と負荷率を使用する。
さらに好ましくは、上記の内燃機関の燃料供給装置あるいは燃料噴射制御方法は、上記の構成に加えて内燃機関の回転数に応じて、分割を行なう期間を可変とする機能またはステップを含む。
このようにすると、内燃機関の作動音レベルが内燃機関の回転数に応じて変化するのに対応させて、分割噴射による中間レベルの作動音の出力期間を変化させることできる。この結果、燃料噴射切替時における変音感をさらに軽減することができる。
本発明によれば、吸気通路内に燃料を噴射する燃料噴射手段と筒内に燃料を直接する燃料噴射手段とを備える内燃機関において、吸気通路内に燃料を噴射する燃料噴射手段のみでの燃料噴射から筒内に燃料を直接する燃料噴射手段への遷移時に、車両乗員に与える変音感を軽減することができる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一または相当の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
図1に、本発明の第1の実施の形態に係る内燃機関(以下、エンジンという)の制御装置であるエンジンECU(Electronic Control Unit)で制御されるエンジンシステムの概略構成図を示す。なお、図1には、エンジンとして直列4気筒ガソリンエンジンを示すが、本発明はこのような形式のエンジンに限定されるものではなく、V型6気筒、V型8気筒、直列6気筒などの形式であってもよく、少なくとも各気筒毎に筒内噴射用インジェクタおよび吸気通路噴射用インジェクタを有するエンジンであれば、本発明の適用が可能である。
図1に示すように、エンジン10は4つの気筒112を備え、各気筒112はそれぞれ対応するインテークマニホールド20を介して共通のサージタンク30に接続されている。サージタンク30は、吸気ダクト40を介してエアクリーナ50に接続され、吸気ダクト40内にはエアフローメータ42が配置されるとともに、電動モータ60によって駆動されるスロットルバルブ70が配置されている。このスロットルバルブ70は、アクセルペダル100とは独立してエンジンECU300の出力信号に基づいてその開度が制御される。一方、各気筒112は共通のエキゾーストマニホールド80に連結され、このエキゾーストマニホールド80は三元触媒コンバータ90に連結されている。
各気筒112に対しては、筒内に向けて燃料を噴射するための筒内噴射用インジェクタ110と、吸気ポートまたは/および吸気通路内に向けて燃料を噴射するための吸気通路噴射用インジェクタ120とがそれぞれ設けられている。これらインジェクタ110、120はエンジンECU300の出力信号に基づいてそれぞれ制御される。また、各筒内噴射用インジェクタ110は共通の燃料分配管130に接続されており、この燃料分配管130は機関駆動式の高圧燃料圧送装置150に接続されている。
一方、各吸気通路噴射用インジェクタ120は、共通する低圧側燃料分配管160に接続されており、低圧側燃料分配管160および高圧燃料圧送装置150は共通の燃料圧レギュレータ170を介して、電動モータ駆動式の低圧燃料ポンプ180に接続されている。さらに、低圧燃料ポンプ180は燃料フィルタ190を介して燃料タンク200に接続されている。燃料圧レギュレータ170は低圧燃料ポンプ180から吐出された燃料の燃料圧が予め定められた設定燃料圧よりも高くなると、低圧燃料ポンプ180から吐出された燃料の一部を燃料タンク200に戻すように構成されており、したがって吸気通路噴射用インジェクタ120および高圧燃料圧送装置150に供給されている燃料圧が上記設定燃料圧よりも高くなるのを阻止している。
エンジンECU300はデジタルコンピュータから構成され、双方向性バス310を介して相互に接続されたROM(Read Only Memory)320、RAM(Random Access Memory)330、CPU(Central Processing Unit)340、入力ポート350および出力ポート360を備えている。このエンジンECU300が、本発明での「燃料噴射制御手段」に対応する。
エアフローメータ42は吸入空気量に比例した出力電圧を発生し、このエアフローメータ42の出力電圧はA/D変換器370を介して入力ポート350に入力される。エンジン10には機関冷却水温に比例した出力電圧を発生する水温センサ380が取付けられ、この水温センサ380の出力電圧はA/D変換器390を介して入力ポート350に入力される。
燃料分配管130には、燃料分配管130内の燃料圧に比例した出力電圧を発生する燃料圧センサ(燃圧センサ)400が取付けられ、この燃料圧センサ400の出力電圧はA/D変換器410を介して入力ポート350に入力される。三元触媒コンバータ90上流のエキゾーストマニホールド80には、排気ガス中の酸素濃度に比例した出力電圧を発生する空燃比センサ420が取付けられ、この空燃比センサ420の出力電圧はA/D変換器430を介して入力ポート350に入力される。
本実施の形態に係るエンジンシステムにおける空燃比センサ420は、エンジン10で燃焼された混合気の空燃比に比例した出力電圧を発生する全域空燃比センサ(リニア空燃比センサ)である。なお、空燃比センサ420としては、エンジン10で燃焼された混合気の空燃比が理論空燃比に対してリッチであるかリーンであるかをオン−オフ的に検出するO2センサを用いてもよい。
アクセルペダル100は、アクセルペダル100の踏込み量に比例した出力電圧を発生するアクセル開度センサ440に接続され、アクセル開度センサ440の出力電圧はA/D変換器450を介して入力ポート350に入力される。また、入力ポート350には、回転数を表わす出力パルスを発生する回転数センサ460が接続されている。エンジンECU300のROM320には、上述のアクセル開度センサ440および回転数センサ460により得られるエンジンの負荷率および回転数に基づき、運転状態に対応させて設定されている燃料噴射量の値や機関冷却水温に基づく補正値などが予めマップ化されて記憶されている。
次に図2を用いて、図1に示した高圧燃料圧送装置150の構成の詳細を説明する。図2を参照して、高圧燃料圧送装置150は、高圧燃料ポンプ1200と、カム1210で駆動され上下に摺動するポンププランジャー1206と、電磁スピル弁1202とリーク機能付きチェックバルブ1204とを主な構成部品としている。
カム1210は、エンジン10のクランクシャフト(図示しない)に連結されたカムシャフト(図示しない)に接続されており、エンジン10が回転するとカム1210も回転する。カム1210の回転に伴いポンププランジャー1206が下方向に移動しているときに、電磁スピル弁1202を開くことにより、低圧燃料分配管1420から脈動抑制用のパルセーションダンパ1220を介して高圧燃料ポンプ1200内に燃料が吸い込まれる。
そして、カム1210がさらに回転し、ポンププランジャー1206が上方向に移動しているときに電磁スピル弁1202を閉じると燃料は加圧される。一方で、電磁スピル弁1202が開いていると、一旦吸い込まれた燃料は加圧されることなく低圧燃料分配管1420へ吐き戻される。
したがって、電磁スピル弁1202を閉じるタイミングを変更することにより、高圧燃料ポンプ1200から吐出される燃料量を制御することができる。すなわち、ポンププランジャー1206が上方向に移動している加圧行程中における電磁スピル弁1202を閉じる時期が早いほど多くの燃料が吐出され、遅いほど少ない燃料が吐出される。
この最も多く吐出される場合の電磁スピル弁1202の駆動デューティを100%とし、この最も少なく吐出される場合の電磁スピル弁1202の駆動デューティを0%としている。電磁スピル弁1202の駆動デューティが0%の場合には、電磁スピル弁1202は閉じることなく開いたままの状態になり、カム1210が回転している限り(エンジン10が回転している限り)ポンププランジャー1206は上下方向に摺動するが、電磁スピル弁1202が閉じないので、燃料は加圧されない。
高圧燃料ポンプ1200にて加圧された燃料は、リーク機能付きチェックバルブ1204(設定圧60kPa程度)を押し開けて高圧デリバリ連通パイプ1500を介して図1の高圧側の燃料分配管130へ圧送される。このとき、高圧側の燃料分配管130に設けられた燃料圧センサ400により燃圧がフィードバック制御される。
ここで図3を用いて、筒内噴射用インジェクタ110の構造を詳しく説明する。筒内噴射用インジェクタ110は、その本体740の下端にノズルボディ760が図示しないスペーサを介してノズルホルダによって固定される。ノズルボディ760は、その下端に噴孔500を形成しており、ノズルボディ760内にニードル520が上下可動に配置される。ニードル520の上端は本体740内を摺動自在なコア540に当接され、スプリング560によりコア540を介してニードル520は下向きの力を付勢される。ニードル520はこのスプリング560の下向きの力によりノズルボディ760の内周シート面522に着座され、その結果、常態では噴孔500は閉鎖された状態になっている。
本体740の上端にはスリーブ570が挿入固定されている。スリーブ570内には燃料通路580が形成され、燃料通路580の下端側は、本体740内の通路を介してノズルボディ760の内部まで連通される。燃料はこの燃料通路580内を通り、ニードル520のリフト時に噴孔500から噴射される。燃料通路580の上端側は、フィルタ600を介して燃料導入口620に接続され、図1の燃料分配管130に接続される。
電磁ソレノイド640は、本体740内においてスリーブ570の下端部を包囲するように配置される。電磁ソレノイド640の通電時においては、コア540はスプリング560に抗して上昇され、燃料圧はニードル520を押し上げ、噴孔500が開放されるので燃料噴射が実行される。電磁ソレノイド640は絶縁ハウジング650内のワイヤ660に取り出され、開弁のための電気信号をエンジンECU300から受信することができる。この開弁のための電気信号をエンジンECU300が出力しないと、筒内噴射用インジェクタ110からの燃料噴射が行なわれない。
エンジンECU300から受信した開弁のための電気信号により、筒内噴射用インジェクタ110の燃料噴射時期および燃料噴射期間が制御され、燃料噴射量を調節することができる。すなわち、この電気信号により、好ましくは最小燃料噴射量以上の領域に限定して、少量の燃料を噴射するように制御することもできる。なお、このような制御のために、エンジンECU300と筒内噴射用インジェクタ110との間に、EDU(Electronic Driver Unit)が設けられることもある。
インジェクタ110が燃料噴射/停止する際、上記のように電磁ソレノイド640にてニードル520が動作するが、ニードル520によって噴孔500が閉鎖されるときに、ニードル520がノズルボディ760の内周シート面522に着座することによって作動音が発生する。
特に高圧燃料系統である筒内噴射用インジェクタ110の場合は、スプリング560がコア540を介してニードル520を下向きに付勢するのに加え、スリーブ570内の燃料通路580を通過する高圧の燃料によってもニードル520が下向きに付勢されるため、内周シート面522に着座する際の衝撃力が増加し作動音が大きくなる。このように筒内噴射用インジェクタ110使用の場合は、電磁スピル弁1202の作動音に当該筒内噴射用インジェクタ110の作動音が加わり、かつ高圧であるためにこの作動音がさらに大きくなる。
一方、低圧燃料系統である吸気通路噴射用インジェクタ120についても基本構造は同様であり、ニードルが内周シート面に着座する際に作動音が発生する。しかしながら、低圧の吸気通路噴射用インジェクタ120使用の場合、高圧燃料系統のような燃料圧力による力の付勢が少ないため、筒内噴射用インジェクタ110使用の場合と比較すると作動音は小さくなる。ただし、1回あたりの作動音は小さくても、短時間に複数回の開閉動作をさせることにより、相対的に作動音を大きくすることができる。すなわち、低圧の吸気通路噴射用インジェクタ120にて燃料噴射をする際に、燃料噴射回数を分割する「マルチ噴射」を行なうことで、作動音を大きくすることができる。
本実施の形態において、「マルチ噴射」とは、エンジンの1燃焼サイクル中に必要な燃料噴射量を、当該燃焼サイクル中に複数の噴射期間に分割して噴射するような燃料噴射、すなわち、通常の燃料噴射と比較してインジェクタの噴射回数(すなわち、開閉回数)が増加するような燃料噴射を意味するものとする。なお、マルチ噴射での噴射回数については、通常時の噴射回数が1回であるときには任意の複数回とすればよく、もともと通常時の噴射回数が複数回であるときには、もとの回数より多い複数回とすればよい。すなわち「マルチ噴射」は、本発明の「分割噴射」に対応する。
このマルチ噴射により、閉弁回数の増加分だけ作動音が大きくなる。したがって、マルチ噴射を行った場合は、吸気通路噴射用インジェクタ120のみでの通常の燃料噴射を行った場合と、高圧燃料系である筒内噴射用インジェクタ110使用の場合の中間的な大きさの作動音が発生することができる。すなわち、マルチ噴射での噴射回数については、所望の作動音レベルおよび燃料噴射量の制御性を考慮して、適宜定めることができる。
ここで、図4にエンジンにおいて吸気通路噴射インジェクタのみの通常の燃料噴射を行った場合、吸気通路噴射インジェクタのみでマルチ噴射を行った場合、および筒内噴射用インジェクタのみの燃料噴射を行った場合の発生作動音の周波数解析結果の一例を示す。
図4において、横軸は作動音の周波数f、縦軸は音圧レベルvを表している。図4中の細い実線(2000)は吸気通路噴射インジェクタのみの場合の周波数解析結果を、太い実線(2010)は吸気通路噴射インジェクタのみでマルチ噴射を行った場合の周波数解析結果を、破線(2020)は筒内噴射用インジェクタのみの燃料噴射を行った場合の周波数解析結果をそれぞれ表している。
図4より、吸気通路噴射インジェクタのマルチ噴射は、吸気通路噴射インジェクタのみでの燃料噴射の場合と筒内噴射用インジェクタのみの燃料噴射を行った場合との中間程度の音圧レベルとなっていることがわかる。したがって、吸気通路噴射用インジェクタのみの燃料噴射期間から筒内噴射用インジェクタを使用した燃料噴射期間への遷移時に当該マルチ噴射を行なう期間を設けることにより、発生する作動音が段階的に大きくなり、切替時の変音感を軽減することができる。
次に、本発明の実施の形態による燃料噴射制御の構成を、図5の機能ブロック図を参照しながら説明する。
エンジンECU300内の本発明の実施の形態による燃料噴射制御に係る機能部分は、入力部1700と、噴射割合決定部1710と、噴射切替判定部1720と、噴射出力設定部1730と、出力部1740と、記憶部1750と、マルチ噴射期間決定部1760の各機能ブロックを含む。この各機能ブロックはエンジンECU300のROM320内に予め格納されたプログラムの実行によって実現される。あるいは、各ブロックに対応する機能を実現するように実装された電子回路(ハードウェア)によって各ブロックの機能を実現するようにしてもよい。
入力部1700は、入力ポート350を介して入力されたエンジンの回転数Neおよび負荷率LDの信号を取り込む。次に噴射割合決定部1710は、記憶部1750内にある噴射割合を予め設定したマップもしくは噴射割合判定式などの判定基準を参照し、入力部1700にて取り込んだ回転数Ne,負荷率LDに基づいて、次回設定する吸気通路噴射(PFI:Port Fuel Injection)と筒内噴射(DI:Direct Injection)の噴射割合を決定する。
図6は記憶部1750内の噴射切替マップの内容の例である。図6を参照しながら、エンジンの燃料噴射方式について詳しく説明する。
図の横軸はエンジンの回転数Neを、縦軸は負荷率LDを示す。エンジンが始動時やアイドル時のような負荷率が低い運転条件の場合(図6中の領域1010)は、燃料噴霧が微粒化されにくく燃焼が悪化するおそれがあるため、燃料噴霧の微粒化に効果的な吸気通路噴射が用いられる。一方、高回転,高負荷の運転条件の場合(図6中の領域1030)は、燃焼温度が上昇することによる筒内噴射インジェクタの目詰まりの防止のために、筒内噴射による燃料噴射方式が用いられる。そして、エンジンの負荷率が中程度の場合(図6中の領域1020)は、吸気通路噴射および筒内噴射のそれぞれの長所を最大限に引き出すようにその割合を噴射マップにより決定し、吸気通路噴射および筒内噴射を併用する燃料噴射方式が用いられる。このように噴射割合決定部1710は、エンジン10の運転状態(代表的には、回転数および負荷率)に基づいて、吸気通路噴射および筒内噴射の噴射割合を決定している。
なお、図6に示すマップは上記噴射割合を決める一例であり、これに限定されるものではなく、エンジンの特性などにより適切な噴射割合を設定することができる。
再び図6を参照して、噴射切替判定部1720は、噴射割合決定部1710にて決定された次回の燃料噴射割合と現状の噴射割合設定に従って、吸気通路噴射のみから、筒内噴射のみまたは吸気通路噴射および筒内噴射の併用への切替が発生するか否かを示す切替判定を行う。そして、噴射切替判定部1720は、切替判定結果に従って、マルチ噴射を行なうか否かをさらに判定する。基本的には、上記切替時には、所定期間(所定時間、所定のエンジン制御周期、または所定の燃焼サイクル数)だけマルチ噴射の実行が指示される。
あるいは、図6に示すようにマルチ噴射期間決定部1760を設けて、マルチ噴射の実行期間を回転数Neに応じて可変に設定してもよい。たとえば、回転数Neに対する燃料噴射インジェクタの作動音レベルの変化等に基づいて、回転数Neに対してマルチ噴射の実行期間を設定するマップを予め作成しておくことによって、マルチ噴射期間決定部1760を構成することができる。
噴射出力設定部1730は、噴射切替判定部1720による判定結果および噴射割合決定部1710で決定された噴射割合に基づいて、次回噴射時のインジェクタ110,120の噴射量の設定を行なう。図6では記載を省略しているが、上述のようにエンジン10の回転数Neおよび負荷率LDに基づいて全燃料噴射量が決定されるので、この全燃料噴射量と決定された噴射割合の積によって、筒内噴射用インジェクタ110および吸気通路噴射用インジェクタ120のそれぞれからの燃料噴射量が決定される。
また、吸気通路噴射については、噴射切替判定部1720での判定結果に従って、マルチ噴射とするか否かがさらに設定される。
出力部1740は、噴射出力設定部1730による、各インジェクタ110,120の噴射量設定およびマルチ噴射要否の設定に従って、インジェクタ110,120の開閉を指令するための電気信号を出力する。これらの電気信号は、図1に示した出力ポート360を介して、インジェクタ110,120へ与えられ、各インジェクタ110,120では噴射出力設定部1730による設定に従って燃料が噴射される。
上記のように、噴射切替判定部1720によって、吸気通路噴射用インジェクタ120(第1の燃料供給手段)のみによって燃料を噴射する運転条件から、筒内噴射用インジェクタ110(第2の燃料供給手段)を使用して燃料を噴射する運転条件への切替判定を行う機能が実現される。また、噴射出力設定部1730と出力部1740とによって、第1の燃料噴射手段による燃料噴射を複数回に分割する分割噴射を行うための機能が実現され、マルチ噴射期間決定部1760によって第1の燃料供給手段による分割噴射を行う期間を可変とする機能が実現される。
図7は、図6に示した燃料噴射制御の制御処理手順を示すフローチャートである。図7に示したフローチャートは、本実施の形態に係る制御装置であるエンジンECU300に予め格納されたプログラムを所定のサイクルタイム(たとえば10ms)で繰り返し実行することによって実現される。
図7を参照して、エンジンECU300内に格納されたプログラムによる制御処理手段を示すフローチャートを以下に説明する。まず、エンジンECU300はステップ(以下、ステップをSと略す。)110において、図1に示したエンジン10の回転数センサ460からの信号に基づいて、エンジンの回転数を検知する。
次に、S120において、エンジンECU300は、S110で検知した現在のエンジンの回転数および負荷率から、エンジンECU300の記憶部1750内の噴射切替マップ等に基づいて、次回の吸気通路噴射と筒内噴射の燃料噴射割合を決定する。
S130において、エンジンECU300は、S120で決定された次回の吸気通路噴射の割合が100%か否かを判断する。ここで、次回の吸気通路噴射の割合が100%であるとき(S120にてYES)は、マルチ噴射を行う必要がないので、エンジンECU300は、そのまま処理をS140に進める。エンジンECU300は、S140では、S120での設定に従って通常の吸気通路噴射を行うための噴射設定を出力する。これに伴い、吸気通路噴射用インジェクタ120の開閉指令信号(電気信号)が出力される。
一方、吸気通路噴射の割合が100%でない場合(S130にてNO)、すなわち次回の燃料噴射指令で筒内噴射を行う設定の場合には、以下に説明するS150〜S190の処理によって、マルチ噴射の要否判定が実行される。
エンジンECU300は、S150では、既にマルチ噴射による吸気通路噴射が実行中であるかどうかを判断する。S150にてNO、すなわち現状の噴射状態がマルチ噴射ではない場合はS160に処理が移される。
S160においては、エンジンECU300は、現在の吸気通路噴射の噴射割合が100%か否かを判断する。現状の吸気通路噴射の噴射割合が100%である場合(S160にてYES)、すなわち次回の燃料噴射指令にて吸気通路噴射のみの燃料噴射から筒内噴射を使用する燃料噴射に切替わる場合には、マルチ噴射設定を行うためにS170およびS180に処理を進める。エンジンECU300は、S170では、S110で検出した回転数Neに応じ、吸気通路噴射のマルチ噴射実施期間を設定する。エンジンECU300は、S180では、マルチ噴射動作設定として吸気通路噴射の噴射割合を100%とし、また1燃焼サイクルあたりの燃料噴射回数を設定する。さらに、エンジンECU300は、S140に処理を進めて、マルチ噴射による吸気通路噴射を行うための噴射設定を出力する。これに伴い、吸気通路噴射用インジェクタ120の開閉指令信号(電気信号)が出力される。このように、吸気噴射のみの燃料噴射から筒内噴射を用いた燃料噴射へ切替えられたときには、S170〜S180により、マルチ噴射の実行が設定されるとともに、その実施期間の長さが設定される。
一方、現在すでに燃料の少なくとも一部が筒内噴射されている場合(S160がNO)には、マルチ噴射を行う必要がないので、エンジンECU300は、そのまま処理をS140に進める。そして、S140では、S120での設定に従って、筒内噴射または、筒内噴射および通常の吸気通路噴射の両方を行うための噴射設定を出力する。これに伴い、筒内噴射用インジェクタ110のみ、あるいは、筒内噴射用インジェクタ110および吸気通路噴射用インジェクタ120の開閉指令信号(電気信号)が出力される。
このように、吸気噴射のみから筒内噴射を用いた燃料噴射への切替が発生していないときには、S170,S180の処理がスキップされるので、マルチ噴射は実行されない。
なお、エンジンECU300は、既にマルチ噴射が行われている場合には、S150をYESとして、S190に処理を進める。S190では、マルチ噴射実施期間が上記S170にて設定された所定期間を経過しているかどうかをエンジンECU300が判断する。そして、上記所定期間を経過していない場合(S190にてNO)にはS180を経由してS140に処理が移され、エンジンECU300は、マルチ噴射動作を継続するように設定を行う。
一方、所定期間が経過していた場合(S190にてYES)には、エンジンECU300は、S180をスキップして処理をS140に進める。これにより、S140では、マルチ噴射を終了させてS120での設定に従うように、筒内噴射および/または通常の吸気通路噴射を行うための噴射設定が出力される。これに伴い、筒内噴射用インジェクタ110および/または吸気通路噴射用インジェクタ120の開閉指令信号(電気信号)が出力される。
このように、図7に示すフローチャートに従って制御処理をエンジンECU300が実行することによっても、図5に示したのと同様の本発明の実施の形態による燃料噴射制御が実現できる。
以上説明したように、本実施の形態による燃料供給装置および燃料噴射制御方法によれば、吸気通路噴射のみの噴射から筒内噴射を使用する噴射に切替わる場合に、それぞれの噴射期間の間にエンジンの回転数に応じた期間吸気通路噴射のマルチ噴射が行なわれる。これにより、インジェクタ作動音が段階的に増加するため、筒内噴射を使用する噴射に切替わった際の急激な変音感を軽減することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の実施の形態に係る燃料供給装置全体の概略図である。 図1における高圧燃料圧送装置の詳細図である。 燃料噴射用インジェクタの断面図である。 燃料噴射方法の違いによる作動音の音圧レベル変化の周波数解析結果の例を示す。 エンジンECU内の燃料噴射制御の機能ブロック図である。 エンジンECUの記憶部内の噴射切替マップの一例である。 本発明の実施の形態に係る制御装置であるエンジンECUで実行される、燃料噴射制御プログラムの制御構造を示すフローチャートである。
符号の説明
10 エンジン、20 インテークマニホールド、30 サージタンク、40 吸気ダクト、42 エアフローメータ、50 エアフィルタ、60 電動モータ、70 スロットルバルブ、80 エキゾーストマニホールド、90 三元触媒コンバータ、100 アクセルペダル、110 筒内噴射用インジェクタ、112 気筒、120 吸気通路噴射用インジェクタ、130 燃料分配管、150 高圧燃料圧送装置、160 低圧側燃料分配管、170 燃料圧レギュレータ、180 低圧燃料ポンプ、190 燃料フィルタ、200 燃料タンク、300 エンジンECU、310 双方向性バス、320 ROM、330 RAM、340 CPU、350 入力ポート、360 出力ポート、370,390,410,430,450 A/D変換器、380 水温センサ、400 燃料圧センサ、420 空燃比センサ、440 アクセル開度センサ、460 回転数センサ、500 噴孔、520 ニードル、522 内周シート面、540 コア、560 スプリング、570 スリーブ、580 燃料通路、600 フィルタ、620 燃料導入口、640 電磁ソレノイド、650 絶縁ハウジング、660 ワイヤ、740 本体、760 ノズルボディ、1010 PFI 100%噴射領域、1020 PFI+DI噴射領域、1030 DI 100%噴射領域、1200 高圧燃料ポンプ、1202 電磁スピル弁、1204 リーク機能付きチェックバルブ、1206 ポンププランジャー、1210 カム、1220 パルセーションダンパ、1420 低圧燃料分配管、1500 高圧デリバリ連通パイプ、1700 入力部、1710 噴射割合決定部、1720 噴射切替判定部、1730 噴射出力設定部、1740 出力部、1750 記憶部、1760 マルチ噴射期間決定部、2000 PFI噴射のみの周波数解析結果、2010 PFIマルチ噴射の周波数解析結果、2020 DI噴射のみの周波数解析結果。

Claims (6)

  1. 内燃機関の吸気通路内に燃料を噴射するための第1の燃料供給手段と、
    前記第1の燃料供給手段よりも高い圧力で前記内燃機関の燃焼室の筒内に直接燃料を噴射するための第2の燃料供給手段と、
    前記第1の燃料供給手段と前記第2の燃料供給手段とを制御するための燃料噴射制御手段とを備え、
    前記燃料噴射制御手段は、
    前記内燃機関の運転状態に基づいて、前記第1の燃料供給手段のみによって燃料を噴射する運転条件から、前記第2の燃料供給手段を使用して燃料を噴射する運転条件への切替判定を行うための手段と、
    前記切替判定に従って、前記第1の燃料供給手段のみによって燃料を噴射する第1の運転期間から前記第2の燃料供給手段を使用して燃料を噴射する第2の運転期間への遷移期間に、前記内燃機関の1燃焼サイクル中の前記第1の燃料供給手段による燃料噴射回数を前記第1の運転期間よりも増加させるように、前記第1の燃料噴射手段による燃料噴射を複数回に分割する分割噴射を行うための手段とを含む、内燃機関の燃料供給装置。
  2. 前記内燃機関の前記運転状態は、内燃機関の回転数および負荷率を含む、請求項1に記載の内燃機関の燃料供給装置。
  3. 前記燃料噴射制御手段は、
    前記内燃機関の回転数に応じて、前記第1の燃料供給手段による前記分割噴射を行う期間を可変とするための手段をさらに含む、請求項1に記載の内燃機関の燃料供給装置。
  4. 内燃機関の燃料噴射制御方法であって、
    前記内燃機関は、
    前記内燃機関の吸気通路内に燃料を噴射するための第1の燃料供給手段と、
    前記第1の燃料供給手段よりも高い圧力で前記内燃機関の燃焼室の筒内に直接燃料を噴射するための第2の燃料供給手段とを備え、
    前記燃料噴射制御方法は、
    前記内燃機関の運転状態に基づいて、前記第1の燃料供給手段のみによって燃料を噴射する運転条件から、前記第2の燃料供給手段を使用して燃料を噴射する運転条件への切替判定を行うステップと、
    前記切替判定に従って、前記第1の燃料供給手段のみによって燃料を噴射する第1の運転期間から前記第2の燃料供給手段を使用して燃料を噴射する第2の運転期間への遷移期間に、前記内燃機関の1燃焼サイクル中の前記第1の燃料供給手段による燃料噴射回数を前記第1の運転期間よりも増加させるように前記第1の燃料噴射手段による燃料噴射を複数回に分割する分割噴射を行うステップとを備える、内燃機関の燃料噴射制御方法。
  5. 前記内燃機関の前記運転状態は、内燃機関の回転数および負荷率を含む、請求項4に記載の内燃機関の燃料噴射制御方法。
  6. 前記燃料噴射制御方法は、前記内燃機関の回転数に応じて、前記第1の燃料供給手段による前記分割噴射を行う期間を可変とするステップをさらに含む、請求項4に記載の内燃機関の燃料噴射制御方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2014202122A (ja) * 2013-04-04 2014-10-27 トヨタ自動車株式会社 内燃機関の制御装置
CN106246358A (zh) * 2015-06-11 2016-12-21 福特环球技术公司 用于减少由发动机产生的微粒物质的方法和系统

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