JP2010047939A - 地盤評価方法および地盤評価装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】自立性の弱い地盤の調査・観察に適し、しかも地下水特性を精度よく把握することができる地盤評価方法と、この工法を実行する安価な地盤評価装置を提供する。
【解決手段】内径下端部が下端に向かって拡大する傾斜面5aとされて下端縁部が鋭角とされた筒状の透明ケーシング5と、透明ケーシング5を軸方向下方に加える静的荷重で地盤に貫入させる載荷手段20と、透明ケーシング5内の掘削地盤を吸引排除する除荷手段30と、透明ケーシングを介して調査対象箇所を撮像する撮像機器40と、調査対象箇所の地盤温度を計測する温度計測手段50とを備える。
【選択図】図1
【解決手段】内径下端部が下端に向かって拡大する傾斜面5aとされて下端縁部が鋭角とされた筒状の透明ケーシング5と、透明ケーシング5を軸方向下方に加える静的荷重で地盤に貫入させる載荷手段20と、透明ケーシング5内の掘削地盤を吸引排除する除荷手段30と、透明ケーシングを介して調査対象箇所を撮像する撮像機器40と、調査対象箇所の地盤温度を計測する温度計測手段50とを備える。
【選択図】図1
Description
本発明は、地盤の調査・観察のために行われる地盤評価方法および地盤評価装置に関する。
地質や地盤の調査・観察を目的に行われるボーリング孔壁面の画像撮影は、自立性のよいボーリング孔内にボアホールカメラ装置を挿入するボアホール画像撮影法が一般的である(例えば、特許文献1参照)。このボアホール画像撮影法は、カッター切削式ロータリー式ボーリングで掘削したボーリング孔にボアホールカメラ装置を挿入し、ボーリング孔の壁面を直接に部分照明してカメラで撮像する。
しかしながら、ボアホール画像撮影法は、調査・観察の対象となるボーリング孔は、岩盤のような自立性のよいボーリング孔に限られ、砂質地盤や軟弱粘性土地盤のような自立性の弱い地盤のボーリング孔では地盤崩れ等の問題でボアホール画像撮影法の適用が難しい。また、ボアホール専用の特殊カメラを搭載した高額装置であるため、地盤の調査・観察の費用が高額となる。さらには、地盤の調査・観察の前に行われるボーリング孔掘削時の送水が、後の地盤の調査・観察に悪影響を及ぼすことがある。すなわち、ボーリング時の送水は、「掘削した地盤(土砂)の掘屑を孔の外に運び出す」目的と、「掘削により発生する摩擦熱を冷却する」目的と、「保孔材を用いた孔壁を保護する」目的で行われるが、調査・観察しようとする地盤に循環流体である水が浸透し、また、地盤が切削ボーリング時の振動で変動する。さらに、切削ボーリング時に地盤汚染調査の主な対象である揮発性有機塩素化合物が熱で気化して、地盤が膨脹や収縮、移動の変化をする。また、循環流体である水を使用すると、地盤の汚染物質が水と共に流出して、地盤の汚染箇所を拡大する可能性がある。さらに、水を使用すると、地盤中の地下水の有無観察や、正確な地盤の堆積状況、生物状況を観察することが難しくなる。
そこで、本出願人は自立性の弱い地盤の調査・観察に適したケーシングボーリング工法およびケーシングボーリング装置を提案した(特許文献2)。
このケーシングボーリング工法は、除荷手段による地盤吸引排除で生じる地盤の透明ケーシング支持力低下に応じて透明ケーシングを載荷手段の荷重で地盤中に静的貫入させるものである。
特開2000−160978号公報
特開2006−37573号公報
特許文献2に記載のケーシングボーリング工法では、自立性の弱い地盤であっても、ボーリングしていくことができ、しかも、透明ケーシングを介した地盤の観察が可能であった。
ところで、降雨や貯水池などの浸透水が斜面の安定性に与える影響は大きい。すなわち、地盤には地下水を有する場合が多く、地盤の調査・観察に地下水特性(地下水の流れ等)を捉える必要がある。
このため、従来においては、地下水特性を評価する方法として、地盤の各層毎の地下水位観察等が行われていた。しかしながら、このような地下水位観察では、浸透特性(地盤の変位特性に影響を与える)を高精度に捉えることができなかった。
本発明の目的とするところは、自立性の弱い地盤の調査・観察に適し、しかも地下水特性を精度よく把握することができる地盤評価方法と、この地盤評価方法を実行する安価な地盤評価装置を提供することにある。
本発明の地盤評価方法は、除荷手段による地盤吸引排除で生じる地盤の透明ケーシング支持力低下に応じて透明ケーシングを載荷手段の荷重で地盤中に静的貫入させるケーシングボーリング装置を用いた地盤評価方法である。ここで、透明ケーシングは、アクリル樹脂などの硬質透明樹脂材で形成された多角形や円形などの筒体や、透明樹脂とガラスの積層構造の筒体が適用できる。また、透明ケーシングは、ボーリング孔の壁面を安定させる強度を必要とする。さらには、透明ケーシングを介してボーリング孔の壁面を調査・観察できる透明度を必要とする。
本発明の地盤評価方法によれば、透明ケーシングを載荷手段の荷重で地盤中に静的貫入させることができる。しかも、除荷手段によって地盤の堀屑の吸引排除を行うことができ、これによって、地盤の透明ケーシング支持力を低下させることができる。このため、掘屑を吸引排除しない間は、地盤の透明ケーシング支持力が低下せず、透明ケーシングの静的貫入が進行しない。これに対して、掘屑を吸引排除する動作を開始すると、吸引排除した除荷量に比例して地盤の透明ケーシング支持力が低下して載荷手段の荷重との重量バランスが崩れ、載荷手段の荷重で透明ケーシングの静的貫入が開始される。このような静的貫入は、自立性の弱い地盤でもボーリング孔の壁面を乱さず、摩擦熱の発生もほとんど無く、透明ケーシングの外周に沿ったボーリング孔の壁面を調査・観察するに望ましい良好な状態に保持する。
ところで、降雨や貯水池などの浸透水が地盤(特に、斜面)の安定性に与える影響は大きい。また、地下温度は地下環境を理解する指標の一つであり、地下水の流動方向をはじめ涵養域(地下水が地中深く浸透してゆく地域)や湧出域(深部の地下水が地上に向かって上昇している地域)などの地下水環境の地域区分、さらには流速の算出にも利用することができる。さらに、地上の温度が地下に伝わっていくのには時間差があるため、現在の地下温度を正確に観測することで過去における温度変化の歴史を紐解くことができる。
そこで、本発明では、調査対象箇所の温度の計測し、その温度の経時変化と画像とに基づいて、浸透特性が地盤の変位特性に与える影響を評価するものである。
本発明の地盤評価装置は、内径下端部が下端に向かって拡大する傾斜面とされて下端縁部が鋭角とされた筒状の透明ケーシングと、この透明ケーシングを軸方向下方に加える静的荷重で地盤に貫入させる載荷手段と、前記透明ケーシング内の掘削地盤を吸引排除する除荷手段と、前記透明ケーシングを介して調査対象箇所を撮像する撮像機器と、調査対象箇所の地盤温度を計測する温度計測手段とを備えたものである。
本発明の地盤評価装置によれば、載荷手段にて、透明ケーシングを軸方向下方に静的荷重を加えることができる。これにて、透明ケーシングを地盤に貫入させることができる。除荷手段にて、掘削地盤(地盤の屑)を透明ケーシング内から吸引排除できる。すなわち、掘屑を吸引排除しない間は、地盤の透明ケーシング支持力が低下せず、透明ケーシングの静的貫入が進行しない。これに対して、掘屑を吸引排除する動作を開始すると、地盤の透明ケーシング支持力が低下して載荷手段の荷重で透明ケーシングの静的貫入が開始される。このような静的貫入は、自立性の弱い地盤でもボーリング孔の壁面を乱さず、摩擦熱の発生もほとんど無く、透明ケーシングの外周に沿ったボーリング孔の壁面を調査・観察するに望ましい良好な状態に保持する。
温度計測手段が、温度計と、この温度計を透明ケーシングから調査対象箇所に突出させる押出機構とを備えたものが好ましい。温度計の透明ケーシングからの突出量を3mm〜10mm程度とすることができる。温度計の突出量が3mm未満であれば、突出量が小さすぎて、温度計による温度計測が安定せず、逆に突出量が10mmを越えれば、突出量が大きすぎて、突出ストロークが大きくなって、押出機構のコンパクト化を阻害すると共に、押圧力が大となる。また、押出機構が、エアや水の供給により膨張するバルーンを備えたもので構成することができる。
本発明によれば、地盤に透明ケーシングを静的貫入するため、自立性の弱い砂質地盤や軟弱粘性土地盤の調査・観察に好適な地盤評価方法、地盤評価装置が提供できる。また、調査対象箇所の温度の計測し、その温度の経時変化と画像とに基づいて、浸透特性が地盤の変位特性に与える影響を評価することができる。
このため、降雨などが斜面の安定性に与える影響を精度良く評価することで、安全性の向上につながる。また、装置全体としても、簡略化を達成でき、従来の装置では、運搬および調査できなかった場所(例えば、本格施工前や防災のための海浜近傍や山間地のような不便な箇所および狭隘な地点)での調査を行うことができる。すなわち、人力での運搬および調査が行えるので、簡便に地質状況と地下水特性を調査でき、調査のコストダウンや安全性向上を図ることができる。
温度計測手段が、温度計と、この温度計を透明ケーシングから調査対象箇所に突出させる押出機構とを備えたものでは、温度計を透明ケーシングから調査対象箇所に安定して突出させることができ、調査対象箇所の温度を確実に計測することができる。これによって、計測温度の経時変化を安定して捉えることができ、前記評価の精度の向上を図ることができる。また、温度計の透明ケーシングからの突出量を3mm〜10mm程度とすることによって、調査対象箇所の温度の計測が安定する。押出機構が、エアの供給により膨張するバルーンを備えたものであれば、このバルーンを膨張させることによって、温度計を簡単に透明ケーシングから突出させることができる。
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
図1に示される地盤評価装置10は、砂質地盤や軟弱粘土性地盤などの自立性の弱い地盤1の調査・観察に適用されるもので、透明アクリル樹脂の透明ケーシング5を地盤1に静的貫入させるための載荷手段20と、地盤1の掘屑を透明ケーシング5から除去するための除荷手段30とを備える。透明ケーシング5は、図6に示すように、6枚の平坦な透明板5Aが組み合わされて形成される正六角形の多面筒体からなる。この場合、透明ケーシング5の上端に延伸枠6が継ぎ足される。
すなわち、延伸枠6は、図7に示すような正六角形の多面筒体で、ボーリング深さに対応させて必要本数(適数本)のものが透明ケーシング5上に同軸に連結される。なお、延伸枠6は透明の材質で構成する必要がない。
最上段の延伸枠6上に荷重伝達枠22が連結され、この荷重伝達枠22上に前記載荷手段20、例えば複数の重り板からなるウエイト21が載置される。
地盤1上に脚立式の支持枠11が配備され、支持枠11の上端部に設置された滑車台上の滑車13から吊り下げたワイヤ14の下端に吊り輪16を介して吊りロッド15が連結される。支持枠11の中間位置に横架した軸保持枠12を吊りロッド15が貫通することで、吊りロッド15の振れが防止され、中心軸が保持される。この吊りロッド15の下端部に荷重伝達枠22を連結して、最適数の延伸枠6と、ケーシング5を鉛直に吊下支持する。
図1に示す除荷手段30は、地盤1上に設置された吸引力制御装置兼土水貯留装置32から延びる吸引管31を備える。吸引力制御装置兼土水貯留装置32は、外部の真空吸引手段33に連接された土水貯留タンク構造で、吸引管31から吸引された掘屑、地下水を貯留する。図1に示される符号7は外部ケーシングで、透明ケーシング5より大径の通常ケーシングが適用され、これの用途は後述する。
図1は透明ケーシング5によるボーリング施工時を示し、このボーリング施工後に図2と図5(A)に示すように透明ケーシング5内に撮像機器40が挿入されて、透明ケーシング5で形成されたボーリング孔2の壁面の撮像が行われる。図2に示す撮像機器40は、吊り下げ式の防水ケース41の中に撮像カメラ42と照明器具43を収納する。撮像カメラ42は、例えば市販のデジタルカメラで、防水ケース41の側壁一部に設けた防水透光窓45の外を撮像する。照明器具43は防水透光窓45の外を照明する。この撮像カメラ42と照明器具43の電源(図示せず)と操作スイッチ44が防水ケース41内に配備される。防水ケース41の上面に吊り下げ用支持管46の下端部が連結され、支持管46内に操作スイッチ44を操作するワイヤ47が挿通される。
透明ケーシング5は、内径下端部が下端に向かって拡大する傾斜面5aとされて下端縁部が鋭角とされている。傾斜面(傾斜下端面)5aは、ケーシング外周と成す角度(鋭角)θを25度〜30度の範囲内に設定する。軟弱地盤に適用する透明ケーシング5においては、角度θは約27度に設定する。なお、透明ケーシング5を後述するように地盤1に静的貫入させる場合、ケーシング下端部の傾斜面5aの角度θは、弾性理論解では約30度以下(影響値0.05以下)で、小さいほど良くて理論的には0度〜30度の範囲指定が可能であるが、小さくするほど堀進時や運搬時にケーシング先端が破損し易くなることから、実用上は25度〜30度が適切である。
また、この装置は、調査対象箇所の温度(地盤温度)を計測することができる。このため、図8に示すように、調査対象箇所の温度を計測する温度計測手段50を備える。
温度計測手段50は、温度計61と、この温度計61を透明ケーシング5から調査対象箇所に突出させる押出機構53とを備える。温度計61は、白金測温抵抗体、サーミスタ、熱電対等の接触式の温度計を用いることができる。
押出機構53はエアや水等の流体の供給により膨張するバルーン56を備えたものである。そして、バルーン56は枠体58に収容され、エア等が供給されることによって、膨張して受圧板59を介して温度計61を押圧する。これによって、温度計61が押圧されて、その温度計61が透明ケーシング5から突出する。この場合の突出量としては、3mm〜10mm程度とされる。
次に、上記した実施の形態の地盤評価装置10によるボーリング施工と地盤の調査・観察の動作例を説明する。
図1の状態で透明ケーシング5に載荷手段20で所定の荷重を掛け、この荷重で透明ケーシング5に図3に示すように貫入力Pv(等分布荷重)を作用させると、ケーシング先端部内側の地盤1に作用する直力Piとケーシング先端部外側の地盤1に作用する直力Po及び剪断力Fvに分力する。外側地盤1(1A)には直力Poと剪断力Fvが作用し、この直力Poに対してはケーシングの剛性で安定する。内側地盤1(1B)には直力Piと剪断力Fvが作用し、地盤1にはそれに抵抗する円形状すべり面が生じて、ある貫入力のときに安定する。
図3のように透明ケーシング5が初期貫入で安定している状態において、内側地盤1(1B)の反力となっている掘屑(土塊)の上部を吸引管31で吸引排除(除荷)することにより、その取り除いた掘屑重量相当分と貫入量減少による剪断力減少分だけ透明ケーシング5が再貫入する。図4は再貫入の様子を示し、透明ケーシング5は深さHxだけ再貫入して安定する。吸引管31による掘屑の吸引排除を連続して行うと、透明ケーシング5の再貫入が連続して進行(堀進)する。この再貫入で透明ケーシング5の外周面5bは地盤1を摩擦抵抗が少なく垂直に下り、ボーリング孔壁面を自然状態に近い良好な面のまま保持する。
透明ケーシング5の静的貫入が終了すると、図2と図5(A)に示すように透明ケーシング5内に撮像機器40の撮像機固定兼防水ケース41を挿入する。透明ケーシング5内に地下水8が入っている場合は、撮像機固定兼防水ケース41を地下水8の中に挿入する。透明ケーシング5内で撮像機固定兼防水ケース41を横方向に360度回転させ、上下方向に移動させて、図6に示す六角形の透明ケーシング5の6枚の平坦な透明板5Aを通してボーリング孔壁面を部分的に連続して撮像し、撮像した各画像を合成して、ボーリング孔壁面全面の調査・観察を行う。
また、地盤1の温度を計測する場合、透明ケーシング5内に温度計測手段50を挿入する。この場合、温度計61の軸心と透明ケーシング5の各孔部55の軸心とを合わせる。この状態で、押出機構53のバルーン56を膨らませ、温度計61を押し出すことによって、温度計61を透明ケーシング5から所定量(3mm〜10mm程度)だけ突出させる。
このように突出させた状態で、前記したように、この温度計61にて地盤1の温度を計測する。この計測を経時的に行って、その温度の経時変化と画像とに基づいて、浸透特性が地盤の変位特性に与える影響を評価することができる。
図9は降雨浸透評価概念図であり、本発明においては、降雨などが斜面の安定性に与える影響を評価することで、安定性の向上につなげるものである。降雨や貯水池などの浸透水が地盤(特に、斜面)の安定性に与える影響は大きい。また、地下温度は地下環境を理解する指標の一つであり、地下水の流動方向をはじめ涵養域(地下水が地中深く浸透してゆく地域)や湧出域(深部の地下水が地上に向かって上昇している地域)などの地下水環境の地域区分、さらには流速の算出にも利用することができる。さらに、地上の温度が地下に伝わっていくのには時間差があるため、現在の地下温度を正確に観測することで過去における温度変化の歴史を紐解くことができる。この場合の地盤1は、A層とB層とC層とD層とを有し、これらの層に跨って、ボーリング孔(観察孔)が形成されている。
透明ケーシング5の各平坦な透明板5Aの外周面に接して撮像されるボーリング孔壁面は平坦面で、このボーリング孔壁面を平坦な透明板5Aを通してカメラで撮像した画像は、円形透明ケーシングを使用して曲面を撮像した画像に比べ補正が簡単である。また、地下水動き観察は透明ケーシング5が多面体の場合に円形ケーシングより有利に行える。カメラで撮像した画像によるボーリング孔壁面の調査・観察は、通常の土粒子の岩石分類、火山灰種類、水で飽和しているか否か、生物の分類、画像のうちのピクセル計算などで行うことができる。
図5(A)の状態でボーリング孔壁面の調査・観察が終了すると、次の透明ケーシング5の静的貫入を行う。図5(A)の状態で透明ケーシング5をボーリング孔2の孔底地盤3に静的貫入させることも可能であるが、摩擦抵抗が大きくて難しいことから、図5(B)と(C)に示すように行う。まず、図5(B)に示すように、外部ケーシング7で孔底地盤3を掘削し、掘屑を排除する。外部ケーシング7を所望の深さまで通常ボーリングしてから、図5(C)に示すように外部ケーシング7の下端部の孔底地盤3に対して透明ケーシング5を静的貫入させて、次のボーリング孔壁面の調査・観察を行う。
このように、載荷手段20にて、透明ケーシング5を軸方向下方に静的荷重を加えることができる。これにて、透明ケーシング5を地盤に貫入させることができる。除荷手段30にて、掘削地盤(地盤の屑)を透明ケーシング5内から吸引排除できる。すなわち、掘屑を吸引排除しない間は、地盤1の透明ケーシング支持力が低下せず、透明ケーシングの静的貫入が進行しない。これに対して、掘屑を吸引排除する動作を開始すると、地盤1の透明ケーシング支持力が低下して載荷手段の荷重で透明ケーシング5の静的貫入が開始される。このような静的貫入は、自立性の弱い地盤でもボーリング孔2の壁面を乱さず、摩擦熱の発生もほとんど無く、透明ケーシング5の外周に沿ったボーリング孔2の壁面を調査・観察するに望ましい良好な状態に保持する。
本発明によれば、地盤1に透明ケーシング5を静的貫入するため、自立性の弱い砂質地盤や軟弱粘性土地盤の調査・観察に好適な地盤評価方法、地盤評価装置が提供できる。また、調査対象箇所の温度の計測し、その温度の経時変化と画像とに基づいて、浸透特性が地盤1の変位特性に与える影響を評価することができる。
このため、降雨などが斜面の安定性に与える影響を精度良く評価することで、安全性の向上につながる。また、装置全体としても、簡略化を達成でき、従来の装置では、運搬および調査できなかった場所(例えば、本格施工前や防災のための海浜近傍や山間地のような不便な箇所および狭隘な地点)での調査を行うことができる。すなわち、人力での運搬および調査が行えるので、簡便に地質状況と地下水特性を調査でき、調査のコストダウンや安全性向上を図ることができる。
温度計測手段59が、温度計61と、この温度計61を透明ケーシング5から調査対象箇所に突出させる押出機構53とを備えたものでは、温度計61を透明ケーシング5から調査対象箇所に安定して突出させることができ、調査対象箇所の温度を確実に計測することができる。これによって、計測温度の経時変化を安定して捉えることができ、前記評価の精度の向上を図ることができる。また、温度計61の透明ケーシング5からの突出量を3mm〜10mm程度とすることによって、調査対象箇所の温度の計測が安定する。押出機構53が、エアの供給により膨張するバルーン56を備えたものであれば、このバルーン56を膨張させることによって、温度計61を簡単に透明ケーシング5から突出させることができる。温度計61の突出量が3mm未満であれば、突出量が小さすぎて、地盤1の温度の計測が安定せず、逆に突出量が10mmを越えれば、突出量が大きすぎて、突出ストロークが大きくなって、押出機構53のコンパクト化を阻害すると共に、押圧力が大となる。
ところで、透明ケーシング5が調査対象箇所に到達したときに、調査対象箇所に観察用液体を注入して、この調査対象箇所の画像を捉えるようにしてもよい。このように、調査対象箇所に観察用液体を注入すれば、この液体の動き(流れ)を観察でき、これによって地下水の動き(流れ)を把握することができる。このため、観察用液体を注入しない場合では判定できない地層構造や地下水特性を高精度に捉えることができる。
特に、観察用液体を有色液体とすれば、観察用液体の観察の容易化を図ることができ、より高精度の観察が可能となる。また、観察用液体の調査対象箇所への注入量を1回当たり2cc〜6cc程度とすることによって、地下水特性の安定した把握が可能となる。すなわち、注入量が6ccを越えれば、観察用液体の注入量増大とその注入圧上昇のため観察用液体による地盤への悪影響(地盤崩れ等)を招くことになる。逆に、注入量が2cc未満であれば、観察用液体の注入量が少なすぎて注入していない場合と大差がないことになる。
有色液体とは、調査・観察する地盤の色と異色であって、識別しやすい色の液体であって、地盤の色に応じて種々採用できる。また、観察用液体Sの流動性としては地下水と同程度とする。このため、観察用液体Sに、例えば、市販の食用染料や印刷用染料を使用することができる。
観察用液体の液注入手段としては、液注入管と、この液注入管の液出口を透明ケーシングから調査対象箇所に突出させる押出機構とを備えたもので構成することができる。押出機構としては、前記温度計61を突出させる押圧機構を使用することができる。なお、液出口の透明ケーシングからの突出量を2mm〜6mm程度とするのが好ましい。このような突出量とすることによって、調査対象箇所への観察用液体の注入が安定する。突出量が6mmを越えると、突出ストロークが大きくなって、押出機構のコンパクト化を阻害すると共に、突出量が大きくなって押圧力が大となる。逆に突出量が2mm未満では、調査対象箇所への液注入管の液出口の突入量が小さくなりすぎて観察用液体を調査対象箇所に安定して注入できないおそれがある。
なお、液注入手段は、前記温度計測手段50と同時に使用できるものであっても、温度計測手段50による温度計測前(透明ケーシング5に温度計測手段50を挿入する前)に、液注入手段を挿入して調査対象箇所に観察用液体を注入するものであっても、温度計測手段50による温度計測後(透明ケーシング5から温度計測手段50を取り出した後)に、液注入手段を挿入して調査対象箇所に観察用液体を注入するものであってもよい。
本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、押出機構53として、温度計61を押圧できればよいので、バルーン方式以外の種々の往復動機構を用いることができる。ところで、温度計61を突出させるための孔部55を透明ケーシング5に設ける必要がある。このため、透明ケーシング5に蓋部材を設け、孔部55を使用する場合のみ開状態となるようにするのが好ましい。
次に、気温と、地盤1の温度を計測し、その計測結果を図10に示した。このように、地盤1の温度を監視でき、この地盤1の温度と画像との併用調査、観察が可能となって、通常では判断できない浸透特性が斜面等に与える影響を高精度に評価することができる。
1 地盤
5 透明ケーシング
5a 傾斜面
20 載荷手段
30 除荷手段
40 撮像機器
50 温度計測手段
53 押出機構
56 バルーン
61 温度計
5 透明ケーシング
5a 傾斜面
20 載荷手段
30 除荷手段
40 撮像機器
50 温度計測手段
53 押出機構
56 バルーン
61 温度計
Claims (5)
- 除荷手段による地盤吸引排除で生じる地盤の透明ケーシング支持力低下に応じて透明ケーシングを載荷手段の荷重で地盤中に静的貫入させるケーシングボーリング装置を用いた地盤評価方法であって、
前記透明ケーシングが調査対象箇所に到達したときに、調査対象箇所の画像の観察と、調査対象箇所の温度の計測とを行い、その温度の経時変化と画像とに基づいて、浸透特性が地盤の変位特性に与える影響を評価することを特徴とする地盤評価方法。 - 内径下端部が下端に向かって拡大する傾斜面とされて下端縁部が鋭角とされた筒状の透明ケーシングと、この透明ケーシングを軸方向下方に加える静的荷重で地盤に貫入させる載荷手段と、前記透明ケーシング内の掘削地盤を吸引排除する除荷手段と、前記透明ケーシングを介して調査対象箇所を撮像する撮像機器と、調査対象箇所の地盤温度を計測する温度計測手段とを備えたことを特徴とする地盤評価装置。
- 温度計測手段が、温度計と、この温度計を透明ケーシングから調査対象箇所に突出させる押出機構とを備えたことを特徴とする請求項2に記載の地盤評価装置。
- 温度計の透明ケーシングからの突出量を3mm〜10mm程度としたことを特徴とする請求項3に記載の地盤評価装置。
- 押出機構が、エアや水の供給により膨張するバルーンを備えたことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の地盤評価装置。
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2008
- 2008-08-20 JP JP2008211869A patent/JP2010047939A/ja active Pending
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